綾「（お弁当、どこで食べようかな……）」

綾「（学食はぼっちには難易度高いし、ベンチで1人で食べてたらぼっちだと思われそうで嫌だし…）」

綾「…………」



トイレの個室。

綾「（はぁ…ここなら人目を気にしなくていいわね……）」

綾「もぐもぐ……」

綾「（お母さんのお弁当、おいしいなぁ）」

綾「（午後も講義があるのか……）」

綾「（教室に早く着いても1人だとあれだし、ギリギリまでトイレにこもってよう…）」


教室。

綾「（講義中はぼっちであることを気にしなくていいから少し楽ね）」

教授「じゃあ今からグループディスカッションをしてもらうので、適当にグループをつくってください」

綾「……ッ！？」

綾「どうしようどうしようどうしよう……！とりあえずだれかに声をかけてグループに入れてもらわなきゃ！」

綾「……ッ！…………」ｷｮﾛｷｮﾛ

次々とできあがるグループ

グループに入れずウロウロする綾

こみ上がる焦りと羞恥心

教授「組めてない人はいませんか？手を挙げてください」

綾「（そんなこと言われて手を挙げられる訳無いじゃない！）」

教授「小路さん？小路さんのグループは？」

綾「えっ……と…わ、私まだグループを組めてなくて…」

教授「はい？さっき余ってる人は手を挙げてって言いましたよね？どうして黙ってたんですか?」

綾「そ、その、組もうとしてたんですけど、その……」

教授「小路さん？ディスカッションに加わらないで黙ってたら、単位認められないよ？」

教授「この授業はディスカッション能力も評価するんだから」

綾「はい……」


綾「（死にたい……）」

綾（今日はもう講義もないし、バイトも休みかぁ……）

綾（ブックオフでも行こうかな…）


女「ねぇねぇ、小路さん…だっけ？ この後、みんなでカラオケ行くんだけど、一緒に行かない？」

綾「え……」

女「あ、なんか予定とかあった？」

綾「いや、そういうわけじゃないんですけど……その……今日は……」

女「そっか、ダメなら無理しなくていいよ。いきなり誘ったりしてゴメンね」

綾「あ……ぃえ…すみません」

綾（はぁ、なんで私ってこんなに初対面のひとと話すのが苦手なんだろう）

綾（せっかく友達になろうとしてくれるひとがいたのに…）

綾（これじゃあ友達なんてできるわけないじゃない……）

綾（高校の頃は、陽子とか忍みたいな友達がいたのに……）

綾（あ、そうか……今は陽子がいないから……）

綾（高校の頃は陽子がいたからみんなと仲良くなれた、みんな仲良くしてくれた）

綾（でも今は……）

綾（はぁ……ひまだなぁ…）

綾（ネットでもしようかしら）

綾（…………）ｶﾀｶﾀ


ｶﾀｶﾀ ｶﾀｶﾀ

「大学 ぼっち」


綾（…………）

綾（こんなのググって私なにやってんだろ……）

綾（ん……？『大学で一人ぼっちの奴つらくないの？』……ですって？）

綾（ちょっとみてみようかしら）

綾（これは……掲示板ってやつかしら？）

綾（なになに……ぼっちになるくらいだから、人間的に欠陥があるんだろう……）

綾（いくら高学歴でもコミュニケーション障害はゴミ……）

綾（な、なによこれ……私のこと馬鹿にしてるの？）

綾（そんなこと言わないで下さい、好きでひとりぼっちなんじゃないんです……と）

綾（よし、送信……）