朝倉涼子の感覚 (148)
『きまぐれオレンジロード あの日に帰りたい』のストーリーを思い描いて書いていこうと考えてます。
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いてえ…いてえ…いてえよ…
刺されるのはこれで二回目…人間…痛みに慣れる…なんてことはないんだな…
いかん…意識が…
朝倉「トドメを刺すわ。[ピーーー]ばいいのよ」
あの時、ああしとけばよかった、なんてことは、人間誰もが一度は思うことだ。実際、過去に戻れたとしても、今持っている後悔の記憶がないので、結局、今まで自分がしてきたことと似たような行動を繰り返し、現在へと繋がる。
高校一年生の夏休みの後半戦、世界は同じ二週間を何度も繰り返していた…らしい。らしいなんて曖昧な言葉を使ったのは、ここにいる俺にとって、高一の夏休みは、一度きりだけだったからだ。ハルヒの無意識パワーによって、世界がループしていた、なんてことは、妙な感覚と長門の言葉がなければ信じなかっただろう。
長門は、15499回繰り返した夏休みを、全て覚えてるみたいだった。俺にとってはたったの二週間だったが、長門にとっては約594年間、しかも、似たようなことの繰り返しだ。長門が無表情ながらも、どこか退屈そうにしてたのは、多分、俺の気のせいじゃないよな?
1
8月30日正午過ぎ。SOS団、馴染みの喫茶店での出来事である。
ハルヒ「また明後日、部室で会いましょう」
そう言い、ハルヒは俺たち四人を残し、喫茶店を出ようとしている。
帰らせてはダメなんだ。また、同じ二週間を繰り返しちまう。
結局、俺は何も思いつかず、ハルヒを呼び止めることが出来なかった。
2
8月30日正午過ぎ。SOS団、馴染みの喫茶店での出来事である。
ハルヒ「また明後日、部室で会いましょう」
そう言い、ハルヒは俺たち四人を残し、喫茶店を出ようとしている。
帰らせてはダメなんだ。また、同じ二週間を繰り返しちまう。
結局、俺は何も思いつかず、ハルヒを呼び止めることが出来なかった。
古泉「困りましたね」
声の聴こえた方に目をやると、古泉が困った表情の中にも笑顔を浮かべていた。
古泉「一つ思い付いたんですが、こうゆうのはどうでしょう?」
キョン「言ってみろ」
あまり期待してないが、聴くだけ聞いてやろうじゃないか。
古泉「後ろから抱き」
キョン「却下!」
それは断固拒否だ。
古泉「冗談です」
冗談なんか言ってる場合か。古泉は睨んだ俺に、
古泉「明日、打ち上げをしませんか?」
打ち上げか、なかなか期待できそうな意見を言いそうだな、黙って聞いてやろう。
古泉「凉宮さんは、イベントごとを楽しむことを好んでいらっしゃいます。夏休み、という高校生にとって大きなイベントが終了しました。しかし、何回も繰り返していることを考慮しますと、このイベントは成功したとは言えません」
確かにそうだ。もし、成功したと言えるのなら、満足したハルヒは夏休みを繰り返えそう、などとは思うまい。
古泉「そこで打ち上げです。夏休みの成功をみんなでお祝いし、夏休みがこれで終わりだということ、そして、夏休みというイベントが成功した、ということを凉宮さんに思い込ませるんです」
キョン「成功を祝っての打ち上げか、悪くないな」
朝比奈「あ、あたしも賛成です。と、とってもいい考えだと思います」
朝比奈さんが会話に参加してくれた。
朝比奈「でもぉ、打ち上げってどこでするんですかぁ?」
古泉は長門を見つめて、
古泉「長門さん、お願いできませんか?」
長門「かまわない」
長門は即答した。
古泉「では、我らが団長への連絡をお願いします」
そう言って古泉は俺にウィンクしてきた。やめろ、気持ち悪い。
俺はハルヒの携帯に電話をかけた。打ち上げのことを伝えると、ハルヒは喜んでいた。どこまでも元気なヤツだ。ハルヒの歓喜溢れる声を聴いて俺は安心した。これで、この無限ループからおさらばだ。
死ぬ
翌日、長門の部屋で、夏休みお疲れさまパーティー…もとい、打ち上げが開催された。
古泉が持ってきたアルコール入りジュースの助けもあり、長門以外の全員、今日までのハードスケジュールの疲れを感じさせないハイテンションで騒いだ。
日が沈みかけた頃、王さまゲームが開催された。
女王長門の命により、俺は朝倉事件に匹敵する、大ピンチを迎えたのだ。
長門「二番が三番にキス」
なんだと?今、キスという単語が長門の口から出たような…気のせいか?
キョン「すまん長門、よく聞こえなかったんだが、もう一度言ってもらえるか?」
長門「二番が三番にキス」
気のせいではないらしい。
古泉はいつものスマイルをどこに置いてきたのか、ただ絶句している。
朝比奈さんは酔っぱらっていて、状況が理解できていないみたいだ。酔っぱらている朝比奈さん、目が潤んで色っぽいです。
ハルヒもかなり酔っぱらているらしく、
ハルヒ「王さまの命令は絶対よ!二番は速やかに三番にキスしなさい!もちろん、マウス・トゥ・マウスでっ!」
俺は自分の引いたクジを見た。…三番。目を擦りもう一度見た。…三番。何度も見直したが、数字が変化することはなかった。
キョン「三番は俺だ」
二番はいったい誰だ?もしかして、マイ・スィート・エンジェル、朝比奈さんではなかろうか?俺は朝比奈さんの唇を見つめ、妄想を膨らませた。
古泉「二番は僕です」
全世界が停止したかに思えた。
俺と古泉はお互い青ざめた顔で見つめあった。
朝比奈「こうゆうのって、たしか、BLっていうんれすよね?キョンくん、古泉くん、がんわってくらさい」
朝比奈さん、いったい何をどう頑張ればいいんです?それと、BLなんて言葉覚えちゃダメですよ。
ハルヒ「古泉くん、ゴー!」
こらハルヒ、イエスマン古泉をあおるな。
古泉は近くにあった缶ビールの蓋をあけ、一気に飲み干した。古泉、お前はいったい何をしてるんだ?
古泉は覚悟を決めたような顔つきで、
古泉「王さまの命令は絶対です。覚悟してください!」
古泉がジリジリ近づいてくる。
キョン「やめろ古泉!それ以上近づく…うわっ」
俺は古泉に押し倒された。古泉の顔が近づく。俺は必死に抵抗した。
ハルヒは笑いながら、
ハルヒ「こらー!キョン!いつまで抵抗してんのよ!男らしく唇を差し出しなさい!」
お前は黙ってろ。そんな男らしさなんぞいらん。
朝比奈「キョンくん、なんらかジタバタしてますねぇ。はげしいのがすきなんれすかぁ?古泉くん、ふぁいとれす」
あなたも黙っていてください。俺はノーマルな男ですよ。
長門「ユニーク」
長門助けてくれ。朝倉のときのように、古泉から俺を…まさか、お前も酔ってるのか?
よくわかった…お前らみんな俺の敵だ。
俺と古泉が数分間格闘した末、俺は難とか古泉を引き剥がすことに成功した。
危なかった。
外はすっかり暗くなっていた。
完全な酔っ払いに変身してしまった、ハルヒと朝比奈さんは、タクシーで帰っていった。
長門は座布団の上に正座し、分厚い本を読んでいる。俺と古泉の二人は、散らかった長門の部屋を片付けていた。
古泉「どうでした、今日の打ち上げは?」
キョン「お前に襲われたことは、トラウマとして一生心に残るだろう」
古泉はいつもの笑顔で、
古泉「それは悪いことをしてしましたね」
お前、全く反省してないだろ?
キョン「ま、それ以外は楽しかったさ。ハルヒも満足したはずだ」
古泉「だと、いいですが」
古泉は長門に視線を向け、
古泉「長門さん、今日の打ち上げなんですが、何回目ですか?」
それは確かに気になることだが、その質問は、出来れば打ち上げ前にして欲しかったぜ。古泉、相変わらず詰めが甘い。そんなんだから、お前は俺にゲームで勝てないんだ。
長門は本から視線をそらさずに、
長門「今回が初めて」
古泉は息を吐いて、
古泉「それを聞いて安心しましたよ。もしかしたら、この無限ループから脱出できるかもしれませんね」
バイバイ高一の夏休み、フォエバー。
キョン「夏休みも終わりかあ。宿題どうすっかなあ」
古泉「僕も半分ぐらいしか終わってませんよ」
古泉は困った顔で、笑顔を作っていた。
宿題か、今からやっても終わりそうもない、素直に教師どもに頭を下げよう。谷口は終わったかな?あいつのことだからやってないだろ。長門は宿題なんてあっという間に片付けてしまいそうだ。俺の宿題もぜひ頼む。
長門「…………」
読書してる長門の姿を見て、訊きたくなったことがあった。
キョン「長門、今日は楽しかったか?」
長門「…………」
長門は無言でこくりとうなずいた。
3
8月30日正午過ぎ。SOS団、馴染みの喫茶店での出来事である。
ハルヒ「また明後日、部室で会いましょう」
そう言い、ハルヒは俺たち四人を残し、喫茶店を出ようとしている。
帰らせてはダメなんだ。また、同じ二週間を繰り返しちまう。
結局、俺は何も思いつかず、ハルヒを呼び止めることが出来なかった。
古泉「困りましたね」
声の聴こえた方に目をやると、古泉が困った表情の中にも笑顔を浮かべていた。
古泉「一つ思い付いたんですが、こうゆうのはどうでしょう?」
キョン「後ろから抱きついて、とかなんとか言ったら、殴る」
古泉「冗談も言わせてもらえませんか、残念です」
やはり、言うつもりだったか、何となくそんな気がしてたんだよ。
古泉「実は、打ち上げをしようと思い立ったんですが…」
古泉は長門の方に視線を向け、
古泉「長門さん、僕たちが明日、打ち上げをするとしたら、何回目になりますか?」
長門「358回目となる」
長門は、古泉に視線を合わさず答えた。
古泉「そうですか。残念です」
古泉は溜め息混じりに呟いた。
朝比奈「やっぱり、あたし、未来に帰れないんですね」
朝比奈さんが今にも泣き出しそうだ。そんな顔もかわいいです。
朝比奈「お父さん…お母さん…」
かわいい…じゃなくて、ここで、気の利いたセリフを言わなきゃ男じゃない。朝比奈さんを安心させてやる。
古泉「大丈夫です。きっと帰れますよ」
ちょっと待て古泉。今は俺のターンだ。優しい顔で朝比奈さんを見るな。朝比奈さんを慰めるのは、俺の仕事だ。
古泉「未来人である朝比奈さんが、ここにいらっしゃることが、未来が必ず存在する、という何よりの証だと思います」
確かにそうだが、本当にそうか?未来が本当に決まってるなら、未来人は何故過去にわざわざ来る?ハルヒ見物の観光のためだけにか?それはおかしい。やはり、自分たちに何か利益があるからだろ?おっきい方の朝比奈さんは俺に『白雪姫』のヒントをくれた。朝比奈さん(大)の世界にとって、ハルヒが世界を作り替えることが、不都合だったからヒントをくれた…うーん…わからん、考えるのは止めだ。俺の頭で考えても、まったくわからん。とにかく、古泉がこんなことに気付かないはずない。つまり、あいつは朝比奈さんのお株を上げたくて、先程のセリフを吐いたのだ。おのれ古泉、ちょこざいな。俺は古泉を睨みつけてやった。
古泉は俺の視線に気付くと、ウィンクを返してきやがった。気色悪い。そんなことは、女だけにやりやがれ。
結局、何の進展がないまま解散となり、俺たちは喫茶店を出た。
それぞれの帰路にばらけたとき、長門の声が聴きたくなって、前を歩く長門の背中に声が出てしまった。
キョン「長門」
長門「…………」
長門は、無表情無言で振り返ってくれた。
キョン「お前は、繰り返された夏休みを、マジで全部覚えてるんだよな?」
長門「そう」
キョン「お前はその繰り返しが、退屈だと感じたりしないのか?」
長門「…………」
長門の無表情の中にある、大きくて綺麗な瞳が、無言で俺を捕らえていた。長門、お前にだって、同じことの繰り返しはつまらないと感じるはずだ…いや、感じていると思う。なんとなくではあるがな。
俺の耳に辛うじて聴こえたのは、木々のざわめきにですらかき消されそうになる、長門の小さな声だった。
長門「……少しだけ」
4
8月30日正午過ぎ。SOS団、馴染みの喫茶店での出来事である。
ハルヒ「また明後日、部室で会いましょう」
そう言い、ハルヒは俺たち四人を残し、喫茶店を出ようとしている。
帰らせてはダメなんだ。また、同じ二週間を繰り返しちまう。
結局、俺は何も思いつかず、ハルヒを呼び止めることが出来なかった。
俺たち四人も解散し、それぞればらけた。俺はセーラー服姿の小さな背中を追った。
キョン「長門」
俺は、なんとなく長門と話がしたかったのだ。
長門「…………」
長門が振り返り、大きな瞳が俺を見ている。
さて、俺が長門を呼び止めたのは何でかな?もちろん、話がしたかったからだ。じゃあ、俺はいったい何を話すつもりだったんだ?俺が何か話しかけない限り、この無口少女は永遠に口を開かないかもしれない。
キョン「元気か?」
違う、俺が聞きたいのはそんなことじゃない。
長門「元気」
他に話すことがあるだろう。
キョン「平気か?」
これも、違う。
長門「平気」
キョン「そりゃよかった」
長門「そう」
アホか俺はアホなのか?こんな挨拶みたいなもんを言うために、長門を呼び止めた訳じゃないだろ。
『わたしの役割は観測だから』
頭の中に長門のセリフが思い浮かんだ。長門は、繰り返す夏休みを黙って傍観するだけ、知っていても何も言わないし、俺たちから聴いてこない限りは答えない。でも、本当は、そんな役割ほっぽり出して、暴れたり、わめいたりしたいんじゃないのか?
俺が長門のことを心配するのはおこがましいことだろう。そりゃそうだ、相手は出来ないことを探す方が難しいであろう、万能宇宙人だ。でも、それがどうした?仲間を心配して何が悪い?長門は俺の命の恩人だ。少しは役に立ちたいと思うのが筋だろ。
『YUKI.N>また図書館に_』
ハルヒと二人だけの空間に閉じ込められたとき、長門からの最後のメッセージが俺の頭に都合よく流れた。ちらりと、ハルヒとの忘れたい記憶が甦ってしまったが、今はどうでもいい。
キョン「明日、図書館に行かないか?」
今の長門には、気晴らしが必要だと俺は思った。俺だって、たまには長門の力になりたいんだぜ。
長門の頭がこくりと動き、いつものように短い言葉で、
長門「行く」
翌日の午前中、俺と長門は、前に不思議探索のときに訪れた市立図書館に来ていた。
長門は、暗闇の中で光を求める虫のように、本棚の方にふらふらと引き寄せられて行った。
俺は、持ってきた宿題をテーブルに広げた。開館間もないこともあり、夏休みだというのに人は少なかった。
宿題を始めて、15分後、ついに、俺の集中力が切れちまった。
すまん、言い直す。
宿題を始めて、15分後、早くも、俺の集中力が切れちまった。
でも、これは頑張った方である。だってそうだろう?誰だって、明日が来ないかもしれない、などと考えたら、宿題なんてやっていられない、特に、面倒なことを嫌う、キング・オブ一般人である俺なら尚更だ。
もし、明日が来るようなことがあれば、潔く先生がたに怒られるさ。もちろん、谷口を道連れにするのは規定事項である。
ところで、古泉と朝比奈さんは、宿題をやっているのか?同じく、明日が来ないかもしれない、と考えてる二人はどうする気だ?長門なんかは、9月1日になった瞬間にやり始めて、瞬きをする間にやつけてしまうんだろうな。
人生諦めが肝心、昔の人は言いました。俺も偉大な先輩たちを見習うことにする。宿題を鞄に押し込んだ。
正午になる少し前、手持ち無沙汰となっていた俺は、何気無く、本棚の前で立ち読みしている長門を眺めていた。
長門「…………」
見慣れた長門の制服姿だ。谷口的美的ランキング、A-の顔を見て、眼鏡を取った長門は、A+にランクアップしても問題ないのでは、と思ってしまったのは、俺の一時の気の迷いのせいなのかね。
長門が本を戻すのを見計らって、
キョン「長門、少し早いが飯食いに行こうぜ」
長門「…………」
無言の長門はこちらを見て、こくりとうなずいた。
昼飯は、図書館近くの飯屋に行くことにした。店内はほぼ満席状態だったが、幸いにも俺と長門が並んで座れる席が空いていた。飾り気がまったくなく、むしろ、古風をアピールしているようなお店だ。そのくせ、メニューの種類がマジで多い。しかも、和洋中三拍子揃っているとは珍しい。
俺は鯵フライ定食、長門は、牛丼、カリーハンバーグ、塩ラーメン、をそれぞれ単品で頼んだ。いったい、その小さな体のどこに、それだけ入るスペースがあるんだか。宇宙人の胃袋恐るべし。
定食に付いていた、味噌汁をすすりながら、長門の方に目をやった。素早い箸の動きが、リズミカルに料理を減らしている。箸の残像が見えそうだぜ。
不意に箸が止まり、
長門「食べる?」
箸に注目していたので、長門がこちらを見ていたことに気付くのが遅れた。俺が物欲しげに見えたらしい。長門の箸は、ハンバーグを一口サイズにしてつまみ上げていた。
キョン「喰う」
長門は、そのまま箸を俺の口元に持ってきて、ハンバーグを食べさせてくれた。
キョン「美味い」
肉汁を上手く閉じ込めた、絶品だった。でも、俺の鯵フライだって負けてないぞ、サクサクのホクホクだぜ。
キョン「俺のも食うか?」
長門「…………」
長門は、無言でこっくりとうなずいた。
俺は長門にお返しとばかりに、鯵フライを食べさせた。
キョン「美味いか?」
長門「おいしい」
何故か、回りの客や従業員から生暖かな視線を感じるが、気にしないでおこう。そんなことより、長門がおいしいって、はっきり言ってくれたことに、すごく驚いたのだ。
食事を終え、店を出ようと思ったとき、俺は、素早く長門の前に置いてある伝票を回収した。こうでもしとかないと、長門は俺の奢りを無言で拒否しそうだった。これぐらい払わせてくれてもいいだろ?今日は俺が誘ったんだ。
この店は、大当たりだった。今度は団員全員で来よう。古泉の奢りならなおのこと美味いだろうよ。
ふと、ハルヒの喜ぶ顔が浮かんだ。何故だ?
腹ごなしに散歩でもしようと提案したところ、即決でOKをいただいた。
歩きながら、俺は長門にいろいろ話しかけてみた。もちろん、返ってくるのは、短くて、いかにも長門らしい返事だけだった。無表情ながら、瞳の奥にある、心中を探ろうと努力してみたものの、俺の修行不足がたたり、なかなか感情が読めない。
そんな中で、一つ気付いたことがあった。長門は、猫に興味があるみたいで、通りすがりの野良猫を凝視していた。
キョン「猫、飼ってみたらどうだ?」
長門「飼えない、ペット禁止」
即答。
長門のマンションはペット禁止か、もし、我が家で猫を飼うことがあったら、長門を招待し、撫でさせてやろうか。
などと、いろいろ考えてるうち、図書館に戻っていた。
もはや、宿題をやる気にはなれなかったので、しばらく、ミステリー小説を読んでいたが、謎は謎のまま、夢という迷宮の中へ、
連日の疲れのせいか、目覚めたときには、閉館10分前だった。
長門「…………」
長門は、俺の前に座っていた。黒く輝く瞳が、こちらを伺っている様子だった。
何だか、長門に観察されてるような感じだが、俺みたいな一般人を、わざわざ、観察する必要なんてないよな?
閉館のアナウンスが流れ、俺たちは図書館を出た。
現在、俺は長門を自転車の荷台に乗せ、長門のマンションに向かっている。後ろにいるはずの長門の重さを感じないが、今さら疑問に思うのは止めよう。無言ながら、長門の優しさ、みたいなものを感じてしまう。人間の死の概念がよくわからん、などと、ほざいていたナイフ女とは違うのだ。
長門のマンションの前に到着して、長門は自転車を降りた。
キョン「長門、今日は付き合ってくれて、ありがとよ」
長門「別に、いい」
さて、ここで俺は長門に訊くことがある。それは何かって?答えは簡単だ。
キョン「長門、今日は楽しかったか?」
長門「…………」
長門は、無言でうなずいてくれた。
5
8月30日正午過ぎ。SOS団、馴染みの喫茶店での出来事である。
ハルヒ「また明後日、部室で会いましょう」
そう言い、ハルヒは俺たち四人を残し、喫茶店を出ようとしている。
帰らせてはダメなんだ。また、同じ二週間を繰り返しちまう。
結局、俺は何も思いつかず、ハルヒを呼び止めることが出来なかった。
俺たち四人も解散し、それぞればらけた。俺はセーラー服姿の小さな背中を追った。
なんとなく、退屈そうな長門がほっとけなくて、声をかけた。
キョン「明日、図書館に行かないか?」
今の長門には、気晴らしが必要だと、俺は勝手に思い込んでいた。
長門「…行く」
長門は短く応えた。
翌日の午前中、俺と長門は、市立図書館に来ていた。
この図書館で、長門に貸出カードを作ってから、もう3ヶ月以上経つ。まことに時の流れというのは早いものである。
長門は、早くも本棚の前で本読み人形と化していた。
俺は、持ってきた宿題をやつけようとしたが、まったくやる気が出ず、15分で宿題タイムは終了した。
午後1時ごろ、俺の前で読書している、長門の姿を何気に眺めていた。
長門「…………」
見慣れた長門の制服姿だ。こいつの制服以外の姿は、なかなかお目にかかれない。俺の頭の中の男の部分が、長門のコスプレ姿を連想させた。メイドの長門、ナースの長門、チアガールの長門、案外、バニーなんて似合うかもな。
長門で妄想中、ハルヒのバニー姿が思い出されたが、何故だ?
長門が本を閉じた。チャンス到来とばかりに、
キョン「長門、そろそろ飯にしようぜ」
長門「…………」
長門は無言で、頭を上下に動かした。
図書館を出て、近くにある古びた飯屋が気になったが、満席らしく店の外にも客がいる。炎天下の中待つのはごめんだ。
俺たちはさらに移動して、目についたファミレスを目指した。
ファミレスの中に入り、店員に空席へ案内されてるとき、聞き慣れた声が聞こえてきた。
国木田「あっ、キョン」
俺は声の聞こえた方へ振り返った。ファミレスの一つのテーブルを、二人で占拠していたのは、クラスメイトの谷口、国木田コンビだった。
谷口「よっ」
キョン「オッス、こんなところで会うとは珍しいな」
国木田「長門さんも、こんにちは」
長門「…………」
案内しようとしていた店員を追っ払い、俺は谷口の横、長門は国木田の横に着席した。
谷口「キョン、お前も隅に置けねえな」
キョン「何のことだ?」
谷口、お前の言いたいことはなんとなく理解できるが、ここはとぼけておこう。
谷口「そうか、お前ら、やっぱりそうゆう関係だったのか。この裏切り者」
お前と独り身同盟を結んだ覚えはない。
キョン「残念だが谷口よ。俺と長門は、お前が想像してるような関係じゃねえよ」
谷口「あの時から怪しいと思ってたんだ」
人の否定を無視するな。
国木田「あの時って、いつのことさ?」
国木田が会話に参加してきた。あまり話を引き延ばさないで欲しいものだ。
谷口「あれは夕日が美しい、放課後のことだった」
勝手に回想に入るな。
谷口「俺は、道行く美女たちを眺めながら、下校時間を満喫していた」
女性を変な目で見るな。捕まっても弁解してやらん。
谷口「その時、ふと神の御告げが聞こえたんだ。教室に戻れと」
お前に神の声が聴こえるもんか。
谷口「俺は御告げに従い、教室に戻ることにしたんだ。そして、教室にたどり着いた俺は、教室の扉を開いた」
素直に忘れ物を取りに教室に戻ったと言え。
谷口「その時、夕日をバックにした、ある二人の男女の姿が、俺の目に飛び込んできた」
お前は、変な歌を歌いながら教室に入ってきたな。
谷口「俺は驚いた。アホ面した男子生徒が、美少女を押し倒し、口付けを交わそうとしていやがった」
キョン「誰がアホ面だ!お前にだけは言われたくない!それに、キスもしてない!」
谷口のアホ話に、ついにツッコんでしまった。
国木田「なるほどね、それがキョンと長門さんだったんだね」
何がなるほどなんだ国木田?谷口が言ってるのは、妄想、フィクション、100%でたらめだ。
国木田「夕日が射し込む教室でキスなんて、キョンにしては大胆不敵で、ロマンチックだね」
だから、キスなんてしてない、俺は大胆でもロマンチストでもない。
谷口「だろ?若い二人の邪魔しちゃ悪いと思って、俺はすぐに教室を飛び出したのさ」
俺はけっけっけと笑っている谷口の肩を叩いた。とりあえず、話を無理矢理そらすことにした。
キョン「ところで、お前ら、今日はなんで一緒にいるんだ?」
国木田「今日は、谷口に夏休みの宿題を見せてたんだ。谷口のヤツ、全然やってなくてビックリだよ」
話をそらすことに成功した。国木田が呆れながら答えてくれた。
キョン「で、その宿題は終わったのか?」
谷口「まだ、半分も終わってねえ」
さすが谷口、我が同志よ。
谷口「お前は終わってんのか?どうせ、お前のことだから、やってないんだろ?」
ムカ、まったくもってその通りだが、お前に言われると腹が立つ。
国木田「多分、キョンは終わってると思うよ」
意外なことに国木田から、フォローが、
国木田「じゃなきゃ、長門さんとデートなんて、してないはずだよ」
フォローはいいが、話を元に戻そうとするのは止めてくれ。デートなんてしてないぞ。
谷口「デートか、羨ましいぜ」
谷口が羨ましそうな視線を送ってきたが、無視だ無視。長門も少しは弁解したらどうだ?
長門「…………」
長門はファミレスのメニューを無言で眺めてるだけだった。
キョン「デートじゃない。ただ、二人で図書館に行ってただけだ」
俺は弁明した。
谷口「二人だけで図書館ね。充分デートだろ」
谷口がすかさず反論。
キョン「団員同士で、絆を深めあっただけさ」
谷口「愛を深めあったの間違えじゃねえのか?」
再び、けっけっけと笑う谷口の肩を叩いた。今度は結構強めにな。
国木田「でも、キョン。夏休み最終日のデートが図書館だなんて、もう少しお洒落な場所は思いつかなかったの?」
決してデートではないのだが…しかし、国木田よ。長門が他に喜びそうな場所、俺には思い浮かばんぞ。
谷口「確かに、図書館はねえよな。若い高校生カップルが行く場所じゃねえな」
誰がカップルだ。もう一発叩いてやろうか?
キョン「だったら、お前らならどこに誘うんだ?」
俺はぶっきらぼうに訊いてみた。アホの谷口には期待してないが、そこそこ頭のいい国木田なら、俺よりは長門の頭の構造に近いきがするしな。
谷口「ゲーセン、カラオケ、映画、ショッピング…とまあ、いろいろあるだろ」
やはり、所詮は谷口だったか。お前の言ったほとんどのイベントは、この二週間で経験済みだ。
国木田「美術館とか演奏会とか、やっぱり芸術関係になるのかな、イメージとして」
芸術関係ね。ま、地球の文化を知ってもらうのに、芸術はうってつけかもな。しかし、国木田、お前の提案した場所はお洒落というよりは、地味の部類に入ると思うんだが、
長門「…………」
長門がメニューから視線をずらして、こちらを見ていることに気が付いた。長門が何を訴えているのか、なんとなく理解できたので、俺は呼び出しボタンを押した。
そう、長門は早く注文したかったのだ。
普通に美味かった食事を終え、しばらくまったりしている時に、谷口が暴走しだした。
谷口「よし決めた、俺は今からナンパする!」
キョン「いきなり、大声で何を宣言してるんだ」
俺は冷めた声で言ってやった。
谷口「ナンパだよナンパ。夏休み最後の一日ぐらい、女っ気のある充実した一日を送りたいんだ」
どうやら、谷口の心の声が、口に出てしまっているらしい。
国木田「宿題はどうするのさ?」
国木田は呆れた目で谷口を見ていた。
谷口「高一の夏休みはこれっきり、一度きりだ。宿題なんかやってられるか!」
宿題なんかやってられるか、その発言には大いに賛成だ。
谷口「キョンだけいい思いするのは、俺が許さん!」
別にいい思いなぞしとらん。
谷口「俺だって、一花咲かせたいんだ」
その花は、咲くことなく散ることになるだろう。
谷口「キョン、国木田、俺行ってくるぜ!男になってくる!」
そう言い残し、谷口は俺たちが座っている席から、少し離れたテーブルに向かって行った。
長門「面白い人」
長門が谷口の奇行を見ながら呟いた。確かに、アイツは見てる分には飽きないな。
国木田「どうやら、ここでナンパを始めるみたいだね」
国木田は呆れを通り越して、苦笑を浮かべている。
谷口が向かったテーブルには、二人組の女の子が座っている。二人とも、俺たちと同年代に見える。谷口的美的ランキングA、といったとこかな、なかなか可愛い。もちろん、朝比奈さんには及ばないが。とにかく、あの二人が谷口の獲物であることに間違いない。
キョン「国木田。成功率は何パーだ?」
俺は0%だと思うが。
国木田「谷口のナンパの成功確率ね。天文学的数値に等しいね」
と国木田がバッサリ答えた。
谷口への慰めの言葉を考えようか、それとも、からかいの言葉を考えようか、などと悩んでいるうちに結果がでた。
その時、谷口の頭上に、ナンパの神が舞い降りた。
なんと、谷口は奇跡を起こしたのである。谷口がこちらに向かってVサインを送っている。
キョン「そんな、アホな」
思わず独り言が出た。国木田も愕然としている。長門だけが無表情で、
長門「ユニーク」
などと呟いている。
谷口、お前をナメていたぜ。
谷口の作戦はこうだった。俺たちは、このファミレスで三対三の合コンを企画していた。しかし、当日になって、二人の女子がドタキャン。途方に暮れていたところに、彼女たちの姿が見え、谷口が頭を下げて新たな合コンメンバーへと導いた。つまり、足りなくなった合コンメンバーの穴埋めを頼むという作戦だ。
ちなみに、谷口の脚本では、俺と長門は既に付き合っていて、それぞれの友達を紹介しあうのが今回の合コンの目的だった、ということになっている。
あの一瞬でこんなシナリオを用意するなんて、谷口、お前は天才か?生まれて初めて、お前を凄いと思ったぜ。
国木田「すごいね。見直したよ谷口」
あの冷静な国木田ですら、谷口に称賛の言葉を送っている。
しかし、俺は空気を読まずに、この話を断ろうと考えていた。俺自身、合コンなんてしたことなく、どう接すればいいのかわからない。そしてなにより、コミュニケーション能力0の長門には、合コンなんてハードルが高すぎると思ったのだ。それに、設定とはいえ、俺みたいなのが彼氏というのは、長門は嫌なんじゃ?
よし、断ろう。俺が、歓喜してる谷口に死の宣告をしようとしたとき、
長門「わたしなら問題ない」
長門が、谷口への死の宣告を阻んだ。
キョン「長門、お前いいのか?合コンなんてできるのか?あと、恋人のフリとか?」
長門「…………」
長門はうなずき、
長門「少しだけ、興味がある」
と応えた。
長門が少なからず興味が芽生えたものを、俺が断る訳にゆくまい。俺は人生初の合コンに挑むことにした。
簡単な自己紹介と同時に、疑似合コンが始まった。始め、どうなるかとヒヤヒヤしていたが、谷口のくだらないボケと国木田の冷静なツッコミのおかげで、女の子たちは、なかなかの好印象を持ってくれてるみたいだった。彼女たちは、二人とも他校の同学年だった。
たまには、見知らぬ女子と話すのもいいもんだ。それにしても、今日の谷口は輝いている。今のコイツの一言一言が何故か面白い。
場がそこそこ盛り上がったときに、女の子の一人が、長門に質問した。
「長門さんは、キョンくんのどんなところが好きなの?」
いつの間にか、他校の生徒にまでアダ名で呼ばれるようになった自分が悲しい。しかし、今はそんなこと気にしている場合ではない。今回、俺と長門は恋人同士という設定だ。彼氏の好きなところを挙げる、本物の彼女なら簡単なことだが、偽の恋人、しかも、ロボットみたいに振る舞っている長門にとって、それは恐ろしく難しいことだと思った。
男三人が、必死で長門へのフォローを考えていると、長門は、目の前に置いてある、メロンソーダを見ながら語り出した。
長門「わたしは、『好き』の意味がよく理解できていない」
ヤバイ、長門のロボット語が始まってしまった。
長門「でも、」
長門は続けた。
長門「彼は、社交性のないわたしのために、図書館の貸出カードを作ってくれた」
その程度、お安いご用だぜ。
長門「彼は、わたしのことを心配して何度も話かけてくれた」
心配で何度も話しかけただと?そんな記憶はないが、長門のアドリブか?
長門「彼は、何回も図書館に連れていってくれた」
長門と図書館に行ったのは、今日で二回目のはずだが?
長門「彼はわたしを意識し、気にかけてくれる」
長門、演技だとわかっているが、テレるぜ。
長門「わたしは彼と一緒にいると、わたしの中にエラーが生じる。このエラーが何なのかは、わたしには理解できない」
エラーってなんだ?そのロボ語も演技に必要な単語なのか?
長門「しかし、エラーを生じると解っていても、わたしは、ときどき、彼のそばにいたいと思う」
そばにいたいか、嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。
長門「もし、この彼のそばにいたい、という思いが、『好き』という意味に該当するならば、」
長門が俺の方を見て、
長門「多分、わたしは、あなたの優しいところが好き」
黒曜石のように黒光りした大きな瞳が俺を見つめている。
演技とはいえ、面と向かって好きなんて言われたら、戸惑う。そして、なによりテレる。
数秒間、沈黙が続いた。
国木田「いやあ、長門さんは、本当にキョンのことが好きなんだね。感動したよ」
感嘆したような声で国木田が沈黙を破った。演技じゃなかったら、俺だって感動したさ。
谷口「キョンよお、そんなに思われて羨ましいぜ」
次に、谷口がニヤニヤしながら喋った。羨ましがるなよ。残念だが、これは演技なんだぜ。
女の子たちはキャーキャー騒いでる。やはり、女という生き物は、恋ばなが好きなんだな。もちろん、ハルヒは除く。アイツが恋ばなでキャーキャー言ってる姿は、不気味なだけだ。
不気味な生き物を想像していたとき、俺にも白羽の矢が立った。
「キョンくんは、長門さんのどんなところを好きになったの?」
女の子の不意を突いた質問だ。
なんとなく…、とは言えない雰囲気だ。こんなとき、古泉だったら当たり障りのない言葉と、ハンサムスマイルで上手く乗り切るんだろうな。ま、この場にいない、イカサマスマイルなんか当てにしても仕方ない。自分で乗り切るさ。
キョン「頼りになるところかな」
長門「…………」
無表情でメロンソーダを吸っている、文学少女を見ながら、俺は素直に答えた。
長門は朝倉のナイフから俺を救ってくれた。野球大会のときも、カマドウマのときも長門がいたから解決できたようなもんだ。本当に、頼りになるヤツなんだ。
谷口「それだけか?」
谷口が不満気味に訊いてきた。谷口よ、それだけじゃ駄目だと言いたげだが、何故だ?
国木田「そのセリフは、女の子に言ってもらいたいセリフだよね」
確かにそうではあるが、俺よりも長門の方が、はるかに男前なんだから仕方ないんだよ。
谷口「もっと他にあるだろ?」
うーん、他に思い当たることはないが、
谷口「幼い顔立ちで、大人しく弱々しい感じがして、守ってあげたくなるとか」
守ってあげたくなる?外見だけだとそう見えるのか?
生憎、俺は長門の性能を知ってるから、そんな風に見たことはないな。
谷口「目がくりっとして可愛いとか、たくさんあるだろ」
お前は、団員である俺よりも長門を観察してるみたいな言い方だな。
長門「………」
俺は谷口のセリフを頭に置きながら、長門を眺めた。
確かに、長門は可愛い部類にランクインするだろう。
もし、長門が宇宙人じゃなかったら、朝比奈さんみたいに守ってあげたいと、俺は思うんだろうか?
それ以前に、長門は男に守られて嬉しいと感じることがあるのだろうか。
もし、先程、長門が言ったことが演技じゃなかったら…
ま、ifストーリーを考察してもしかたない。
俺も谷口を見習って、場を盛り上げることに専念するか。
今日、奇跡を起こした谷口の踏ん張りにより、擬似合コンは楽しく終了した。
谷口と国木田は、しっかり相手の女の子たちと連絡先を交換していたみたいだ。
いつの間に?待てよ?
ひょっとして、俺はチャンスを逃したのか?
面白い
期待
>>25~27の皆様。
アドバイスありがとうございます。
まあ、いいさ。長門の意外な一面も見られたし、楽しかったしな。
もう一度、合コンをする機会があったなら、次こそはメルアドGETだぜ。
谷口、国木田コンビに別れを告げ、長門を俺専用チャリで、長門の住んでいるマンションまで送ることにした。
解散時の谷口の勝ち誇ったニヤケ顔が、うっとおしく頭にある。
明日もアイツのニヤケ面と、自慢話に付き合うことになるんだろうな。
やれやれ。
…明日か。
今さらながら、明日が来ないかもしれないことを思い出した。
長門「………」
後ろにいるであろう、長門のことを考えてみた。
長門は、また同じ二週間を過ごすことになるのか。
長門からすると、もう500年以上になるのか。
俺には今一実感が湧かないし、危機感を覚えない。
古泉は、普通の人間の精神では持たないと言っていたが、長門は本当に大丈夫なんだろうか?
交差点に差し掛かり、赤色の信号のせいで、俺たちは自転車を降りることになった。
長門「………」
無言で、青色に変わる信号を待つ長門に訊きたいことがあった。
キョン「なあ」
長門「………」
キョン「お前は、毎回、俺たちが気づくまで、二週間ワルツを黙って見てるのか?」
長門「そう」
キョン「お前は、自分から変えてみたいとか、思わないのか?」
数秒間の沈黙の後、長門は呟いた。
長門「解らない」
信号が青になり、俺たちは目的地を目指した。
『解らない』か。解らないってのは、多分、長門自身がどうしたいのか解らないのだろう。
キョン「たまには、自分のやりたいように、自由に生きてみたらどうだ」
自転車を走らせながら、そう吐いてみた。
我ながら、情けないセリフだと思う。
長門「わたしの役割は観測だから」
予想してた通りの返事だ。
キョン「そうか」
こんなことしか言えない、自分の頭の無さが、かなり憂鬱だ。
目的地であるマンションに到着し、長門は俺のチャリから降りた。
入り口に向かう長門の背中に、俺は訊ねた
キョン「長門、今日は楽しかったか?」
長門「………」
振り向いた長門は、無言でこくりとうなずいた。
朝倉涼子をどこで登場させよう?
このスレのカプは
キョン長なのか?
それともキョン朝なのか
6
8月30日正午過ぎ。SOS団、馴染みの喫茶店での出来事である。
ハルヒ「また明後日、部室で会いましょう」
そう言い、ハルヒは俺たち四人を残し、喫茶店を出ようとしている。
帰らせてはダメなんだ。また、同じ二週間を繰り返しちまう。
結局、俺は何も思いつかず、ハルヒを呼び止めることが出来なかった。
俺たち四人も解散し、それぞればらけた。
俺はセーラー服姿の小さな背中を追った。
なんとなく、退屈そうな長門がほっとけなくて、声をかけた。
キョン「明日、図書館に行かないか?」
今の長門には、気晴らしが必要だと、俺は勝手に思い込んでいた。
長門「……行く」
長門は短く応えた。
>>32
目指しているのは、ハーレムルートです。
キョンハル、キョン長、キョンみく、キョン朝、キョン鶴、キョン谷、キョン国を目指してます。
が、書いてる内に、変わるかもしれません。
一つだけ確かなことがあります。
古キョンは絶対認めない!!
谷と国はいるか…?
>>34
成る程、つまりキョン古はアリなんだな
荒キョンはないんですか(迫真)
キョン森が無いぞゴルァ
翌日の午前中、俺と長門は、市立図書館に来ていた。
長門と時間を過ごすなら、やはり、ここが一番だろう。
長門といえば本、長門といえば読書なのだ。
長門は、早くも本棚の前で読書マシーンと化していた。
俺は、持ってきた宿題を片付けようとしたが、15分でギブアップ。
宿題を鞄に詰め込み、俺も長門に見習って読書することにした。
SF小説を読みながら、俺は暗闇の中に溶け込んでいった。
連日の疲れもあり、俺は眠かったのだ。
長門「………」
目が覚めたとき。
俺の前には、俺を見つめている長門の姿があった。
俺は何気に携帯を見てみた。
ディスプレイの右上に、14:27と表示してあるのを確認した。
結構な時間をだ眠に費やしてしまった。
キョン「すまん、長門。大分、遅くなったが飯にしないか?」
長門「………」
長門は無言で頷いた。
>>35
いる。
やはり、びーえる要素は織り込まないといけません。
>>36
ナシ。
今回のスレの題名を『ガチホモじゃない古泉』にしようか迷ったぐらいです。
>>37
すいません。
わかりません。荒キョン?もしかして、スネキョンのこと?
>>38
うん、それ無理。
森さんってアニメではちょろんとしかでてないので、妄想が足りません。
キョン佐、キョン橘、キョン藤、キョン九、キョン岡、キョン渡もねーぞコルァ
俺たちは、ファーストフード店で、遅い昼飯をとることにした。
長門のトレイには、大量のバーガーが乗っていて、ピラミッドが形成されている。
10個以上は確実だ。
心の中で、『いただきます』をして、いざ食べようとした、まさに、その瞬間。
俺の耳に女神の囁きが聞こえた。
朝比奈「あ、キョンくん」
振り向かなくても俺には解る。
このカナリアのようなお声の持ち主はマイ・スィート・エンジェル、朝比奈さんに違いない。
キョン「こんにちは、朝比奈さん」
朝比奈「こんにちは、キョンくん、長門さん」
長門「………」
こら、長門。たまにはちゃんと挨拶を返しなさい。
朝比奈「あのぉ、お二人は…そのぉ、もしかして、デートですか?」
朝比奈さんがモジモジしながら訊いてきた。
かわいい。
キョン「いえいえ、断じて違いますよ。ただ、二人で図書館に行ってただけですよ」
俺は釈明した。
朝比奈「そうなんですか?」
キョン「はい、それで、今から遅い昼飯を二人でいただくところです。朝比奈さんは、ここへはお一人でいらしたんですか?」
朝比奈「いえ、お友達と一緒にです。今から、お友達と三時のおやつです」
はい?三時のおやつ?
でも、かわいい。
キョン「おやつ…ですか?」
朝比奈「はい、おやつです。お休みの日は、三時になったらおやつを食べることが、この国の常識だとお聞きしています」
常識だと?確かに三時のおやつとはよく言われるが…
キョン「その常識は誰に聞いたんです?」
まさか、ハルヒか?
朝比奈「お友達の鶴屋さんにです」
>>41
了解。
今晩、古本屋で分裂と驚愕立ち読みしてきます。
キョン岡は認めねーよ。
鶴屋さんがでないだと?
にょろ~ん
他所のハルヒSSで面白いのを読めばわかる
./ / / \ ヽ \
/l゙ / / リ リ ハ、 ヽ \ 、 `、 ヽ
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l゙ .l / / / // // / | | ゙、 丶 ゙、 ゙、 ゙i
.| │ / // /l / // ヽ i ゙、 ゙、 ヽ |
│ | ハ /,,,////"ヽ;;;,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,_.,_ \ ヽ ゙、 |
ヽ ` ノ;;;;ヽ;ノ;;;、 "'''''''''''''''''''"""゙゙"ヾ、゙ヽ、 |
ヽ ノ ,,r''''ー、 /⌒゙゙`ー 、_ ゙ヽ、゙ヽ、 /゙ヽ i'
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ヽ、ト-'" ;';';'O) ヽヽ / ;';';';';';' ノ=ー- ミ /ヽ ゙i | /
,) ヽ ';';';'ノ, ゝ `゙―ー"' ''' ミ ノ | | /
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゙、 ( 丿` ' , ノ リ |ヽ、__,,r''" / あーさーくーらー
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ヽ ー-ー _/ | ハ/
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鶴屋さん…。
確か、野球大会のときに助っ人として出てくれた、あの長い髪の人のことかな。
鶴屋「みくるーっ!」
そうそう、こんな感じの元気な声の人だった。
朝比奈「鶴屋さん。こっちです」
朝比奈さんの案内する声に引かれ、鶴屋さんは俺たちの方へ向かってきた。
鶴屋さんの持ってるトレイには、長門同様にバーガーピラミッドが建設されていた。
鶴屋「やあ!こんにちはっ。キョンくんに、有希ちゃん!」
と、鶴屋さんがハイテンションで挨拶してきた。
キョン「こんにちは」
長門「………」
だから、長門よ。挨拶ぐらい返しなさいって。
鶴屋「んーっ?今日は二人でデードなのかなっ?」
キョン「違いますよ。二人で図書館に行ってただけですよ」
朝比奈さんのときと同じように、俺は釈明。
鶴屋「二人でっ?図書館にっ?でも、デードじゃないって?」
鶴屋さんは面白そうに俺を見てきた。
鶴屋「あっはは。そうしとこうか」
この人は、いつもこのテンションなんだろうか?
その元気を俺にも分けてください。
鶴屋さん…。
確か、野球大会のときに助っ人として出てくれた、あの長い髪の人のことかな。
鶴屋「みくるーっ!」
そうそう、こんな感じの元気な声の人だった。
朝比奈「鶴屋さん。こっちです」
朝比奈さんの案内する声に引かれ、鶴屋さんは俺たちの方へ向かってきた。
鶴屋さんの持ってるトレイには、長門同様にバーガーピラミッドが建設されていた。
鶴屋「やあ!こんにちはっ。キョンくんに、有希ちゃん!」
と、鶴屋さんがハイテンションで挨拶してきた。
キョン「こんにちは」
長門「………」
だから、長門よ。挨拶ぐらい返しなさいって。
鶴屋「んーっ?今日は二人でデードなのかなっ?」
キョン「違いますよ。二人で図書館に行ってただけですよ」
朝比奈さんのときと同じように、俺は釈明。
鶴屋「二人でっ?図書館にっ?でも、デードじゃないって?」
鶴屋さんは面白そうに俺を見てきた。
鶴屋「あっはは。そうしとこうか」
この人は、いつもこのテンションなんだろうか?
その元気を俺にも分けてください。
というわけで俺たち四人は今、同じテーブルで飯を食っている。
まあ、鶴屋さんと朝比奈さんはおやつらしいが。
しかし、鶴屋さんの食べてる量を、おやつと言ってしまっていいのだろうか?
ハイテンションを維持するには、あれぐらい食べないといけないのか?
長門「………」
無言の長門がピラミッドを破壊していく。
長門も食欲旺盛なのだから、鶴屋さんの一割でいいからハツラツとしてもいいだろうに。
鶴屋「キョンくんたちは、この後、どうするにょろ?」
ピラミッドを更地にした、鶴屋さんが訊ねてきた。
『にょろ』って、いったいどこの方言ですか?
キョン「図書館に戻ろうと思ってます」
長門は、本がたくさんある空間が好きだろうし。
キョン「鶴屋さんたちは、この後、どうされる予定ですか?」
鶴屋「買い物だよっ。服屋行って、みくるを着せ替え人形にして遊ぶのさっ」
朝比奈さんを着せ替え人形にして遊ぶ…いかん、俺の頭の中が一気にエロスになった。
不可抗力で覗き見した、朝比奈さんの下着姿が脳内再生された。
鶴屋「おやおや?キョンくん、今何を考えたのかなっ?頭にみくるのこっぱな画像でも浮かんだかい?」
まずい、鶴屋さんに勘づかれた。なかなか鋭いお方だ。
早く弁解を。
鶴屋「どうやら、図星にょろね」
ちくしょう。何も言い返せねえ。
長門、頼むフォローしてくれ。
長門「………」
長門は、完全に無関心を貫いている。ちくしょうめ。
困っている俺に、女神の救いの手が、
朝比奈「つ、鶴屋さん」
鶴屋「なんだい?みくる」
朝比奈「キョンくんは、そんなエッチな人ではありません」
弁護ありがとうございます、朝比奈さん。
でも、すいません。俺も思春期真っ盛りの、男子高校生なんですよ。
エロスな妄想ぐらい許してくださいね。
鶴屋「にゃははは。甘いっさ、みくるっ!キョンくんも立派な男子高校生にょろ」
はい、健全な男子高校生です。
鶴屋「男子高校生は、すきあらば、エロエロ妄想する生き物さね」
はい、まったくもって、その通りでございます。
朝比奈「そうなんですかぁ。キョンくん。そのぉ、あたしの、は、恥ずかしい格好を想像しましたか?」
はい、想像しました…とは言えない。
キョン「…少しだけ」
朝比奈「………」
朝比奈さんの顔が、みるみる真っ赤になった。
鶴屋「キョンくんはなかなか正直者だねっ!お姉さん好印象だよっ!」
好印象ですか。素直に喜べないのはなんでかな?
鶴屋さんのおかげで、俺のHPは限りなく0に近づいた。
これ以上、HPを減らされるのは危険だ。
長門「………」
ケタケタ笑ってる鶴屋さんと、耳まで真っ赤な朝比奈さんをほっといて、俺は無言でシェイクを吸っている、無口少女を眺めた。
見慣れた長門の制服姿だ。
長門の制服以外の姿は、めったにお目にかかれない。
長門には延命させてもらった恩もあるから、服でもプレゼントしようか。
だが、いつも制服ばかり着ている長門に、お洒落の概念があるとは思えない。
同じ宇宙人でも、あのキラーマシーン朝倉なら、服をプレゼントしたら喜びそうなんだがな。
長門は、服なんか渡しても嬉しくないかもしれん、やはり、無難に本を買ってやった方が喜びそうだ。
しかし、こうやってじっくり見ると、長門は可愛いな。
谷口的美的ランキングA-は伊達じゃない。
それだけに、長門がいろんな服を着ようとしないのは、もったいないと俺は思う。
盆踊りのときに見た、長門の浴衣姿は、朝比奈さんとは違った魅力があったのだ。
長門の浴衣姿を想像してるのに、ハルヒの浴衣姿が浮かんだのは何故だ?
鶴屋「有希ちゃんは、休みの日でも制服なんだねっ」
どうやら、鶴屋さんの興味が、俺から長門に移ったらしい。
これで、俺のHPの心配は無くなった。
長門「………」
長門よ。仮にも上級生が話しかけてきてるんだから、少しは反応しなさい。
鶴屋「でも、せっかくのデートにょろ。お洒落した方が、キョンくんも喜ぶよっ。有希ちゃん元々かわいいし、かわいい服着たら、めがっさかわいくなると思うよ」
まるで、俺の頭の中をトレースしたような言葉が、明るい上級生の口から出ていた。
この先輩は、エスパーかなんかなのか?
だが、断じてデートではないとだけ言っておこう。
長門「………」
相変わらず、無言を決め込む長門。
多分、長門の頭の中には、『お洒落って何?』っていう疑問文が浮かんでいるであろう。
鶴屋「キョンくんも、お洒落な有希ちゃんを見てみたいと思わないかなっ?」
再び、俺に会話が舞い戻ってきた。
確かに、長門の私服というのは見る価値があると思う。
キョン「そうですね。見てみたいですね」
俺は正直に答えた。
鶴屋「キョンくんは、本当に正直者だねえ。さらに好感度、アップアップだっ!」
普段は、ひねくれ者なんですよ。
鶴屋「うん、だから有希ちゃんは、この後、あたしたちと一緒に買い物に行くことを、お勧めするにょろ」
これは素晴らしい申し出かもしれない。
長門の洒落た姿を見るというのは、魅力的であり、そして、他者と接することで、長門が欠落しているであろう社交性が、少なからず身につくような気がした。
長門「………」
長門は無言で俺を見ている。
気のせいかもしれないが、俺の許可が欲しいみたいに感じる。
キョン「みんなでショッピングしようぜ、長門」
俺は長門を促した。
長門「………」
長門は無言でこくりと頷いた。
>>47
鶴屋さんしんどい。にょろの使い方とか、いまいちわかりません。
>>48
スモークチーズはあるかい?
>>49
読んでみたけど、長門の呼び方が、有希ちゃん、長門ちゃん、長門っち、有希んこ、とたくさんあって正解が解りませんでした。
>>50~>>52
誰の顔?朝倉さんだったら、本気で怒るよ。
誰か鶴屋さんのしゃべり方と、鶴屋さんの長門の呼び方を教えてください。
ゆきっこだった気がす
フード店を出た俺たち四人は、婦人物衣料の量販店に入った。
鶴屋「うん、これなんかみくるに似合いそうだねっ。こっちは、有希ちゃんに合いそうだっ。ささ、試着室へごーっ!」
鶴屋さんは、素早く朝比奈さんと長門の服を選び、二人を試着室に追いやった。
鶴屋「キョンくん、お姉さんのコーデを堪能するっさ!二人の変身を見て、悶えるにょろ」
ええ、期待させてもらいますよ。
ちょっとだけ待って、二人がほぼ同時に試着室から出てきた。
鶴屋「うん、二人ともめがっさ似合ってるねっ。キョンくんもそう思わないかなっ?どうにょろ?」
鶴屋さんが得意気な笑顔で訊いてきた。
キョン「はい。それはもう」
鶴屋さんのコーディネートは素晴らしく、俺は素直に喜んだ。
朝比奈「えへへ」
朝比奈さんは照れ笑いを浮かべていた。
朝比奈さんさすがです。エクセレントです。お美しいです。
長門「………」
制服姿じゃない、無表情の宇宙人を見た。
かわいいぞ、長門。
せっかく先輩に選んでもらったんだから、少しは嬉しそうにしろ。
鶴屋「つーこって、次行ってみよっか!」
鶴屋さんは再び、とんでもない素早さで二人の服を選び、再び、二人を試着室に導いた。
鶴屋「次もめがっさ期待するにょろ」
鶴屋さんの眼力は正確だ。
ちゃんと、男目線を理解していらっしゃるようだ。
次も期待してしまう。
鶴屋さんの着せ替えごっこが、しばらく続いた。
女物の洋服が立ち並ぶ棚の周囲をウロウロしてると、俺は気になる服を見つけた。
これ、長門に似合いそうだな。
キョン「すいません、鶴屋さん。次、長門にこれを着てもらいたいんですが、いいですか?」
鶴屋「水色のミニワンピースだね。涼しそうで、今の季節にピッタリだっ!」
俺は選んだ服を長門の前に持っていき、
キョン「これ、お前に似合うと思ったんだ。よかったら着てみてくれないか?」
長門は服を受け取り、
長門「着てみる」
と、無表情で返し、試着室に向かった。
鶴屋「キョンくんのお手並み拝見だねい。有希っこに似合うといいねっ」
朝比奈「うふ。楽しみですね」
上級生二人が会話している。
ただなんとなく選んだだけなので、あまり、期待しないでください。
長門「………」
長門が試着室から出てきた。
長門を見た俺は、素直な感想が出た。
キョン「長門。似合ってるぞ」
長門「そう」
無表情なのがちと残念ではあったが、それでも、心なしか長門が嬉しそうに見えたのは、俺の自意識過剰かな。
俺は、こっそりそのワンピースを買った。
何故こっそり買ったかって?
答えは単純だ。
朝比奈さんにも、服を買ってあげられるだけの、持ち合わせがなかったからだ。
すいません。朝比奈さん。甲斐性なしで。
俺には、長門の分だけで精一杯です。
その後、俺たちは服以外の買い物を済ませ、先輩方二人に別れを告げた。
俺は長門と一緒に、長門の住んでるマンションまで帰った。
マンションの前で、ワンピースの入った袋を俺は握りしめ、
キョン「これは俺からのプレゼントだ。これを着たお前は、かわいかったぞ。たまには、制服以外の姿も見せてくれると嬉しい」
と言って、長門に渡した。
長門「………」
少しは、長門の反応を期待したんだが、ま、こんなもんだろ。
最後に俺は、無言の長門に訊いてみた。
キョン「長門、今日は楽しかったか?」
長門「………」
しばらくの沈黙の後で、長門は言ってくれた。
長門「今日も楽しかった」
>>59
ゆきっこか。助言ありがとうございます。
ゆきちゃんマジ天使
7
8月30日正午過ぎ。SOS団、馴染みの喫茶店での出来事である。
ハルヒ「また明後日、部室で会いましょう」
そう言い、ハルヒは俺たち四人を残し、喫茶店を出ようとしている。
帰らせてはダメなんだ。また、同じ二週間を繰り返しちまう。
結局、俺は何も思いつかず、ハルヒを呼び止めることが出来なかった。
俺たち四人も解散し、それぞればらけた。
俺はセーラー服姿の小さな背中を追った。
なんとなく、退屈そうな長門がほっとけなくて、声をかけた。
キョン「明日、図書館に行かないか?」
今の長門には、気晴らしが必要だと、俺は勝手に思い込んでいた。
長門「行かない」
長門に拒まれた。
俺は長門に拒まれたことが、死ぬほどショックだった。
>>64
ゆきちゃんは天使なのは当然。だが、この物語のメインヒロインは、朝倉さんである。
ここまで、頑張って書いてみたけど、長門をキョンに惚れさすのって難しいですね。
心が折れて、立て逃げモードに入りそうです。
カレーあげて、本あげて、優しくしてあげ、感情を学ばせればあるいは
朝倉さん(真打ち)はよ
充分スレタイ味わってるような>変化のない観察対象に飽き飽き
朝倉さんもこんな感じだったのかな
長門を気遣ったつもりが、拒否られるとは。
俺はとんだピエロだぜ。
グランド・キャニオンに突き落とされたように、がっくり落ち込んでいる俺の元に、冷血人造人間が近づいてきた。
なんだ長門?俺のライフはもうないぜ。
トドメを刺すつもりなのか?苦しまないように頼む。
長門「………」
無言無表情のアンドロイドは、俺の目の前に紙切れを差し出した。
目の前に出された紙切れを凝視した。
どうやら、栞のようだが、何か書いてあるぞ。
俺はその栞を手にとって、読んだ。
『八月三十一日午後一時
光陽園駅前公園にて待つ』
>>70
変えなくていいから!期待してるんだから!
キョン「長門、これは?」
長門「待っている」
俺は詳しい詳細を教えてもらおうとしたが、長門は一言呟き、去っていった。
なんにせよ、長門に完全に拒絶されてる訳ではないので、俺は安堵の息を吐いた。
俺のライフは少しだけ回復した。
俺は家に帰り、ベッドに寝転びながら、先程、長門にもらった栞を眺めていた。
前にもこんなことがあった。
あのとき、長門のとんでも告白を聴いて、その内容を俺は全く信じていなかった。
そりゃそうだ、いきなり、自分は宇宙人に作られた人造人間です。
って言われて、すぐに信じられるヤツなんていないだろう。
そんなヤツがいるなら、ここに来い、いい病院紹介してやるから。
俺が長門の電波話を信じるきっかけになったのは、ナイフ女が起こしたある事件だ。
『あなたを殺して凉宮ハルヒの出方をみる』とかなんとか言って、俺にナイフを向けて突進してきた女。
谷口的美的ランキングAA+、クラスの男どもの高翌嶺の花、そして、俺を殺そうとした女、朝倉涼子が起こした事件。
その事件のせいで、長門が宇宙人か何かの関係者であることを納得せざるおえない状況になったのだ。
>>71
つ、つ、ツンデレだと!?
それは、つまり、『朝倉涼子を降板させ、凉宮ハルヒをメインヒロインにしろ』って、ことですかい?
長門が喜びそうなこと…
ダメだ。まったく思い付かん。
そもそも、ひねくれ者の俺は、誰かを喜ばせてやろうと思ったことはあれど、それを実行に移したことはないんでね。
女の子を喜ばす方法なんて知らん。
困ったときの長門大明神。長門に相談し…
アホか、俺はほんまもんのアホなのか?本人に聞いてどうする。
谷口か国木田あたりに相談…
うん、それ無理。
あいつらだって、俺と同じで女の子の扱いなんて解らんはずだ。
そもそも長門を『女の子』と見ていいのか?
ほとほと困り果てたとき、俺の脳内に、いけすかないイカサマスマイルが描かれた。
古泉『どうも。古泉です。あなたから電話とは珍しいですね』
キョン「ああ、不本意ながら、他に相談する相手が思い付かなくてな」
俺はエセスマイル野郎に電話をかけていた。
古泉『長門さんがらみのご相談でしょうか?』
お前は超能力者か?
いやいや、こいつはマジもんの超能力者だったな。
キョン「なぜ解ったのか、理由を聞かせてもらおう?」
古泉『あなたが長門さんのことを、心配そうな顔で見てたのが気になってたんですよ』
どうやら、俺は解りやすい顔のようだな。
古泉『だから、カマをかけてみたんです。確信はありませんでしたが』
その駆け引きを、こんなところで発揮させずに、お前の大好きなゲームで発揮させることをお薦めするね。
古泉『それに、僕の目から見ても、最近の長門さんは、退屈そうに振る舞っていらっしゃるように見えましたから』
こいつも長門の微妙な感じに気付いていたとは、意外だな。
キョン「それだけか?」
古泉『あと、機関の方からある報告がありましてね。長門さんを図書館に誘おうとして、撃沈した勇気ある若者がいたと』
ぐはっ。俺のライフが再びなくなりかけた。
古泉『あの長門さんをデートに誘おうだなんて、正に勇者の諸行ですね』
古泉、その勇者とは俺のことだ。
キョン「なあ、古泉。お前はプライバシーっていう、言葉の意味を知ってるか?」
古泉『確か、他人の干渉を許さない、各個人の私生活上の自由、だったと思います。それが何か?』
キョン「それが何か?…じゃねえ!殴るぞっ!」
俺にはプライバシーの権利もないのか?
古泉『冗談です。そのとき、あなたと長門さんの近くに、たまたま、機関の調査員がいただけです。常にあなたを監視してる訳ではありませんので、ご安心ください』
本当にたまたまなのか?
たまたまで会話の内容まで解るものなのかね?
キョン「素直に安心できないが、まあいい。ご察しの通り、長門のことで相談があるんだ」
古泉『力になれるかどうかは判りませんが、お聞かせください』
なんだか、楽しそうだな。
キョン「明日、長門と会う約束をしてるんだ」
古泉『おや?デートのお誘いは成功したんですね。報告とは異なりますね』
断じて、デートではない。
キョン「いや、俺からは図書館に誘ったんだが、それは断られた」
あれはかなりショックだったぜ。
キョン「その後で、今度は長門から明日会わないかと、逆に誘いを受けたんだ」
正確には誘われた、じゃなく栞を渡されただが。
古泉『それはそれは、おめでとうございます』
何がめでたいんだ?
古泉『なるほど、あなたの相談がなんなのか、解りましたよ』
そんなに俺は解りやすいのか?
キョン「本当に今の短い文章だけで、解ったのか?」
古泉『はい』
自信アリ、みたいだな。
キョン「じゃあ、聴かせてもらおう」
古泉『では、ご清聴よろしくお願いいたします』
本当に楽しそうだな。
古泉『あなたは、どこか退屈そうにしている長門さんの気晴らしのため、長門さんを図書館にお誘いしました』
ああ、そうだとも、こっぴどくフラれたがな。
古泉『ところが、その野望は絶たれてしまいました。他ならぬ、長門さん自身によってです』
野望とは何だ?親切心と言ってくれ。
古泉『しかし、神はあなたを見捨てませんでした。フラれた直後、今度は長門さんの方からアプローチがありました』
あれをアプローチなんて、お洒落な言葉にしていいのかは判らんが。
古泉『美少女からのお誘いです。あなたは多少なりとも、喜びを感じたはずです』
確かに、俺のライフが回復したのは事実だ。
しかし、古泉よ。お前も谷口同様、長門を美少女に位置付けしてるんだな。
古泉『しかし、あなたの中にある種の戸惑いが生まれてしまいました』
相変わらず、もったいぶった喋りをするヤツだな、お前は。
古泉『長門さんのために何かしてあげたい。そんな気持ちの表れから、長門さんを図書館に誘うという、最も長門さんが喜びそうな行動をあなたはとられた』
大層な物言いだな。そこまで深く考えてないぞ。
古泉『しかしながら、その虎の子である図書館が封じられてしまいました。あなたは他に、長門さんを喜ばせるような手札を持っていないと考えられます』
悔しいが、その通りだ。
古泉『戸惑いの正体は、せっかく明日長門さんに会えるのに、自分は何もしてあげることができないという、あなたの考えです』
だから、そこまで深く考えてない。
古泉『だから、僕に相談しようと思い立った。相談の内容はおそらく、図書館以外に長門さんを喜ばせるもの、もしくは、楽しませることができるもの、を教えて欲しい。違いますか?』
ようやく、古泉の長話が要点をまとめたようだ。
キョン「ああ、悔しいが、お前の推理は正しいよ」
超能力者なんてやめて、いっそ探偵にでもなったらどうだ。
古泉『正解を言い当てれたことに、今の僕は、たいそう嬉しく思っています』
本当に嬉しそうだな。
電話で話してるせいか、普段のイカサマ臭がしない。
キョン「早速だが、俺の相談事に対する回答を貰えると助かる」
今度は手短に話してくれよ。
古泉『長門さんに誕生日をプレゼントするんです』
誕生日をプレゼント?何言ってんだコイツは?意味不明理解不能。
キョン「お前らしくない真っ直ぐな回答なんだが、俺には理解しかねる」
古泉『そのままの言葉の意味ですが、プロセスをお聞きになりますか?』
プロセスか、長くなりそうだな。
キョン「誕生日をプレゼントって、俺が長門の誕生日を勝手に決めるってことか?」
古泉『その解釈で間違いありません』
キョン「長門にだって、誕生日ぐらいあるだろう?それを俺が勝手に上書きしていいのか?」
古泉『では、長門さんの誕生日はいつですか?』
キョン「知らん。長門本人に聞け」
古泉『では、長門さん本人に聞いたとします。どのような答えが返ってくると思いますか?』
キョン「俺は長門じゃないから、解るわけないだろう」
古泉『これは、僕の推測ですが、誕生日はいつですか?と聞かれた長門さんは、一言、「わからない」、と答えると思います』
誕生日がわからない?そんなことあるのか?
キョン「誕生日なんて、学生証見たら一発で解るだろう」
古泉『それが、本当の誕生日だと言えますか?』
本当の誕生日?どうゆう意味だ?
キョン「お前の言っていることは、さっぱり解らん」
古泉『長門さんは、実年齢は三歳ぐらいなので、学生証の生年月日は偽証だと考えられます』
そういえば、そうだった。
『あなたの三年あまりの人生が』
と、ナイフ女が言っていたのを思い出した。
キョン「だったら、長門が造られた日でいいんじゃないのか?」
古泉『長門さんの造られた日、まあ、それでも構いませんが、それだと面白くありませんね』
古泉はイキイキと話してる。やはり、楽しそうだ。
キョン「何が面白くないんだ?」
古泉『それだと、長門さんの誕生日というよりも、長門さんの製造日になってしまいます』
確かに、製造日という響きはなんか嫌だ。
古泉、少しだけお前の言いたいことが解ってきたぜ。
キョン「製造日はいつ?と聞かれれば、長門は答えられるが、誕生日はいつ?と聞かれたら、長門はわからないと答える、お前はそう言いたいんだな」
古泉『はい、その通りです』
古泉はイキイキと応えた。
古泉『誕生日は、人が生まれた日であり、毎年迎える記念日でもあります』
キョン「そんなことは知っている」
古泉『僕らの仲が今よりさらに深まり、お互いの誕生日を祝い合うことになったとき、長門さんにだけ誕生日がないのは、とても悲しいことです』
キョン「そうだな」
俺だって、仲間外れは嫌だからな。
古泉『誕生日があれば、それを口実に、毎年祝ってもらうことができます。誕生日をプレゼント、なかなかいい案だと思いませんか?』
本当にコイツはあの古泉なのか?
こんなにイキイキと意見を述べて、楽しそうにしている。
普段のイカサマ臭がまったくしない。
まるで、年相応の男子高校生みたいだ。
キョン「ああ、いいプレゼントだよ。でだ、誕生日はいつがいいんだ?」
古泉『ベタな考えだとクリスマスになりますが、あなたにお任せしますよ』
キョン「なぜ、クリスマスがベタなんだ?」
古泉『クリスマスはどうゆうの日か知ってますか?』
ええい。質問を質問で返すな。
キョン「キリストの誕生日だろ」
古泉『実は、クリスマスがキリストの誕生日というのは、嘘なんです』
どこかで聞いたことのある雑学だな。
古泉『では、キリストの誕生日はいつですか?』
キョン「分からん」
あいにく、俺は神話とかに興味はない。
古泉『そうです。分からないで正解なんです』
古泉、お前は何が言いたい?
古泉『だからこそ、同じく誕生日がわからない、長門さんの誕生日にぴったりだと思いませんか?』
キョン「なんかよくわからんが、わかったことにしてやる」
確かに、自分の誕生日を忘れてしまった記憶喪失キャラや、誕生日のないロボットキャラのために、クリスマスを誕生日にしてやるという展開はベタな気がするしな。
古泉『少々長くなりましたが、少しでも力になれたなら光栄です』
役に立ったよ。だが礼は言わんぞ。
キョン「お前の話は参考になった。これで、俺のプライバシーを侵害したことは許してやる」
古泉『それは手厳しいですね』
まったく反省してないな、お前。
もう一つだけ、古泉に訊ねてみたくなったことがあった。
キョン「なあ、古泉。今日のお前は割りとイキイキ話してる感じがしたんだが、何かいいことでもあったのか?」
古泉『そうですね。あなたに、凉宮さんがらみでない相談事を持ち込まれたことが、純粋に嬉しいんですよ』
難儀なヤツだな。
古泉『この相談事が恋愛事ならば、また凉宮さんがらみになってしまいますが』
キョン「恋愛相談だと、なんでハルヒが絡むんだ?」
解りやすい説明を求む。
古泉『さてね。それは僕の口から言うのは無粋でしょう』
その後、一言二言交わし、俺は電話を切った。
翌日の午前中、俺は無駄な足掻きをしていた。
長門との待ち合わせまで、まだまだ時間に余裕があったので、俺は夏休みの宿題を少しでもやっておこうと思ったのだ。
まさに、焼石に水とはこのことである。
――
女の家に電話の着信を知らせる音が鳴り響く。
女は受話器をとり、
女『はい。女です』
男『女か?』
電話の主は、甲子園に行っているはずの、幼馴染みの男だった。
女『あ……男ちゃん』
男『来て欲しいんだ。甲子園に、今すぐに。』
女『でも…』
男『俺、このままじゃ試合にならねえんだよ』
男『はっきり分かったんだよ。自分の本当の気持ちが』
女『男ちゃんの、本当の気持ち?』
男『ああ』
男『男は、世界中の誰よりも……女を愛しています。だから』
女『男ちゃん』
――
キョン妹「………」
キョン「………」
俺は今、妹と一緒にアニメを見ている。
宿題?そんなの知ったこっちゃねえや。
明日、谷口と一緒に先生に謝ればいいのさ。
まさか、あのあだちのアレなのか
俺と妹が集中して見ているアニメは、夏休みの間だけ放送され、二人でこれを見るのが、夏休みの午前中の主な日課だった。
本日、このアニメは無事に最終回を迎えることとなり、現在スタッフロールが流れている。
主人公がヒロインに告白して終わるという、いわゆるハッピーエンドってやつだ。
キョン妹「終わっちゃたね」
キョン「終わっちまったな」
大好きなアニメが終わりを告げるときに虚しさが残るのは、高校生の俺も、外見は小学低学年にしか見えない小五の妹も、変わらないみたいだ。
キョン妹「キョンくんは告白したことないの?」
妹の質問に、俺はかなり不意を突かれた。
キョン「ない」
妹よ、そんなマセた質問で兄を困惑させてくれるな。
キョン妹「キョンくんは好きな人いないの?」
妹のターンはさらに続く。
俺の好きな人ね。
キョン「…いない」
多分、俺は特定の誰かに恋愛感情を持ったことがない。
…今のところ…
>>86
あだちのアレなのだ
あだちのアレか
妹の精神攻撃から逃れた俺は、長門が待つであろう公園へと、チャリを走らせた。
汗だくになりながら、公園に難とか到着した。
案の定、長門はすでにベンチで待機していた。
長門の姿が目に入ったとき、俺は少々驚いた。
そこには見慣れた長門の制服姿はなかった。
キョン「よっ。待ったか?」
長門「………」
水色のワンピースを着た長門が静かに首を振った。
>>89
あだちのアレだ。オカンが好きだったアニメです。
再放送で一度だけ見たことがあるんですが、達也と南のセリフあってますかね?
違ってたらすいません。
キョン「お前が制服以外の服を着てるなんて、珍しいな、そのワンピースどうしたんだ?」
長門「買った」
自分で買ったのか?こいつが服装をきにかけるとは意外だ。
俺の記憶が確かなら、長門の制服以外の姿は、なかなかお目にかかったことがない。
長門「似合う?」
俺は再び、今日の長門の意外性に驚かされた。
私服の長門もさることながら、その服装について、感想を求められるとは夢にも思わなかったのだ。
キョン「似合ってるぞ。かわいいと思う」
俺にしては珍しく、素直な感想が出たと思う。
長門「そう」
そのとき、ほんの少しだけ、長門が嬉しそうに見えたのは、きっと俺の勘違いだろう。
長門「こっち」
長門はそう呟き、俺を長門の住んでいるマンションに案内した。
長門「どうぞ」
キョン「おじゃまします」
何度来ても、長門宅の風景は殺風景を極めている。
相変わらず、必要最低限のものしかない。
長門「お茶を用意する」
お構い無く、と俺は心の中で呟いた。
初めてここに来たとき、淡々と長門に、お茶を差し出し続けられた記憶がよみがえった。
長門「それとも、昼ご飯?」
昼飯の誘いか。そういえば、遅く朝食をとったせいで、昼を食わずにここに来たな。
俺は昼飯を馳走になることにした。
長門の今日の昼飯メニューはコンビニ弁当だった。
ちょっとでも長門の手料理を期待していた、自分の愚かさにため息が出た。
こたつ机にコンビニ弁当が並べられてランチタイムがスタートした。
俺が自分に割り当てられた弁当を平らげたとき、長門の目の前には、すでに空箱が三つ、丁寧に重ねられていた。
俺がいなかったら、このアンドロイドは、弁当を五つ平らげてたであろう。
長門のスペックを維持するには、やはり高カロリーが必要なんだろうか?
四つ目の弁当を食べてる長門の箸が止まった。
長門「食べる?」
長門の箸は、ウィンナーをつまみ上げていた。
キョン「喰う」
長門はそのままウィンナーを俺の口元に持ってき…、
ちょっと待て。何んだこの展開は?
もしや、アニメとかでよくある、バカップルのイベント。
いわゆる『アーン』ってヤツか?
落ち着け、俺。何をドキドキしてやがる?相手は長門だぞ。
いくら今日の長門が変だからって、女の子として意識するな。
俺は平常心を装って、ウィンナーを口に含み噛み締めた。
キョン「美味い」
長門「そう」
一言呟き、長門は再び自らの食に戻った。
さっき、俺に食べさせてくれた、箸が長門の唇に触れる。
俺は長門の唇を見ていて、男子高校生の十八番である、妄想を膨らませていた。
長門の唇で妄想中、ハルヒとキスした記憶がよみがえったのは何でかな?
しかし、今日の俺はおかしい。
あの長門を女の子として意識してしまうとは。
長門がらしくなく私服で、それが似合ってるせいなのか?
長門と部屋で二人っきりというこのシチュエーションのせいなのか?
どうやら、この二週間の疲れが一気に俺の体を蝕んでるようだな。
そう思うことにした。
長門が食べ終えるのを見計らって、俺は訊ねた。
キョン「そろそろ、俺をここへ連れてきた理由を、教えてくれないか?」
長門「わからない」
なんだって?今日のお前は、本当に長門らしくないぞ。
キョン「わからいのか?」
長門「そう」
キョン「そりゃ、困ったな」
長門「困った」
つまり、長門は目的もなく俺を呼んだってことになる。
何のために?
あれこれ考えてると、長門が口を開いた。
長門「あなたの頭をここに」
長門は正座してる自分のフトモモを指差していた。
俺はまたまた意表を突かれた。
それは、いわゆる、バカップルお約束第二段。
膝枕ってやつですかい、長門さん?
長門の指差すフトモモを見てしまった。細身とはいえ柔らかそうだ。
ミニワンピなので、男の憧れのトライアングルが見えそうで見えない。
いかんいかん、俺は何を暴走してるんだ。
あんなミニワンピごときに踊らされるとは。
普段の制服とスカート丈はそんなに変わらん。
俺の理性よカムバック。
キョン「魅力的な誘いだが、何を企んでる?」
長門「何も」
長門がついに壊れてしまった、やはり、宇宙人でも同じ時間を永遠に繰り返すのは辛かったのか?
長門「いや?」
キョン「いやなわけじゃない」
女の子の膝枕が嫌いな男なんていない。
嫌いなヤツは八割の確率でズラだ。ズラがズレるのを恐れているんだろうよ。
長門「………」
長門が無言で俺を見つめている。
古泉や谷口の言う通り、長門は美少女だ。
キョン「分かった、じゃあ、横にならせてもらう」
これ以上、長門を焦らすのは失礼だと思った。
というのはウソピョンで、只、俺は欲望に敗北しただけだった。
キョン「失礼します」
何故か丁寧語になってしまった俺を、誰が責められよう。
俺は長門のフトモモに横顔を埋めた。
俺の顔が赤面しているのが、自分でもわかる。
まさか、長門に膝枕してもらえる日がこようとは、思いもよらなんだ。
頬に伝わる長門のフトモモの感触を感じる。それは柔らかさと弾力を併せ持っていて破壊力抜群だった。
短めのスカートのため、長門の体温をしっかり感じてしまう。
妙な気分になってきた。正直たまりません。情熱をもてあます。
よし、方向転換しよう。
これ以上、頬で長門のフトモモを楽しむのは危険と判断した俺は、仰向になって俺の理性を後頭部に託すことにした。
長門「………」
部屋の天井をバックに、長門の顔が間近に見える。
谷口よ。お前は長門のことをA-と評していたが、俺は否定する。
今の長門は、俺的美的ランクAA+に値する。
フトモモの感触に慣れてきた俺は、ある程度の落ち着きを取り戻し、長門に質問した。
キョン「お前の行動は正直言って嬉しいし、ありがたい。でも、お前が俺にここまでしてくれる理由を教えてくれると助かる」
長門「………」
やはり、わからないのか?
数秒の沈黙が流れた後、長門は言った。
エロスは必要?
いらないよね?
>>1の技量による
>>98
じゃあ、やめとく
>>99
技量より書きたいか?だろ
>>97
朝倉涼子の献身
>>102
なにそれ朝倉逮捕されるん?
>>103
朝倉涼子が献身的に、エロエロしてくれることを期待してるということで、深い意味はない。
なかなか面白い!
涼子の登場を心から待つ
長門「お返し」
お返し?
キョン「すまない。意味がわからん」
お前の受け答えは、必要最小限にも達していない。
キョン「頭の悪い俺は、もう少し解りやすい解説を求める」
長門「うまく言語化出来ない」
初めてこの部屋に来たときにも、同じようなセリフを聞いたな。
長門「8月31日、あなたがわたしと図書館に行ったシークエンスが、多数存在する」
なんだと?俺はすでに長門を何度も図書館に誘ったってことか?
長門「それらの内容は数パターンに分岐される」
図書館に行って、本を読む以外のパターンがあるのか?
長門「そのすべてにおいて、わたしはあなたに優しく扱われた。そして、そのすべてにおいて、わたしという個体は楽しいと感じた」
自分のことだが、正確には自分のことではないので、少しむず痒い。
長門「あなたはわたしに言った。自分のやりたいように自由に生きてみろと」
俺はそんな臭いセリフを吐いたのか?
その俺をぶん殴ってやりたいね。
長門「今日だけわたしは自由に行動することにした。そして、わたしという個体が最もしてみたいと感じたのが、あなたへのお返し」
なるほどね。
今回の長門の行動は、先に二週間過ごした俺への感謝のあらわれだったんだ。
どうやったら俺が喜んでくれるのか、長門なりに考えた結果が、今日の長門らしくない行動に繋がったんだ。
>>1です。テスト
朝倉「[ピーーー]ばいいのよ」
>>100
技術より気持ちが大事と?
>>101
はい。好きなように書きます。
>>102
朝倉さんの献身?
>>103
朝倉が逮捕なんてありえねーです。
>>104
すいません、エロは苦手です。
>>105
ありがとうございます。素直に嬉しいです。
>>106
もうちょろんとだけ待って
>>1です。再びテスト
朝倉「[ピーーー]ばいいのよ」
朝倉「死ねばいいのよ」
キョン「膝枕ありがとな」
俺はそう言って、俺の頭を長門のフトモモから離し、起き上がって、長門の瞳を見つめた。
長門「………」
お前はなんでもできるくせに、本当に不器用なんだな。
キョン「長門。さっきも言ったが、今日のお前の行動は正直嬉しい。だが、お前がお礼したい相手は、俺であって俺ではない」
そうだ、今の俺自身はまだお前に何もしてやれていない。
キョン「お前がお返ししたいと感じたことはいいことだ。でも、お返しなんて俺なんかには勿体無い」
長門「………」
キョン「お前がお礼をしたいと感じる度に一言、『ありがとう』って言ってくれたら、それで充分なんだ」
そうさ、お前は命の恩人なんだから、お返しなんて堅苦しいものはいらない。
俺ごときには、一言あれば充分だ。
長門「解った。今度からそうする」
どうやら解ってくれたみたいだな。
次に俺は長門の着衣に視線が移った。
キョン「そのワンピースも俺のために購入したのか?」
長門「あなたのためだけではない。これは、あなたがわたしのために買ってくれた。わたし自身とても気に入っている」
俺がプレゼントしたってことか?
どこの俺かは知らないが、そのときの俺よ、よくやった。
お前を誉めてやるぜ。
キョン「長門。もう一度だけ言わせてもらう」
長門「何?」
キョン「似合ってるぞ」
俺は再び、素直な感想を言った。
さてと、次は俺のターンだ。
今回の俺は十分すぎるほど、長門によくしてもらっている。
ここで何もしなかったら、前回までの俺に呪い殺されるであろう。
ヒントは古泉からもらっている。
あいつは、誕生日をプレゼントとか言いやがったが、それはモノではダメだと言いたいのだろう。
現に、俺が買ったはずのワンピースはリセットされ、長門の手元になく、長門自身で買うハメになっていた。
決めた。長門に夕飯を作ってやろう。
普通にディナーを誘うよりも、俺が料理してやった方が感謝の気持ちが伝わるはずだ。
俺の作る美味い飯を長門の思い出にしてやる。
などと考えたとき、ある疑問が…
俺って料理得意だったか?
まあ、カレーぐらいなら美味く作れる自信がある。
俺は長門にカレーを作ってやることにした。
このキョンは、銀さんの声で脳内再生されるのは、おれだけ?
俺はカレーを温め直し、深皿にご飯を載せて、作ったカレーをぶっかけた。
今日の夕飯はカレーライスと、スーパーのお惣菜コーナーで買った、ドレッシング付きのサラダだけである。
ま、男の料理なんてこんなもんだろう。
俺にしては頑張った方である。
俺の力作カレーは普通に美味く、俺にしては珍しく二回もおかわりした。
十分に満腹感を得ている俺は、食事を終え、黙々とカレーを口に運ぶ長門を眺めていた。
長門「………」
長門の持つスプーンの動きが止まり、鍋の中の12皿分のカレーと、炊飯器の中のご飯が全てなくなった。
長門「ごちそうさま」
ちゃんと、ごちそうさまを言ったか。えらいぞ、長門。
長門「おいしかった」
キョン「それを聞いて安心したぜ」
やはり、カレーを作って正解だった。
日本人の九割はカレー好きだからな。
宇宙人にも気に入ってもらえてなによりだ。
>>124
劇場版銀魂完結編見ました。
エンディングで、ある曲が流れたのと、最後の最後にボケがなかったことで、アニメ銀魂は本当に終わりを迎えたような悲しい気持ちになりました。
でも、いつもの終わる終わる詐欺だということを期待しています。
夕飯が終わり、俺は長門が出してくれたお茶を堪能しつつ、長門を眺めていた。
長門「………」
お前は俺に『お返し』がしたいと言った。
不器用ながらも、誰かのために何かしてやりたいっていうのは、まるで人間みたいじゃないか。
初めて長門と会った時は、無口で風変わりな部屋のアンティークドールとしか、俺は思ってなかった。
ま、実際アンドロイドだったが。
長門はいつも口数が少なく無表情だから、こいつは無感情じゃないのかと疑ったこともあった。
しかし、今日のこいつからは、意思というものがはっきり見える。
長門には、きっとまともな感情があるのだろう。
案外こいつもベタなロボットにありがちな、人間になりたいという欲求が芽生えているのかもしれない。
もしそうだとしたら、いい兆候だと俺は思う。
キョン「長門」
俺は長門に訊いてみたいこっがあった。
キョン「お前は今回の夏休みの繰り返しが、辛くないのか?」
長門「………」
長門お得意の無言無表情だ。
わからないのか?
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