ちひろ「……ろん」
モバPヘッド「……」
ちひろ「何をやってるんですか、楓さん……」
楓「あれ、あっさりバレましたか」カポッ
楓「声マネには結構自信があったんですよ。似てませんでしたか?」
ちひろ「いえ、似てましたよ確かに。それよりもっとインパクトが強い要素があってですね……」
楓「この『モバPヘッド』ですか? カッコいいでしょう?」
ちひろ「いやカッコ良くはないです」
楓「……そうですか」シュン
楓「あ、それでどうでしょう? お仕事が終わったら一杯」
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ちひろ「分かりました。お供しますね」
楓「ふふっ、ありがとうございます」
ちひろ「あと……そうですね、30分で仕事終わらせますから」
楓「30分ですか、丁度良いくらいですね」
ちひろ「丁度良い?」
楓「いえ、こちらの話です」
楓「そしてこちらの事は気にしないで下さい。仕事を急いでミスなんてしちゃ駄目ですよ」
ちひろ「いやぁ目の前にお酒をぶら下げられると、走りたくもなりますよ」
ちひろ「ふぅ……よしっ、気合入ったっ」
楓「頑張ってください」
――
ちひろ「結局、オーバーしちゃいましたね。すみません」
楓「気にしないで下さい、って言ったじゃないですか」
楓「それじゃ、いつもの店に行きましょうか」
ちひろ「はい」
楓「到着ー」
ちひろ「なんか、沢山お客さんが居るみたいですけど……席は空いてますかね?」
楓「大丈夫ですよ。貸切ですから」ガラッ
ちひろ「貸切?」
早苗「あー来た来たちひろちゃんおっそーい!」
楓「私は無視ですか。折角ちひろさんを連れてきたのに……」グスン
早苗「あっははゴメンゴメン! よーしよし良く出来ました!」ナデナデ
楓「むぅ……」
真奈美「生でいいかな?」
ちひろ「あ、はい……」
マストレ「何だ、どうかしたか?」
ちひろ「い、いえ、楓さんとサシ飲みのつもりだったのでちょっと驚いただけです」
志乃「実はね……」
早苗「ちひろちゃんとP君をどうくっ付けるか作戦会議のスターーーートっ!!!」
志乃「……だそうよ」
ちひろ「……はい?」
あい「早苗さん、少し声が大きいよ」
早苗「はいはい細かいことは気にしないっ」
ちひろ(なるほど、楓さん……)チラリ
楓「…………てへ」
――
ちひろ「あ、あはは……そうですか。そんなに分かり易いですかね私って……」
真奈美「あぁ。とはいえ最初はこんなつもりは無かった」
あい「ただ日頃から大変もどかしく感じていてね。早苗さんの言う事には、賛成だよ」
早苗「という訳でまずはあたしからアドバイス!」
ちひろ「はい」ゴク
早苗「脱いで迫ればいい!」
ちひろ「ぶふぅ!!!」
楓「これが本当の『浴びるほど酒』……惜しい、飲み物がサワーなら……」
ちひろ「げほっ……も、もう! いきなり変なこごっほ!」
志乃「でも偉い人も言ってるわよね、『人類繁栄の原動力はエロスから』だって」
真奈美「くっく、確かに繁殖の為には必要だな」
ちひろ「や、やめて下さいよ! 生々しいです!」
早苗「でもちひろちゃん結構良い身体してるでしょ? イケるイケる!」
早苗「普段は愛海ちゃんを取り押さえる側だけど、正直あたしも揉みたいと思ってるのよねー」ジリジリ
ちひろ「ちょ……あ、あの近い……」
あい「セクハラだよ早苗さん」
早苗「大丈夫大丈夫合意の上だから! ね、ちひろちゃん!」
ちひろ「う……この口上私も使ってる気がする……」
真奈美「ところで、君は酒の勢いでPとどこまで行った?」
ちひろ「そ、それは……っていうか助けて下さいよ!」
真奈美「おっと、それはすまない」
――
ちひろ「……覚えてないです、酔ってて」
志乃「あら、酒に飲まれるだなんてまだまだね」
マストレ「酔うという面では人の事は言えないだろうに……」
真奈美「Pは全部覚えているらしいからな。かといって本人に聞いても答えてはくれないだろうし」
早苗「え、じゃあもう貫通済みって可能性アリなの?」プハッ
ちひろ「ぐふっ……」プルプル
マストレ「おお、耐えた」
楓「でもそれなら翌朝全裸だったり、下半身に違和感があったりするんじゃ……?」
早苗「それが全然な子も居るらしいのよ。どうも個人差があるみたいでねー」
真奈美「話を戻そう。色仕掛けが通じないとなればどうするか」
マストレ「まず2人の時間が飲み屋でしか取れないというのはどういうことか」
あい「色気の無い話だね、まったく」
楓「どこか雰囲気の良い店とかありますか?」
早苗「ちょっと待った。別に飲みだけじゃなくてどっか遊びに行くとかあるでしょ?」
ちひろ「そ、そんなハードルの高い事出来ませんよ……付き合ってる訳でも、ないのに……」
早苗「なーに言ってんのよ。付き合う為に一緒に遊びに行くんでしょーが」
ちひろ「でも遊びって、どうすれば……」
真奈美「……何を混乱しているんだ。子供じゃあるまいし」
早苗「別にカラオケでもボウリングでもショッピングでも何でもいいの」
ちひろ「うーん……私歌には自信無いですし、ボウリング下手ですし、特に買いたい物も無いし……」
あい「歌の練習の為に行けばいい」
楓「運動音痴なドジっ子アピールが出来ますね」
マストレ「何でもいいから家具を買って、それの設置を建前に家に招待するとか出来るだろう」
志乃「あと2人で家具を見てたら店員には夫婦に見られるわね」
ちひろ「な、なるほど……! あ、でも2人きりなんて、さすがにプロデューサーさんも気付くんじゃないでしょうか……」
あい「まぁそれはそれで仕方ないことだね」
真奈美「気付かれて悪い事は無いだろう?」
早苗「え? P君とっくに気付いてるでしょ、ちひろちゃん分かり易過ぎだし」
ちひろ「……です、かね」
ちひろ「……あぁ、どうなんでしょうか……もしかしたら酔った勢いで告白くらいはしてるかもしれないし……」
真奈美「確かめようのない事を心配するのは止めた方がいい」
志乃「そうよね。それより実のある話をしましょう? 例えば彼のどこを好きなのか、とか」
楓「それは私も是非聞きたいです」
ちひろ「……あの、それは実のある話なんでしょうか」
真奈美「あぁ、ある」
楓「わくわく……留美さん、今からでも来てくれないかしら」
ちひろ「もう、楽しんでるだけですよね?」
早苗「まっさかー。そんなことないよってばー」グビグビ
ちひろ「ワザとらしい演技しなくても……あぁもう、分かりましたよ」
ちひろ「そうですね……一番惹かれたのは仕事姿ですかね」
ちひろ「アイドルの成功は子供みたいに大はしゃぎして」
ちひろ「中々芽が出ない子とは一緒に泣いて、悩んで、立ち上がって」
あい「子供のような一面があるというのは否定出来ないな」
楓「なんせお仕事の休憩時間に事務員を水鉄砲で襲撃するくらいですからね」
ちひろ「あはは、あれには驚きました……ってなんで知ってるんですか」
志乃「あれ映像に残ってるわよ。未央ちゃんから動画が送られてきていたわ」
ちひろ「嘘っ!?」
マストレ「随分機敏な動きをするじゃないか。いっそバックダンサーとして出演してみるか?」
ちひろ「えっ……?」
マストレ「……なんだその反応は」
ちひろ「いえ……実は以前、プロデューサーさんにスカウトされちゃって」
ちひろ「断ったんですけど、ね」
早苗「それで正解ね。アイドルになったらお付き合い出来ないし」
ちひろ「あ、そっか……」
志乃「そっか、って……どういう理由で断ったのよ?」
ちひろ「そこそこ忙しいながらも、プロデューサーさんと残業して」
ちひろ「机に座ってお仕事して、冷蔵庫にドリンクとアイス補充して、帰ってきた子に『お疲れ様』って声掛けて……」
ちひろ「……まぁそんな今の仕事が好きだから、です」
真奈美「ふむ」
あい「なるほどね」
早苗「それもう完全に夫婦ね」
ちひろ「夫婦って、またまたそんな」
楓「もう既に十分夫婦ですね、心配して損しました」
マストレ「でも好きと言える仕事に就けるというのは、それだけで幸せな事だ」
あい「天職、なんだろうね」
ちひろ「それは皆さんもそうじゃないですか? だから同時にアイドル達が羨ましくなってるんですけどね」
ちひろ「あんな風に文字通り二人三脚で頑張るのって、どれだけ素敵な事だろうなぁ……って」
早苗「いやーところがどっこい、P君忙しいからさ」
早苗「もっとあたしを見て欲しいんだけど、どうもそうはならなくてね」
早苗「そこはちひろちゃんが羨ましいかな。残業時間、一緒に居られて」
真奈美「そこまでにしよう。誰かに聞かれるのは良くない」
早苗「……あは、ごめんごめん」
ちひろ「早苗さん……」
早苗「もうちょっと、飲もっかな。店員さーん!」
――
楓「寮に戻ったら二次会しましょうか」
早苗「でゅふふ、ノリがいいわね。もちあたし参加で!」
真奈美「はぁ……仕方ない、私も参加しよう。1人では抑えられないだろう?」
楓「ありがとうございます」
あい「気晴らしにはなっただろうか?」
ちひろ「はい、ありがとうございました」
マストレ「まぁ役に立てたとは思わない。君の思うままにするといい」
ちひろ「……ですね」
早苗「あーによう!? まさかあたしに気を遣ってんじゃないでしょうね!」ガシィッ
ちひろ「ぐっ、ちょ、早苗さん……!」ギブギブ
早苗「ふふん、年下のクセに生意気ねちひろちゃん?」
早苗「あたし、ジメジメしたの嫌いだからね? そこんとこ理解しとくよーに!」ベシベシ
ちひろ「……はい。ちょ、痛い痛いです」
真奈美「さて、事務所はまだ明かりがついているようだが、どうする?」
ちひろ「やめておきます。お酒入っていますから、迷惑を掛けかねません」
真奈美「……そうか」
ちひろ「行きましょうか」
マストレ「では私はここで」
ちひろ「そういえばトレーナー一家も女子寮に入ってもいいんですよ? まだ部屋空いてますし」
マストレ「それは嬉しい提案だ。考えておくよ」
ちひろ「……」チラッ
ちひろ(いつもお疲れ様です。プロデューサーさん)
ちひろ(誰よりも仕事が好きで、誰よりも頑張って、本当は誰よりも疲れている貴方を支えていたいと思っています)
ちひろ(でも貴方は優しいから、それを口にしたら逆に気を遣われてしまうんでしょうが)
早苗「ちっひー! 早くはやくー!」
ちひろ「はい、今行きまーす」
ちひろ(また明日、プロデューサーさん)
続きます
P「……」カタカタ
P「……ふぅ」ギシッ
「おはようございます、プロデューサーさん」コトッ
P「おは……よう、加蓮」
加蓮「……ちひろさんじゃなくて悪かったね、折角スタドリ持ってきてあげたのに」
P「誰もそんなこと言ってないだろ」
加蓮「うっそだ。残念そうな顔しちゃってさ」
P「んーそんな顔してたか……あ、スタドリありがとな」
P「そんなデカい三つ編み、よく見つけたな」
加蓮「楓さんから貰ったの。だからどこから仕入れたのかは聞いてないんだけどね」
P「なるほど。モバPヘッドに続いてちひろ三つ編み、か」
加蓮「あれは面白かったなぁ」
加蓮「Pさんってどんな髪型が好きなの? あ、女性のね」
P「もしかして結構悩んでるか? お前の髪型、割とコロコロ変わってるけど」
加蓮「そうそう。どれが良かったかなって」
P「全部って言ったら怒るか?」
加蓮「怒るよ。夕飯何が良いー何でもーぐらいに」
加蓮「女の子の命なんだからね」
P「……悪いな、お前全部似合ってるんだよ。選べない」
加蓮「えー? 逃げてない?」
P「しいて言うなら、デカく1つに縛ってるのがいい。三つ編みで」
加蓮「……結局ちひろさんじゃん」
P「今ちひろ三つ編みを付けてたお前は中々魅力的だったぞ」
加蓮「ホント? 髪伸ばしちゃうよ?」
P「俺は男だからよく分からんが、伸ばすならちゃんと手入れはするんだぞ」
加蓮「うん」
藍子「おはようございます」ガチャ
P「おはよう」
加蓮「おはよ、藍子」
藍子「……三つ編み?」
加蓮「そう、ちひろ三つ編み。藍子も付けてみなよ」
加蓮「なんでもPさんの好みの髪型らしいよ」
藍子「うーん……別に良いけど……よい、しょっと」
藍子「よし……どうですかPさん?」
P「そうか。そういえば藍子は髪型一貫してるな」
P「髪長いし、バリエーション持たせてもいいんじゃないか?」
藍子「そう、ですね。確かに興味はあるかも……」
加蓮「じゃなくて、感想早く」
P「……違和感」
P「……いや、変って言ってるんじゃない。違和感があるんだ」
加蓮「結局変なんじゃ……あぁごめん藍子!」
藍子「ううん、だってこれを褒めてもらっても、結局ちひろさんの真似をしてるだけだよ」
藍子「高森藍子を、褒めてもらえるようにならなきゃ。はい、返すね」スッ
加蓮「……」
P「藍子は凄いなぁ。な、加蓮」
加蓮「私もこのままで頑張ろうか、な……」
P「それでよろしい」
P「ところでちひろさんは? 今日はやけに遅いな」
藍子「昨日寮で飲み会をやったみたいで。2日酔いらしいです」
P「ちひろさんすぐ酔うし、おまけに性質が悪いんだよな」
P「調子に乗って飲みまくったんだろう。ま、遅刻さえしなけりゃいいんだけど」
加蓮「Pさんちひろさんとよく2人で飲むんでしょ?」
P「おう」
加蓮「いっつもどんな事話してるの?」
P「どんなってまぁ、大体は裏方の愚痴り合いだよ」
加蓮「……ふぅん」
藍子「愚痴り合いって、私達に聞かせられる内容ですか?」
P「……一部は無理だ。例えば俺が考えてる将来的なプロデュース方針とかな。本人に悪影響を及ぼしかねない」
藍子「なるほど。それは聞けませんね」
藍子「性質が悪いって、絡んだりとかされるんですか?」
P「かなりな。ついでに翌日は綺麗さっぱり忘れてる」
藍子「うわぁ……」
加蓮「そんなにあの人お酒好きなの? 結構意外……」
P「あぁ、ちひろさん滅茶苦茶好きだなー」
加蓮「……」
藍子「……」
P「……なに」
加蓮「いや、別に」
藍子「何でもないです」
加蓮「じゃ、Pさんは? 飲みに付き合うって事はお酒は大丈夫なの?」
P「あぁ。酒は俺も好きだな」
加蓮「煙草は?」
P「吸ってないな。ギャンブルもやってないよ」
加蓮「結果としては良い事、なんだろうけどさ」
P「何がだ?」
加蓮「……別に」
藍子「?」
藍子「あ、じゃあ飲む時は毎回ちひろさんと2人ですか? 他にも何人かと一緒だったこととかは?」
P「……今更だけどなんで俺尋問受けてるみたいになってんだ。質問攻めじゃないか」
藍子「まぁまぁ」
P「んー……そうだな。楓さんや志乃さんその他諸々、アイドルとは一度も酒を飲んでない」
P「スキャンダルは勘弁だからな。という訳でちひろさんとサシ飲みしかしたことないよ」
加蓮「そんなにちひろさんとだけ誤解されたい?」
P「まさか。ちひろさんも迷惑だろ」
加蓮「あのね、知ってるよ。普通に楓さん達と仕事終わりに飲みに行った事あるでしょ。本人達嬉しそうに話してたよ」
P「知ってたのか。別にわざわざ言う事も無いかなって思ってな」
藍子「そこは気にしなくていいんです。私とも早朝デートしたことあるじゃないですか」
加蓮「私とも放課後デートしたことあるけどね」
P「アイドルがデートデート言うんじゃありません」
加蓮「あー逃げた」
藍子「仕方ないね。Pさんはちひろさん好きなんだから」
加蓮「ちひろさん早く来ないかなー……ちひろさん居ないとPさん寂しそうだもんなー」
P「……こら、うるさいぞお前ら」
加蓮「ふふっ、照れてる照れてる」
藍子「はーい分かりました。それじゃ向こう行ってますから」
P(……あぁもうくそっ……)
――
ちひろ「お、おはようございます……」
藍子「おはようございます。玄関周りの掃き掃除やっておきましたよ」
ちひろ「わざわざごめんね藍子ちゃん……」
加蓮「別にいいよ。2人でやったからまだ楽だったし」
ちひろ「加蓮ちゃんも? ありがとう」
P「ちひろさん、おはようございます」
ちひろ「あ、は、おはようございます!」
P「ドリンクの発注掛けておきました。予想以上に消費が激しかったので、いつもよりかなり多めになってますから」
ちひろ「はい、分かりました」
ちひろ「……」ジーッ
P「な、何か?」
ちひろ「顔、赤くないですか? 早いですがもう冷房入れた方が……」
P「だ、大丈夫ですよ! 別に!」
藍子「あれはさっき私達にからかわれてたからかな?」
加蓮「……だろうね」
加蓮「もう、たまにちひろさんが絡むとあぁなんだから……」
藍子「つまらなさそうだね、加蓮ちゃん」
加蓮「……当たり前でしょ。藍子はどうなの」
藍子「私もまぁ、面白くはないよ。でも邪魔はしない」
加蓮「ホント、藍子って変わってるよ。どうやったらそんな聖母オーラ出せるの?」
藍子「聖母だなんてそんな……でも、あの2人お似合いだね」
加蓮「だからって……!」
藍子「分かってる、分かってるよ。でも私は2人の事応援したいって思ってる」
藍子「……多分本気じゃなかったんだよ。禁断の愛っていうか、そういうのに憧れてるだけの」
藍子「もし仮に本気だったなら……どんなことしても、Pさんを奪うよ」
加蓮「……ごめん」
藍子「……ううん」
藍子「でも、一つだけ言うならね」
加蓮「ん?」
藍子「私、ちひろさんにはもう『Pさんが好き』って伝えてあるんだ」
加蓮「なっ……!」
藍子「だから……そうだね、ちひろさんがPさんと付き合ったとして、それを私に謝ってきたら……」
藍子「間違いなく5、6発は殴る。加蓮ちゃんの言う聖母オーラは捨てるからね」
加蓮「了解……藍子って怒ったら絶対怖いよこれ……」
藍子「……ふふっ、ごめん。泣きそうだからちょっと顔洗ってくる」タッ
加蓮「……うん」
加蓮(藍子……私は、どうなんだろうね。藍子の言い分が通るなら、私も本気じゃないのかな?)
――
P「ちひろさん」
ちひろ(……)
P「ちひろさん?」
ちひろ「はっはい!?」ガタッ
P「今日残業じゃ、ないですよね」
ちひろ「で、ですね、珍しい事に」
P「俺もなんですよ、珍しい事に」
P(……さすがに昨日の今日で飲みには誘えないよなぁ)
ちひろ「……あの」
ちひろ「プロデューサーさん、実は、その、頼みがあるんですが……」
P「なんでしょうか? ちひろさんの頼みとあっては断る訳にはいきませんね」
ちひろ「じ、実はちょっと部屋の模様替え、を考えてまして」
ちひろ「てっ、手伝いを頂けたらなーって……」
P(……普通なら、女子寮の皆に頼むんだろうけど、な)
P「分かりました」
ちひろ「ホントですか!?」
P「はい、そういうことなら」
P「模様替えの案はもう出来ているんですか?」
ちひろ「考えてありますから、家具の移動をちょっと手伝って欲しいんです」
ちひろ「あとは終わった後に、ちょっと感想でも貰えたらなと」
P「はは、俺の家見たでしょ? あのセンスですよ?」
ちひろ「いいんです。他人の意見が欲しいんですよ」
P「了解です。どこまで力になれるかは分かりませんが」
ちひろ「もう、そういうこと言っちゃ駄目ですっ」
――
P「さて……」ピッ
P「ちひろさん、俺です」
『はい、今開けますね』
P(何度見ても、金掛かってるな……)
P(アイドルの寮なんだから当たり前なんだけどさ)
ガーッ
ちひろ「どうぞ」
P(そして何度来ても慣れない……廊下までいい匂いするし)
P(女子寮だな、やっぱり……)
ちひろ「今日はわざわざすみません、仕事終わりに」
P「いいですよ。俺らの間で遠慮は無用ですって」
――
真奈美「ん……?」
P「どうも、真奈美さん」
真奈美「何故Pが……あぁ、なるほどな」
真奈美「ちょっと」チョイチョイ
ちひろ「……私、ですか?」
真奈美「ほんの1、2分ほどだ、彼女を借りていくよ。そこを動かないように」
P「あ、はい」
真奈美「やれやれ……私達から出た案を全部すっ飛ばしていきなり部屋に連れ込むとはな」
ちひろ「あはは……すみません」
真奈美「まぁ、仕方ないな。未成年も沢山居るんだから声は抑えてくれよ」
ちひろ「はい……はい?」
真奈美「避妊具は持っているか? あんなものさすがに寮に常備されていないぞ」
ちひろ「は……」
真奈美「君の事だから勿論そんなヘマはしないと思うが……」
ちひろ「ちょ、あ、あー!!! あー!!!!!」
真奈美「……うるさい……!」
ちひろ「わ、あわわ、わ訳分かんないこといいいきなり言わないでください!!!///」
真奈美「なんだ、そのつもりじゃなかったのか?」
ちひろ「ないです! ただの部屋の模様替えなんです!」
真奈美「口実としては少しあからさま過ぎじゃないか? 普通なら人数も集まっている寮のアイドルに頼む事だぞ?」
ちひろ「し、仕方ないじゃないですか……プロデューサーさん忙しくて、遊びに行く時間なんて取れそうになくて……」
真奈美「……それなのに敢えて体力を使わせるのか?」
ちひろ「う……」
真奈美「いや、すまない。責めている訳じゃないんだ」
真奈美「模様替えが終わったら食事にしよう。まゆと2人で料理を作っておく」
真奈美「見張っておかないと、まゆは何をするか分からんからな」
ちひろ「……はい、ありがとうございます」
真奈美「頑張れよ」
――
真奈美「すまないね、思ったより時間が掛かった」
P「いえ。ほらまゆ、もう俺行くから」
まゆ「Pさん、まゆに会いに来てくれたんじゃないんですかぁ……?」
真奈美「ほら夕食当番。そろそろ準備に取り掛かるぞ。Pも食べていけ」
P「いいんですか? ならお言葉に甘えます」
P「まゆの手料理食べるのって久しぶりだな。楽しみにしてるぞ」
まゆ「…………はぁい」
ちひろ「す、すみません。遅くなりました」
P「いえ、大丈夫ですよ」
P「……ちひろさん、顔真っ赤ですよ? 大丈夫ですか?」
ちひろ「……すみません。ホント、何も聞かないで下さい……」
P「はぁ、悪い事でなければいいですが」
ちひろ「ありがとうございます……」
ちひろ「それじゃ、行きましょうか」
P「はい」
続きます
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