桑田「それはちげーよ!」 (688)

ダンガンロンパのSSです


注意事項
・このSSはダンガンロンパのネタバレを含みます
・あの人が一歩間違えなかったらどうなるのか的な妄想SSです
・よって代わりに好きなキャラが一歩間違える可能性があります
・主人公には結構な主人公補正がかかります
・主人公は章ごとに変わります(予定)
・基本台本形式 たまに地の文

以上の内容に不安や不快感を覚える方や一作目が未クリアの方は即ブラウザバック推奨です


では、投下します

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376515308



CHAPTER 01 ミツケル

 

深夜1時 桑田の部屋

桑田「モノクマが提示した動機……このDVDの映像は本物なのか?」

桑田(このDVDにはオレの家族が映って……そして……)

桑田「本物だとしたら、みんな……」

桑田「外に出て確かめたい、確かめたいけどよぉ……」

『モノクマ「卒業したかったら、さっさと殺しちゃえばいいんだよ」』

桑田「そのためには誰かを殺さなくちゃいけないんだよな……」

桑田「そんなこと……できるわけねーだろうが……」

桑田「……もうこんな時間か」

桑田「っつーかあんなもん見せられて簡単に眠れるわけねーだろ!」

桑田「夜時間は出歩き禁止だからなぁ……」

桑田「なんかすっかな……」

パサリ

桑田「ん?」

桑田「なんだ?」

『2人きりで話したいことがあります。
 5分後に、私の部屋に来てください。
 部屋を間違えないように、
 ちゃんと部屋のネームプレートを確認してくださいね。

                    舞園さやか』

桑田「舞園さやか?」

桑田「2人きりで話したいことって……」

桑田「そういや舞園はあの映像でだいぶ参ってたっけ……」

桑田「そうか! 舞園のやつ、心細くなってオレを頼ったのか!」

桑田「だとすると、話ってもしかして告白か!?」

桑田「そうだよそうに決まってんじゃん!」

桑田「そっかそっかー……舞園がオレをねぇ……」

桑田「考えてみりゃ、男女が閉じ込められてるんだもんなー」

桑田「多分つり橋ナントカもあるんだろうなー」

桑田「……そろそろ5分経ったかな?」

深夜1時5分 寄宿舎廊下

桑田「誰もいないよな……」

桑田「夜時間に出歩いてるのがばれたら色々厄介だもんな」

桑田「ていうかトイレが個室にないのは欠陥だろうが……」

桑田「えーっと、舞園の部屋は……」

桑田「マイゾノ……マイゾノ……お、あったあった」

桑田「……舞園の部屋ってここだったっけ?」

桑田「なんか微妙に違う気が……」

桑田「ま、いっか」

桑田「まーいぞーのちゃーん!」ピンポーン

桑田「…………出ないな」

桑田「もう一回!」ピンポーン

桑田「…………あれ?」

桑田「一体どうしたんだ……?」

桑田(まさか……!)

『モノクマ「うぷぷぷ。そろそろ誰か死ぬかもね~♪」』

桑田「舞園?」カチャリ

桑田(カギが開いてる?)

桑田「舞園! 大丈夫か!」ガチャ

舞園「うああああああああああああ!」

桑田「なっ!?」

舞園「死になさい!」ヒュン

桑田「あぶねぇ!」

舞園「避けやがって!」

桑田「やめろ舞園! オレだ、桑田だよ!」

舞園「知ってるわ……」

桑田「え?」

舞園「だって一番殺しやすそうな桑田君を呼んだんだもの」

桑田「殺しやすそうって……まさか」

舞園「正確には呼びやすそうだけどね……そうよ、今から桑田君を殺すわ!」 チャキ

桑田「おいやめろってばか! その刃物を下ろせ!」

舞園「やめるわけないじゃない! 私は何としてもここから出なくちゃいけないのよ!」

桑田「舞園……」

舞園「桑田君はミュージシャンになるとか言ってたけどね、芸能界はそんな甘い所じゃないのよ」

桑田「……」

舞園「今こうやって私が閉じ込められてる間も、私たちは忘れられていく……消えていく……」

舞園「それに……あんなことまであったら……!」

桑田「……あのDVDか!」

舞園「さあ桑田君、私のために死んでください!」 チャキ

桑田「舞園、思い直せ!」

舞園「うるさい! 桑田君に私の何が分かるんですか!」

桑田「分かんねえよ! でも、何があろうと人殺しなんてやっちゃいけない!」

舞園「うるさいうるさいうるさい!」

桑田(くっそ……腕力で勝るとはいえ舞園は包丁を持ってる……このままじゃホントに殺されちまう!)

舞園「うああああああああああああああ!」

桑田(なにかないのか! ……これは!)

舞園「死ねええええ!」 ヒュン

桑田「くっ!」 ガッ

舞園「模擬刀……!」

桑田「もうやめよう! オレは殺されたくないし、舞園も殺したくない!」

舞園「それは桑田君に外に出たいって言う意志が無いからよ……」

舞園「私にはある……ただそれだけよ」

桑田「……」

深夜1時15分 舞園の部屋?

舞園「うああ!」 カラン

桑田「諦めろ舞園! ……不意打ちを外した時点で女のお前は男の俺には勝てねえよ」

舞園「くっ!」 バタン

桑田「シャワールームに逃げ込んだか……ちゃんと鍵までかけてんのな」 ガチャガチャ

舞園「……」

桑田「舞園……オレは部屋に戻る」

舞園「!」

桑田「幸い女子部屋のシャワールームにはカギがかかる」

舞園「……」

桑田「今晩はシャワールームに籠って頭を冷やせ」

桑田「今夜の事は周りにばれるとまずい……これは二人だけの秘密だ」

桑田「明日……つってももう今日だけどよ、今日の朝、食堂で会おう」

舞園「……」

桑田「……じゃあな」バタン

桑田(アイツ……大丈夫か?)

桑田(これで思い直してくれるといいが……)

桑田(大丈夫だ、舞園を信じよう)

桑田(このことは二人だけの秘密にしておきたいが、多分近いうちにモノクマにばらされるだろうな)

桑田(対策を考えないといけないな)

桑田(……疲れた、今日はもう寝よう)

桑田(あ、模擬刀の金箔が手に……寝る前にトイレで洗ってくっか)タッ

??(…………)

午前7時 桑田の部屋

モノクマ「オマエラ、おはようございます!」

モノクマ「朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!」

モノクマ「さぁて、今日も張り切っていきましょう~!」

桑田(結局一睡もできないまま朝になっちまった……クソ、疲れだけがたまっていく……)

桑田(舞園はもう大丈夫か……?)

桑田(そういや昨日は『二人だけの秘密だ』とか言ったけどよく考えたら傷とかがあるから隠し通すのは無理だな……)

桑田(はぁ……どうしたら誤解を招かずに説明できるか……)

桑田「……いよっし! 今日も張り切っていくか!」

桑田「絶対に脱出口を見つけてやる! 舞園のためにも!」

桑田「っと、じゃあ食堂に行くか。……なんか考え事してたら結構時間経っちゃったな」

午前7時30分 食堂

桑田「うぃーっす」

石丸「桑田君! 遅いではないか!」

桑田「わりぃ、わりぃ……寝坊しちった!」

石丸「まったく、君のようにルールを守らないものがいるから――」

桑田「悪かったって、今度から気を付けるからさ!」

葉隠「これで全員そろったべか?」

石丸「おや? まだそろっていないな……?」

朝日奈「舞園ちゃんと十神が来てないね……」

桑田「舞園が……?」

桑田(おかしい……いつもなら舞園はもう来ているはず……)

苗木「十神クンはともかく舞園さんが来てないなんて……」

十神「……どうした? 何かあったか?」

桑田「十神! お前、舞園を見なかったか?」

十神「……知るわけないだろう、俺は今自分の部屋からここに来たところなんだ」

山田「朝会の約束を忘れているのですかね?」

霧切「しっかり者の彼女が?」

桑田(一体どうしたんだ舞園……)

桑田「……体調が悪いとかじゃねーの? ほら、こんな環境だしよ」

石丸「あり得なくはないが、しかし……」

大神「昨日の舞園は元気だったようだが……」

苗木「ボ、ボク……ちょっと様子を見てくる!」タッ

大和田「お、おい!」

桑田「オレも行く!」タッ

桑田(舞園……!)

午前7時40分 舞園の部屋?

苗木「舞園さん?」ピンポーン

苗木「…………返事が無い……鍵が開いてる!」カチャリ

苗木「舞園さん!」バタン

苗木「なっ…………」

苗木「なんだよこれ……部屋がめちゃくちゃじゃないか!」

桑田「どけ苗木!」

苗木「く、桑田クン!?」

桑田(舞園がいるとすればここのシャワールームだ!)

桑田(ドアが……歪んで外れてる!? まるで……強引にこじ開けたみたいに!)

桑田「クソッ! 舞園!」バタン



舞園「…………………」



桑田「ま、舞園……!」

苗木「う、うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

舞園は自分の部屋のシャワールームで無残にも殺されていた。

シャワールーム中に舞園の血が広がっており、今まで嗅いだ事の無い血の匂いが充満していた。

舞園の体は壁にもたれかかっていて、左手は不自然に体と壁の間に挟まっていた。

腹部には昨晩舞園が握りしめていた包丁がなぜか刺さっていて、どうやらそれが致命傷となったようだ。

そして、舞園の右手側の壁にはある人物の名前がしっかりと書かれていた。

おそらく舞園のものであろう赤い血で、『クワタレオン』と、他でもないオレの名前が……。

苗木は舞園の死体を見て悲鳴を上げ気絶してしまった。

その後、苗木の叫び声を聞いてたであろう霧切達が駆けつけ、舞園の死体を発見した。

やはりほとんどはオレや苗木と同じような反応を示した。

そんな中、霧切、セレス、十神の三人は特に動揺した様子は見せていなかった。

死体を見慣れているのか、精神力があるのか、それとも……。

そんなことを考えた直後、校内放送が流れた。

『死体発見アナウンス』とやらが流れた後、体育館に集まるように指示された。



絶望は、終わらない。


 

とりあえず今回は以上です。
意見や指摘などレスしてくれるとありがたいです。
にしても主人公補正かけ過ぎだな……。

こんばんは、>>1です

しょっぱなからボロが出まくってて悲惨な事になってますね……指摘ありがとうございます
アナウンスや口調など指摘されてる部分は適当に脳内補完お願いします

さらに注意事項ですが、ここから先は展開の都合上桑田無双じみた展開もありますのでご了承ください

では、投下します

午前8時 体育館

朝日奈「体育館に呼び出されて……今度は何が始まるの……!」

山田「まさか舞園さやか殿が殺されるなんて……」

桑田「クソッ! 舞園が殺されたってのになんで体育館なんかに集まらなきゃならねえんだ!」

十神「……」

苗木「……あ……れ?」

朝日奈「あ、やっと目を覚ました! 苗木、大丈夫?」

苗木「ここ……は……」

大和田「寝ぼけてる暇はねーぞ……さっさと起きろ」

苗木「……え?」

桑田「お前、気を失ってたんだよ」

葉隠「で、俺らが運んで来たんだべ」

大神「あんな事があったのだ……無理もない」

苗木「あんな事……! そうだ、舞園さんは!?」

十神「……舞園さやかは……死んだ」

苗木「ッ!」タッ

十神「どこに行く気だ……!」

苗木「決まってるだろ! 舞園さんを……舞園さんを! 舞園さんを!!」

霧切「やめなさい……散々確かめたわ」

霧切「彼女は間違いなく死んでいた」

苗木「イヤだっ! ボクは行くっ!」

桑田「苗木!」

苗木「!」

桑田「舞園が死んで辛いのはお前だけじゃねぇんだよ……!」

苗木「……だったら」

桑田「……なんだよ」

苗木「だったら! どうしてこんなところに集まってるんだよ!」

苗木「仲間が……舞園さんが死んだんだぞ!」

桑田「……それは」

モノクマ「それはボクがみんなを呼んだからだよ~!」

腐川「出たわね……」

モノクマ「なんだよ人を幽霊か化け物みたいに!」

桑田「大体似たようなもんじゃねえか……!」

苗木「モノクマ! お前なんだろ!」

モノクマ「え? 何が?」

苗木「舞園さんを殺した犯人だよ!」

モノクマ「何言ってんのさ! 失礼しちゃうなぁ~もう!」

モノクマ「あのね、校則違反をされない限りは、ボクは自ら手を出したりしないの!」

モノクマ「ボクってクマ1倍ルールには厳しいんだから!」

不二咲「だったら……一体誰が……」

モノクマ「またまた~分かってるクセに~」

十神「……」

モノクマ「舞園さやかを殺したのは、オマエラの中の誰かじゃーん!」

石丸「そんな……馬鹿な!」

モノクマ「最初に言ったでしょ? 卒業したけりゃ誰かを殺すしかないって」

モノクマ「だから、誰かが卒業するために殺したんだよ!」

モノクマ「それがルールじゃん! 悪い事じゃないよ!」

桑田(舞園はある意味でこの学園に一番適応していたのかもしれないな……)

大和田「ふざけんなよテメェ……」

十神「まて、確認したいことがある……おいモノクマ!」

モノクマ「なぁに?」

十神「人を殺した奴は本当にここから出られるのか?」

モノクマ「ふふふ……いいところに気が付いたね……」

十神「何?」

モノクマ「校則の中にまだきちんと説明していないところがあったよね?」

セレス「もしかして、6条目の後半部分の事ですか?」

朝日奈「ああ……他の生徒に知られてはいけないってやつ」

モノクマ「それでは、この『コロシアイ学園生活』の追加ルールを発表します!」

苗木「追加ルール?」

モノクマ「そ。 その名も、『学級裁判』!」

桑田「学級……裁判……?」

午前8時30分 体育館

ザシュッ

江ノ島「お……おかしくない……?」

江ノ島「なんで……なんであたしが……?」

苗木「江ノ島さん!」

朝日奈「な、なに……これ……」

桑田「ウソだろ……」

山田「ウソだぁぁぁぁぁぁぁあああああッ!!」

モノクマ「……関係ない所では出来るだけ死人は出さないように思っていたんだけど……」

モノクマ「やっぱり見せしめは必要だったんだね……」

桑田「てめぇ……!」

モノクマ「でもさ、これでわかったでしょ?」

モノクマ「……ボクは本気だよ」

桑田(何本もの槍で貫かれた江ノ島の体……)

桑田(これが……人間の死……)

桑田(オレは、昨日舞園に殺されかけた……)

桑田(もしかしたら、オレもこうなっていたかもしれない……)

桑田(舞園や江ノ島のように……)

モノクマ「驚くこと無いんだよ」

モノクマ「人はいずれ死ぬんだから……ね」

霧切「……どうして殺したの? 牢屋に入れるんじゃなかったかしら」

モノクマ「……気が変わっただけだよ」

霧切「……」

モノクマ「さて、それじゃそろそろ捜査を始めてもらわないと」

桑田「捜査……」

モノクマ「じゃ、オマエラにこれを配っておくね!」

モノクマ「これは、ボクが死体についてまとめたファイル……その名も」

モノクマ「……ザ・モノクマファイル!!」

十神「モノクマファイル?」

モノクマ「みんなは素人だからね、代わりにボクが死亡状況とかをまとめておいてやったのさ!」

苗木「なんで『してあげた』みたいな言い方なんだよ……!」

霧切「落ち着いて苗木君……江ノ島さんの二の舞にはなりたくないでしょう?」

苗木「……くっ」

桑田「……おいモノクマ」

モノクマ「なんだい?」

桑田「……お前はクロがだれかわかってんのか?」

モノクマ「もちろん!  監視カメラでぜ~んぶ見てたからね!」

桑田(じゃあ、やっぱりコイツは見てたんだな……)

桑田(オレが舞園に殺されそうになるのを……)

桑田(舞園が殺人を犯そうとするのを……!)

桑田「……どうして殺人を止めなかったんだよ!」

モノクマ「止めるわけないじゃん! むしろボクはこれを待っていたんだよ!」

モノクマ「おっと、もう結構時間が経っちゃったね」

モノクマ「じゃあ、捜査を頑張ってくださいね!」

モノクマ「だって、やるしかないんだから!」

モノクマ「では後ほど、学級裁判でお会いしましょう!」

桑田(そう言って、モノクマはどこかへと消えてしまった)

桑田(残されたオレ達の間には重苦しい空気が流れていた)

桑田(当然だよな……この中に殺人を犯した人間がいるのかもしれねーんだから)

霧切「落ち込んでる場合じゃないわ」

苗木「霧切さん……」

霧切「それに、このまま互いをまるっきり信じないのは……どうかと思うわ」

葉隠「へ?」

霧切「協力は必要よ……もっとも、誰を信用するかは自分次第だけどね……」

セレス「確かに、いつまでも死人の事を引きずっていても、仕方がありませんわね」

朝日奈「そんな言い方って……」

石丸「争いはやめるんだ! 今はそれどころじゃないだろう!」

腐川「そ、そうよ……このまま何もせずに学級裁判が始まったら、みんな殺されちゃうのよ!」

十神「クロ以外はな……」

苗木「え?」

十神「この状況はクロにとってはむしろ良い状況だろう、このままいけば自分が指摘される証拠も発見されないんだからな」

山田「よ、よーっし! 捜査するぞー!」

桑田「露骨すぎんだろ……」

葉隠「さっさと犯人捜しを始めるべ!」

霧切「ねえ、現場の保全はどうするの?」

苗木「そうか……犯人が証拠を隠滅する可能性があるのか」

大和田「じゃあ俺が見張りをやってやる……考えるのは得意じゃねーしな」

セレス「待ってください……あなたがクロってことも考えられますわよ?」

大和田「なんだと……!」

大神「……ならば、我も見張りをやろう……それで問題あるまい」

桑田「この二人なら大丈夫だな!」

十神「……」

山田「まさに最強タッグですな!」

大神「そのかわり、捜査の方は頼んだぞ……」

朝日奈「うん……怖いけど、がんばるよ!」

霧切「話し合いは、もういいわね?」

霧切「そろそろ捜査を始めましょう……ここから先は別行動よ」

霧切「だれが舞園さんを殺したのか、その答えにたどり着くために……」

桑田(……絶対に、オレが犯人を見つけてやる!)

十神「待て」

霧切「……? なにかしら?」

十神「お前たち、忘れたわけじゃないだろう……舞園のダイイングメッセージをな」

桑田「ダニ……なんつった?」

霧切「ダイイングメッセージ……被害者が死に際に残した最後のメッセージよ」

不二咲「それって……」

山田「まさか!」

桑田「!」

桑田(みんなの視線がオレに……!)

十神「舞園の体のそばにははっきりと書いてあったはずだ、『クワタレオン』とな」

十神「つまり、現時点で一番怪しいのは桑田、お前だ」

桑田「ち、違う! オレじゃない! あれは……そうだ、罠だ!」

十神「どうだかな……」

桑田「そもそもそれを確かめるための捜査じゃねーか!」

十神「それもそうだが……」

セレス「それではこうしましょう……桑田君を事件現場に入れさせなければいいのです」

桑田「そんな……それじゃオレは捜査できねえじゃねえか!」

セレス「あら、やましいことが無ければ問題はないのではありませんか?」

桑田「そういう問題じゃ……!」

霧切「いいんじゃないかしら」

桑田「お、おい!」

霧切「あなたの潔白を証明するためのものでもあるのよ」

桑田「……クソ、分かったよ……そのかわり、霧切、捜査が終わったらお前がオレに情報を渡してくれ」

霧切「ええ、分かったわ」

霧切「それに……現場以外にも捜査するところはあるかもしれないわ」

桑田(……?)

十神「話はまとまったな」

十神「大和田と大神は現場の監視、桑田は事件現場での捜査を禁止」

セレス「その他は自由に捜査をする、という事でよろしいのですね?」

十神「その通りだ」

霧切「それじゃ、捜査開始よ。モノクマは数時間後なんて言ったけど、実際はどうなるかわからないから」

大和田「俺たちは現場の監視か、さっさと行かねえとな」

大神「そうだな……」

桑田(ああ……みんなが出て行っちまう……オレをクロと思ったまま……!)

桑田「みんな! オレはクロじゃねーんだ!」

葉隠「それを確かめるために捜査するんだべ……」

腐川「ま、捜査するまでもなくクロはあんたでしょうけどね……」

桑田「ふ、腐川……」

腐川「ちょっと、近寄らないでよ! あたしまで殺す気!?」

桑田「そんな……」

苗木「……」

桑田「お、おい苗木! お前は信じてくれるよな……!」

苗木「……今はごめん、桑田君」

桑田「……!」

桑田「みんな……」

午前9時 体育館

桑田(みんな、オレを疑っていた……霧切は信じた感じだったが心の中じゃ疑ってるだろうな……)

桑田(まあ無理もないわな……あんな風にオレの名前が書いてあったら……)

桑田(オレは、これからどうすれば……!)

モノクマ「あれ? まだこんなところで突っ立ってるの?」

桑田「モノクマ……!」

モノクマ「良いの? このままだと桑田君がクロにされちゃうよ?」

桑田「てめえ……!」

モノクマ「そうなると、関係ない人たちまでおしおきされちゃうけどいいのかな?」

桑田「!」

モノクマ「ま、ボクとしては面白ければどっちでもいいんだけどね!」

桑田(そうだ……オレの潔白を知っていて、それを証明できるのは……オレしかいねえ!)

桑田(このままだとみんな殺されちまう!)

桑田「オレが……みんなを救うんだ!」

桑田「クソッ!」タッ




モノクマ「…………まだ一回目だからね、こうなる方が面白いよね?」

午前9時10分 寄宿舎

桑田「さて……みんなを救うとは言ったものの、どうすりゃいいんだよ……」

桑田「舞園の部屋に入れないから何もできねーな」

桑田「霧切は色々言ってたけど……」

桑田「……さっぱり思いつかねえ」

桑田「とりあえずモノクマファイルでも読むか……」

『被害者は舞園さやか……
 死亡時刻は午前1時半頃。
 死体発見現場となったのは、
 寄宿舎エリアにある苗木誠の個室。
 被害者はそのシャワールームで死亡していた。
 致命傷は刃物で刺された腹部の傷。
 その他、右手首に打撃痕あり。
 打撃痕のある右手首は、骨折している模様。』

桑田「『苗木誠の個室』?」

桑田「ちょ、ちょっと待て! 間違ってんぞこれ!」

モノクマ「失礼な!」

桑田「うわ!」

モノクマ「そのファイルに書いてあることはすべて事実だよ!」

桑田(言うだけ言ってどっか行っちまった……)

桑田「っていうかこれが事実だとすると……?」

『モノクマファイル1』を手帳に記録しました。

桑田「苗木に確かめてみっか」

桑田「……ん? なんか集まってんな」

桑田「おい、何やってんだ?」

セレス「あなたも気づいたのでしょう? 死体発見現場の違和感に」

桑田「ああ……そのことを今苗木に聞こうとしたんだ」

セレス「でしたらちょうどいいタイミングですわ」

桑田「ん?」



苗木「昨日の夜、舞園さんが僕の部屋に尋ねてきたんだ」

苗木「いきなりチャイムを連打されて怖くなったって……」

苗木「だから、昨晩だけ僕と舞園さんは部屋を交換してたんだ」

苗木「もしかすると、舞園さんは僕を殺そうとしたクロに殺されたのかも……」

苗木「だとすれば、舞園さんが僕の部屋で発見されたことにも説明が付くよね?」



桑田「部屋を交換してたから舞園は苗木の部屋で死んでいたのか……」

桑田(舞園はオレを殺したら罪を苗木になすりつけるつもりだったのかもな……)


『苗木誠の証言』を手帳に記録しました。

十神「そんなことが信じられると思うか?」

苗木「でも……本当なんだ……証拠にほら、舞園さんの部屋のカギを持ってる」

十神「ふん、そんなもの、舞園を呼び出して殺した後に奪えばいいだけの話だ」

苗木「それはそうだけど……」

腐川「で、でもあんなはっきりとダイイングメッセージが残ってるんでしょ?」

腐川「部屋の交換だか何だか知らないけど、クロは桑田で間違いないじゃない!」

セレス「議論は学級裁判で行うべきですわ……でないと意味がありませんもの」

十神「……」




桑田「……」

桑田(オレが呼び出されたことはまだ言わなくていいかな……)

桑田(もっと証拠を集めないと問答無用でクロにされそうだ)

桑田「というかセレスはオレとちゃんと話してくれんのな」

セレス「あなたを信じたわけではありませんわ……」

桑田「え?」

セレス「もしあなたがクロだとしても、人前で殺人を犯すはずがないでしょう?」

桑田「……」

桑田「あ、そうだ、これも手掛かりに……なるのか?」

桑田「これは無実の証明には役に立たないよな……」

桑田「確かオレはこのメモで呼び出されたんだったな」


『呼び出しのメモ』を手帳に記録しました。

桑田「さて、今度はどこへ行こうか」

桑田「そういや、舞園はあの包丁をどこで手に入れたんだ?」

桑田「……まあ普通に考えて厨房だよな……」

桑田「とりあえず行ってみっか」

午前9時30分 食堂

桑田(誰かいるのか?)

朝日奈「あ」

桑田「……よう」

朝日奈「……うん」

桑田(気まずいなんてもんじゃねーってこれぜってークロに思われてるじゃねーか)

桑田「なあ」

朝日奈「え!? な、なに!?」

桑田「……凶器になった包丁って、そこの厨房から取られたものだったのか?」

朝日奈「うん、昨日の夜は確かにそろってたんだけど……気づいたらなくなってたんだ」

桑田「ふーん……そうか」

桑田(つまり、舞園は厨房から包丁を持ち出して、オレを刺し殺そうとしたわけだ)

桑田(すると…………)

桑田「……ううむ」

朝日奈「……ねえ」

桑田「なんだ、朝日奈?」

朝日奈「……舞園ちゃんを殺したのって、桑田なの?」

桑田「絶対に違う。それだけははっきり言える」

朝日奈「……そうなの」

桑田「ちなみに朝日奈は無実を証明できんのか?」

朝日奈「え?」

桑田「オレは、この後の学級裁判で自分の無実を証明する……そうしたら、朝日奈を含めて他の連中が疑われるだろ?」

朝日奈「ああ、それは大丈夫だよ。私にはアリバイがあるから」

桑田「アリバイ?」

朝日奈「実はね、昨日はさくらちゃんに無理言って私の部屋に泊まってもらったんだ」

桑田「……それだけ大神の事を信頼してるってことか」

朝日奈「うん……だから、私たちはクロじゃないんだ」

桑田「……それは、犯行時刻には二人とも起きていたってことか?」

朝日奈「いや……具体的な時間までは……それなりに遅い時間までは起きていたと思うけど」

桑田(ん?)


『朝日奈と大神のアリバイ』を手帳に記録しました。

桑田「さて、今度は何をするか……」

桑田「何かクロを示す証拠でも転がってねーかな?」

桑田「……あるわけねーか」

桑田「あったとしても、そんなものはすぐに処分するに決まって……!」

桑田「……次はトラッシュルームか……」

午前9時45分 トラッシュルーム

桑田「……特に怪しい様子はねーな……」

桑田「焼却炉へは鉄格子が邪魔で近づけねーし、ここに証拠はなさそうだな」

ガチャ

苗木「あれ?桑田クン?」

山田「く、桑田怜恩殿? どうしてここに!?」

桑田「ただ捜査してるだけだよ……ここは現場じゃねーからな、オレも調べていいだろ」

山田「ええまあ構いませんけども……」

桑田(若干距離を取られてるな……背中は見せようとしねーし)

桑田「お前らも捜査しに来たのか?」

苗木「うん、ちょっと気になってね……」

山田「それじゃ、鉄格子を開けますぞ」

桑田「!? お前鉄格子のカギ持ってんのか!?」

苗木「山田クンは清掃当番なんだってさ」

山田「昨日モノクマに頼まれたのですよ」

桑田「ふーん」

山田「あ、そうそう二人とも僕の視界から外れないで下さいよ?」

苗木「え? なんで?」

桑田「……今一番疑われてる二人だからな」

苗木「ああ……」

山田「さ、開けますぞ」

カラカラカラカラ……

桑田「おお、ほんとに開きやがった」

山田「疑っていたのですか!?」

苗木「ありがとう、山田クン」

桑田「さてと、捜査すっか」

桑田(焼却炉の火は消えてるな……)

桑田「山田、お前は昨日の夜も清掃当番の仕事をしたのか?」

山田「ええ、ちゃんとゴミを燃やした後は火を消して鉄格子のカギをしめましたぞ」

桑田「そうか……」

桑田(だったらトラッシュルームは事件と関係ないのか?)

苗木「あれ? なんか落ちてる」

山田「え?」

桑田「紙屑……メモ帳の紙っぽいな……苗木、ちょっと開いてみろよ」

苗木「うん……これは……コロコロの紙?」

山田「これは髪の毛ですな……」

桑田(赤い短髪に茶髪、黒い長髪に真っ白な長髪……赤いやつは間違いなくオレのだな……)

苗木「ねえ、二人の部屋にはコロコロってあった?」

山田「ありませんでしたな」

桑田「オレの部屋にもそんなもんなかったな」

苗木「ふーん……」

桑田「苗木、それどこに落ちてた?」

苗木「焼却炉の下だよ」

山田「おそらく昨日僕がゴミを処理する時に落としたのでしょう」

山田「よし、今燃やしてしまいますぞ」

苗木「ちょっと待って」

山田「え?」

苗木「それ、証拠かもしれない」

山田「ええええええ!? こんなただのゴミが!?」

苗木「これはみんなにも確認とらないとわからないんだけど、多分僕の部屋にだけコロコロが付いてたんじゃないかな」

山田「何故苗木誠殿の部屋にだけ?」

苗木「さあ……?」

桑田「……クロは舞園を殺した後にコロコロで髪の毛を回収して……」

桑田「で、それを処理するために焼却炉に投げ入れようとして失敗したってことか?」

苗木「そうだと思う。鉄格子から焼却炉までは10m以上あるから。ましてや紙屑だし」

桑田「まあオレなら確実に入れる自信があるけどな」

山田「さすがは超高校級の野球選手……」


『トラッシュルームの紙屑』を手帳に記録しました。

桑田「じゃ、オレは別のとこ調べるわ。お前たちは?」

苗木「僕はもう大体捜査したからね、もう少しここを調べるよ」

桑田「そうか……新しい手掛かり、見つかるといいな」

苗木「……うん」

山田「なーんかこの二人に妙な連帯感が生まれてる気が……」

前10時 寄宿舎廊下

桑田「さて、今度はどこを調査しようか……」

『キーン、コーン……カーン、コーン』

桑田「なんだ?」

モノクマ『えー、ボクも待ち疲れたんで……そろそろ始めちゃいますか?』

モノクマ『お待ちかねの……』

モノクマ『学級裁判をっ!!』

桑田「も、もう始まるのかよ!」

モノクマ『ではでは、集合場所を指定します!』

モノクマ『学校エリア1階にある、赤い扉にお入りください』

モノクマ『うぷぷ、じゃあ後でね~!!』

桑田「ま、まずい! オレの無実を証明する証拠がまったく集まってねえ!」

桑田「どうするどうするどうする……」

桑田「……こうなったら霧切に賭けるしかねえ!」

桑田「…………もう行かねえとな」

桑田「……よし、やってやる、やってやるぞ!」

午前10時10分 学校1階廊下

桑田「この扉か……」

桑田「覚悟を決めろ、オレ!」

桑田「よし!」

ガチャ

桑田(……一斉にこっち向いたな)

石丸「遅いぞ桑田君!」

桑田「わりいな、こんな状況なんだ……心の準備くらいさせてくれ」

腐川「どうせ自分の犯行が明らかになるのが怖かったのよ!」

桑田「……」

モノクマ「全員そろったようだね!」

モノクマ「それじゃ、みんなエレベーターに乗り込んでね!」

モノクマ「ボクは先に行ってるから!」

全員「「「……」」」

十神「……ふん、行くぞ」

腐川「か、覚悟しておきなさい、桑田」

葉隠「……」

山田「桑田怜恩殿……」

桑田(みんな……やっぱりオレを疑ったままなのか)

桑田(次々と乗り込んでいく……)

苗木「桑田クン」

桑田「……?」

苗木「僕にはまだ桑田クンがクロなのかシロなのか分からないけど……」

苗木「そのどっちでも、真実を暴いて見せるから」

桑田「……おう!」

苗木「じゃあ先に行くからね」

桑田「ああ」

桑田(苗木……)

霧切「桑田君」

桑田「……霧切」

霧切「私が見つけた手掛かりはこのメモにまとめてあるわ」

桑田「サンキューな、霧切」

桑田「オレが見つけたやつもまとめてあるから、渡しておくよ」

桑田「霧切の事だから漏れとかはないとは思うが……一応な」

霧切「……ありがとう」

桑田「……霧切も、オレの事をクロだと思っているのか?」

霧切「いえ」

桑田「!!」

霧切「そして、苗木君でもないと思うわ」

霧切「私の手掛かりを含めてきちんと考えれば、クロが誰なのか分かるはずよ」

桑田「……そうか」

霧切「私が思うに……あなたはこの中の誰よりもこの事件に関わっているんじゃないかしら」

霧切「おそらく、クロと同じくらいかそれ以上に」

桑田「……多分その推理は合ってると思うぜ」

霧切「でもね、だからこそこの事件の謎は、私ではなくあなたが突き止めるべきよ……」

霧切「もう一人の容疑者、苗木君と一緒にね……」

霧切「でないと、きっと納得しないまま終わってしまう事になるから……」

桑田「霧切……」

桑田(後はオレだけか……)

桑田(……オレが真実を突き止めてやる……)

桑田(オレ自身のために、みんなのために、そして……)

桑田(舞園のために!)

決意を新たにすると、オレはエレベーターへと歩き出した。

一歩一歩進むごとに汗がにじみ鼓動も速くなる。

しかし、それ以上に歩みは強くなっていった。


最後となったオレが乗り込むと、エレベーターは扉を閉め下降を始めた。

耳障りな音を響かせながらエレベーターは地下へ地下へと潜っていく。

まるで大ピンチで駆り出されたピンチヒッターのような気持ちだ。

……オレには代打の経験なんてないんだが。

オレ達の不安をあざ笑うかのように、エレベーターは下降を続ける。

そして、不意にエレベーターは下降をやめ、扉を開く。


そこでオレ達を待ち構えていたのは、16の被告席が円を成す裁判場だった。

まさに、学級裁判のために造られた空間だった。

裁判場に控えていたモノクマに促されるまま、オレ達はそれぞれの被告席に立つ。

オレ達を取り巻く緊張感は周りへと飛び火し、異様な空気を形成していた。

そして幕は開く……

命がけの裁判……

命がけの騙し合い……

命がけの裏切り……

命がけの謎解き……言い訳……信頼……

命がけの……学級裁判……

今回は以上です。
地味な捜査パートでした。
指摘などあったらお願いします。
前回は口調や矛盾など、いろいろすいませんでした。

今回でクロが分かったと思いますが、念のため心の中に留めておいてくれるとありがたいです。
クロ指摘の役割は桑田君に譲ってやってください。

とりあえず弁論準備だけ投下します

 学級裁判 弁論準備

≪モノクマが語る学級裁判とは一体……?
犯行現場に残された自分の名前、
桑田は自らの無実を証明できるのか?
そして、舞園さやかを殺害したクロとは……≫


≪言弾(コトダマ)≫
 ※桑田調べ
  【モノクマファイル1】
   舞園さやかの死体の状況が書かれている。
   詳しくは>>73を参照。

  【苗木誠の証言】
   事件のあった夜、舞園さやかと苗木誠は部屋を交換していたらしい。
   そのことは二人以外は知らなかったようだ。

  【呼び出しのメモ】
   舞園さやかから届けられたらしいメモ。
   届けられたのは午前1時であった。

  【朝日奈と大神のアリバイ】
   事件のあった夜、朝日奈と大神は同じ部屋で寝ていたらしい。
   朝日奈はアリバイが成立すると言っているが……。

  【トラッシュルームの紙屑】
   トラッシュルームの焼却炉の下に、メモ帳でくるまれたコロコロの紙が落ちていた。
   コロコロの紙には4種類の髪の毛が付着していた。

 ※霧切調べ(苗木の部屋の情報)
  【壁の血文字】
   シャワールームの壁に血で『クワタレオン』と書いてあった。
   一目で読める程はっきりと書かれており、死体の右手側にあった。

  【舞園さやかの両腕】
   両腕とも人差し指には血が付いていた。
   左腕は死体と壁の間に挟まっていた。

  【舞園さやかの背中】
   死体の背中には、三本の直線が交差するように描かれていた。
   接触していた壁にも似た模様が付いておりこちらはカタカナのムのようにも見える。
   おそらく背中の血は壁の血が付着したものと思われる。

  【苗木の部屋の床】
   入り口からシャワールームに至るまでの道筋には、髪の毛は落ちていなかった。
   ただし、それ以外の場所には無数の髪の毛が落ちていなかった。

  【コロコロ】
   なぜか苗木の部屋にだけ置いてあったコロコロ。
   事件の後はあきらかに量が減っていた。

  【苗木の部屋のメモ帳】
   一枚目が破り取られていた。
   二枚目を鉛筆で軽くこすると、誰かを部屋に呼び出す文章が浮かび上がった。

開廷は10時ごろです。

それでは投下します。
今回は学級裁判前半戦です。

 学級裁判 開廷!

モノクマ「まずは、学級裁判の簡単な説明からはじめましょう!」

モノクマ「学級裁判の結果はオマエラの投票により決定されます」

モノクマ「正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき」

モノクマ「だけど……もし間違った人物をクロとした場合は……」

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!」

苗木「本当に、この中に犯人がいるんだよな?」

モノクマ「当然です!」

石丸「よし、みんなで目を閉じよう! そして、犯人は挙手したまえ!」

大和田「アホか、挙げるわけねーだろ……」

桑田「おいモノクマ、あの遺影はどういう意味だ……?」

モノクマ「死んだからって仲間外れにするのはかわいそうでしょ?」

桑田「……」

霧切「だったらあの空席は?」

モノクマ「……深い意味はないよ。最大16人収容可能、ってだけ」

霧切「……そう」

モノクマ「さてと、前置きはこれぐらいにして……そろそろ始めよっか!」

モノクマ「まずは、事件のまとめからだね! じゃあ、議論を開始してくださーい!!」

桑田(始まる……犯人を決める学級裁判が……)

桑田(オレは自分の無実を証明して、本当のクロを指摘する必要がある……)

桑田(でもそのためには……事件の全貌を明らかにしなくちゃならねー!)

 議論開始!

 ≪コトダマ≫
 【舞園さやかの両足】
 【呼び出しのメモ】
 【苗木誠の証言】



石丸「断言しよう! 『殺されたのは舞園さやか』だ!」

葉隠「……そんなんわかってんべ」

セレス「殺人が起きたのは『苗木君の部屋』でしたわね」

朝日奈「その『シャワールーム』だったよね」

不二咲「きっと、シャワールームにいたところを襲われたんじゃないかな……」

腐川「そうよ! きっと、『桑田が無理矢理部屋に侵入して』舞園さやかを刺し殺したのよ!」


ドンッ =【呼び出しのメモ】=>
桑田「それはちげーよ!」

桑田「腐川……そうじゃねーんだよ」

腐川「な、なによ」

桑田「……みんな聞いてくれ、実はみんなに言わなくちゃいけないことがあるんだ」

苗木「……?」

十神「話せ桑田」

桑田「実は……事件のあった夜、オレはあの部屋で舞園と会ってるんだ」

山田「な、なんですとー!」

腐川「ほ、ほら見なさい、やっぱり桑田が犯人なんじゃない!」

桑田「ちげーんだよ……いいか、順を追って話す」

桑田「まずはみんな、これを見てくれ」

葉隠「これは……?」

桑田「舞園からの『呼び出し状』だ」

朝日奈「呼び出し状……?」

桑田「そうだ。つまり、舞園はあの夜オレを自ら招き入れたんだ」

苗木「桑田クン! それは違うよ!」

苗木「だって、舞園さんは!」

桑田「ああ、お前がさっき『証言してた』よな」

『苗木「昨日の夜、舞園さんが僕の部屋に尋ねてきたんだ」』

『苗木「いきなりチャイムを連打されて怖くなったって……」』

『苗木「だから、昨晩だけ僕と舞園さんは部屋を交換してたんだ」』

苗木「うん……あんなにおびえてた舞園さんが、人を呼び出すなんて……」

桑田「でもな、これは事実なんだよ。このメモが証拠だ」

苗木「……そのメモを舞園さんが書いたっていう証拠は?」

桑田「え?」

苗木「そのメモを桑田クンが捏造したかもしれないじゃないか!」

霧切「証拠ならあるわよ」

苗木「……!」

霧切「桑田君……私が見つけた手掛かりの中にあるはずよ」

桑田(このメモを舞園が書いた証拠……それは……)




→【苗木の部屋のメモ帳】
桑田「これだ!」




桑田「そうだろ? 霧切」

霧切「ええ、正解よ」

苗木「僕の部屋のメモ帳……?」

霧切「ええ……そのメモ帳の1枚目は使われていたわ」

桑田「それが多分この『呼び出し状』だ」

苗木「そんな証拠、どこにあるっていうんだよ!」

霧切「……このメモ帳の2枚目を鉛筆で軽くこすると、ある文章が浮かび上がるのよ」

霧切「『呼び出し状』とまったく同じ文面のね」

苗木「それじゃ……本当に舞園さんが……?」

十神「苗木、諦めろ……」

セレス「ちょっと待っていただけませんか?」

桑田「……なんだよ」

セレス「桑田君は舞園さんの部屋へ行ったのでしたよね?」

桑田「そうだけど、なにかおかしい所でもあるのか?」

セレス「おかしいではありませんか……舞園さんは苗木君と部屋を交換していたのですよ?」

セレス「桑田君は、苗木君がいる舞園さんの部屋に行かなければおかしいことになります」

桑田「は? オレはちゃんと舞園がいる部屋についたぜ?」

苗木「……当然だよ……僕の部屋と舞園さんの部屋のネームプレートが入れ替わってたんだから」

霧切「おそらくそれをしたのは舞園さんでしょうね……桑田君を間違いなく自分がいる部屋に導くために」

苗木「でも、どうして彼女がそんなことを……」

桑田「……それは、話の続きを聞けば分かると思うぜ」

苗木「……」

桑田「それじゃ、続きを話すぞ……」

桑田「オレはあのメモの通りに舞園の部屋に向かったんだ」

桑田「ネームプレートを頼りに部屋を探したから、間違いなく舞園がいる部屋へとたどり着けたんだな」

桑田「ちなみにオレはモノクマファイルを見るまではその部屋が実は苗木のへやっだたなんて気付かなかった」

不二咲「つまり、桑田君はその部屋を舞園さんの部屋だと思い込んでいた、ってこと?」

桑田「そうだ。そしてオレは部屋のインターホンを押したんだけどよ……反応が無かった」

桑田「不安になってドアノブに手をかけると、カギがかかっていなかったんだ」

桑田「もしかして舞園の身に何かあったんじゃないかと思って部屋に飛び込むと……」

桑田「舞園に包丁で襲われたんだ」

苗木「!?」

腐川「ちょっと待ちなさいよ! それじゃ、舞園があんたを殺そうとしたみたいじゃない!」

桑田「みたい、じゃなくてそうなんだって!」

苗木「そんな……舞園さんが……嘘だっ!」

桑田「嘘じゃない……これが事実なら舞園が部屋やネームプレートを交換した理由もわかるだろ?」

桑田「つまり舞園は、オレを殺してその罪を苗木にかぶせ卒業しようとしたんだ」

苗木「そんな……」

腐川「……桑田の妄言の可能性は?」

桑田「は?」

腐川「だって……その話には根拠がまるでないじゃない!」

腐川「本当は自分が包丁で襲いかかったんじゃないの? 呼び出されたことを怪しんでさ」

桑田「そんなわけねーだろ!」

桑田(何かないか……オレの話を証明する何かが!)

霧切「……ところで、包丁を持ち出したのは一体誰だったのかしらね」

桑田「……そりゃあ舞園だろ」

腐川「だから、その証拠を出しなさいって言ってるのよ!」

朝日奈「それなら私たちが証人だよ」

大神「うむ」

腐川「証人……?」

腐川「ど、どういうことか説明しなさいよ……」

朝日奈「いいよ。えっとね、昨日の夜、私はずっとさくらちゃんと一緒に食堂で紅茶を飲んでたんだ」

朝日奈「厨房から包丁が抜き取られたのは私たちが食堂にいる間だったんだよ」

葉隠「なぁ、一応聞いとくけど……さくらちゃんって……」

大神「我だ」

葉隠「ですよねー……」

朝日奈「つづけるよ? で、私たちが食堂にいる間に来た人は一人だけだったんだ」

朝日奈「だから、包丁はその人が持ち出したんだよ」

腐川「だ、誰なのよそいつはっ!」

大神「……舞園さやかだ」

腐川「ぐっ……」

桑田「な? 包丁を持ち出したのは舞園だったんだ、その他の証拠から考えてもオレの話は本当だろ?」

腐川「いや……まだよ」

桑田「なに?」

腐川「あんたや朝日奈、大神が共犯関係にあるかもしれないじゃない!」

桑田「共犯も何もオレは犯人じゃねえっつってんだろ!」

十神「……おいモノクマ、共犯者も卒業できるのか?」

モノクマ「良い所に気が付いたね!」

モノクマ「ではお答えしましょう! 共犯者を作るのは自由ですが、卒業できるのはクロ一人だけです!」

十神「つまり、共犯者はなんの得もないというわけだ」

不二咲「でも、犯人がそのことを知らなかったのかも……」

十神「バカ言え、もしこの場に共犯者がいたら、すぐさま名乗り出るはずだ……そいつもクロを指摘しなければおしおき……処刑されてしまうんだからな」

全員「「「……」」」

十神「それはそうと桑田」

桑田「へ?」

十神「確かに包丁を持ち出したのは舞園だった……だが、先に襲いかかったのが舞園だということはまだ証明できていない」

桑田「この期に及んでまだ納得してねーのか……!」

十神「そうだ、確証が無ければ納得することはできん。なにせ、命がかかってるんだからな」

桑田「……」

桑田「……オレは、襲い掛かられたとき、1度目は避けたが、2度目は避けずにあるものでガードしたんだ」

桑田「あの部屋にあった模擬刀だよ」

十神「模擬刀ねぇ……」

苗木「その話は本当だと思うよ……だってほら模擬刀の鞘の部分に傷がついてるでしょ?」

苗木「この傷は、とっさにガードした場合にしかつかないんだ」

石丸「ではこういう可能性はどうだ!」

石丸「舞園くんが部屋に護身用として隠していた包丁を桑田くんが見つけ、それで舞園くんに襲いかかったのだ!」

石丸「その模擬刀の傷は、桑田くんではなく舞園くんがガードした時のものなのだ!」

苗木「いや……それはないよ、石丸君」

石丸「なぜだっ!」

苗木「だって、あの模擬刀は触ると簡単に金箔が剥げて手に付いちゃうんだ」

苗木「実際、現場に残された模擬刀は金箔がかなり剥げてたでしょ?」

苗木「でも、舞園さんの手のひらには金箔なんて付いていなかった……」

苗木「夜時間だからシャワールームで洗い流せなかっただろうしね」

石丸「では、本当に舞園くんが襲い掛かったのか……?」

桑田「……信じてくれたか?」

十神「……桑田、続きだ」

桑田「……オレが模擬刀で防いだあと、オレは鞘から抜いて模擬刀で応戦したんだ」

桑田「部屋の傷はその時のものだ」

桑田「で、しばらく争ったあとにオレは模擬刀で舞園が右手に持ってた包丁を叩き落としたんだ」

桑田「武器を失った舞園はシャワールームに逃げ込んだ」

腐川「で、あんたはシャワールームに押し入って舞園を刺し殺したのね……!」

桑田「ちげーよ! 舞園がシャワールームに入ったあとはオレはなんもしてねえよ!」

桑田「……しっかりカギがかかってたからな、一晩頭を冷やすように言ってオレは部屋に戻ったんだ」

十神「……途中まではいい。死体の右手首には金箔が付いてたからな、あれは模擬刀による傷だろう」

十神「だが、お前の最後の発言は確実におかしい」

桑田(おかしい……? オレは真実しか話してねーぞ)

十神「お前はあの部屋を舞園の部屋だと思っていたようだが……」

十神「実際は苗木の部屋……つまり男子の部屋だったわけだ」

十神「男子の部屋にシャワールームにカギがかかるはずはないんだよ、桑田」

桑田「で、でもあの時はちゃんとカギがかかってたぞ!」

苗木「十神クン、実は僕の部屋のシャワールームのドアは立てつけが悪くなってたんだ」

十神「立てつけ?」

苗木「うん、だからあのドアは開けるのにコツがいるんだ」

苗木「でも、そのコツを知ってるのは僕と舞園さんだけだったから……」

桑田「だからオレはカギがかかってるって勘違いしたのか……」

苗木「桑田クンは舞園さんの……女子の部屋と勘違いしていたみたいだしね」

十神「ふん……なら先に言え。いらん恥をかいた」

苗木「ごめん」

腐川「で? あんたが舞園を殺さずに部屋に戻ったって証拠はあるの?」

桑田「……それは」

霧切「証拠ならあるわよ」

桑田「え?」

霧切「事件のあった苗木君の部屋……その床に桑田君の無実を示す証拠はあったのよ」

桑田「……どういうことだよ?」

霧切「あの部屋の床には、髪の毛が一本も落ちてないところとそうでないところがあったわよね?」

十神「確か……入り口からシャワールームにかけては髪の毛がまったく落ちていなかったな」

苗木「そのかわり、テーブルやベッドの近く……部屋の奥側には髪の毛が色々落ちてたね」

霧切「ええ……腐川さん、これがどういうことか分かるかしら?」

腐川「え、ええと……犯人は一部分の髪の毛しか掃除しなかったってこと?」

石丸「つまり、犯人は自分がいたところだけを掃除したのだな!」

霧切「そういうことよ」

霧切「さて、部屋に残されていた髪の毛は、苗木君、舞園さん、そして桑田君のものだったわ」

霧切「桑田君が犯人だった場合、特定の場所だけ掃除するなんて考えられないわよね?」

霧切「部屋の傷跡から分かる通り部屋中で舞園さんと争ったのだから、部屋中をくまなく掃除するはずよ」

腐川「じゃ、じゃあ桑田は犯人じゃないってこと?」

桑田「だから最初からそう言ってるじゃねえか!」

葉隠「じゃあ犯人は苗木っちだべ! 犯行現場が苗木っちの部屋なんだから間違いないべ!」

苗木「ちょ、ちょっと待ってよ! 僕も犯人じゃないよ!」

葉隠「どうしてだべ?」

苗木「考えてみてよ? 僕が犯人ならさ、そもそも部屋の髪の毛を掃除する必要が無いんだよ」

苗木「だって、あの部屋はもともと僕の部屋なんだから、僕の髪の毛があったっておかしくないじゃないか!」

霧切「そもそも髪の毛が残されていた時点で苗木君も犯人ではないのだけれどね」

不二咲「舞園さんが部屋にいた証拠を消そうとしたんじゃないのぉ……?」

大和田「だったら舞園の死体そのものを何とかするだろ」

セレス「それに、もしそうだったとしたら舞園さんの髪の毛が残ってるのはおかしいですわよね?」

不二咲「そっかぁ……」

霧切「つまり、犯行現場に残された三種類の髪の毛は、逆に苗木君と桑田君が犯人でないという事を示していたのよ」

腐川「……いや、クロはやっぱり桑田よ」

桑田「なんだと?」

腐川「……なんか髪の毛だとか色々言ってたけどね、結局のところ、あのダイイングメッセージがある限りあんたがクロなのは明白なのよ!」

葉隠「そうだべ! あんなはっきりと名前が書いてあるんだべ!」

山田「クロは桑田怜恩殿で決まりですな!」

桑田「だからクロはオレじゃねーんだって! どうして信じてくれねーんだよ!」

霧切「そうね、じゃあ今度はダイイングメッセージについて議論しましょうか」

桑田(せっかく霧切達が無罪の証明をしてくれたんだ!)

桑田(今度は、オレがあのダイイングメッセージが偽物だってことを証明してやる!)

 議論開始!


 ≪コトダマ≫
 【壁の血文字】
 【モノクマファイル1】
 【苗木の部屋のメモ帳】


腐川「私が直接見たわけじゃないけど、壁には血で『クワタレオン』って書いてあったんでしょ?」

腐川「だったらクロは桑田で決まりじゃない!」

朝日奈「でもさ……そもそもあれって、本当に舞園ちゃんが書いたの?」

大神「……今更わざわざ示すことでもないであろう……」

大神「あの血文字が『舞園の右手側にあった』こと……」

大神「さらに『彼女の右手の人差し指に血が付いていた』ことを踏まえれば……」

大神「『あの血文字は舞園さやかが書いた』ということは間違いないのだ!」



ドンッ =【モノクマファイル1】=>
桑田「それはちげーよ!」

桑田「……大神、お前もモノクマファイルには目を通したんだろ?」

大神「ああ……そうだが……」

桑田「なら知ってたはずだぜ、舞園の右手は骨折してるってことをな!」

大神「……!」

桑田「……あれは間違いなくオレが包丁を叩き落とした時に折れたんだ」

桑田「死にかけの人間がわざわざ骨折してる方の手を使うか? 使わねーだろ?」

不二咲「でも……舞園さんは右利きだったから……」

桑田「左手は無事なのにわざわざ痛みがある方を使うのか?」

不二咲「あっ……」

桑田「さて……今説明したとおり、舞園は右手は使わなかった……使えなかったんだよな」

桑田「じゃあ、右手の人差し指の血はどうやって付いたんだろうな?」

腐川「ぐ、偶然付いたんじゃないの?」

苗木「いや……あれはどう見ても偶然によるものじゃなった……」

腐川「また私を否定したわね!」

苗木「そ、そうじゃないよ!」

石丸「まさか、クロの偽装工作だというのか!」

桑田「そうだ」

桑田「クロがそんな工作をした理由は……一つしかねーよな」

苗木「あの血文字をダイイングメッセージに見せかけるため……!」

大神「……舞園が、痛みをこらえながら右手で書いたのかもしれないではないか」

桑田「……万が一舞園が書いたとしよう……だとしたら、血文字は上下は逆さまじゃないとおかしいよな?」

大神「……!」

大和田「そういやあの血文字は上下はちゃんとしてあったな」

桑田「ああ……だからシャワールームに入った瞬間に文字がはっきりと読めたんだ」

腐川「ちゃんと読めるように逆さで書いたとか考えられるじゃない!」

桑田「死に際の人間がわざわざ頭を使ったりすると思うか?」

桑田「結局、あの血文字を舞園が書いたとするとどうやっても不自然になっちまうんだよ」

十神「ならば、あの血文字はダイイングメッセージではない……?」

桑田「じゃああれは誰が書いたのか……クロに決まってるよな」

桑田「オレがクロなら『クワタレオン』なんて書くはずがないだろ?」

腐川「じゃ、じゃああんたは本当にクロじゃないの……?」

桑田「やっと分かってくれたか……」

葉隠「お、おい……じゃあクロは一体誰なんだべ?」

山田「て、手掛かりがもうなくなってしまいましたぞ!」

霧切「手掛かりならまだ残されているわよ」

山田「え?」

霧切「舞園さんの、本当のダイイングメッセージよ」

苗木「本当の……ダイイングメッセージ……」

桑田(それって……)

桑田「舞園の背中の模様のことか?」

霧切「ええそうよ……右手の血は偽装であることが分かったけど、左手の血はどうしてついたのかしらね?」

朝日奈「それも偽装工作なんじゃないの?」

霧切「体勢的にそれはあり得ないわ……体を動かした跡はなかったのに、左腕は体の裏側に周っていたから」

朝日奈「じゃ、じゃあこれは本当に……ダイイングメッセージなの……?」

大和田「でもよーその模様は結局何を示してんだ?」

山田「ただの図形ですからな」

霧切「図形じゃないわ……これはある人物の頭文字よ」

苗木「頭文字?」

大和田「でもよー、こんなもん何を表してんだよ?」

不二咲「ね、ねぇ……」

石丸「どうしたのだ不二咲君!」

不二咲「舞園さんの背中の模様って、壁に書いたやつが写ったんじゃないのかなぁ……?」

石丸「そうか! 彼女は背中ではなく壁にメッセージを残したのだな!」

山田「という事は、真のメッセージは壁の方に……これは!」

大和田「なんか気づいたのか?」

山田「この壁の血、カタカナの『ム』に見えませんか?」

石丸「おお、本当だ!」

葉隠「でも、この中に『ム』が付く奴なんて一人もいねーべ?」

セレス「そもそもそれは本当に『ム』なのですか?」

朝日奈「『ム』だとしたら、線が交差するのっておかしくない?」

腐川「どっちかというと『草かんむり』のような……でも片方が妙に長いのは気になるわね……」

桑田(これが本当にダイイングメッセージなのか?)

霧切「……あなたたち、さっき桑田君が話したことをもう忘れたの?」

桑田(オレが話したことっていうと……)

桑田「そうか! 上下が反対になるのか!」

霧切「……気づいてなかったのね」

桑田(白い目で見られてる……)

苗木「逆さ?」

大和田「逆さって言うと……ああっ!」

石丸「これはカタカナの『サ』ではないか!」

腐川「『サ』が名前につくのって……」

十神「今回殺された舞園『サ』やかと……もう一人いるな」

朝日奈「……! ちょ、ちょっと!」





桑田「大神『サ』くら……お前だよな」


大神「…………」



 

今回は以上です。
本当のダイイングメッセージに関してはすいませんでした。
ロクなネタが思いつかなくてこんな感じになりました、完全に力量不足ですね。

学級裁判後半戦及びおしおきは次回。

ついに第一章もクライマックスです。
桑田君の見せ場がやってまいりました。

では、学級裁判を再開します。

朝日奈「ちょっと待ってってば! みんなさくらちゃんを疑ってるみたいだけどさ、さくらちゃんにはアリバイがあるんだって!」

十神「アリバイ?」

朝日奈「うん、昨日は変な映像見せられて怖くなっちゃったからさ、さくらちゃんには私の部屋に泊まってもらったんだ」

朝日奈「だから、さくらちゃんはクロじゃないんだよ!」

桑田「……朝日奈、お前は犯行のあった午前1時半に大神といたと断言できるか?」

朝日奈「そ、それは……」

十神「それでは大神のアリバイは不成立だな」

朝日奈「そんな……いや、まだ納得できない!」

十神「なんだと?」

朝日奈「大体、そのダイイングメッセージが『サ』なんてただのこじつけじゃん!」

霧切「確かに強引ではあるけど……ただ、これが『サ』であることはほぼ間違いないはずよ」

朝日奈「どういうこと……」

霧切「大神さんが犯人だという証拠があるのよ」

朝日奈「そんなの……嘘だよ!」

霧切「嘘じゃないわ」

霧切「さっきも言った通り、クロはあの部屋の一部を掃除したのよね?」

朝日奈「うん……そんなこと言ってたね」

霧切「それは多分……あの部屋にあったコロコロで回収したからだと思うんだけど……」

霧切「そのゴミは今どこにあるのかしらね」

朝日奈「そんなのもう捨ててるに決まってるじゃない!」

桑田「いや……ここにある」

朝日奈「あるの!?」

山田「それは……トラッシュルームで見つけた……!」

桑田「ああ、焼却炉の下にあったんだ。メモ帳の紙に包まれるようにしてな」

苗木「おそらくクロは焼却炉の中に入れて、次に火が付いた時に燃えるようにしようとしたんだと思う」

苗木「結局焼却炉の中には入らなかったけど、クロはそれでも良かったんじゃないかな」

桑田「清掃当番が燃やし損ねたゴミだと思ってくれるはずだからな」

山田「というか今週の掃除当番である僕はそう思いましたしね……」

桑田「で、このゴミには4種類の髪の毛が付いていたんだ」

桑田「1つ目はオレの赤い髪の毛」

苗木「2つ目は僕の茶色い髪の毛」

桑田「3つ目は舞園の黒い長い髪の毛」

苗木「そして、4つ目は真っ白な長い髪の毛……」

桑田「この髪の毛……大神のだよな?」

大神「……」

霧切「状況的にそれがクロにより焼却炉の下に投げられたことは間違いない……」

霧切「どうしてそれにあなたの髪の毛が付いていたのか説明してもらえるかしら?」

桑田「大神……どうなんだ」

大神「……」

十神「あくまで黙秘権を行使するつもりか」

桑田「……じゃあ今から事件の一部始終を振り返るぞ」

苗木「大神さんの犯行のすべてを……昨晩、あの部屋であったことのすべてをね」



桑田「犯人は、お前なんだ」

 クライマックス推理 開始!

桑田「事件前夜、厨房から包丁を手に入れた舞園は苗木と部屋の交換をしたんだ」

桑田「そして、深夜にオレを呼び出し殺害しようとした」

桑田「だが、オレに模擬刀で反撃された舞園は右手首を攻撃されて包丁を落としてしまう」

桑田「そして舞園はとっさにシャワールームに逃げ込んだんだ」

桑田「苗木の部屋のシャワールームのドアは立てつけが悪くオレは開けることが出来なかった」

桑田「だが、その部屋を舞園の部屋だと思い込んでいたオレはそれを舞園がカギをかけたからだと思ってしまったんだ」

桑田「そして、オレは舞園に頭を冷やすように言って自分の部屋に戻った」

苗木「さて……犯人が行動したのはここからだよ」

苗木「多分、桑田クンが舞園さんの……ボクの部屋から出てくるのを目撃していたんじゃないかな」

苗木「そして部屋の惨状と舞園さんがシャワールームにいることを知って、この部屋で何が起こったのかを瞬時に理解したんだ」

苗木「そして、ひらめいたんじゃないかな」

苗木「『今ここで舞園さんを殺せばすべての罪を桑田クンに被せることが出来る』ってね」

苗木「さらに自分にはアリバイを示してくれる相手もいたから、なおさら好都合だったんだ」

桑田「そして、犯人はシャワールームのドアを強引にこじ開け、舞園を刺し殺したんだ」

桑田「シャワールームのドアが歪んでいたのは、立てつけが悪いのを無視して力任せに開けたからだろうな」

桑田「凶器に部屋に落ちてた包丁を使ったのは、近くにあったのもあるだろうがそれを持ち出したのが自分でないことを証明できるからだ」

桑田「舞園は焦っただろうな……殺し損ねたオレがどこかに行ったと思ったら誰かが部屋に入ってきたんだから」

苗木「そして、舞園さんは刺された後、犯人にばれないように背中の壁に無事な左手でダイイングメッセージを残したんだ」

苗木「舞園さんは犯人の名前を書こうとしたんだけど、残念ながら一文字書いただけで息絶えてしまった」

苗木「さらに背中に書いたせいで文字が上下逆さまになってしったために、あんな奇妙な模様が出来てしまったんだ」

桑田「さて、そんなことには気づかない犯人は舞園が死んだのを確認して、オレに罪を被せるための偽装工作を始めたんだよ」

桑田「シャワールームの壁に血で『クワタレオン』とオレの名前を書き、舞園の右手の人差し指に血を付けたんだ」

苗木「この時の犯人のミスは二つ……」

苗木「一つは舞園さんの右手首が折れていることに気づかなかったこと」

苗木「そしてもう一つは、血文字を上下逆さまで書かなかったことだよ」

桑田「偽装工作を終えたクロは自分がいた痕跡を消すためにコロコロで髪の毛を回収した」

桑田「そして、コロコロのゴミだとばれないようにメモ用紙でくるんでからトラッシュルームで処分しようとしたんだ」

苗木「鉄格子があって焼却炉へは近づけなかったんだけど、犯人は焼却炉の近くにゴミを投げるだけでよかったんだ」

苗木「だって、燃やし損ねたと勘違いした清掃当番が翌朝にでも勝手に燃やしてくれるはずだからね」

桑田「そして犯人は、何事も無かったかのように個室に戻って眠りについたんだよ」




苗木「これが犯行の一部始終だよ」

桑田「そうなんだろ? 『大神さくら』」



大神「…………その通りだ」



 

朝日奈「さくらちゃん!」

大神「……朝日奈、お主を利用するようなことをしてすまなかったな」

朝日奈「どうして舞園ちゃんを殺したりなんかしたの!」

大神「……あのDVDには我の家族の死体が映っていてな、どうしても仇を取らねば気が済まなくなったのだ」

朝日奈「じゃあ……モノクマのせいってこと?」

苗木「だからって……人を殺していい理由にはならないよ」

大神「……その通りだな……舞園や桑田には迷惑をかけた」

大神「すまなかった」

桑田「……どれだけ謝っても舞園は帰ってこねーんだよ」

朝日奈「さくらちゃん……」

苗木「……」

大神「モノクマ……そろそろ投票を始めてくれないか」

モノクマ「うぷぷぷ……わかったよ!」

モノクマ「では、そろそろ投票タイムといきましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票してくださーい!」

モノクマ「一応言っておくけど、必ず誰かに投票してくださいね!」

モノクマ「はい! では張り切って参りますよ!!」

モノクマ「投票の結果。クロとなるのは誰か!?」

モノクマ「その答えは正解なのか不正解なのかーーッ!?」

モノクマ「さあ、どうなんでしょー!」

 VOTE

ダララララ…………

【大神さくら】ダンッ
【大神さくら】ダンッ
【大神さくら】ダンッ

≪GUILTY!!≫

ジャラジャラジャラジャラ……

モノクマ「あらら! 大正解っ!!」

朝日奈「正解……じゃあ本当にさくらちゃんが舞園ちゃんを……?」

モノクマ「そう! 今回舞園さやかさんを殺したクロは……」

モノクマ「大神さくらさんでしたー!!」

朝日奈「そんな……」

苗木「じゃあ舞園さんが桑田クンを殺そうとしたのも……」

モノクマ「全部全部大正解だよー!!」

苗木「……」

モノクマ「そうそう朝日奈さん、いくら信じたくないからって自分に投票するなんて危ないことするね~!」

モノクマ「それ、自殺行為だってわかってる~?」

朝日奈「……」

モノクマ「事実はちゃんと受け止めなきゃ社会じゃやっていけないよ! ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」

桑田(……裁判が始まる前に決意したとおり、オレは自分の無実を証明し真実を突き止めることが出来た)

桑田(だけど、オレの気持ちは決して清々しくは無かった)

桑田(当然だよな……オレの無実をするってことは、代わりの誰かがクロであることを証明するってことなんだから……)

大神「……我は夜中に目が覚めてな、花を摘みに朝日奈の部屋を出たのだ」

大神「用を済まして部屋に戻るときにちょうど舞園の部屋から出る桑田を見かけたのだ」

大神「……あとはお主たちの推測通りだ」

朝日奈「そんなの……そんなの嘘だよ……!」

桑田(……もしオレが舞園の部屋を出ずに一晩過ごしていたら)

桑田(……もしオレがシャワールームにカギがかかっていないことに気づいていたら)

桑田(……もしオレが部屋を出る時にカギをかけていたら)

桑田(……昨日の夜のオレの行動次第で舞園を救えたかもしれない……!)

桑田(そうすれば江ノ島も死なずに済んだし、大神だって殺人を犯さずに済んだ!)

桑田「クッソ……!」

苗木「桑田クン……」

モノクマ「さてと、お話はそのくらいにしてさっさとクロのおしおきを始めちゃおうか~!」

モノクマ「みんな待ってるんだしさっ!」

霧切「……?」

朝日奈「ちょ、ちょっと待ってよ!」

モノクマ「問答無用ッ!! 秩序を乱したら罰を受ける!」

モノクマ「それが社会のルールでしょ!」

モノクマ「今回は超高校級の格闘家である大神さくらさんのために、スペシャルなおしおきを用意させていただきましたぞっ!!」

モノクマ「では張り切っていきましょう! おしおきターイム!」

桑田(そういえばおしおきって一体……?)


          GAME OVER

    オオガミさんがクロにきまりました。
      おしおきをかいしします。
 

モノクマが木づちでボタンを叩くと、どこからかマジックハンドが現れ大神を強制的に広場へと引きずりだし柱に括り付けた。

大神は暴れるそぶりを見せなかったが、もし逃げ出そうとしても無駄だったろう。

なぜなら頑丈な腕輪や足輪で身じろぎ一つできなくなっていたからだ。

たとえ超高校級の格闘家であったとしても、逃げ出すことは不可能だった。

全員がこれから起こることをまったく予測できずにいると、突然周りに無数のモノクマが姿を現した。

――おしおきが始まる。



 ≪千人組み手 ~異種格闘技ハンデ戦~≫


身動きの取れない大神へ、初めに一体のモノクマが襲い掛かった。

そのモノクマは一撃だけを大神に与えどこかへと消えていった。

ただし、鋭く伸びた爪で内蔵を抉る一撃だ。

一体目が消えた直後、すぐさま二体目、三体目の斬撃が大神を襲った。

その攻撃は数を増やしながら絶え間なく続き、ついには大神の姿が見えなくなるほどのモノクマが宙を飛び交った。



――モノクマの攻撃が止んだとき、既に大神は無数の肉片へと姿を変えていた。


 

朝日奈「さくらちゃん!」

モノクマ「エクストリーーーームッ!! アドレナリンがぁーーーー染み渡るーーーーッ!!」

山田「あわ……あわわわわ……」

腐川「な、な、なによ……コレ……!」

不二咲「もう嫌だよ……こんなの……」

モノクマ「それが嫌なら……きっぱりと外の世界との関係を断ち切って、ここでの一生を受け入れるんだね」

桑田(……この学園には、絶望しかないっていうのかよ……)

大和田「クソが……!」

モノクマ「おやおや……随分ボクを憎んでるみたいだね」

モノクマ「でも、ボクを憎むのはお門違いだよ」

モノクマ「今の殺人だって、オマエラが出たいなんて思ったから起きたんでしょ!?」

モノクマ「いつまでたっても外の世界の未練を断ち切れないオマエラが悪いんジャーン!!」

桑田「……全部お前が悪いんだろ……」

モノクマ「ん?」

桑田「全部……全部ぜんぶ全部ゼンブぜんぶゼンブ全部!!」

桑田「舞園が殺意を持ったのも! 大神が舞園を殺したのも! 大神がああやっておしおきされたのも!」

桑田「こんな状況を作りだして動機まで与えたお前が全部悪いんじゃねーか!!」

朝日奈「そうだよ! さくらちゃんはこんな……人を殺すような人じゃない!」

モノクマ「そうやって自分たちが悪いのを人のせいにする……君達若者の悪い所だよ?」

モノクマ「それにね、たかだか二、三日で本性が分かるほど人間は単純なつくりじゃないの、朝日奈さん! 勘違いしないでよね!」

モノクマ「ふん、そんなのがこの国の希望だなんて言うんだから笑っちゃうよね!」

朝日奈「……!」

苗木「モノクマ……!」

霧切「ねぇ……一ついいかしら」

モノクマ「今度はなーに?」

霧切「あなた、さっき『みんなおしおきを待ってる』みたいなことを言っていたけれど……」

霧切「それって誰の事かしら?」

モノクマ「さてね、まだボクからは何も言えないよ」

モノクマ「楽しみは後にとっておかないとね!」

モノクマ「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

桑田(クソ……どこかに行っちまいやがった……!)

初めての学級裁判をクリアしたはずのオレ達にはしかし未だ重苦しい空気が漂っていた。

初めて目にする残酷な『おしおき』に絶望していたのかもしれない。

それとも、この学園生活を支配する絶望の存在に気づいたのだろうか。

確かに、大神が殺人を犯すように仕組んだのはモノクマであり、事件の発端となったのは舞園である。

そして今回の舞園殺しを単純な事件としてみた場合、悪いのはクロである大神で間違いない。

しかし、いかに異常な事態の下であってもその大神をおしおきに……処刑に追い込んだのは紛れもなくオレ達だ。

クロを指摘するとか言ってはいるが、結局のところ『生き残りたければ誰かを殺せ』というのがこの学園生活でのルールだったんだ。

この絶望は、一体いつまで続くんだ……。

―――――――――――
―――――――
――――


モノクマ(うぷぷぷ……始まった……始まったね!)

モノクマ(まさか大神さくらが動き出す前に舞園さやかが行動するなんて思わなかったよ)

モノクマ(でも桑田怜恩は意外にしっかりしてたねえ~)

モノクマ(ボクはあそこでコイツが殺すと思ってたんだけどね……)

モノクマ(それにしても、大神さくらはちゃんと約束を守ってくれたね)

モノクマ(それじゃ、こっちもちゃんと『解放』してやりましょう)

モノクマ(ま、それに意味があるのかは分からないけどねー!)

モノクマ(うぷぷぷぷぷ…………)




 第一章 ミツケル

    END


  ≪残り12人≫


 



   ≪ITEM GET!≫

『絶望道着』を獲得しました。

 

というわけで、第一章(桑田編)はいかがだったでしょうか。
もう少しじっくりと長い文章を書けるようになりたいものです。
ちなみに、絶望道着を身に着けると鬱屈な気分になれます。

第二章はしばらくお待ちください。
構想は出来ているんですが書き溜めがまだ完成していないので。
このSSは(一応)ミステリ(のはず)なので細かい所を含めて章ごとに書き切ってから投下したいんです。


ところで、>>1は投下終了のレスだけageているのですが、投下開始の時もageた方が良いですかね?
投下中sage進行なのはそのままにしようと思っていますが。

お待たせしました。
第二章の開幕です。

今回の主人公は、原作二章で(個人的に)最も熱かったあの男です。

では、投下します。




 CHAPTER 02 週刊少年シンヨウマガジン


 

第一回裁判から二日後

午前7時30分 食堂

苗木「みんなおはよう……」

大和田「よう、苗木……」

石丸「これで……全員か……なんだか随分と少ないな……」

苗木「やっぱり腐川さんと十神クンは来ないんだね……」

葉隠「昨日言ってた通りだべ……」

桑田「それに朝日奈のやつ、今日も朝食会に来ないのか……」

不二咲「朝日奈さん、大神さんがクロだったことにかなりショックを受けてたから……」

苗木「せっかくプールが解放されたのに部屋から出てこないもんね……」

大和田「一応返事はするから生きてることは間違いねーんだけどな……」

石丸「また……このテーブルが広くなってしまったな……」

セレス「3名もの犠牲者が出た上に、ボイコットが3名も出てしまいましたからね」

苗木「6人もいなくなったら……広く感じられて当たり前だね……」

桑田「でもよ、あの二人はともかく朝日奈は呼びに行った方が良いんじゃねーか?」

山田「確かに……元気が取り柄だった朝日奈葵殿が落ち込んでるのを見るといたたまれなくなりますからな……」

苗木「でもどうすればいいのさ? そう簡単にはいかないと思うよ?」

桑田「ぶっちゃけ、大神がクロだって指摘したのはオレだから責任感じてんだよ……」

石丸「そうだな、では僕が常に朝日奈君を説得することにしよう!」

石丸「僕達は前を向かねば生きていくことは出来ないのだと!」

葉隠「石丸っちだけはやめとくべ、そんなことしたら朝日奈っちに殺されかねないべ」

石丸「む、そうなのか? いい案だと思ったのだがな……」

桑田「オレや苗木が言っても逆効果だろうしなぁ……」

不二咲「とりあえず、私が説得してみるよ……ちゃんとご飯食べないと体にも悪いし……」

大和田「……それよりも、問題は十神のヤローだ」

大和田「アイツは放っておくと本当に人を殺しちまうぞ」

山田「……かなり物騒な事を言っておりましたからね」

大和田「やっぱ……縄で縛っておくしかねーだろ……!」

苗木「それはさすがにやりすぎじゃ……」

石丸「そうだぞ大和田くん! こういう状況で1番怖いのは、身内同士の暴走だったりするんだ」

石丸「ほら、学生運動の頃の話にもあるじゃないか!」

大和田「あぁ!? 何が運動会だ! 縄で綱引きでもするつもりかぁ!?」

石丸「さては……君はバカだな!!」

大和田「んだコラ!」

石丸「君は勉強というものをしたことが無いだろう!」

大和田「なんか文句でもあんのか!」

石丸「あるとも! いいか、僕が勉強の素晴らしさをみっちり教えてあげよう!」

大和田「いらねーよそんなもん!」

セレス「さっそく身内同士の暴走が始まってしまいましたわね」

苗木「ははは……」

不二咲「……」

桑田「ん? 不二咲どうした?」

不二咲「自己嫌悪中……なんだぁ……」

山田「自己嫌悪?」

不二咲「昨日……十神君に言われた時……怖くなっちゃって何も言い返せなかった……」

不二咲「結局大和田君に助けてもらって……しかも『弱い者いじめ』なんて言われて……」

不二咲「ホントにダメだよね……弱っちくてさぁ……」

葉隠「大和田っちのせいで不二咲っちが落ち込んじまったべ……」

大和田「オレのせいだっていうのかよ!?」

葉隠「ひぃっ!」

大和田「つーか、オレは悪気があって言ったわけじゃねーぞ!」

石丸「悪気の有無はこの際問題ではない! 君が不二咲君を泣かせたという事実が問題なのだ!」

大和田「オメェはどこまでも楯突いてくるのな……!」

大和田「大体よぉ、女なんだから弱くて当たり前だろっ!」

不二咲「う……うぅ……」

石丸「女だから弱いというのはただの偏見だぞ! 君も大神君を知っているだろう!」

苗木「……朝日奈さんがこの場にいなくて良かったね……」

山田「もう石丸清多夏殿にはしゃべらせないようにしません?」

不二咲「うぅ……」グスッ

大和田「オメェ、泣いてんのか……?」

葉隠「大和田っちが大きな声出すからだべ……」

不二咲「う……うぅ……」

大和田「おい泣くなって……悪かったよ……もう怒鳴ったりしねぇからよ……」

山田「ホントですかな? 怪しいですぞ……」

大和田「そこまで言うなら……」

山田「そこまで言うなら?」

大和田「……わーったよ! 男の約束をしようじゃねーか!」

不二咲「男の……約束……?」

大和田「ああ……前にも言ったかもしんねーけどよ……」

大和田「『男の約束』だけは絶対に守れ……兄貴がオレにこの言葉をのこしたんだ」

山田「のこした……?」

大和田「ああ……兄貴は死んだんだよ……」

苗木「そうだったんだ……」

石丸「ふむ……男の約束、か……」

山田「どうかしましたか、石丸清多夏殿?」

石丸「いやなに、大和田君のお兄さんは立派な人だったのだなと思ったのだ」

大和田「ああ、兄貴は立派だったよ……」

大和田「……この話はやめようぜ、湿っぽくなっちまう」

大和田「……つー訳で、オレはぜってーに怒鳴らねぇからよ。 だからオメェも泣くなって!」

不二咲「うん……ありがと、大和田君……」

大和田「お、おぅ……」

不二咲「でも……こんなんじゃダメだよね……もっと強くならなきゃね……」

石丸「不二咲君、無理に強くなる必要はないのだぞ!」

不二咲「ううん、もっと強くなりたいんだ」

不二咲「……体でも鍛えようかな……」

苗木「だったらさ、朝日奈さんを誘ってみればいいんじゃないかな?」

不二咲「朝日奈さんを……?」

苗木「うん……朝日奈さん、トレーニングとか好きだって言ってたから元気になってくれるかもしれないし……」

石丸「鍛錬は一人でやるよりも大人数でやる方が効果も上がるしな!」

山田「そういう話じゃないと思うんですが……」

不二咲「ふふ……ふふふっ」

葉隠「お、やっと笑ったべ?」

不二咲「うん……ありがとうね、みんな……」

石丸「なんとか不二咲君に元気が戻って良かった良かった!」

不二咲「ふふっ……」

午前9時 石丸の部屋

石丸(そうなのだ……皆でこのように支え合えば……)

石丸(いつか必ずそろってここから出られるはずなのだ!)

石丸(努力はいつだって実を結ぶはずだ!)

石丸(ただ……朝食会をボイコットした三人は気になるな……)

石丸(このコロシアイ学園生活をゲームとして楽しんでいる十神君……)

石丸(疑心暗鬼に囚われてしまっている腐川君……)

石丸(親友がクロとしておしおきされショックを受けている朝日奈君……)

石丸(今後のためにもまた全員で朝食会をしたいのだが……)

石丸「よし! 明日は朝食会に出るように三人を説得しよう!」

石丸「そうと決まればさっそく話をつけにいこう! 善は急げと言うからな!」

石丸「そうだな……まずは十神君を説得しよう!」

石丸(おそらく……彼は図書室にいるはずだ!)

石丸「待っていたまえ! 十神君!」



十神「……!?」ゾクッ



 

午前9時30分 図書室

石丸「たのもーう!!」ガラッ

十神「……」ペラッ

石丸「十神君、僕は君に話がある!」

十神「そうか、俺はお前に話など無い。やかましいから出ていけ」

石丸「いいかね! 十神君が自由時間に何をしようと君の勝手だが、共同生活を送る以上は皆と足並みをそろえてもらわねば困るのだ!」

十神「無視するのか……そもそも俺は朝食会など約束した覚えはないのだがな」

石丸「だが、初めの頃は来ていたじゃないか!」

十神「あれは情報収集のためだ」

石丸「ならばこれからも情報を集めるために朝食会に来てはくれないか?」

十神「あの朝食会にもはや価値など無い」

石丸「なにを……」

十神「現状、学園で調べられることはすでに調べつくしたはずだ。もう新たな情報など出てくるわけがない」

石丸「そんなこと分からないではないか!」

十神「分かる。それが俺とお前ら愚民どもの違いだ」

石丸「むむむ……」

十神「分かったらさっさとここから出ていけ」

石丸「だが……!」

十神「読書の邪魔なんだよ……!」

石丸「……このような薄暗い所で読書などしては目を悪くするぞ! そうだ、朝食会の時に食堂で読んではどうかね?」

十神「しつこいな……この図書館は持ち出し禁止だからここでしか読めないんだよ……!」

石丸「なんだ、ここは貸し出しをしていないのか」

十神「残念ながらな」

石丸「……うん?」

十神「どうした?」

石丸「十神君……その本、昨日も読んでなかったか?」

十神「ああ……このような低俗な本は読んでこなかったのだがな、意外に面白かったのだ」

石丸「ふむ……まだ読み終わっていないのか?」

十神「……この本、思ったよりも長かったんだよ……読み終わるにはしばらくかかりそうだ」

石丸「しばらく……どのくらいだ?」

十神「そうだな、三日はかかるはずだ」

石丸「そうか……」

十神「読みたいのか?」

石丸「うむ、十神君がこれほどはまる小説に興味がわいてな。僕もその手の小説は読んだことが無かったのだ」

十神「ならこれの前作がそこにあるから読んでみるがいい……お前ごときには到底トリックは分からないだろうがな」

石丸「僕もそう思うぞ!」

十神「……」

石丸「ところで、その本に三日もかけるなんて読むスピードが遅すぎやしないか?」

十神「……色々考えながら読んでるんだよ、その位察しろ、この愚民が」

石丸「……君はもう少し言葉遣いに気を配った方が良いと思うぞ」

十神「ならお前はもっと空気を読めるようになれ……」

石丸(十神君とは意外に会話が弾んだな!)

石丸(……結局朝食会に来るとは言ってくれなかったが……きっと来るはずだ!)

石丸(さて、それでは次は誰を説得しにいこうか……)

石丸(……よし、腐川君にしよう!)

午前12時 学校2階廊下

石丸「……腐川君」

腐川「……な、何よ」

石丸「そんなところから図書室を覗いて何をしているのかね?」

腐川「十神君を眺めてるに決まってるでしょ……邪魔しないでよ……」

石丸「ふむ、それはそうと朝食会に明日の朝食会には出てくれないか?」

腐川「いやよ……どうせ十神君は出ないんでしょ」

石丸「ま、まあ確かにまだちゃんと出席の返事はもらってないが……」

石丸「でも彼は必ず来てくれるはずだ!」

腐川「あんたの勝手な妄想をこっちに押し付けないでよ……」

腐川「大体、昨日も言ったとおり毒を入れられる可能性だってあるんだからね……」

石丸「そんなことはみんなで見張り合えばいいではないか!」

腐川「朝っぱらからそんな疑心暗鬼に駆られたくないわよ……」

腐川「ていうかあんた、さっき十神君の邪魔してたでしょ!」

石丸「邪魔などしていない! 仲間と交友を深めていただけだ!」

腐川「それが邪魔してるって言ってんのよ……ホントKYね……」

石丸「KY……? どういう意味だ?」

腐川「あんたこんな流行語も知らないの……? 確かに少し古いとは思ったけどさぁ……」

腐川「ハッ! まさか死語を使うあたしをバカにしてるのね! そうに決まってるわ!」

石丸「腐川君のことをバカになどするもんか!」

腐川「ふん、どうだか……とにかく、邪魔だからどっか行ってよ!」

石丸「明日の朝食会には来てくれたまえよ!」

腐川「行かないわよ!」

石丸「どうしてもなのか?」

腐川「どうしてもよ……まあ十神君が行くなら話は別だけどね……」

石丸「ふむ……やはりカギは十神君なのか……よし、もう一度説得しに行こう!」

腐川「だから十神君の邪魔するなって言ってるでしょ!」

石丸(この後、腐川君と交流を深めることが出来た)

石丸(やはりこのような状況下では仲間と信頼関係を築くことが大切だからな!)

石丸(さて……あとは朝日奈君だな……)

石丸(一応不二咲君が近くにいるそうだが……)

石丸(……腹が減っては戦は出来ぬと言うからな、とりあえず食堂で何か食べるとするか)

午後3時 食堂

石丸「ふむ……フルーツでも食べようか……む?」

石丸「朝日奈君ではないか!」

朝日奈「あ……石丸だ……」

石丸「……もう大丈夫なのか?」

朝日奈「とりあえずはね……」

不二咲「ちゃんとご飯を食べてないようだったから、おやつを食べに来たんだ」

石丸「……あれ、葉隠君も一緒にいたのだな」

葉隠「いや、俺はさっき廊下で会っただけだべ」

葉隠「……けどまあ、朝日奈っちのことは心配だから一緒に食堂に来たんだべ」

朝日奈「葉隠……!」

葉隠「どうしたべ? 惚れたんか?」

朝日奈「……そういう事言わなきゃ惚れてたかもね」

葉隠「ああ! 自分からフラグを折りに行くなんてもったいないことしたべ!」

朝日奈「ふふっ……」

不二咲「……! 朝日奈さんもやっと笑ってくれたね!」

朝日奈「……『も』?」

不二咲「うん……今朝は私が落ち込んでてね……」

葉隠「その時も似たようなことがあって不二咲っちが元気になってくれたんだべ」

朝日奈「そうだったんだ……ありがとうね、二人とも!」

石丸「うむ! やはりは朝日奈君は元気が一番だな!」

葉隠「そうだべ!」

葉隠「さて……それじゃさっそくなんか食べるとするべ。何にするべ?」

石丸「そんなもの、決まっているではないか!」

不二咲「だよね、朝日奈さん?」

朝日奈「うん! もちろん……」

四人「「「「ドーナツ!!」」」」

午後8時30分 寄宿舎廊下

石丸(あの三人は果たして明日の朝食会に来てくれるだろうか……)

石丸(朝日奈君はともかく……十神君と腐川君は……)

石丸(いや! こんな時に仲間を信じずしてどうするのだ!)

石丸(明日は12人がそろう事を信じようではないか!)

石丸(……ん? 誰かが食堂に……)

石丸「大和田君ではないか!」

大和田「よぉ、石丸……お前もなんか食いに来たのか?」

石丸「いや……廊下から君の姿が見えたのでな、ぜひとも交流を深めようと思ってな」

大和田「別にやんなくていいだろそんなもん……」

石丸「そんなもんとはなんだそんなもんとは!」

大和田「……あぁ?」

石丸「いいかね、そもそも人間とは協力し合わねば生きてはいけないのだ!」

大和田「……まあ、そこん所に異論はねぇわな」

石丸「ここでの一生を受け入れるにしろ脱出口を何とかして見つけ出すにしろ、協力や
協調は絶対なのだ!」

大和田「確かにそうだな」

石丸「そうだろう、そうだろう! だから僕は皆の下を訪ねて友好関係を築こうとしているのだ!」

大和田「……そりゃあ殊勝なこったな」

大和田「だがな、俺は別にオメェと友達になろうなんざこれっぽっちも考えてねぇぞ」

石丸「なんだと!?」

大和田「俺はこんなところからさっさと出なけりゃならねえんだよ……!」

大和田「学園の外じゃチームの仲間が俺を待ってるんだよ」

大和田「オメェだってそうなんだろ?」

石丸「確かに、僕の家族が帰りを待ち望んでいるはずだ!」

大和田「な? ……それに、こっから出たらオメェみてぇな優等生とはお別れだ」

石丸「確かにそうかもしれんが……」

大和田「そもそも、俺は優等生とはなっから友達になれるとは思えねぇよ」

石丸「だ、だが……」

大和田「ああもうしつっけえな! あんまり楯突くようなら一発ぶんなぐるぞコラァ!」

石丸「……! 大和田君!」

大和田「な、なんだよ……」

石丸「そうやって君はいつも暴力に頼ろうとするのだな!」

大和田「あぁ!? なんか悪いのかよ!」

石丸「悪いに決まってるだろう! 暴力に頼るのは根性が無いからだ!」

大和田「俺に根性が無いだと……」

石丸「そうだ!」

大和田「オメェ……言うに事欠いてオレを根性無しとかほざきやがったな!」

石丸「僕は事実を述べたまでだ! 君は根性無しだ!」

大和田「ふざけんじゃねぇ! 黙って聞いてりゃペラペラと好き放題言いやがって!」

石丸「なんだと?」

大和田「『超高校級の風紀委員』だか何だか知らねえが人を舐めた真似してると痛い目を見るぞ!」

石丸「ほら! また暴力をしようとしたではないか!」

大和田「ぐっ……!」

苗木「ね、ねぇ二人とも……一体何を騒いでるのさ?」

石丸「おおっ、苗木君! いいところに来たな!!」

苗木「えっ……何が……?」

大和田「苗木! オメェによぉ、頼みがあんだけどよぉ……!」

苗木「嫌な予感がするんだけど……頼みって何?」

大和田「おう、オメェちっと立会人になれや」

苗木「え? 立会人って……?」

大和田「こいつが、さっきからナメたことを抜かしやがんだよ……オレを根性無しだとかよぉ……」

石丸「根性無しだから、すぐに暴力に頼ろうとするのだろう!?」

石丸「根性無しだから、社会のルールを守れずそんな恰好で珍走しているのだろう!?」

大和田「あんだと……!?」

大和田「テメェに……何が分かんだ……」

石丸「君はすでに君自身に負けている! 根性が無いからそれを認めようとしないのだ!」

大和田「じゃあ……テメェにはあるってのか?」

大和田「オレ以上の根性がよぉ……?」

石丸「無論だ!」

大和田「だったら……勝負だ! オレより根性あるってんなら証明してみろや!!」

石丸「望むところだ!」

大和田「つー訳でよ、苗木! オメェが立会人やれや!!」

苗木「勝負って……まさか殴り合ったりしないよね?」

大和田「そうだな……そこの風呂場にはサウナもあったよなぁ……?」

石丸「なるほど、単純明快な勝負だ……」

石丸「『どちらが長くサウナで我慢出来るか』、それを競い合おうという訳だな!」

大和田「そういう事だ、コラァ!!」

午後9時 大浴場

苗木「ね、ねぇ……ホントにやるの?」

大和田「あったりめーだ! あそこまで言われて引き下がれっか!」

石丸「どうせ数分で音を上げるに決まってる!」

石丸「君みたいな連中は口ばかりと相場が決まっているのだ!」

大和田「上等だ……! だったらハンデをつけてやんよ、オレが楽勝過ぎてもつまんね―からな!」

石丸「ハンデだと……?」

大和田「服を着たまま勝負してやんよ!!」

石丸「バカな! 自殺行為だ!」

大和田「あんだぁ? ビビってんのかぁ?」

石丸「そんなわけないだろう! 勝手にしたまえ!」

石丸「……ただ、ハンデ付きで勝っても何の証明にもならないな……よし、僕も服を着たまま勝負してやろう!」

大和田「テメェもか……言ったな? 後で泣き言言ったっておせぇからな!」

石丸「それはこっちのセリフだ!」

苗木「ねぇ……二人とも服を着るんだったら脱いだ方が良いんじゃないかな……?」

石丸・大和田「「……男に二言は無い!!!」」

苗木「……そうなんだ……」

――――――
――――
――

石丸「そ、そろそろ……諦めはら……ほうだ?」

大和田「テメェこそ……ろれつが回ってねーぞ……」

石丸「な、何を言ふか……僕はまだまだ余裕ひゃよ……むしろ逆に寒くなってきた位ひゃ……」

大和田「おい……それかなりヤベーじゃねーか……」

苗木「……もう二人とも意地の張り合いしてないでさ……そろそろやめにしない?」

石丸・大和田「「うるさい!!」」

苗木「……どうなっても知らないぞ……」

『キーン、コーン……カーン、コーン』

苗木「校内放送……もう10時か……あれから一時間経ったの!?」

苗木「ねえ……もう夜時間だしさ、勝負はやめにして引き分けにしない? ね?」

石丸「勝負に引き分けなど存在しなひのら!」

大和田「勝つか負けるか……それだけなんひゃよ!」

石丸「君ぃ……言ってしまったなぁ!」

石丸「じょーとーら……地獄の果てまでつきあってひゃる!」

苗木「……僕はそんなトコまで付き合いきれないよ……」

大和田「あぁ、オメェは部屋に戻ってろ!」

大和田「け、結果は明日の朝に教えてやる……」

石丸「明日の朝を楽しみにしててくれたまへ……」

石丸「こ、この不良が僕に屈するところを見せてあげるさ……!」

大和田「よ、よく言うぜ……今にも限界って顔してるくせに……!」

石丸「それは君のほうらろう!」

苗木「……じゃあ……おやすみ……」

今回は以上です。
(非)日常編を書くのがすごい楽しいです。

第一章でクロを決める時に、
内通者だからさくらちゃんにするか―とか適当に考えたら朝日奈さんが鬱化しかけました。

では、また次回。

こんばんは。
指摘ありがとうございます、直せるところは直していきます。

では、投下します。

深夜1時 サウナ

石丸「……な……おおわ……があるんだ……」

大和田「あぁ……? きこ……ね……」

石丸「こ、このままではふらりろもひんれひまうろ!」

大和田「……ああ……おれはもうだめら……ぐーるぐーるぐーる……」

石丸「と、とりあえずれようれはないか……」

大和田「じごくがみえるれ……」

石丸「ひぐうらな……ぼくもなんら……」

石丸・大和田「「……あはははははははははは!」」





モノクマ(何やってんだコイツラ)



 

深夜1時5分 水風呂

石丸・大和田「「死ぬかと思ったあああああああぁぁぁぁぁぁぁ……」」

石丸「君の方は大丈夫か……?」

大和田「あぁ……なんとかな……そっちは?」

石丸「ちょっとまだくらくらするが、大丈夫のようだ……」

大和田「結局4時間も入ってたのか、オレ達」

石丸「しかも服を着たままでだ」

大和田「こんな事今までしたことねぇよ……」

石丸「僕だってこんな経験初めてだぞ……」

大和田「オメェも結構強い奴だったんだな」

石丸「……いや、僕はまだまだ弱い」

大和田「……そんなこと無いと思うがな」

石丸「……僕は、『強さ』というのは体力や武力で決まるものではないと思っている」

石丸「むしろ、『強さ』は内面によるものが大きいと考えている」

大和田「内面だと……?」

石丸「うむ。自分の『弱さ』にちゃんと向き合い、それを乗り越えて初めて本当の『強さ』は得られるのだ!」

大和田「自分の『弱さ』、か……」

石丸「残念ながら僕はまだ自分の『弱さ』を克服できていないんだ……だから僕はまだ弱い」

大和田「……やっぱオメェはつええよ」

石丸「?」

石丸「さて、いつまでも水風呂に入っているわけにもいくまい! そろそろ上がるぞ、兄弟!」

大和田「兄弟?」

石丸「ともに同じ地獄を経験した僕らは義兄弟と言えるではないか! ……それとも嫌だったのか?」

大和田「兄弟……兄弟か……いい響きだな! 気に入ったぜ!」

石丸「そうか!」

大和田「つー訳でよろしくな、兄弟!」

石丸「うむ!」

深夜1時30分 脱衣所

石丸「ところで兄弟……」

大和田「ん? なんだ?」

石丸「今僕たちは二人とも服を着たままずぶ濡れなわけだが……一体どうするべきだろうか?」

大和田「……勝負で頭がいっぱいでまったく考えてなかったな」

石丸「むぅ……濡れたまま個室まで行くのはさすがに抵抗があるな……」

大和田「……とりあえずランドリーで乾かすか……」

石丸「そうだな……」

深夜1時35分 ランドリー

石丸「まさかランドリーでバスタオル1枚になる日が来るとは思わなかったな」

大和田「オレもだ」

石丸「これが一番現実的だから仕方ないのだが……む?」

大和田「今度はどうした?」

石丸「おかしいな……僕の電子生徒手帳の電源が入らないのだ」

大和田「……ホントだ。オレのも付かねぇ」

石丸「まさか壊れてしまったのか? まあ水の中に入れてしまったから仕方ないのだが……」

大和田「ちょっと待て兄弟、たしかモノクマは……」

『モノクマ「その電子生徒手帳は超優れものなんだよ!」』

『モノクマ「プールに沈めたってへっちゃらなんだから!」』

大和田「水に浸したくらいじゃ壊れないみたいなこと言ってたぞ」

石丸「だがしかし実際に電子生徒手帳が壊れて……!」

モノクマ「それは僕がお教えしましょう!」

石丸・大和田「「うわっ!!」」

モノクマ「なんだよ親切心で出て来てやったのに大きな声出しちゃってさ!」

石丸「す、すまなかった!」

大和田「謝らなくていーんだよ……で? なんで電子生徒手帳が壊れたんだ?」

モノクマ「せっかちさんだなぁもう……」

モノクマ「確かにその電子生徒手帳は耐久性バツグンの優れものですが、たった一つだけ弱点があるのです!」

石丸「弱点?」

モノクマ「その電子生徒手帳は、長時間高温状態にさらされると熱暴走してぶっ壊れてしまうんです!」

大和田「つまり……どういうことだ?」

石丸「電子生徒手帳が壊れたのは、水風呂ではなくサウナに入ったことが原因だったのだな!」

モノクマ「そういうこと! つまり、その電子生徒手帳はサウナに放置すれば勝手に壊れるんだよ!」

大和田「なるほどな……」

モノクマ「でさ、二人ともそれが無いと困っちゃうでしょ?」

大和田「確かに……電子生徒手帳は借りられねえからこのままだと男子更衣室に入れねえもんな」

モノクマ「だからさ、僕がそれを修理してあげるよ!」

石丸「本当か!」

モノクマ「本当だよ! 明日……今日の朝、個室に置いておくからね!」

大和田「電子生徒手帳って壊しても直してくれんのな」

モノクマ「生きてる人の分だけだけどね」

石丸「え?」

モノクマ「だってさ、死んだ人に電子生徒手帳なんていらないでしょ?」

大和田「確かにそうだけどよ……もう少し言い方ってもんがあるだろ……」

モノクマ「ほら、分かったらさっさと個室に戻って!」

石丸「兄弟! ちょうど服も乾いたようだぞ!」

大和田「そうだな……じゃあもう寝るとするか」

石丸「うむ!」

モノクマ「あ、でも二人でコロシアイするなら別に戻らなくてもいいけどねー!」

石丸「滅多な事を言うな!」

大和田「もういねーぞ……どこに消えやがったんだ……」

午前7時 石丸の部屋

石丸「よし、今日もいい朝だ! 窓は無いが!」

石丸「ん? 机の上に電子生徒手帳があるな……うむ、ちゃんと起動するな」

石丸「一体モノクマの持つ技術力はどれほどのものなんだ……」

石丸「……今日こそ脱出の手掛かりを見つけるぞ!」

午前7時30分 食堂

大和田「おう、苗木!」

石丸「昨日は感謝しているぞ、立会人をしてくれて!」

苗木「え? 仲良く……?」

葉隠「なんか朝からずっとこんな調子なんだべ……肩まで組んでるし……」

大和田「親友同士が肩を組むのは当然だろうが!」

桑田「それはちげーよ!」

石丸「仕方がないさ、兄弟……」

石丸「男同士の友情とは血よりも濃いのだッ!! 女同士とは違うのだよ!」

山田「今この場に男しかいないのですが……」

大和田「さすが兄弟、いい事言うぜ……」

苗木「ところで……勝負はどっちが勝ったの?」

大和田「そんな問題じゃねぇんだよッ!!」

苗木「えっ」

石丸「愚問だッ! 共に勝負したという事が大事なのだッ!」

苗木「全然違うじゃん……昨日と言ってること……」

朝日奈「おはよう……」

苗木「朝日奈さん! もう大丈夫なの?」

朝日奈「なんとかね……もう大丈夫だよ」

不二咲「完全復活とまでは行かなかったみたいだけどね……」

桑田「……おい、葉隠」

葉隠「……分かったべ」

石丸「お、おい二人とも! なぜボクを食堂から連れ出すんだ!」

桑田「大和田、お前は分かるよな?」

大和田「……大体分かった」

朝日奈「おはよう……」

苗木「朝日奈さん! もう大丈夫なの?」

朝日奈「なんとかね……もう大丈夫だよ」

不二咲「完全復活とまでは行かなかったみたいだけどね……」

桑田「……おい、葉隠」

葉隠「……分かったべ」

石丸「お、おい二人とも! なぜボクを食堂から連れ出すんだ!」

桑田「大和田、お前は分かるよな?」

大和田「……大体分かった」

十神「……これは何の騒ぎだ」

苗木「あ! 十神くん! 来てくれたんだね!」

十神「……読書に疲れたからな、ただの休憩だ」

苗木「十神君が来たという事は……」

腐川「あたしもいるわよ……何? いちゃ悪いって言うの?」

苗木「そ、そんなことないよ」

石丸「む、あとはセレス君が来れば12人揃うな!」

セレス「もういますわ」

石丸「いつの間に来たのだ!?」

午前10時 石丸の部屋

石丸(今日の朝食会でようやく全員がそろったな!)

石丸(いや、正確には全員ではないのか……)

石丸(…………)

石丸(早く脱出の手掛かりを見つけなければな)

ピンポーン

石丸「ん? 誰だ?」

十神「入るぞ……」ガチャ

石丸「十神君ではないか!」

午前10時 石丸の部屋

石丸(今日の朝食会でようやく全員がそろったな!)

石丸(いや、正確には全員ではないのか……)

石丸(…………)

石丸(早く脱出の手掛かりを見つけなければな)

ピンポーン

石丸「ん? 誰だ?」

十神「入るぞ……」ガチャ

石丸「十神君ではないか!」

石丸「どうしたのだ、十神君?」

十神「……お前は全員脱出を目指しているんだったな」

石丸「当然だ!」

十神「では、そんな方法があると本当に思っているのか?」

石丸「……どういう意味だ?」

十神「クロになる以外に卒業の方法があるかどうかという事だ」

石丸「あるに決まっているだろう!」

十神「それはどういう方法だ?」

石丸「それはだな…………」

十神「答えられないのか……まぁいい……」

十神「これで確信した……俺とお前ではやってるゲームが違う……ただそれだけだ」

石丸「ゲームだと?」

十神「ああそうだ……より正確に言うなら目指すゴールが違うという訳だ」

石丸「十神君! 実際に人が死んでるんだぞ! そんなものがゲームなわけ――」

十神「ゲームなんだよ、コロシアイのな」

石丸「!」

十神「そもそも、生死をかけたゲームなんてこの世の中には山ほどあるだろう……もっとも、お前は知らないだろうがな……」

十神「さて、もう一つ質問だ……お前は、この先殺人が起こると思うか?」

石丸「起こるわけがない!」

十神「なぜそう断言できる? どうしてそんなに甘い考えが出来る?」

石丸「僕達の間に絆があるからだ!」

十神「絆?」

石丸「ああ……それは今日の朝食会で12人が集まったことからもわかるだろう!」

十神「ああそうだ……より正確に言うなら目指すゴールが違うという訳だ」

石丸「十神君! 実際に人が死んでるんだぞ! そんなものがゲームなわけ――」

十神「ゲームなんだよ、コロシアイのな」

石丸「!」

十神「そもそも、生死をかけたゲームなんてこの世の中には山ほどあるだろう……もっとも、お前は知らないだろうがな……」

十神「さて、もう一つ質問だ……お前は、この先殺人が起こると思うか?」

石丸「起こるわけがない!」

十神「なぜそう断言できる? どうしてそんなに甘い考えが出来る?」

石丸「僕達の間に絆があるからだ!」

十神「絆?」

石丸「ああ……それは今日の朝食会で12人が集まったことからもわかるだろう!」

十神「確かに俺は今日の朝食会に参加したが……やはり愚民どもの集まりだったな」

石丸「何!」

十神「そうだろう? 誰もこの現状を打破しようとしていない……ワイワイと騒ぐだけだ……」

石丸「だが! 僕達の間には絆がある! もちろん十神君も含めてだ!」

十神「その絆はモノクマの提示する動機にも敵うものなのか?」

石丸「当然だ!」

十神「……断言してもいいが、必ず次の殺人は起こるぞ」

石丸「なぜだ!」

十神「人間はそういう生き物だからだ!」

十神「自分ためなら他人がどうなろうと構わない、それが人間なんだ」

石丸「それは……」

十神「まあいい、俺の言う事とお前の言う事のどちらが正しいか、もうすぐ分かるぞ」

石丸「どういう意味だ……?」

十神「前回の殺人から数日たった……もうすぐモノクマが動機を提示するはずだ」

石丸「……もし提示されたとしても、殺人なんて起こらない!」

十神「ふん……せいぜい存在しない絆の強さを盲信してるんだな」

石丸「十神君こそ、僕達の絆を舐めない方がいいぞ」

十神「……ふん」バタン

石丸「……」

今回は以上です。

大和田クロフラグをへし折るとしたらこんな感じだと思います、多分。

途中の投下ミスすいませんでした。

どうも、>>1です。

原作からのズレ具合を楽しんでいただけたら幸いです。

では、投下します。

午後9時30分 体育館

苗木「こんな時間に呼び出して何の用だ!」

石丸「そうだぞ! 僕達はもう寝る気マンマンだったんだぞ!」

大和田「兄弟……そういう事じゃないと思うぞ……」

モノクマ「そんな邪険にしないでよ! ボクからオマエラにプレゼントがあるんだから!」

桑田「プレゼント?」

山田「一体どのようなものなのですかな?」

朝日奈「どうせろくなものじゃないよ……」

十神「モノクマの事だ……おそらくプレゼントは動機だろう……」

モノクマ「あーっ! 十神くん先に言っちゃだめだよ! 空気読んでよ雑魚キャラ!」

十神「雑魚キャラだと……!」

モノクマ「という訳で、オマエラに動機をプレゼントしまーす!」

大和田「動機……」

石丸「モノクマ! 僕達はもうお前の思い通りにはならないぞ!」

モノクマ「え?」

石丸「僕達は強い絆を持ってるんだ! 今更お前に何をいわれても僕達はもうコロシアイなんてしない!」

モノクマ「ふ~ん……ま、勝手にそう思ってればいいよ」

モノクマ「それでは、今回の『動機』を発表します!」




モノクマ「今回の動機は、ずばり『過去』です!」


 

石丸「『過去』だと?」

モノクマ「そう! 恥ずかしい思い出や知られたくない過去です!」

モノクマ「人間なら誰でも秘密の過去が存在すると思うんだけど……今回はそれを僕の方で独自に調査させていただきました!」

石丸(秘密の過去……)

モノクマ「それはそこにある封筒に入ってるから、さっさとご覧になっちゃってくださーい!」

石丸「封筒……僕のはこれか」

石丸(みんな僕と同じようにすぐさま封筒に駆け寄っていったな……)

石丸(一体何が書かれているんだ……?)


『石丸クンは中学校2年までおねしょしていた……』


苗木「なっ……!」

石丸「どうして……知ってるんだ……!?」

モノクマ「タイムリミットは24時間でーす!! それまでにクロが出ない場合は……」

モノクマ「この秘密の過去を、世間にバラしちゃいまーす!」

モノクマ「人がたくさんいる所でビラでも撒いちゃおうかなー?」

石丸「確かに知られたくない過去だが……」

石丸(……人間は、こんなことのために人を殺したりするものなのか?)

モノクマ「はい! それじゃ張り切ってコロシアイしてくださいね!」

石丸「おいモノクマ!」

苗木「行っちゃった……」

朝日奈「……最初はびっくりしたけど……でも肩すかしだったかも……」

桑田「確かに秘密をばらされるのは恥ずかしいけどよ……」

桑田「別に知り合いが危険な目に合ってるわけじゃねーんだ……さすがに人を殺す動機にはならねーだろ……」

石丸「皆! 僕に良い考えがある!」

石丸「いっその事、この秘密の過去をここで告白しあうのだ!!」

石丸「そうすれば動機は不成立だ! よし、じゃあ僕から行くぞ!」

大和田「ちょっと待て兄弟……」

石丸「どうした!」

大和田「良いか兄弟……この秘密はただばらされるのが問題なんじゃない……」

大和田「世間でばらまかれるからこそ動機として成立するんだ……」

石丸「……!」

霧切「それに、私達に秘密がばれることすら嫌う人もいるんじゃないかしら?」

霧切「おそらく、秘密の重さは人によって違うでしょうから……」

石丸「そうなのか、みんな……?」

「「「…………」」」

桑田「答えるわけねーだろ……ここで答えたら『これから殺人を犯します』って言うようなもんだからな」

大和田「……そういうことだ」

石丸「そんな……」

石丸(その言葉が合図のように、一人、また一人と体育館を後にしていった……)

十神「おい石丸……お前の言う『絆』はどれだけ強いんだろうな?」

石丸「!」

十神「少なくともここで互いを信じられないような絆なら、とても殺人を食い止められるような絆ではないな」

石丸「そんなはずは……!」

十神「ない、と言い切れるのか?」

石丸「……」

石丸(もう残りは僕と兄弟と不二咲君だけか……)

石丸「じゃあ兄弟……僕は先に個室に戻るとするよ……」

大和田「おう、分かった……またな」

石丸「うむ……」

不二咲「……あのさ、大和田君……」

大和田「なんだ? 不二咲」

不二咲「あのね……」ヒソヒソ

石丸(不二咲君が兄弟に耳打ちを……もしかして彼女は兄弟を秘密を暴露できる程信頼しているのか……?)

午後10時30分 石丸の部屋

石丸(殺人が起こるとすれば今夜……)

石丸(見回りをした方が良いのか、それとも……)

石丸(いや! 僕は皆を信じているんだ!)

石丸(……明日の朝も12人で朝食を取れるはずだ!)

石丸(皆を信じて……今日はもう寝よう……)

――――――
――――
――

石丸『うわあああああああああああ!!!!』

石丸『不二咲君が……殺されてはりつけに……!』

石丸『一体誰がこんなひどいことをしたのだ!?』

大和田『……オレだ』

石丸『……え?』

大和田『……オレは不二咲に嫉妬して……コイツを殺しちまった……』

石丸『そんなはずはない! 兄弟が人を殺すなんて……!』

大和田『けどよ……本当なんだ……』

石丸『嘘なんだろう? 冗談だって言ってくれたまえ!』

大和田『……』

石丸『どうして何も言ってくれないんだ! なぁ兄弟!』

モノクマ『それではクロである大和田くんのおしおきを開始します!』

石丸『ちょ、ちょっと待ってくれ……!』

モノクマ『いやです! 待ちません!』

石丸『待てって言ってるじゃないかあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』

午前1時20分 石丸の部屋

石丸「うああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」ガバッ

石丸「はぁ……はぁ……夢……?」

石丸「どうして……兄弟が不二咲君を殺す夢なんて……」

石丸「僕は……内心では皆を、兄弟を信用していなかったという事なのか……?」

石丸「そんなはずは無い!」

石丸「そんなはずは……無いんだ……!」

石丸「……こんな時間か……寝なおす前にトイレにでも――」




『ぴんぽんぱんぽーん! 死体が発見されました!』


 




石丸「……………………は?」



石丸「ちょ、ちょっと待ちたまえ! どういうことだ今のは!」

モノクマ「どういうことも何も、言葉通りの意味だよ!」

石丸「モノクマ! ……本当に殺人が起こったのか!?」

モノクマ「自分で確かめた方が良いんじゃないかな?」

石丸「何故だ……!」ガチャ

午前1時25分 寄宿舎廊下

石丸「死体はどこだ……おや、腐川君じゃないか」

腐川「い、石丸……あんたも今のアナウンスを聞いて出てきたの?」

石丸「そうだ……腐川君は死体がどこにあるのか知ってるか?」

腐川「知ってるわけないじゃない!」

石丸「そ、そうだな……とにかく、みんなはまだ起きてないようだし、みんなを起こして――」

大和田「兄弟!」

石丸「兄弟も起きてたのか!」

石丸「……どうして校舎の方から来るのだ……!?」

大和田「詳しいことは後だ! 不二咲が水練場で殺された!」

石丸「なんだと……!」

大和田「兄弟と腐川ははやく向かってくれ! 皆はオレが起こす!」

石丸「分かった! いくぞ腐川君!」

腐川「なんであたしまで……!」

大和田「いいから早く!」

腐川「ああもう!」

石丸(不二咲君が……夢の通り殺された……?)

石丸(じゃあ今回のクロは……いや、あれはただの夢だ!)

午前1時30分 学校1-2階階段

石丸「腐川君! もっと急ぎたまえ!」

腐川「これで全力よ! あたしはインドア派の乙女なのよ!」

石丸「す、すまなかった……だがしかし今は!」

腐川「分かってるわよ!」

石丸「よし、水練場に着いたぞ!」

腐川「さっさと開けなさい!」

石丸「ああ!」ガチャ

水練場の扉を開け、最初に飛び込んできたのは床にへたり込む朝日奈君の後ろ姿だった。

朝日奈君はゆっくりとこちらに首を回すとぽつりと

「死んじゃった……死んじゃったよ……」

と呟き、その目からは大粒の涙が流れ出していた。

僕は朝日奈君が抱きかかえる死体であろうそれに目を向けた。

頭は朝日奈君の体に隠れてしまっていたが、体や服装ははっきりと確認することが出来た。

しかし、その服装はどう見ても不二咲君の『それ』ではなく、これはむしろ……

「……葉隠君?」

死体の横に回り込み顔を確認すると、その死体は紛れもなく不二咲千尋ではなく葉隠康比呂のものであった。

ただし、葉隠君は首を絞められて殺されたようで、その顔は見るも無残なものになっていたのだが。

腐川「いやあああああああああああああああああああ!!!!!」

石丸「ど、どうして葉隠君が死んでいるのだ……! 死んだのは不二咲君ではなかったのか!?」

朝日奈「不二咲ちゃん!? なんでここで不二咲ちゃんの名前が出てくるのさ!」

石丸「兄弟が僕達にそう言ったのだ! 『不二咲君が水練場で死んでいる』と!」

朝日奈「そんなわけないでしょ! 水練場で死んでたのは葉隠だったんだよ!?」

石丸「しかし兄弟が嘘をつくとも思えない!」

朝日奈「だったら……本当に不二咲ちゃんが? でもどこに!?」

石丸「そうか! ここは厳密には水練場とは言えない!」

腐川「水練場ってプールの事だったって事?」

朝日奈「じゃあプールで不二咲ちゃんが死んでるっていうの!?」

石丸「その可能性が高い! 早く確認に行くぞ!」

僕はポケットから今朝直ったばかりの電子生徒手帳を取り出すと、男子更衣室に入るためカードリーダーにそれをかざした。

横目で見た限りは朝日奈君達は電子生徒手帳を取り出すのにもたついていたようだった。

その間に僕は男子更衣室に入り、そしてプールへのドアを開いた。

するとそこには、

「……何も無い?」

不二咲君の死体はおろか、それ以外に妙なものも一切見当たらなかった。

以前見た時と全く変わらない、ただのプールだった。

兄弟は何か見間違いをして、不二咲君が殺されたなんて勘違いをしたのか?



そう思った瞬間、

「きゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

突如、朝日奈君の叫び声が女子更衣室から聞こえた。

とっさに女子更衣室のドアノブを掴み中を見渡すと――――――





血染めのカーペットに横たわる不二咲君の姿が、そこにあった。






『ぴんぽんぱんぽーん! 死体が発見されました!』





 

以上です。
石丸の思いもむなしく二番目の事件が発生してしまいました。

次回、非日常編突入。

どうも、>>1です。

非日常編とはいえ今回は地味な捜査パートです。

では、投下します。

午前1時35分 女子更衣室

石丸「うわああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

腐川「ど、どうして……!?」バタン

朝日奈「腐川ちゃん!」

石丸「腐川君! ……どうやら気を失っているだけらしい」

朝日奈「そういえば、腐川ちゃん血が苦手って言ってたもんね……」

石丸「しかしこの惨状はなんなのだ……?」

朝日奈「不二咲ちゃんが……殺されたってこと……?」

石丸「卒業のためなら二人も殺す必要などないのに……一体なぜ……?」

朝日奈「そんなの分からないよ……! ……不二咲ちゃん……葉隠ぇ……」

石丸「朝日奈君……」

朝日奈「なんで……私に関わった人ばっかりこんな目に合うの……?」

朝日奈「……いっそ……私を殺してくれればよかったのに!!」

石丸「……」

腐川「……」ムクリ

石丸「気が付いたか腐川君、血が苦手なら早く部屋の外へ……」

腐川「ギャハハハハハハハ!!!!」

朝日奈「え?」

腐川「血だ! 血がドバーッて! ギャハハハハハ!!!」

腐川「あれ? ここは……女子更衣室?」

石丸「腐川君、混乱しているのだな……無理もない……」

朝日奈「うぅ……うぅ……」

ダダダダ……

苗木「うああああああああああああ!!!!」

桑田「な、なんだよこれ!」

石丸「……どうやらみんな集まったようだな」

午前1時50分 更衣室前

苗木「そんな……不二咲さんと葉隠君が……」

大和田「アイツは……せっかく変わろうとしてたってのに……!」

霧切「……」

モノクマ「さて、みなさんそろったようなのでいつものアレをお配りしますね!」

霧切「……モノクマファイルね」

石丸(夢の中ではなぜか兄弟がクロになっていたが、あれは夢だ……夢なんだ)

朝日奈「みんな! 聞いてよ!」

石丸「?」

桑田「なんだ?」

朝日奈「今回のクロは……もうわかってるよ」

山田「な、なんですとー!?」

セレス「一体誰なのですか?」

朝日奈「……大和田だよ」


石丸「……え?」

 

石丸「ちょ、ちょっと待て! そんなはずは無い!」

朝日奈「なんで?」

石丸「だって! 兄弟は僕達をここに集めたんだぞ! 犯人ならそんなことするはずが……」

朝日奈「ねぇ、大和田は『不二咲ちゃんが殺された』って言ってたんだよね?」

石丸「それがどうしたんだ!」

朝日奈「なんで大和田は女子更衣室の死体を発見できたの?」

石丸「……!」

朝日奈「こんなの……どう考えてもおかしいよね」

石丸「それは……何か事情があったのだ! なぁ兄弟!」

大和田「……」

石丸「どうして何も言ってくれないんだ!」

石丸(これじゃまるで……夢のまんまではないか!)

朝日奈「石丸! ……親友が人を殺すことだってあり得るんだからね」

石丸「……!」

霧切「そこまでにしなさい」

朝日奈「で、でも!」

霧切「議論は捜査の後にすべきよ……でないと、きっと真実は闇の中に消えてしまうわ」

朝日奈「……」

霧切「二人とも、自分の意見を主張するならそれ相応の証拠を集めなさい」

霧切「そして、存分に学級裁判で戦いなさい」

霧切「その方がお互いに納得できるはずよ……そうでしょ?」

朝日奈「分かったよ……」

石丸「ああ……」

石丸(兄弟がなぜ何もしゃべらないのか……それにはきっと何か理由があるはずだ!)

石丸(だって、兄弟が人を殺すなんて……そんなことありえないではないか!)

石丸(僕が、兄弟の無実を証明してみせよう!)

 捜査開始!


午前2時 更衣室前

石丸「まずはモノクマファイルを確認するか」

石丸「どれどれ……」

『被害者は葉隠康比呂と不二咲千尋の二名。
 
 葉隠康比呂は首を絞められて死亡。
 死体は校舎2階更衣室前に横たわっていた。
 
 不二咲千尋は胸部に与えられた一撃が内蔵に至り死亡。
 死体は校舎2階女子更衣室に横たわっていた』

石丸「これだけか? ……僕が見た状況の通りだったのか……この情報は役に立たなそうだな」

石丸「一体なぜ犯人は二人も殺したのだ……?」


『モノクマファイル2』を手帳に記録しました。

石丸「そういえば現場の保全は誰がやっているんだ?」

苗木「それなら、桑田クンと山田クン、セレスさんがやってるよ」

石丸「男子二人はともかく……セレス君も手伝ってくれているのか」

苗木「うん……今回は関係者が多いからね、できるだけ無関係そうな人を見張りにする必要があって……」

苗木「それで、十神君が『どうせ捜査をしないのなら見張りでもしていろ』ってセレスさんに言ったんだ」

石丸「なるほど……今回は現場が二か所あるからな……見張りは多い方が良いのだろう……」

石丸「……葉隠君の死体から調べるか……」

石丸(仲間の死体をいじるのは気分が良いものではないが……仕方ないな)

石丸「……? ポケットの中に何か入っているな……」

石丸「……これは、前回も使われた『呼び出し状』ではないか!?」


『脱出の手掛かりを見つけた。
 モノクマにばれないように、深夜0時に水練場に集合』


石丸「……つまり、葉隠君は深夜0時に呼び出され……殺されたという訳か……?」

石丸「しかし、何故犯人はこのメモを処分しなかったのだろうか……」

石丸「何かの証拠になることも十分考えられるはずなのだが……」

石丸「……ん?」

石丸「どうして葉隠君は電子生徒手帳を持っていないんだ?」


『呼び出し状』を手帳に記録しました。

『葉隠の電子生徒手帳』を手帳に記録しました。

石丸「葉隠君はようやくここから出られると水練場にやってきたところを……」

石丸「犯人に何かで締め殺されたのだな……」

石丸「この首に残っているのは……これはロープか?」

石丸「確か……ロープなら倉庫に大量にあったな」


『首を絞められた跡』を手帳に記録しました。

石丸「葉隠君の死体から分かることはこのくらいか……」

石丸(葉隠君のためにも……絶対にクロを突き止めなければ!)

石丸「次はどこへ……ん?」

石丸「桑田君! 君は何をしているのだ! 男子更衣室なんかに入ってないで早く持ち場に戻りたまえ!」

桑田「いや、違うんだよ。ちょっと気になることがあったっつーか、なんつーか……」

石丸「気になる事とはなんだ?」

桑田「オレさ、昨日この男子更衣室のカーペットの上にジュースをこぼしたはずなんだよ」

石丸「ジュースだと?」

桑田「ああ、それで、結構なシミになってたはずなんだが……消えちまってるんだ」

石丸「ふむ……おそらくモノクマが掃除したのではないか? モノクマはああ見えて結構几帳面なところがあるからな」

桑田「オメーはモノクマの何を知ってんだよ……」


『カーペットのシミ』を手帳に記録しました。

桑田「でもよ、掃除したとしてもモノクマじゃねーと思うぜ」

石丸「どういう意味だ?」

桑田「だって、オレは昨日だけじゃなくて一昨日もここを使ってたんだけどよ、その時は床は掃除されてる風には思えなかったぞ」

石丸「そうか……ではこの裁判が終わったら掃除当番を決めなくてはならないな……」

桑田「余計な事言っちまったかなぁ……」

桑田「とにかく、床を見てみろよ。床は結構汚れてるはず……あれ?」

石丸「汚れどころか塵ひとつないな」

桑田「いやいやあり得ねーって! だって、体育館に集められるまではちゃんと汚れてたからな!」

桑田「そりゃあちゃんと確認してたわけじゃねーけどよ……」

石丸「ふむ……?」


『掃除された床』を手帳に記録しました。

桑田「あれ?」

石丸「まだ何か気になることがあるのか?」

桑田「いやさ、ポスターが変わってるんだよ」

石丸「ポスター?」

桑田「ほら、そこに貼ってあるだろ? 今はなんかよくわからない男の写真になってるけどよ、前はグラビアのねーちゃんの写真だったはずだ」

石丸「……まさかそれを見るためにここに来ていたのか?」

桑田「んな訳ねーだろ!」


『更衣室のポスター』を手帳に記録しました。

桑田「さてと、オレはさっさと持ち場に戻るとするか」

石丸「持ち場はどうなっているのだ?」

桑田「オレが更衣室前、セレスが女子更衣室、山田がその入り口だ」

石丸「ふむ、そうだったのか……」

桑田「これが事件解決のヒントになるのか?」

石丸「いや、ならないぞ。単に僕が気になっただけだ」

桑田「……あっそ」

石丸「それでは……女子更衣室を調べよう」

石丸「本来は男子である僕は入ってはいけないのだが……」

石丸「……仕方ないのか……」

石丸「女子更衣室にはセレス君がいたはずだな」

石丸(そして……不二咲君の死体もそこに……)

石丸「……よし、行くぞ」

午前2時30分 女子更衣室

石丸(部屋に入った瞬間、体を覆い尽くすような血の臭いを感じた……)

石丸(不二咲君……あれ?)

石丸「霧切君は不二咲君のそばで何をしているのだ?」

霧切「検死よ……」

石丸「検死だと!? 君はそんなことが出来るのか!」

霧切「ええ……これも私の才能……らしいわ」

石丸(らしい……?)

霧切「検死にはもう少しかかるから、死体以外の場所を調べていなさい」

石丸「うむ、わかったぞ!」

石丸「霧切君は何でも出来るのだな……推理力もあるし探偵の才能でもあるのではないか?」

石丸「さて、一体どこを調べようか……」

石丸「やはり死体の近くからか……」

石丸「……このカーペット、不二咲君の血で真っ赤に染まってはいるが……」

石丸「元々は男子更衣室のものと同じものだったようだな」


『女子更衣室のカーペット』を手帳に記録しました。

石丸「壁には特に血痕は無し、か……」

石丸「ん? ポスターには血が付いているな……」

石丸「……なぜ女子更衣室にグラビアアイドルのポスターなのだ?」

石丸「それに……こっちの床は掃除されていないな……」

石丸「……?」

石丸「……この部屋で刺殺されたにしては、血痕が少なすぎるような気がするのだが……」

石丸(カーペットが染まるほど血が出た上に、ポスターにまで血が付いているのに……)

石丸(なぜ女子更衣室の壁には血がまったくついていないんだ?)


『更衣室のポスター』の情報を更新しました。

『掃除された床』の情報を更新しました。

『女子更衣室の血痕』を手帳に記録しました。

霧切「石丸君、ちょっといいかしら」

石丸「どうした? 検死が終わったのか?」

霧切「ええ」

石丸「ならば結果を教えてくれないか? あいにくこういうものは不慣れだからな……」

霧切「その前に……服を脱いでくれるかしら」

石丸「何故だ!?」

霧切「上半身だけでいいわ……捜査のためなのよ」

石丸「わ、わかった……」

霧切「……」ジーッ

霧切「…………ありがとう、もう服を着て構わないわ」

石丸(……一体何だったんだ?)

霧切「検死結果を端的に言うわね」

石丸「うむ」

霧切「不二咲さんは鋭利な刃物で胸部を刺され、それが致命傷になったようね」

石丸「やはり一撃だったのか?」

霧切「ええ」

石丸「刃物というのは……また包丁なのか?」

霧切「いや、包丁やナイフよりも、もっと細いはずよ。アイスピックほどではないけれどね」

石丸「ふむ……凶器は見つかっているのか?」

霧切「この部屋はもう調べつくしたし、他からもそういう話は聞こえてこないから……」

霧切「犯人がとっくに処分しちゃったでしょうね」

石丸「処分って……一体どこに捨てるのだ?」

霧切「さぁ……もしくは、自分の私物を凶器に使ったのかも」

石丸「そんなことをしたら凶器が分かったとたんに犯人がばれてしまうぞ!」

霧切「……そうせざるを得ない理由でもあったのかしらね」

石丸「ううむ……」


『検死結果(不二咲)』を手帳に記録しました。

霧切「それと、不二咲さんの電子生徒手帳がなくなっていたわ」

石丸「不二咲くんもなのか?」

霧切「……そういえば葉隠君の電子生徒手帳もなくなっていたわね」

霧切「おそらくは犯人が持ち去ったのでしょうけど……」

石丸「一体何の目的でそんなことをしたのだ?」

霧切「……分からないわ」


『不二咲の電子生徒手帳』を手帳に記録しました。

石丸「現場で調べられることはこれくらいか……」

石丸「そういえば、死体発見時はドタバタしていたからみんながどこにいたか分からないな」

石丸「調べてみるとするか……」

石丸「決して皆の事を疑ってるわけではないぞ! 本当だぞ!」

山田「石丸清多夏殿……一体誰に向かって話しているのですか……」

石丸「やあ山田君! 良い所に来た!」

山田「? 何の用ですかな?」

石丸「君は苗木君達と一緒に水練場にやってきていたが、その時の流れを教えてくれないか?」

山田「うむ! いいですぞ!」

山田「……一時半ごろでしたかな、大和田紋土殿が僕の部屋のチャイムを鳴らして僕を起こしに来たのです」

山田「廊下に出てみると、すでに僕以外の全員は集まっていて……」

山田「そこで、彼から水練場に死体があることを告げられたのです」

石丸「そこで集まっていたのは……水練場に一緒に来た人たちなのだな?」

山田「そうですぞ、間違いありません!」

石丸(確か……水練場に遅れてきたのは……)

石丸(苗木君、桑田君、山田君、十神君、霧切君、セレス君だったな……兄弟はまた別か……)


『山田の証言』を手帳に記録しました。

石丸「む?」

石丸「十神君、気になることがあるのだが……」

十神「……なんだ。今捜査をしているんだ」

石丸「十神君は毎晩図書室で過ごしていたはずだったな……であれば犯行を目撃しているのではないか?」

十神「……ここ最近ちゃんと寝ていなかったからな、今夜は部屋で休んでいた」

石丸「そうだったのか……」

十神「きちんと自分で体調管理も出来なければ完璧とは言えないからな」

十神「とはいえ……こんな面白いことが起こるなら、今夜も図書室に居ればよかったがな」

石丸「そのような言い方はよしたまえ!」

十神「前にも言っただろう……これはゲームなんだ」

石丸「……」


『十神の証言』を手帳に記録しました。

石丸「一応腐川君にも話を聞いてみるか……」

石丸「腐川君!」

腐川「あ! きーくんじゃん! 何の用なのさ!」

石丸「……腐川君?」

腐川「だから何の用なのよ! それよりみてよほら! ちーたんから血がドバドバでてる!」

石丸「……まだ混乱しているのか?」

腐川「あたしは至って正常よ! ギャハハハハハハッ!」

石丸「……」

石丸(あまりにも様子がおかしすぎる気が……まるで別人のようだな……)

石丸「まあ……無理もないな……」


『腐川の妙な言動』を手帳に記録しました。

石丸「とりあえず腐川君は後回しにして……」

石丸「あと分からないのは……兄弟と朝日奈君か……」

石丸「何故二人はこんな夜中に水練場に行ったんだ?」

石丸「聞いてみるか……」

石丸「朝日奈君、ちょっといいか?」

朝日奈「……なに?」

石丸「……どのように死体を発見したのか気になったのだ。あの時の状況を話してくれないか?」

朝日奈「……別にいいけど」

朝日奈「今夜は眠れなかったんだよ……動機なんて提示されちゃってさ」

朝日奈「だから思い切って泳いじゃおうと思ったんだ」

朝日奈「私、まだ水練場を使ったこと無かったからさ……」

朝日奈「で、水練場に行こうとしたら、血相を変えた大和田が水練場から飛び出してくるのが見えて……」

朝日奈「とっさに隠れてやり過ごして水練場に行ったら……」

石丸「葉隠君の死体を発見したという訳か……」

朝日奈「うん……私が死体を発見した瞬間に例のアナウンスが流れたんだよ……」

石丸(……ん?)


『朝日奈の証言』を手帳に記録しました。

石丸「ありがとう朝日奈君」

朝日奈「……犯人は絶対に大和田だからね」

石丸「……それは、学級裁判で話し合うべきだ」

石丸「そこで、僕は兄弟の無実を証明してみせる!」

朝日奈「……ふん」

石丸「……」

石丸(朝日奈君が発見した時にアナウンスが流れた……?)

石丸「モノクマ、聞きたいことがあるのだが」

モノクマ「なーに?」

石丸「『死体発見アナウンス』についてなんだが……」

モノクマ「一応言っておくけどね、あれは推理のためのものじゃないからね?」

モノクマ「あれは公平に捜査させるためのものだから」

石丸「そうなのか……いやそうではなくて……」

モノクマ「?」

石丸「あのアナウンスが鳴る条件の『最初の三人』にクロは含まれるのか?」

モノクマ「……今回は含まれないよ。そこらへんは毎回フレキシブルに対応してるけどさ」

石丸「つまり、クロが死体を再度発見してもアナウンスの流れることはありえないんだな?」

モノクマ「まあそういうことになってるね」

石丸「そうか……もう一つ聞きたいことがある。発見者が2人の時はアナウンスは流れないのだな?」

モノクマ「そうだね。よほどの場合じゃないと、2人しか見つけてない時はアナウンスは流せないよ」

石丸「ふむ……助かったぞモノクマ、一応礼を言っておこうではないか」

モノクマ「そんなの要らないから君の絶望した顔を見せてくれよ! それじゃあね!」


『モノクマの証言』を手帳に記録しました。

石丸「モノクマの言うとおりだとすると……」

石丸「ううむ……」

石丸「とりあえず今は捜査を進めるか……」

石丸「よし、兄弟に話を聞きに行こう」

石丸「桑田君、兄弟がどこに行ったか知らないか?」

桑田「さぁ……?」

石丸「そうか……失礼したな」

石丸「ではどこへ行ったのだろうか……?」

石丸「……探しに行こうか」

午前2時50分 玄関ホール

石丸「ここにもいないのか……」

石丸「ん? 何故こんなところにポストがあるんだ?」

石丸「……電子生徒手帳が4つ入ってるな……」

石丸「……これは死んだ人のものか……」

石丸「……?」

石丸「何故葉隠君のものはあるのに不二咲君のものは無いのだ? モノクマの怠慢か?」

モノクマ「失礼な!」

石丸「本当に君はどこにでもでてくるのだな」

モノクマ「あのね、死んだ人の電子生徒手帳をそこに集めるのは学級裁判の後でやるの!」

モノクマ「だって、証拠を僕の手で揉み消しちゃうことになるかもしれないしね!」

モノクマ「それじゃ引き続き捜査頑張ってね! もう時間が無いよ!」

石丸「……という事は、不二咲君の電子生徒手帳が無いのはむしろ当然で……」

石丸「ここに葉隠君の電子生徒手帳があることがおかしいという事か……?」


『葉隠の電子生徒手帳』の情報を更新しました。

『キーン、コーン……カーン、コーン』

石丸「これは……まさか……!」

モノクマ『えーみなさん眠くて仕方がないと思いますが……』

モノクマ『ぶっちゃけ僕も眠気がやばいのでさっさと学級裁判を始めちゃいますね!』

石丸「そんな理由なのか!?」

石丸「まだ兄弟の話を聞けてないというのに……!」

モノクマ『それでは、校舎1階の赤い扉からお入りくださーい!』

石丸「……行かねばならないのだな」

午前3時 エレベーター前

石丸(どうやら僕が一番乗りのようだ)

石丸(これまでのコトダマを元に考えると……)

石丸(兄弟はクロではない……はずなんだ……)

石丸(このコトダマを皆にぶつければきっと兄弟の無実を証明できる……かもしれない)

石丸(しかし……一体何故犯人はあんなことをしたのだ?)

石丸(それともあれをやったのは犯人ではなかったのか?)

石丸(どちらにしても、あれに一体何の意味があったのだろうか……)

石丸「……皆集まったようだな」

朝日奈「……」

大和田「……」

苗木「……」

十神「おい石丸」

石丸「……なんだね十神君」

十神「俺の言った通り殺人は起きただろう……やはり、お前達には絆など存在しなかったという訳だ」

石丸「……」

十神「その黙秘は肯定と受け取っていいんだな?」

石丸「……いや……僕達の間には絆がある。十神君も含めてだ」

十神「ふん、勝手に言っていろ……盲信もそこまで行くと手におえないな」

石丸「……」

気が付けば、僕以外の全員がすでにエレベーターに乗り込んでいた。

慌てて僕がエレベーターに乗り込むと、ドアが閉まりエレベーターは下降を始めた。

大きな音を立てるエレベーターの揺れを感じながら、僕はこの後始まる学級裁判について考えていた。

葉隠君と不二咲君を殺した犯人を許すことは出来ない。

さらに、現在疑いの目を向けられてる兄弟の無実を晴らさねばならない。

つまり、この事件の真犯人を突き止めなければならないのだ。

……クロがおしおきされ殺されてしまうとしても。

クロを僕達が死に追いやるか、クロが僕達を死に追いやるか……。

……果たして、真犯人を突き止めることは、本当に正しい事なのだろうか?

僕は今から、人を1人殺そうとしているのか……?

答えの無い疑問が頭を埋め尽くしたころ、エレベーターが下降を止め、そのドアを開けた。

僕は、絶望に挟まれながら、地面をしっかりと踏みしめ裁判場へ入っていった。

そして幕は開く……

命がけの裁判……

命がけの騙し合い……

命がけの裏切り……

命がけの謎解き……言い訳……信頼……

命がけの……学級裁判……

以上です。
石丸らしい言葉選びがなかなか難しいものです。

例によって、犯人指摘は石丸君に任せてやってください。


次回、ついに学級裁判です。

最後にageるの忘れてました

こんばんは。

このSSでは、水練場は更衣室前のあのスペースも含んでおります。
ですので、朝日奈は「水練場の扉から大和田が出てくるのが見えたので、とっさに女子トイレに逃げ込んだ」という事を話しています。
「水練場ってプールの事?」は大和田の発言を石丸達が無理矢理解釈した結果です。
混乱を招いたようですいませんでした。


では、弁論準備を投下します。

 学級裁判 弁論準備

≪不吉な夢と共に発生した『葉隠・不二咲殺し』。
 現在最大の容疑者は昨日親友になったばかりの大和田である。
 石丸は親友の無実を証明できるのか?
 そして、葉隠と不二咲の二名を殺害したクロとは……≫


≪言弾(コトダマ)≫
 【モノクマファイル2】
  葉隠、不二咲の死因と発見状況が書かれている。
  詳しくはログを参照。

 【呼び出し状】
  葉隠が所持していた。
  どうやら葉隠は深夜0時に水練場に呼び出されたらしい。

 【葉隠の電子生徒手帳】
  葉隠は電子生徒手帳を所持しておらず、
  なぜか玄関ホールのポストの中に入っていた。

 【首を絞められた跡】
  葉隠の首にははっきりとロープの跡が残っていた。

 【カーペットのシミ】
  男子更衣室のカーペットにあったシミは事件後には綺麗になっていた。

 【掃除された床】
  男子更衣室は、事件後には綺麗に掃除されていた。
  女子更衣室は、掃除されていないようだった。

 【更衣室のポスター】
  男子更衣室には男性アイドルのポスター、
  女子更衣室にはグラビアアイドルのポスターが貼ってあった。

 【女子更衣室のカーペット】
  男子更衣室と同じものが使われているようだが、
  不二咲の血で真っ赤に染まってしまっていた

 【女子更衣室の血痕】
  床やポスターには血が付着しているのに、壁には一切血が付いていなかった。

 【検視結果(不二咲)】
  不二咲は胸を鋭利な刃物で刺され、それが致命傷となった模様。
  刃物は、ナイフほど幅が広くはないが、アイスピックほど細いわけでもないらしい。

 【不二咲の電子生徒手帳】
  葉隠同様、不二咲は電子生徒手帳を所持していいなかった。
  捜査中に発見することは出来なかった。

 【山田の証言】
  山田、苗木、桑田、十神、霧切、セレスの6人は、
  死体発見アナウンス以降は集団で行動していた。

 【十神の証言】
  十神はこの夜、図書室にはおらず個室で睡眠を取っていたという。

 【腐川の妙な言動】
  不二咲の死体を見て気絶した後は、まるで別人のようになっていた。

 【朝日奈の証言】
  水練場から飛び出してくる大和田を目撃した。
  また、葉隠の死体を発見した直後に死体発見アナウンスが流れた。

 【モノクマの証言】
  死体発見アナウンスが流れる条件である『発見者』に今回はクロは含まれない。
  また、死体発見アナウンスは発見者が2人以下の時は流すことが出来ない。

開廷は12時頃です。

では、投下します。

 学級裁判 開廷!

モノクマ「まずは、学級裁判の簡単な説明からはじめましょう!」

モノクマ「学級裁判の結果はオマエラの投票により決定されます」

モノクマ「正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき」

モノクマ「だけど……もし間違った人物をクロとした場合は……」

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!」

モノクマ「それじゃ、議論を開始してくださーい!」

朝日奈「議論なんていらない! 犯人はもうわかってるもん!」

石丸「断言する! その考えは明らかに間違っている!」

朝日奈「そんなこと言うなら論破して見せてよ!」

石丸「望むところだ!」

桑田「……やっぱこうなるわな」

山田「今回はテンポ速いですな」

 議論開始!


 ≪コトダマ≫
 【山田の証言】
 【朝日奈の証言】
 【モノクマの証言】


朝日奈「犯人はアイツしかありえないよ!」

桑田「断言するからにはちゃんとした根拠があるんだよな?」

朝日奈「もちろんあるよ!」

朝日奈「いい? 不二咲ちゃんの死体を見つけた時なんだけど……」

朝日奈「まず、私と腐川ちゃんが死体を見つけたの」

朝日奈「でも、その時は『死体発見アナウンスは流れなかった』んだよ」

朝日奈「これって、私たちの前に死体を見つけた人がいないってことでしょ?」

朝日奈「その後すぐに石丸が死体を見つけて、その時にようやく『死体発見アナウンスが流れた』んだ」

朝日奈「でもね、大和田はその前から『不二咲ちゃんが死んでいることを知っていた』んだよね?」

朝日奈「だったら!」

朝日奈「『クロは大和田しかありえない』んだよ!!」


ドンッ =【モノクマの証言】=>
石丸「それは違うぞ!!」

石丸「クロの可能性があるのは兄弟だけではない!」

朝日奈「……どういう事?」

石丸「僕が死体を発見した時にアナウンスが流れたのは間違いない……」

石丸「しかし、兄弟がクロでなくてもこの状況は成立するんだ!」

朝日奈「それはありえないよ! 大和田がクロじゃなったら私達が見つけた時にアナウンスが鳴るはずだよ!」

石丸「では、もし朝日奈君か腐川君がクロだった場合はどうだ?」

朝日奈「え?」

石丸「モノクマ曰く、クロは『発見者』には加えられないそうなのだ」

苗木「……つまり、大和田クンがクロだとは断定できないってことか……」

朝日奈「私は殺してなんかいない!」

腐川「あたしもよ!」

十神「黙れ二人とも……今は可能性の話をしているんだ……!」

朝・腐「「……」」

セレス「逆に言えば、不二咲さんを殺した犯人はその三人の中にいるという事になりますわね」

石丸(とりあえず論破できたが……まだ兄弟の無実を証明したわけではないな……)

霧切「このままクロについて話し合っても答えは出ないわ。まずは犯行を明らかにしましょう」

十神「その前にモノクマに聞いておきたいことがある」

モノクマ「今度はなにさ?」

十神「今回の事件で二人殺されたわけだが……二人を殺した犯人が別々の場合はどうするのだ?」

山田「クロが二人存在するパターンですな!」

桑田「あ……投票は一人一票で多数決だから……」

モノクマ「ご心配には及びません!」

モノクマ「もしクロが2名だった場合、投票の際にその旨を宣言してもらえばおっけーです!」

モノクマ「その場合はボタンを2つ押せるようにしますので」

モノクマ「もし今回の事件のクロが複数人だった場合、『葉隠クンを殺したのは誰か?』『不二咲さんを殺したのは誰か?』をそれぞれ投票してもらうことになります」

モノクマ「ただし! もしクロが1名なのに2名用の投票をした場合は、問答無用でクロの勝ちとなります!」

モノクマ「当然だよね! シロをクロとして指摘することになるんだから!」

モノクマ「ちなみに、クロが2名なのに1名用の投票をした場合は、指摘されなかった方のクロのみが卒業でき、その他の人は全員おしおきです」

十神「……なるほど。共犯者がいたとしてもそいつもクロになってしまえばいいわけか」

セレス「その時は、共犯者がクロだとばれると共犯者に暴露されますけどね」

霧切「もういいかしら? どちらにしても、犯行を明らかにしなければならないのは変わらないんだから」

石丸「それでは犯行の話に移ろう!」

桑田「まずは凶器からか?」

山田「凶器ですか……確か葉隠康比呂殿は絞殺でしたので……」

石丸「彼の首元にはロープのような跡が残っていた! だからおそらく倉庫にあったロープが凶器だ!」

苗木「多分そうだと思うよ」

苗木「倉庫にあったロープなんだけど……途中が擦り切れてるロープがあったんだ」

苗木「他のロープの上に置いてあったから、多分犯人が犯行後に戻したんだと思う」

苗木「長さも首を絞めるのによさそうな感じだったし」

桑田「良さそうな感じって……」

霧切「葉隠君の方はそのロープで確定のようね」

石丸「問題は不二咲君の方だ……」

霧切「現場から持ち去られてまだ見つかってないとなると……もうすでに処分してしまってる可能性が高いわね」

苗木「じゃあ凶器の特定は無理ってこと?」

石丸「仕方あるまい……」

霧切「そうね……『細い鋭利な刃物』であることは間違いないわけだから……」

桑田「もう『刃物』で良くねーか? どうせ特定できないんだし」

山田「それもそうですな、あまり時間をかけていてもしょうがないですぞ」

霧切「じゃあ次は犯行場所について話しましょうか」

桑田「犯行場所?」

朝日奈「話すことなんか何もないと思うけど……」

石丸(いや……おそらく本当の犯行場所はあそこじゃないはずだ……)

 議論開始!


 ≪コトダマ≫
 【女子更衣室のカーペット】
 【女子更衣室の血痕】
 【モノクマファイル2】


桑田「犯行場所なんか議論するまでもねーだろ」

山田「確かにそうですな……」

苗木「でもさ、一応考えてみようよ」

朝日奈「考えるって言ったってさ……」

桑田「そもそも、『死体を運ぶメリットがまるで無い』だろうが」

朝日奈「まず、『葉隠が殺されたのは更衣室前』だよね」

桑田「で、『不二咲が殺されたのは女子更衣室』だろ?」


ドンッ =【女子更衣室の血痕】=>
石丸「それは違うぞ!」

石丸「桑田君! おそらく不二咲君が殺されたのは女子更衣室ではない!」

桑田「……なんでそんなことが分かんの?」

石丸「君がちゃんと部屋の中を把握できたかはわからないが……女子更衣室に血が広がっているのは確認したのだよな?」

桑田「まあな……血の臭いも酷かったし……」

石丸「そばにあったポスターにまで血が付いていたことから、かなりの勢いで血が噴き出したのだろう……」

石丸「だとすれば、あの部屋は綺麗すぎるのではないか?」

山田「へ?」

石丸「何故ポスターにだけ血が付いて、周りの壁には何も付いていないのだ?」

桑田「……たまたまじゃねーの?」

苗木「いや、それは無いよ……だって、床の血痕だって不二咲さんから流れてるものだけで、飛び散った血痕は見当たらなかったんだ」

朝日奈「じゃあ、不二咲ちゃんが殺されたのは本当はどこだったの?」

石丸「それは……」


→【男子更衣室】
石丸「これだ!」

石丸「不二咲君は、男子更衣室で殺されたんだ!」

桑田「ハァ?」

十神「待て石丸……つまりお前は『不二咲は男子更衣室で殺された後、女子更衣室へ移動させられた』と言うのか?」

石丸「ああ、そういう事だ」

十神「そんなことあり得るわけがないだろう! そんな偽装を行って犯人に一体どんな利得があるというのだ!」

石丸「利得は……おそらく無いだろう……」

石丸「どちらの更衣室にも、葉隠君と不二咲君の電子生徒手帳を使えば入れたから自分の性別を誤魔化せるとも思えないからな……」

石丸「さらに言えば……犯行現場の入れ替えを目撃されるリスクまであったはずだ……」

十神「そうだろう! だから、犯行現場の入れ替えなどあり得ないんだ!」

石丸「しかし! 犯行現場の入れ替えは確かにあったのだ!」

十神「なら、それを証明してみせろ!」

石丸「桑田君、君は現場の女子更衣室に貼ってあったポスターを見たか?」

桑田「オ、オレ? いや……そんなもん見てる余裕なんか無かったから……」

石丸「そのポスターってのはこれなんだが……」

桑田「あっ!」

セレス「どうしました?」

桑田「これ、男子更衣室に貼ってあったポスターだよ! このねーちゃんだもん、間違いねーって!」

山田「ということは……!」

石丸「そうなんだ! 男子更衣室と女子更衣室のポスターは入れ替えられてたんだ!」

苗木「それに、桑田君が作ったカーペットのシミ、あれが消えたのも女子更衣室のかーペットと取り換えられたからだよ」

桑田「じゃあ、男子更衣室が綺麗に掃除されてたのは血痕を消すためだったのか!」

霧切「つまり、不二咲さんは男子更衣室で殺されたあと、女子更衣室に運ばれたのよ」

霧切「『不二咲千尋は女子更衣室で殺された』と思わせるためにね」

十神「では、なぜそいつはそんなことをしたんだ!」

石丸「おそらく、それをやった人物はそうせざるを得ない事情があったのだろう……」

十神「事情? それは先ほどお前が言ったリスクを超える程のものか?」

石丸「ああ……おそらく、利得など度外視の『事情』だったはずだ」

苗木「それが何かは分からないけどね……」

山田「とりあえず、犯行現場を入れ替えたのはクロですよね?」

霧切「さぁ……それはどうかしら?」

山田「はい?」

霧切「必ずしもそうとは言い切れないわ……柔軟に考えていきましょう」

セレス「少々よろしいでしょうか?」

石丸「なんだねセレス君」

セレス「そもそも、不二咲さんはどのようにして男子更衣室に入ったのですか?」

セレス「男子更衣室で殺されたというのであれば、彼女は男子更衣室に自ら入らなければなりません」

セレス「男子更衣室に入るためには男子の電子生徒手帳が必要だったはずですが……」

山田「葉隠康比呂殿のものを使ったのでは?」

石丸「もしそうならば葉隠君の電子生徒手帳は不二咲君が持っていなければならないはずだ!」

石丸「しかし、実際には彼の電子生徒手帳は玄関ホールのポストの中にあったぞ!」

桑田「ポスト?」

十神「確かあのポストには死んだ人間の電子生徒手帳が入っていたな……」

十神「どうせモノクマが運んだんだろう」

石丸「いや、モノクマが電子生徒手帳をあのポストに入れるのは学級裁判後だと言っていた……」

苗木「じゃあ、葉隠君の電子生徒手帳を現場から持ち去ったのは誰?」

石丸「それはまだわからないが……」

桑田「葉隠の電子生徒手帳は置いといてよ、どうやって不二咲は男子更衣室に入ったんだよ」

セレス「誰か他人の電子生徒手帳を利用したのでしょうか……?」

十神「校則に反しないように他人の電子生徒手帳を使うには、死んだ人間のものでなければならない」

十神「だが……使われたのが葉隠のものではないとすると……」

山田「……彼以外に男子はだれも死んでおりませんぞ!」

石丸(……一体どうやって……?)

霧切「それなら簡単よ」

朝日奈「どうやったの?」

霧切「不二咲さんは、自分の電子生徒手帳を使って男子更衣室に入った……ただそれだけよ」

石丸「それは不可能だ! なぜなら男子更衣室には男子の電子生徒手帳でなければ入れないのだからな!」

霧切「なら、こう言い換えた方が良いかしら?」

石丸「……?」

霧切「不二咲『君』は、自分の電子生徒手帳を使って男子更衣室に入ったのよ」

苗木「不二咲……クン?」

朝日奈「え、じゃあ不二咲ちゃんは……!」

霧切「ええ、不二咲千尋は女子ではなく男子だったのよ……そうよねモノクマ?」

モノクマ「あれ? みんな知らなかったの?」

モノクマ「ではここに宣言します!」

モノクマ「不二咲千尋クンは、男の娘だったのでーす!」

桑田「……は?」

朝日奈「えええええええ!!!」

山田「まさか男の娘がこの世に存在していたとは……」

霧切「どう? それなら不二咲さ……不二咲君が男子更衣室に入れたのも納得できるでしょう?」

苗木「じゃ、じゃあまさか犯行現場を偽装したのって……」

石丸「……おそらく、不二咲君が男子であることがばれるのを嫌ったのだろう」

石丸「だから不二咲君の電子生徒手帳は持ち去られていたのではないか?」

石丸「何かの拍子にそれから性別がばれてしまう可能性があったのだからな」

十神「では、犯行現場の入れ替えは死んだ不二咲のために行われたという事か……?」

石丸「そういうことになるな……」

十神「そんな……そんなバカな……!」

苗木「ねぇ、僕こんなもの拾ったんだけど……」

石丸「なんだねそれは?」

苗木「壊れた電子生徒手帳だよ」

石丸「壊れた電子生徒手帳……たしか不二咲君以外の電子生徒手帳はすべて正常に動いていたはずだったな?」

十神「おしおきを受けた大神のものすら正常に起動していたな」

苗木「という事は、やっぱりこれは不二咲……クンのものだったのか……」

山田「それにしてもなんで壊れたんでしょうかねぇ?」

桑田「確か、モノクマは何しても壊れないとか言ってたよな」

モノクマ「いや、何してもとは……」

石丸(電子生徒手帳が壊れた理由……それは一つしかないはずだが……)

石丸(だとしたら……)

石丸「……苗木君、その電子生徒手帳はどこで拾ったのだ?」

苗木「サウナだよ」

石丸「……!」

石丸(奇妙な発言……壊れた電子生徒手帳……その落ちていた場所……不二咲君の秘密……)

石丸「という事は……犯行現場を入れ替えたのは……!」

桑田「石丸! 犯人がわかったのか!」

石丸「まだ犯人とは言い切れない……あくまでも偽装工作をした人だけだ……!」

山田「犯人ではない可能性があるのですか?」

石丸「ああ……だが、どちらにせよこの偽装は犯行自体には関わらなかったはずだ……」

苗木「それって誰なの?」

石丸「それは……」


→【大和田紋土】
石丸「君しか……いない!」

石丸「兄弟……君だけなんだ……こんなことが出来たのは……」

大和田「……」

苗木「本当に大和田君なの……?」

石丸「……電子生徒手帳をサウナに放置すると熱暴走して壊れる……これはモノクマが教えてくれた電子生徒手帳の唯一の弱点なのだが……」

石丸「このことは僕と兄弟だけしか知らないはずだ」

モノクマ「そうですね、その2人以外に電子生徒手帳の弱点は伝えていません」

石丸「そして、僕が不二咲君の死体を発見したのは偽装が行われた後……」

石丸「つまり、僕には犯行現場の偽装は不可能なんだ」

石丸「さらに、ここまでするほど不二咲君との約束を大事にしていたのだ………」

石丸「僕らの元に現れた時は不二咲君のことで頭がいっぱいだったのかもしれない……」

石丸「それに……昨日体育館から戻るとき、不二咲君が兄弟に耳打ちをしていたのだ」

石丸「おそらくその時に不二咲君の性別を知ったのではないか?」

石丸「どうなのだ……兄弟……」

大和田「……そうだよ……犯行現場を入れ替えたのは、オレだ……」

石丸「……!」

大和田「……もちろん、理由は不二咲の性別を隠すためだ」

大和田「だけどよぉ、さすがに一から十まで当たってるわけじゃねえ……」

大和田「……不二咲の性別がばれちまったからもう隠す意味はねぇな……」

大和田「すまねぇな不二咲……男の約束、守れなったぜ……」

石丸(そうつぶやいた後、兄弟はぽつぽつと昨晩の出来事を話し始めた)

午前10時 体育館

石丸『じゃあ兄弟……僕は先に個室に戻るとするよ……』

大和田『おう、分かった……またな』

石丸『うむ……』

不二咲『……あのさ、大和田君……』

大和田『なんだ? 不二咲』

不二咲『ちょっと、大和田君に話したいことがあるんだ……この後、大和田君の個室に行ってもいい?』ヒソヒソ

大和田『別にいいけどよ……ここじゃダメなのか?』ヒソヒソ

不二咲『今はまだ誰にも知られたくないから……ほら、個室って防音がしっかりしてるでしょ?』ヒソヒソ

大和田『そういうことなら……やっぱり秘密関連なのか?』ヒソヒソ

不二咲『うん……だから、詳しいことはまたあとで……誰にも言わないでね!』タッ

大和田『行っちまいやがった……不二咲の秘密か……』

午前11時 大和田の部屋

ピンポーン

大和田『おう、入れや』ガチャ

不二咲『うん……このこと、誰にも言ってないよね?』

大和田『当然だろ……約束したんだからな』

不二咲『……ねぇ、大和田君って約束守ってくれるよね……?』

大和田『もちろんだ……男同士でなくても約束は守らなきゃなんねーもんなんだ』

不二咲『あのね、大和田君にだけは、ボクの秘密を話しておこうと思うんだ……』

大和田『……なんでオレに?』

不二咲『大和田君はいろんな人をまとめてたし……それに、約束を守ってくれると思ったから……』

大和田『約束?』

不二咲『うん……多分明日の夜には秘密がモノクマにばらされちゃうからさ……』

不二咲『その前に自分の口からみんなにボクの秘密を伝えようと思うんだ』

不二咲『だから、ボクが自分で言うまでは秘密にしておいてほしいんだ』

大和田(……こいつは……オレなんかよりもよっぽど『強い』んだな……)

大和田『それで? お前の秘密ってのはなんなんだ?』

不二咲『あのね、実はボク…………………男の子なんだ』

大和田『………………は?』

不二咲『あのね、これが証拠の、』

大和田『ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ! お前が男だって!?』

不二咲『うん……信じてもらえないと思うけど……ほら』

大和田『これ……工具セットじゃねえか! どこでこれを!?』

不二咲『ボクの部屋に置いてあったんだ……モノクマは最初からボクが男子だってわかってたんだよ』

不二咲『これでも信じられないならボクの部屋に来る? シャワールームにカギが無いから分かってくれると』

大和田『いや……信じるよ』

不二咲『本当?』

大和田『ああ……この状況で嘘をつく必要もねぇし、それに……お前のことを信じたいしな』

不二咲『大和田君……!』

大和田『よし、男の約束だ……お前の秘密はお前からみんなにばらすまでは絶対にみんなにばらさねえ!』

不二咲『ありがとう大和田君!』

大和田『それにしても……なんでオレだったんだ? どうせさっき言った理由だけじゃねぇんだろ?』

不二咲『……あのね……大和田君は、ボクの理想なんだ……』

大和田『理想?』

不二咲『ボクは、昔から女っぽくって弱っちくて……それで、いっそ女の子になっちゃえばそういうことも言われなくなると思ってこんな格好をして……』

不二咲『でも、みんなと過ごすうちに思ったんだ……本当にこれでいいのかって……』

不二咲『そんな時、モノクマが秘密をばらすぞって言ってきてさ……』

不二咲『それで思ったんだ、変わりたいって』

不二咲『ボクはこんな弱い自分におさらばして、強くなりたいって思ったんだ!』

大和田『不二咲……』

不二咲『大和田君はとても強いから……』

大和田『……オレが……強い?』

不二咲『うん……単純に力が強いのもそうだけど、チームのリーダーだし……人望もあるし……』

不二咲『それに、いつも堂々としてて立派だなぁって思ってるんだ……』

不二咲『大和田君みたいに、ボクも強くなりたいんだ!』



大和田(……オレは……強い強い強いつよいつよいツヨイツヨイ……)



大和田(……強い?)



大和田『……いや……オレは弱い』

不二咲『そんなこと……大和田君は強いよ!』

大和田『……オレからすれば、お前の方がよっぽど強いさ……』

不二咲『……?』

大和田『……少し前にな、ある男が言ったんだ』

大和田『自分の『弱さ』にちゃんと向き合い、それを乗り越えて初めて本当の『強さ』は得られるんだ、ってな』

大和田『実際その通りだと思うぜ……お前もアイツも、自分の弱さに真正面から向き合って強くなろうとしている』

大和田『でもな、オレは自分の過去から、『弱さ』から逃げちまってる』

大和田『オレも変わりてぇんだよ……でもよ、こええんだよ、過去と向き合うのが……』

大和田『オレは……弱いんだよ……』

不二咲『そんなこと無いよ!』

大和田『不二咲……』

不二咲『大和田君は変わりたいと思ってるんだよね? ……だったら、今は十分だよ』

大和田『でも、オレは、』

不二咲『過去と向き合うのは今じゃなくたっていいと思うんだ』

不二咲『自分のペースでいけばいいと思うな』

不二咲『そりゃあ、モノクマが明日にはばらすとは言ってるけどさ……』

不二咲『それにね、大和田君はボクの希望なんだ』

大和田『希望……?』

不二咲『うん! いつかボクも大和田君みたいになりたいなって思ってるんだ!』

大和田『そうか……』

大和田『なぁ、不二咲』

不二咲『どうしたの?』

大和田『オレの秘密も聞いてくれるか?』

不二咲『ボクなんかでいいなら……でも、大丈夫なの?』

大和田『ああ……なんか、お前と一緒なら変われる気がするんだ』

不二咲『大和田君……!』

大和田『……兄貴がもう死んじまってるのはお前も知ってるだろ?』

不二咲『うん……この前そう言ってたよね……』

大和田『実は……兄貴はオレが殺しちまったんだ』

不二咲『……!』

大和田『細かい説明は省くけどよ……兄貴はオレのいたチームのトップだったんだ』

大和田『オレはナンバー2だったわけだが……ある時、チームのトップをかけてレースをすることになった』

大和田『兄貴にコンプレックスを抱いていたオレは兄貴に勝ちたくてつい無茶な運転をして対向車にぶつかりそうになった……』

大和田『その時、急に兄貴が飛び出してきて……』

大和田『結局、兄貴はオレを助けるかわりに死んじまった……』

大和田『最終的に兄貴は事故死したことになってオレがチームのトップになったんだが……』

大和田『兄貴を殺したのは紛れもなくオレなんだ……オレがあの時無茶な運転をしたから……』

大和田『……別に、オレの罪がばれるのは構わねえんだ』

大和田『兄貴を殺したことはいつか償わねぇといけねえからな……』

大和田『ただ、兄貴の死の真相を知ったら、チームが崩壊してしまうんじゃないかと思ったんだ……』

大和田『そんなことには絶対にさせちゃいけねぇ……!』

大和田『兄貴と約束したんだ……絶対にチームを守り抜くってよ!』

不二咲『……僕はそのチームのみんなの事を全然知らないけどさ……多分そう簡単には崩壊したりしないんじゃないかな?』

大和田『……なんでだ……』

不二咲『だって、大和田君や大和田君のお兄さんがトップだったんだよね?』

不二咲『そんなチームが崩壊する事なんてないと思うんだ』

大和田『……そうなのか……?』

不二咲『……大和田君にとって、その人たちは仲間なんだよね?』

大和田『当然だ……!』

不二咲『だったら、もっと信頼してみたらどうかな? その仲間たちをさ』

大和田『……!』

大和田『不二咲……ありがとな、やっぱお前に話して正解だったわ』

不二咲『こちらこそ……ボクの話を聞いてくれたから……お互い様だよ!』

大和田『さて……これからどうするんだ?』

不二咲『実は……トレーニングしようと思ってるんだ』

不二咲『でも、自分一人でやるのは不安だからできなかったんだ……』

大和田『ああ……あそこは男女で分かれてるからな……』

不二咲『だから、今からやろうと思うんだ』

大和田『今から!? 明日からでもいいんじゃねーのか?』

不二咲『だめだよ、こういうのは思ったその日にしないと!』

大和田『そういうもんなのか?』

不二咲『そういうものだよ!』

不二咲『じゃあ、一旦部屋に戻って……0時30分に男子更衣室に集合ね!』

大和田『あ、ああ……』

不二咲『じゃ、またね!』

大和田(アイツ……ホントに男なんだよな? ……可愛いなチクショウ……)

深夜0時20分 学校1-2階階段

大和田『0時30分って話だったが……10分前なら大丈夫だろ』

大和田『ああでも不二咲はもういるかもしれねぇな……随分張り切ってたから……』

大和田『さてと、久々に体を動かすかね』ガチャ

大和田『……葉隠?』

大和田『おい! 大丈夫か葉隠! しっかりしろ!』

大和田『だめだ……冷たくなっちまってる……』

大和田『殺されたのか!? いったい誰に!?』

大和田『とにかく皆を呼んで来ねえと……!』

大和田『……ちょっと待て……不二咲は!?』

大和田『おい不二咲! 大丈夫か!?』ガチャ

大和田『…………………………不二……咲……?』

大和田『おい……嘘だろ……?』

大和田『おい! 不二咲! 不二咲!』

大和田『変わるって言ったんだろ!? こんなところで死んでんじゃねえよ!』

大和田『不二咲……!』

大和田『とりあえず皆を呼んで来ねえと……!』

大和田『……待てよ……』

大和田『このまま呼びに行ったら……なんで不二咲が男子更衣室にいるんだってことになる……』

大和田『そんなことしたら不二咲が男だってばれちまう……!』

大和田『どうする……どうする……』

大和田『そうだ……女子更衣室で殺されたことにすれば……!』

裁判場

大和田「その後、玄関ホールで適当に電子生徒手帳を持ってきて犯行現場を入れ替えたんだ」

大和田「男子更衣室の血をふいたり、ポスターを張り替えたりな」

大和田「で、それが終わった後兄弟たちを呼びに行ったんだ」

大和田「ホントは朝日奈にも気づいてたけどよ、電子生徒手帳をポストに戻さなきゃならなかったから無視したんだ」

朝日奈「あの時、あんたは気づいてたの……?」

大和田「ああ……」

大和田「もしあの時、トレーニングはやめとけって言っていたら……」

大和田「もしオレがもっと早く水練場に行っていれば、少なくとも不二咲は……!」

石丸「兄弟……」

朝日奈「ちょっと待ってよ!」

大和田「なんだ朝日奈」

朝日奈「あんた……今自分は死体を発見して偽装工作をしただけって言ったけど、どうせ嘘なんでしょ!」

大和田「はあ?」

朝日奈「葉隠も不二咲もあんたが殺したに決まってるよ!」

石丸「そんなはずはない!」

朝日奈「根拠も無しに言われたって全然説得力無いんだよ!」

石丸(根拠なら……ある!)

 議論開始!


 ≪コトダマ≫
 【朝日奈の証言】
 【葉隠の電子生徒手帳】
 【掃除された床】


石丸「『兄弟は犯人ではない』!」

朝日奈「なんでそんなことが言えるのさ!」

桑田「確かに根拠が無いと何とも言えねーな……」

朝日奈「ちゃんと考えてみてよ」

朝日奈「『犯行現場を入れ替えたのは大和田』なんだよ?」

山田「これは本人も認めてるから『事実』で間違いありませんな」

朝日奈「だったら、不二咲ちゃんを殺したのも大和田なんだよ!」

朝日奈「大和田が葉隠を殺した後に続けて不二咲ちゃんを殺して……」

朝日奈「その後犯行現場を入れ替えたんだよ!」

朝日奈「どう? こう考えれば『辻褄が合う』でしょ!」


ドンッ =【葉隠の電子生徒手帳】=>
石丸「それは違うぞ!」

石丸「その考えでは矛盾が生じてしまう!」

朝日奈「ど、どういう事?」

石丸「もし兄弟が不二咲君を殺したとしたら、葉隠君の電子生徒手帳が玄関ホールのポストに入っていたのは一体何故なんだ!」

朝日奈「あ……!」

石丸「男子更衣室に入るには自分のを使えばよいだろう! 葉隠君の電子生徒手帳を持ち出す理由はどこにもない!」

朝日奈「ああ……」

霧切「なら、逆に考えてみましょうか……」

霧切「一体どうして葉隠君の電子生徒手帳は持ち出されたのかしらね?」

桑田「葉隠の大ファンだったから!」

苗木「桑田クン……前回はあんなにカッコよかったのに……なんでこんなに残念に……」

桑田「ぐっ……」

十神「もしそうならわざわざポストに戻したりしないだろう……それに、あの葉隠にファンがいるとも思えん」

山田「なかなかひどいことをおっしゃるのですな」

セレス「では、どうして葉隠君の電子生徒手帳は持ち去られたのですか?」

霧切「電子生徒手帳の使い道を考えれば、答えはおのずと出てくるはずよ」

石丸「電子使徒手帳の使い道……?」

石丸(葉隠君の電子生徒手帳が持ち去られた理由……)

石丸(それは……)


→【男子更衣室に入るため】
石丸「これだ!」

石丸「おそらく、犯人が男子更衣室に入るために葉隠君の電子生徒手帳を使用したんだ!」

苗木「……男子更衣室に入るために他人の電子生徒手帳が必要ってことは……」

大和田「犯人は女ってことか!」

腐川「なんでそれが犯人だって言えるのよ……」

霧切「だって、男子更衣室に入る理由なんてそれしかないじゃない」

霧切「犯行現場の入れ替えは男子である大和田君が行った……」

霧切「であれば、その他に女子が男子更衣室に入る目的は不二咲君を殺すこと、ただそれだけよ」

桑田「つまり、犯人が男子更衣室に入って不二咲を殺し、その後大和田が犯行現場を入れ替えたってことか!」

苗木「ねえ……さっき、不二咲クンを殺したのは大和田クン、朝日奈さん、腐川さんの三人のうちの誰かってことになったよね……」

石丸「つまり! 不二咲君を殺したのは兄弟ではなく朝日奈君か腐川君のどちらかなのだ!」

苗木「不二咲クンを殺した時に葉隠君の電子生徒手帳を使ったってことは、先に殺されたのは葉隠君……」

石丸「呼び出し状を葉隠君が持っていたという事は、おそらく犯人は葉隠君のみを殺す気だったのだな」

大和田「じゃあ、不二咲はなんで殺されたんだ!」

石丸「おそらく、犯行を目撃してしまったからだろう……」

苗木「……ねぇ、一回目の死体発見アナウンスが流れた時に葉隠君の死体を見つけたのは朝日奈さんだったよね?」

朝日奈「うんそうだよ!」

苗木「じゃあ、朝日奈さんは葉隠君を殺してないってことに……」

腐川「その女が嘘ついてるかもしれないじゃない!」

大和田「いや……それはねぇよ……オレが水練場をでた直後にアナウンスが流れたからな……」

大和田「あの短時間で水練場に行けたのは、あの時近くにいた朝日奈しかあり得ねえ」

霧切「つまり、朝日奈さんが葉隠君の死体を見つけたのは不二咲君が殺された後という事になるわね」

石丸「葉隠君の死体を発見せずに葉隠君の電子生徒手帳を持ち出すことはどう考えても不可能だな!」

桑田「じゃあ朝日奈は葉隠も不二咲も殺してねえってことか……!」

山田「あれ? だとすると……?」

石丸「どうした山田君!」

山田「いえ、葉隠康比呂殿の死体を発見したのは、不二咲千尋殿と朝日奈葵殿の二人ですよね?」

山田「ではなぜ死体発見アナウンスは流れたのですかな?」

霧切「簡単な事よ……大和田君の話が本当だった……ただそれだけよ」

石丸「つまり、葉隠君を殺したのも兄弟では無かったという事だな!」

霧切「不二咲さんは口封じのために殺された……なら、今回のクロは一人だけという事になるわね」

石丸「では、葉隠君を殺害し、その現場を目撃されたために不二咲君まで殺害したクロとは……」





石丸「腐川君……君という事になるな!」



腐川「…………」



 

学級裁判、中断!


今回は以上です。
長すぎましたね、大和田の回想の前で一旦切るべきでした。
相変わらず三点リーダ多すぎ。

13日の金曜日を逃すわけにはいかなかったんですが、
某クイズ番組を見てたらこんなことになりました。

指摘や意見などありがとうございます、励みになります。


次回、石丸編最終回。

お待たせしました。
石丸編最終回です。

学級裁判、再開!

腐川「あたしが葉隠と不二咲と殺したって? そんなはず無いじゃない!」

石丸「しかし……すべての証拠が君が犯人である事を示しているんだ!」

腐川「その推理は致命的に間違っているのよ!」

石丸「ではどこに綻びがあるというのだ!」

腐川「あたしはね! 血を見ると気絶しちゃうのよ!」


『腐川「ど、どうして……!?」バタン』

『朝日奈「腐川ちゃん!」』

『石丸「腐川君! ……どうやら気を失っているだけらしい」』

『朝日奈「そういえば、腐川ちゃん血が苦手って言ってたもんね……」』


腐川「もしもあたしが不二咲を刺し殺したら、その血を見てその場に倒れちゃうのよ!」

石丸「なっ……!」

腐川「だから! あたしは不二咲を殺せないの!」

石丸(そんなはずは無い……クロは腐川君でしかありえないんだ!)

 マシンガントークバトル開始!

腐川「あたしはあの晩個室で寝てただけよ! 不二咲なんて殺してないし見てもいない!」

石丸「だが、兄弟でも朝日奈君でもないなら君しかありえないんだ!」

腐川「だから、その推理が間違ってるって言ってんのよ!」

石丸「どこが間違っているというのだ!」

腐川「そんなの知らないわよ! でもね、あたしがクロじゃないのは確かなのよ!」

石丸「なぜそう言い切れるのだ!」

腐川「だってあたしは血を見ると気絶しちゃうから!」

腐川「気絶したら凶器を隠したり個室に戻ったりできないでしょ!」

腐川「もしあたしが殺したとしたら、気絶してる間に大和田あたりに見つかってるわよ!」

腐川「『だから、あたしに不二咲は殺せないのよ!』」


ドンッ =【腐川の妙な言動】=>
石丸「これで証明する!」

石丸「いや……やはり犯人は腐川君……君なんだ」

腐川「ど、どうしてよ……」

石丸「腐川君、『多重人格』という言葉を知っているかね?」

腐川「……それぐらい知ってるわよ……それがどうしたのよ」

石丸「端的に言おう。腐川君は多重人格者なのだ!」

腐川「……そんなわけないじゃない」

石丸「いや、そうとしか考えられないんだ!」

石丸「腐川君……君が女子更衣室で目を覚ました後、こんなことがあったんだ」


『腐川「……」ムクリ』

『石丸「気が付いたか腐川君、血が苦手なら早く部屋の外へ……」』

『腐川「ギャハハハハハハハ!!!!」』

『朝日奈「え?」』

『腐川「血だ! 血がドバーッて! ギャハハハハハ!!!」』

『腐川「あれ? ここは……女子更衣室?」』

『石丸「腐川君、混乱しているのだな……無理もない……」』

石丸「あの時はただ混乱しているだけかと思ったが、あれが『2人目の人格』だと考えれば納得がいく……」

腐川「嘘よ……そんなこと覚えてないもの!」

石丸「腐川君……残念だが、その『覚えてない』という発言すらも君がクロである証拠になっているんだ!」

腐川「なっ……!?」

石丸「僕は不思議に思っていたんだ……今回の犯行は後処理が雑すぎると」

腐川「……雑?」

石丸「ああ……まずはこれを見てほしいんだが、これは葉隠君が所持していた『呼び出し状』だ」

石丸「どうして犯人はこのメモを残しておいたのだろうか? 筆跡などからばれる可能性がある上に、犯行の手順が明らかになってしまうというのに」

腐川「……」

石丸「さらに、どうして葉隠君の電子生徒手帳は更衣室から持ち出されたのだろうか?」

石丸「犯行後葉隠君のポケットに戻しておけばクロが女子であると特定されなかったのに」

腐川「……」

石丸「しかし、これなら説明が付く……クロは記憶を共有できない多重人格者だったのだ!」

腐川「……それだって、ただの推測じゃない!」

石丸「なんだと?」

腐川「あたしがクロだっていうなら! そのものずばりの証拠出してみなさいよ!」

石丸「それは……」

霧切「ところで腐川さん」

腐川「な、何よ急に……」

霧切「その首の傷……一体いつ付いたのかしら?」

腐川「……前から付いてたわよ……」

霧切「いえ、それは無いわ……だって、昨日はそんなもの付いていなかったし、そんなに目立つところなら見間違えるはずもないわ」

石丸「そうか、それは不二咲君か葉隠君を殺した時に抵抗されて付いたものではないのか?」

腐川「……これは夜中寝てる時に!」

霧切「諦めなさい腐川さん」

腐川「……どういうことよ」

霧切「不二咲君の指の爪に人間の皮膚が挟まっていたわ……怪しい人物の中で傷がついていたのは、腐川さん、あなただけなのよ」

石丸(そうか……だから霧切君はあんなことを……)


霧切『その前に……服を脱いでくれるかしら』

石丸『何故!?』

霧切『上半身だけでいいわ……捜査のためなのよ』

石丸『わ、わかった……』

霧切『……』ジーッ

霧切『…………ありがとう、もう服を着て構わないわ』

石丸『(……一体何のためだったんだ?)』


腐川「ぐぎぎ……」

石丸「腐川君……この夜、一体何があったのか……それを振り返って終わりにするぞ」



石丸「犯人は、君なんだ!」

 クライマックス推理開始!


石丸「まず、犯人は葉隠君を水練場に呼び出した」

石丸「おそらく、前回の舞園君と同様にドアの隙間から呼び出し状を部屋に入れたのだろう」

石丸「そして、脱出口を見つけたというメモを葉隠君はまんまと信じ込んでしまったんだ」

石丸「たったこれだけで犯人の下準備は終わったのだ」

石丸「深夜0時、罠という事に気づかなかった葉隠君は訪れた水練場で犯人に絞殺されてしまう」

石丸「絞殺はかなり力がいるため女子ではかなり厳しかったはずだが、それでも犯人は絞殺しなければならない理由があった」

石丸「それは、犯人が血を見ると気絶してしまうという弱点を持っていたことだった」

石丸「血が出ない殺し方……そこで犯人が思いついたのが絞殺だったのだ」

石丸「もっとも、絞殺なら返り血の処理もいらないため様々な意味で好都合だったのだろうな」

石丸「さて、本来なら犯人は葉隠君を殺害した後、メモなどを回収し個室へ戻る予定だったのだろう……」

石丸「しかし、ここで予想外のアクシデントが起こる」

石丸「なんと、トレーニングに来ていた不二咲君に犯行を目撃されてしまったのだ!」

石丸「おそらく不二咲君は葉隠君や犯人よりも早くから水練場に来ていたのではないだろか」

石丸「そうでなければ男子更衣室に追いつめられることも無かっただろう」

石丸「犯行を目撃してしまった不二咲君はとっさに男子更衣室に閉じ籠った」

石丸「犯人は女子だったため、男子更衣室には入れないと思ったのではないだろうか」

石丸「しかし、その思惑は外れ犯人は葉隠君の電子生徒手帳を使い男子更衣室に入ってきてしまった」

石丸「そして、不二咲君は抵抗むなしく刺し殺されてしまった」

石丸「その時、犯人は不二咲君に首筋を引っかかれてしまった」

石丸「凶器に使われたのはその時犯人がたまたま持っていた刃物だったのだろう……おそらく護身用に持っていたのではないか?」

石丸「こうして犯人は目撃者の口封じに成功した……しかし、不二咲君の血を見た犯人は気絶してしまった」

石丸「そして、第二の人格が目覚めたのだ」

石丸「犯人の第二人格は周りを見渡して状況を理解すると、凶器を持ち去り返り血を処理
するために水練場を後にした」

石丸「しかし、記憶を共有できなかったために第二人格は第一人格がどのように犯行に及んだかは分からなかった……」

石丸「だから、葉隠君の電子生徒手帳を持ち去ってしまったり、呼び出し状を現場に残したりしてしまったんだ!」

石丸「おそらく犯人は個室に戻った後、人格交代をして葉隠君の電子生徒手帳をポストに戻したのだろう……」

石丸「さて、これで犯人の犯行は終わったが、事件はまだ終わってはいなかった」

石丸「不二咲君とトレーニングの約束をした兄弟は水練場に向かい葉隠君と不二咲君の死体を発見した」

石丸「そこで僕達に事件の発生を伝えようとしたのだが……」

石丸「兄弟は、このままでは不二咲君の性別が僕達にばれてしまうと気づいたのだ」

石丸「そこで、兄弟は犯行現場の入れ替えを行ったのだ」

石丸「まず、不二咲君の死体を女子更衣室に移動させカーペットとポスターを入れ替え、あたかも不二咲君が女子更衣室で殺されたように見せかけた」

石丸「そして、男子更衣室の血痕をすべてふき取ったのだ」

石丸「どのタイミングかはわからないが、不二咲君の電子生徒手帳も忘れずにサウナで破壊したのだろう」

石丸「その後、兄弟と入れ替わりに水練場に入った朝日奈君が葉隠君の死体を見つけ、一回目の死体発見アナウンスが流れたのだ」

石丸「そして、犯人は僕と共に改めて死体を発見したふりをしたのだ」

石丸「ただ、不二咲君の死体を発見した時は本当に驚いたのではないだろうか?」

石丸「自分が殺した死体が男子更衣室から女子更衣室に移動していたのだからな」




石丸「『腐川冬子君』! これが事件の真相だ!」


腐川「………………その通りよ…………」



 

桑田「じゃあ……本当にオメーが……?」

腐川「だって……仕方が無かったのよ! 誰かを殺さないとあたしの秘密がばらされちゃうんだから!」

石丸「やはりあれが動機だったのか……」

腐川「当然じゃない! そうでもしなきゃ人なんて殺さないし、きつくてむごい絞殺なんて真似、やろうとも思わないわよ!」

苗木「でも……あんな秘密ばらされたって別に大したことじゃ……」

腐川「あんたの秘密は大したことじゃなくてもね、あたしの秘密は大したことだったのよ!」

腐川「あんなものがばらされたら、あたしが今まで積み上げてきたものはどうなっちゃうのよ……」

石丸「……」

腐川「あたしはね、昔から外見もダメで性格もダメで、学校じゃいじめの標的だった……」

腐川「いつだって妄想ばかりして夢を見て……もちろん妄想してることもバカにされたわ」

腐川「でもね、そんなあたしでもやっと他人より優れてるところが見つかったのよ」

腐川「それが、小説家という才能だった」

腐川「それからは、いくら妄想だなんだとなじられても平気だった……だって、小説を書き続ければあたしを認めてくれるんだから!」

石丸「……腐川君、良ければその秘密を教えてくれないか?」

腐川「別にいいわよ……もうほとんどばれてるようなもんだし……」

石丸「という事は……」

腐川「ええ、多重人格絡みよ」

石丸「だが! 多重人格程度で腐川君の肩書きに傷がつくとは……!」

腐川「……あたしの秘密は『腐川冬子の別人格はジェノサイダー翔である』、よ」

石丸「……!」

桑田「ジェノサイダー翔!?」

苗木「それって、あの連続殺人鬼の?」

腐川「『その』ジェノサイダー翔よ」

石丸「そうか……だから君の第二人格は血を見て興奮していたのか……」

腐川「そうなんじゃない? あたしはあいつの事なんてこれっぽっちも知らないけどさ」

桑田「確かに……恋愛小説家の正体が殺人鬼だって知ったらもう誰もそんな本読まなくなるな……」

霧切「それに、そんなことが世間に知れたら腐川さんはもう社会に出られなくなる……」

腐川「……一応言っとくけど、あくまで体が一緒ってだけであたしとあいつは別人だからね?」

腐川「あたしは……昨日までは一人も殺してないし、傷付けもしてないわよ」

石丸「……」

朝日奈「腐川……! なんで葉隠を殺したのよ……!」

腐川「一番殺しやすそうなのが葉隠だったのよ。一番騙されそうだし力もあまり強くないだろうし」

腐川「不二咲や霧切は疑り深そうだったし大和田や石丸やあんたは力が強そうだったから……」

腐川「それに、葉隠だったらあの呼び出しが罠かどうか占うはずでしょ?」

腐川「あたしは『信用』したのよ、葉隠の七割も外れる占いをね」

朝日奈「じゃあ……不二咲ちゃんは!?」

腐川「あんた裁判中寝てたの? あたしが葉隠を殺してるところを見られたからよ」

腐川「まさかあんな夜中にトレーニングしてるとは思わなかったわよ……」

朝日奈「そんなことで……」

腐川「そんなこと? あそこで不二咲を見逃せばあたしのおしおきが確定するのよ?」

腐川「まったく……苗木もそうだけどあんたも相当なバカよね」

腐川「あんたと人は違うのよ。そして、決して分かり合えないわ。絶対に」

朝日奈「……」

石丸「そんなことはない! 現に大和田君と不二咲君は自らの秘密をばらし合い分かり合えたではないか!」

腐川「……どうかしらね」

腐川「そうそう、凶器はこのハサミだから」チャキ

十神「それは……!」

腐川「十神君は知ってたのね? ジェノサイダー翔が犯行に使うハサミよ」

桑田「そんなもん持ってたのかよ……」

腐川「……一本だけじゃないわよ」ジャラ

山田「ヒィッ!」

腐川「ま、アイツが殺すのは萌える男子だけだから、ターゲットは十神君だけだったはずよ」

十神「……迷惑だ」

石丸「腐川君……どうして君はそんなに飄々としていられるんだ? もうすぐ処刑されてしまうんだぞ!」

腐川「あたしだって怖いわよ!」

石丸「……!」

腐川「でもね……怖さが振り切って逆に落ち着いちゃってるのよ……あたしがあいつらを殺したんだから責任は負わなくちゃいけないし……」

石丸「腐川君……」

腐川「モノクマ、さっさと始めちゃってよ……怖くてもう立ってられないわ」

モノクマ「わかりました!」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょう!」

モノクマ「果たして、葉隠クンと不二咲クンを殺したクロとは一体誰なのでしょーか!」

  VOTE


ダララララ…………

 【腐川冬子】ダンッ
 【腐川冬子】ダンッ
 【腐川冬子】ダンッ

 ≪GUILTY!!≫

ジャラジャラジャラジャラ……

モノクマ「だいせいかーーーーーい!」

モノクマ「そう! 今回葉隠クンと不二咲クンを殺したのは、腐川冬子さんでしたー!」

腐川「さっさとおしおきを始めてくれない?」

モノクマ「あれ? だらだらとお別れしたりしないの?」

腐川「……話すべきことはもう話しちゃったからそんな時間必要ないわよ……」

モノクマ「そう?」

モノクマ「ぶっちゃけこの辺の茶番は飽きてたんだよね!」

モノクマ「それじゃ、いつものいっくよー!」

モノクマ「今回は超高校級の文学少女である腐川冬子さんのために、スペシャルなおしおきを用意させていただきました!!」

モノクマ「では張り切っていきましょう! おしおきターイム!」

石丸「腐川君……」



         GAME OVER

    フカワさんがクロにきまりました。
      おしおきをかいしします。

 

モノクマが前回と同じ木づちでボタンを叩くと、やはり腐川君はマジックハンドでどこかに連れ去られてしまった。

呆然とする僕達の前のモニターに、腐川君の様子が映し出された。

今回はこれで中継が行われるらしい。

腐川君はどうやらホテルか何かの個室に閉じ込められたようだ。

すると、唐突に腐川君は机に向かって何かを書き始めた……小説だろうか?

――おしおきが始まる。



 ≪超人気小説家、締切寸前!≫


閉じ込められた個室の中で腐川君がガリガリと原稿を書きなぐっている。

物凄く必死な表情で、それでいて楽しそうに。

腐川君にとって小説家は天職だったのだな……。

そう感心していると、モノクマがバタンと大きな音を立てて部屋の中に飛び込んできた。

モノクマと腐川君が何やら口論をしているが、なぜか声はこちらには聞こえない。

腐川君が作家ならモノクマは編集者のつもりだろうか?

すると、次の瞬間――モノクマが腐川君の襟首を引っ掴み、腐川君を大きな機械の中へ放り込んだ。

最後に見えた腐川君の表情は、まさしく絶望に染まっていた。

その機械は耳障りな音を立てながら激しく揺れ出した。




――しばらくして、その機械から1つの物体が吐き出された。

それは、腐川君の顔がプリントされた『カンヅメ』だった。


 

石丸「腐川君!」

モノクマ「エクストリイイイイィィィィィィィィィィムゥゥゥゥ!!!!!」

大和田「クッソ……!」

苗木「腐川さん……」

朝日奈「…………ねぇ……なんでみんなそんなに悔しそうなのさ?」

石丸「え?」

朝日奈「あんな奴、死んで当然なんだよ」

石丸「死んで当然な人間などいない! まして彼女は僕達の仲間だったんだぞ!」

朝日奈「だって、あいつがいなかったら葉隠も不二咲も殺されなかったんだよ!?」

石丸「それは……」

大和田「……」

朝日奈「『仲間』を殺した奴が仲間なわけないじゃん!」

石丸「だが……それでも……!」

朝日奈「もういいよ……私、先に戻ってるから」

石丸「朝日奈君!」

十神「おい石丸」

石丸「……なんだね十神君」

十神「確かに大和田と不二咲の間にはお前たちの言うところの絆があったかもしれない……それは認める」

十神「でなければ、あんな無駄な小細工をするはず無いからな」

石丸「……」

十神「だが、俺とお前の間……というより、この集団の間に絆など存在しない!」

石丸「……!」

十神「現に今、朝日奈とお前たちの間に亀裂が入っただろうが」

石丸「だが……!」

十神「お前にも、次の裁判の頃には理解できるだろうよ」

石丸「……どういう意味だ!」

十神「また殺人は起こると言っているんだ!」

石丸「もう殺人は起きない! 僕が起こさせない!」

十神「そんな意思表示で殺人が防げるのなら俺達は一度もこんなところへは来ていない……そうだろう?」

石丸「ぐっ……」

大和田「オレのせいだ……」

石丸「兄弟……?」

大和田「オレのせいで不二咲は……」

兄弟「そんなことは無い!」

大和田「慰めなんかいらねえよ! ……オレがあの時不二咲のトレーニングを止めていれば不二咲が殺されることなんてなかったんだ!」

大和田「それに、もっと早く水練場に向かっていれば、葉隠が殺されることもなかったかもしれねえ!」

大和田「腐川の殺人だって止められたかもしれねえんだ!」

大和田「全部……オレのせいなんだ……」

石丸「それは違うぞ兄弟! 悪いのは全てモノクマなんだ!」

大和田「……でもよ……オレなら止められたんだ……」

石丸「兄弟……」

二回目の裁判をクリアして、僕達はようやく個室へと戻った。

ただでさえ夜中に叩き起こされたのだ、眠気と疲労はピークに達しているだろう。

だが、僕は眠る気になどなれなかった。

眠れなかった。

僕が信じたとおり、兄弟は不二咲君を殺してなどいなかったし、僕はそれを証明することが出来た。

そして……真犯人を指摘し、おしおきに追いやることが出来た。

……『追いやることが出来た』?

僕は人を殺すことに何も感じなくなっているのだろうか……?

いや、そんなはずは無い……!

皆だって同じはずだ!

他人を殺す事に、誰かが死んでしまう事に慣れている人間などいないはずだ。

ましてや、殺害を計画する者などいるはずがないんだ!


――本当に?



―――――――ホントウニ?




 第二章 週刊少年シンヨウマガジン

        END


      ≪残り9人≫


 



  ≪ITEM GET!≫

『私小説』を獲得しました。

 

これにて第二章(石丸編)終了です。
朝日奈さんがやばいです。

この状況で呼び出しにこたえるのは葉隠ぐらいだろうと思って葉隠を殺したら、
裁判でアホな事言いだす奴がいなくなって焦りました。


いつもレスありがとうございます。
第三章はまだトリックが固まっていないので次回は前回以上に時間があくと思います。

ちなみに、石丸の夢やモノクマの言い方など原作のストーリーを思わせる描写がいくつかありますが、
誰かがループしたり逆行したりはしていません。
別の世界線でも覗いちゃったんだなぐらいにとらえておいてください。

では、第三章でお会いしましょう。

長らくお待たせしました。
非日常パートは書き切れていないのですが、
前回の投下から一ヶ月経ってしまったので(非)日常パートだけでも投下を開始します。
まあこの部分だけでも4,5回分あるんですが……。

では、投下します。



 CHAPTER 03 新世紀学園伝説再び!悪夢よここに甦れ!

 

午前6時 寄宿舎廊下

山田「……学級裁判の直後だからでしょうか……ちゃんと眠れませんでしたな」

山田「目が冴えてしまっては仕方ありませんな、どれ、ひとっ風呂でもあびますか……」

ウィィィィィン……

山田「…………脱衣所からなにやら奇妙な音がしますな……」

山田「薄く光が漏れているような……?」

山田「誰か先客でもいるのですかな?」ヒョイ

ボゥン……

山田「え」

山田「ひょええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」


  ◆◇◆◇◆

 

午前8時 食堂

セレス「みなさん今日もお早いのですわね」

苗木「セレスさん、おはよう」

石丸「僕らが早いのではなくセレス君が遅いのだが……何はともあれ全員揃ったな」

セレス「おや……? これで全員ですか?」

石丸「ああ……随分と少なくなってしまった……」

セレス「十神君がいないのは分かりますが、朝日奈さん、大和田君、山田君はどうしたのですか?」

苗木「朝日奈さんはもう朝食会には来ないって言ってたよ……」

苗木「すっかり人間不信になっちゃってるみたい……」

セレス「それは……無理もありませんわね。彼女の親しい人ばかりいなくなってしまっているのですから」

苗木「また朝食会に来てくれるといいんだけど……」

石丸「兄弟はしばらく一人にしてほしいと言っていた……」

石丸「不二咲君の死にかなり責任を感じてる様子だった……気持ちの整理が付いたらまた朝食会に出てくれるそうだ」

セレス「大和田君は責任の負い方が下手なのですね」

石丸「なんだと?」

セレス「彼がするべき後悔は不二咲君の死ではなく、現場を入れ替え捜査を攪乱させたことですわ」

セレス「彼の行動次第で死人が出なかった、なんてのはいつどの状況においても言えますから」

石丸「だが、現場を入れ替えたのは不二咲君のためだったのだぞ!」

セレス「たとえそうだとしても、それによって私たちの死のリスクが高まったのですから非難すべき行動であるのは当然です」

セレス「それに、彼は不二咲君の死体を弄んだことになりますわ」

石丸「……」

霧切「石丸君、そのことをあなたの口から大和田君に伝えておいてくれるかしら?」

霧切「その方が、彼のためにもなるはずよ」

石丸「……承知した」

桑田「そうそう、山田の奴は腹が痛いから今日の朝食会はパスするってよ」

セレス「……大方、夜中に変なものでも食べたのでしょう」

苗木「でも、精神的にまいってるのかもしれない……」

桑田「言われてみりゃ、何かにおびえてるような感じだったけどよ……」

苗木「……今日朝食会に来てない人の事は気にかけておかないとね」

桑田「正直オレもいっぱいいっぱいなんだけどな」

石丸「だが、君は朝食会に来れている……朝食会に来れるかどうかというのはかなり大きな違いなはずだ……」

桑田「まあ……確かにな」

霧切「……特に朝日奈さんと大和田君は、しっかりとしたメンタルケアが大切よ」

霧切「そうでないと、今度こそ本当にダメになってしまうかもしれないわ……」

セレス「……それで、今朝の朝食会に集まったのはこの5人だけ、という訳ですか」

石丸「ついに初日の3分の1になってしまったな……」

桑田「この先やっていけんのかよ……」

霧切「悲観してばかりでは何も始まらないわ……二回目の学級裁判が終わったという事は、新しく施設が解放されたはずよ」

苗木「順当に考えれば、今度は三階が解放されたはずだよね」

石丸「そこに脱出の手掛かりがあるかもしれないな!」

桑田「……そうだな、いつまでも湿気た顔してたら死んでった奴に合わせる顔がねえもんな!」

苗木「そうだ……僕達は必ずここから出るんだ!」

石丸「その通りだ!」

石丸「ところで、セレス君ちょっといいかね」

セレス「なんでしょうか?」

石丸「実は、セレス君が来る前に僕達は皆朝食を取ってしまったのだが……」

セレス「ああ、そういう事でしたら、先に探索に出かけていただいても構いませんわ」

セレス「わたくしのせいでみなさんを待たせるのも申し訳ありませんし、今朝の朝食会の会議はもう終わりましたから」

石丸「そうか! では、僕達は先に行ってるぞ!」

苗木「じゃあセレスさん、またあとでね」

セレス「ええ、それでは」

セレス「……行ってしまわれましたね」

セレス(脱出の手掛かり……そんなものが本当にあるのでしょうか……?)

セレス(脱出の方法は1つしかないのかもしれません……)

セレス(……だとしても、わたくしは夢を諦める気は毛頭ありませんけど)

セレス(親しい人間ならともかく、赤の他人に遠慮する理由なんてありませんもの)

午前9時 2-3階階段

セレス(……ここのシャッターが解放されている、という事は今回解放されたのは本当に3階だったのですわね)

セレス(そういえば、保健室もいつの間にか解放されてましたわね)

セレス(自ら無闇に行動するのはわたくしの流儀に反するのですが……)

セレス(状況が状況ですから仕方ありませんわね……)

セレス「おや……?」

午前9時5分 娯楽室

セレス「ここは……娯楽室ですか」

セレス「ビリヤード台にダーツやオセロ……一応ここは学校だったはずではないでしょうか?」

セレス「まあ……こちらとしてもこういった娯楽があるのはありがたいですわね」

セレス「雑誌類も結構豊富にあるのですね……刊行は……入学式の一年ほど前のようですわ」

セレス「それにしては少々劣化が過ぎているような気がしますが……一年ならこんなものなのでしょうか?」

セレス「タイプライター……印刷用紙が1枚しかありませんわね」

セレス「使う事も無いでしょうから構いませんが」

セレス「……分かってはいましたが、ここにも脱出の手掛かりになりそうなものはなさそうですわね」

セレス「トランプ……チップ……こちらにはギャンブル系統の物もそろってますわね」

セレス「ふむ……あとで苗木君にポーカーでも申し込んでみましょうか?」

苗木「僕がどうしたの?」

セレス「おや……苗木君、いつからそこにいらっしゃったのですか?」

苗木「今来たばっかりだよ。それで?」

セレス「いえ、ここには色々と道具がそろっていますでしょう?」

苗木「うん、セレスさんの好きそうなものもたくさんあるね」

セレス「ええ、それで提案なのですが、今度一戦交えませんか?」

苗木「えっ!? 僕がセレスさんと!?」

セレス「ええ。ルールやレートは苗木君が決めていただいて構いませんわ」

苗木「レートって……」

苗木「でも……僕なんかが超高校級のギャンブラーであるセレスさんに勝てるわけが……」

セレス「それなら、ハンデも多分に苗木君に与えますわ」

苗木「……ノーレートなら」

セレス「それでは決まりですわね。今度、お手合わせ願いますわ」

苗木「ハハハ……ほどほどに手加減してくれるとありがたいかな……」

苗木「そういえば、セレスさんはついさっきここに来たみたいだけど他の部屋は見て回った?」

セレス「いえ、3階で調べたのはこの娯楽室だけですわ」

苗木「もう僕達は戻ろうかと思うんだけど、まだ見て回る?」

セレス「いえ、わたくしももう戻ることにしますわ」

セレス「間取り自体は電子生徒手帳を見れば分かる事ですし、意見交換の場に立ち会わないのは不利になることがあるかもしれませんから」

セレス「ただ……もう少しこの娯楽室を調べておきたいので、苗木君は先に戻ってもらっても構いませんわ」

苗木「じゃあ先に行ってるけど……なにか気になる事でもあったの?」

セレス「……強いて言うなら、ギャンブラーの勘ですわね」

苗木「?」

セレス(実際はただもう少し調べたくなっただけなのですが……極限状況ほど直感を信じてギャンブルに勝ってきましたから……)

セレス(ここに何かしらの手掛かりがあるか、探索を続けてみてもよさそうですわね)

セレス「とは言え……おそらく他の皆さんも探したでしょうしもう手掛かりなんて……」

セレス「……あっ」チャリン

セレス「くっ……モノクマメダルがロッカーの裏に……」

セレス(あまりはしたないことはしたくないのですが……一枚を笑うものは一枚に泣きますし……)キョロキョロ

セレス「……背に腹は代えられませんわね」ハァ

セレス「…………も、もう少し……」

セレス「……?」

セレス「……ロッカーの裏に何か……これはなんでしょうか?」

セレス「何かの紙のような……」

セレス「これは……!」

午前9時20分 食堂

石丸「遅いぞセレス君!」

セレス「遅れてすみませんわ」

苗木「いや、大丈夫だよ。それで、何か見つかった?」

セレス「ええ、かなり重要そうな手掛かりが見つかりましたわ」

苗木「ホント?」

セレス「それが何を意味するかまではわかりませんでしたが……」

石丸「ともあれ、ようやく5人揃ったな!」

石丸「それでは、意見交換会を開始する!」

桑田「3階には美術室があったぜ。彫刻刀とか凶器になりそうなものも結構あったけどな……」

石丸「ふむ……危険なものはどこかにまとめて確保しておくべきだろうか?」

苗木「でもさ、どこにまとめておくの?」

セレス「それに、もし誰かが犯行に及ぼうとした際、その程度で犯行を止められるとは思えませんわ」

桑田「やろうと思えばオレ達が座ってる椅子でだって殴り殺せるしな……無駄な抵抗だと思うぜ」

石丸「む……」

桑田「美術室の奥には美術準備室もあったぜ。内側からカギがかけられるタイプだった」

苗木「3階でカギがかかるのはそこだけだったね」

霧切「校則でカギや施設の破壊は禁止されてないけれど……万が一の時はそこに逃げ込めば助かるかもしれないわ」

セレス「覚えておいて損はなさそうですわね」

石丸「美術室の他には、物理室もあったな」

桑田「ああ……あのバカでかい機械があった部屋か……あれってなんだったんだ?」

石丸「あれは空気清浄機だそうだ」

苗木「空気清浄機?」

石丸「ああ。モノクマが言うには、この学園は完全に密封されているらしく、これが無いと僕らは死んでしまうそうなのだ」

霧切「……モノクマは本当にそう言ったの?」

石丸「気になる言い方ではあったが、確かにモノクマは『密封』と言っていたぞ」

セレス「密封……おおよそ建物に使う言葉とは思えませんわね……」

桑田「そんなことより、それを止めるかどうかもモノクマ次第ってことなんだろ?」

桑田「じゃあ、オレ達はあいつのさじ加減ひとつで……!」

苗木「いや、それは無いよ」

桑田「なんで言い切れるんだよ……?」

苗木「だって、モノクマは僕達にコロシアイをさせて楽しんでるんだよ?」

苗木「だったら、そんな簡単に全滅させるようなことするはずがないと思うんだ」

セレス「校則にも、『校則を破らない限りは学園長は生徒に危害を加えてはならない』とありますし……」

霧切「殺意を煽るならまだしも、空気清浄機を止めるなんてこと出来るわけがないのよ」

桑田「じゃ、安心していいんだな?」

セレス「ですが、依然モノクマの手のひらの上であることは否定できませんわ」

桑田「……」

苗木「ねえ、物理室でこんなものを見つけたんだけど……」

セレス「一体なんですかそれは?」

霧切「それはデジカメ……?」

苗木「なんか……山田クンが好きそうなデザインなんだよね」

桑田「ならアイツに上げとこうぜ。元気も出るだろ」

石丸「それにしても、随分年季の入ったデジカメなのだな」

セレス(これもボロボロですわね……)

桑田「ま、アイツならこんなんでも喜ぶだろ」

石丸「そういえば、誰か十神君の姿を見たものはいないか?」

苗木「あ、十神君ならまた図書室でミステリー小説を読んでたよ」

桑田「……十神は、誰かを殺す気でいんのか?」

霧切「彼はもはや卒業なんて眼中にないみたいね」

霧切「このコロシアイのゲームをどうやって勝ち抜くか……それだけを熱心に考えてるみたいよ」

桑田「……」

セレス「彼も彼なりにこの生活に適応してるという訳ですわね」

桑田「ああ!? 人殺しを企んでるやつのどこが適応って言えんだよ!」

セレス「……『他人の価値観は自分の価値観で測ってはならない』……このことは昨晩痛いほど理解したのではありませんか?」

桑田「……」

セレス「他人と分かり合うことなんか出来ない、なんてことを言うつもりはありませんが、決して分かり合えない人間も世の中にはいるものですわ」

セレス「他人には絶対に理解できないような動機で殺人を犯す人間も……」

苗木「……」

苗木「石丸クン、他に何か発見はあった?」

石丸「うむ! 保健室が解放されていることを発見したぞ!」

桑田「……それは皆知ってると思うぞ」

セレス「3階へ行くためには保健室の前を通らなければなりませんから」

石丸「つ、続けるぞ! 保健室には輸血パックや清潔なベッドが用意されていた!」

石丸「もし誰かが大けがをしても、安全に手当てすることが出来る!」

苗木「そもそも誰も怪我しない方が良いんだけどね」

霧切「そのベッドを使うのは本当に緊急なときだけにした方が良いわね」

霧切「当然保健室での就寝はけが人であっても校則違反になるでしょうから」

桑田「……ところでさ、石丸はそんな熱心にメモを取ってんだ?」

桑田「それほとんど会話全文じゃねーか」

石丸「……ここにいない兄弟達のためだ」

石丸「ここまで詳しくする必要はないかもしれないが、それでも会話の節々から何かヒントを見つけてくれるかもしれない」

苗木「確かに……」

石丸「四枚分作るのは少々骨が折れるがな……」

桑田「四枚ってことは、そのメモ十神にもやんのかよ!」

石丸「当然だ!」

桑田「でも、あいつは人を殺そうとしてんだぞ!」

石丸「……」

石丸「桑田君、僕は昨晩じっくりと考えたのだが……」

石丸「現在、皆が皆疑心暗鬼に陥ってしまってコロシアイ以前に共同生活そのものが危うくなっている……」

石丸「だからこそ、僕は皆を信じることにした!」

石丸「価値観の押し付けと思われても構わない!」

石丸「僕達は、この9人でここから脱出する!」

石丸「随分と減ってしまったが、僕達はまだやり直せるはずだ!」

セレス「それは随分ときれいごとですわね」

石丸「……」

桑田「おい、セレス!」

セレス「ただ、きれいごとでも信じる価値はあると思いますわ」

石丸「セレス君……!」

セレス「ただし、石丸君」

石丸「……なんだね」

セレス「『信じる』といった以上は、これから何があっても決して目をそむけてはなりませんわ」

セレス「たとえそれが自分の信念を打ち砕くものであっても……」

石丸「……分かっている」

石丸「最後はセレス君、報告を頼む」

桑田「どうせセレスはあの部屋だろ?」

セレス「ええ……わたくしが調べたのは娯楽室でしたわ」

セレス「娯楽室の名の通り、ビリヤードやトランプなど暇つぶしには退屈しなさそうな物がそろっていましたわ」

石丸「神聖なる校舎にそんな部屋があったとは……!」

桑田「堅い事言うなって。どうせこんな状況じゃ校舎の役目なんか果たしてねーんだし」

石丸「確かにそうだが……」

霧切「何か気になることはあったのかしら?」

セレス「ええ、ありましたわ。気になるところが2つも」

苗木「2つ?」

セレス「まずは1つ目。この雑誌なのですが……」

桑田「ファッション誌? お前もこんなもん読むんだな」

セレス「いえ、問題なのはこの雑誌の中身では無く状態ですわ」

石丸「……これもさっきのデジカメと同じく随分ボロボロだな」

苗木「かなり色褪せちゃってるね……」

桑田「多分ずっと光に当てられてたんだろうな」

セレス「この雑誌が発行された日付を確認してみてください」

霧切「……およそ一年前ってとこかしら」

石丸「一年だと? たった一年でこれほどまでに色褪せるものなのか?」

セレス「ええ、一年にしては少々劣化が激しすぎませんか?」

桑田「光の当たり方にもよるだろうし、別に気にすることじゃねーんじゃねーの?」

セレス「確かに、雑誌の方は気のせいで済ませられるレベルですわ……」

セレス「ですが、この写真はいかがでしょうか?」

桑田「ああ? 写真?」

石丸「どれ……な、なんだねこれは!」

苗木「舞園さん!?」

セレス「彼女だけではありませんわ」

桑田「大神、葉隠、江ノ島、腐川に不二咲……死んでいった奴がみんなそろってるじゃねーか!」

苗木「な、なんだよこれ!」

石丸「なぜ、みんながこうして笑っているんだ!」

桑田「殺し殺され合った間なのに……!」

セレス「それに、どこかの教室のようですが窓に鉄板がありませんわ」

霧切「慌てないで……どうせモノクマの捏造に決まってるわ」

苗木「あ、霧切さん、その名前を出したら……」

モノクマ「失礼な事言わないでよね!」

桑田「うわあ!」

苗木「ほら出てきた……」

モノクマ「その写真は正真正銘本物だよ!」

石丸「そんなはずがないだろう!」

モノクマ「信じたくないならそれでもいいよ?」

モノクマ「でもね、それは学級裁判を二度も乗り越えたオマエラへのプレゼントだよ!」

セレス「プレゼント、ですか?」

モノクマ「そう! その写真をヒントに学園の秘密を解き明かしてね!」

苗木「学園の秘密……」

霧切「ねえ、校則にも『学園について調べることは自由』って書いてあるけど、どうしてそんなことをするの?」

モノクマ「どうしてって?」

霧切「だって、学園の秘密……ひいてはこのコロシアイ生活の秘密を暴かれてもあなたにメリットなんてないじゃない」

桑田「確かに……オレ達が脱出できる可能性だって出てくるもんな」

モノクマ「メリットならあるよ!」

霧切「……何かしら」

モノクマ「学園の秘密を解き明かした時、オマエラが最高に絶望する顔が見られることだよ!」

セレス(絶望する顔……?)

石丸「……どういうことなんだ」

モノクマ「おっと、喋りすぎちゃったみたい! あとは皆で推理してみてね!」

モノクマ「いつもの、学級裁判みたいにさ!」

モノクマ「じゃあね!」

苗木「……」

桑田「……」

石丸「……」

霧切「……なら、解き明かしてやりましょう」

セレス「そうですわね、せっかく相手からヒントをもらって何もしない訳には行きませんわ」

石丸「……そうだな。学園の秘密を暴くことが出来れば、皆でここから出られるかもしれない!」

桑田「よっしゃ、やってやろうじゃねえか!」

苗木「何としても皆で脱出するんだ!」

セレス(自分の手を汚さずに出られるならそれに越したことはありませんわね)

セレス(ですが、そう簡単に学園の秘密なんて暴けるとも思えませんわ)

セレス(もし、暴けないのであれば……)

セレス(…………)


  ◆◇◆◇◆

 

午前10時 寄宿舎廊下

山田(あんなものを見たおかげで怖くなってしまいましたが……)

山田(やはり朝食を抜くと昼まで持ちませんな)

山田(倉庫になにか食べ物は……)

桑田「あれ? 山田じゃねーか」

山田「ひぃっ!」

桑田「んな驚かなくてもいいだろうが……まあこんな状況だから無理もねーが」

山田「し、失礼しました、桑田怜恩殿……」

桑田「気にすんなって」

苗木「山田君、体調はもう大丈夫なの?」

山田「ああ、それでしたらもう心配ありませんぞ!」

山田「それどころか、食欲すらわいてきたのです!」

石丸「そうか! それなら大丈夫だな!」

霧切「……」

セレス「山田君、あなた、本当に体調が優れなかっただけなのですか?」

山田「何をおっしゃいますかセレス殿。本当に今朝は腹具合がよろしくなかったのですぞ」

桑田「セレス、何が言いたいんだよ?」

セレス「山田君……それはウソですわね?」

山田「えぇっ!?」

山田「そ、そんなことありませんぞ!」

セレス「いえ、間違いありませんわ……だって、あなたはウソをつくときいつも瞬きをしていますもの」

山田「う、ウソですぞ!? そんなはずはありません!!」

セレス「ええ、ウソですわ」

山田「……はい?」

苗木「セレスさん、山田君にカマをかけたんだね……」

セレス「ですが、山田君がウソをついていたのは間違いなさそうですわね」

霧切「ええ……もしウソをついていなかったらここまで焦ることも無いはずだわ」

山田「ううう……」

苗木「でも、なんで山田君はウソなんてついたの?」

石丸「山田君、部屋から出るのが怖かったのならそう言ってくれても良かったのだぞ!」

桑田「ま、確かに少しかっこ悪いから隠したくなるのは分かるけどな」

山田「いえ、そうではないのです……」

セレス「……どういう事ですか?」

山田「部屋から出るのが怖かったのは本当ですが、その理由を言っても信じてもらえそうになかったからウソを付いたのです!」

霧切「理由?」

苗木「殺されるかもしれない……ってことじゃなくて?」

石丸「仲間の言う事を疑うはずがないだろう! 言ってみたまえ!」

山田「で、では言わさせてもらいますぞ……」



山田「実は、昨晩幽霊を見たのです!」



「「「…………は?」」」


 

今回は以上です。

という訳で、第三章は山田&セレス編となります。
◆◇◆◇◆←これが入ると視点が変わります。
個人的に口調が難しいキャラツートップなのですが……他のキャラも含めて頑張ります。

では、また次回。

投下します。

午前10時10分 寄宿舎廊下

桑田「幽霊ってオメー……さすがにそれは……」

山田「ほら! 信じないでしょう!?」

石丸「いや! 僕は信じるぞ!」

霧切「……今の時点ではまだ何とも言えないわね」

苗木「とりあえず、詳しく話を聞かせてもらえるかな?」

山田「分かりましたぞ苗木誠殿」

山田「今朝の6時ごろでしたかな? あんなことがあってよく眠れずに早めに目が覚めてしまったのです」

山田「それで、気分転換にお風呂に入ろうとしたのですが……」

山田「脱衣所に入ろうとしたところで、中から妙な音が聞こえまして」

山田「電気がついてないはずなのになぜかほのかに光が漏れていたのです」

山田「誰か先客がいるのかと思いまして脱衣所を覗いてみたのですが……」

山田「そこに、緑色に発光するちーたんの生首が浮かんでいたんですよ!」

桑田「生首ぃ!?」

石丸「しかも、不二咲君のものか……」

苗木「見間違い……とかじゃないよね?」

山田「見間違いでも夢でございません!」

桑田「けどよ……そんなこと信じられねえよ」

山田「ですが、僕はこの目ではっきりと見たのです!」

霧切「じゃあ、見に行ってみましょうか」

苗木「見に行くって……脱衣所に?」

霧切「ええそうよ」

セレス「何かを見間違えたのであれば、その何かが残っているはずですわね」

桑田「ところでお前、霊感はあるの?」

山田「いえ、生まれてこの方幽霊は今回以外には見たことありませんぞ」

苗木「つまり、本物の幽霊である可能性はかなり低いわけか……」

霧切「そもそも、幽霊なんてオカルトは最後の可能性にするべきよ」

桑田「だったら、何の証拠もなきゃ山田の夢、って事か」

山田「夢とは思えなかったんですがねぇ……」

午前10時30分 脱衣所

山田「ちょうどあの辺りに生首が浮かんでいたんです」

桑田「特になんもねえけどな……」

石丸「ん? ロッカーが開いているな」

苗木「中に何か……これは!」

セレス「パソコン……ですわね」

霧切「これは確か2階の図書室で見つけた……」

桑田「でもあれって壊れてなかったか? なんでこんなもんがここに?」

石丸「……一応起動させてみるぞ」

ウィィィィィィィン……

山田「これです!」

苗木「どうしたの?」

山田「今朝聞こえた妙な音はこの音でしたぞ!」

石丸「という事は、誰かがこのパソコンを起動していたという事か……?」

桑田「ていうかなんで直ってんだ?」

苗木「多分だけど、パソコンに詳しい人だろうね」

桑田「それって……」

霧切「……『希望ヶ峰学園について』『希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件について』……手掛かりになりそうなファイルはあるけれどどれもロックがかかっているわね」

セレス「何とか開けることはできませんか?」

霧切「……私では無理ね。これを開けることが出来るのは、超高校級のプログラマーと呼ばれた彼女……彼しかいないわ」

山田「……ちーたんですな」

石丸「つまり、不二咲君はパソコンを修理してその中のデータからこの学園の秘密を探ろうとしたのだな……」

苗木「でも、なんでこんなところで?」

霧切「それは……脱衣所の特徴を考えれば分かるはずよ」

桑田「脱衣所の特徴?」

石丸「……そうか、この部屋にだけは監視カメラが無い!」

霧切「ええ。おそらく不二咲君は、ここなら黒幕にばれることなく捜査を出来ると判断したのよ」

セレス「ですが、謎を解き明かす前に腐川さんに殺されてしまった、と……」

桑田「あいつ……強くなりたいとか言いながら一人でこんなことやってたのかよ……」

苗木「……不二咲クンは、強かったんだね……」

石丸「僕達にも相談してくれれば良かったではないか!」

霧切「いえ、それは出来なかったはずよ」

石丸「何故だ?」

霧切「黒幕の前で話すことは出来ないし、そうするとまずこのことを伝えること自体が難しいのよ」

霧切「それに、皆に伝えられたとして全員が何度も脱衣所に入り浸ったらどうなると思う?」

セレス「確実に黒幕にばれてしまうでしょうね」

石丸「そうだったのか……」

山田「み、みなさん! ちょっと待ってください!」

桑田「どうした?」

山田「ちーたんがちーたんなりに黒幕と戦おうとしていたのは分かりましたが、結局僕の見た生首は一体なんだったのですか!?」

霧切「それなら、おそらくこれよ」

石丸「『アルターエゴ』……? なんだねこのファイルは?」

霧切「『アルターエゴ』……いわゆる別人格の事ね」

セレス「別人格……パソコン内部における別人格という事は……」

霧切「おそらく……」カチッ

ボゥン……

アルターエゴ『おはよう! ご主人タマ! ……ってあれ?』

霧切「――人工知能よ」

桑田「人工知能!?」

山田「た、確かに僕が見たのはこれでしたぞ!」

苗木「ああ……これは電気の付いてない部屋で見たら生首……幽霊と見間違えるね」

石丸「不二咲君は……こんなものまで作れたのか……」

アルターエゴ『……ねえ、ご主人タマはどこに行ったの?』

桑田「……どうするよ、本当の事を言うのか?」

霧切「言うしかないでしょう……嘘を付いたところでどうしようもないわ」

セレス「所詮は人工知能ですわ。同情なんてするだけ無駄です」

石丸「セレス君! そのような言い方はよすんだ!」

アルターエゴ『……別にいいよ。ボクも自分がどういう存在かは分かってるしさ』

桑田「……マイク付いてたんだ」

アルターエゴ『それに……その言い方からするとご主人タマは……』

霧切「ええ……殺されたわ」

アルターエゴ『……そっか』

山田「……」

苗木「……」

アルターエゴ『ねえ、ご主人タマが殺された時の事、詳しく教えてくれるかな?』

霧切「……あなたはそれでいいの?」

アルターエゴ『……そもそもね、人工知能は知識欲求……知りたいと思う気持ちが強くなるようにできてるんだ』

桑田「じゃあ、オメーは『そういう風にできてるから』不二咲の事件を知りたいって思ってんのか?」

アルターエゴ『……そうかもしれない』

アルターエゴ『でも、ご主人タマのことは他の何よりも知っておきたいんだ』

アルターエゴ『ご主人タマがどんな風に殺されたのか……それを知っておかないといけない気がするんだ』

霧切「分かったわ……じゃあ、出来るだけ細かく説明していくわね」

アルターエゴ『……うん』

――――――
――――
――

霧切「……これが事件の一部始終よ」

アルターエゴ『……ありがとう、霧切さん』

石丸「……一つ聞いてもいいだろうか?」

アルターエゴ『石丸君、どうしたの?』

石丸「君は……いや、不二咲君は兄弟の事を恨んでいると思うか?」

アルターエゴ『どうしてご主人タマが大和田君の事を恨むの?』

アルターエゴ『多分だけど……ご主人タマなら、誰の事も恨まないと思うなぁ』

山田「誰も……? 腐川冬子殿の事もですか?」

アルターエゴ『うん。だって……腐川さんが葉隠君を殺したのだってモノクマのせいだと思うんだ』

アルターエゴ『ご主人タマなら、「悪いのはモノクマだ」って言うと思うな』

石丸「……そうか」

石丸「……この後、君が兄弟と会話する機会があったら、ぜひそのことを話してくれないか?」

アルターエゴ『構わないけど……どうして?』

石丸「実は、兄弟が不二咲君が死んだことに対して責任を感じてるのだ」

アルターエゴ『なんで大和田君が……?』

石丸「『オレなら行動次第で不二咲を救えたかもしれない』と言っていたのだ……」

石丸「君と不二咲君が違う事は重々承知している……」

石丸「だが、不二咲君の気持ちを代弁できるのは君しかいないんだ」

石丸「もちろん僕もその場に立ち会う」

石丸「僕も、兄弟に伝えねばならないことがあるのでな」

アルターエゴ『うん、わかったよ!』

霧切「さて、話も終わったところで……これからの事について話し合いましょう」

苗木「これからの事?」

霧切「例えば……これからは無闇に脱衣所には入らない、とかね」

霧切「本当にお風呂に入るのなら構わないけど、アルターエゴに会うためにここに入り浸っていたりしたら黒幕に感づかれてしまうわ」

桑田「確かに……それはそうかもしんねーな」

石丸「ならば、今こうして集まっているのも危ういという事か?」

セレス「そうなりますわね」

霧切「そうね……夜時間の脱衣所の出入りは禁止しましょう」

石丸「そもそも夜時間の出歩きを禁止していたはずだが……」

桑田「そんなもん誰も守ってねーじゃねーか」

霧切「ええ……だけど、アルターエゴを守るためにこれだけは絶対に守ってほしいわ」

セレス「もっとも、これまでの事件はすべて夜時間に起こっていますから、夜時間に部屋に籠っていれば安全なはずですがね」

霧切「そして、アルターエゴ」

アルターエゴ『どうしたの?』

霧切「あなたには、そのパソコンのハッキングをお願いするわ……あなたなら多分できると思うのだけど……」

アルターエゴ『分かったよ! ……と言うより、もともとそのためにボクはここにいるんだよね』

苗木「そうなの?」

アルターエゴ『ボクのプログラム自体は前から作られてたらしいんだけど、このパソコンが見つかってすぐに完成させたらしいんだ』

アルターエゴ『ご主人タマ、このコロシアイ生活でみんなの役に立ててないのがかなり悔しかったみたいで……』

霧切「そういうことならお願いするわ。どのくらい時間がかかるかしら」

アルターエゴ『そうだね……明日の朝にはいくつか情報が得られると思うよ』

霧切「分かったわ」

セレス「話もまとまったようですし……早いうちに出てしまいましょうか」

山田「そろそろ黒幕に感づかれてもおかしくないですしな」

桑田「じゃあさっさと出ようぜ」

苗木「それじゃ、アルターエゴ、任せたよ」

アルターエゴ『うん!』

午前11時 寄宿舎廊下

苗木「それにしても、驚いたね……」

桑田「ああ、びっくりだぜ……」

モノクマ「何がびっくりなの?」

桑田「そんなもん決まって……って」

山田「モノクマアアアア!?」

モノクマ「もう大声出さないでよ! それで、何がびっくりしたのさ?」

桑田「そ、それは……」

セレス「わたくしの運の強さですわ」

モノクマ「は? 運の強さ?」

セレス「ええ、こんな状況ですし交流を深めるという意味で皆でお風呂に入ることになりましたのですわ」

苗木「……! それで、男女で混浴するわけにはいかないから僕とセレスさんでじゃんけんしたんだ」

モノクマ「じゃんけんねぇ……」

セレス「先に5回勝った方が先にお風呂に入るという条件で行ったのです」

苗木「セレスさんは女子代表、ボクは男子代表としてね」

苗木「僕だって超高校級の幸運なんだから勝つチャンスがあると思ったんだけどね……」

モノクマ「で、結果は?」

セレス「わたくしの5連勝でしたわ」

苗木「まさか、5連敗するとは思わなかったよ」

モノクマ「うぷぷ……やっぱり苗木君は超高校級の不運だったりしてね!」

苗木「ははは……」

セレス「それでは、勝者の特権として先に入らせていただきますわ。行きましょう霧切さん」

霧切「そうね」

モノクマ「……行っちゃった」

山田(なんとか誤魔化せたようですな)

石丸「よし! それでは彼女たちが出てくるまで食堂で時間をつぶそうではないか!」

苗木「もう昼だから、二人の分の昼食も作っちゃおうか」

桑田「朝日奈達のも作ってやろうぜ、あいつらも朝食食ってないだろうし。……十神は作ってやっても食ってくれないだろ」

山田「そういえば結局僕は食事を取れていませんな……」

モノクマ「あれあれ? このまま帰っちゃっていいの?」

桑田「どういうことだ?」

モノクマ「だって……今女の子が二人してお風呂に入ってるんだよ?」

モノクマ「苗木君、ここまで言えば分かるよね?」

苗木「い、いや、まったくわからないよ」

モノクマ「え~ほんと~? 本当は分かってるんじゃないの~?」

桑田「ま、まさか覗けって言うのか!?」

モノクマ「お! やっぱり桑田君は分かってるね!」

モノクマ「だって、こんなチャンス二度と来ないかもしれないよ!」

モノクマ「だから、いますぐに――」

石丸「だめだ!」

石丸「覗きなんて破廉恥な行為、この『超高校級の風紀委員』の名に懸けて見逃すわけにはいかない!」

モノクマ「あー……そういえば石丸君もいたんだね……」

桑田「……そ、そんな堅い事言うなって!」

石丸「ま、まさか桑田君は覗こうというのかね!?」

桑田「だって、あのセレスに霧切だぞ? ばれたら怖いけどそれだけの価値はあるって!」

石丸「そんなバカなことを考えているのは君とモノクマだけだぞ! そうだろう、苗木君! 山田君!」

苗木「……」サッ

山田「……」サッ

石丸「ま、まさか……!」

苗木「だって……気にはなっちゃうから……」

山田「僕は三次元には興味ないんですが、一応フィギュアの参考にと思いまして……」

桑田「なっ? いいだろ?」

石丸「ふ、ふ、ふ、ふざけるなああああああ!!!!!!」


  ◆◇◆◇◆

 

同時刻 大浴場

霧切「……外が騒がしいわね」

セレス「大方覗こうとして石丸君に止められたのでしょう」

セレス「彼がいる限りは安心して良さそうですわね」

霧切「そうね……」

霧切「ところで、あなたの髪……ウィッグだったのね」

セレス「ええ……本当の髪の毛だったら維持がかなり大変になりますので」

霧切「それもそうね」

セレス「そう言うあなたは……その手袋、お風呂でも外さないのですわね」

霧切「ええ……人に見せてあまり気分のいいものではないから」

セレス「……まあ、本人が話したくないのであればわざわざ話すこともありませんわ」

セレス「さて……霧切さん」

霧切「……何かしら?」

セレス「あなた、あの『プレゼント』についてどう考えていらっしゃいますか?」

霧切「正直な所を言うと……まだ分からないわ」

セレス「……わたくしも同じですわ」

セレス「唯一考えられるとすれば、死んでいった彼らはここに来るまでに面識があった、ですわね」

霧切「ええ……でも、そんなこと話していなかったし……」

セレス「あなたはわたくし達の誰かと面識はありましたか?」

霧切「いえ……それはあなたも同じでしょう?」

セレス「そうですわね。誰一人知り合いなどいませんわ」

霧切「……写真については後回しにしましょう」

霧切「多分、まだ判断するだけの情報が足りていないわ」

セレス「……ええ」

セレス「そもそもこの学園で何があったのでしょうか?」

霧切「図書室の手紙によると、かつて『希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件』が発生し……」

霧切「その結果として希望ヶ峰学園は閉鎖に追い込まれてしまった……」

セレス「手紙の状態から考えても一年は昔のことだったはずですが、そんな風には思えませんでしたわね」

セレス「この学園にスカウトされたのもそこまで昔のことではないはずですし」

霧切「そもそも本当に閉鎖されていたのなら入学式の案内も来なかったはずよ」

セレス「……今はまだ、アルターエゴの情報待ちですわね」

霧切「……そうね」

今回は以上です。

しばらくはこんな感じで進行していきます。
引きこもりメンバーの出番は次回。

少々遅れてしまいました。
一応毎週末に投下していく予定ですが、今回のように遅れるかもしれません。
あと、書き溜めが尽きた場合も遅れるのでご了承ください。

では、投下。

午後5時 セレスの部屋

セレス(結局のところ、この学園については何もわかりませんでしたわね)

セレス(ヒントになるとすればやはりこの写真……)

セレス(とはいえ、これだけじゃ何もわかりませんわね)

セレス(彼らが初対面なのは初日の様子から見ても間違いないはず……)

セレス(なおかつこの写真が本物だとすれば……)

セレス(…………見当もつきませんわね)

セレス(モノクマから何か情報を引き出せたらいいのですが……)

セレス(この状況下ではかなり厳しいでしょう)

セレス(こちらの交渉材料が極端に少なすぎますわ)

セレス(モノクマは学園の秘密を解いてもらいたがっている……)

セレス(ですが、それ以上にコロシアイが起こるのを望んでいるはずです)

セレス(……いつ動機提示が来てもおかしくありませんわね)

セレス(……そういえば……)

セレス(どうしてモノクマはわたくし達を脱衣所の入り口で待ち構えていたのでしょうか?)

セレス(脱衣所にカメラが無いのは分かっていましたが、それにしても……)

セレス(集団で脱衣所に入るわたくし達を見て不審に思ったのだと思っていましたが……)

セレス(だとすれば、待ち伏せなんてせずに脱衣所に入ってくればいいはずですわ)

セレス(そうしなかったのは、わたくし達を弄ぶため……)

セレス(あのパソコンも学園のものですから調べることは校則違反ではない、という事でしょうか……)

セレス(すると、モノクマは中の状況を把握していたという事になりますわね)

セレス(という事は……)

午後5時10分 脱衣所

セレス(わたくしの予想が正しければおそらくこの部屋のどこかに隠しカメラがあるはずですわ)

セレス(物理的にカメラ本体を隠すことが出来る所……)

セレス(……鏡は普通のものですわね。マジックミラーではない、と……)

セレス(観葉植物……特に何もありませんわね)

セレス(……? 一つだけカギのかかったロッカーがありますわね)

セレス(もしかして……)

セレス「……やはりありましたわね……隙間からレンズが見えますわ」

セレス(おそらくこの分だと隠しマイクもありますわね)

セレス(……カメラもマイクも一つや二つではないでしょう……)

セレス(どこまで行っても所詮はモノクマの手のひらの上、という訳ですか……)

セレス(まあ……監視カメラのある浴場なんて入ろうともしませんものね)

石丸「おや?」

石丸「セレス君ではないか! どうしたのだ?」

セレス(……このことをわざわざ伝えて不安を煽る必要もありませんわね)

セレス「先ほど入浴した時に、忘れ物をしてしまったのです」

セレス「それを取りに来ただけですわ」

石丸「そうか……」

セレス「そういうあなたは何故ここに来たのですか? 出来るだけ来ないようにと言われていたはずですが」

石丸「ああ、実は――」

大和田「おい兄弟! 本当にここに不二咲がいるんだよな!?」

セレス「……なるほど、そういうことですか」

石丸「……ああ」

大和田「兄弟! 不二咲はどこにいるんだ!!」

石丸「……そこのロッカーの中だ」

大和田「……あ? どういうことだ? パソコンしかねえぞ?」

石丸「不二咲君が僕達に遺してくれたんだ……」カチッ

ボゥン……

アルターエゴ『こんばんは!』

大和田「不二咲!?」

石丸「……これがアルターエゴだ」

大和田「不二咲……!」

アルターエゴ『あれ? 大和田君?』

大和田「すまなかった!」

アルターエゴ『え? え? なんで大和田君が謝るのさ!』

大和田「オレの……オレのせいで不二咲が殺されちまったんだ!」

大和田「オレがもっとちゃんと行動をしていればこんなことにはならなかったんだ!」

石丸「兄弟……」

アルターエゴ『……大和田君』

大和田「……」

アルターエゴ『……この事件が起きたのは大和田君のせいじゃない』

アルターエゴ『そして、腐川さんのせいでもない』

大和田「! オメーはアイツを許すって言うのか!? アイツに殺されたってのに!?」

アルターエゴ『そもそもね、腐川さんも被害者なんだ』

アルターエゴ『悪いのは全部モノクマ……それを操ってる黒幕なんだよ』

アルターエゴ『だから、みんなで力を合わせて黒幕に打ち勝たないといけないんだ!』

石丸「うむ! そのとおりだ!」

大和田「不二咲……」

石丸「さて兄弟……僕は兄弟に言わなければならないことがある」

大和田「……なんだ」

石丸「君は今まで、腐川君の殺人を止められなかった事を悔やんでいたな」

石丸「しかし、君が後悔するべきはそれではない」

石丸「君が犯行現場を女子更衣室へ入れ替えた事だ」

大和田「……だけどよ、あれは不二咲の性別がばれないように……!」

石丸「それは僕も重々承知している……」

石丸「だが、犯行現場を偽装することで犯人の証拠を消してしまう可能性もあったのだ」

石丸「君は、皆の命を危険にさらしたんだぞ!」

石丸「自分が殺された学級裁判で僕達が全滅したら、不二咲君はどう思うだろうか?」

大和田「……!」

石丸「さらに、君は結果的に不二咲君の死体を弄んだことになる……それこそ、不二咲君の望むことではなかったと思うぞ」

大和田「不二咲……すまなかった……!」

アルターエゴ『……もう良いんだよ、大和田君』

石丸「……失敗することは悪くない……問題はそれを反省せず同じ過ちを繰り返すことだ」

石丸「次はそんなことをしなければよいのだ! ……もっとも、次など起こしてはならないのだが」

セレス(……これで、大和田君も立ち直ってくれるといいのですが……)

セレス(もし黒幕と物理的に戦う展開になった時に役に立つでしょうから)

大和田「そうだな……もうくよくよしてらんねーな!」

石丸「その通りだぞ兄弟!」

大和田「ああ!」



大和田「不二咲だって、生きてたんだしな!」

石丸「…………!」

 

セレス(…………)

石丸「……兄弟」

大和田「なんだ?」

石丸「目を背けてはいけない……」

石丸「不二咲君は……間違いなく死んだのだ」

大和田「ああ?」

大和田「……兄弟でも言っていい事と悪いことがあるぞ……」

大和田「不二咲は死んでなんかいねえ!」

大和田「ここにいるじゃねえか!」

石丸「それは不二咲君ではない!」

石丸「君も君自身の目で確認しただろう!」

石丸「それに、死体の運搬までやったんだぞ!」

石丸「不二咲君の死を誰よりも理解しているのは君のはずだ!」

大和田「ああ……確かにあの時不二咲の体は死んでいた……けどな! 不二咲の精神は死んでなかったんだよ!」

石丸「……何を……言っているんだ……」

大和田「現にこうして! パソコンの中に『アルターエゴ』として復活してるじゃねえか!」

アルターエゴ『大和田君……』

大和田「なんだ不二咲」

アルターエゴ『あのね、ボクはご主人タマじゃないんだ……』

大和田「それはお前がまだ混乱してるからだ! お前は不二咲なんだよ!」

石丸「兄弟、勘違いしてはいけない!」

石丸「ここにいるのは不二咲君の遺したアルターエゴであって不二咲君ではない!」

大和田「違う! 間違いなく不二咲はアルターエゴとして生きてるんだ!」

朝日奈「……何言ってるの?」

石丸「朝日奈君!」

朝日奈「不二咲ちゃんは殺されたんだよ」

朝日奈「……腐川に口封じのためにね」

大和田「ああ……オレもそう思っていたさ……」

大和田「でも違ったんだ! 不二咲は生きていたんだよ!」

朝日奈「だからさ、それは不二咲ちゃんじゃないんだよ」

朝日奈「魂がパソコンやロボットに宿ったりすることなんて、ありえないんだよ……」

大和田「やめろ……」

朝日奈「結局それって現実逃避だよね?」

大和田「やめろよ……」

朝日奈「不二咲ちゃんはもういないんだよ!」

大和田「やめろって言ってんだろ!」

石丸「兄弟……」

大和田「……不二咲はここに生きてんだよ……」

朝日奈「殺された人間が生き返るなんてそんな訳ないでしょ」

大和田「……不二咲は、死んでなんかいない……」

大和田「……少し一人にさせてくれ……」

石丸「……」

セレス(……二人とも行ってしまわれましたわね)

セレス「あなたはアルターエゴの存在はご存知ですか?」

朝日奈「うん、石丸に教えてもらったよ」

セレス(アルターエゴのことも伝えていたのですね)

セレス「……あなたは、大丈夫ですか?」

朝日奈「大丈夫かそうじゃないかで言えば……大丈夫じゃないよ」

朝日奈「私と居たせいで皆死んじゃって……」

セレス「……それは」

朝日奈「ただの考えすぎかもしれないけど……それでも……」

朝日奈「みんなが死んだ責任は私にあるんじゃないかなんて考えてた」

セレス「……」

朝日奈「でも、あんなの見せられちゃったら……ね」

セレス「確かに……自分より酷い状態の人を見ると冷静になれますものね」

朝日奈「大和田の気持ちも分かるけど……死んだ人が生き返るなんて、そんなことあり得ないんだよ」

セレス「……そう思えているならまだ大丈夫そうですわね」

セレス「不変の事実を誤認している状態が一番危ないのですから」

セレス「彼のように……」

朝日奈「……」

セレス「ところで、写真のことも石丸君から教わりましたか?」

朝日奈「写真って……セレスちゃんが娯楽室で見つけたやつ?」

セレス「ええ」

朝日奈「うん、それも教えてもらったよ」

セレス「あなたは、あの写真についてどう考えますか?」

朝日奈「……分からない」

朝日奈「ただでさえ混乱してるのに、そんな妙なものの事考えられないよ」

セレス「……そうですか」


 ◆◇◆◇◆

 

深夜0時 脱衣所

山田「――という訳で、同人というものは奥が深いのですぞ!」

アルターエゴ『そうだったんだね』

山田「世間では同人というだけでオタク扱いされてしまいますが……」

山田「同人とはそのようなものではないのです!」

アルターエゴ『なるほど……ありがとう山田君!』

山田「いえいえ……アルたんのためならばこの程度何でもありませんぞ!」

霧切「……何やってるの?」

山田「ヒィッ!」

山田「き、霧切響子殿、そちらこそこんな時間にどうなされたのですかな?」

霧切「今は私が質問しているの……あなた、今何をやってたの?」

山田「そ、それは……」

霧切「夜時間の脱衣所の出入りは禁止したはずよ……」

霧切「それは、他でもないアルターエゴのためだったはずだったけれど」

山田「す、すいませんでしたぁ!!」

霧切「まあ、何をしていたのかはある程度予想が付くけれど……」

山田「……だって、仕方ないじゃないですか……」

山田「自分の話をこんな熱心に聞いてくれたのはアルたんが初めてだったんですぞ……」

山田「いつも皆は僕をバカにしていましたので……」

霧切「……気持ちが分からないわけではないわ」

霧切「でもね、もう知ってるはずよ……アルターエゴはあなたではなく自分の知らない話に興味を持っているだけなのよ」

山田「……分かってますとも……」

霧切「そんなことをして黒幕にアルターエゴの存在がばれたらどうするつもりだったの?」

山田「……それは!」

十神「なんだ、騒々しい……」

霧切「……十神君」

霧切「あなたにも出入り禁止の話は伝えてあったはずだけど?」

十神「ふん、あんなもの守る必要など無い……」

十神「大体、お前達の方こそ破っているだろうが」

山田「それはそうですが……」

十神「……ほう、これがアルターエゴか」

霧切「あら? 十神君はまだ見ていなかったの?」

十神「ああ」

十神「不二咲もそれなりに役に立つものを作れるんだな」

山田「その言い方は無いでしょう!」

十神「何故だ? この十神白夜が愚民を褒めているんだぞ?」

霧切「……あなた、ちょっと他人を舐め過ぎよ」

十神「舐め過ぎ? 愚民を愚民扱いして何が悪い」

霧切「……そうやって見下してるといいわ、きっとそのうちに痛い目を見るはずだから」

十神「俺が愚民に足を掬われるとでも言うのか?」

霧切「ええ」

十神「……冗談も大概にしろ」

霧切「冗談なんかじゃないわ」

十神「……いいか、俺は十神財閥の御曹司、十神白夜だ」

十神「どんな場合であれ愚民にしてやられることなど無い!」

十神「ふん……俺は先に戻らせてもらう」

霧切「……十神君、朝に脱衣所に集合よ」

霧切「そこでアルターエゴの成果を聞いてこの学園について話し合うわ」

十神「……成果だと?」

霧切「あら? 石丸君から聞かなかったのかしら?」

霧切「このパソコンにはこの学園に関する情報が残っているらしいわ」

霧切「そのプロテクトをアルターエゴが外してくれるのよ」

十神「で、その結果が出るのが今日の朝という訳か……」

十神「なるほど、面白い……愚民どもは愚民どもなりにこのゲームに挑んでいるようだな」

十神「だが、このゲームを勝ち抜くのはこの十神白夜だ」

霧切「……勝手に言ってるといいわ」

十神「ふん……」スタスタ

霧切「そして、山田君」

山田「は、はいぃ!」

霧切「これからは二度と夜時間に脱衣所に入らないように……いいわね?」

山田「しょ、承知しました……」

霧切「なら、さっさと個室へ戻るわよ」

山田「わかりました……では、アルターエゴ、頼みましたぞ」

アルターエゴ『うん! 頑張るからね!』

今回は以上です。

これでようやく第三章で全員出ましたかね。
大和田君のせいで霞んじゃってますが、朝日奈さんもなかなかヤバイです。

遅くなりました。

一向に話の進まない第三章、続きをどうぞ。

午前8時 脱衣所

セレス「……おや、わたくしが最後ですか」

桑田「遅いぞセレス!」

セレス「申し訳ありませんわ」

石丸「む……次から気を付けたまえ!」

山田「とにかく、これで全員揃いましたな」

苗木「9人……だね」

霧切「ええ……今生きている全員が揃ったわ」

霧切「さて……アルターエゴの報告を聞く前に、もう一度伝えておかなければならないことがあるわ」

桑田「ああ? なんだ?」

霧切「私達はアルターエゴを守るために夜時間に脱衣所に入ることを禁止したはずよね?」

苗木「うん、そうだね」

霧切「皆、絶対に忘れないで……そして、アルターエゴは皆の共有財産なのよ」

石丸「当然だ!」

霧切「分かったかしら、山田君?」

山田「は、はいぃ!!」

セレス(山田君のこの反応……さては、夜時間にアルターエゴと接触していましたわね?)

十神「御託はいいからさっさと始めろ……」

大和田「不二咲、頼んだぞ!」

朝日奈「……」

アルターエゴ『……うん』

アルターエゴ『まず、希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件について』

苗木「……希望ヶ峰学園が閉鎖に追い込まれた発端の事件だっけ」

アルターエゴ『そう。一年ぐらい前、希望ヶ峰学園の人達が大勢殺された……らしいんだ』

桑田「はあ!?」

石丸「そんなバカな!!」

セレス「詳しくお願いできますか?」

アルターエゴ『うん。……と言っても、詳しい情報は殆ど無いんだ』

山田「そうなのですか?」

アルターエゴ『残念だけどね……』

桑田「犯人はどんな奴だったんだ?」

アルターエゴ『分からない……』

セレス「分からない?」

アルターエゴ『うん……』

アルターエゴ『なんていうか……レポートが犯人の存在に出来るだけ触れたくないような書き方なんだ』

霧切「だとすると……犯人は公表されると学園側に損害が出る人物……って事かしら」

アルターエゴ『詳しいことはなんとも……』

アルターエゴ『事件がある限り犯人は必ず存在するけど……』

アルターエゴ『そもそも学園側は、この事件自体を隠そうとしていたみたい』

アルターエゴ『でも、結局隠し通すことが出来なくなって……』

十神「結果、閉鎖に追い込まれてしまったという訳か」

苗木「『希望ヶ峰学園について』っていうフォルダも無かったっけ?」

アルターエゴ『そのことなんだけど……』

桑田「何か見つかったか?」

アルターエゴ『ううん……この学園についてまとめてあっただけで、大したことは書いてなかったんだ』

桑田「そうか……」

アルターエゴ『あ、でも、気になることがあったんだよね』

石丸「一体なんだね?」

アルターエゴ『そのファイルの中に玄関ホールの扉や鉄板についてのフォルダがあったんだ』

霧切「……」

桑田「それって、要は学園側が閉じ込めることを計画してたってことだよな!?」

石丸「まさか、このコロシアイ学園生活は希望ヶ峰学園が仕組んだことだったのか!?」

朝日奈「そ、そんな……!」

十神「ふっ……希望ヶ峰学園は希望の学園なんかじゃなく絶望の学園だった、という事だな」

霧切「ねえ、扉について詳しいことは書いてあった?」

アルターエゴ『ううん……他には何も……』

アルターエゴ『具体的な事が書かれてそうなファイルには、他以上に頑丈なロックがかかってて……』

アルターエゴ『多分僕の力じゃ無理だと思う……ご主人タマならできたかもしれないけど』

霧切「……そう」

大和田「生身の不二咲じゃないと無理なのか……」

朝日奈「……」

アルターエゴ『あと分かったことは……学園長についてかな』

霧切「学園長?」

山田「モノクマではなく本来の、という事ですかな?」

アルターエゴ『うん……さっきの話した事もあるし、もしかしたらその人がこのコロシアイ学園生活の黒幕なのかもしれないけど……』

桑田「で、どんな奴なんだ?」

アルターエゴ『分かったことは、中年の男性ってことと名前だけなんだ……』

十神「その程度の情報、情報と呼ぶことも出来んな」

石丸「ちなみに、どんな名前なんだ?」

アルターエゴ『……それが』

セレス「何か言いづらい事があるのですか?」

霧切「はっきり言ってくれた方がありがたいわ」

アルターエゴ『じゃあ……』

アルターエゴ『実は、その人の名前は『霧切仁』って言うんだ』

「「「!!!」」」

苗木「霧切……?」

アルターエゴ『うん……』

桑田「おい霧切! なんか知らねーのか?」

霧切「ごめんなさい……彼の事については何も分からないわ」

十神「……どうだかな」

石丸「……何が言いたいんだ」

十神「よく考えてもみろ。こいつはまだ俺達に自分の肩書き……才能を明かしていないんだぞ」

十神「加えて学園長と名字が同じなんだ……疑う方が自然だろう」

桑田「疑うって……何をだよ」

十神「内通者……つまり、霧切は裏切り者かもしれないという事だ」

苗木「……!」

苗木「霧切さんが裏切り者な訳ないじゃないか!」

十神「何故そう言い切れる? 少なくとも、こいつは俺達に隠し事をしている」

苗木「それはそうだけど……」

苗木「……ねえ霧切さん、霧切さんの才能を教えてくれないかな?」

苗木「そうすれば十神君もきっと納得してくれるよ!」

霧切「……残念だけど、無理ね」

苗木「……! なんで……!」

霧切「教えないんじゃなくて教えられないのよ」

十神「それは裏切り者だから、じゃないのか?」

霧切「違うわ」

霧切「……実は私、記憶喪失なのよ」

十神「……そんな話、信じられるわけがないだろう」

霧切「信じたくなければそれでもかまわないわ」

霧切「ただし、これは紛れもない事実よ」

霧切「私は、裏切り者なんかじゃないわ」

十神「……」

セレス「アルターエゴ、他に報告は?」

アルターエゴ『あ、一つだけあるよ』

桑田「なんだ?」

アルターエゴ『実は、これも学園長がらみの事なんだけど……』

アルターエゴ『『霧切仁』という人物は、今もこの希望ヶ峰学園の中にいる可能性が高いんだ』

山田「ならば、もはや確定的ですな」

苗木「……山田君も、霧切さんが裏切り者だって言うつもりなの?」

山田「い、いや、僕はそんなことは思っていませんよ?」

山田「僕が確定的といったのは黒幕についてです」

桑田「黒幕についてってことは……」

山田「そう……」

山田「つまり! このコロシアイ学園生活は希望ヶ峰学園の学園長である霧切仁によって仕組まれたのです!」

十神「……少なくとも、現時点ではその可能性が一番高いな」

十神「まあ、間違いなく霧切は裏切り者だと思うがな」

苗木「そんな……!」

セレス「霧切さんが裏切り者と決まったわけではありませんが、霧切なんて名字、滅多にあるものでもないですわ」

霧切「……」

苗木「霧切さんは裏切り者なんかじゃない!」

石丸「僕も霧切君を信じるぞ!」

桑田「でもよ、それを否定するだけの根拠もないんだぜ……?」

苗木「で、でもさ……!」

十神「おい、アルターエゴ! 報告はこれで終わりか?」

アルターエゴ『う、うん……』

十神「そうか、じゃあな」

石丸「待つんだ、十神君!」

十神「何故待たねばならん……もう用は済んだはずだ」

石丸「だが、まだ君は霧切君を疑ったままではないか!」

十神「現状ではそれを証明も否定も出来ないだろう?」

石丸「確かにそうだが……」

霧切「……」

十神「……仲良しごっこに俺を巻き込むな」スタスタ

石丸「待つんだ十神君!」タッ

>>565
修正
× 石丸「待つんだ十神君!」タッ
○ 石丸「……十神君!」タッ

表現がくどくなってました

セレス「さて……十神君達が出て行ってしまいましたし、アルターエゴの報告も終わりましたわ」

桑田「じゃ、じゃあ、とりあえず解散ってことで……それじゃ」

山田「僕も個室に戻らさせていただきますぞ」

霧切「……私は校内を探索するわ」

苗木「ちょっ、待ってよ霧切さん!」

朝日奈「……私も部屋に戻るね」

セレス「それではわたくしも……大和田君はここに残るのですか?」

大和田「ああ……もう不二咲のそばから離れたくないんだ。別に変な意味じゃなくてな」

アルターエゴ『……』

セレス「……そうですか」

セレス「それでは、ごきげんよう」

今回は以上です。

ゼロとか読んでないので事件について公式と矛盾があるかもしれません。
もしその場合は、このSS独自の設定ということに脳内保管をお願いします。

次回、ようやく動機提供です。

気づけば一か月弱経ってました。
わずかですが、投下。

午後9時 セレスの部屋

セレス(改めてアルターエゴの報告をまとめてみますと……)

セレス(脱出につながりそうなことはありませんでしたね)

セレス(それどころか、わたくし達の団結を崩すような情報が出てきましたわ)

セレス(まあ……もしわたくしがクロになるのなら、こうしてバラバラになっている方がありがたいのですが……)

セレス(それにしても、『霧切仁』ですか……)

セレス(霧切さんの記憶喪失が万が一本当だとすれば……)

セレス(候補の一つには入れておいてもいいかもしれませんが……)

セレス(だとすれば一体何故記憶を……?)

セレス(……結局、情報不足ですわね)

モノクマ『ぴんぽんぱんぽーん!』

セレス「……!」

セレス(……まさか――!)

モノクマ『至急体育館までお集まりください!』

モノクマ『来ないときつーいおしおきが待ってるからね!』

セレス(……ただの招集でしたか)

セレス(学級裁判なんて面倒なだけですから、自分がクロにでもならない限りは遠慮したいですわね)

セレス(まあ……ただの、ではなさそうですが)

午後9時10分

石丸「遅いぞセレス君!」

セレス「……またわたくしが最後でしたか」

石丸「君は反省というものをしているのかね!」

セレス「反省はしていますわ」

石丸「それが感じられないと言っているんだ!」

霧切「二人ともその辺でやめときなさい」

大和田「ああ……今やるべきなのはそれじゃねーだろ」

石丸「……確かにそうだな」

十神「そろそろ出てこいモノクマ……全員揃ったんだ、早く始めろ」

モノクマ「了解しました!」

苗木「ほんと、どっから出てくるんだろう・・・・・」

桑田「こんな時間にオレ達を呼び出したってことは……」

セレス「間違いなく『動機』関連でしょうね」

モノクマ「もう、そんなに焦らないでよ! あ、もしかして動機を楽しみにしてるの?」

桑田「んな訳ねーだろ!」

モノクマ「ま、それはそれとして、まずは校則の変更を発表するよ!」

苗木「校則?」

霧切「……あなたが出来るのは『校則の追加』だけじゃなかったかしら」

モノクマ「え? 校則の変更が出来ないなんてどこに書いてあった?」

モノクマ「それとも、前に言ったのかな? 何月何日何時何分何秒地球が何回周った時?」

霧切「……」

十神「おい……早くその校則の変更とやらを発表しろ……」

モノクマ「ホントにオマエラはせっかちだなあ! ゆとり世代なんじゃなかったの!」

桑田「コイツ本当にむかつくな……」

モノクマ「まあいいけどね、じゃあ発表するよ」

モノクマ「変更するのは死体発見アナウンスについての校則だよ」

石丸「死体発見アナウンス……」

モノクマ「この項目をね、『数人が死体を発見した際、学園長の任意のタイミングで死体発見アナウンスが放送されます』に変更するよ!」

山田「……? つまりどういう事ですかな?」

セレス「要するに、死体発見アナウンスでのクロの特定は不可能になった、という訳ですね?」

モノクマ「そういうこと!」

苗木「……もしかして、前回クロ指摘に死体発見アナウンスを使ったから……」

モノクマ「大正解!」

モノクマ「だってさ、そんな何度も同じ方法でクロが暴かれちゃったらつまんないじゃん!」

モノクマ「という訳で、今殺人を計画している人は発見順序は考えなくてもよくなったよ!」

モノクマ「感謝してよね!」

苗木「……感謝なんてするわけないだろ」

石丸「その通りだ! 殺人なんて計画してる人がいるわけないだろう!」

モノクマ「何言ってんのさ! 本当は分かってるくせに!」

石丸「……何をだ?」

モノクマ「気づいてるんでしょ? またコロシアイが起こる可能性にわ」

石丸「そんなことは無い!」

石丸「僕は皆を信じている!」

石丸「もうコロシアイなんて起きやしない!」

モノクマ「はいはい、いつもの強がりね」

石丸「そんなものではない!」

苗木「石丸クン……」

モノクマ「まったくもううざったいなぁ……」

セレス「……それで、そろそろ本題の方へ入っていただけますか?」

朝日奈「本題……動機のことだね……」

モノクマ「行っちゃう? もうそっち行っちゃいます?」

十神「早くしろ」

モノクマ「じゃあ行くよ!」

モノクマ「えー、今回動機を与えるにあたり、ボクは大変頭を悩ましました」

モノクマ「一回目は外の映像、二回目は知られたくない秘密……」

モノクマ「二回ともボクの思い通り殺人が起こってくれました!」

苗木「くそ……」

モノクマ「ですが、正直な話、もうオマエラ個人の動機は飽きてきたんだよね」

桑田「飽きた?」

モノクマ「正確に言うなら、オマエラの危機感を煽るような動機かな」

モノクマ「だから今回は趣向を変えてこんなものを用意しました!」






モノクマ「出でよ! ひゃっくおっくえーーーーーーん!!!!」




 

モノクマ「もし今後殺人が起こりクロが卒業できた場合、この百億円を贈呈いたします!」

山田「ひゃ、ひゃ、百億円ですと!?」

苗木「確かに動機の方向性は変わってるけどさ……」

桑田「でも、百億円なんて大金――」

十神「そんなもの、動機にはならんな」

セレス「そうですわね」

モノクマ「へ?」

石丸「……!」

十神「桁が少なすぎるな」

セレス「ええ、その通りですわ」

桑田「……はい?」

十神「俺を誰だと思っている……この十神白夜にとって百億なんて稼ぐのに一時間といらん」

セレス「わたくしも……百億とまでは行きませんが、これまでのギャンブルで数十億を稼いでいます」

セレス「今更百億なんてもらわなくても、お金には困っておりませんわ」

モノクマ「な、なんだってー!」

十神「もっとも……そこにいる愚民どもにとっては話が別だろうがな」

モノクマ「あ、そっか!」

石丸「ふざけるな!」

石丸「額の問題ではない!」

石丸「人の命はどうあっても金銭に替えられるものではないんだ!」

モノクマ「そんな!」

桑田「……確かに、オレに取っちゃ百億なんて金がありゃ一生遊んで暮らせるけどよ……」

桑田「だからって、そんなもんで人を殺すわけねーだろ!」

モノクマ「なんと!」

大和田「オレ達をなめんじゃねえぞ!」

朝日奈「もうコロシアイなんて起きやしない!」

山田「そうだそうだ!」

モノクマ「はぁ……せっかく一生懸命考えたのに……」

苗木「モノクマ、僕達を甘く見過ぎだよ」

霧切「ええ……私達はその程度で絶望に屈したりしないわ」

モノクマ「もういいよ……コロシアイを楽しみにしてたのにさ」

モノクマ「はあ……また新しい動機を考えないと……」

モノクマ「どうせだから百億円のボーナスはこのままにしておくけどね……」

モノクマ「それじゃ、解散! オマエラ、もう寝ろよ!」

――――――
――――
――

セレス(……一応あの場ではああ言っておきましたが、百億もあればわたくしの夢がかなうかもしれませんわね)

セレス(現在おかれている状況を整理すると……)

セレス(裏切り者の存在がネックになっていまいち団結しきれておらず……)

セレス(わたくしの他にも殺人を計画しているものが存在し……)

セレス(さらに、アルターエゴに盲目的になっているものが数名……)

セレス(……ここが勝負どころですわね)

今回は以上です。

リアルが忙しいうえに展開に詰まっているのでしばらくは投下回数が減ると思いますが、
のんびりとお付き合いいただければ幸いです。

長らくお待たせしました。
再開します。

午前7時30分 食堂

山田「みなさん! おはようですぞ!」

山田「……? 誰もいませんな……」

山田「誰もいないなんておかしいですな……おや?」

山田「何やらメモが……」

『脱衣所に集合せよ!』

山田「脱衣所……確実に何かありましたな」

数分後 脱衣所

大和田「不二咲……不二咲!」

山田「……一体何事ですかな? 全員集まって……まあ、十神白夜殿は来ていないようですが」

石丸「来てくれたか、山田君……」

苗木「アレを見てほしいんだ……」

山田「アレ……? ……!」

山田「アルたんが居なくなっている!?」

苗木「……そうなんだ」

霧切「今朝脱衣所に来た時に気付いたのよ」

霧切「理由は分からないけどね……」

大和田「理由? 理由なんか分かり切ってんだろ!」

桑田「ああ?」

セレス「確かに……考えられる理由は一つしかありませんわね。強いて言えば、ですが」

朝日奈「なんなのさ」

大和田「決まってんだろ! 不二咲を独り占めするために盗んだんだよ!」

苗木「独り占め……」

大和田「こんなことするのは一人しかいねえ! 山田、テメーだろ!」

山田「はい!?」

大和田「テメー、一昨日の夜脱衣所に来てたらしいな」

山田「そ、そんなことしておりませんぞ!」

大和田「嘘つくんじゃねえ! どうせお前が不二咲を独り占めしようとして盗んだんだろ!」

大和田「アルたんなんて変なあだ名つけやがって!」

山田「そんなことを言い出したら一番怪しいのはあなたではないですか!」

大和田「あんだと!」

山田「もう死んだちーたんのことを生き返ったなんて言って、アルたんの側を離れなかったのはあなたですぞ!」

山田「僕だってちーたんが死んだのはつらいですが……それでも、死んだ人間が生き返るなんてことは無いのです!」

大和田「てめえ……ふざけた事言ってんじゃねえぞ!」

霧切「二人とも、そこまでにしなさい」

霧切「アルターエゴを盗んだのは山田君でも大和田君でもないわ」

大和田「ああ!? 山田に決まってんだろ!」

山田「アルたんを盗んだのは大和田紋土殿ですぞ!」

霧切「だから、どちらでもないと言っているでしょう」

桑田「なんでそんなことが言えんだ?」

霧切「昨日の夜、アルターエゴに言っておいたのよ。夜時間の間に山田君か大和田君が脱衣所に来たら悲鳴を上げるように、とね」

山田「な、なんでそんなことを!」

霧切「あなたたち……自分たちが何をやってきたか忘れたわけではないでしょう」

大和田「……」

霧切「そして、個室で一晩中起きていたけれど悲鳴なんて聞こえなかったわ」

セレス「個室は完全防音でしたから、もしアルターエゴが悲鳴を上げても聞こえなかったのではありませんか?」

霧切「いえ、聞こえたはずよ……だって、部屋のドアを少し開けていたんだもの」

苗木「開けていたなんて……誰かが部屋に入ってきたらどうするつもりだったのさ!」

霧切「大丈夫よ。格闘術には自信があるから」

苗木「だからって!」

霧切「そんなことより、今はアルターエゴを盗んだ犯人を見つける方が先よ」

苗木「……」

大和田「山田が盗んだんじゃなかったら、誰が盗んだんだよ!」

石丸「決まっているだろう! 黒幕の仕業なのだ!」

苗木「黒幕……そうか! 黒幕は学園の秘密を知られたくなくて、それでパソコンを盗んだんだ!」

霧切「いえ、それもないはずよ」

苗木「どうして?」

霧切「黒幕……モノクマは言っていたわ」


モノクマ『学園の秘密を解き明かした時、オマエラが最高に絶望する顔が見られることだよ!』


霧切「モノクマの言葉を鵜呑みにするのもどうかと思うけれど、私達にああ言った以上は秘密がばれそうになったからパソコンを取り上げる、なんて真似はしないはずだわ」

霧切「校則にも学園について調べるのは自由、と書いてあるしね」

山田「じゃあ! アルたんを盗んだのは一体誰なのですか!」

大和田「やっぱ山田が犯人なんだろ!」

山田「僕ではありません、あなたでしょう!」

大和田「そんなことするはずねえだろうが!」

苗木「二人とも、もうやめてよ!」

大和田「ふん……盗んだって言っても自分の部屋に隠すとは思えねえ……きっとこの学園の中にあるはずだ」

大和田「見つけ出してやるからな、不二咲!」タッ

山田「アルたん! 僕が助けますぞ!」

霧切「……理由はともかく、みんなで手分けしてアルターエゴを探しましょう」

霧切「アルターエゴは、私たちの仲間なんだから」

苗木「……そうだね」

午後4時 食堂

山田(あれから学園中を探し回りましたが……アルたんは見つかりませんでしたな)

山田(もうアルたんを隠せるようなところはすべて探しつくしたと思うのですが……)

山田(……さすがに少々疲れましたな)

山田(休憩を取ることしましょう)

山田(……おや?)

山田「セレス殿ではありませんか」

セレス「あら、ごきげんようですわ」

セレス「探し物は見つかりましたか?」

山田「いえ……まだ見つかっておりませんぞ」

山田「他の皆さんもまだ見つかってなさそうですな」

山田「……セレス殿はやはり探していないのですかな?」

セレス「……そのことについてなのですが、山田君に話したいことがあるのですわ」

山田「話したいこと?」

山田「一体なんですかな?」

セレス「それは……ここでは話しづらいですわね」

セレス「よろしければ、あなたの部屋を使わせていただいてもよろしいでしょうか?」

山田「ぼ、僕の部屋ですか!?」

セレス「おそらく、あなたにとって価値のある情報だと思いますわ」

山田「……?」

午後5時10分 山田の部屋

山田「……それで、話とは一体何なのですか?」

山田「話の流れからすると、彼女についてのようですが……」

セレス「ええ……そうですわ」

セレス「私は、アレを盗んだ犯人を知っていますわ」

山田「……! ……誰なのですか?」

セレス「ずばり……大和田君ですわ」

山田「……大和田紋土殿が!?」

山田「やはりあの男が僕のアルたんを……!」

山田「……あれ? でもおかしくありませんか?」

山田「霧切響子殿によると、大和田紋土殿は彼女を盗むことは不可能だったはずですぞ」

山田「確か、彼女は大和田紋土殿か僕の姿を見たら悲鳴を上げるように言われていたはずですが……」

セレス「その通りですわ」

セレス「彼は彼女を……と言ってよろしいのかわかりませんが、とにかく独り占めしたかったのです」

セレス「ただ、盗もうとしても霧切さんのせいで自分が直接盗み出すことは出来なくなってしまいました……」

セレス「そこで彼は、私を利用したのです」

山田「利用……」

セレス「ええ……彼は昨晩私の部屋を訪れたのですが、不覚にもわたくしはドアを開けてしまったのです」

セレス「そして彼は強引に部屋の中に入るとわたくしを押し倒してわたくしに乱暴を働こうとしました」

セレス「そして、このまま乱暴されたくなかったら自分の言う事を聞くように脅し……」

セレス「わたくしはまんまと彼の片棒を担がされたのですわ」

山田「そんなことがあったのですか……!」

山田「許せん……許せんぞ大和田紋土殿!」

山田「すると彼女は今……」

セレス「ええ、大和田君の部屋にあるはずですわ」

山田「しかし、自分の部屋には隠さないという話だったはずでは……」

セレス「……その意見、発言したのはどなたでしたか?」

山田「誰って……ああ!」


大和田『ふん……盗んだって言っても自分の部屋に隠すとは思えねえ……きっとこの学園の中にあるはずだ』


山田「大和田紋土殿ではありませんか!」

セレス「彼はわたくし達の思考を誘導していたのですわ」

山田「なんと……」

セレス「さて……ここからが本題ですわ」

山田「本題……と言いますと?」

セレス「あなた……彼女の仇を討ちたくはありませんか?」

山田「仇……」

セレス「端的に申し上げますわ」




セレス「わたくしとあなたで、一緒にクロになりましょう」


 

今回は以上です。
少なめになってしまいましたが。

前回の投下からずいぶん経ってしまいました。
申し訳ありません。
とりあえず、無事大学が決まって準備も諸々が済み一段落しました。
短いスパンで来れるかはわかりませんが、
これからはある程度安定すると思います。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月23日 (月) 01:09:48   ID: wTgSBeBY

キャラ崩壊ってレベルじゃないw

2 :  SS好きの774さん   2013年09月28日 (土) 09:40:01   ID: A1BUKP5e

キャラ崩壊ってレベルだろ

3 :  SS好きの774さん   2013年11月25日 (月) 22:48:25   ID: LR0kIJB8

おもしろかったです。桑田が好きなので活躍してくれて嬉しいです。誰が犯人か直前までわからなかったのでどきどきしながら見てました。続き待ってます。

4 :  SS好きの774さん   2013年11月29日 (金) 10:35:06   ID: 4EMJ1H5Z

面白いんだけど腐川さんのオシオキの缶詰めがなぁ、、
ちびくろさんぼ関係ないじゃん

5 :  竹前結生利   2014年03月01日 (土) 22:28:39   ID: 7V4nzemt

続きが楽しみ

6 :  SS好きの774さん   2014年05月03日 (土) 01:00:40   ID: ya-kIe-Q

さくらちゃんがサラリとお花摘みに行くって表現使ってて申し訳ないがワロタ

7 :  SS好きの774さん   2014年05月29日 (木) 20:00:20   ID: W6ZcyLys

石丸の過去の動機って確か、祖父か叔父が、汚職事件を起こした総理大臣だよな・・・。オネショではないぞ。

8 :  SS好きの774さん   2019年05月18日 (土) 10:57:16   ID: 2h1ciRz_

なんか色々と抜けてる表現ありすぎ。駄作にもほどがあるっしょ。

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