卯月「おはようございます」
未央「おっはよー、未央ちゃんと卯月が事務所に来ましたよー……て、ちょっと早めに来すぎちゃったかな?」
モバP「……ああ、おはよう、卯月、未央」
卯月「プロデューサーさんもお疲れ様です、今、お茶淹れてきますね」
モバP「いや、いいんだ、もう淹れてあるから」
卯月「……え?」
未央「あれ、プロデューサーが自分で淹れちゃったの?」
モバP「まあな」
卯月「……」
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未央「ふーん、まあいいや、ねえねえ、プロデューサー」ピッタリ、ムニュ
モバP「……なんだ?」ススス
未央「……プロデューサー? なんで逃げるの?」
モバP「逃げてない、離れただけさ」
未央「いや、それを逃げるって言うじゃん……えい!」ピッタリ、ムニュウ
モバP「うお!?」
未央「むふふ、プロデューサーのくせに逃げるなんて生意気だぞ〜、どうだ、84のDの威力は!」
卯月「もう未央ちゃん、ダメだってば……プロデューサーさんも困ってるよ?」
未央「ふふん、そんなことないよね? プロデューサー?」
モバP「……いいや、卯月の言うとおりだ、止めてくれ、未央」
未央・卯月「「え?」」
モバP「まだ俺は仕事中なんだ、わかってくれるよな?」
未央「……あ、うん、ごめん……」
卯月「……そ、そうだ、プロデューサー! 久しぶりに耳かきしてあげます! 確かお好きでしたよね?」
モバP「いや、大丈夫だから」
卯月「……え? う、うそ……」
未央「あ、あり得ない……あのプロデューサーが卯月の耳かきを拒否するなんて……」
卯月「プロデューサーさん、もしかしてどこか調子が悪いんじゃ……」
未央「そ、そうだよ! いつものプロデューサーらしくないよ!」
モバP「……な、何言ってるんだ? 俺はいつもこんな感じだぞ!」
卯月「そんな、いつものプロデューサーさんだったらこういう時は……」
モバP「……いいや、これがいつもの俺だ、間違いない」
未央「でも……」
モバP「……悪いが2人とも、営業まで少し時間があるし、応接室を使っていいから適当に待っててくれ」
卯月「……未央ちゃん」
未央「……わかってるよ、卯月、一旦応接室で作戦会議ね」
一時間後
ガチャ
凛「おはよう」
モバP「ああ、おはよう凛」
凛「……2人とも、ひざまずいて何やってるの?」
卯月「り、凛ちゃ〜ん……」
未央「凛……私たち、負けっちゃったよ……」
凛「はあ? ていうか、なんで2人ともそんな格好しているの?」
卯月「これには深い訳があってね……」
未央「……とりあえず、応接室まで来て、事情を話すから」
凛「う、うん……」
応接室
凛「……つまり、プロデューサーが無視するってこと?」
卯月「うーんと、無視されてる訳じゃないんだけどね……」モジモジ
凛「ていうか、卯月、モジモジするくらいなら着替えなよ、恥ずかしいんでしょ、その体操服」
卯月「で、でも、この格好、プロデューサーさんが可愛いって言ってくれたやつだし……」
未央「そうそう、私たちは恥ずかしがっているヒマなんかないの!」
凛「未央は恥ずかしくないだけでしょ、しかもニュージェネレーションのやつって勝手に着たらちひろさん怒るよ」
未央「仕方ないのよ、この状況をなんとかするためには自分たちの武器を最大限に活かさなきゃ!」
凛「自分たちの武器って……まあ、確かに卯月は私たちの中で一番お尻が大きいけど」
卯月「そ、そんなことないよ! 大きさだったら未央ちゃんとも同じだもん!」
凛「……確かに卯月は私たちの中で一番ぱっつんぱっつんのブルマが似合うけど」
卯月「う、うわ〜ん、よりひどい感じに言い直された〜」
未央「ちょっと、凛、同士討ちしてどうするの! 私たちが倒さなきゃいけないのはプロデューサーでしょ!」
凛「いや、だからそれが良くわからないんだけど、無視されてないのに相手してくれないってどういうことなの?」
未央「……最初におかしいと思ったのはお茶がすでに汲まれていたことよ」
凛「プロデューサーだって自分でお茶くらい汲むでしょ」
未央「凛は知らないだろうけど、プロデューサーのお茶は卯月が淹れるっていう不文律がこの事務所にはあるの」
凛「まあ、よく卯月が淹れているのは見かけるけど……でも、それがどうかしたの?」
未央「プロデューサーは猫舌だから、熱いお茶が飲めないの、でもお茶って出されたら飲みたくなるでしょ?」
凛「……普通に我慢すればいいじゃない」
未央「だから、プロデューサーは飲もうとしちゃうんだって……だからね、いつも卯月が淹れたお茶はね、卯月がふーふーして冷ましてあげてるの」
凛「……はあ?」
未央「凛はいつも時間ギリギリにくるけど、卯月が早めに事務所に来るのはこれのためなんだからね」
凛「……」
卯月「……プロデューサーさん、熱いお茶を飲んで舌を火傷してなければいいんだけど……」
凛「……普通にぬるいお湯でお茶を淹れればいいんじゃない?」
卯月「凛ちゃん、そういうんじゃないの……」
凛「え?」
未央「これはなんていうか……一種のお約束みたいなものよ、プロデューサーの目の前でふーふーしてお茶を冷まして、それをプロデューサーが飲む……まあ、挨拶みたいなものかな」
凛「……なんというか、プロデューサーへの見方が変わりそうな話ね」
卯月「それだけじゃないの……未央ちゃんのおはようのハグからも逃げるし」
凛「……」
未央「そうだよ! いつもなら口では『やめてくれ』とか言いつつ、さりげなくおっぱいにいろんなところを押し付けてくるのに!」
凛「……それも挨拶みたいなものなの?」
未央「うん……ほら、私と卯月って同期だし、数かけ月単位だけど今所属しているアイドの中だったら、一番古くからこの事務所にいるじゃない? 実は凛がスカウトされる前からやってたんだけど……」
卯月「一応、凛ちゃんとか他のアイドルがいる前ではやめておこうってことで控えたんだよね」
凛「……だいたいわかった、つまりそういう日常的に行われていた過剰なスキンシップに、今日になって急にプロデューサーが付き合ってくれなくなったってこと?」
卯月「そうなの」
未央「……一応、私達も色々試したんだよ? この格好でプロデューサーの周りをウロウロしたりさ」
卯月「未央ちゃんなんて机の上で女豹のポーズまで取ったのにね」
未央「あれは悲しかったな……普通に『机に乗るな』て言われただけだしさ」
凛「……何やってるのよ、2人とも」
卯月「あ、呆れないでよ、凛ちゃん……そ、それに机の上に乗ったのは未央ちゃんだけだよ」
未央「ちょっと! そういう卯月だって一回断られたのに強引にプロデューサーに耳かきしようとしたじゃない!」
卯月「あ、あれは、前に膝枕したら、すごく喜んでくれたからそれをしようとしただけで……」
凛「……はいはい、もういいから……ようはプロデューサーの気を引ければいいんでしょ?」
未央「まあ、そういうことだけど……」
卯月「……凛ちゃん、できそう?」
凛「正直、卯月と未央にそういうことしてたプロデューサーにはイラッときたけど……まあ、それで2人のテンションが落ちて仕事に支障が出ても困るしね」
未央「凛……」
卯月「凛ちゃん……」
凛「まあ、任せておいて」
事務室
モバP「……」カタカタ
凛「……」
未央(プロデューサー、相変わらず無心で仕事をしている……)
卯月(凛ちゃんも静かに近づいている……何をするんだろう?)
モバP「……」カタカタ
凛「……ふう」
モバP「……」ピクッ
未央(おおっと、これ見よがしにプロデューサーの机に寄り掛かった!)
卯月(プロデューサーも仕事の手が止まったね、ちょっと気になってるみたい)
凛「……ん、んん」
モバP「……」
未央(悩ましげな声を上げて足を組み替えている……なるほど、座っているプロデューサーの目線ならギリギリスカートの中が見えそうなのね)
卯月(ああ、プロデューサーがかなり凛ちゃんの足を気にしている……というか、凛ちゃん、なんだかんだですごくノリノリでやっている気が……)
凛「……はあ、ちょっと暑くなってきたかも」パタパタ
モバP「……」
未央(あ、暑いって……空調充分効いてるのに、暑いわけないじゃん)
卯月(スカートをパタパタしている……あ、ちょっとパンツ見えた)
凛「……あれ、プロデューサーどうしたの? 手が止まっているよ?」
モバP「……」
未央(凛、すごく勝ち誇った顔してる……)
卯月(まあでも、確かにこれは凛ちゃんの勝ちだよね、プロデューサーさんもとうとう……)
モバP「凛」
凛「なに?」
モバP「えーと……ちょっと、困るんだが」
凛「うん、何? プロデューサーは一体何が困るの?」
モバP「そこにいられると仕事の邪魔になる、だから机に寄り掛からないでくれ」
凛「……え?」
未央(え?)
卯月(え?)
凛「……ふーん、私、ここから退いていいの? もっと見えるかもしれないよ、色々と……」
モバP「退いていい、というか、退いてくれ、資料が取れない」
未央(な、なんだと……女子高生の生足とパンツを引き換えにしてでも仕事を優先する、だと……)
卯月(そ、そんな……凛ちゃんは勝ったんじゃなかったの?)
凛「……」
モバP「凛? 聞いてるか?」
凛「……プロデューサー、ここって暑くない?」
モバP「いや、そんなことはないけど……」
凛「そんなことあるよ……はあ、暑い暑い!」ヌギヌギ
モバP「ちょ、ちょっと何やってるんだ、凛!」
凛「暑いから脱いでるだけ! 止めないで!」
モバP「止めないでって……バカ、ブラウスを脱ぐな! スカートのホックも外すな!」
未央「凛、ストップストップ!」
卯月「凛ちゃん、脱ぐのはさすがにダメだよ!」
凛「2人とも放して!」
モバP「あ、あれ、未央に卯月、いつの間に?」
未央「プロデューサーは気にしないで……ほら、凛、一旦応接室に戻るよ!」
卯月「あ、あははは……お騒がせしました!」
バタン
モバP「……な、なんだったんだ、一体」
応接室
凛「……」
未央「ふう、まったく、びっくりしたんだから、もう……」
卯月「凛ちゃん、脱いじゃうのはやりすぎだよ、その一線は守らないと……」
凛「……笑えば?」
未央「……え?」
凛「……笑えばいいじゃない、デカい口叩いて、パンツまで見せて……それでもプロデューサーの気を引けなかった女子高生アイドルをさ!」
卯月(凛ちゃん、ショックのあまりキャラ崩壊してる……)
未央「り、凛……落ち着きなよ、私だっておっぱい押し付けて無視されたんだから」
卯月「そ、そうだよ……いうなれば私達3人とも同じなんだよ?」
凛「……ごめんね、卯月、未央……私ちょっとバカにしてた」
卯月「……え?」
凛「おっぱい押し付けたり、お尻見せつけたりしといて、なんでプロデューサーの気を引けないんだろうって」
未央「……ま、まあ、それは……」
凛「正直それはアイドルとしてどうなのって……完全にヨゴレだなって、思ったの……」
卯月「……」
未央「……」
凛「でも違った……私も同じヨゴレだった……」
卯月「……凛ちゃん、もういいのよ、自分を責めるのはやめて」
未央「……そうだよ、それとさりげなく私達をディスるのも」
凛「……本当にごめんね、2人とも……私、間違っていた、相手があのプロデューサーだからって甘く見てた」
卯月「うん……でも、凛ちゃんもダメとなると、後は……」
凛「……待って」
卯月「え?」
凛「まだ……私は諦めてない、私は本気を出してないだけ」
未央「凛、いきなりニートの言い訳みたいなこと言ってどうしたの?」
凛「……2人が衣装チェンジして頑張ったんだもん、私もそれをやる」
卯月「衣装チェンジ……まさか凛ちゃんもニュージェネレーションの衣装を?」
凛「ううん、ニュージェネレーションは未央がダメだったからやらない……それとブルマもいろんな意味できついから着ない」
未央「……ねえ、卯月、やっぱりまださりげなくディスられているよね? 私達」
卯月「き、きっと、まだ混乱しているんだよ……多分」
凛「でも、まだ私には……」ゴソゴソ
未央「……鞄の中に衣装が入っているの?」
凛「……これがある!」
卯月「それって……犬耳のカチューシャ?」
凛「……これだけは止めておこうと思ったけど……仕方ないよね、なりふり構っていられないもの」
未央(確か、前にプロデューサーさんがお遊びで買ってきたやつだよね……いろんなアイドルにつけて遊んでたやつ)
卯月(最終的に凛ちゃんが一番に似合うって話になって凛ちゃんは鼻で笑ってたけど……鞄にしまっていつも持ち歩いていたんだ……)
凛「……じゃあ、行ってくるから」
未央「う、うん、頑張って!」
卯月「ファ、ファイトだよ! 凛ちゃん!」
事務室
モバP「……」カタカタ
凛「……」
未央(今度こそ成功して欲しいけども……)
卯月(凛ちゃん、今回も静かに近づくパターン? ……あ、四つん這いになった!?)
未央(え、まさかのいきなり犬状態からスタート!?)
卯月(……凛ちゃん、本気なんだね!
モバP「……」カタカタ
凛「……くーん」
モバP「……」カタカタ
凛「……くーん、くーん……」
モバP「……」ピク
未央(すごい、四つん這いになって近づいて……寂しそうな鳴き声とか完全に構って欲しい犬だよ)
卯月(……これはプロデューサーさんも気にせざるを得えないはず)
モバP「……」
凛「くーん……んん……」クンクン
未央(そのままプロデューサーの足にじゃれ始めた……)
卯月(頬ずりしたり、匂い嗅いだり……凛ちゃん、演技やってるんだよね? 堂に入りすぎててなんか怖い……)
モバP「……」
凛「……くーん……わん、わんわん……」
未央(今度は直接訴えかけ始めた……犬語で)
卯月(プロデューサーさんの膝に手をかけて必死におねだりする凛ちゃん……本当にお犬さんみたい、もし尻尾があったら一生懸命振っているんだろうな……)
モバP「……」ガタ
凛「……! わん! わんわん! わん!」
未央(……! プロデューサーが立った! これはいけるか!?)
卯月(やった、人間のプライドすら捨てた凛ちゃんの大勝利が……)
モバP「すまん、凛、ちょっとファックス送りたいからどいてくれ」
凛「……わん?」
未央(な!? ま、まさか……単にファックスを送りたいだけ!?)
卯月(……凛ちゃん、犬のまま呆けちゃった……)
モバP「……それと凛、いつまでもそんな姿勢でいると汚いぞ」
凛「……え」
未央(あ……)
卯月(……完全に正気に戻った)
モバP「えーと、向こうのファックス番号は03の……」
凛「……」
未央(……そして黙って戻ってきた)
卯月(もう普通に立って歩いてるし……)
凛「……」
未央「り、凛……」
卯月「凛ちゃん……」
凛「……はあ、疲れた、なんで私が犬のマネなんてしなくちゃいけないの」
未央「え、でも結構ノリノ……」
卯月「しっ! 未央ちゃん、今は黙って!」
凛「まったく、馬鹿馬鹿しいよね、本当に……」
未央「う、うん……」
凛「……ちょっとトイレに籠るから、しばらくトイレはコンビニのをつかって」
卯月「わ、わかったよ……」
応接室
未央「どうしよう、いやマジでまずいよ、これは……」
卯月「うん、あの凛ちゃんが伝家の宝刀の凛わんわんを使ってもほとんど効果なし……八方ふさがりかな?」
未央「……認めたくないけど、このままじゃあ……」
ガチャ
ありす「……あれ、お2人ともいらっしゃったんですか?」
卯月「あ、ありすちゃん」
ありす「プロデューサーが忙しいとのことなのでこちらで待っているように言われたんですけども……」
未央「……ねえ、卯月、今度はありすちゃんに頼んでみるのはどう?」ヒソヒソ
卯月「……いやでも、さすがにありすちゃんは無理じゃない?」ヒソヒソ
未央「だから、あえてのありすちゃんなんだって……こうなったらジャンルを広げていく感じでさ」ヒソヒソ
卯月「……確かにプロデューサー、ちょっとロリコン入ってるけど……」ヒソヒソ
ありす「……何の話をしているんですか? それと、なんでそんな恰好をしているんですか?」
未央「……聞きたい? なんで私たちがこんな恰好をしているか?」
ありす「……まあ、興味はありますけど」
未央「……じゃあ話してあげるね……私たちの奮戦の記録を」
ありす「はあ……」
…………
未央「……というわけなの」
ありす「……何やっているんですか」
卯月「うう……小学生にも呆れられてる……」
ありす「いや、呆れますよ、普通……」
未央「……まあ、これを話したのはありすちゃんに協力をしてほしいってことなんだけど……」
ありす「お断りします」
未央「……あう」
卯月「……やっぱり」
ありす「下らない……そもそも話を聞く限りでは前の方が異常でしょう、これで正常に戻ってよかったですね」
未央「ぐお……正論が痛い……」
卯月「未央ちゃん、しっかりして!」
コンコン
ありす「はい」
モバP「……おーい、橘さんに用が入っていいか?」
ありす「……え、橘? あ、ああ、プロデューサーですか、どうぞ」
ガチャ
モバP「ちょっと確認したんだけど、橘さんの明日の予定に……て、何でうなだれてるんだ、その2人は?」
未央「……」
卯月「……」
ありす「……気にしないでください……えっと、プロデューサー?」
モバP「橘さんの明日の予定で撮影が入ってたと思うんだけど、それが延期になったんだ、言ってなかったよな?」
ありす「……それでしたらちひろさんに聞きましたけど……」
モバP「それはよかった……用件はそれだけだ、もうちょいしたら営業に行くから待っててくれな」
ありす「……」
バタン
ありす「……」
未央「……」
卯月「……」
ありす「……本田さん、島村さん、プロデューサーがおかしいです」
未央「……え、わかってくれたの?」
ありす「……私の事を橘って呼んでました」
卯月「う、うん……そういえば最近はずっと、ありすって呼んでたよね」
ありす「おかしいです……なんで今さらそんな……まさか、私、嫌われたんでしょうか……?」
未央「い、いや、それはないと思うけど……」
ありす「……ちょっと行ってきます」
卯月「……プロデューサーのところに?」
ありす「……はい」
事務室
モバP「……」カタカタ
ありす「……プロデューサー」
モバP「……うん? なんだ、橘さん?」
未央(プロデューサー、やっぱりなぜか橘さん呼びになってる……)
卯月(橘さんって呼ばれるたびにありすちゃんの顔から表情が消えるんだよね……)
ありす「……」
モバP「……?」
未央(でも、ありすちゃん、どうやってアプローチするんだろう……)
卯月(うん……凛ちゃんと同じクールキャラだけど、凛ちゃんほどはっちゃけられないだろうし……)
ありす「……何か手伝うことはありませんか?」
モバP「え?」
ありす「手伝うことです、お忙しそうだったので……」
未央(お手伝い作戦か……でも、さすがに事務仕事は小学生には無理でしょ)
卯月(そこは普通に甘えるとか……は出来なさそうか、ありすちゃん、結構冷めてるし)
モバP「ああ、大丈夫、溜まった資料を片づけているだけだから気にしなくていいぞ」
ありす「……」
モバP「気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう」
ありす「……」
未央(まあ、断られちゃうよね……)
卯月(ありすちゃん、シュントしちゃった……)
ありす「…………それなら、お茶を淹れてきます」
モバP「いや、それも大丈夫だから、絶対にお茶は自分で淹れる」
未央(その道はすでに卯月が通った道なんだよ、ありすちゃん)
卯月(……なんだかプロデューサーさん、不自然に強く拒絶しているように見える……)
ありす「……」
モバP「営業の時間までには確実に終わらせるから、安心して待っていてくれよ」
ありす「……」
未央(とどめが入ったか……)
卯月(ありすちゃん、戻ってきたね……)
ありす「……」
未央「あ、ありすちゃん、ドンマイ! みんなあんな感じだから!」
卯月「そ、そうだよ! 気にすることないよ!」
ありす「……」
未央「あ、あれ? ありすちゃん、どこ行くの?」
ありす「……応接室の鞄に入れたままなので、取りに行ってきます」
卯月「な、何を?」
ありす「……」
未央「……行っちゃった」
卯月「何をするつもりなんだろう……?」
…………
ありす「……」
未央「あ、戻ってきた」
卯月「……ありすちゃん、その手に持っている紙はなに?」
ありす「学校のテストです」
未央「へえ、学校でテストがあったんだ……でも、それをどうするの」
ありす「プロデューサーに見せてきます」
卯月「え、何で?」
ありす「……この前、赤城さんがテストでいい点を取って、褒められていましたので」
未央「……なるほど、確かにロリ枠ならではの攻め方……これならプロデューサーの気を引けるかも!」
卯月「そうだね、ちょうど今日、ありすちゃんの学校でテストがあってよかっ……」
卯月(……あれ? でも、今日って土曜日だよね? ありすちゃん、学校お休みなんじゃ……)
ありす「……今度こそ、必ず……」
卯月「あ、うん……頑張って」
ありす「……プロデューサー」
モバP「……うん? 今度はどうしたんだ?」カタカタ
ありす「これ、見てください」
モバP「……お、算数のテストか……おお! 100点満点じゃないか!」
ありす「はい、100点です」
モバP「ははは、すごいじゃないか、頑張ったな、あり……橘さん」
未央(……? 今、一瞬、ありすって言いかけなかった?)
卯月(うん、あえて言いなおしたよね……それに頭に手を伸ばそうとしてすぐに引っ込めた)
ありす「……」
モバP「俺なんて小学生の頃はずっと遊びほうけていたからテストで100点なって取ったことなかったぞ」
ありす「……」
モバP「……どうしたんだ? 急に黙りこくって……?」
ありす「……何でもないです」クシャクシャ
モバP「お、おい! なにしているんだ……せっかく100点取ったのにそんなにしちゃ……」
ありす「……これはもうゴミなのでいりません」
モバP「……ゴ、ゴミって……頑張ったんだろう?」
ありす「頑張ったんですけど意味はありませんでした」
モバP「え?」
未央「はいはいはい、ちょっと、ゴメンね……」
卯月「ありすちゃん、一緒に応接室に行こう、ね?」
モバP「あ! またお前らか! さっきから……」
未央「はい、プロデューサーは仕事に集中!」
卯月「ありすちゃんは私たちの方で引き取りますので、気にしないでください!」
モバP「え? あ、おう……」
ありす「……」
応接室
ありす「……」
未央「……どうしよう、ありすちゃんがお地蔵さんみたいに無言で遠くを見ている……」
卯月「もう、無理なんだよ……なぜかは知らないけど、私達のプロデューサーさんは変わっちゃったんだ……」
ガチャ
早苗「おはよう……お、みんないるじゃん」
未央「あ、早苗さん、おはようございます」
卯月「おはようございます……あれ? 今日って早苗さん、オフの日なんじゃ」
早苗「いやあ、オフだったんだけどね、女の独り身で割と暇でさ……ほら、私って前職がアレじゃない? 気軽に友達も誘えなくってね」
未央「えーと……つまり?」
早苗「つまり遊びに来たってこと! まあ、家でゴロゴロしてるのも性に合わないし、こんな真昼間からスパに行くのもなんだしねえ」
卯月「そうだったんですか」
早苗「みんなも営業行くまで暇でしょ? 時間つぶしついでにお姉さんに付き合いなさいな」
未央「早苗さん……早苗さんか……」
卯月「……未央ちゃん、早苗さんを巻き込むのはまずいよ、いろんな意味で……」
早苗「何? 何かあったの? ……あれ、ありすちゃんもいたんだ……どうしたのさっきから黙ってるみたいだけど?」
ありす「……」
早苗「……? 変なありすちゃんね……」
未央「……でも確かに早苗さんだとロリ枠でありすちゃんと被っちゃうなぁ……」
卯月「……いや、そういう問題じゃあ……というか早苗さんってロリ枠なの?」
早苗「待てーい、何の話かは知らないけど 誰がロリっ娘美人婦警だって?」
未央「そんなことは言ってません、とりあえず、早苗さんには今までの事を話しますね」
早苗(……最近の若い子は容赦ないわね……)
…………
未央「……というわけなんですけど」
早苗「なるほどねえ……私の知らないところでそういうことをしてたわけね」
卯月「あ、あの……私たちは別にプロデューサーさんに無理やりやらされているわけじゃなくてですね……」
早苗「ああ、大丈夫よ、別に通報とかしないし、プロデューサー君をしめたりもしないから」
卯月「え?」
早苗「別に被害届けが出てるわけじゃあるまいし、当人同士の問題なら民事不介入が鉄則だもの」
卯月「よ、よかった……」
早苗「その代り、あんまりやりすぎちゃダメよ……それをやってて襲われましたって泣きつかれてもお姉さんは何もできないからね」
未央「あ、それは大丈夫です、わかっててやってるんで」
早苗(……本当に最近の若い子は……)
卯月「……それでなんとか気を引けないかなあって思ってこんな恰好までしているんですけど……」
早苗「え? それ私服じゃなかったの?」
卯月「ち、違いますよ! なんで体操服にブルマが私服なんですか!」
早苗「でも私時々部屋着として着てるわよ、まだ高校のやつとかなら入るし」
卯月「……」
未央「あ、言っておきますけど私のも私服じゃないですからね」
早苗「それはさすがにわかるわよ、ニュージェネレーションよね? まあ、私なら私服でもいけるけど」
卯月(……そういえば早苗さん、この前のお花見でボディコン……とかいうすごくピッチリした服できたんだっけ……、『勝負服だ』とか言ってだけど、誰に勝負を挑んだんだろう……)
未央「とりあえず、今まで私を始め、卯月やありすちゃん、ここにはいない凛が敢え無く玉砕してきたんです」
早苗「ふむふむ……そして真打であるこの私に全てを託す、と、わかったわ!」
未央「いえ、特にそういうわけではないです」
早苗(何もそんな即行で断言しなくても……さっきの事といい、もしかして私って嫌われてる?)
早苗「……というか、そもそもそのスキンシップってずっと前からやってたんでしょ?」
卯月「は、はい……正直に言うと早苗さんが事務所に所属する前からやってました」
早苗「まあ、私が一番新参だからね……年は一番古参だけど、なんちゃって」
未央「そうですね、私の2倍近いです」
早苗(……嫌われてない……わよね?)
早苗「……それならまどろっこしいことせずに聞いてみればいいじゃない、なんでノリ悪くなっちゃたんですか、とかそんな感じで」
卯月「それはもう聞いたんです……」
早苗「あら、そうなんだ……それでなんて言われたの?」
未央「『俺はいつもこんな感じだ!』てなんだかちょっと焦った感じで返されました」
早苗「焦る……? 怒ってるとか逆ギレしているわけじゃなくて?」
卯月「そんなことはなかったです……」
未央「うん、本当に焦ってた……なんか目が泳いでたし、応接室に追っ払うし」
早苗「……それもおかしいのよね、普段、みんなって応接室で待ってたり、暇を潰してたりするの?」
卯月「……まあ、普段から開放はされているのでお客さんとかが居なければ使う事もありましたけど……」
未央「……あれ? そういえば私、前に応接室はあんまり使うなって、プロデューサーに言われた記憶がある……」
卯月「そんなことあったの?」
未央「うん……応接室でジュースこぼしちゃった事があったんだけど、その時にね」
早苗「ふむ……なるほどねえ、でも今日はなぜか、応接室に行けって言われたんだ?」
卯月「はい……改めて考えるとちょっと変ですよね、無視はされていないんですが、避けられているような……」
早苗「……ふーん、なるほどね……わかったわ、後は私に任せなさい」
未央「え?」
早苗「なんであなた達が急に避けられるようになったか、プロデューサー君に直接問い詰めて、事の真相を明らかにするのよ……前職婦警の肩書が出てではない事を見せてあげる!」
未央「おお、取り調べのプロってことですね!」
卯月「すごい……頼もしいです!」
事務室
早苗「プロデューサー君? 今ちょっといい?」
モバP「あれ、早苗さん、応接室で若い子と遊ぶんじゃなかったんですか?」カタカタ
早苗「それはいいの……一旦手を止めてちょうだい」
モバP「あ、じゃあこの数字だけ打ち込ませてください、これが終われば内務処理は終わるんで……」カタカタ
早苗「プロデューサー君、あと5秒以内に手を止めないとコンセントを抜きます、5、4……」
モバP「え!? わ、わかりました、やめますよ!」
早苗「3、2……」
モバP「ちょ、ちょっと、手を止めたんだからカウントも止めてください!」
早苗「ふむ、まあいいわ……プロデューサー君、君に聞きたいことがあるの」
モバP「……何ですか?」
早苗「単刀直入に聞くけど、なんで卯月ちゃんや未央ちゃんを避けるの? 聞いたところによると凛ちゃんやありすちゃんにも酷いことをしたとか」
モバP「さ、避けてなんかいません! それになんですか酷いことって……」
早苗「とぼけたってネタは上がってるのよ!」
モバP「う!? ちょ……く、苦しい……」
早苗「さあ、吐きなさい!」
モバP「……え、襟首を……掴まないで……息が……」
未央「……あ、あのー、早苗さん?」
早苗「なに? もうちょっとで落ちそうだから少し待っててね」
モバP「ぐ、ぐぐ……」
未央「どう見ても物理的に落ちそうなんですがそれは……」
卯月「……というか、これって取り調べじゃなくて脅迫なんじゃ……」
早苗「いやあ、取り調べって一度やってみたかったのよね、私、交通課だったからやったことなくてさあ」
モバP「……う、うう……」
未央「……とりあえず、プロデューサーを放してあげてください、多分、しゃべるにしゃべれなくなっていると思うので……」
…………
モバP「……死ぬかと思った」
卯月「大丈夫ですか? プロデューサーさん?」
モバP「ああ……は!? だ、大丈夫だぞ、うん、大丈夫だ!」ササッ
卯月「……」
未央「……ね? こんな感じなんですよ?」
早苗「……ふむ、ここまで露骨とはね」
モバP「な、何ですか……? 悪いんですけど、俺はまだ仕事が……」
早苗「そして仕事を言い訳にして逃げる、と……ふう、仕方ないわ、もう一度取り調べをするしかないわね」
モバP「ま、待って下さい、アレはガチで苦しいんですよ!」
早苗「なら逃げずに話しなさい、何で避けているのかを」
モバP「……それは……ううん」
早苗「随分強情ね……それともそんなに話せない事情があるの?」
モバP「……下手をすれば事務所存続の危機に陥るかもしれないです」
卯月「え、そんな大問題だったんですか?」
未央「あ、あんなのただのおふざけじゃん!」
早苗「……ふむ、そういうことなら仕方ないわね」
モバP「諦めてくれましたか?」
早苗「出前でカツ丼を頼むわ、こうなれば長期戦よ」
モバP「ぜ、全然諦めてない……」
早苗「デカが諦めたら事件は迷宮入りなのよ! ……ちなみにこの前ドラマでやってたセリフね」
モバP「そこはせめて先輩の刑事さんとかのセリフを引用してくださいよ……」
ガチャ
ちひろ「ただいま、戻りました……すみません、銀行が混んでて遅くなっちゃって……あら、早苗さん、おはようございます」
早苗「おっはー、ちひろさん……とりあえず今からカツ丼頼むんだけど、ちひろさんも何か頼む? 早めの昼食ってことで……」
ちひろ「いえ、それは別に……て、卯月ちゃんに未央ちゃん、なんでそんな格好しているの? ダメじゃない衣装を勝手に着たら」
卯月「あ……」
未央「あ、いや、これはその……深い理由があってですね」
ちひろ「理由……?」
未央「もう説明するの何回目だろう……えーと、まず最初に私と卯月が……」
モバP「……! ま、待て! その話はやめろ!」
早苗「はーい、プロデューサー君は黙ってようね」
…………
ちひろ「なるほど、プロデューサーさんが急に相手をしてくれなくなったと」
卯月「……」
未央「……」
モバP「あ、いや……違うんですよ、お茶をフーフーしてもらったり、抱きつかれたりしたのは、決してよこしまな気持ちがあったとかじゃなくて……」
ちひろ「いや、今さらなに取り繕ってるんですか……それにどういう心境の変化です?」
モバP「……え? 今さら?」
ちひろ「……? 今さらじゃないですか、いつも昼間っからイチャイチャしてたのに」
モバP「……え、知ってたんですか?」
ちひろ「は? 知られてなかったと思ってたんですか?」
モバP「……」
ちひろ「……」
早苗「あれ? 未央ちゃん達のスキンシップって事務所公認じゃなかったの?」
未央「えーと、公認というか……黙認って感じですかね……まあ、その……一種のお遊びみたいなものでして……」
卯月「さすがにおおっぴらにはやってませんでした……なるべくプロデューサーと私たちだけの時に……さすがにちひろさんにはバレてましたけど」
モバP「ええ、お前ら、バレてた事に気づいていたのか!?」
早苗「それでプロデューサー君はバレてないと思ったんだ?」
モバP「……は、はい……というか、早苗さん、その……さっきの話を聞いて何もしないんですか?」
早苗「何もって?」
モバP「いえ……てっきり、このことを知られたら思いっきり締め上げられるものかと……」
早苗「締め上げてほしいの? ご要望とあらばいくらでもやってあげるけど」
モバP「あ、いえ、大丈夫です! 本当に勘弁してください……」
早苗「まあ、さっき応接室であらかたの事情は聞いたしね、別に君が無理やり何かしたわけでもないし、私からは特にないわよ」
モバP「そ、そうだったんですか……ちなみに通報とかは……?」
早苗「しないわよ、この娘達にも言ったけど、誰も嫌がってないんなら問題にする必要はないでしょ」
モバP「よ、よかった……」
ちひろ「……それで、プロデューサーさん、質問を繰り返しますけど、どういう心境の変化で彼女たちを避けるようになったんですか?」
モバP「……いや、ちひろさんがそれを聞きますか」
ちひろ「え?」
モバP「そもそもちひろさんが俺に釘を刺してきたのが原因じゃないですか」
ちひろ「え、いや私は何も言ってませんけど……?」
モバP「そんな……だって、俺にあの研修を勧めてきたのはちひろさんでしょう」
ちひろ「研修……ああ、もしかして昨日のハラスメント研修の事ですか?」
未央「ハラスメント研修ってなんですか?」
ちひろ「セクハラとかパワハラとかそういった職場環境の問題を改善するための勉強会のことよ……所属アイドルも多くなってきたし、必要だと思って勧めたんだけど……」
卯月「それでプロデューサーさんはその研修に参加したわけですね」
モバP「ああ、そこでこんなテストをやったんだ」
早苗「なにこれ?」
モバP「職場環境が健全なものかをチェックするテストです……該当項目に丸を付けていくんですけど……」
ちひろ「へえ、丸がついてる項目ばっかりじゃないですか、よかったですね」
モバP「よく見てくださいよ……設問は全部、丸がついたらいけないやつなんです」
ちひろ「……え、でもこれほとんど丸がついているんですけど」
モバP「そうなんですよ、ヤバいんですよ、うちの職場は!」
未央「ちなみにどんな項目があるんですか?」
ちひろ「えーと……特定の従業員にお茶汲みなどの雑務をやらせる」
卯月「それって、私の……」
ちひろ「異性間での不必要な接触、性的なアピールがある」
未央「あれ、それは私……?」
ちひろ「ちゃん付けやあだ名など、本人が嫌がる呼び方をする」
卯月「もしかして……ありすちゃんを橘さんって呼び直したのは……?」
モバP「……俺としては親しみを込めていたつもりだったんだけど、立派なセクハラだったんだ」
卯月(……そんな何を今さら……)
ちひろ「……その他もろもろもありますね……この晩酌の強要というのは誰にしたんですか? うちのアイドルで二十歳超えているのは早苗さんだけですよね」
モバP「この前にちひろさんにしちゃったじゃないですか……」
ちひろ「ええ? 全く記憶にないんですけど……」
モバP「俺はバッチリ覚えてますよ、先週サシ飲みした時の事です、酔ってたせいで調子に乗って、早く注いでくださいって……」
ちひろ(いや、その程度なら今まで何回やったかわからないでしょうが……どう考えてもプロデューサーさんの考えすぎでは……)
モバP「講師の先生にこのテストを見せたら顔を真っ青にして驚いてましたよ、今すぐ止めないと懲戒解雇じゃ済まないって……今、俺が解雇されたらこの事務所も……」
未央「……ああ、あの時の事務所存続の危機ってその事だったのね」
卯月「つまり、プロデューサーさんは私たちにセクハラしていると思って避けてたんですか?」
モバP「だから本当に避けているつもりはなかったんだってば……ただ、早苗さんも新しく入ってきたし、これで問題になったらまずいんじゃないかと思って……」
早苗「ちょっと、さりげなくあたしのせいにしてない?」
モバP「い、いやだって、元警察官ですし……」
ちひろ「……まあ、だいたい事情はわかりました、プロデューサーさん、その講師の先生の言葉は忘れてください」
モバP「え……で、でも……訴えられる可能性があるって……」
ちひろ「他所は他所、うちはうちです」
モバP「その発想が一番危険だって講師の先生が言ってましたけど……」
ちひろ「だからそれは……」
未央「……もう面倒くさいな、えい!」ムニュ
モバP「うおっ!?」
未央「さっきから聞いていれば勝手な事ばかり言って……セクハラってアレでしょ? 嫌がられたらダメなやつでしょ?」
モバP「ま、まあ、それで間違いじゃないが……」
未央「じゃあ、私が嫌々抱きついているように見える?」
モバP「……い、いや、それは……」
未央「じゃあ、これはセクハラじゃない、OK?」
モバP「オ、オッケー……」
未央「ついでに卯月のお茶汲みとか、ありすちゃんのことを名前で呼ぶとかも本人たちが嫌がってないから超セーフ! ねえ卯月?」
卯月「うん、プロデューサー、プロデューサーが嫌じゃなければ、私の淹れたお茶を飲んでください」
モバP「ふ、2人とも……」
ちひろ「……はあ、まあそういうことなので、プロデューサーさんは思う存分若い子たちとイチャイチャすればいいんじゃないですか」
モバP「な、なんで呆れながら言うんですか」
ちひろ「あなたが鼻の下を伸ばしているからですよ」
モバP「の、伸ばしてなんかいませんよ……」
早苗「……まあ、これで解決ってことでいいかしら?」
未央「あ、まだです、凛とありすちゃんも連れてきてフォローしないと」
卯月「あ、そうか、凛ちゃんはまだトイレに籠っているんだっけ」
モバP「トイレに? なんでだ?」
未央「卯月は凛を呼んできて、私はありすちゃんを呼ぶから」
卯月「わかった!」
応接室
未央「ありすちゃん! 事務室まですぐに来て!」
ありす「……」
未央「……ダメだ、完全に無反応ね」
ありす「……」
未央「やっぱり今さらプロデューサーがありすちゃんの事を嫌ってたわけじゃないってわかっても……」
ありす「どういうことですか?」
未央「え? ……聞こえてたの?」
ありす「この距離で聞こえないわけないじゃないですか」
未央「い、いや、そうだけど……」
ありす「で、どういうことなんですか?」
未央「えーと、実はプロデューサーがありすちゃんのことを名前で呼ぶのをセクハラだったんじゃないかって思ったらしいの、それで今日になって苗字で呼び直したらしいんだけど……」
ありす「……今さら何を言っているんですか、あの人は?」
未央「それはあのカミングアウトを聞いた全員が思ったことだから……」
ありす「……本当にどうしようもないプロデューサーなんだから」ノバシノバシ
未央「あ、クシャクシャにしたテスト持ってたんだ」
ありす「捨て忘れただけです……事務室に行ってきますから」
未央「あ、うん、私も行くよ……」
トイレ前
卯月「凛ちゃん、出てきて」ドンドン
ドア『……』
卯月「プロデューサーさんが凛ちゃんの事をスルーしたのは凛ちゃんに魅力がなかったんじゃないの!」ドンドン
ドア『……』
卯月「プロデューサーさんはセクハラしたくなかっただけなの……」ドンドン
ドア『……』
卯月「だから出てきて!」ドンドン
ドア『……』
卯月「それに……凛わんわんはとっても可愛かったから!」ドンドン
ガチャ
凛「……」
卯月「あ、凛ちゃん、やっと出てきてくれたのね、凛わんわんは……」
凛「……凛わんわんって何?」
卯月「え?」
凛「卯月が急に変な事言い出すからビックリしたよ」
卯月「え、いや……だってさっき事務室で……」
凛「何の話か分からない」
卯月「犬耳着けて……」
凛「分からない、卯月が何を言っているか理解できない」
卯月「……」
凛「私は犬耳なんてつけていない、凛わんわんなんてものは存在しない」
卯月(凛ちゃん、私じゃなくて自分自身に言い聞かせている……自分の記憶からあの時の事を消そうとしているのね……)
卯月「そうだね、凛ちゃん……とにかく、事務室に行こう? 私が事情を説明するより、直接プロデューサーさんから話を聞いた方がいいと思うし」
凛「……わかった」
事務室
モバP「えらいぞ、ありす、よく頑張ったな」ナデナデ
ありす「……ふふ」
未央(ふう、ありすちゃんの機嫌も直ってよかった……)
未央「これで後は凛だけね」
モバP「そういえば、凛はなんでトイレに籠っているんだ?」
未央「プロデューサーが凛わんわんを完全にスルーしたからでしょ」
モバP「ああ、アレか……」
未央「もうセクハラとか気にする必要ないんだから存分に可愛がってあげなよ」
モバP「うーん……」
未央(あ、ちょうど卯月が凛を連れて帰ってきた……)
凛「……」
モバP「凛わんわんな……あれ、ぶっちゃけセクハラとか関係なくただ引いてただけなんだ」
未央「え……」
凛「……」
ちひろ(……マズイ、後ろに凛ちゃんがいるのにプロデューサーさん気づいていない)
早苗(……あたし、知ーらない)
ありす(来週は火曜日に漢字の小テストがあるから、帰って予習しないと……)
モバP「凛に犬耳は似合うと思ったが、なにも犬に成りきる必要はないだろう」
未央「……あ、うん、えーとね……」
凛「……」
卯月(やだ、隣にいる凛ちゃんの顔が見れない……)
モバP「でもあの演技はすごかったな、芸の幅が広いの良いことだから、これからちょっとお芝居関係の仕事も取ってこようかな」
ありす「……あれ? 渋谷さん、いたんですか?」
モバP「え?」
凛「……」
モバP「り、凛……いつの間に後ろに?」
凛「……渋谷凛は今日かぎりでアイドルを辞めて実家に帰ります、今までお世話になりました、それじゃあさようなら」
モバP「ま、待て凛! 落ち着け!」
卯月「早まらないで凛ちゃん!」
未央「私は可愛いと思ったよ! 凛わんわん!」
ありす「……? 帰るもなにも渋谷さんのご実家は東京の花屋さんだったと思いますけど」
早苗「……本当に楽しい事務よね、やっぱりオフの日でも来てよかったわあ……警察辞めて正解だったかも」
さなえ「それはよかったです……というかもう営業に行かなきゃいけない時間なんですけど、みんなすっかり忘れてますよね」
END
後日談
卯月「ふーふー……はい、プロデューサーさん、どうぞ」
モバP「ああ、ありがとう」
卯月「そうだ、久しぶりに耳掃除してあげますね、お膝にどうぞ」
モバP「あ、えーと……仕事終わりにな……」
未央「ねえ、プロデューサー、どうこの服? 可愛くて買っちゃったの」
モバP「い、いいんじゃないか……」
未央「もう、ちゃんと見てよ!」
モバP「い、いや……あんまり胸元が開きすぎるのはどうかと思うぞ……」
ありす「プロデューサー、見てください、今回も100点を取りました」
モバP「おめでとう、ありす」
ありす「……」
モバP「……あ! おめでとう」ナデナデ
ありす「……ふふ」
早苗「モテモテねえ、プロデューサー君」
ちひろ「……前々からあんな感じでしたよ、ただみんな隠すのを止めただけで……なし崩し的に黙認から公認になっちゃいましたし」カキカキ
早苗「へえ……」
凛「……」
早苗「……あ、凛ちゃんは普通ね」
ちひろ「……ガーディガンのポケットを見てください」カキカキ
早苗「……え? あ、あれって噂の犬耳のカチューシャ?」
ちひろ「あの日の夜にプロデューサーさんと2人きりで話し合って、なんとかアイドルを辞めるのを押しとどめたみたいなんです」カキカキ
早苗「うん」
ちひろ「そしたら次の日からあのカチューシャが常にポケットに入っているようになっていまして……一体どんな話し合いをしたんだか」カキカキ
早苗「ふーん……」
ちひろ「……」カキカキ
キャッキャウフフ
早苗「……まあ、とりあえず念のために釘を刺しとくわ」
ちひろ「はい、そうですね……」カキカキ
早苗「プロデューサー君」
モバP「あ、早苗さん、なんですか?」
早苗「わかっていると思うけど、一応忠告ね、同意の上でも18歳未満に手を出したら一発アウトよ、特に親御さんに告発されたら有罪確定だから」
モバP「わ、わかってますよ」
早苗「うんうん、ならばよし……まあ、どうしても我慢できなくなったらお姉さんに言いなさい、いろいろと相手してあげるから」
モバP「……変なこと言わないで下さい」
早苗「遠慮しないの、それにプロデューサー君って彼女いないでしょ?」
モバP「う……そんなの早苗さんには関係ないじゃないですか」
早苗「あるある、プロデューサー君だって溜まるでしょ? 風俗とか行かないわけ?」
モバP「お、おっさんですか、あなたは! 変なこと聞かないでくださいよ!」
早苗「ははは、赤くなっちゃって可愛い〜」
モバP「く……退いて下さい!」
早苗「え、どこ行くの?」
モバP「資料をコピーしてくるんです!」
早苗「ああ、そうなの、いってらっしゃ〜い」
モバP「まったく……中身は完全におっさんだな、あの28歳……」
ちひろ「……」カキカキ
モバP「……あれ、ちひろさん? 何書いているんですか?」
ちひろ「……ふむ、こんなもんかしらね」
モバP「次のイベントの資料か何かですか?」
ちひろ「いえ、ちょっとチェックしてました」
モバP「チェック……?」
ちひろ「職場環境を健全なものにするためのテストです」
モバP「……もしかして前に俺がやっていたやつですか」
ちひろ「ええ……見事に丸ばっかりです」
モバP「待って下さい、俺はセクハラしているつもりは……」
ちひろ「違いますよ、これはプロデューサーさんがセクハラしているチェックじゃなくて、されているチェックです」
モバP「へ?」
ちひろ「……どうやら、ハラスメント研修が必要だったのはアイドルの方だったみたいですね」
END
モバP「ま、待て凛! 落ち着け!」
卯月「早まらないで凛ちゃん!」
未央「私は可愛いと思ったよ! 凛わんわん!」
ありす「……? 帰るもなにも渋谷さんのご実家は東京の花屋さんだったと思いますけど」
早苗「……本当に楽しい事務よね、やっぱりオフの日でも来てよかったわあ……警察辞めて正解だったかも」
ちひろ「それはよかったです……というかもう営業に行かなきゃいけない時間なんですけど、みんなすっかり忘れてますよね」
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