短いのを書きたいからお題くれ(13)

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>>2

>>1の住んでいる都道府県を題材としたSS

了解。ちなみに兵庫

『兵庫のとある場所にて……』

……なんやこれ?

夏休みに田舎に帰ってきた。
五年ぶりくらいの帰省だった。

五年もあれば何かが変わる。当たり前の事だ。
しかし俺はバカだった。
故郷が俺を暖かく迎えてくれる事を疑いもしなかった。

そして現実は非情だった。

……なんでやん……

過疎化。そして行政の切り捨て。マイノリティーは常に弱者だ。

「バスがあらへん……」

つまり、実家への交通手段が無くなっていた……

「携帯……使われへん……」

D〇COMOさん……ちゃんと仕事してくれ……

俺は泣きたくなった……

「歩くんかよ……。このクソ暑いのに……」

ちなみに実家まで20キロ以上はある……

歩いて五時間くらいかかる。走れば二時間と少し。

幸い荷物は軽い。夏じゃなければまぁ、軽い笑い話なのだが……

「暑い……。暑いぞ……砂漠や……。死ぬ……」

笑えない。マジで笑えない……

死んだら誰を恨もう?

バス会社か? 町会議員か?

誰やねん……。この路線のバス減らしたやつは……

あぁ、そう言えば俺の住民票は、まだこの町……

選挙。これにも五年以上は行ってなかった……

「うぅ……。一部は自己責任かよ……」

最初はマジで歩いて帰るつもりだったが、
結局20分くらいで挫折した。

長い都会暮らしで忘れてたが、
困った時は人を頼ればいい。

「すいませーん。電話貸してくださーい」

俺は民家の前で、知らないお爺さんに声をかけた。

「あぁ、バス無くなったん知らんと来たん?」

「え? あぁ、はい、そうです」

「せやろ。タマにおるんよ。兄ちゃんみたいな子ぉ」

「あはは……。スンマセン……」

「暑かったやろ。スイカ食べや」

「いや、そんなん……」

「冷えとるで」

「いえ、悪いですよ」

「ちょっと待っとれ」

「……はい、スンマセン……」

長い都会暮らしで忘れてたが、この町の年寄りは基本的に世話好きで、
やたらと若者に何かを食わせようとする。

そして話が長い。むちゃくちゃ長い。本当に長い……

でもこの爺ちゃんは恩人。ありがとう、お爺ちゃん。スイカ美味かったす。

借りた電話で親父に救援要請(迎えに来てくれ)を伝え、
迎えを待つ間にスイカを食べながら爺さんと話した。
ラジオで高校野球を聞きながら。

試合は第三試合。場所はもちろん甲子園。

甲子園は兵庫にある。当たり前の事だ。
たまに甲子園は大阪だとか言う人もいるらしいが、
兵庫県人としては、それはネタだと思いたい。

この町は兵庫にあり、実は地理的に甲子園の近くだったりする。
しかし俺にとって、別の意味で甲子園は遠かった。

バス会社のせいで、さらに別の意味で甲子園が遠くなっていた事は今日知った。

兵庫在住の元高校球児の戯れ言。

おわり

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