【白い砂のアクアトープ】風花「演技だよ」 (25)

(くくるの部屋)

くくる「ごちそうさま!」

風花「食器は私が洗うね」

くくる「ありがとう風花」

くくる「(隣人の宮沢風花と夕食を共にするようになってから、一週間が過ぎた。私にとって最初の大仕事となったバックヤードツアーも、小規模ながら無事に完遂し、慣れない仕事への苦手意識も少し減り、こうして安らいだ気持ちで食卓を囲めるようになったのは、とても気持ちの良いものだった)」

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くくる「(それもこれも、全ては親友でもある同僚の風花のおかげだ。私一人では上手く仕事を回せなかったし、たとえ仕事が上手くいっても、ここまで安心感のある夜は過ごせなかったと思う。風花のいなかった社会人一日目の夜と、風花と再会した二日目の夜では、その過ごしやすさに文字通り天と地ほどの差があったし、日数を重ねた今では風花のいない生活なんて考えられなくなっていた)」

くくる「(私ももう社会人だし、風花に甘えすぎてはいけないと思いつつ、彼女に甘やかされるとついついそれを受け入れてしまう。自分が甘え上手だとは思っていないが、風花が甘えさせ上手なのは間違いないと思う。今だって、夕食の準備を手伝ってくれただけでなく、家主である私より先に片付けまでしてくれている。私も手伝おうとしたが「くくるは疲れてるでしょ、座ってて良いよ」と笑顔で返されてしまった。確かに私は不慣れな仕事で参っている自覚はあるが、肉体労働が多い分、風花の方が疲れているだろうに)」

くくる「(そこでふと気付いた。そういえば風花は、仕事を覚えるために朝は私より早く出て、夜も食事は一緒にしているから、私より早く寝ているということはないと思う。それでも日々の疲れを顔に出すことはなく、溌剌としている)」

くくる「(・・・もしかして、風花って私より、だいぶ体力あるんじゃないだろうか)」

くくる「風花って意外と体力あるよね。根性っていうか・・・」

風花「えっ?」

くくる「あっ(思わず口をついて出てしまった・・・聞こえたらまずい台詞でもないけど少し恥ずかしいな)」

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風花「まあ、がまがまで館長代理に鍛えられたからね」

くくる「何それ~、がまがまがブラックだったって言いたいの?」

風花「ふふっ、ごめんごめん。でも、くくるがスパルタだったのは本当だよ?ペンギンの餌やり・・・私、初めてだったのに。くくるったら、優しくしてくれないんだもん。痛かったなぁ、ペンギンのカンチョー・・・」

くくる「あ、あの頃は私も余裕がなかったから・・・でも確かに風花、がまがまの仕事でたくましくなったとは思うよ。不慣れな頃でもフルタイムでシフト入って、音を上げなかったよね」

風花「アイドル時代の賜物でもあるかな。あの頃も結構ハードな生活してたから・・・」

くくる「(考えてみたら私、元トップアイドルと一緒に仕事してるんだなー・・・うみやんじゃないからヨナプロのセンターというのがどのくらい凄いことなのかは分からないけど)」

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くくる「やっぱりアイドルの仕事って大変だったの?」

風花「そうだね。ボイストレーニングにダンスレッスン、握手会や営業での外回り・・・そしてやっぱりライブ。疲労と緊張で、終わった後はもうフラフラ。卒業した元センターの先輩で、痩せの大食いの人がいたんだけど、忙しすぎて太る暇なんかない、って笑ってた」

くくる「そういえば風花って、映画のオファー来てたんだよね?いきなり主演って凄くない?女優としての実績ってあったの?」

風花「全然ないよ。あの時話をもらったのだって、曲のPVの撮影で私を見て、主役のイメージに合うからって感じだったみたいだし・・・」

くくる「え、じゃあもしあの話受けてたら、素人同然の演技で映画デビューするところだったの!?」

風花「あっ、ひどーい!ドラマとかに出たことがないってだけで、演技のレッスンは受けてたよ!でも、やっぱりいきなり映画は無理だったと思うな。演技のレッスンは本当に基礎だけだったし、現場で他の人と絡む演技は出来なかったと思う」

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くくる「やっぱり難しいんだ?」

風花「難しいよ。先輩達の中にはテレビドラマにレギュラー出演してる人もいたけど、凄い人だと思ってた先輩がドラマでは他の出演者さんに食われちゃってて・・・大変なんだなって思ってた」

くくる「(ドラマやバラエティーにアイドルが出演している所は見たことがあるが、確かに演技が稚拙だったり、存在が浮いていたりすると感じることはあった。しかし考えてみれば彼女達はまだ十代の少女で、それが錚々たる顔ぶれの役者や歌手と並ばされたら、見劣りするのも仕方ないのかも知れない。それでも人前に立って頑張る彼女達のことを想うと、ファンも元気をもらえるのだろう。私が、風花を見ていると、頑張ろうという気持ちにさせられるように)」

くくる「・・・ちょっとだけ、見てみたかったな。映画に出てる風花」

風花「もう、意地悪しないで。私は、もう本当に未練は無いんだから」

くくる「ごめんごめん。ただ・・・私は、風花の素敵なところをいっぱい知ってるつもりだったけど、私の知らない風花の姿もあるんだなって思って。風花は何をやっても良く出来るし、似合うし・・・もし映画に出てたら、風花の新しい一面が見られたのかなって・・・何言ってんだろ私。ちょっと恥ずかしいね、ゴメン」

風花「・・・」

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くくる「(言っている内に、段々恥ずかしくなってきて、最後の方は声が萎れてしまった。風花と目を合わせづらい)」

風花「やって見せようか、演技」

くくる「えっ?」

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風花「言ったでしょ、基礎レッスンは受けたって。当時、結構練習してた、得意な台詞あるから、演じてる所を見せようかなって」

くくる「いや、そりゃ、やってくれるなら見るけど・・・良いの?」

風花「私も、今まで見せていなかった私を、くくるに見て欲しいなって。ダメかな?」

くくる「あ、じゃあ、是非・・・(そんな風に、目を輝かせて言って来る風花の提案、断れるわけないよ)」

風花「一人芝居だと、ちょっと違和感ある台詞だから、くくるを相手役だと思って良い?」

くくる「分かった、何すれば良い?」

風花「少し身長差が欲しいから・・・くくるは膝立ちになってくれる?」

くくる「分かった」

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風花「・・・・・・・・・・」ギュッ

くくる「(手を握られた・・・もしかして、もう演技は始まってる?)」

風花「ごめん、くくる。私ね、くくるに言っていなかったことがあるの」

くくる「(あ、始まった)」

風花「本当は、言わないつもりだったけど・・・やっぱりダメ。くくるには、聞いて欲しい」

くくる「・・・」ドキドキ

風花「・・・くくるのことが、好きなの。愛しているの」

くくる「・・・・・・え?」

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風花「あの夏の出来事を、私は一生忘れないよ。たった一ヶ月の間だったけど、くくると過ごしたあの夏が、今の私を作ってくれたの」

くくる「(これ演技だよね?)」

風花「夢に敗れて逃げ出した私を、くくるは受け止めてくれた。生きる意味を見失ってた私に、くくるの傍にいる喜びを教えてくれた。くくるを支えることが私の喜びになるって、気付かせてくれた」

くくる「・・・」

風花「大変なことも、辛いことも、くくるがいるから頑張れた。これからも私は、くくるがいれば頑張れると確信してる。私は・・・くくると、ずっと一緒にいたい。大人になっても、おばあちゃんになっても、最期の時でさえ、くくるといられたら幸せでいられると信じてる」

くくる「・・・」

風花「この感情を言い表す言葉は・・・きっと、愛だと思う」

くくる「・・・」

風花「だから、こう言わせて下さい。私は、くくるのことが好きです。愛しています」チュッ

くくる「(・・・えぇェェェェェ!!!???)」

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風花「・・・」ブチュウウウウ

くくる「(風花が私にディープキス?!?!)」

風花「くくる・・・」

くくる「ハアハア・・・」

風花「セックスしよ?」

くくる「?!?!!?!!」

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くくる「(どうすれば良い?返事をする?返事ってなにを?私も好きだからセックスしよって?でも好きって何?愛ってなに?愛と恋って同じ?私の好きってなに?)」ドキドキ

風花「・・・」

くくる「(うわー風花が顔を伏せてるよ。私が何も言わないから嫌がってると思っちゃったの?傷付けちゃったの?)」ドキドキ

風花「・・・どうかな?」

くくる「・・・へ?」

風花「私の演技」

くくる「・・・あーそうだった!!これ演技だった!!」

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風花「フフッ、少しやり過ぎたかな?」

くくる「うん、でも凄いよ風花。キスの演技、本物みたいだったよ」

風花「・・・」

くくる「風花?」

風花「演技だよ」

くくる「?」

風花「「膝立ちになってくれる?」までが演技だよ」

くくる「・・・えっ?つまり・・・えっ?!」

風花「・・・・・・・・・・」

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チュパチュパレロレロクチュクチュチュパレロクチュチュパレロクチュ

くくる「あッ、あッ、風花!イク!!イッちゃうウウウウウ!!」ビクッ

風花「ふう・・・」

くくる「ハアハア、風花・・・私、風花をイカせたい」

風花「くくる・・・イカせて・・・」

くくる「風花・・・」

風花「くくる・・・」

くくる「・・・アレ?」

風花「どうしたの?」

くくる「朝だ・・・」

風花「そうだね」

くくる「・・・」

風花「・・・」

くくる「うわッち、遅刻だ!社会人失格だ!」ドタバタ

風花「え、嘘?!もうそんな時間?!」ドタバタ

くくる「つ、続きは今日の夕方ね!!」ドタバタ

風花「ティンガーラのトイレでやりましょ」

くくる「駄目だよ!」

職場でセックスダメ、ゼッタイ

おしまい

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