喜多川海夢「……しゅき」 (22)
''くしゃくしゃに笑う キミを 焼き付けて
波打ち際に はねる影ふたつ
鳴らす足音は 明日へと響いてる''
燦々デイズ - 【その着せ替え人形は恋をする】
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「てかレイヤーさんと全然写真撮れなかったからさー、次絶対撮りまくろ~~~。そーいえば、下の広場にいたナナカレのレオ様コスの人めっちゃ美人だったよね! 加工なしであんなキレーってヤバくない?」
「……はい……」
五条新菜。ごじょーくんが作ってくれたコスを着て初めてコスプレイベントに参加した。
こじょーくんはたった2週間でその衣装を作ってくれた。いやー完全に不可抗力だったけれど、おかげで大満足な1日になった。その代償として疲れ果てた彼は隣で船を漕ぎつつ。
「喜多川さん……とても奇麗でした……」
「えっ……えぇ~~~………」
ごじょーくんの奇麗には特別な意味がある。
『俺にとって「奇麗」は……特別な物に対する言葉になって……心から思った時でないと
言えないと言いますか………』
つまり彼は今、あたしを特別だと思っていて、心から『奇麗』だと思ってるワケで。
思わず横目で表情を伺うと彼は寝てしまっていてそれを幸いにと盛大に赤面してしまう。
「ん~~~? なんだろう……この気持ち」
五条新菜。ごじょーくんは不思議な男子だ。
良い人なのは言うまでもないことだけど、初心でかわいいところもありつつ、背が高くて頼り甲斐もあったり、涙ホクロも愛しくて。
「あれ……? つまり、そーゆーこと……?」
つまりあたしはごじょーくんが好きだった。
「はあ~~にしてもいつからだろう……?」
顔面の熱が冷めてから冷静になって考える。
今、この瞬間に好きになったとは思えない。
もともと良い人だとは思ってたけど、それでも異性という対象ではなかったハズだけど。
「ま、いっか……理由なんて」
大切なのは今、この瞬間にこの人が好きだという事実ダケ。なんて結論はテツガク的でなんかカッコよくない? ねえ、ごじょーくん。
「彼女とか、居るのかな……?」
どうだろう。これまで訊いたことはないけどそれらしい影は見当たらなかったケド。でもでもこんな良い人がフリーなんてあり得るのだろうか。欠点らしいところなんてないし。
「ま、いっか……カ、カンケーないし」
震え声だった。喜びから一転して、泣きそうになった。それでも不敵な笑みを浮かべた。
カンケーないし。あたしの気持ちなんだし。
「ごじょーくん……」
発覚するまでは壊れない。だから今言おう。
「……しゅき」
「んあっ?」
「っ!?」
ヤバ! 起きた? このタイミングで? 焦る。
「喜多川さん……すみません、寝ちゃって」
「ご、ごしょーくん、今のは……その!」
「あの……」
「へ? な、なに……?」
「よだれとか、垂れてませんか?」
セ、セーフ! 口元を拭う彼を見て微笑んで。
「大丈夫! ごじょーくんなら、よだれだろうが糞尿だろうが垂れてても引かないって!」
「フハッ!」
「あれ~? もしかしてそっちの趣味アリ?」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
なんとか誤魔化しつつ、彼の愉悦にうっとりしてしまう。ヤッバ~~~!! は? うそうそ。 え? 好き? 糞尿かなり好き!? しゅき?(嗤 )待って待って待ってめっちゃカワイイじゃん。何~~~!? ごじょー君糞尿しゅき!しゅきしゅきしゅき! しんど~~~! てかどーしよ! あたしも漏らしたほういいのかな? でもでも! せっかくの衣装汚すのは!
「ふぅ……すみません、なんか寝ぼけてて」
「いーよいーよ! 着いたら起こしたげるからグッスリ寝てていーから! てか膝枕いる?」
「っ!? いえ結構です! おやすみなさい!」
「おやすみごじょーくん。……ありがとね」
ニッコリ嗤うと優しく微笑み返す彼が好き。
【その着せ替え人形は糞をする】
FIN
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