星野アイ「あれ~? もしかして、ママにヤキモチ?」星野瑠美衣「は、はあっ!?」 (11)

「転ぶのを恐れたらもっと転んじゃうものなんだよ。もっと堂々と、胸を張って立つの」

そう言って抱き起こしてくれたママが囁く。

「大丈夫だよ……ママを信じて」

星野アイ。私のママの瞳には星が宿る。
私は所謂転生者であり前世の記憶を持つ。
その記憶によると私はアイを推していた。
顔よし、スタイルよしで、歌も上手い!
そんな完璧で究極なアイドルの彼女がママ。

前世では病気により12才で命を落とした。
病室でただ死を待つだけの無意味な人生。
あまりに不条理で神や仏の存在を疑った。

そんな私はテレビの画面ごしに見つけた。

アイというアイドルは、私の神様だった。
同い年の彼女は私の憧れを全て備えてる。
自分もこうありたいという願望を実現してくれるアイの存在は、希望であり理想だった。

そんなアイに対し嫉妬は一切覚えなかった。

当時、12才で死が間近にあった私はわかる。
世の中、そう簡単ではないと。確信してる。
アイにだって悩みや不得手があるのだろう。
それでも彼女はその不遇を跳ね除けている。

「私もママみたいになりたい!」
「じゃあ、もう泣かないこと。わかった?」
「うん!」

そんなアイみたいになりたいと素直に思う。
前世では残念ながら無理だったが今世では。
なにせ憧れの人が母親で育ててくれるのだ。

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「ママはどうして泣かないの?」
「んー?」

ママとダンスを練習しながら訊ねてみると。

「泣いたって……何も変わらないからね」

ママの涙を見たことがない。達観している。

「ママが泣いてたらよしよしするよ?」
「あはは。ありがとー。ああ、そっか」

私の頭を撫でながらママは気づいたように。

「ママにはよしよししてくれる人いなかったから、だからこれまで泣かなかったんだよ」

やはりアイも不遇だったのだと確信を持つ。

「これからは泣いてもいいよ」
「うん。ありがとう。嬉しい」

本当に嬉しそうに微笑むママに訊ねてみる。

「ママはどうして怒らないの?」
「んー?」

今度はダンスをやめて、アイは悩んでいた。

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