バードストライク・アウト(相棒×名探偵コナン) (66)

映画「緋色の弾丸」(名探偵コナン)を中心とした
タイトル通りのクロスオーバー二次創作です。

基本、元ネタ知ってる前提で行きます。

二次創作的アレンジ、と言う名のご都合主義、独自解釈、読解力不足
等々も散見される予感の下ではありますが。
と言うか、所謂「蹂躙クロス」かも知れません。

それでは、スタートです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1680283206


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 ×     ×

「名古屋、ですか」

「うむ」

警察庁内に与えられた執務室で、
甲斐峯秋警視監は杉下右京警部の問いに応じていた。

「WSG、ワールド・スポーツ・ゲームス開会式警備の一環だね。
同じ日に開通する超電導リニアの初走行が行われる」

「その出発が名古屋ですね」

四年に一度開催される、その年は東京での開催が決定されていた
世界的スポーツイベントを持ち出しての峯秋の言葉に応じたのは、
杉下警部の部下である冠城亘巡査だった。

「ああ、その初走行の際に行われる体験試乗には、
国際WSG協会会長以下の協会委員やスポンサーと言った
WSG関連の要人も乗車する事になっている。
開会式のメインは東京でそちらの警備は警視庁が受け持つとして、
そうなると名古屋の方も任せ切りとはいかなくてね」

「それで、警察庁から甲斐警視監が出張ですか」

「うむ。もちろん管轄は愛知県警。
WSG関連イベントとは言え、その事を警備側が余り大々的に表に出すと
却って藪をつついて蛇を出すと言う事もあるからね。
私の様な者がそれとなく現地に張り付いて、と言う訳だ」

「そして、我々の様な者が同行する」

峯秋の言葉に続いた右京の言葉に、
微かに人懐っこい笑みを浮かべて峯秋は頷いた。


「今も言った通り、WSG関連の警備の中心は警視庁だ。
警視庁に属する者も同行した方がいい。
無論、君達に警備の説明を求めている訳ではない、
警視庁に所属している人間が現地にいた方がいい、と言う程度の事だ」

「WSG関連の要人がリニアに乗るから、ですか」

「それが主な理由だな」

右京の質問に峯秋が答える。

「WSG関連の要人、国際本部と日本のWSG協会委員、
スポンサー企業の関係者、と言った所ですか」

「ああ、そんな所だね」

右京の言葉に峯秋が言う。

「経営再建した『タカラ自動車』もスポンサーだったと記憶していますが」

「『コード』の傘下に入って、今は『日本コード』ですね」

「ああ、『日本コード』もWSGスポンサーだからね、
リニアの試乗にも参加する事になっている」

右京と冠城の言葉に峯秋が答えた。

「では、参加するのはジョン・ボイド代表ですか?」

「社長兼CEO、ですね。
最近はマスコミに取り上げられる事も多い様ですが」

右京の隣で自分のスマホを操作した冠城が補足する。

「ああ、協会スポンサーの一人として、
ジョン・ボイド氏が名古屋からリニアに乗る事になっている」

峯秋が、一度頷きながら淀み無く言った。


「君達の事は、
既に私の補佐として同行してもらうと言う事で衣笠君の了承も得ている。
まあ、そういう訳だ。
実際の所は運転手と鞄持ち程度の事で終わりそうなのが申し訳ないのだがね」

「副総監が了承の上でとあらば否応もありません。
警備の仕事がそれで済むのでしたら結構な事です」

「平和が一番ですからね」

「そう言って貰えるとありがたいよ」

応接セットで対面しながら、それぞれが頭を下げる。

中央官庁である警察庁の長官官房付に属する甲斐峯秋警視監に対して、
杉下右京警部、冠城亘巡査は、
形式的には地方公共団体である東京都の警察である警視庁所属の警察官。
警視庁内では特命係と言う部署に所属している。

この特命係は係員二名が属しているだけで、
警視庁内の課や部に属している訳でもない。

普段は警察官としての階級に従い、
他部署所からの要請を受けたり時には勝手に入り込んで
警察官として警視庁各部署を補助する雑用係と言うのがその実態。

只、今も言った通り、組織図の上だけで言えば
組織的に上が無い為に警視総監に直属しているとも言える特命係に就いて、
警察庁長官官房付の甲斐峯秋警視監が指揮監督を引き受けている。

これは、警視庁副総監衣笠藤治の承認によるものだったが、
かつて警察庁次長と言うトップクラスにいた甲斐峯秋も又、
かつて警視庁特命係に右京の部下として勤務していた息子が
警察に奉職しながら連続暴行事件を引き起こし実刑判決を受けた事で
常識的には退職勧告とも見られる現在の閑職に異動となっている。

警察庁官僚が警視庁の一部署を直接支配する異例、或いは異常な人事も
窓際が窓際を引き受ける小粒さによって見逃されている部分もあった。


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「どぉーも、杉下さん」

「おや」

「青木か」

「青木だよ、冠城亘」

所属部署である警視庁特命係に戻った杉下右京、冠城亘は、
そこで待っていた青木年男と言葉を交わす。

警視庁サイバーセキュリティ対策本部特別捜査官である青木年男巡査部長と
警視庁特命係所属冠城亘巡査は警察学校の同期であり、
共に曲折を経ての転職組であるが、
階級に於いては通常の警察官採用で昇任試験合格を経ていない冠城巡査に対し、
専門職採用である青木巡査部長の方が一つ上と言う状態だった。

「頼まれていたもの、持って来ました」

「ほう」

「おう」

「礼ぐらい言え」

特命係の二人は、早速に青木が差し出した資料に取り掛かる。
杉下右京が書類ファイルに目を通す間、
冠城亘がパソコンにディスクをセットする。

「十五年前の事件の資料、こちらで手に入りましたか」

「ええ、警視庁警察庁にも捜査要請が来てましたから。
もっとも、外事警察本体から直接データを引き出すのは無理でしたけどね」

「流石にソトゴト、漏れたら国際問題か」

「国内外の捜査協力、特に情報機関同士の協力関係が
決定的に危うくなりますからねぇ」

青木の言葉に冠城と右京が言った、


「えぇー、そうですとも。
あの辺の公安系のデータは特に厳しいですからね。
アクセス出来る端末も限られていますし、
無許可で記録媒体の接続やコピーをやろうとしたら即刻警報ですから」

「成程、流石に厳しい対応ですか」

「えぇー、庁舎のど真ん中でじゃんじゃん警報鳴らされて
フル装備の警察官の群れの中から物理的に強行突破する、
なんて事が出来ない限り、無理です」

「それは、最早大規模テロと言う事になりますねぇ」

「ですね。そんなものを一人で突破出来ると言うなら、
そんなウルトラスーパーエージェント、最早映画か何かの次元の話でしょう。
で、出来ませんでした、で終わりか?」

「黙れ冠城亘」

青木が横からパソコンを操作する。

「そういう経緯でしたから、
報告用に出回った文書を搔き集めてまとめてみました。
流出を警戒するのがサイバーセキュリティ対策本部ですから。
分かったか冠城亘」

青木の言葉と共に文書が表示された。

「アトランタの製菓メーカー、シカゴの財閥企業、
デトロイトの自動車メーカーのトップが誘拐されて、
先の二人は解放されたものの最後の一人、
自動車メーカー代表は監禁中に逃げ出して殺害された」

「そして、逮捕起訴され有罪判決を受けたのが、
被害者が出席したパーティー会場にも出店していた
日本人寿司職人石原誠だった」

右京と冠城が、十五年前の事件の概略を確認する。


「こちらが十一年前の事件のリポートですね」

右京が英文の資料を手に言った。

「ええ、杉下さんに特に頼まれていましたけど、
こちらは日本関係無かったですからね」

「大したボリュームは無いな」

「簡単に解決したからな」

電子ファイルを確認した冠城に、青木がリキを込めて返答する。

「報道やら公式やらアメリカ側の資料を当たってみましたけど、
十五年前の連続誘拐事件の模倣犯って事で
司法取引でさくさく解決したみたいですよ。
最初に逮捕された被疑者が早々にゲロって、あっちの事ですからそのまま
証人として身元隠して司法省の保護下に入ったみたいで」

「成程」

「それじゃあ、外から中身を簡単に覗き見される様じゃあ
危なくて証言なんて出来ない、か」

「そういう事だ、冠城亘」

そして、特命係の二人が次に読み進めたのは、
最近警視庁管内で発生した二件の誘拐事件を記録した資料だった。

「これを見る限り、一課は事件ごとにバラバラに動いてる」

冠城が呟く。

「芝浜ビューホテルの事件の後、ジョン・ボイドに動きがありました」

「ほう」

右京が言い、冠城と共に関心を示す。
青木がパソコンの操作を進めた。


「米花町?」

青木の操作によりパソコン画面に表示された地図を見て冠城が言う。

「ええ。このポイントで確認されています。
社内の公式予定を急遽変更した上でね」

地図にはぽつぽつと円形と時刻が表示される。

「この通り、スマホの位置情報と防犯カメラの映像情報から見て、
ここに相当長時間留まっていた様ですね」

地図が狭まり、一つのビルを中心とした一角を示した。

「毛利探偵事務所か。元捜査一課、最近売り出し中の名探偵ですね」

「ええ、幾つか刑事事件の解決にも尽力したと聞いています」

スマホの地図アプリでその住所周辺を調べた冠城が言い、
その言葉に右京が続いた。


「しかし、困りましたね」

呟く様に言った右京の言葉に、冠城が怪訝な顔をした。

「タイミングから見ても滞在先は毛利探偵事務所の可能性が高いでしょう。
しかし、この資料を見る限り捜査一課にその情報は上がっていない」

「ジョン・ボイドの動きと資料の作成時間から言って、
一課はまだこの事を知らないと見ていいでしょうね」

「ええ、その通りです。毛利探偵は捜査一課の三係、
芝浜の事件を担当している目暮警部の実質的な協力者として
半ば公然と活動しています。
それが伝わっていないと言う事は、事件とは無関係、
提供された情報が協力関係にある刑事の個人的なメモに留まってる、
或いは」

「或いは、協力関係にある目暮警部にも話せない依頼内容だったか」

冠城の言葉に、右京が頷いて見せる。

「だとすると、毛利探偵から情報を得る事は困難でしょう。
それなら搦め手から、と思ったのですがね。ほら、ここ」

右京が指さしたのは、スマホの地図アプリだった。

「それで、この『ポアロ』と言う喫茶店に就いて
何か解る事があれば、と思ったんですけどねぇ。
他の仕事も入っていますから、
遅くとも一時間後にはここを出なければいけません。
下調べをして行くのはこの次の機会にしましょう」

約二十分後、冠城亘の運転するスカイラインが、
杉下右京を助手席に乗せて警視庁を出発した。


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今回はここまでです>>1-1000

ニュー亀山第一シーズン終了から二週間余り。
今月の映画スタートまでに終わらせる、のは無理か。
プロットは終わりまで大体出来てますので
なるべくさくさく行きたいですが。

続きは折を見て。

それでは今回の投下、入ります。

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>>10

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「僕に、何か御用でしょうか?」

杉下右京が背後から声を掛けられたのは、
米花町内の路上だった。

「失礼、警視庁特命係の杉下です」

「冠城です」

遅れて現れた冠城と共に、右京が警察手帳を見せる。

「安室さんですね?」

「ええ」

「『ポアロ』にお勤めの。お店ではない方かいいかと思いまして、
この様な形をとらせていただきました」

「それで、どの様な御用件でしょうか?」

聞き返す安室の前で、右京は一枚の写真を取り出した。

「この人物に見覚えはありますか?」

「外国の人ですね」

写真を見せられ、安室は少し考え込む仕草をした。


「ええ、見かけた事はあります」

「どこで?」

安室の言葉に冠城が尋ねる。

「『ポアロ』です」

「それは、来店されたと言う事ですか?」

「いえ、表にいるのを見かけました。
出入りするのを見ましたから、
恐らく『ポアロ』と同じビルの毛利探偵事務所の関係者ですね」

「それは何時の事ですか?」

右京の問いに対する安室の答えは、
青木を通じて把握したジョン・ボイドの動向と一致していた。

「成程。あなたがお勤めの『ポアロ』と『毛利探偵事務所』は
同じビルに入居していると言う事になりますが、
この外国人に関連して他に何かご存知の事はありませんか?」

「杉下警部」

質問を続ける右京に、安室は一度呼びかけた。

「確かに僕は『ポアロ』で仕事をしていますが、
他にも仕事がありましてね」

「ほう、どの様な」

「私立探偵の安室透です、どうぞよろしく」

「これはご丁寧に」

「どうも」

安室が探偵用の名刺を差し出し、名刺交換を行った。


「探偵でしたか。どうりで尾行への対策も堂に入っておられる」

「ですね。全くの素人から逆質問されたとあっては
こちらとしても流石に格好がつかない」

「失礼ながらなんとなく気配が感じられましたから」

右京と冠城の言葉に安室が言った。

「毛利さんはその方面では僕の師匠、
時には助手や下請けをさせていただく様な事もある関係です」

「詰まり、師匠の業務上の秘密は話せないと」

「ノーコメントと言う事です」

冠城の問いに安室が応じた。

「そうですか。ここまで教えて頂き感謝します」

「どうも」

右京が言い、双方頭を下げる。

「ああ、もう一つだけ」

「なんでしょうか?」

人差し指を上げて振り返る右京に安室が聞き返す。


「この人物は一人で来ていましたか?」

「事務所に入ったのは一人、近くに車を路駐させていました。
このぐらいでしたら調べたらすぐ分かる事でしょうから」

「どうも有難う。そうだ」

そのまま、何やら提案を始めた右京を前に
安室の眉が微かに動いた。

「あなたの電話に私の連絡先も登録していただけますか?
警視庁と協力関係にある名探偵毛利小五郎。
とは言え、我々の様な雑用係には無縁の話でして。
その弟子の方と知り合う事が出来たと言うも何かの縁と言う事で」

「ええ、いいですよ。僕の方は先程の名刺の連絡先で。
出られるかどうか保障の限りではありませんが」


ーーーーーーーー

連絡を受けた警視庁公安部風見裕也警部補は、
喫茶店「ポアロ」に駆け付けると共に、
警視庁SSBC内の協力者に「ポアロ」を中心とした範囲指定で検索を依頼。

ミルクティーと珈琲で一服して「ポアロ」を出た後の杉下右京と冠城亘を
直近の防犯カメラ映像を手掛かりに現状を視認し、複数の部下と共に追尾。
途中身構えるべき事態がありながらも、介入指示が出ない儘事態は収束した。

改めて追尾を続けている最中に、風見が振動するスマホを取ると
発信元として公衆電話が表示されていた。

「もしもし」

「僕だ。特命係はジョン・ボイドに目を付けた」

「止めますか?」

「いや、この際彼らに役割を果たしてもらおう」

「役割、ですか?」

「事件の本筋を合法的手段、刑事警察の現場に繋げる役割だ」

「そちらが本筋ですか」

「その可能性は高い。
そして、こちら側でここまで片鱗も掴めていない以上、
本来は彼らの分野の事件なのだろう」

「確かに、既存の組織に関わる情報には見るべきものがなく、
仮にテロだとしてもローンウルフ、或いはそれに近い、
組織的把握の難しいタイプだと言う見方が有力です」

「そうであれば、そろそろ縛られた手足を解放した方がいい。
それには彼らがうってつけだ。
恐らく、同じ事を考えた者がいるからこそ、
彼らはこうして動いているんだろう」


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今回はここまでです>>13-1000

今夜は楽しいカボチャ祭り

続きは折を見て。

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