絵里「スモーク」聖良「インザ」かのん「ナイト」 (40)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


~♪

https://youtu.be/zI99Noq6Oz0



果南「……」プカー


トントン


果南「すーっ」


果南「ふー……」プカー


<ガチャガチャ


果南「ん」


<……あーあ、疲れたわーっと


キィ…


絵里「ただいま」


果南「おかえりー愛しのエリー」


絵里「うっさいわよ。もう、また窓開けずに吸って……」


果南「だって寒いんだもん」


絵里「カーテン閉めればいくらかマシよ、ほら」ガラッ


<シャーッ


果南「……まあ、多少は寒くないけど」


絵里「でしょ」


ガサッ


果南「ふわぁ~あ……」


絵里「今日は早いのね」コトッ


果南「いつも文句言わずシフト入れてくれるから、私だけ早引けを許されたって感じ」カシュッ


絵里「居酒屋の店長からしたら有難いでしょうね」カシュッ


果南「飛んじゃう学生とか多いしね。まあ若いから……」


絵里「私はバイトだろうと飛ぶヤツは嫌いよ」スッ


果南「まあ、事情があるんでしょー」スッ


カン…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1670011651


絵里「……」ゴクッ


果南「ビールしか勝たないね」ゴクッ


絵里「仕事終わりの1杯が身に染みる様になっちゃったわ……」スッ


果南「ん」カチッ


絵里「ありがと…」ジジッ


絵里「すーっ……」


絵里「ふー…」プカー


果南「……あれ?また変えたの?」


絵里「浮気性なのよ、でもこれもよく吸ってたじゃない」


果南「KENTからマルボロアイスブラストか……ローテーションするタイプかなん」


絵里「まあね。ノリで変える感じ」スーッ


フーッ……


果南「ふーん」ゴクッ


絵里「そういう果南はずっとアメスピのメンソールね」


果南「うん、長持ちするんだもん」


絵里「アメスピは長持ちし過ぎるきらいがあるけど」


果南「ゆーっくり吸うのが好きだから、私に合ってるよ」


絵里「でも減ったわよね、本数」


果南「最初はマジ焦った、このまま無くなるのかと思ってさ」


絵里「本数が減っただけよね?」


果南「うん。そのかしがっつり安くなったし、そもそも長持ちするからあんまり変わった感じは無いね」


絵里「マルボロちゃんはずーっと高いから……羨ましいとこもあるわ」


果南「しょーがない、海外産だし」


絵里「そりゃね……」プカー


果南「ていうか絵里、家だとたまーに葉巻?吸うよね」


絵里「コルツね。あれは秋の夜長専用みたいなとこあるから」


果南「誰が決めたのさ」


絵里「私」


果南「だと思った」プカー


絵里「アメスピほど持つ訳じゃないけど、曲がりなりにもリトル"シガー"だからね。長く楽しめるわ」ゴクッ


果南「括りとしては準葉巻か。肺までは入れないんでしょ?」


絵里「うーん。ぶっちゃけ入れてる」


果南「え、それ大丈夫なの?葉巻でしょ?」


絵里「リトルだもの。普段のとそんな変わんないわよ」


果南「そんなもんかね……」


絵里「……吸う?」


果南「よければ」


絵里「ん、ちょっと待っててー」


<ガサゴソ


果南「なんでそんな奥まったとこに……」


絵里「いつも吸う訳じゃない奴はこうやって保存しとかないと、湿気で不味くなるのよ」


果南「そんなに変わるかなん?」


絵里「ハイライトとか顕著だと思うわ。ちょっと置いとくとホント美味しくなくなる」ガサッ


果南「ほーん」


絵里「……っと、あったあった。はい」


果南「わーい」カチッ


ジジ…


プカー……


果南「…………あー……確かに、いいねこれ」


絵里「でしょ、辺りに広がるココアの香り……良いわよね」


果南「吸ってる方はあんま分かんない」スーッ


絵里「……まあ、確かに」


果南「ふーっ……」


絵里「私も吸いたくなっちゃった。えーとライターライターはと……」


果南「…ん」ズイッ


絵里「……何、シガーキス?」


果南「わざわざ言わなくていいじゃん」


絵里「ふふっ……」スッ


ジジジ…


果南「……」


プカー……


絵里「……うん、久々でもおいしい」


果南「いいね、これ」


絵里「でしょ、色んな味あるから試してみれば?」


果南「例えばー?」


絵里「バニラにココア、メンソール……チェリーにグレープかな」


果南「へえ、フルーツフレーバーもあるんだ?」


絵里「果南だったら……バニラとかオリジナルが好きかも」


果南「その心は?」


絵里「どちらも癖が無いからです」


果南「えりっちね」


絵里「うっさいわよ」


果南「へへ……」


絵里「もう…」プカー


果南「……」


絵里「さてと、お風呂入って……ご飯はどうしましょ」スクッ


グイッ


絵里「うぇっ!?」


ドサッ


果南「よっと」


絵里「か、果南……?何で急に押し倒されたの、私…」


果南「……いや、何となく」


絵里「そして近いわよ!///何よ何となくって!」


果南「……ねえ絵里、最後にシたのいつだっけ」


絵里「え?確か2週間前……じゃなくて!何、今!?///」


果南「そっか」スッ


チュッ


絵里「んぅ……っ!///」


スッ…


絵里「マジ、急なのやめてよ……///」


果南「……メンソとココアの香り」


絵里「……あなたもよ。てか待って!まだ帰ってきたばっかでお風呂も入ってないのよ?」


果南「冬だし汗なんかかいてないでしょ」


絵里「それはそうだけど……!」


果南「別に、かいててもいいけど」


絵里「良かないわよ……!」


果南「……」


絵里「……果南?」


果南「……疲れてたのかも。急にごめんね」スッ


絵里「……」


果南「お風呂。沸いてるよ」


絵里「……ええ」


果南「その間にご飯の用意しとく」


絵里「ん……」スクッ


果南「……」ゴクッ


ズイッ


果南「うぇっ!?」


絵里「…また、後でね」ボソッ


<スタスタ


果南「……りょーかい…」カチッ


ジジジ……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


https://youtu.be/Yxqo9XjUvo8



スタスタ…


聖良「……寒くなってきましたね」


口から出る吐息が白くなり、訪れる冬の寒さに故郷を思い出す時期が、巡り巡ってまたここにやって来た。ポケットに入れた両手がまだ少しだけ悴んでいる。そして手探りをすれば外の気温と同じくらい、硬く冷たい火打石が手に触れた。


聖良「……」スッ


1本だけならと右のポケットからライターを取り出し左のポケットからはさっき買った煙草を1本抜き取る。夜も更けて、道行く人はまばらで、周りには1人もいない。それでも小さな罪悪感から足は、少しだけ歩みを早める。


カチッ


ジジジ…


聖良「……」スーッ


聖良「ふーっ…」


元より口から出ていた吐息と区別のつかない煙草の煙が夜の空に溶けゆく頃、彼女は会社からの帰り道にいつもの公園を横切る。無音と静寂。たまに風で揺れるブランコ。ちょっと怖い。


聖良「……ちょっと入りますかね」


独りだからか気温のせいか。独り言が増えてしまう自分をあまり見られたくない一心で公園の入口を通る。自転車を塞き止めるフェンスを乗り越え小さなベンチを目指し、風と煙に誘われるがまま座る。木冷たっ。


聖良「……」プカー


両耳から流れる往年の歌手が問う。この1本でどれだけの時間を無駄に出来るかと。とても無駄にしていると応える。少し意味が違うか。だって今、私は1人だから。


<ザッザッザッ…


煙が消えていく様を目で追いかけて、そのまま夜空を仰ぐ。土手に寝転んだ学生の様に顔と夜空が平行になる。そうまるで、ぐでたま……いや、ぐで聖良ですね。あ、このベンチ凄い背中伸ばせる……。


聖良「あ゛あ゛あ゛あ゛……」グイーッ


公園の砂道に響く足音が彼女に近づく。彩り豊かな音のせいでソレは彼女に聞こえていない。彼女の喉の奥から捻り出された濁音も、彼女の疲労した背骨から鳴る軋轢音も、今は誰にも聞かれていない。



「何してるんですの」


聖良「え?」


しまった聞かれてた。


ダイヤ「仕事終わりにこんな所で背骨伸ばす暇があったら、さっさと帰ってきたら如何です?」


聖良「え、えーと……つい」


外気と顔の温度の乖離が凄い。夏か今は。多分そうだ。


ダイヤ「はぁ……お隣、失礼しますわ」


聖良「どぞ……」


……ああそうだ、私は独りでは無かった。それは今だけだとそう思い至るのに時間はかからなかった。だって横のダイヤモンドが、その答えだから。


ダイヤ「禁煙推奨が叫ばれて久しいこのご時世に、紙煙草なんて……今時流行りませんわよ」


聖良「でもKOOLですから。地元のミントです」


ダイヤ「理由になっていませんが」


聖良「全くですね」


ダイヤ「はあ……」


彼女の吐く吐息は、彼女の肌と同じ位に白い。このキメ細かい煙と、何ら変わらない。


聖良「でも」


ダイヤ「……」


聖良「ダイヤさんも吸ってますよね」


ダイヤ「……私は、電子タバコですから」


同じ穴の狢じゃないか。


聖良「同じ穴の狢ですよ」


ダイヤ「……そうですわね」スッ


ジジッ


ブブッ


ダイヤ「……ふぅー…」


何も言わずに吸い始めた。意外と遠慮がないんだこの人は。まあ、変わらず人もいないし、電子だし、いいでしょ。ちょっと位。


聖良「……」プカー


ダイヤ「しくりました、メンソールキツすぎですわ……これ」


聖良「それ、新しい奴ですか?また新作出たんですよね」


ダイヤ「ええ、またウチに使わないグローが増えてしまいます」


聖良「節約家なのに、意外とそういうのには散財しますよね」


ダイヤ「だって、簡単に辞められませんもの」プカー


聖良「はは……」


高校時代の彼女が今の彼女を見たらどう思うだろう。堅物、お節介、意固地の三拍子揃った才色兼備の生徒会長様は……卒倒するんだろう。きっと。


聖良「……」


ダイヤ「……」


静寂が2人を包み、黒い黒い空と白い白い煙が辺りを満たす。点々とした灯りと比例する闇が2人で座るベンチの狭い境界線を埋めようとする。寒い。そりゃそうか。


ダイヤ「…」スッ


ギュッ


聖良「……!」


そう思っていたら冷たくて、でも少しだけ暖かい細くて折れそうな指が私のと絡む。私はすぐに応えた。今、右手の指先だけは春模様。今は彼女が良く見えていた。手を繋いだその瞬間から。


聖良「……ダイヤさん、暖かいですね」


ダイヤ「そうでも無いと思いますわ」


これ以上を応えたかった。でもここは公園だ。でも人はいない今は私達だけ……あ、いや向こうに塾帰りか何かの女の子達がいますね……それでも。


ダイヤ「……何を聞いてるんですの」スッ


聖良「あ」


~♪


抱き締めて下さい、私の心を。
愛を捜して、彷徨ってるから。
だって寒いんです。
そんな私の代わりに、イヤホンが答えてくれました。


ダイヤ「……」


聖良「あ、あの……」


スクッ


ダイヤ「さ、帰りますわよ。聖良さん」


聖良「あ、はい……」



急ですね。彼女はいつもそうで。



ダイヤ「……寒いでしょ」


聖良「……はい、とっても」



結構暖かいですけどね。お陰様で。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


https://youtu.be/_6qDL8QY_Ps



<ザワザワ…


<ガヤガヤ…



ジャラン…♪



<おお……っ!



かのん「……こんばんは、良い夜ですね。皆さん」


『ひゅーっ!』


『Kanonちゃんかわいー!』


かのん「あはは、ありがとうございます」


かのん「飲んでますか?皆さん」ポロン…♪


『飲んでるぞー』


『かのんちゃんは飲まないのー?』


かのん「じゃあ……シャンディガフ1つ下さい」


店長「はーい!」


かのん「ありがとうございます」


かのん「……改めましてこんばんは。~Acoustic Music in Koenji~ by Kanonにようこそ」


\パチパチパチ……!/


かのん「なんとも良い夜です。こんな夜にはコーヒーがいいだろう、なんてね」ジャラン♪


『ぃよっ!』


『歌ってー!』


かのん「ふふ、分かってますよ。それでは……」


かのん『……Kan Sanoさんで、Natsume』


『おぉぉっ!』


ジャンッ…♪


かのん『……「絶対なんてないよ」神様の呟き』


かのん『今にも消えそうな日々だな、言いたいこと歌にするくらい、良いよね……』


かのん『第五惑星'sカミングスーン、落ちて来るって話ね……♪』


かのん『時空が歪むらしいけど、それならそれでいいような、気がしてる…』


<カランカラン…


かのん『……っ♪素敵な事、具現化しよう…』


ーーーーーー
ーーーー
ーー


かのん「……っ、と……」ジャラン♪


<パチパチパチ…!!


『さいこーっ!!』パチパチ


『声が良過ぎる…』パチパチ


かのん「ありがとうございます。これにて第1部は一旦終わりです。皆さんクルーラカーンさんに沢山注文して下さいね」


『勿論!』


店長「ご注文の方、こちらからどうぞー!」


<ガヤガヤ…


かのん「……よっと」カタッ


店長「Kanonちゃん、シャンディガフ置いとくね。第1部お疲れ様!」ボソッ


かのん「ありがとうございます!大体20分後位に始めますね」


店長「了解!」


<ガヤガヤ…


<ザワザワ……


かのん「……」ゴクッ


「良かったわよ」


かのん「ふふ、いつの間に来てたの。すみれちゃん」


すみれ「Natsume歌い始めたくらいよ、さっき撮影終わってさ」


かのん「お疲れ様!飲み物は?」


すみれ「もう頼んだわ、メロンボール」


かのん「好きだね、メロン」


すみれ「そりゃもう」


店長「お待たせしました、メロンボールで……ん!?あれ?!女優の平安名すみれさん!?」


すみれ「あ、今ですか気づくの……」


かのん「あははっ!」


店長「いやいや面目無いです!!すいません、もし良かったらあとでサイン頂けませんか?」


すみれ「ええ、勿論差し上げますよ」


店長「ありがとうございます!」


かのん「気づかれてなくて笑っちゃった」スッ


すみれ「うっさい」スッ


かのん「乾杯、お疲れ様」


すみれ「そっちこそ」


キン…


かのん「…うん、おいし」


すみれ「やっぱりこれよね」


かのん「…」ソワソワ


すみれ「…私は別にアスリートだろうが歌手だろうが、煙草吸ってて良いでしょ派よ」


かのん「バレた…」スッ


すみれ「ピースか……お父さんの影響?」


かのん「流石に5ミリだけどね、そういうすみれちゃんは二刀流でしょ」カチッ


すみれ「仕事の時は融通がきくからイルマね。こういうoffの時は……まあ、あんたの影響でピースよ」


かのん「ゆうづう?」


すみれ「急に撮り直しとかになる事あるから、そういう時はすぐ消せるし」


かのん「それ、別に紙でも変わらなく無い?」


すみれ「そうなんだけど…紙は潰したらもう吸えないじゃない。電子ならぶっ刺したらもっかい吸えたりするわよ」


かのん「み、みみっちい……」


すみれ「うっさい!!節約よ節約!!」


かのん「あっははは!!」


すみれ「ったく…」スッ


かのん「…」プカー


すみれ「あれ、ライターどこやったっけ…これが二刀流のヤなとこね……」ガサゴソ


かのん「ん」スッ


すみれ「……」


かのん「んっ」ズイッ


すみれ「…」チラッ


<ガヤガヤ…


<ハッハッハ…!


<オイ、コボレルゾキヲツケロ…


すみれ「……はぁ」スッ


ジジジ…


かのん「…それで宜しい」


すみれ「……ふー…視線なんか気にしちゃダメね」


かのん「その通りっ」


ーーーーーー
ーーーー
ーー


かのん「…それじゃ、第2部と行きますか」ジャラン♪


『ふぉぉおぉぉぉおっ!!!!』


『うるさっ笑』


かのん「あははっ!ありがとうございます、まずはテンション上げましょう」


かのん『小坂忠さんの曲で、ほうろう』


『おおっ!!』


タンタンタン…♪


かのん『…このテンポなら、好きな…Rhythm & Blues…』


かのん『踊りながら、歌えるから』


<『はきなれたこのボロボロボロ靴が…』


すみれ「…」ゴクッ


店長「あの、平安名さん。Kanonさんとは長いんですか?」ボソッ


すみれ「え?ああ、まあそうですね。高校からです」ボソッ


店長「へえ…仲良いんですね」


すみれ「まあ、そうですね…」


<『ひとりでに踊り出す……今はほうろう、いつもほうろう、遠くほうろう……』♪


すみれ「…」ゴクッ


ーーーーーー
ーーーー
ーー



かのん「…ありがとうございます」


\パチパチパチ…!!/


かのん「続けて行きましょう、そこでカッコつけてるけど超甘いカクテル飲んでる平安名さんに送ります」


すみれ「ぶっ、ごほっごほっ!?」


『はっはっはっ!!』


『ええ!?平安名さんいたの!?』


すみれ「急にこっち振らないでくれる!?///」


『ひゅーっ!♪』


ジャラン♪


かのん『わん、つー、わんつーすりー…』タッタッタッ


~♪


かのん『あの子はルイジアナママ、やって来たのはニューオリンズ。髪は金色目は蒼く、本物だよディキシークイーン』


すみれ「…ったく、私は純日本人ったら日本人よ……」カチッ


ジジジッ…


すみれ「…ふー……」


『平安名さん、火を借りてもいいかしら』


すみれ「あ、どうぞ」カチッ


ジジジッ


『…っふぅ…ありがと』


すみれ「いえ…」


『……Kanonさんとは、どういう仲なの?』


すみれ「それ、さっきも聞かれましたよ…高校の同級せ」


『いえ、私が聞きたいのは恋仲なのかって事よ』


すみれ「……分かる人には、分かる様ね」プカー


『急に聞いてごめんなさいね。でも当たりだと思うんだけど、どう?』


すみれ「ええ。嘘つく気は無いからハッキリ言うけど、そうよ」


『そう。重ね重ねごめんなさい。気になったら聞いちゃうのがあたしなのよ』


すみれ「じゃあ私も聞いていいかしら?」


『もちろん。何でもどうぞ』


すみれ「どうしてここに?綺羅ツバサさん」


『ただの客よ。Kanonのファンだから』


すみれ「…そう」


『激務なのよ。たまには良いでしょ』ゴクッ


すみれ「そりゃあ、芸能事務所の社長なんて多忙ったら多忙でしょうね」


『そうそう…』プカー


すみれ「あわよくば、かのんを引き抜いたり?」


『そう思われそうだからなるべく来たくなかったのよね。残念だけどマジでタダのファンなの』


すみれ「…信じてあげます」


『そうしてくれると助かるわ』


<『あの娘はそっと打ち明けた、僕が好きだって』♪


<『ビックリギョーテン、ウチョーテン。コロリといかれたよマイ・ルイジアナママ…フロムニューオリンズ……』♪


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


果南「…」プカー


<ガラッ


絵里「はーさっぱりした…何で急にベランダで吸ってるのよ。どこ行ったのかと思ったわ」


果南「いやさ、一瞬外から音楽が聞こえたんだよね」


絵里「え…?」


<………~♪……


絵里「…ほんとだ、かすかに聞こえるわね」


果南「……なんか良いね」


絵里「…」スッ


果南「んえっ?」


ジジジ…


絵里「ふー……」プカー


果南「いきなり顔近づけないでよ、びっくりするじゃん」


絵里「ライター出すのめんどくさかったのよ」


果南「へへっ…」


絵里「…」


果南「…絵里、ちょっと行ってみる?」


絵里「…果南、正直その言葉待ってた」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


スタスタ…


聖良「ほんと一気に寒くなりましたよね」


ダイヤ「そりゃあ師走ですから」


聖良「今年もダイヤさんの誕生日が近づいてきますね」


ダイヤ「今年というか来年ですわ」


聖良「そりゃそうだ」


ダイヤ「聖良さんのくせに適当ばっかですわね」


聖良「だって今はダイヤさんがいるから」


ダイヤ「…」


聖良「暗くて良かったですね、照れた顔が見えませんから」


ゲシッ


聖良「あたっ、ローはダメですよ!」


<……~♪………


ダイヤ「…?」


聖良「何か聞こえますね…ライブでもやってるんでしょうか?」


ダイヤ「…」スッスッ


聖良「検索エンジンのダイヤですね」


ダイヤ「…近くのThe Cluracanというアイリッシュ・パブでしょう」


聖良「へえ、アイリッシュ……美味しいビールとかありそうですね」


ダイヤ「確かに。ちょっと寄ってみますか?」


聖良「音楽の鳴る方に行くのが私たちですから」


ダイヤ「……ええ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



かのん「……さて、残す所あと1曲ですね」


『えぇーっ!!』


『やだー……』


かのん「ふふ、またやりますから。ね?」


店長「いつでもどうぞ!Kanonさんなら!」


かのん「なんて仰ってくれる小泉店長がいるこのクルーラカーン、最高ですよね」ジャラン♪


『全くだ!』


すみれ「そのとーりっ」


かのん「ふふ……」


<カランカラン…


『わっ、結構いるね』


店長「いらっしゃいませ、4名様ですか?」


果南「あいや、後ろの人達はそこでバッタリなだけです」


聖良「すいません、お邪魔します」


店長「本日、投げ銭ライブとなっていまして…特別メニューなんですが」


絵里「へえ、投げ銭ライブ……」


ダイヤ「構いませんわ、私たちは音楽に誘われてきましたから。是非お邪魔させて下さいませ」


店長「かしこまりました。といっても、もう終わっちゃいますが…」


かのん『こんばんは、ありがとうございます』


果南「どもー」


聖良「あちょっ、知り合いとかではないんです。ガン見しないで下さい皆さん」


絵里「ええ、タダのお客です…」


ダイヤ「何で縮こまってますの」


果南「ほんとですね、なにしてんのさ」


すみれ「あ、メニュー置いときますね」


ダイヤ「申し訳ありません、ありがとうございま……平安名すみれさんっ!?」


すみれ「あ、どうもこんばんは」


果南「すご、本物じゃん。サイン下さい」


絵里「二言目に言う事!?」


すみれ「構いませんよ、まずは注文をどうぞ」


聖良「恐縮です…」


かのん『すみれちゃん、友達出来たの?』


すみれ「人をコミュ障みたいに言わないでくれます!?」


<\ドッ/


店長「あははっ!」


かのん『ふふ…じゃあ早速』ジャラン


かのん『……いかれたBaby』


『うおおっ!!』


『名曲キター』


~♪


かのん『悲しい時に、浮かぶのは…いつでも君の顔だったよ』


かのん『悲しい時に、笑うのは…いつでも君の、事だったよ……♪』


果南「久しぶりに聞いたな…」


絵里「そうね…」


店長「お待たせしました、キルケニーのお客様?」


絵里「あ、はーい」


ダイヤ「私もですわ」


店長「と、ギネスのお客様」


果南「はーい」


聖良「頂きますね」


絵里「皆バラバラに頼んだのに2分の1被るのね…」


果南「ふふ、これが縁ですかね?」


聖良「音楽の縁です。美味しいビールまで連れてきてくれました」


ダイヤ「平安名さん、良かったら乾杯しませんか?」


すみれ「あら、いいんですか?」


果南「是非是非」スッ


絵里「遠慮のない娘でごめんなさいね」スッ


聖良「あとプロフィール調べさせて頂きましたけど同い年じゃないですか。堅苦しいのは抜きにしましょう」スッ


ダイヤ「その通りですわ、同い年ですわ!」スッ


すみれ「それあなた達が言う…?まあそっちの方が気楽でいいけど」


かのん『素敵な君はBaby、いかれた僕のBaby 夜の隙間にKiss、投げてよ…』


『じゃあ、カンパーイ!』


キン…!!


すみれ「…(乾杯)」スッ


かのん『…(うん)』ウナズキ


絵里「アイコンタクトしたわね?」


すみれ「ふふ…ええ、したわ」


ダイヤ「はぁ……仲が宜しいんですのね」


かのん『月夜の晩のBaby、いかれた僕のBaby…Ah……♪』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


<ガヤガヤ…


店長「ありがとうございました!またどうぞー!」


『また来るよ店長!』


店長「ありがとね!」


<ザワザワ…


果南「いやあ、短い間だったけど楽しかったねぇ」


絵里「全くね、新しい友達も出来たし」


聖良「こちらこそです。仕事に追われてると友人なんてそう出来ませんからね」


ダイヤ「しかも女優の平安名すみれさんとお知り合いになれたのはとんでもない僥倖ですわ!」


すみれ「別にそんな良いもんでも無いでしょーに」


果南「自分の価値、下げたらいかんよ」ポンッ


すみれ「それは確かに」


絵里「アンタほんと馴れ馴れしいわよ!?」


すみれ「良いのよ、私も同世代の友達あんまいないし…結構嬉しいわ」


聖良「桜坂しずくさんなんかは、歳が近いのでは?」


すみれ「そりゃ近いけど、あちらさん大女優よ?そう簡単にお近付きにはなれないわ」


ダイヤ「でもこの前のドラマで共演されてましたわよね?どうでしたか?」


すみれ「どうって言われてもね…えげつない位ストイックな娘だったかしら。撮影開始から終わりまでずっと役に入ってたわ。良い意味で」


果南「うわ、すご」


すみれ「勿論受け答えとかは普通だけど、ふと目を離すとすぐ役に戻るのよ。あのスイッチの切り替え速度は流石に見習わないと…」


絵里「そんなに目に見えて分かるものなのね……演技って奥が深いわ」


聖良「と言いながらワクワクしている絢瀬さんなのでした」


絵里「絵里でいいわよ。あとやかましいわよ」


<カランカラン…


店長「あ、Kanonちゃん!」


かのん「店長、今日は本当にありがとうございました!お陰で最高のライブになったと思います」


店長「こちらこそ。Kanonちゃんなら満員なんて余裕だと思ったからさ…どう、投げ銭」ボソッ


かのん「うへへ、こちらに…何だかヒラヒラする奴が沢山ですぜ……」


店長「『私、金属アレルギーなんですよねー』なんて言ってたもんね……くふふ、お主も悪よの、Kanonちゃん」


かのん「いえいえ、『要らない貴金属はこちらにー!』なんて言ってた、かよ代官様程では…」


果南「……何かうすら暗い取引を見た感じがするね」


すみれ「これあれね、この前やった時代劇を思い出すわ」


店長「…じゃあ、今日はお疲れ様!またお願いね、Kanonちゃん!」


かのん「こちらこそです!花陽さんも是非また宜しくお願いします!」


店長「ふふ…さ、愛しの平安名さんと愉快な仲間たちが待ってるよ」


ダイヤ「何か一括りにされましたわ、嬉しいですけど」


聖良「そんな愉快ですかね、私たち」


かのん「えへへ、お邪魔しますっ」ギュッ


すみれ「ん、お疲れ」ギュッ


<マタネー!


かのん「はーい…!」フリフリ


果南「仲睦まじいねぇ、いい事だ」


絵里「いい時代になった物よ…」


すみれ「…さて、宴もたけなわですが、ここいらで解散と致しますか」


かのん「うぇー…」


果南「しゃーない、楽しい時間ってのはすーぐ終わるから」


ダイヤ「全くですわね。まあその分最高の時間でしたが」


すみれ「ふふ…それじゃ、私達はあっちから帰るわ」


絵里「…え、私達もだわ」


かのん「えっ」


聖良「すいません、私達もですね」


すみれ「…えぇっ」


みんな『……』


果南「…みんなで帰ろっか、一服しながらさ!」


みんな『さんせーい!!』


https://youtu.be/OO9FYilXXGQ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねえ、すみれは何で女優目指したの?」


「急に聞くわね、果南。特に深い理由も無いわよ」



夜に溶けゆく煙と白い吐息が6つ。さっき会ったばかりの仲間達と肩を並べて、紫煙をくゆらせたり、寒いから抱き合ったり。



「そこを何とか教えて下さいませ、すみれさん」


「教えてあげなよ、すみれちゃん」ニヤニヤ


「おや、そのニヤケ顔には随分と愉快な答えが隠されてそうですね」


「そうなの聖良さん!すみれちゃんが女優目指した理由ってのがさ……」


「ふんふん?何よ何よ」


「絵里ィッ!!耳ダンボで聞いてんじゃないわよっ!!///」



夜も更けて、道すがら友人と練り歩く。広がり過ぎないで、後ろから車来たらどうするの。ていうか路上ですわよ。携帯灰皿位あるんでしょうね。最悪吸殻捨てなけりゃ大丈夫でしょ。マナー最悪です。



「教えなさいよ、すみれが答えないならかのんから聞くわよ」


「まあまあ、ここまで来たら絶対話すかなん」


「……どこのテレビ付けても私がいれば、かのんが喜ぶから………っよ!!これでいいかしら!!?///」


「んまーっ、何て眩しい純愛ですのぉ!?」


「あいたたた…こりゃ最高だねぇ」


「うん、正直私まで照れちゃったわ。見て聖良」


「絵里さん耳真っ赤ですよ!!うわあったか!!」



何故でしょうか、あまりにも暖かい。気温でも無ければ、自分の体温がという訳でも無い。楽しいからでしょ。それもそうか。こんなに冬なのに、冬らしくない。まるで夏だ、それは言い過ぎか。言い過ぎよ。それもそうだね。



「でも残念だったわね、1番赤いのはかのんよ!!」


「……っ///」


「あれぇ!?1番ノリノリだった娘が1番まっかっかじゃん!!」


「いや、改めて聞くと……ちょっと恥ずかしいね……///」プシュー


「あーあったか。かのん湯たんぽサイコーね」ギュッ


「はなしてぇっ!///」



煙を目で追うと、そこには広がる限り満点の………そうでも無い星空が少し。でも充分、だって私達こんなに光り輝いてるから。顔赤いからかなん?太陽並に赤いですわ。それ大丈夫な奴?そうでも無いかもしれない。



「あいいなー。えいっ」ギュッ


「私は冷たいわよっ!!てか果南手冷たっ!!」


「ダイヤさんも負けず劣らずぽかぽかですよ、ほら」


「売り渡そうとしないでくれますの!?」


「あ、確かに…あったかいわね」


「ぴぎゃっ、すみれさんが握ってくれましたわぁっ!?///」


<あちょっと!私の許可を待ってくださいよ!


<今自分で売ったんじゃないの…あと果南離れて


<いやでーす


<じゃあかのんさんはお借りしちゃいますからね!


<ふつつかものですが宜しくお願いします聖良さん!


<あ、ちょっと……!!



こんな夜にはほんの少しの酒と、煙草を1本。たったそれだけでこんなにも距離が縮まる。知ってますか?私達、今日会ったばかりなんですよ。


ほら、夜もすがら火を点けてみればよく見える。ただの道端に、あの星に負けない笑顔が。



カチッ


ジジジ…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーCASTー


雑誌編集者:絢瀬絵里


居酒屋店員:松浦果南


会社員:鹿角聖良


主婦:黒澤ダイヤ


女優:平安名すみれ


アーティスト Kanon:澁谷かのん


クルーラカーン店長:小泉花陽(特別出演)


芸能事務所社長:綺羅ツバサ(特別出演)



ーMUSICー


https://youtu.be/zI99Noq6Oz0
(東京木曜楽団 - ベランダでタバコすうのやめろや)


https://youtu.be/Yxqo9XjUvo8
(尾崎豊 - Teenage Blue)


https://youtu.be/_6qDL8QY_Ps
(Showmore - Circus)


https://youtu.be/OO9FYilXXGQ
(Riku OSHIMA - Cigarette)



ーBased On A Story Byー


ラブライブ!


ラブライブ!サンシャイン!!


ラブライブ!スーパースター!!


Riku OSHIMA - Cigarette


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


煙草の美味しい季節です


過去作抜粋

絵里「雨の日のコーヒー」

穂乃果「第一次音ノ木坂抗争」

絵里 「ゲームセンターに行きましょう!」 にこ 「拒否」 希 「話を聞こう」

絵里 「真夜中に」 にこ 「愚痴を肴に」 希「姦しく」

花陽「都市伝説!」 絵里「対決よ!」

絵里「ノッキン・オン」 にこ「ヘブンズ・ドア」

海未「ふぁ~あ・・・眠いな・・・」 ことほの「「!?」」

絵里「ただ、ありふれた夜」

聖良「夜も更けて」 ダイヤ「姉会ですわ」

聖良「私達の」 ダイヤ「日常」

絵里「壊れた世界で、ただ1人」

海未「あなたは」 ことり「サマーガール」

希「ライブ?」 真姫「そうよ」

LINEグループ 9人の女神達

ダイヤ「お休みは」 聖良「言わないで」

穂乃果「ここどこ!?」 カイマン「ん?ここは"ホール"だぜ」 ニカイドウ「ギョーザ、食うかい?」

にこ「あなたの目には」絵里「私たちの姿が」

かのん「雨の日のコーヒー」

穂乃果「もう自衛隊入るしかないよ」海未「何を言ってるんですか」

善子「覚えてる?9月の事」梨子「そう、あの夜の事」

恋「ひっぷほっぷを聞きます!」すみれ「良いんじゃない?」

曜「水飛沫が光って」 梨子「月の光が輝いて」

果南「やらせクレーマー撃退選手権!!」絵里「お陰様で生きております!!!」

すみれ「カップ焼きそばのヤサイ程美味しいものは無い」

かすみ「ブレイキング・ラブ?」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom