フキ「サクラ、行くぞ」【リコリコ】 (43)
「どーもー、はじめまして、乙女サクラっていうッス。よろしく、せーんぱい」
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たきなが転属されてすぐ、新しいパートナーが宛がわれた。
『なんだその頭は?』って口に出して言いたくなるような髪型をしたそいつ。
目立つことはリコリスにとって御法度だが、どう考えても目立つこと間違いないその髪型……
いっそ、カツラでも被らせるか?
なんてバカなこと考えてたら、これからこいつと組んでの初任務だと司令からの命令が下った。
「サクラ、行くぞ」
「はいっ、先輩!」
とりあえず、たきなみたく勝手な命令違反さえしなければそれでいいか。
◆
「先輩! 喫茶リコリコに行ってみたいッス!」
任務を終えるなり、サクラが嬉しそうに言ってきた。
かりんとうに飽きたから、なんでもパフェが食いたいんだそうな。
DAで出るおやつのかりんとうも、美味いといえば美味いが、
流石に飽きるかな。
喫茶リコリコ……DAの支部で先生がいる場所、ついでもって頭の中にまでゴムが詰まってるバカもいる場所。
行きたいのはやまやまだが、命令以外での支部行きは私の中では禁止だ。
だから本部へ戻ることを伝えたサクラの顔はションボリしていた。
「サクラ、行くぞ」
「はい……先輩……」
今度、支部へ行く命令が下ったら、連れてってやるよ。
◆
「先輩、大丈夫ッスか?」
左頬が痛てぇ……
たきなのやつ、思いっきりぶん殴りやがって……くそぉ!
あいつ、絶対に私のこと恨んでるだろマジで!
ちっ!
骨が折れてたり、歯が抜け落ちてるってことはないが、
しばらくはこの痛みが取れないな……
はぁ……
自分の不用意な発言で、銃取引時にラジアータに通信障害があったことが千束に知られてしまったが……
はぁ……
なんかイライラする。
「サクラ行くぞぉ!!」
「は、はいーっ、先輩!!」
痛みを堪えながら寝るか……鎮痛剤でも貰おうか……
◆
「先輩はなんか知らないッスか?」
何が?って訊ねたら、昨日は大規模な作戦があったらしい。
丁度、別件があって私とサクラはその作戦には加わらなかった。
近くにいたヒバナとエリカも知らないそうだ。
なんでも、地下鉄でテロリストとやり合ったみたく、
テロリスト何名かは死亡したが、主犯格は逃亡、サードリコリスも犠牲が出たらしい。
テロリストはどっからそんな武器を……
まさかな……
「サクラ、行くぞ」
「もう行くんッスか!?」
考えても仕方ない。
とりあえず与えられた任務を遂行することに集中だ。
◆
「なんか本格的にマズイ空気になってるッス……」
サードリコリスが死んだ。
まぁ、リコリスが任務中に死ぬことなんてよくあることだから、気にしても仕方ない部分はあるが……
なんでも、亡くなったサードリコリスは司令によるテロリストを誘き出す作戦中に亡くなったとのこと。
サクラはサクラで「次は自分たちじゃないッスか?」とか怯えてやがる。
心配すんな。
そういう任務はサードに宛がわれるから、まぁ今のところは心配はない……とは思う。
「サクラ、行くぞ」
「ま、待ってくださいよ、先輩!」
今はやるべきことをやるだけだ。
◆
「あいつら来るんッスね」
テロリストの主犯格とされる真島の似顔絵を描きに、たきなと千束がDA本部にやってくる。
司令から聞いた話、なんか私らの知らないところで事が動いてるそうだ。
そんで、千束が真島と対峙してなんだかんだ関わってしまったとのこと、
こう聞くとなんかあいつら自由に動きまくってんなぁ、ちょっと羨ましいぞ。
なんて、思ったらダメだ。
うん、うん。
「サクラ、行くぞ」
「へーい」
出迎えたくはないが、しょーがないか。
◆
「抹茶だんご、食べたかったッス……」
支部に寄った帰り道、サクラは口惜しそうになんか嘆いていた。
今回あくまで目的は真島の確認を取るためであり、だんごを食べるのが目的じゃない。
目的じゃなければ、食べたいさ。
先生の作るだんごだ。
食べなきゃ損だ!
そう考えたら私って、かなりお堅いのか?
もっと柔軟にいくべき……
まっ、考えとくか。
「サクラ、行くぞ」
「ふわぁーい」
情けない声出しやがって……
……
先生の作っただんご、やっぱ食べとくべきだったか。
◆
「これ見てくださいよ、先輩!」
サクラが見せてくれたのは支部(リコリコ)のSNS。
なんか新情報かと見てみたら、千束とたきなが新商品のパフェの宣伝をしてる画像があった。
あった。
どうみてもとぐろを巻いたその形状、口にするのもNGなアレじゃねーか!
何やってんだ、アホなのかあいつらは!?
はっ、まさかこれの考案者は先生……ないないないないない。
「サクラ、行くぞおらっ!」
「ちょっ、先輩!」
先生がそんなものを作るなんてあり得ない!
後々聞いた話だと、考案者はたきなだった。
おい、あいつ感性がヤバくないか?
◆
「あいつ、やっぱ戻って来るんッスね」
たきなにDA復帰の辞令が下り、たきな本人もそれに了承した。
めでたし、めでたし……
なら良かったんだが、これから大規模な真島討伐作戦が始まる。
それと同時に、司令から千束の命が長くないことも知った。
本来なら病気でとっくに亡くなってやがったのをどういうワケかで行き長らえてたが、今回はマジでダメそうだと、
リコリスである以上、死は付きまとうし死んだところで誰も悲しみはせんだろうし。
……
あいつ、死ぬのか?
「サクラ、行くぞ」
「へーい、先輩」
とりあえず、明日だ明日!
◆
「どうなるんッスかね」
真島の狙いは延空木の爆破。
なんでもバランスがどーのこーのだと、
まぁ、片方潰れてるからもう片方も潰さないと気が済まない性格なんだろうか?
正直、私にはその感性は分からんよ。
はぁー……
これからバスの中で作戦会議だけど、
千束の奴はどう出るんだろう?
まぁ、今いないアイツに期待したところで無駄な気もするな。
「サクラ、行くぞ」
「これから作戦会議ッスよ! いないと怒られるッス!」
分かってるよ、冗談だ。
◆
「どうするッスか!? やべーッスよ!?」
リコリスの正体がバレた。
マズイ、今の映像でテレビデビューしちまった!
やべー、どーなるんだよおい、ってか、
たきなのやつ上手く回避しやがって運良すぎだろ……
あー、これ間違いなく死んだわ。
処分されるわー。
うん。
司令からも待機命令で動けないし……
なら、いっそうたきなみたくやるか?
最悪の覚悟で……
「サクラ、行くぞ」
「何処へッスか!?」
お茶の間に挨拶だよ、って言ったらなんか思いっきり引かれた。
冗談だからな、二回目の冗談だからな!
ちょっと冷静になれ私!
◆
「せん……ぱい……もう……」
旧電波塔で拘束されてたはずの真島が延空木に現れ、エレベーターに乗ってた私らに向けてマシンガンをぶっ放した。
咄嗟にガードはしたもののサクラが被弾した。
千束のことはたきなに任せ、私とエリカはサクラを救護に届けることを最優先。
おら、死んだらファーストになれないぞ!
なっ、サクラ。
怪我治ったら、リコリコでパフェ腹一杯食うぞ!
なぁ、サクラ!!
「サクラ、病院に行くぞ!!」
「は……い、せ……ん……ぱ……い……」
エリカ、あたふたすんじゃねぇ!
サクラ、絶対に死ぬんじゃねぇ!
たきな、絶対に千束を救え!
千束、絶対に生きて帰って来い!
◆
「あいつ、見つかったみたいッスね」
病院から抜け出した千束が沖縄で見つかったとのこと、
ほんと、あいつは心配ばっかりさせるなぁ、おい!
私は、心配すらしてねぇけどな!
マジで!
なんて言ったら、サクラがニヤニヤしながらからかって来た。
だから、首根っこ掴んでやった。
「サクラ、行くぞおらっ! 仕事だ仕事!!!」
「先輩、絞まる絞まる! ギブギブギブ!!!」
一回、上下関係叩き込んでおくか。
おう。
◆
「せーんぱい、行くッスよ」
風の噂だが、
喫茶リコリコのメンバーが日本から旅立ち、ハワイに行ったとのこと、
二名程戸籍のないやつがいるという疑問はあるが、あの小さいのがなんかやったんだろう。
ったく、私に何も言わずに旅立ちか?
せめて挨拶くらいしてけよなぁ。
また会えるだろうか……
次はいつ会えるか、下手したら二度と会えないかは分からんが、
まぁ、会えると信じてこっちも頑張るか。
「サクラ、行くぞ」
「はいっ、先輩!」
今日も今日とて頑張りますか。
この、色々とうるさい相棒とな。
おしまい
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