【安価スレ】堕ち行く光 (950)

生きるということは、背負うということ。
道半ばに斃れた仲間の想い、願いを背負い、進むということ。

生きるということは、苦しむということ。
生きている限り、離別と喪失の苦しみは際限なく襲ってくる。
理不尽や不条理の苦しみも、生きている限りは決して終わらない。

生きるということは、奪うということ。
進む道を阻む者の命、希望、心を踏み躙り、断ち切る。
この世に生きる者は皆何かしらを奪い、骸の上に生きている。

苦しむ心を。責任を。全てをかなぐり捨てることが出来たら、どれだけ楽だっただろう。
何も感じない心を持っていれば、どれだけ楽だっただろう。

今までに、どれだけ苦しんだだろう。
これから、どれだけ苦しむのだろう。

そんなことを考えながら、俺は目を閉じた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1659277598

曇天の空から降り注ぐ豪雨が、乾いた大地を潤す。その中を、一人の青年が歩いていた。
精気の抜けた顔は雨とも涙ともつかぬ液体で濡れ、その眼差しは深淵のごとき闇を湛えている。
誰の目に見ても悲惨な出来事があったのだと想像させる姿であり、事実、彼にとっては世界に絶望するに足る悲劇があった。

麻布に覆われた『何か』を大事そうに抱き抱え、当もなく彷徨う旅人は、この世界に希望など抱いてはいなかった。

「…滑稽だな。俺も、貴女も」

人のために戦い、傷つき、癒し。その結果が護りたかった人々からの痛罵とは。
端から見返りなど求めていなかったが、こうも堂々と非難され、手のひらを返されては呆れることすら出来なかった。
寧ろ、その結末を見抜けなかった自分の眼の節穴具合に嘆息するばかりだ。

「貴女は良かったのか?こんな終わり方で」

麻布を捲り、顔を露出させる。その表情からは、彼女の後悔がありありと感じられる。

「俺は…嫌だな…」

勇者は聖女の亡骸を強く抱きしめ、声無き嘆きを上げた。

血に染まった晩餐会は、主催者の悲鳴を以って幕を閉じる。穢された思い出は消えることなく、記憶を蝕み続ける。

「なんでだよ…クソッ…。なんで、アンタたちは…」

過去に裏切られた勇者は、両の手に握られた剣を持つことを忘れ地面に蹲る。
ズキズキと痛む頭を抱えながら、眼前の地獄を記憶に残す。

物言わぬ肉塊となった王と宰相らが、この国の運命を告げている。動乱に呻く時代を示している。が、そんなことはどうでもよかった。
ただただ苦しかった。あれほど輝かしかった思い出は、どす黒い悪意に塗れて心を蚕食していく。
目の前の光景が現実なのだという事実が、どうしようもなく辛かった。

「…はは…はははははは…!」

その現実から逃れるべく、勇者はひたすらに笑う。世界に翻弄される愚者たる自身を嘲る。
もう、勇者は既に死んでいた。その抜け殻たる虚ろなる者、幽者だけがそこにいた。

懐かしい夢から目覚め、自室を出る。右腕の包帯を外すと、昨日負ったはずの傷は跡形も無くなっていた。

「…ぷはぁ」

戦利品のワインをラッパ飲みで一息に飲み干す。葡萄が有名な村の名産品なだけあって、下手な酒場で味わったものよりも数段美味だった。
ここまで美味いなら一気飲みするのはもったいないかもしれない、と若干の後悔が生まれたが気にしないことにする。
欲しいならまた奪えば良い。今までそうやってきたのだから、躊躇う必要は無い。

「non dubitabis(汝、躊躇うべからず)…。先人は良い名言を残してくれたものだよ」

jus rem agis(正しい行いをする者よ)、という枕言葉が前にあったはずだが、別に無視していいだろう。人のやりたいことを妨げるのなら、馬に蹴られて死んでも仕方ないものだ。
どうしても妨げたいのなら、力で捻じ伏せるしかあるまい。

そんな思考をしつつ空になったワイン瓶を机に置き、作り置きされていたパンを片手に家を出た。

【名前】リヒト・ブラウダ
【人種】人間
【性別】男性
【魔法】光魔法及び冥光魔法
碧眼のみが産まれるブラウダ家に突如産まれた紅眼の忌み子。
『自由の身となる代わりに金輪際家名を使わない』という誓約を結んだため他人は彼の姓を知らないが、家名を持たない人は割といるので特に気にされていない。
愛されたことがないので愛し方を知らず、故に愛に飢えている哀しき人間。
根は善人なのだが、目的のためなら非道を厭わない黒い部分がある。
現在は特級指名手配されているため、偽名である『リュクス』という名を使っている。


【どういうスレなの?】
このスレはリヒトが自分を信じてくれる人のために、そして誰にも裏切られたくないリヒト自身のために国を作るスレです。
それまでに何をするかは自由です。

というわけでスタートです。現在のリヒトに同行してくれている仲間を計2名募集します。内訳は下記の通りです。テンプレートも併記しております。

必要数:1 指名手配直後からの仲間 性別不問
必要数:1 壊滅させたキャラバンから強奪した仲間(奴隷) 性別不問


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【人種】その名の通り。
【性別】その名の通り。
【魔法】どんな魔法を得意とするか。全く使えない人もいます。

魔法から下は自由記入欄となります。来歴や特徴などご自由にお書きください。

【名前】マナ
【人種】妖精
【性別】女
【魔法】祝福魔法
故郷を焼かれ、帰る場所を失った妖精の子
かつては同種の仲間に囲まれて幸せに暮らし、生命を愛する心を持っていた。しかし今は生命の存在、活動にやや否定的
特に今後の目的や展望があるわけではなく、故郷を焼いた者に復讐するほどの熱意もなく、日々無気力に過ごしている

【名前】シルヴィア・レイナス
【人種】人間
【性別】女
【魔法】全属性が使用できるが、後述の腕輪のせいで魔翌力のほとんどが封じられている
美しい銀髪と抜群のスタイルを持つ妖艶な美女
絶大な魔翌力と全ての属性の魔法を使いこなすという類い稀な魔法の才能を持ち、賢者として崇められていた
しかし彼女の非凡すぎる才能を次第に危険視したり嫉妬する者達が出始め、ついには騙されて魔翌力を抑制する腕輪をはめられた挙句殺害されそうになってしまう
辛くも逃げ出せたものの、その事については強い恨みを持っており、自分を殺そうとした者達への復讐、
ひいては才能ある者達が生まれや性別などに囚われず、正しく評価される世界を作る事を目指している

【名前】ウルトラレイン
【人種】女性型のウルトラマン
【性別】女性
【魔法】ウルトラマンに変身出来る、格闘技や光線を出して怪獣と戦う
    力自体は非常に強力だがウルトラマンの宿命で地球状では3分間しか地球状では戦えない、
 【その他】 変身した姿は長い銀髪と青い瞳を持った美しい戦乙女、体のデザインは青色がメイン
 【性格」正義感がとても強く、お嬢様言葉を喋る

爛々と照り付ける太陽が眩しい。天気が良いのはいいことだが、限度というものがあるだろう。
未だに散乱したままの瓦礫を破壊しつつ、天気に対する愚痴を漏らす。それで何かが変わるわけではないが、気休めにはなるものだ。

「おはようリヒトくん。私お手製のロイヤルなブレッドのお味はいかがかな?」

「普通。パン窯とかないから最初から味に期待してなかったが」

「お世辞でもいいから褒めてもらいたかったねぇ」

「そこまで俺は気が利かないものでね」

切り株に腰掛けてロイヤルなブレッドを頬張っている、美貌が台無しになっている女性。
彼女の名は『シルヴィア・レイナス』と言う。

流行に疎いリヒトでもその名を知っていたほどに著名な人物で、並び立つ者はいない、と断言されていた大賢者"だった"。
その才故に尊敬を集め、その才故に嫉妬に塗れた。
そして、人の悪意によって、自身を支えていた大いなる翼は奪われた。
今の彼女は、知識だけが取り柄の無力な人間と化している。過去の面影はその姿しか残っていない。

翼を失った大賢者は幽者に救われ、希望を無くした幽者は大賢者に救われた。
その関係とある種のシンパシーが、彼らを繋ぎ留めている。

「アレはどうだ?」

「意気消沈…というか、無気力状態だね。完全にやる気なし子ちゃんだよ」

リヒトがアレと呼ぶ、偶然幽者の目の前を通りがかってしまった不運なキャラバンから強奪した戦利品。人の悪意に故郷を奪われた人ならざる者。
それは、苦しみから逃れるべく心の檻に閉じこもっていた。

「…そうか。ま、しゃーないよな。ちと様子を見てくるわ」

「行ってらっしゃい」

勝手に死なれては大損だと、リヒトはわざとらしく口にしてアレの元に向かった。

「----」

鬱蒼と繁る森の中、それはいた。背中から水晶のような羽を生やし、虚ろな表情で空中を漂っている。
その姿からは生きる気力を感じられず、漏れ出すように紡がれる歌は人には理解出来ず、ただ脳を蝕む。

「んな顔するなよ。生きてたら俺みたいにいいことがあるって」

喉元まで込み上げている嘔気を押し留め、平静を装い声を掛ける。歌は止まり、不快感も治まった。

「…どんないいことがあったの?」

「…まぁ、色々ですね」

いいことなぞ全く無かったので、追及されるのは困りものだ。そんなリヒトの心情を察したのか、それとも興味が無かったのか。
妖精は目を閉じ、後ろを向いた。

嘗て昏迷の森と呼ばれる地域に暮らしていた、という『マナ』と名乗った妖精は、自宅に連れ帰ったや否や近隣の森に逃げ込んだ。
逃げ込んだというよりは、こちらの方が居心地が良い、と言った方が正しいのかもしれない。
彼女ら妖精は、本来人の世に出てこない存在だ。森の奥で、自然と共に在るのが妖精というものだ。
そんな存在であるマナが、人の暮らす家を拒絶するのは道理と言えよう。

空に浮かび、瞑目しているマナを見たリヒトは踵を返す。
何かあったら助けを呼ぶように伝えると、妖精は小さく頷いた。

『なぜ、わたしをたすけたの?』

帰りの道すがら、救出されたマナに問われた言葉を思い出す。頭をガジガジと掻きながら、リヒトは声を漏らした。

「…言えるわけねぇだろ、クソ…」

あんな悲しそうな顔をされたら、目を背けることなんて出来なかった。そんなこと、本人には言えなかった。

自分を誤魔化すように頭を振った後、リヒトは足速に駆けていった。

「さて、ゴミ掃除ついでに作戦会議といこうか」

「ああ」

数百年前に定住を試みた先人が残した家屋。その全ては自然に呑まれて廃墟と化した。

人が文明を築いてから日が浅い現代では未開拓の領域はあまりにも広く、故にこうしてリヒトたちが隠伏生活を行えている。

「私たちの最終目標は何か。はいお答えくださいリヒトくん」

「自分の国を作って皆から愛されたい」

「うんうん。馬鹿正直に自分の願望を言ってくれてありがとう」

くつくつと笑うシルヴィアは揶揄っているのか、リヒトの頬をペチペチと叩く。これっぽっちも痛くないが、気恥ずかしいのでリヒトはそっぽを向いた。

「君は自分の国を作る。私は出生や性差等に囚われない、正しく才能や努力を評価される世界を作る。あとついでに私をこうした奴らを地獄に叩き落とす。という遠大な目標を掲げているわけだ」

人に話せば爆笑の後軽蔑が待っていること確実の、子供でも人に言わないほどの馬鹿馬鹿しい夢を、彼らは本気で、大真面目に成そうとしている。
一人は忌み子である自分でも、愛される権利を持っていることを信じるために。
一人は自身のような者を二度と生まないために。

「で、その過程に何が必要か話し合おうじゃないか。どうせ私が一方的に言うだけだろうけど」

どこから取り出したのか。スリムな眼鏡を付けたシルヴィアは、羊皮紙と羽ペンを片手に瓦礫に座った。

「まず私たちに足りない物は何だと思う?」

「人員。物資。領地。その他諸々」

「つまり全部足りないってわけだ。人手不足なのもそうだけど、物資が足りないのは痛いね。今有る物資も、私たちが数週間食い繋ぐのがやっとの量しかないからね」

「でもさぁ、物資を強奪(うば)っても運ぶ手段が無いじゃん。馬さえいないから俺が全部担ぐしかないし」

「だから、輸送手段が欲しいところだね。龍騎兵(ドラグーン)がベスト…次点で空騎兵(エアライダー)かな」

「最悪騎兵(ライダー)がいれば良いだろ。高望みしたってしょうがない」

「強欲じゃないのは偉いぞリヒトくん。愛されるために国を作ろうとしてる輩とは思えない!」

「忌み子が愛されるのを望んだって別に良いだろ!」

その後、あーでもないこーでもないと議論と言う名の談笑をする二人がいた。

何をするかを↓1にどうぞ。

仲間を探す

「んじゃ、行きますか」

普段着から軽装に着替え、荷物を整理する。シルヴィアも同じく軽装に着替えて準備を済ませた。

「………」

マナ、ひいては妖精には着替えという概念がない。故に準備するものもなかったし、彼女にはそもそもする気が無い。

現在のパーティ構成は近接1、遠隔(笑)1、無職1という割り当てだ。つまり、リヒトが頑張らなければ全員死ぬ。
責任重大だが、勇者と呼ばれた彼の実力は伊達じゃない。並大抵の脅威であれば千切っては投げ千切っては投げである。

「頑張れリヒトくん。今の私は人喰いネズミにすら簡単に殺されちゃうからね!」

「自慢して言うことじゃねぇ!」

目的地を↓2にどうぞ。

A:賊のアジト 道中イベント:0
B:荒廃した街 ソルド 道中イベント:2
C:王亡き都 レムカーナ 道中イベント:4
D:普遍の町 アリフ 道中イベント:0

踏み

C

「いやーすまないね!勇者にすら打ち勝てる自分の才能が恐ろしいよ!!!」

「帰ったら許さねぇ」

どこに向かうかを決める一世一代の大博打。即ちじゃんけんに大敗を喫したリヒトは、シルヴィアを抱えたまま獣道を駆けていた。ちなみに、マナはリヒトの頭にしがみ付いている。

「俺の事情を知ってるくせにレムカーナを選ぶか普通!特級指名手配犯だぞ俺!?」

「大丈夫大丈夫。いざとなったら飛んで逃げられるでしょ君」

「精神衛生上非常によろしくない!あっ」

長い獣道を抜け出すと、そこは崖っぷちだった。勢いのまま飛び出した三人組は、重力に従い落ちていく。
一瞬焦った顔を見せたリヒトだったが、すぐに表情を元に戻し、意識を集中させた。
溢れ出す光が身を包み、光の翼を現出させる。飛竜の翼もかくや、というほどの雄大な翼を広げ、勢いよく滑空する。

「快適快適。私を落とさないよう気をつけておくれよ?」

「すぴーどさげて」

「注文が多い奴らだなったく!!!」

ぶつくさ文句を垂れているが、要望通りに快適なスピードを維持するリヒトだった。

道中イベント 判定↓1コンマ


01~15:魔物の群れが現れた!
16~30:ならず者が現れた!
31~70:何も起きなかった!
71~85:行商人が現れた!
86~99:何かが起きた!(自由枠)
00:???

はい

煌々たる星空が見える夜、川の近くでは小さな焚き火が燃えていた。パチパチと音を立てて燃え、風に揺れる炎は儚くも美しい。

「はふ…」

リヒトが設置した光源頼りに読書をしていたシルヴィアは、襲う眠気を誤魔化すことなく欠伸で示した。戦力の99.9%を占める要であるリヒトはここにいない。いる必要が無い。

「流石私。魔力を封じられても、叡智一つで問題を容易く解決出来てしまうなんて…。と、自画自賛しても、反応してくれる人がいないと存外つまらないものだね」

「………」

膝下に丸まって眠るマナの頭を撫でる。マナはじっとりとした視線を向けた後に、また目を閉じた。

退屈しのぎに、シルヴィアは小石を拾って軽く放り投げる。一定の距離を進むと、不快な音と共に塵と化した。

「…ちょっと出力上げすぎたかな。後で術式を調整しようそうしよう」

リヒトとシルヴィアの共同作業で構築された結界は、小規模な軍勢が匙を投げて不貞寝する程度には強固だった。

野営地から少し離れた森の中。一人の青年が夜空を眺めていた。無数の魔物が跳梁跋扈しているが、怯えてはいない。
寧ろ、魔物側が怯えている。こっち来んなあっち行け。どこかに行ってくださいお願いします!と涙ながらに念じている気さえしてきた。

リヒトは星空に手を伸ばす。無数の星が手のひらに隠れるが、触れることはない。

「星に手を伸ばしても、決して届きはしない。俺の夢も、同じものかもしれない」

それでも。

「俺は絶対に、夢を諦めない」

決意を確かめるように、星を握りしめた。

道中イベント 判定↓1コンマ


01~15:魔物の群れが現れた!
16~30:ならず者が現れた!
31~70:何も起きなかった!
71~85:行商人が現れた!
86~99:何かが起きた!(自由枠)
00:???

「はい終わり」

最後の一匹を始末したリヒトは、剣に付いた血を拭う。光を湛えた聖剣は、ふわりと浮いて虚空に消えた。
慈悲を以って命を絶つ。一息に殺めるのはリヒトなりの慈悲であり、配慮だった。
一撃で絶滅しなければ、その分苦しみが続く。逃れ得ぬ死であるのなら、少しでも楽に逝かせてやろう、という優しさだ。
無論、それが自己満足であることは自覚している。殺しているのに何が優しさだ、との非難は甘んじて受け入れよう。

だが、この戦い方を辞めるつもりはない。迅速に、確実に殺めることは、自身の安全にも関わるからだ。
生き延びるから、禍根が生まれる。ならば、殺し尽くせば禍根など生まれない。
それは、度重なる激戦で得てしまった、常人とは異なる価値観だった。

「にんげんはなぜ、ほかのいのちをうばうの?」

不意に口を開くマナ。その問いに、リヒトは答えられなかった。
殺すことだけを求められた勇者には、正しい答えが分からなかった。

道中イベント 判定↓1コンマ


01~15:魔物の群れが現れた!
16~30:ならず者が現れた!
31~70:何も起きなかった!
71~85:行商人が現れた!
86~99:何かが起きた!(自由枠)
00:???

どんなことがあったかを↓1に。話の流れにそぐわないもの、あり得ないものなどは下に流れます。

草木の生い茂る廃城を見つける

リヒトはシルヴィアたちより先行し、周囲に危険が無いか偵察していた。
しかし、目ぼしいものは何も見つからない。魔物もいなければ、賊らしき人影や馬車の痕跡すらも見えない。

「もう少し高度を上げるか」

光の玉を二発打ち上げた後に、さらに上へと飛翔する。合図を送ったから、二人もすぐ駆けつけるだろう。

「…む?」

リヒトから見て二時の方向。方角で言えば北西の先に、人工的な何かが一瞬見えた。
好奇心を抑えるつもりは端から無いので、仔細が判明する距離まで接近する。
ある程度近づいてから解ったことなのだが、人工的な何かとは『廃城を構成する見張り塔』だった。放置されて長いのか草木が生い茂り、蔦が表面を覆っていた。
我ながら良く見つけられた、と感心するほどに、風景に同化して分かりにくい。

鬼が出るか蛇が出るか。心躍る廃城探索の始まりだ。
口角を吊り上げたリヒトは、光を三度放った。

廃城前の石碑で合流した幽者御一行はまず、この城がどういうものなのかを調べることにした。
現代では使われていない文字に加えて経年による風化のせいで文字は全く読めなかったが、天才は格が違った。

「『ヴォルグス城』…で間違いないね」

文字を丸写しした羊皮紙を見て、シルヴィアは満足気に頷く。解読に成功したらしい。

「まぁ、私にかかればこんなものさ。早く中を調べようか。どんな書物が遺っているか楽しみでしょうがないよ!」

「わーってる。露払いはお任せあれってな」

聖剣を肩に担ぎ、リヒトは閉ざされた扉に触れる。鉄製の扉は錆び付いており、ビクともしなかった。
立ち塞がる困難は全て、この聖剣たちと共に乗り越えてきた。ならば、今回も同じようにするだけだ。

「…ぉらっ!」

リヒトは、全身全霊の蹴りを叩き込んだ。

「いや斬り捨てなさいよ。聖剣たちがかわいそうじゃないか」

「腕が痺れるからやだ」

轟音を立てて闇へと消えた扉をよそに、シルヴィアは呆れたように頭を抱えた。

『わたしはねてる』

とだけ言い残して木に寄りかかったマナを除いた、リヒトとシルヴィアコンビは意気揚々と廃城を探索する。
長い間人の手が加わっていなかったので内部は荒廃しており、触れただけで崩れ落ちるほど脆い足場もあった。

「………」

虫に食われ、カビが生えてマトモに読めない書物も散乱していた。なんとか読めそうな部分を見つけ出し、シルヴィアに解読を頼むが、溜め息ばかりが返ってくる。

「落書きでも書かれてたのか?」

「住人…正しくは衛兵の手記さ。この城が滅ぶまでの顛末が記されててね」

「へー。普通に重要な情報の気がするが」

「主観の…それも一つの視点で見た情報だけ手に入れても、という話さ。同じ筆者の手記だけを見たって何も得られやしないよ」

シルヴィアは不満そうに本を直し、自身の持つ羊皮紙を取り出した。そして、勢いよくペンを走らせた。

「とはいえ、数少ない情報だ。目に見える形として残せば、筆者も報われるだろう。興味があるなら、何が書かれていたか教えてあげるよ?」

「またの機会で頼む」

興味なさげにリヒトは答え、保存食の干し肉を齧った。

廃城探索 判定↓1コンマ


01~30:宝箱を一つ発見。(安価一回)
31~60:宝箱と新しい手記を一つずつ発見。(安価一回と情報を獲得)
61~99:宝物庫を発見。(安価複数回)
00:???

きたい

「お待たせしたね。さて、お次は君の番だよリヒトくん」

「ああ。頭を使う作業は任せた」

「任されたよ」

城内の廊下を歩きつつ、城中に巣食っていた魔物を一掃していく。所々腐敗している魔物が多いが、ゾンビの類ではなさそうだ。

「…この城が無人になった元凶だよ。その腐りかけのネズミや犬に噛まれたら、そこから疫病に感染して死に至るんだ」

「えっ」

「外に疫病が広まっていない理由は単純明快。この病気に罹った生き物は、日の光や水を極度に嫌うんだ。意志に関係なくね」

「つまり、この城から外に出られないんだ。一度出てしまえば、拒絶反応でたちまち息絶えてしまうだろう」

「…治療法は?」

「ない!」

なるほど。クソみたいな病気だ。二人は顔を見合わせて、冷や汗を流した。こんな病気に罹って死ぬなど、死んでもごめんである。

「見敵必殺だ。怪しい奴がいたら片っ端から教えてくれよ!」

「死にたくないから死ぬ気で探すよー!」

半ば自棄になった二人組は、お宝目指して城内を走り回った。

「…これで、粗方探し終わったかな」

宝箱がありそうな場所を調べ回ったが、どこもかしこももぬけの殻だった。見つかったものといえば、先人の遺骸くらいだ。
鎧と白骨が散乱した無惨な光景。嘗てはここが人でいっぱいだったと考えると、無性に悲しくなる。

今二人がいるのは、城主が利用していたであろう寝室だ。人が数人寝られるほどに大きなベッドと、埃を被った鏡台が特徴的な、しかしどの城でもよく見られる様式の部屋だった。

「…こりゃ期待外れだな。一休みしたらレムカーナに行こうぜ」

「ちょっと待っておくれよ…」

そう言って、シルヴィアは羊皮紙に図面を書き殴る。知識不足のため確証は無いが、ヴォルグス城の間取りに見える。
周囲を見渡し、独り言を溢し。正直関わりたくない行動をするシルヴィアから、リヒトは数歩後ずさる。
特に気にする様子もなく、シルヴィアは作業を続けた。

「解った!」

待つこと数分。突如、賢者が口を開いた。珍しく大きな声を出すものだから、リヒトは少し驚き、シルヴィアの方へ振り返った。

「解ったって、何が?」

「リヒトくん。そのベッドを壊すかどかしておくれ」

「ん」

指示を疑問に思いつつ、リヒトは剣を抜いた。光を纏った聖剣が振るわれ、光の奔流が壁ごとベッドを吹き飛ばした。

「やりすぎだけどまぁいいか。次は、そこにある瓦礫を取っ払って」

「了解。…おぉ?」

不自然に積み重なった瓦礫を排除すると、石製の梯子が目に映った。

リヒトは梯子を降りつつ、今の位置をシルヴィアに確認する。

「ここは、裏手のバルコニーから見えていた壁の出っ張りの部分だよ。てっきり、構造上作らざるを得なかった、補強用の部分だと思ってたんだけど」

「城内を調べて不思議に思ったんだ。ここには、貴重品を隠す領域が無いことにね。王権を象徴する宝具とかを、略奪者に奪われないように隠す秘密の部屋が普通はあるはずなんだ」

だが、そのような怪しい場所は見つからなかった。隠し通路や隠し扉も、床をいくつか破壊までして調べたが存在しなかった。
一階から最上階まで間取り図を書き出し、唯一そういった通路が隠せそうな場所がここだったらしい。

「最深部に到着…。何がありますことやら」

長い梯子を降り終えると、今度は石で作られた扉が目に映る。外気に晒されていなかったからなのか、新品同然の外見をしていた。

「それでは御開帳だ。3…2…1…0!」

力を込め、扉を押す。地響きと共に、ゆっくりと扉が動いた。

戦利品 判定↓3までのコンマ 最低2つ保証
何が入っているかを記載してください。何が入っているかが記載されているレスのコンマで判定します。


01~30:スカ
31~99:あたり
00:おおあたり

眠っている少女

何らかの魔翌力を秘めた宝珠

代々伝わるめちゃくちゃ美味い料理のレシピ

全部スカなので↓2までのコンマで再判定
↓1は00を除いて三等分、↓2は二等分して、それぞれのコンマの大きさに対応したものを選びます。

連取りありなら

>>42

undefined

扉を開けると暗黒に満ちた宝物庫が姿を見せる。一寸先は闇、と比喩でよく言われるが、実際に現象として目にすることになるとは思わなかった。
見えない。何も見えない。マジで見えない。自分の手を眼前まで近づけても、全く見えないのだ。光の概念がこの場所だけ存在していないのかと錯覚を覚えてしまう。
流石に暗闇の中を手探りで行動するのは無謀だ。二人とも暗視の手段は持っているが、それは星の元でしか使えないし何でもかんでもはっきりと認識出来るわけではないのだ。

リヒトは光の短剣を数本作り、石畳や天井に突き刺した。ほうら明るくなったろう、とでも言いたげだが、数が多すぎて逆に眩しいまである。

「…まぁ、予想はしてたよ。この人たちも辛かっただろうな」

光が戻った視界に映るのは、朽ち果てた衣類と亡骸。そして、大事そうに守られた三つの宝箱。
遺体が身につけている宝飾品からして、亡くなられたのは城主夫妻と、その親衛隊の騎士だということは容易に想像出来た。死因はおそらく餓死。

机に置かれた手記には、臣下を置いて病魔の蝕む地上から逃げたこと。そして、病に苦しむ臣下と共に逝けぬ自分の不甲斐なさなどに対する謝罪と後悔が記されていた。
当時の情勢が分からないので憶測でしかないが、本気で逃げ出すのなら城から出るだけで良かった。
にも関わらず、わざわざ脱出口が無い宝物庫に逃げ込んだということは、そういうことだろう。

「…見捨てることが出来なかったんだろうね。病に苦しむ兵士たちを置いて逃げることが出来ず、かといって同じ苦しみを味わう覚悟が足りず。だから…」

「だから、この人たちはこの場所で、命を終えることを選んだ。同じようには逝けなくとも、せめて、同じ場所で。共に生きてきたこの城で終わりたかったから。…哀しいね」

原因も不明な疫病で国が滅ぶことなど、短い人類の歴史を辿ればままあることだ。集落単位になればなおさら。
だが、これは。こんな終わり方は哀しすぎる。理不尽すぎる。

「まぁ、それはそれとして。お宝を拝見させていただくか」

「ムードもへったくれも無いね。人の心は無いのかい?」

「人の心があるから宝に惹かれるんだろ」

先程までの陰鬱な雰囲気は霧散し、彼らが命を賭して遺した未知のお宝への興味が場を支配する。どこからか、呆れた溜め息が聞こえた気がした。

鍵の掛かった宝箱を開けるのに一番手っ取り早い方法は何か。道行く人々に訊ねれば、様々な答えが返ってくるだろう。
盗賊に頼む。鍛冶屋に頼む。なんかいい感じに鍵だけ壊すなどなど。
幽者の答えはこれだ。

「箱を解体すれば良いんだよぉ!!!!!」

リヒトは聖剣を取り出し、一つ目の宝箱を斬り刻む。幾度も閃光が走り、鞘に収められた瞬間、宝箱はバラバラになって中身を露出させる。
果たして、ヴォルグス城の至宝の正体とは。

「『は ず れ』」

と古代語でデカデカと書かれた羊皮紙が、至宝の正体だったらしい。なるほど、このガッカリ感がお宝というわけか。
お宝をくれた返礼として、この城は跡形もなく滅ぼさなければならない。
聖剣が色を変え魔剣となる緊急事態が発生しているが、シルヴィアは意に介さず残りの宝箱を物色する。パカっと、何の抵抗もなく開いた。

「は?!?」

「最初から鍵は掛かってなかったよ。鍵チェックも無しに実力行使に出るリヒトくんが私は怖いよ」

「いや普通宝箱には鍵が掛かってるって思うだろ!?」

「鍵が空いてたのは事実なんだから逆ギレされても」

雑談の間に、魔剣はまた聖剣へと戻る。ヴォルグス城消滅の危機は避けられた。
シルヴィアの吐息と共に宝箱から取り出されたのは、紫紺に染まった透明な宝珠と、古代語がびっしりと書かれた羊皮紙の束だった。

「おぉっ!なんかそれっぽいやつじゃん!」

「それっぽいっちゃあそれっぽいけどね。君が思ってたであろう金銀財宝とは程遠いよ?」

「この際人を小馬鹿にした書き残しじゃなければなんでもいいわ!」

先程上げて落とされたことに対する恨み節を溢すリヒトは、羊皮紙を手に取る。が、すぐに目を背けた。

「古代語なんて読めねぇよ」

「もし君が読めても興味は無いだろうけどね」

シルヴィアが大事そうにカバンに入れたそれは、ヴォルグス城に伝わる極上料理。そのレシピだった。レシピの題名は『気になるあの人も即死!?胃袋を掴んで離さぬメチャウマビーフシチュー』である。物騒な題名で怖い。
もう一つのお宝は、シルヴィアをしてよく分からんと漏らす謎の魔力が秘められた宝珠だ。彼女が言うには、リヒトの魔力に似た波長を感じるらしい。

「まぁ、たまたま見つけた廃墟での収穫と考えれば悪くはないんじゃないかい?レムカーナはもうすぐだ。早いとこ用事を済ませようじゃないか」

「…その前に、少し時間をくれ」

収穫に満足し宝物庫を出ようとするシルヴィアを、リヒトは決意を秘めた表情で止めた。

「…これでよし」

目に見えた亡骸を全て、ヴォルグス城の中庭に移動させる。
リヒトが光魔法で発破を掛け、ぽっかりと空いた二つの穴に、亡骸を分別して埋めていく。ちなみに、左が城主夫妻を入れた穴で、右がその他の遺体を入れた穴だ。
遺体を入れ終わったら、土で穴を完全に埋める。そして最後に。

『ヴォルグス城の城主、苦楽を共にした臣下と此処に眠る』
『ヴォルグス城に生きた者、敬愛する城主と此処に眠る』

と、リヒトが慣れない手で文字を彫ったお手製の石碑を建て、埋葬は終了した。

「お優しいことで」

「…別にそんなんじゃない。放置してどっか行くのは、墓荒らしみたいな気がして嫌だったんだよ。かといって、城主だけ埋めても中途半端だしな」

所詮これは、ただの自己満足だ。こんなことをしても、犯した罪は消えない。死者の眠りを妨げた事実は変わらない。だけど。

「…俺、この城に来れて良かったと思うよ」

人知れず滅んだヴォルグス城を。滅びゆく中で未知の脅威に怯えながらも、懸命に生きた者の覚悟と生き様を。互いに想い合っていたことを知れたから。

「…そうだね。君がそう思ったら、死んだ人も浮かばれるよ。きっと」

眠ったままの小さな妖精を抱き、二人はヴォルグス城を後にした。

夜な夜な談笑する声が聞こえる廃城を見つけたら、決して近づいてはならない。
死ぬほど美味い(物理)ビーフシチューを振る舞われて、二度と戻ってこれなくなるから。

そんな噂が冒険者の間で広まるのは、また別のお話。

道中イベント 判定↓1コンマ


01~15:魔物の群れが現れた!
16~30:ならず者が現れた!
31~70:何も起きなかった!
71~85:行商人が現れた!
86~99:何かが起きた!(自由枠)
00:???

a

長い旅が終わりを迎えレムカーナが目前に迫ったところで、問題に直面することになった。

「…チッ。楽には行かせてくれねぇか」

聖剣を肩に担ぐ勇者は不快気に舌を打ち、前に出る。賢者は妖精を背負い、一歩後ずさった。

眼前にいるのは、強固な鎧を纏ったミノタウロスの群れ。おそらく種族はアークミノタウロスだ。
本来であれば、人里から遠く離れた洞窟などに居住しているはずなのだが、何故ここにいるのだろうか。

「腹でも空かせてるんじゃないの?人を喰ったミノタウロスはアグレッシブだからね」

なるほど。人の味を覚えて、わざわざ人が多く住むレムカーナまで来たというのか。
欲を満たすためなら苦労は厭わない。素晴らしい精神性だ。

リヒトは群れの先頭に立つミノタウロスの獲物を凝視する。返り血と臓物がべったりと塗れたそれは、数多の命を刈り取ったことを物語っている。
先程から鼻を突く屍臭の正体に気づき、気分が悪くなる。

そんなことは知らねーと、ミノタウロスは咆哮と共に突進を仕掛けた。

戦闘 判定↓1コンマ


01~05:リヒトピンチ。
06~25:シルヴィア&マナピンチ。
26~45:戦闘膠着。
46~75:有利。
76~90:ミノタウロス隊撤退。
91~99:ミノタウロス隊全滅。
00:???

_

ミノタウロスの号令と思しき怒号が聞こえ、群れが一斉に突進を始めた。
ムッキムキの上半身と妙に貧弱な下半身から生まれる推進力は伊達ではなく、筋肉の波濤と形容しても差し支えがないほど、その突進には迫力と重圧があった。

現役時代にアークミノタウロスと戦り合った経験が無いため、どういう出方をするか分からない。
ので、まずは小手調べとして牽制を行うことにした。

リヒトが『光絶(スプライト)』と呼ぶ、魔力を用いた極小範囲の空間切断。数多の戦闘の中で体得した、効率的に戦力を減らす殺戮の化身たる魔法は、悉くが避けられた。

「初見で避けられるかっ…!」

リヒトは即座に小手先の技は通用しないと判断し、シルヴィアとマナに逃走の指示を出す。
はっきり言って、お荷物な二人を守りながら挙動からしてかなりの手練れである魔物の軍勢を処理するのは、幽者であるリヒトでも苦労するものだ。

「ーーーー!!!!」

「下位種相手の対策が通用するか分からねぇが!!」

光の魔力を纏った双掌で地面を突く。魔力が大地に満ち、無数の光剣が突き立った。
致死性の悪路を形成し、突進を妨害する。騎兵にも転用出来る突進対策の効果は果たして。

「ーーーーっ!!!!!!」

効果ナシ。枯れ枝を折るようにパキパキと折られては、なけなしのプライドも傷つくと言うものだ。
というか、本当にあのミノタウロスの上位種なのだろうか。明らかに耐久性などが段違いで高いのだが。似た外見の別種だったりしないだろうか。
そんな疑問が浮かんでくるほど傍若無人な振る舞いをするミノタウロスは半数がリヒトに押し寄せた。

ミノタウロスとリヒトが揉みくちゃになっている頃、シルヴィアとマナはただひたすらに逃走していた。

「ひぃ…!ひぃ…!インドア大賢者にランニングは厳しいって…!」

「うし、きた」

「分かってるよぉ…!」

ヘロヘロな走りを魅せるシルヴィアに、呆れながらも魔法を掛けるマナ。
妖精の齎す祝福で身体能力が上がっているのだが、悲しいかな。0に何を掛けても0なのだ。

「クソゥ!私が魔力を封じられてなかったら、あんな筋肉ダルマ秒で消し飛ばせるのに!」

悪態を吐くシルヴィアを慮ることなく、筋肉ダルマは獲物を構え距離を詰めた。

死亡判定 判定↓1コンマ


01~10:シルヴィア死亡
11~20:マナ死亡。
21~30:シルヴィア負傷。
31~40:マナ負傷。
41~55:リヒトはみがわりをつかった!
56~95:妨害成功。
96~99:ピンチはチャンス。
00:???

ああ、これは駄目だ。眼前に迫るアークミノタウロスを見て、シルヴィアは諦観した。
リヒトが筋肉ダルマ包囲網を抜け出すのにおよそ10秒掛かる。そんな時間があれば、どちらかが確実に死ぬ。

「…私に、他人を踏み台にしてまで生きる強かさは無いのでね」

人肉を求めてレムカーナまで来たのなら、妖精のマナは興味の対象外のはずだ。そう予想を付けたシルヴィアは一歩、前に出た。

「どうしようもない人生だったが、まぁ。君といた時間は、存外悪くなかったよ。リヒトくん」

「私の夢は既に託している。必ず実現させてくれたまえ。…頼んだよ」

人を疑い、見限ることが出来なかったが故に、翼を失った。他人を踏み台に出来なかったが故に、命を失う。
大賢者の末路としては三流の悲劇だと、シルヴィアは小さく笑い、命を散らした。

人々の羨望を集めた大賢者は、人知れず凶刃に斃れた。
飛び散る鮮血は、惨たらしくも、美しい。
力なく倒れたシルヴィアの遺体を、涎を垂らしたミノタウロスが鷲掴む。

己が非力だったばかりに、死ぬ必要のない者が死んだ。その事実は甘んじて受け入れる。
が、今はまだ、悔やむ時間ではない。
そして何より、目の前の魔物は大事な遺体を喰らおうとしている。そんなこと、絶対にさせるわけにはいかない。

悪夢からようやく解放されたのだ。何人たりとも、その永い眠りを妨げることなど許されない。だから。

「その薄汚い手で、シルヴィアに触れんじゃねぇぇっ!!!!!!」

何度味わったか知れない喪失感と共に、魔剣の力を解き放った。

戦闘 判定↓1コンマ


01~05:マナピンチ。
06~15:戦闘膠着。
16~40:有利。
41~65:ミノタウロス隊撤退。
66~99:ミノタウロス隊全滅。
00:???

たあっ

黒光の流星。死の閃光。そう形容するしかない、禍々しい光が、戦場を斬り裂いた。
血と臓物を散らし、生ぬるい風が吹き荒れる。屍臭の混じったそれは命が無造作に刈り取られた証左であり、圧倒的な暴力に捩じ伏せられた結果だ。

「いっつもこうだ。なんで、俺は喪うんだよ。大切な物ほど、あっけなく失くしてしまう。手から零れ落ちてしまう」

膨れ上がる憎悪は、魔剣の刀身に纏わりついて。深淵の如き光を湛える。
光でもあり闇でもある。度重なる絶望によって目醒めてしまった、リヒトが冥光と呼ぶ破滅の魔力。それが、獲物を見定め、放たれる時を待っていた。

相対するミノタウロスは、死の予感を敏感に感じ取る。これには勝てないと。命が惜しくば、戦利品を捨てて逃げろと。
耳を劈く咆哮が大地を震わせ、ミノタウロスの軍勢は回頭して逃走を始める。
だが、幽者にそれを見逃す理由は無かった。

冥光を纏った魔剣の横薙ぎ。たったそれだけで、命全てが無へと帰した。

生命の消え去った戦場に立つのは、勝者にして敗者の幽者。そして、無感情な妖精。
虚な表情で遺体を麻布に包む幽者は、皮肉にも遺体の回収の手際が良かった。

「ほかのいのちをころすのにころされるのはいやなのね?」

「…生き物はそういうものだ。そこらの魔物も、同じことをやってるだろ」

世界に苦しめられたとは思えないほどに穏やかな顔をしたシルヴィアを抱え、剣を虚空に戻す。
勇者のみが持つという聖剣を見せびらかす意味は、あまりにも大きいからだ。

「にんげんだけよ。たのしむためにいのちをうばうのは」

「…そうだな。それだけは、俺も同意するよ」

人の闇を知っているリヒトはマナの言葉を肯定し、レムカーナへと入った。

レムカーナへと至ったリヒトは、まずは教会に向かった。遺体を抱えたまま行動するのは、悪目立ちしてしょうがない。

「…はい。名前は『シルヴァ・レナ』でお願いします。はい。ありがとうございます」

棺を見繕い、金銭を支払う。かなり重い買い物ではあるが、躊躇うものではないので即決で購入した。
棺の受け取り日を決め、教会を出る。あれほど口うるさかった賢者の声が、不思議と今は懐かしく、恋しく感じる。

王亡き都『レムカーナ』。国王と宰相が『不慮の事故で死亡した(リヒトが殺した)』ため、内政が不安定な大都市である。
そのため、ならず者の数が増えスラムが広がり、と治安悪化の一途を辿っているわけだが、リヒトは心底どうでもよかった。

重要なのは、ここで仲間が増えるか否かだ。シルヴィアもそれを望んでこの場所を選んだのだ。
是が非でも仲間を見つけなければならない。

「…人が一人減っただけで、こんなに寂しくなるもんなんだな」

宿屋の食事を食べつつ、リヒトはそんなことを溢した。

何をするかを↓1にどうぞ。

協力的な者を探す

兎にも角にも人手が足りない。とにかく足りない。全くもって足りない。
幸いにも、ここレムカーナは人だけはいるものだ。その内容は置いといて。

「マナ…は…どうするか。正直いてもいなくても変わらないんだよな。かと言って、同行させたら目立つし」

妖精という存在自体、人里ではまずお目にかかれないものだ。そんなのを引き連れたぼっちの人間など、どう足掻いても注目を浴びてしまう。
それに、無気力な彼女にいったい何が出来るのか。甚だ疑問である。

「…とりあえず、この部屋に待機しておいてくれ。くれぐれも、他の人に見つかるなよ?」

「…わかった」

どこか寂し気なマナを見つつ、リヒトは部屋を退出する。外から、雷の音が聞こえてきた。

「…そろそろ一雨降るかな。その前に用事は済ませたいもんだ」

コートに穴が空いていないか確認し、宿屋を出た。

判定↓2までのコンマ
どこを探索するかを記載してください。どこを探索するかが記載されているレスのコンマで判定します。


01~30:いない
31~99:いた
00:???

酒場

邸宅街

仲間を一人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。

【名前】ミェン
【人種】猫の獣人
【性別】女
【魔法】身体能力強化魔法
猫耳しかない獣人。その耳も片方は半分千切られている。
尻尾がないため故郷で迫害され、耳もその時に傷つけられた。行く宛もなく流れ着いたこの街で隠れつつ生き延びている。人間のコミュニティのなかでは獣人は珍しくため普段は帽子で隠している。
ただ、境遇に反して本人はとてもポジティブ思考。……あるいはもう壊れてしまっているのか

まだ募集してるなら
【名前】アルカ・レジーナ
【人種】人間
【性別】女
【魔法】錬金魔法、全属性(失敗率99%)
見た目は普通の町娘。魔法使いを目指して修行の旅に出たが、使う魔法は失敗ばかりで自分には才能がないと思っている。錬金魔法に関してはこれまでの歴史の中でも指折りの才能を持っているが、本人はまったく気がついておらず、使う気もまったくない。

まずリヒトが足を運んだのは冒険者であれば誰もが利用する施設。いわゆる酒場だ。
冒険者=酒場中毒だということは昔から認知されているし、それは間違ってない。
いつ死ぬか分からない難儀な商売なので、気軽に楽しめる娯楽が人気なのも頷ける。

「…狙い目はあの娘だな」

酒場に入るや否や、リヒトは客を一瞥して目星を付ける。
自身も同じ経験をしているが故に、リヒトには排斥された同類が感覚で解るのだ。

酒場の隅っこでコソコソと小さなジャーキーを齧る女の子は浮浪児のようにも見えるが、素性などどうでも良いのだ。
重要なのは、役に立つかどうか。あと、自分を愛してくれるか。どっちが欠けてもならない。
いっそ清々しいまでにリヒトは自分の欲望に忠実だったが、その原因が彼の置かれた境遇だと知って、それでも罵倒出来る者がいるのだろうか。
もしいるのなら、それは何にも苦労することが無かった、全てに恵まれた人だけだろう。

「やぁお嬢さん。もし嫌でなければ、隣に座ってもよろしいですかな?」

営業スマイルを浮かべ、明るい声で問いかける。少しは警戒されることを想定して返答をいくつか用意していたのだが、それは全てドブに捨てられることになる。

「ボクの隣?いーよっ!」

にぱっと、太陽のような笑みを浮かべた少女は、隣の椅子を指差した。

会話の話題を↓1にどうぞ。

大事な仲間を亡くしたので、悲しさを紛らわす為に誰かと話したかったと語る

内心呆気に取られながらも、平静を保ったまま席に座る。ウェイトレスに安酒を頼み、会話を試みた。

「それで、どうしてボクの隣を選んだの?他の席もまだまだ空いてるよ?」

キョトンとした表情で首を傾げる少女は、小動物のように愛くるしい。
ごもっともな質問にリヒトは頷き、憂鬱そうに答えた。

「君の言う通り、他にも席はある。けど、座る気は無かったよ。面白おかしく話したい時もあるけど、今はそうじゃなくてね」

酒を運んできたウェイトレスに謝辞を述べ、グラス内の氷を指先で弾く。その光景を眺める瞳には、昏い闇が見え隠れする。

「…レムカーナに到着する直前。魔物の軍勢に襲われて、大切な仲間を亡くしたんだ。夢を語り合い、共に為そうと誓い合った、とても大切な仲間をね」

「こんな世界だ。仕方ないことだと割り切りたいさ。けど…どうしても、悲しさだけは消えないから。少しでも紛らわせようと、そう思ったわけだ。…こうして言うと、仲間の代わりに利用してるみたいだね。ごめん」

頭を下げるリヒトに、少女は首を横に振った。その表情からは、慈愛が溢れていた。

「ううん、気にしなくていいよ。…そうやって他人に頼りたくなるくらい辛かったんだね。ボクとお話しして少しでも気が楽になるのなら、喜んで」

「…ありがとう」

今にも泣き出しそうな顔で笑うリヒトに、少女も破顔した。

会話の話題を↓1にどうぞ。

彼女の苦労話を聴く

歓声が飛び交い賑わう酒場の片隅で、ゆったりとした雰囲気の中で会話をする男女のペア。
なにかを感じ取ったのか冷やかしに来る人はおらず、それはリヒトとしても都合が良かった。

ムードは上々。演技がバレているようにも見えない。このまま行けば友好的な関係が築けそうだ。と、自分の観察眼が確かなことに安心する。

「ところで、君もかなり苦労したんじゃないかな?」

「え?」

少し話の流れが強引すぎたか、と内心臍を噛む。が、このまま突っ切ってしまえばいい、と押し通すことにする。

「…いや、俺も苦しんできたことがたくさんあってね。爪弾きにされたり、裏切られたり。だから、解るんだ。同じように苦しんだ人が」

それが声を掛けた理由だと、心中で付け加える。その意図は見抜かれなかったようで、『ミェン』と名乗った少女は驚いた表情をする。

「ボク自身、今は全然気にしてないけど。昔は結構痛い目に遭ったかなぁ。お兄さんにとっては面白くないかもだけど、聴く?」

「もちろん。こっちの話を聴いてくれたんだ。俺も話を聴くのが道理ってものさ」

「分かった」

それから、ミェンは本当に気にしてない風に話をした。何故か、自分が惨めに思えた。

「ボクは元々、遠い山に住む一族の出身なんだ。でも、ボクだけ他の人と見た目が違ってて。色々なことをされたよ」

色々なことがなんなのか。大体予想はついているが、敢えて聴かないことにした。その詳細を聞くことに意味は無い。
今回の会話で肝要なのは、過去の苦しみを共有して打ち解けることだ。苦労話に理解を示し、同情する。
それは、見ず知らずの他人と仲良くなるのに手っ取り早い方法だ。

「それで、故郷を追い出されてここまで逃げて来たんだ。知らないことをいっぱい知れたから、故郷の人を恨んでなんかないよ」

「…そっか。強いな、君は」

「そう?褒められると照れちゃうな…えへへ…」

頬を上気させたミェンは、もじもじしながらはにかんだ。
その可愛らしい仕草は、下劣な連中が見たら劣情を抱かせるに充分な破壊力を持つ。

なんでこんな娘が、ここレムカーナで明るくいられるのか。不思議でしょうがない。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ファーストコンタクトを終了します。

終了する

ある程度の友好関係を築けたところで、交流を打ち切る。欲張っては損をするだけなのは、痛いほど身に染みている。

リヒトは時計をチラリと見やり、グラス内の酒を飲み干した。

「そろそろ夜も更けたので、俺は失礼するよ。ミェンも不審者にお気をつけて」

「もう行っちゃうんだね。じゃあ、ここでお別れだ」

酒場に入る前と比べて、幾分か晴れやかな表情を作ったリヒトは席を立った。
ミェンはヒラヒラと手を振り、店を出るリヒトを見つめ続けていた。

「初動は上手くいったかな。この調子で進めばいいが…」

軽く酔いの回った頭を押さえながら、貴族の住まう邸宅街を目指す。案の定見張りがいたので、必殺のステルスアタックに沈んでもらった。

一時間ほど人捜しをするも、成果が得られずがっくりと項垂れたリヒトだった。

翌朝。やれ襲撃だ。やれ強盗だ。とてんやわんやの邸宅街は、人だかりに溢れていた。
治安の悪い平民街はともかく、見張りや衛兵が常駐する邸宅街は、暴力沙汰が皆無なのだ。
そこで気絶している見張りがいたとなれば、話題になるのも宜なるかな。

「あむ…」

頑なに食事を摂らないマナに近所の青果店で購入した果物を与え、冷や水を飲む。
眠気覚ましにはその刺激がちょうど良く、はっきりと意識が覚醒した。
レムカーナに何日いるかは決めていないが、拠点に戻るからには、何か成果が欲しいものだ。

シルヴィアとの約束を脳内で反芻し、ヴォルグス城で入手したレシピを撫でる。

「…古代語、教えてもらえばよかったかな」

後悔先に立たず。そんなことわざをふと思い出し、瞑目した。

何をするかを↓1にどうぞ。

マナをコートに隠して観光しつつ、妖精の目線で協力者探しを手伝ってもらう

「…へんなにんげん」

「今更だ」

降り頻る雨の中、コートを身につけ外に出る。雨で人通りが少なくなり、絶好の観光日和となった。身体が濡れることに目を瞑れば、だが。

フードを被るリヒトの首元。そのすぐ隣から、ひょっこりと小さな頭が顔を出す。
道行く人々の視線は、特に集まっていない。コート様々である。

「マナ。お前目線で利用出来そうな人がいたら教えてくれ」

「わたしはりひとのやることにきょうみない」

「そう言うな。食いたい物があれば奢ってやるから」

「いらない」

「頼むよ。一生のお願いだ」

「…ならやる」

「サンキュ」

気まぐれな妖精に頭を抱えながら、雨天のレムカーナを練り歩く。
何か、面白いものでもあればいいが。

どこを観光するかを↓1にどうぞ。
マナチェッカー 判定↓2コンマ


01~45:きょうみない
46~99:きょうみある
00:???

高台の庭園

城下に続く長い階段。昔を思い出しながら登っていると、雨は勢いを増していく。
空を見上げてみると雲は更に厚さを増し、帷が降りたように真っ黒だった。
このままだと濡れ鼠だと、リヒトは足早に駆け上がる。振り落とされないように首を掴む、マナの手が割と痛かった。

城門のすぐ側に設置された高台には、庭師が丹精込めて手入れした庭園が広がっている。
色とりどりの花や草木が咲き乱れ、殺風景な城を彩っている。のだが。

「…ひとがつくったしぜんは、ただのにせもの。おもしろくなんてない」

マナのお気に召さなかったようだ。自然と共に在る妖精らしい意見を戴いた。

「これなら、りひとのいえのあたりのほうがまだまし」

「ほう。お褒めいただき光栄でありますマナ嬢」

「………」

マナは無表情を僅かに崩し、悔しそうに頬を膨らませた。その姿は、餌を頬張るリスにどことなく似ていた。

何をするかを↓1にどうぞ。

濡れ続けるのもアレだしハイオクで雨宿り

ハイオク→廃屋
すまん

馬か何か、移動手段を手に入れよう。

空模様は悪化し続け、雨量も増し続ける。視界も塞がる土砂降りの中、リヒトは雨宿りの場所を探していた。

濡れた階段を勢いよく滑り、目についた建物に駆け込もうとするが、どこもかしこも満員御礼だった。

「----♪」

鼻歌交じりのマナは上機嫌だが、さもあらん。雨は自然の恵みだ。それを浴びている現状は、彼女にとって心地良いのだろう。

「うぅ寒い寒い。早く雨宿りしないと風邪引いちまう」

それは妖精にとっての話で、人間からすればいい迷惑なのだが。
コート越しに身体を打ち据える豪雨が、ひたすらに体温を奪っていく。このままじゃまずい、とリヒトはとにかく走った。

そしていつしか、スラム街まで来てしまっていた。
放置されている廃屋のおかげで雨露を凌げるが、スラム街の様子など知らないので不安だ。
願わくば、お馬鹿な悪党に絡まれませんように。

そんなリヒトの祈りは届くのか。当の本人は露ほど期待しちゃいなかったりする。

何をするかを↓1にどうぞ。

ここを根城にしていたミェンが帰ってきたので勧誘する

「あれ」

「おや、昨日ぶりだね」

雨が止むのはいつなのか、と光魔法で鳥を作ったりして遊んでいると、突然声を掛けられる。
想定していたお馬鹿な悪党ではないようで一安心というものだ。もし彼女が悪党なら、それはそれとして遠慮なくぶちのめすが。

「リュクスさんがなんでここに?てっきり宿屋にいるかと思ったよ」

「雨宿りしたくてね。ついでに、スラムがどんなところか見物に来たんだ」

「変な人だね。普通、レムカーナのスラムと言ったら誰も近寄らないのに。…まぁ、だからボクが居座れるんだけど」

ミェンはぼろぼろの椅子を引っ張り出し、それを指差した。どうやらここに座ってもらいたいようだ。
断る理由もないので、リヒトは椅子に座った。ミシミシと音を立てている脚が折れないか心配である。

「それで、ボクに何をしてほしいの?知り合いでも、お代はきっちり頂くからね」

「は?」

「え?」

ミェンの口から出た言葉はあまり気分の良いものではなかった。
浮浪児の少女が一人で生きるのならそういうことをしているのだろう、と予想はついていたが、いざこうして言われると、なかなか来るものがある。

「お客さんじゃないんだね。ごめん、今のは忘れて」

よりによって、彼女の返答がこれだ。隠す気がさらさらなくて、もう笑うしかない。

「…まぁ、そういうことをしてるんじゃないか、とは思ってたが。なるほど、この廃屋で待つのが合図なわけか」

「忘れてよぅ」

ぷりぷりと怒るミェンに小さい笑い、廃屋の並ぶ通りを見つめる。微かに人の気配がするから、どこかに潜んでいるのだろう。

「雨、止まないな」

「こんなに曇ってたらね。おかげで、今日の稼ぎが台無しだよ」

パンの切れ端を齧るミェンは、どことなく哀愁を漂わせている。スラムに住む貧困層など皆こんなものだと言われれば、そうなのだが。

天井を見つめ思考を纏めたリヒトは、意を決したようにミェンを見やり、口を開く。

「なあ、少しいいか?」

「んん?」

パンを飲み込んだミェンは、幽者の声に反応し、顔を向けた。

我ながら馬鹿正直に答えたものだと。のちにリヒトが激しく後悔するミェンの勧誘。

それを聴いていたミェンは、茶化すでもなく、ただ黙々とリヒトの言葉を聴き、意味を咀嚼していた。

「君の知ってる俺とは話し方が違うだろうが、それはご容赦いただきたい。…俺には素性を隠す理由があるもんでな」

「気にしないよ。続けて」

「助かる。俺はリュクスなんて名前じゃない。本名はリヒトつってな。指名手配されてる有名人にも同名の奴がいるだろ?あのリヒト本人だ」

言外にリヒトの正体を言いふらしたらどうなるかを示しているのだが、そこまで伝わっているかは定かではない。
まぁ伝わっていようがいまいが、勧誘することには変わらないが。

「昨日話した、死んだ仲間との約束。内容は言ってしまえば至極単純でな。『出生や性差等に囚われない、正しく才能や努力を評価される国を作る』。他の人には馬鹿にされるような荒唐無稽な夢さ。笑ってくれて構わないよ」

「笑うわけないよ」

真っ直ぐにこちらを見つめるミェンに心中で感謝しつつ、リヒトは手を差し伸べる。

「俺の夢には、足りないものが多すぎる。だから、君さえ良ければ、俺に力を貸してほしい。俺も出来る限りの支援をする。だから、どうか」

二人の視線が交錯し、無言の空間が広がる。瞑目ののちに、ミェンははっきりと答えた。

ミェン勧誘 判定↓1コンマ
本レスよりコンマが高ければ成功です。

難易度高いなあ

コンマさんは主人公がお嫌いのようだ……

「ごめん」

示されたのは、明確な拒絶の意志。ここまできっぱりと言われては、いくら食い下がっても無駄だろう。

「ボクにそんな大役は似合わないから。もっと他に、君に相応しい人がいるはずだよ」

「ごめんね。君は勇気を出してボクを誘ってくれたのに袖にしちゃって…」

「…いや、いい。俺みたいな奴に、普通命なんて預けられないよな。仲間一人守れなかったような、指名手配されてるような奴に。見通しの甘さが知れただけでも収穫だ」

「…じゃあな。風邪、引くなよ」

「うん。君も、体調を崩さないようにね」

頃合いを見計らったように雨が弱まる。リヒトは逃げるようにスラムを去り。
幽者を見送った少女は、最後のパンを口に含んだ。

何をするかを↓1にどうぞ。

かわいそうに思ってくれたのか、マナの手が後頭部を撫でる
(こういうのでもいいですか?)

勧誘がここまで大変となると初めから同志だったシルヴィアの死がかなり痛いな。心情的にも労働力的にも

今回はそのまま進めますが、リヒト主体の行動だと助かります。

分かりました
すみません
ありがとうございます

夕方。宿屋に戻り椅子に腰掛けると同時に、雨がまた降り出した。ここまでひっきりなしに降るとは、明日は快晴になってもおかしくない。もしかしたら、逆に槍や矢でも降ってくるかもしれない。

雨音を聴きながら、ただ時間が過ぎるのを待つ。盛大に勧誘をしくじった今、何もする気が起きない。
食事が運ばれたが、それに手を付けることもせず微動だにしない。石像のように、リヒトは静かにしていた。

数刻後、ゆっくりと船を漕いでいたリヒトは、不意に目が覚めた。机には冷め切った料理が残っており、ランプの灯は既に消えていた。

「…いつのまにか寝てたか」

凝り固まった身体を解すべく立ち上がろうとするが、違和感に気づく。妙に肩が重いのだ。

「おきた」

「んぁ…?なんだ、マナか」

人様の肩に座り込んだ妖精は、その小さな手で人間の頭を撫でていた。あり得ない行動に、リヒトは顔を顰める。何か悪いものでも食べたのか。それとも、頭でもぶつけたのか。

「わたしがねるとき、しる?ぃあはいつもこうしてた。ただそれだけ」

リヒトの疑念を感じ取ったのか。マナは無表情なまま、口を開いた。

「おきたならもうしない。ねる」

そして、それだけ述べると布団に包まり、寝息を立て始めた。

「…情けねぇなぁ、俺…」

誰にも聞こえないほど小さな声量で、幽者は己の無力さを嘆いた。

何をするかを↓1にどうぞ。

魔法学院というのがあるならそこへ

幾らシルヴィアが死んで傷心だったからといって昨日会った子にいきなり勧誘は急すぎたんだ
もっと段階を踏むか危機を救うとかすれば判定コンマは易化すると思うんだ(多分)
何が言いたいかというと早まった申し訳ない!

どこの国にも、魔法を研究し学ぶ機関が存在する。魔法の歴史は人類の歴史であり、そこに隠された真理を探究することは、未来を照らす光明と成る。
レムカーナに存在する同様の機関は、邸宅街に設立されている『レムカーナ王立魔法学院』である。
『真理の果てに希望が在る』。この言葉と共に日進月歩していたのだが情勢悪化に伴い形骸化し、その様相は見る影も無くなった。
中には真面目に研究を進めている者もいるが、真理を追い求める魔法使いの集う神聖で高潔な聖域は貴族のお遊び会場になりかけているのが実情だ。

表向きは『才能さえあれば家柄や身分に囚われず探究を行える平等な学院』ということで通っているため、平民や流浪人、果てはスラム街の住人ですら、この学院に籍を置く者もいる。
内情ははっきり言って『クズの掃き溜め』、『現世に顕現した地獄』と呼ばれる程度には終わっているわけだが。

そのため、現状に鬱屈した感情を溜め込んでいる魔法使いはかなりの数に及ぶ。『誰かこのクソみたいな学院を壊してくんねーかな。私は真理を知りたいのであって、金持ちに媚を売りたいわけじゃないんだけど』と考えている人が大多数だ。

故に、リヒトとしても都合の良い場所だった。上手くいけばワンチャン仲間を増やすことが出来る。惜しむらくは。

「俺魔法使いじゃねーからな。どうやって潜入するべ」

そう。リヒトは戦闘の達人であって、魔法使いでは断じてない。普段使っている光魔法も、実際は理論など関係なしに魔力量で取り繕った、俗に言うごり押しで形にしている魔法なのだ。
尤も、その魔法で大概の敵は昇天したわけだが。やはり暴力は全てを解決する。

リヒトが戦争の中で知った真理。それは、力こそパワーであり圧倒的な暴力こそジャスティスだというあまりにもあんまりな結論だった。

レムカーナ王立魔法学院で何をするかを↓1にどうぞ。

燻ってる不満分子を見定める

「悪いな。ちょっと眠っててくれよ」

運悪く幽者の目の前を通り過ぎた学院の生徒は、ボッコボコに殴られて夢の中にいる。
真っ黒な包帯を巻いていたり頭蓋骨が刺さった杖を持っていたりと色物感が否めないが、リヒトには却って好都合である。
素性を隠し堂々と学院に潜入する手段を得た。ならば、次にするべきことは。

この学院には火種が大量に燻っている。その原因は貴族の横暴なのだから、彼らがどうなっても自業自得と鼻で笑われるだろう。
だが、所詮は火種。派手に燃え上がっていない今は、水面下で慎ましく行動するしかない。
そういう後ろめたい隠しごとをしていれば、態度に僅かながらに表れるものだ。それを見抜けば良い。

恨むなら貴族を恨め。そう念じながら、生徒の身ぐるみを剥ぐ。意外なことに、風変わりな魔法使いは相当の美人だった。

判定 ↓2までのコンマ


00~40:見つからない
41~80:個人発見
81~99:コミュニティ発見
00:???

うーい

仲間を二人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。

【名前】ミミル
【人種】兎の獣人
【性別】女性
【魔法】生命魔法
若くして魔法学院で研究者の立場に就く才媛で、生命力に干渉して回復や吸収、探知などを行う生命魔法と医学のエキスパート。
白い髪と赤い瞳、シミ一つ無い白い肌。兎の耳と尻尾。背丈や顔立ちは10代前半に見えるほどだが、豊かな胸やくびれた腰回りなど早熟な体つき。つり目がちな目付きと生意気そうな雰囲気がある顔立ち。
白衣と学院の制服。
プライドは高いが善良な気質の努力家で、研究の動機も医療で人命を救うためというもの。口調は丁寧だがかなりの毒舌家。
医療の道を志しているため流血やグロには耐性があり、いざという時には機転もきく。
彼女の研究は生命魔法と医学の併用による再生医療で動物実験の段階では四肢と臓器を失なった(抜いた)モルモットを完治させている。
しかし、ナンパしてきた貴族を袖にしたところ研究費の減少や妨害、嫌がらせなどが始まり現在研究は行き詰まっているため、貴族に怒りを抱いている。
なお、売女と陰口を叩かれているが、逃げ足が速く恋愛経験もないためいまだ清い体である。

【名前】ウィンディ・ヴァルマンウェ
【人種】人間
【性別】女
【魔法】風魔法
長い緑の髪を二つ結びにした小柄な少女。以前にシルヴィアの教えを受けていた魔法使いの一人
一見陰気だが、根には他者の痛みを理解して共感できる知性と優しさを持つ
また、魔翌力量が非常に大きく、魔翌力操作の精密性も極めて高い。反面体はとても弱く、頻繁に体調を崩す
風を操ることで空を飛ぶことができ、馬車一台分程度の荷物であれば空輸させることも可能。単独飛行はほぼ無制限に行えるが、荷運びはとても疲れため多用できない
平民の出であり、病弱なことや才能への嫉妬などにより他の魔法使い(主に貴族層)から嫌がらせを受けることが多い
シルヴィア失踪後は嫌がらせが一層増えたため学院を出ることも考えたが、何の後ろ楯もなしに病弱な自分が外で魔法使いとしてやっていけるとも思えず、毎日心身を磨り減らしながらなんとか生きている
こういった事情から、自身の人生や世の流れにはかなり悲観的

シルヴィア繋がりみたいなのは割と考えやすいね
良くも悪くも影響力強かったはずだし

レムカーナ王立魔法学院の生徒に扮装したリヒトは、意気揚々と学院内を練り歩く。人選は間違っていなかったようで、特に怪しまれてはいない。
近くを横切っただけなのに『うわでた』だの『こわ…近寄らんとこ…』だの散々な言われようだが。本人の扱いが伺えるし、流石に同情する。

「………」

包帯に染み付いたお香のような匂いに精神的ダメージを受けながら、生徒の様子を観察する。
貴族のグループで談笑する女性たちの目は全員死んでいたが、それ以外に怪しいところはない。
早々に見切りを付け場所を変える。複数ある研究棟なら誰かいるだろうと淡い希望を抱いて。

果たして、その希望は成就することになる。

「…はぁ」

開きっぱなしのドアから、こっそりと内部を覗く。薬の匂いと学院に似つかわしくない血生臭い臭いが混ざり、本能が嫌悪する悪臭が漂っていた。
戦闘で培った胆力を以って不快感を抑え込む。が、それでも辛いものは辛い。
顔を顰めていたリヒトは、その惨憺たる光景に絶句した。

研究用に飼育していたと思しきモルモットは惨たらしく殺されており、趣味の悪いことに、モルモットから引きずり出された内臓で、罵詈雑言が書かれていた。犯人の性格が悪すぎて笑えない。

被害者は溜め息を吐き、黙々と遺体を壺に入れている。あまりに痛ましい姿は目に入れることすら憚られた。

ミミルにどういうコンタクトを取るかを↓1にどうぞ。

遺体処分や清掃の手伝いを申し出る

床にへばり付いた臓腑に薬品を掛け、布で丁寧に拭き取る。そんな地味な作業を泣き言や文句一つ言わず、健気に悪意の犠牲者を弔っていく。

見ているだけというのも気が引けたので、リヒトは手伝いを申し出ることにした。

「一人でこの数はしんどいだろ。俺も手伝うよ」

「…ギムレインさんの恰好なのにどうして男性の声がするんですか?????」

「やっべ忘れてた」

自分がレムカーナ王立魔法学院の生徒に扮装している不審者だということを忘れて。しかも、元の人物は変人かつ女性だ。
そんなのに成りすましている時点でどう取り繕っても変態にしかならない。つまり詰んでいる。

「…これにはそこまで深くない理由(わけ)があってだな。説明は後で必ずするから、まずはその死体をどうにかしないか?放っておいても臭いが染み付いたりで良いことないだろ」

「…それもそうですね。事が終われば通報しますのでそのつもりでお願いします」

「それは勘弁してください」

死人が大量に出てしまいます。と心の中で付け加えながら、リヒトは通報しないように懇願した。
ものすごく呆れた表情をしていたが、渋々といった感じで了承を得ることに成功した。

「…随分と手慣れているのですね。嫌悪感は無いのですか?」

手際よくモルモットの死体を壺にぶち込んでいくリヒトに、訝しむように少女は問う。逡巡の後に、口を開いた。

「昔は色んな戦場を転々としていたからな。そりゃ、嫌でも慣れるものさ」

仲間だって何人も弔った。罪の無い人々の亡骸も、集団墓地に埋める最後の仕事まで務めた。それが、せめてもの償いだったから。

「そうですか。不躾な質問をしたこと、お詫びします」

律儀に頭を下げた少女だが、リヒトは気まずそうに頬を掻く。リヒトからすれば、別に気にされるようなことではないのだ。

「頭なんか下げんな。そもそも俺は不審者なんだから、気を遣う必要なんてねぇよ」

「なら今すぐ教師を呼んできますのでお待ちを」

「それだけはやめてくれ。流血沙汰になっても責任取らないからな」

誰の血が流れるのか。それだけは伏せておく。堂々と言えるほど、リヒトは図太くなかった。

モルモットの詰まった壺を抱え、学院東部の人工林に入る。植生の研究も兼ねているようで、かなり立派な木が所狭しと生えている。
その中に、木の板で作られた簡素な十字架が立っていた。ここが何なのかは、見ただけで解る。

「…ありがとうございます」

地面を掘ると、両手では足りない数の壺が埋められていた。持参したものを同じ場所に供え、また埋め立てる。
少女は部屋に栽培していた花をそっと添える。柔らかい匂いが鼻を擽った。

「ご助力感謝します。私一人では、ここまで効率よく済ませられませんでした」

「別に。あんなのを無視するなんて、人としてどうかと思っただけだ」

「不審者のくせに何を言ってるんですか。今更すぎません?」

「うるせー…」

彼女には口喧嘩では勝てないとこの短時間の会話で察してしまった自分が悔しい。と、後にリヒトは語る。シルヴィアに勝つことも到底不可能だった口撃力0のリヒトに、勝てる相手がいるのか甚だ疑問だが。

ミミルと何を話すかを↓1にどうぞ。

こいつ(服の持ち主)はどんなやつなんだ?
どうも避けられるんだが

「…ところでさ」

「はい」

「この服の持ち主どんだけやべー人なんだ?どうにも避けられてて気になるんだが」

自分を指差しながら問うリヒトに、ミミルと名乗った少女は呆れていた。

「ギムレインさんを知らないんですか。学院では有名な方ですよ」

「へぇ。どんな感じに有名なんだ?」

「呪詛魔法の研究者です」

なるほど。怯えられる理由が分かった。そりゃ近寄られたら怖いよな。リヒトはミミルの解答に疑問が氷解し、大きく頷いた。

「『自分にセクハラをした貴族や教師を呪死させた』、『魔法の研鑽のために故郷を呪って滅ぼした』との噂もありますよ。所詮は噂なので、確証はありませんが」

「………」

こんな噂が流れていて、平然と学院に通えるギムレイン嬢の精神力に、リヒトは心の底から震え上がった。

ミミルと何を話すかを↓1にどうぞ。

ミミルはどんな研究を?

色々な意味でとんでもない逸材のギムレイン嬢をしばいてしまったことを内心謝罪しつつ、次の話題へシフトさせる。
このままここにいない人の話で盛り上がっても、リヒトに何のメリットも無いのだ。

「ミミルはどういった研究をしてるんだ?モルモットを飼ってたってことは、薬関係か?」

「再生医療です。生命への干渉を可能とする生命魔法と、傷病を治療する医学を併用し、人命を救う技術です」

「すごいな。その再生医療とやらは、どこまで治せるんだ?」

「まだ臨床試験もしていない…志願者がいないので、動物実験の成果のみになりますが…。両前脚と消化器官を摘出したモルモットを完治することに成功しています」

「…完治?腕も内臓もそっくり再生したってのか?」

「ええ。貴方に埋葬していただいた子が、その被験体でした」

「…なるほどな」

下劣な輩によって命を奪われた数匹のモルモット。散乱していた内臓の量からして、彼女の言葉を真とするならば、確かに再生していたのだろう。それだけの量の内臓が、あの部屋には散らばっていた。

「…尤も。研究がこれ以上進むことは無さそうですが。彼らにとっては、人命よりも自信の悦楽の方が重要なようです」

あれほど陰湿な仕打ちを受けているのだから、彼女の現在の状況も想像がつく。
大方、このツンツンしている少女に惚れた男が、フラれた腹いせに嫌がらせをしているのだろう。
嬲ったりせずにネチネチと姑息な手を使っているのを、最後の良心が残っていると言うか卑怯者と言うか評価は別れるが、人間性が悪いことに変わりはない。

「…あの時の俺なら、有無を言わさず殺してただろうな」

世界に絶望しきり、破滅的な生活を送っていた時期が、リヒトにはあった。
当時の自分であれば、こんな話を聞いていたら即座に手を出していたことは想像に難くない。
昔と比べたら随分と堪え性があるものだと、自嘲気に笑う。

「一人で何笑ってるんですか。気持ち悪いですよ」

そして、刺々しい毒を浴びた。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ミミルとのファーストコンタクトを終了します。

ここはいったん終了

(再生ってミェンと繋げられるんかなーって思ったけど尻尾どころか耳の事情さえ聞いてなかったわ厳しいか)

学院中央に聳え立つ巨大な時計塔に視線を移すと、扮装してからきっかり30分が経過していることを示していた。
あと数十分もすれば目を覚ますだろう。それまでに事を済ませねばならない。

「俺はもう失礼するわ。後生だから通報だけは…」

大人が自分より年下の女の子にぺこぺこ頭を下げる情けない姿。それを見ながら、ミミルは首を横に振った。

「私はギムレインさんと話をしただけです」

そんなことを言って、彼女は口を閉ざした。目も瞑っており、見ざる聞かざる言わざるを決め込んでいる。
この態度が明確な返答であり、彼女の優しさとも取れた。

「…サンキュ」

リヒトは頭を下げ、音もなく姿を消す。気配が無くなったのを感じ取り、目を開く。
そして、溜め息混じりに言葉を漏らす。

「人を救いたい。その無垢な思いは、人の欲望一つで無惨に踏み躙られるべきものなんでしょうか」

少女の独白は、虚空に溶けた。

ミミルの元から遁走したリヒトは、学院正門まで戻って来ていた。タイムリミットは刻一刻と迫っているので、無駄な時間は過ごせない。
効率よく内部を調べねば、と意気込み、一身に浴びる視線を無視して学院内を走り回った。それはもう走りまくった。
翌日からは『俊足の奇行師』などと呼ばれかねない不幸なギムレイン嬢に、後ほどお詫びのお菓子を差し上げよう。そう心に決めた。

そんなこんなで爆走していると、近くの保健室から人の気配がした。

「………」

ベッドに横たわり、虚な目で天井を見つめる緑髪の少女。カバンからはぼろぼろの手紙が顔を出しており、枕元にも同様に傷ついた書物が置かれている。

彼女以外に人の気配は感じられない。保健医さえも、この場にはいないようだ。利用者を置いてどこかに行くなど職務怠慢な気がするが、却って好都合なので黙っておく。

「けほ…」

咳き込む少女の顔は赤く、息は荒い。もしかしなくても風邪を引いている。

「最後に風邪引いたのいつだっけな」

ふと気になり記憶を辿るも、風邪を引いた記憶は欠片も無い。そもそも、病気にかかった記憶が無い。
昨日だってあれほど濡れたのに、熱っぽさは一切無い健康体だ。頑丈な身体を持っててよかった。
そんな場違いなことを考えていると、窓が開かれた。

「…誰ですかぁ!?」

「おわぁぁぁぁっ!!?」

突然の大声に驚いたリヒトは窓際から墜落するが、光の翼を生やして何を逃れる。
真っ黒な包帯を巻いて骸骨付きの杖を持った変態からさらに光輝く羽が生えた変態にランクアップした変態を見て、少女は絶句する。
どう弁明するか悩むリヒトだったが、もう手遅れなことに気がついた。

ウィンディと何を話すかを↓1にどうぞ。

自分のことは誤魔化しつつ、水や薬や氷枕など必要なものがないか訊いてみる

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空中で腕を組み、仁王立ちをしたリヒトは、威風堂々とした覇気を纏い、威勢よく吼えた。

「今は俺が誰かなんてどうでもいい!!!!」

「よくないです!ぜんっぜんよくないですよ!!?」

少女は首と手をぶんぶんと振り否定するが、リヒトは知ったことかと無視を決め込む。

「うるせぇ!今の君に必要な物があるならなんでも持ってきてやるから言えってんだ!!!!!」

「言ってることの割に語気が強すぎる!優しいのか怒ってるのか分かんない!…お水と身体を冷やせる物をお願いしますぅ」

「合点承知」

要望を聴き受けるや否や、放たれた矢の如くリヒトは駆け出す。呆気に取られているのも束の間、光と共に不審者は帰還した。

「速すぎません?」

「速いと困ることがあるんですかぁ!?」

「逆ギレ!?」

荒々しい言葉遣いの不審者に病人は狼狽えてばかりだが、これもリヒトの思惑の内だったりする。
自身のことを訊かれないように、ツッコミどころを量産して誤魔化す姑息な手である。
思惑通り、少女はリヒトの正体について問うことはしなかった。代わりにげっそりしているがたぶん大丈夫だろう。

「…えと。少し失礼しますね」

濡れたタオルと水筒を受け取り、少女は頭を下げながらカーテンを閉めた。

ウィンディと何を話すかを↓1にどうぞ。

保健医はいないのか聞く

「お見苦しいところをお見せして失礼しました」

数分後、カーテンを開けた少女は恭しく謝罪をした。気にするなとリヒトは答え、頬を掻く。
ベッドに腰掛け、窓を見る少女。『ウィンディ・ヴァルマンウェ』と名乗っていた彼女は、なおも謝罪を続ける。

「見ず知らずの貴方の手を煩わせてしまったことも詫びなければなりませんね。他人に迷惑を掛けてばかりの自分が嫌になります」

「迷惑には思ってないけどな。たかがお使い程度で機嫌を損ねるほど、俺は子供じゃないつもりだ」

と、つっけんどんな態度を取っているが、これが照れ隠しでしていることなのは本人も自覚している。
仕事柄、感謝を受けることには慣れていたのだが、素直に受け止めるのが苦手な難儀な性格をしたお子ちゃまであることも自覚していたりする。どうせ矯正は出来ないと諦めているが。

「…んで、何故ここには保健医がいないんだ。病人がいるのに留守にするなんて、おかしいだろ」

「昨日に雨が降ったからです。雨が降った翌日は、決まって体調を崩してしまうので。私みたいな人の面倒を見たくないんでしょう」

「だから、いつもここにいる時は一人ですよ。貴方が気にすることではありません。私も気にしてないですし」

「…そうか」

そう呟き笑うウィンディの顔は、あまりに儚くて見るに堪えなかった。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。

他に体のことを気遣ってくれる友人や教師はいないのか聞く

「いるわけないですよ?」

身体のことを気遣ってくれる友人や教師はいないのか。試しに質問をしたリヒトだったが、猛烈に後悔している。
いくらなんでも返答が速すぎる。それが当然の摂理かのように、ウィンディは答えた。

「私みたいなすぐ身体を壊す魔法だけが取り柄の病弱体質の面倒を見てくれる優しい人なんている方がおかしいですよ。貴族の方たちの嫌がらせを現在進行形で受けているので厄介事に巻き込まれたくない人は私を避けてます。つまりぼっちです。まぁこれは入学当初から変わってないんですけど」

「速い速い」

捲し立てるように喋り続けるぼっちに、不審者は頭痛がしてきた。このまま不幸話を続けさせても気が滅入るだけなのだが、何故かウィンディはハイテンションである。
熱で頭がおかしくなっているのかもしれない。

「唯一こんな私を慮ってくれてた先生が一人だけいたんですけど、去年から手紙がぱったりと届かなくなって。何度も何度も何度も何度も何度も何度も送っているんですけど、現在も音信不通だしその人は反逆罪で死刑になったとかもっぱらの噂だし。やっぱり私に関わった人は皆不幸になる運命なんですかね…」

乾いた笑いを浮かべるウィンディ。リヒトはただ、押し黙っていた。
血の繋がった家族からすらも愛されず、存在を抹消されかけた彼は、理不尽に苦しむ者に掛ける言葉を見つけられない。知らない。
故に、口を噤んでしまった。どんな言葉をかけても意味がないと解っていたから。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。

もし、願いさえすればこの状況を壊せるとしたらどうするか聞く

願望 判定↓1コンマ


奇数:願ったところで…
偶数:終わるのだとしたら…

どうなる

「…実を言うと私、この学院にいたくないんです。何をしても嫌がらせばかりされて、誰にも認められないで。ここから逃げることも考えました。けど…。見ての通り、私は弱々しいので。学院の外に出たとしても、魔法使いとしてお役に立つことなんて出来ないから…」

故に、心ない罵声を浴びて精神を磨り減らしていてもこの学院に留まっている。抜け出せずにいる。
そんなに嫌なら逃げればいいと、悪魔の囁きをするのは簡単だ。だが、それで逃げられるのならどれほど楽なのだろう。
彼女の言う通り、逃げられずどうしようもないから、彼女はこうして苦しみ、精神を摩耗させながら生きているのだ。
甘い言葉で唆し学院から去らせたところで、彼女に良い影響は無い。もがきながらも必死に生きている少女の今までを否定するのと同義だ。
彼女自身の意志で選ばせる必要がある。束縛から解放され世界に反旗を翻す、修羅の道を。

「…もしも。願うことで状況が変わるとしたら。この苦しみを終わらせることが出来るのなら。ウィンディ・ヴァルマンウェ。君はどうする?」

「変革を願い、苦難の待ち受ける修羅の道を征くのか?それとも、腐りゆく世界の中で、終わりが来るのを祈りながら耐え忍ぶのか?」

故に、問う。彼女の答えを。心の叫びを。

包帯を外したリヒトは、その紅い眼差しを少女に向けた。意志を、魂を見定める紅眼は紅玉のように煌めき、それでいて闇を孕んでいる。

「わ、私、は…」

温度が急低下した視線を受け、ウィンディは微かに震える。風邪の影響もあるだろうが、その主因は恐怖だ。
心の奥底に押し込めていた、真なる感情。それを見抜かれているような錯覚を感じており、恐怖を覚えていた。

だが、不思議と忌避感は感じられなかった。躊躇いこそ心中にあるのだが、打ち明けてしまおうという意志の力が少しずつ勝っていく。
まだ、つい最近会ったばかりの変人にして、学院に不法侵入している不審者だというのに。
心のどこかでは、彼を信用してもいいのかもしれないと、警戒心を緩めている自分がいるのかもしれない。

「…変えられるのなら、変えたいです…っ。壊してしまいたいです…っ!こんな、人を踏み躙って快楽に溺れるのが是とされるような、世界なんて…」

「そして、こんな世界に圧し潰されているのに、仕方がないって諦めてる自分…も…!!!」

涙でぐちゃぐちゃになったなりながらも、ウィンディは必死に言葉を紡ぐ。嗚咽混じりではあったが、だからこそ。彼女の真意を聞き届けることが出来た。

「君の勇気に感謝を」

勇気を振り絞った勇敢な少女に、幽者は柔らかな微笑みで応えた。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。
また、継続する場合は今回の会話がファーストコンタクト最後の会話となります。

周囲に自分たち以外誰もいないことを確認し、素顔を晒して真の名を名乗る

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勇気を以って応えられたなら、こちらも勇気を以って応えるのが道義というものだ。
先日のことを思い若干逡巡を見せるが、迷いをすぐさま断ち切り、ウィンディを見る。

「まずは、君にだけ名乗らせて、自分だけ名乗っていなかった無礼を謝罪しよう」

「あ、いえ。それは大丈夫です。不審者が名前を名乗るってそれはそれでおかしいですし」

不審者であることは否定しようがないのだが、ここまではっきり言われると対応に困るものだ。
リヒトは苦笑しつつも、台無しになりかけていたシリアスな雰囲気を取り戻す。

「…俺が謝りたいことは素性を伝えていなかったことだけじゃない。レムカーナの現状は、俺が招いたと言っても過言じゃないんだ」

「えっ…!?」

今明かされる衝撃の事実。少女は自身の耳と正気を疑い、頬を抓る。痛みを感じ現実だと理解したようで、目を白黒させていた。

「う、嘘ですよね?」

「嘘じゃない。国王と宰相らの不審死…それに関わってた…いや、この言い方は逃げだな。二人を弑したのが俺だ」

「特級指名手配犯…『光燿の勇者リヒト』。その名が示すのは俺自身であり、俺こそが嘗て、勇者の名声を欲しいままにしていた英雄の残穢なんだよ。輝かしい功績ばかり語り継がれていた英雄の…真実の姿がコレなんだ。失望しただろ?」

憂いを帯びた笑みを浮かべたまま、リヒトは聖剣を取り出す。これこそが勇者たる証であり、背負いし罪の象徴である。
白銀の刀身に金色の装飾があしらわれ、光の魔力が剣から溢れ出して空へと還っていく。
神聖さすら感じさせる風貌をした剣だが、その輝きは夥しい数の命を喰らった証左だ。
首を刎ね命を喰らう度に輝きを増した聖剣は、魔剣へと堕ちるに足る素質を持っていた。
故に、リヒトが混沌に堕ちると同時に聖剣も魔剣へと転じた。
ちなみに、聖剣と魔剣が表裏一体の同一の存在であることを知っている人はもうこの世に一人しかいない。
とは言っても、その一人とは聖剣(魔剣)の所有者である勇者(幽者)リヒト本人だけなのだが。

聖剣の存在をウィンディの目に焼き付けさせ、直ちに虚空へ格納する。部外者への身バレを防ぐための措置だ。
どうせバレてしまうことではあるが、可能な限り人数を最小限に抑えておきたい。今後の活動が面倒になっては敵わないのだ。

「…時間だ。俺はもう行くよ」

やるべきことは終わった。そう胸中に吐き出したリヒトは、姿を消した。

レムカーナ城から広がる水路の脇。まず人が通らないであろう静寂の広がる場所に、全身を縄で縛られた魔法使いが倒れていた。言うまでもなく事件である。

「う…ううむ…」

意識を取り戻した魔法使いは、身体を倒したまま周囲を見渡す。身動ぎ一つ出来ないが、特に慌ててはいない。これもまた、彼女の日常なのだ。
自身の身体に目を移すと、素肌が露わになっていた。普段身につけている包帯がそこにはなく、全身に刻まれた刻印が存在を主張している。

「ふむ?頭は痛いがそれ以外に不調は無し。暴行に遭ったのだろうが、純潔を散らしたわけでもない、か。むむむ?」

現状を把握すればするほど納得がいかなくなる。身体目当てで暴行を加えたのかと思ったが、そういった形跡は無い。服が盗られただけだ。ついでに言うなら杖も無くなっているが、どういうわけか猛スピードでこちらに接近している。所有者の手元に戻ってくるような魔法は掛けていないのだが。

首を傾げていたギムレインの元に、この問題行動を引き起こした首魁が戻ってきた。

「おっ。目が覚めてたか。結構強めに叩いちまったんだが、存外強靭だな」

「被害者の元にわざわざ戻ってくるとは。豪胆だね」

紙袋を片手に持っている男性は、特に焦った様子も見せず平然としたまま近づいてくる。
僅かに警戒するギムレインだったが、それはすぐに解かれた。

「お詫びの品です。どうぞお受け取りください」

「?????」

杖と包帯一式、オマケに出来立てのクッキーが詰まった袋が差し出されたのだ。意味がわからない。本当に意味が解らない。

「意味が解らないならそれでいいんだ。じゃあな!!!!!」

ギムレインが疑問に唸っているとそこで初めて、犯人は慌てた様子で逃走する。あまりに速く逃げられたせいで、逃げ始める瞬間を見逃してしまった。

「…よく分からないけど、私に何かしたのならちょっと呪いを掛けとこう」

膨れっ面のギムレインは、杖を片手に魔法を詠唱した。

翌日。腹痛と下痢に苦しんでいるリヒトは、げっそりとした表情で食事をしていた。
死にかけているリヒトを見かねたマナが祝福を与えているが、快方には向かっておらず、なおも瞳は濁ったままだ。

「…なんだこれ。新手の呪いかよ…。呪いなんて掛けられるようなこと、した覚え無いんだけどな…」

腹をさすりながら、リヒトは備え付けのカレンダーに目を通す。
レムカーナに滞在して、既に数日が経過していた。

リヒトがレムカーナに辿り着いてから、様々な事件が発生している。見張りが闇討ちに遭って一週間の入院生活を余儀なくされたり、レムカーナ王立魔法学院に在籍している魔法使いが暴行を受けたのちにお菓子をもらって釈放されたり、学院に不審者が侵入してゴミ掃除や病人を介抱したり。その犯人が誰かは言うまでもないだろう。
警備の目も厳しくなっている。そろそろ、偽名を使っていようと正体に勘付かれる頃合いだ。

「潮時、か…」

今日の夜。それがタイムリミットだと、リヒトの勘が告げていた。
後悔しないように、為すべきことを為さねばなるまい。

何をするかを↓1にどうぞ。
↓1コンマが奇数ならレムカーナから撤退、偶数ならあと一回だけ行動権があります。

魔法学院の半壊を手土産にウィンディを共に来ないかと迎えに

BGM:Critical Drive
https://youtu.be/9iMyp7k53Rs

快晴だった空模様が打って変わり、瀑布の如き雷雨が降り注ぐ。その雨はまるで、天が、神々が嘆いているようで。
レムカーナの住人は不安に思いつつ、家に籠もっていた。それでも健気に巡回を続ける兵士たちの愛国心には脱帽する他ない。

そして、雷雨の中を一筋の光が駆けていた。

「…ふぅ」

これから始まるお祭り騒ぎに備え幽者は臓腑に溜まっていた息を吐き出し、魔力を研ぎ澄ます。

もう、後戻りは出来ないのだ。恐れるな。自身の為すべきと思ったことを、為し遂げろ。他人の都合など考えずに、己の意志で。
今までだって、そうしてきたのだろう。
行為の正しさを自問自答し、決意を固める。

シルヴィアがいたなら、大爆笑していただろう。『たった一人の子供のために、またレムカーナを敵に回すのかい。君は頭のネジが外れまくってるねぇ』と。
反論のしようがない。全くもってその通りだ。
だが、こうも言うだろう。『君が望むのならそうしたまえ。才能を摘み取る愚を犯すような学院、滅んだとしても誰も文句は言えないさ』と。

「…くく。つくづく俺は、大切な人を喪ってきたな」

『慈愛の聖女クロエ・フィアリス』。『彼岸の大賢者シルヴィア・レイナス』。他に喪った人は数えきれない。
喪ったものは決して戻らない。だから、その喪失は無駄ではなかったと。必要なものだったと。割り切るしかない。たとえ、割り切ることが出来ない不条理な死だったとしても。
彼女たちの死に意味があったのだと、信じたいから。

「俺はどうせ、地獄に堕ちる。君たちはきっと、天国からここを見てるんだろう。なら、見届けてくれ」

勇者と慕われた者の末路。三流にも劣る悲劇の結末を。もう、会話など交わせない。だから、これが。この無様な生き様こそが餞だ。
漆黒の意志を秘めた双眸が、黒天の空を見上げた。

200年もの由緒ある歴史を持つレムカーナ王立魔法学院。邸宅街の二割の占める敷地を所有している世界でも有数の魔法学院は今、未曾有の危機に瀕していた。
誰もが勘弁してくれと懇願しやつれること必至の、紛う方なき大災害が冗談抜きで突然襲い掛かった。

「ぎゃー!」

剣の一振りで光の奔流が波濤のように押し寄せ、なんとか反撃しようとしたら得物が光の刃で切断される。不可避の理不尽がやりたい放題をしていた。
レムカーナ王立魔法学院の取り壊しという暴挙をやらかしている下手人の配慮なのか、はたまた命の責任を取りたくないだけなのか。
派手に盛大に吹き飛ばされている警備兵や生徒は、目立った外傷も見られず命に別状は無い。ただ全身が痛くて動けないだけだ。

「とっ止めろー!どんな手を使ってもいいからこの大馬鹿野郎を止めるんだー!!!」

貴族の連中があたふたしながら指示を飛ばす。その場にいた全員がマジかよお前といった視線で睨んでいた。
取り巻きの数人がやる気を感じられない魔力の鎖を放つ。リヒトはそれを甘んじて受け入れ。

「ふんっ」

小手先の技など使わず、圧倒的なパゥワーで引き千切った。
貴族に向けられていた呆れを含んだ視線は、何故かリヒトに向けられる。

「無理矢理『魔力の鎖(マジックチェーン)』を引き千切るって…。えぇ…?」

「もしや蛮族か何かでいらっしゃる?」

「こんな蛮族いるわけねぇだろ」

知性を疑う質問を一蹴し、リヒトは作業を再開した。

騒ぎと爆音を聞いて駆け付けた教師陣による高威力の魔法の雨霰。それを光の翼で耐え、カウンターに百を超える光弾をお見舞いする。
知識を身に付け、ただただ研鑽を重ねた強大な魔法は、膨大な魔力量に裏打ちされたごり押しと言う名の暴力で無へと帰した。やはり力は全てを解決する。
増援が到着するや否や、光弾を浴びて地べたに大の字で寝そべっていく光景はいっそ喜劇的に見える。

大講堂が爆発四散し破壊作業が一区切り付いたところで、ある生徒が口を開いた。

「あの剣…勇者が持ってるっていう聖剣なのでは?」

生徒の発言で空気が凍る。リヒトとしては、この行動を起こす時点で正体バレは確定だと思っていたので、特に気にしていない。
寧ろ、肯定した方がより騒動が大きくなり、衛兵たちもやりにくくなるだろうと考えていた。ので、首肯を以って答えとする。

「ゆゆゆ勇者ぁ!?!!!!国王たちを殺したっていうあのイカレポンチじゃないですかぁ!!!」

「無理!そりゃ止められるわけない!」

「貴族の首が欲しいならどうぞ持っていってください!だからどうか私たち一般庶民は見逃して!」

「俺を売るのかよ!?お、俺を殺したって王殺しほどの悪名は得られないぞ!!!」

好き勝手に物を言う観客に辟易し、リヒトは営業スマイルを浮かべて恐怖心を和らげさせるように言う。

「この学院を潰す以外に目的は無いから安心してくれ」

観客が全員、涙を流しながら蜘蛛の子を散らしたように逃散した。寛大な慈悲に感謝していたのだろう。たぶん。

爆音轟音が鳴り止んだ後。保健室をリヒトは訪れる。予想通り、彼女がいた。

「あ、リヒトさん」

素顔を見せたままのリヒトを見て、素性を隠す必要は無いのだと判断したウィンディは、臆することなく名前を呼んだ。

例によって保健医は逃げ出しており、ここなは二人しかいない。絶好の機会と言う他ない。
だが、どう誘えばいいのか。リヒトは頭を悩ませる。
ミェンという失敗例があまりにも大きいため、リヒトの決心は足踏みしていたのだ。

こういう時こそシルヴィアがいればとも思うが、たらればを言っても現実は変わらないことは解っている。

「リヒトさん?」

小動物のように首を傾げる少女と、暗い表情をしている絶賛逃走中の指名手配犯。
誰も関わりたくない光景が、そこにはあった。

ウィンディ勧誘 判定↓1コンマ
本レスよりコンマが高ければ成功です。
また、↓3までにウィンディに投げかけたい言葉を募集します。


願望成功補正:↓1コンマに+20

今一度、問おう
変革を願い、狂った幽者と共に茨の道を征く覚悟はあるか?

いや、天災……そう天災が学園を蹂躙しただけ、君を虐めている暇も余裕も貴族方からは無くなったろう、少しは過ごしやすくなる、このままお別れの方がいいかな


(素のコンマさん厳しい、が補正と回数で頼むクリアしてくれろ!)

やったぜ。
ミミルとできればギムレ嬢も勧誘したい(強欲)

どんな者でも当たり前に愛されることができて、出生や性差等に囚われない正しく才能や努力を評価される世界を作りたい。前半は俺だけど、後半部分は大切な仲間から託された夢なんだ。
俺は……俺たちは、その為に戦っている。
まあ、今実働してるのは俺だけなんだけどな。

ちょうど良さそうなのでこの二つで〆にします。
あと、ギムレインは仲間になりません。名前があるだけのモブなので。

あら残念
モブの割にはキャラが濃かったからなんかあるのかと思ってた
おつ

「…その、なんだ。俺がここまで来たのは、君と雑談をするわけじゃない。それくらいは見て分かるだろうが」

「…はい。漂っている魔力から解ります。無茶なことをしましたね」

保健室周辺は意図的に攻撃範囲から外していたので傷一つない綺麗な姿を保ったままだが、外はそうもいかない。
勇者と謳われたリヒトの光魔法で、それはもうすごいことになっている。建築者も草葉の陰で嘆いているだろう。
別にリヒトからすれば無茶でもなんでもない、昔を思い出す大立ち回りをしただけなのだが、言うだけ野暮なので黙っておく。

外から足音が少しずつ近づいている。おそらく、姿を消した自分を捜しているのだろう。
余計な会話は省き本題に入らねば。と、意識を切り替える。

「どんな者でも当たり前に愛されることが出来て、出生や性差等に囚われない、正しく才能や努力を評価される世界を作りたい。前半は俺だけど、後半部分は大切な仲間から託された夢なんだ」

忌み子にだって愛される権利がある。ならば、誰にだって愛される権利があるはずだ。
それを形にするべく、自身を心の底から愛するべく、リヒトは行動していた。

出生や性差で差別され、排斥されてきた者たち。それを、彼女は知っていた。
この世に蔓延る理不尽を変革し、誰もが希望を抱けるように。シルヴィアはそう願い、歪んだ世界を正そうとしていた。

「俺は…。俺たちは、その為に戦っている。まあ、今は俺だけなんだけどな」

志半ばに斃れた者がいると、言外に示す。どうやら伝わったようで、ウィンディは沈痛な面持ちをしている。

「今一度、問おう」

剣を床に突き立て、右手を差し伸べる。そして、言葉を紡ぐ。

「変革を願い、狂った幽者と共に茨の道を征く覚悟はあるか?」

過去の希望に満ち溢れていた勇者はいない。絶望に狂った幽者だけがここにいる。それは、本人が一番自覚している。
それでも、彼には背負ったものがある。誓ったものがある。託されたものがある。願ったものがある。
故に、歩みを止めるつもりは無い。たとえ両の脚が折られ、断ち切られようとも。芋虫みたいに這いずってでも進んでみせる。リヒトにはそんな覚悟がある。

「それとも…。天災…そう、天災が学園を蹂躙し、君を虐めている暇も余裕も貴族方からは無くなっただろう。少しは過ごしやすくなるから、このままお別れの方がいいかな?」

自身が歩む修羅の道。鋭い茨に覆われた、数えきれない痛みに苦しみ道を。彼女に歩ませることを強制したくなかった。
己の意志で選ばなかった者を無理矢理連れて行っても邪魔になるだけだし、何より本人が苦しむ。マナは例外もいいところだ。
崩壊した学院の再建、犯人をみすみす取り逃がして失墜した権威の獲得に、貴族は追われることになる。
諸々の問題が解決するまで、ウィンディも学院で堂々と過ごせるだろう。

どちらを選ぶかは彼女次第。目を閉じて選択を待つリヒトの手が、不意に温かくなった。

「…私がここにいたのは、逃げ場が無かったからです。それを作ってくれるのなら、もう未練はありません」

「…これから、迷惑をいっぱい掛けるでしょう。そんな弱々しい私を、護ってくださいね?」

その言葉と笑顔が、何よりの答えだった。

「…ああ、任された」

少女の手を取り、幽者は翼を広げる。
鳥籠に囚われた少女は今、大空へと飛び立った。

何をするかを↓1にどうぞ。
↓1コンマで拠点帰還時のイベント数を判定します。


01~40:0
41~80:1
81~99:2
00:???

当面の活動資金を調達する

速やかに宿屋に帰還し、荷物を纏める。もう長居は無用だ。マナに指示を出し、フード内に匿う。

「え、妖精さん!?」

「ちょっと事故って面倒を見てるだけだ。人畜無害だから安心してくれ」

やる気無さ気にウィンディを見やり、マナは溜め息を吐いた。明らかにどうでもよく思っている。

「まだここにいるの?」

「そろそろ逃げる。まだやることが少しだけあるけどな」

「まだあるんですか?」

ある。地味だがとても重要なことが二つ残っている。
まず一つはシルヴィアの棺の回収。これは何があってもやり遂げなければならない。
もう一つは資金調達。これは帰り道でも出来るが、お金は多いに越したことはない。金の余裕は心の余裕なのだ。
ウィンディには解らないだろうが、リヒトは昔資金不足で非常に苦労したものだ。何度餓死しかけたか、想像しただけで冷や汗が止まらない。

「だからまず、安心出来るだけの金を集める。頑張って頑張って頑張りまくればたぶんどうにかなる!!!」

「根性論…」

最後は根性、成し遂げようとする意志が道を開くことをリヒトは知っている。勇者は意外と泥臭い。

資金調達の方法を↓1にどうぞ。


A:冒険者に成りすまして金稼ぎ
B:盗賊を始末して金品強奪
C:キャラバンを襲撃
D:その他(自由枠)

B

特級指名手配犯が出現したことが伝わり、レムカーナ全域に大量の兵士が投入された。窓から外を見ただけでも数十名の兵が目視出来、その本気度合いが伺える。

「…あのぅ。これ、本当に逃げられるんですか?」

雷雨の中でも悠々と巡回するドラグーン。空も大地も、どこを通っても警備の目から逃れることは出来無さそうだ。

「大丈夫…だと思う。ウィンディは空を飛べるか?」

自分一人なら余裕なのだが、一番の懸念点はウィンディの存在だ。彼女がどれだけ戦えるかによって、彼女自身の生存率は大きく変わる。

「あ、はい…。私一人なら、全然飛べます」

「なら大丈夫だ」

満足のいく答えが返ってきたので、リヒトは小さく笑った。

「隊長!怪しい人物がそこの宿屋に泊まっているとのタレコミがありました」

「よぅし!なら勧告無しに爆破してしまえぃ!ドラグーンを全騎召集しろ!」

可能な限りの人員を集め、包囲を固める。ここまですればどうにかなると、根拠のない自信を基に。
この程度で捕縛出来るのなら、疾うの昔に処刑出来ているというのに。

宿屋の直上に三騎のドラグーンが待機し、その外側を四騎のドラグーンが囲む。
勇者には飛行能力があることは有名なので、空路を警戒するのは当然のことだ。
だが、何故彼らはリヒトたちが反撃しないと思っているのだろう。
無抵抗のまま捕まる道理など、彼らには無いのに。

「奴を捕らえれば、私は三階級特進…!晴れて将校よ!!!ふははははー!!!」

ドラグーンが駆る火龍の豪炎が、宿屋に降り注ぐ。爆音と共に、爆ぜた。

立ち込める黒煙が、爆発の規模を物語る。尋常の者ならまず、この攻撃を受けて生きてはいまい。
だが、生憎と勇者は尋常の域を超えている存在だ。強大な悪を打ち倒した者が、たかが炎に焼かれた程度で生き絶えるわけがない。

「はははははは!はは…は…?」

勝利は確定したと言わんばかりの大笑がはたと止んだ。黒煙の中に、神々しい光が蠢いているからだ。
突風が吹き煙が霧散する。同時に、空間を閃光が縫う。

「は…ぁ…!??」

不快気に鼻を鳴らす勇者が姿を現した。傷一つ、煤一つ付いていないその姿は微小なダメージすら受けなかったことを示しており、その剣からは光が漏れ出している。

ズン、と数度地面が揺れる。その正体は、墜落した火龍たちだった。出血し完全に沈黙しているが、致命傷ではない。気を失っただけのようだ。
勇者リヒトが放った剣閃は、空を縫い空中の龍たちを撃ち落とすに足る威力を持っていた。
なけなしの慈悲で即死はしていないが、ここで反撃をしていたら、龍の首が飛んでいる。
幸いなことに、一撃で気絶したおかげで一命だけは取り留めているわけだが。生きてるって素晴らしい。

「俺の邪魔をするなら、多少痛い目に遭っても」

勇者は聖剣を掲げ、魔力を解き放つ。

「仕方ないよな?」

言い切った刹那、空から光の剣が降り注いだ。

包囲網を物理的に破ったリヒトたちは、最短経路で教会に向かう。その道すがらで。

「わ、私っていらない子だったんじゃ…」

「そうでもない」

ウィンディの自虐をリヒトは首を振って否定する。ウィンディがいなければ、あそこまで効率よく反撃に転じられなかったのだ。

ウィンディが詠唱した風魔法が、暴風の壁を作り出していた。それによって火龍の吐息は二人に届くことがなかった。
最初は防御から反撃まで全てリヒトが担当する予定だったのだが、これくらいならさせてほしいと助力を願ったので任せてみた。
その結果がコレである。なかなかどうして、素晴らしい才能を持っているようだ。
ウィンディが防御を引き受けてくれたおかげで、リヒトは攻撃にのみ集中出来た。
だというのに、彼女が必要無かったとは口が裂けても言えない。お互いにとって最善の結果である。
リヒトたちにとっても。兵士たちにとっても。

教会に着くとすぐさま、リヒトは扉を蹴破る。ヴォルグス城で同様のことをしてから、すっかり板についてしまった。
先程の戦闘音に怯えていたのか、神父や修道女(シスター)は椅子の影に隠れていた。別に取って食うつもりはないのだが、文句は言えない。

予め棺の受け取り日を決めていたため、既に棺が出されていた。手際が良くて大助かりだ。

「ありがとう」

謝辞を一言だけ述べ、棺を背負う。そのまま、二人は空へと逃走した。

盗賊 判定↓1コンマ


01~30:何も無し
31~70:小規模なアジトを確認
71~95:大規模なアジトを確認
96~99:謎の集落を確認
00:???

今度は多勢でもいけるいける

棺を背負ったままの逃避行はおよそ半日続き、レムカーナは地平線の果てに消え、疎に生えた雑草と露出した岩肌が彩る荒野に到達していた。

「………」

馬車が踏み慣らした道路を進む。人里からかなり離れてはいるが、人の痕跡は強く残っている。それがありがたい。
人が踏み入れた領域なら、そこまで強力な魔物は現れない。アークミノタウロスの群れは根本的な部分から違っていたため、レムカーナで遭遇してしまったが。

「大丈夫か?」

「はい。魔法で身体を動かすくらいなら、いくらでもへっちゃらです。まぁ、この距離を歩いていたら今頃倒れてましたけど…」

宙に浮いてついて来るウィンディを気にかけるが、特に様子は変わっていない。この調子なら、拠点まで戻れそうだ。

「拠点に行く前に少しだけ寄り道がある。すぐ済む用事だから、寄り道しても構わないか?」

「私に選択権は無いのでご自由にどうぞ」

後ろ向きな返事ばかりする同行者に頭痛がするが、こればかりは本人の気質の問題なので口を出すわけにはいかない。
口下手な自分を恨みつつ、足を進めるリヒトだった。

盗賊への対処を↓1にどうぞ。


A:一人残らず鏖殺する
B:最低限の人数だけ生かす
C:全員捕縛する

すみません。D:自由安価の選択肢も追加でお願いします。

D:勇者の力を見せて脅し、金品を置いていけば命だけは助けてやると言う

「やぁやぁやぁ。頼み事をしに来ただけなのに、随分と手洗い歓迎じゃないか」

リヒトは例によって営業スマイルを浮かべて極めて平和的な交流を試みる。心から笑えたのはいつだったか、もう憶えてないほど久しい。
作り物の笑顔の方が多いとは、皮肉なものだと自嘲する。

「剣を片手に頼み事とは物騒だねぇ」

荒々しい声をした巨漢が人混みの中から姿を現す。腕前は並。と、リヒトの勘が告げている。
値踏みするような視線に呆れつつ、リヒトは平然と頼み事をした。

「懐が寂しくてとっても困っててな。お前たちのことは見逃してやるから、金になるものをくれ」

ならず者の拠点を見つけたにも関わらず、お目溢ししてやるとは。なんと慈愛に満ちたことだろう。
神様がこの光景を見ていたら、感涙しながら祝福を1ダースほど与えてくれるに違いない。

「ひゃはははははは!!!!面白いこと言うじゃないか兄ちゃん!」

頭領と思しき巨漢は呵呵大笑し、相手をするのも面倒だからあっちに行け、という意思を込めたジェスチャーをする。

「まぁ兄ちゃんは見た目が良いからな。何人かのお相手をすればそれなりに稼げるんじゃないか?ぎゃははは!!!!!」

それは困る。生憎と、自分は同性愛者ではないのだ。リヒトは肩を竦め、剣を振り上げた。

近隣の森から突如立ち上る光の柱。柱と言うにはあまりにも太いそれは、頭上の雲すら突き抜ける。
発生地点にあった生命を悉く焼き尽くし、浄化した粛清の光は、残光を残すことなく消滅する。
後に残ったのは、底の見えない大穴だけだった。

「こんなことになるのは本意じゃないからさ。頼むよ。なっ?」

リヒトは頬をポリポリと掻き、申し訳なさそうに懇願する。

頭領は白目を剥いて卒倒した。

ならず者のお恵み 判定↓1コンマ


01~40:しばらく生活に困らない程度の金品
41~80:+彼らが手に入れた貴重品
81~99:+売りに出す予定だった奴隷
00:???

おー

ならず者が隠し持っていた貴重品を↓1にどうぞ。

世界樹の果実(というラベルの貼られた大きな果物)

「おっお頭ー!見かけによらず超が付くほど小心者のお頭が倒れたー!!!」

「なんであんな化け物がここにいんだよ!?ってかどうにかしろよコイツ目がマジだぞおい!このままじゃ全員ゴートゥヘブンされちまう!!!」

「許してくださいお願いします!まだ私たちは明るく楽しく生きていたいんです!!」

やいのやいのと騒いでいるが、こちらとしては困惑する他ない。出すものさえ出せば見逃すと、初めから言っているではないか。

「本当に見逃してくれるのか!?どれだけ献上しても『これっぽっちかよちょっとお前そこでジャンプしてみろほらまだ音がするじゃねーか全部よこせ』って根こそぎカツアゲする魂胆だろ俺は詳しいんだ!!!!」

「しねーよ!!!!」

勝手に極悪非道なゲス野郎にされ、リヒトは憤慨する。全部奪う気なら、端から交渉なぞしないで全員一息に殺している。
彼らにだって生活が懸かっているから配慮しているのだ。誰も不幸にならない平和な解決を望んでいるのだから、感謝してもらいたい。

「…そこまで言うなら…。どうぞお受け取りくださいませ!そして二度とここに来るんじゃねーぞ来ないでください!!!!!」

相当溜め込んでいたのか、山のように宝石や装飾品が積み上げられる。あまりの量にリヒトは辟易し、金品を一度だけ鷲掴みした。

「これだけでいいよ。しばらく金に困らなければいいんだし」

「何こいつ逆に怖いんだけど」

ひどい言われようだとリヒトは苦笑する。そのまま立ち去ろうとしたが、ならず者に呼び止められた。

「後でいちゃもんを付けられても面倒だからな。これも持ってけ」

ぶん投げられたのは、人の頭くらいの大きさをした赤い果実。『世界樹の果実』というラベルが貼られている。

「いつ食べるか楽しみにしてたんだが、死んだら元も子もない。ここまでしたんだからもうどっか行けよな」

「ありがとう。なら遠慮なく頂くよ」

果物を片手に、リヒトは軽く手を振る。気が向いたらまた来ることも伝えておく。

「絶対に来んなよバーカ!!」

ブーイングの嵐を受けながら、リヒトは笑顔のまま退散した。

道中イベント 判定↓1コンマ


01~15:魔物の群れが現れた!
16~30:ならず者が現れた!
31~70:何も起きなかった!
71~85:行商人が現れた!
86~99:何かが起きた!(自由枠)
00:???

何か起きろー

魔物の群れとかいうトラウマイベントが怖すぎる…

「…何も起きませんでしたね」

長い時間を掛けてとうとう拠点へと帰投した三人。人数は変わらないが、人は変わっている。
リヒトは荷物を下ろして棺を抱える。為すべきことを為すために。

「そういえば、その棺には誰が入ってるんですか?」

「…シルヴィア・レイナス。俺の仲間だった魔法使いだ」

「えっ」

ウィンディの表情が固まった。もう嫌な予感しかしない。

「嘘、ですよね?シルヴィア先生なんですか?本当に!?」

「…嘘か誠かは後で解るよ」

冷淡な声色でそう答え、リヒトは墓地へと向かった。

リヒトが墓地と呼ぶ拠点の一角には、手入れがされている綺麗な墓石が一つある。
墓標の傍には主の愛剣が突き立てられており、色鮮やかな一輪の花が添えられていた。
その隣に新しい墓石を設置し、地面を掘る。何も発することなく、黙々と。ただひたすらに。その間、ウィンディは口を出せずにいた。

「…無力な俺を赦してくれ」

棺を穴に入れ、杖を取り出す。教会の人たちが頑張ってくれたようで、シルヴィアの顔は見違えるように綺麗だった。
そういうことに疎いリヒトですら心を惹かれてしまうような、麗しい笑みを浮かべていた。
釣られて、リヒトも笑顔を浮かべる。気に召してくれるのなら何よりだと。

「あ…や…ぁ…!?」

そんなリヒトとは対照に、ウィンディの顔は青ざめていた。

何をするかを↓1にどうぞ。

教師だった頃のシルヴィアについてウィンディに聞く

復活の目ってあるんだろうか…
仮に果実にそんな効果があったとしても食えなきゃ無意味か

体調不良のウィンディを家に連れ戻す。拠点とは言ってもまだ家は一軒しかないので、同居になってしまうが我慢してもらうつもりだ。

「ありがとう…ございます……」

冷水一杯を振る舞うが、ウィンディは呆然とした表情のまま椅子に座ったままだ。口を付ける様子もない。
気持ちはよく解ると、内心でリヒトは同意を示す。親しい者が亡くなった時に襲い掛かる喪失感は果てしないものだ。彼も相当に苦しんだし、今もなお心を侵蝕している。

傷ついた心を癒すのは時間だけだ。今出来るのは、昔話をして気を紛らわせるくらいだろう。もしかしたら逆効果かもしれないが、彼女は意外と芯が強いので乗り越えられるはずだ。

「君さえ良ければ聴かせてくれないか?俺の知らない、シルヴィアの教師時代のことを」

気にかけてくれた先生がいた、という彼女の言とシルヴィアに対する呼称。そして、彼女のお人好しな性格を鑑みるに、ウィンディと文通をして色々と指導していたのはシルヴィアで間違いない。
そういったことをしていたのは初耳だが、同時に彼女ほどの傑物ならそうするだろうな、とも思っていた。
もう、シルヴィアと言葉を交わすことはない。だからせめて、他人と話をして彼女のことを知りたい。
誰にも語り継がれず忘却されることは、存在の消滅と同義だ。彼女が懸命に生きた証を、残し続けたい。

そんな意図を汲み取ったのか、暗い表情ながらもウィンディは口を開いた。

undefined

「最初は、新聞を見て知ったんです。とんでもない魔法使いが『フェルリティア』にいるって」

フェルリティア。レムカーナから遠く離れた魔法都と呼ばれる都市だ。彼女とは、逃避行の果てにそこで出逢った。
あれから一年。長いようで短い時間だったと回顧する。自分はシルヴィアのために何か出来たのか自問するが、何も出来ていないことに落胆する。

「そこで、駄目元で手紙を五通ほど送ったんです。住所なんて分からなかったので、宛先は全部公務庁にして。思えば、公務庁の方には迷惑でしたね」

苦笑するウィンディを見ながら、リヒトは頷く。確かに迷惑だっただろうが、それで二人は面識を持てたのだから結果オーライである。

「…そうですね。それで、シルヴィア先生に手紙が届いたみたいでして。そこから文通で指導を受けたり、お悩み相談だったり、世間話だったりをしてました」

カバンから取り出したのは、保健室でも見たぼろぼろと手紙と書籍だ。どことなく、シルヴィアの私物と似ている気がした。

「手紙は、シルヴィア先生が送ってくれたものです。踏み潰されたりインクを掛けられたりでもうマトモに読めないですけど、それでも、大切な物なので」

今では遺品になっちゃいましたけど。と付け加えるウィンディだが、表情は僅かに明るくなっている。少しずつ心の整理が出来ているのだろう。

「こちらの本は、先生のアドバイスを基に私なりに構築した理論を記載した写本です。先生に一度見てもらいたかったのですが、叶わない夢ですね」

「…すまない」

自分がいたのに護れなかったことを悔やみ謝罪する。それで過去が変わるわけではないが、怒りの矛先を向けるなりして、溜飲が下がるならそれでいい。
ナイフで刺されるくらいは覚悟していたのだが、ウィンディが行動に出ることは終ぞ無かった。

「怒りませんよ。怒る資格なんて無いです。私は、先生に会ったことすら無いんですから。リヒトさんほど強くても、護れなかったくらいに理不尽なことがあったのでしょう。貴方やマナちゃんが生きているなら、先生もきっと喜んでますよ」

「そうか…」

あの時、手遅れになる前に全力を出していたら、シルヴィアが命を散らすことはなかった。
油断していなかったのだが、魔物の力を見誤っていたのは事実だ。彼女の死は不可抗力ではなく、自身の怠慢が生んだ結果だ。
失態を咎められず慰められるだけというのも気分が悪い。これなら、徹底的に扱き下ろされた方が気が楽だ。
そんな思いを込め、リヒトは嘆息する。
ウィンディは遺品の手紙を、愛おしそうに抱き締めた。

何をするかを↓1にどうぞ。

世界樹の果実を皆で食べ、お墓にお供えする

戦利品の赤い果実からラベルを剥がし、小さく切り分ける。中心にあった種はもったいないのでくり抜いて保管しておく。
サクサクと気味の良い音を立てながら切り分けていき、更に並べる。甘い香りが鼻を擽り、食欲を沸き立てる。

「それ、なんですか?」

「世界樹の果実」

リヒトの返答にウィンディは驚く様子を見せず、机に置かれているラベルに目を向ける。

「ただのおっきなリンゴですよね」

「そうとも言う」

世界樹の果実の正体は、アリフで栽培されているリンゴの品種の一つだ。一玉一玉が大きいためあまり数が採れず、結構お高い高級品なのだ。
それを無償で献上してくれたならず者には頭が上がらない。

「ほれ、食ってみろ」

「あむ。…あ、美味しい」

世界樹の果実を齧ったウィンディの顔が綻び、へにゃりとしただらしない表情になる。それだけ美味なのだろうとリヒトも一つ食べてみる。

「美味い」

口に入れた途端に広がる濃密な甘み。それでいて、爽やかな酸味が追い討ちを掛けることによってしつこさは無く、さっぱりとした味わいになっている。
繊維もシャクシャクと水気がありながら、ベタつくことはなく歯切れが良い。いくらでも食べてしまえそうだ。

墓に半分ほどお供えし、残りは三人で味わう。
珍しくマナが食いっ気を出し、三人の中で最も多く平らげた。
小さな身体によく入るものだと、二人は感心した。

何をするかを↓1にどうぞ。

献上してもらった金品を生活物資に変えに近くの街へ

同志集めのために情報収集
同じような思想を持つ人物ないしコミュニティを探す

目的地を↓2にどうぞ。


A:荒廃した街 ソルド 道中イベント:2
B:普遍の町 アリフ 道中イベント:0
C:圧政の都 ゴルギュリオ 道中イベント:2

ksk
安価ならC

B

魔物や盗賊に襲われるようなことも無く、平和な旅程でアリフに到着した。そういった手合いが滅多に出ない地域なので、当たり前と言えば当たり前なのだが。

「ほわぁぁぁぁ……」

レムカーナとはまた違った賑やかな町並みに、ウィンディは感嘆の息を漏らしている。
これから色々なものを見るのだからこの程度で驚かれては困る。とリヒトは苦笑し、道具屋へ駆け込む。

「らっしゃい。…おお、リュクスの兄ちゃんじゃないか」

「よぉおっちゃん。早速だがコレの換金頼むよ」

顔馴染みの店主に軽く挨拶をし、金品の詰まった麻袋をカウンターに提示する。
無精髭を摩りながら、店主は口を開いた。

「しかしまぁ。今日はえらい多いな」

「心優しい人が恵んでくれたものでね。ありがたく頂戴したわけだ」

「ほぅ。そんな良い人に俺も出逢いたいねぇ」

「旅でもすればいつか出逢えるんじゃないか?」

「そりゃ無理な話だ。俺にはもうおかみさんがいるから、この町を出られないんでな」

「…なんか、おかみさんが良い人じゃないって言ってるように聞こえるな」

「ばっ…!それ本人に言うなよ!?脳天かち割られちまう!」

「言わないよ、たぶん」

そんな談笑をしつつも、店主は金品の鑑定を進める。鋭い目つきは金品に集中し、僅かな傷すら逃さんとしている。

「…ふむ。ざっとこれくらいだな」

鑑定を終えた店主は、羊皮紙に全て売却した際の金額と内訳を記載する。
それを見たリヒトは満足気に頷き、羊皮紙にサインを書いた。

「契約成立だな。んじゃ、代金を受け取ってくれ」

「いつも助かるよ」

リヒトの謝辞を面倒そうにしながら受け取り、店主は新聞を手に取った。用が済んだなら帰れ、という合図だ。
もちろんリヒトも長居するつもりは無いので、そのまま店を出た。

「ご満悦ですね。そんなに儲かりましたか?」

リヒトの顔を見たウィンディはそう問い掛け、銀貨が詰まった麻袋を見て喉を鳴らした。

何をするかを↓1にどうぞ。
今回は換金がメインなので二回行動したらこの町を出ます。
生活物資への変換は自動で行われます。

マナのために果物買ってやろう
青果市へ

リンゴかあ…
まあもし死者復活があるとしても盗賊なんかが持ってる物じゃなく代わりに誰かが死ぬくらいの危険を掻い潜らないと無理か

懐が潤って大満足なリヒトは、活動に必須な生活物資を一通り買い漁り、青果市場へ来ていた。
昼時なのでそれなりに商品が売れてしまっているが、追加分として先程採れた瑞々しい果物が売りに出されている。

「え?世界樹の果実かい?」

気の良さそうなおばちゃんに、マナががっついた逸品が置いてないか質問する。フードの中に隠れていたマナが、ピクリと動いた。

「置いてるわけないさね。もう今年に採れる分は完売したってそこにも書いてるよ」

おばちゃんが指差した先には、『今年分の世界樹の果実は完売しました。また来年お越しください』と書かれた看板がある。
どうやら、栽培しているのはその出店を所有しているリンゴ農家だけのようだ。
彼女から聞いたのだが世界樹の果実などと大仰な名前が付いてる理由は、品種改良していたらたまたまとんでもない大きさのリンゴが出来てしまい、どうせ本物なんて誰も見たことないんだからと言って名付けたかららしい。
神をも恐れぬ蛮行ではあるが、実際に本物を目にした者はいないので別にいいのだろう。美味いし。

無慈悲な宣告にマナは露骨に気落ちした。耳元で溜め息を十六連射している。普通に耳がくすぐったいので勘弁してもらいたいものだ。
このまま撤退するのはあまりに不憫なので、評判の良い果物をバスケットいっぱいに購入する。これで我慢してもらおう。

市場を出ながら考えていたのだが、ラベルが貼られているような果物が本物の世界樹の果実じゃないことに気づいてしまった。
ラベルを用意する程度には量産しているわけだし、そもそも本物だったらあんなならず者が持っているわけがない。争奪戦という名の戦争が現在進行形で起きていることだろう。
リヒトはまた一つ賢くなった。

何をするかを↓1にどうぞ。

馬か竜を買おう

「輸送力が足りない」

「ふぇ?」

採れたて果実をふんだんに使ったフルーツジュースを味わいながら、突然リヒトがそんなことを宣う。
ストローを口に入れたまま、ウィンディは首を傾げた。急に何を言ってるんですか、という目をしている。

「運べる荷物が少ないからな。俺は言うまでもないし、君だって沢山運ぶのは相当しんどいんだろ?」

「まぁ、はい。もう少し身体が頑丈だったら、大丈夫だったんでしょうけど」

同志になるにあたって、彼女の風魔法についてはある程度教えられている。風魔法による物資輸送も出来るらしいが、身体への負担が大きいそうだ。
輸送力は馬車一台分が限度で、輸送を終えたら二日は高熱と倦怠感で寝込んでしまうらしい。代償が大きすぎて、訊いた時は反応に困った。
リヒトは言うまでもなく輸送力が低い。大の大人二人分を持っていけるかどうかである。

「だから、馬か竜を買う!オマケに荷車が付いてくるからお得だしな!」

「お金は足りるんですか?」

「足りる。まぁほとんど使い切っちまうけどな…」

簡単に頭数を揃えられる馬なら二匹、比較的調教が難しい竜なら一匹飼えるくらいの残金だ。財政も厳しいのは本当に困る。0から始めているのだから仕方がないが。

「あとは、野生の馬や龍とかをとっ捕まえるかだな。俺に才能があるか分からんが」

自然界で悠々と暮らしている駿馬や龍種を調伏するには、彼らに認められる必要がある。
それを出来るかどうかは、試してみないと分からない。成功するか。はたまた失敗して骸になるか。それも同じく。
普段何気なく利用している生き物は皆、先人たちの努力と犠牲の賜物なのだ。

どうふるかを↓2にどうぞ。


A:馬をX頭飼う(1か2のどちらかも記入すること)
B:竜を一匹飼う
C:野生のものを捕獲出来るか試す
D:保留


馬と竜の違い


馬より竜の方が輸送力は大きくタフで、戦闘もこなせる。が、その分効果。
馬は比較的安価で数を揃えやすく、非常に従順。


竜と龍の違い


竜は飛行能力を持たず、龍は飛行能力を持つ。というより、地上主体か空中主体かが違う。飛竜種と牙竜種の違いと思ってください。
どちらも主と認めた者にのみ従順になるので調教が大変。故に、龍騎士や龍使いは高級取りである。

龍も竜もある程度知能が有るってことか
ものは試しCで

C

ターゲットの強さを設定します。↓1にどうぞ。


A:弱いやつ
B:竜舎で買える程度のやつ
C:強いやつ
D:はちゃめちゃが押し寄せてくるやつ

D

どれをターゲットにするか↓3まで募集します。
候補内からコンマで後程判定します。
テンプレートを使ってオリジナルの竜をお出ししても大丈夫です。


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【異名】その名の通り。


【名前】グラトルス
【異名】氷雷龍
天貫の霊峰と呼ばれる地域を支配する偉大なる龍。そもそもが人跡未踏の領域なので、氷雷龍に対する情報が少ない。
純白の甲殻に身を包んでおり、凛然とした佇まいが美しかったとだけ文献には記載されている。


【名前】ルシオルム
【異名】冥天竜
喰命のアギトと呼ばれる大穴を縄張りとする高潔なる竜。グラトルスと同じく情報が少ない。
闇の魔力を自身の力とし、領域に踏み入れし愚者を自身の血肉に変える。

【名前】ヌ・レオン
【異名】彩珍竜
七色に輝く鱗・羽毛と6本の脚、先が割れており器用に物を掴んだり出来る尻尾を持つ。
基本は森の深くにいるが気まぐれに人里に降りてくる。
幼子の衣服のみをズタズタに引き裂くという明確な極悪行動以外は何をしてくるか全く予想がつかないため、生息地周辺では見たら逃げろと非常に恐れられている。
頑張れば人語を話せます(会話が成立するとは言ってない)。

【名前】ゲイザリオン
【異名】邪眼竜
光亡ぶ湖沼という沼地を縄張りとする異形の黒竜。
全身に目玉があり目玉の一つ一つが魔眼とされる。
優れた知性を持ちながら比較的人類に友好的な竜で、気まぐれに試練を与えて突破した者には力を貸す。
ただし、英雄でなければ突破できないような無理難題ばかりだが。
ちなみに人語を解するが体の構造上片言じみたしゃべり方になっている。(ところどころ片仮名が混ざるような)

グラトルス

【名前】ギブソンヴィー
【異名】瞬翔龍
天貫の霊峰と呼ばれる地域に生息する龍の一種。
全身のほぼ全てが翼であり、上から見ると逆V字形。申し訳程度に顔や足が生えている。飛行に適した軽くて丈夫な身体を持つ。
眠る時と死ぬ時以外は常時空を飛んでいると言い伝えられており、空のとても高い所を編隊を組んで飛行している姿が見られる。

ターゲット 判定↓1コンマ


01~30:彩珍竜 ヌ・レオン
31~60:邪眼竜 ゲイザリオン
61~90:氷雷龍 グラトルス
91~99:全部行ってしまえ
00:???

はい

草ァ~~~!!(琵琶法師)

判決 地獄行き

というわけで最初にどれをしばきにいくかを↓1にどうぞ。
どれも根本的な強さは同格ですが、危険度的にはグラトルス>ゲイザリオン> ヌ・レオンとなります。

一度に三体の相手?縄張りどないなっとん?

言い方が悪かったですね。三体とも調伏出来るか試しに行くのであって、全部同じ場所に棲んではいません。
目的達成まであちこちを行ったり来たりするので長丁場になります。(前段階の準備として色々と行動は出来ますが)

突如始まるモンハン

オイオイオイ
  オイオイオイ

あ、始めはレオンで

厩舎に置いているカタログに目を通すが、リヒトの心は動かない。目が肥えている、と言った方が正しいだろうか。
以前の戦争では、色々な敵と戦ってきた。戦いまくった。戦うしかなかった。
何千もの軍を蹴散らし、空を覆わんばかりの龍の群れを蹴散らし、逆に蹴散らされ。数多の命を喰らい、奪われ。
その果てに戦争は終わった。敵軍の首魁の死を以って。

そんな経験があるため、リヒトの脳内には過去に殺し合った強敵たる龍がウヨウヨいるのだ。そんな奴より俺の方が強いぜ?と自己主張しまくりである。
故に、興味がびっくりするくらいに湧かなかった。言い出しっぺは自分なのに。

「怖そうなのばかりですね…」

対照的に、そんな化け物軍団と戦ったことのない温室育ちの魔法強いは、カタログに載っている竜たちの売り文句を怯えながらも眺めていた。興味を持っているようだが、リヒトにこれらを買う予定は無い。

もっと強く、もっと上を。見ただけで外敵が震え上がるような圧倒的な威を持つ強者を、リヒトは望んでいる。
どうか強そうな奴がいますように。そんな願いを込め、ついさっき購入したドラゴン図鑑を開いた。

「!!!!!」

分厚い図鑑を流し読みしていると、電撃に撃たれたような衝撃が走った。これは運命だと、魂がそう告げる。

「俺はこいつらを捕まえる」

「えぇぇぇっ!!?!!?!!」

リヒトが指差したのは、常人なら挑むどころか触れようともしない、災害級の化け物だった。

スパイクタンパク単体で心臓やその他臓器に悪影響を及ぼすことがわかっています

何故一旦停止しないのですか

何故CDCが接種による若い人の心筋炎を認めているのに情報発信がないのですか
20代はたった1ヶ月で接種後死亡がコロナ死と同等になってます
因果関係の調査は?

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『邪眼竜ゲイザリオン』。光亡(ほろ)ぶ湖沼(こしょう)と呼ばれる、南方に位置する沼地を縄張りとする黒竜だ。
深淵の如き漆黒の鱗が全身を覆い、邪眼竜の名が示す通り、全身の至るところに目玉が存在している。
そのいずれも魔眼と呼ばれる魔力を秘めた瞳であり、見つめられた際にどういった悪影響を及ぼすかは不明だという。
ドラゴンの中でも優れた知性を持ち、人間と遭遇しても攻勢に出ることはまずない。が、試練と称した難癖を付けて弄んでくるらしい。
現在までに確認出来た試練は『不死鳥(フェニックス)の炎で焼いた肉を持ってこい』といったお使いから『冥天竜を狩り殺せ』といった、自身と同格の魔物の討伐まで多岐に渡る。
どの試練も一般人には荷が勝ちすぎており、英雄級の実力があっても躊躇すること請け合いの無理難題、いわゆるクソ問題を押し付けては諦める様を見て愉しんでいる。本人(?)には悪意が無いので尚更タチが悪い。

『彩珍竜ヌ・レオン』。七色に輝く鱗と羽毛に覆われた六脚の竜。先端が割れており、物を掴んだり投擲出来る尻尾が特徴的だ。
普段は深い森の奥で爆睡しているのだが、気まぐれに人里に降りてきては、子供の服を引き裂いて大笑いする傍迷惑なドラゴンである。
それ以外には何をするのか全く予想がつかず、ある時は集落だけを踏み潰して去っていき、またある時は魔物の大移動を先導したり、集落を狙ったならず者を追い払ったりと行動に規則性が無い。
暇つぶしなのか挑発なのか習性なのか判断が付かないため、面倒事にならないように『ヌ・レオンを見たらとりあえず逃げろ』と非常に恐れられている。
本人(?)に悪意は無いのかもしれないが、とにかく迷惑な存在らしい。彼に性癖を歪まされた人もいるのだとか。

『氷雷龍グラトルス』。天貫の霊峰と呼ばれる山地を支配する純白の龍だ。彼の地自体人が踏み入れられるような場所ではないため、目撃情報も非常に少ない。
氷と雷の入り混じった吐息を吐くだの、それらを体表から放出し、環境を変えてくるだの言われているが、真相は不明だ。
だが、目撃者が一様に言っていたことがある。
それは、『凛然とした佇まいは、女王のように偉大で美しかった』ということだ。

独断と偏見により、最初のターゲットはヌ・レオンに決まった。ウィンディの服がビリビリにならないか心配である。

「そうならないように守ってくださいよ!?」

「善処する」

善処はするが、約束は出来ない。もしビリったらごめんと内心で謝罪しておいた。

これからどうするかを↓1にどうぞ。


A:ヌ・レオンの生息地の近くへ突撃
B:別の町で準備とかをする
C:自由安価

A

強大なドラゴンを従える。そう決心したリヒトの行動は速かった。
今回のターゲットである三匹のドラゴン。その中で最も近郊に棲み着いているヌ・レオンを調伏するべく、三人はひたすらに広大な大地を駆けていた。

「ちょっ、速いですって!」

「善は急げって言うだろ?ほらもっとスピード上げろ!ハリーハリー!!!」

「えぇ…?これっていいことなんですか…?」

手足をシャカシャカ動かして高速移動をする幽者の後続に、風を纏って宙を舞う魔法使いがいる。ひょっとしなくても不審者軍団である。
草原を疾駆する二人組に魔物は手を出せず、関わり合いになりたくないとその場を逃げ出した。

「どうしてだろう。魔物から憐れみの目で見られてる気がします…」

脱兎の如く逃げ出す魔物を尻目に、ウィンディはそんなことを呟いた。

「ようこそ旅の方。安息の村カーナンへ」

家畜がのんびりと放牧されている、のどかな村へ到着する。ここカーナンがヌ・レオンの生息地に最も近い村であり、最もヌ・レオンの暇つぶしの被害が出ている村である。
視線を村中に向けると、潰れて無惨な姿になっている住居が複数見られた。

「ああ、アレですか?…ヌ・レオンの悪ふざけで壊れたんですよ。元々老朽化で壊れそうだったから、被害者は全然気にしてないのはよかったのですがね」

出来れば後始末までしてほしかったと、恨み節が聞こえた。気持ちは分からなくもないが、文明のことを知らないドラゴンにそこまで求めるのは酷というものだろう。

「それにしても、平和な感じですね。ヌ・レオンが近くにいるとは思えません」

「奴に殺された人も怪我させられた人もいないので。動向を警戒はしていますが、存在そのものを脅威と思っていないのですよ」

いつ彩珍竜が蹂躙を始めるか解ったものではないので、無視するわけにはいかないのだろう。だが、それと同時にただの一度も犠牲者が出ていないので、楽観視しているのも事実だ。
彩珍竜の気が変わったりしなければいいが、と不安に駆られたリヒトたちは、間違っていないだろう。

何をするかを↓1にどうぞ。

彩珍竜の寝床を聞いてみる

情報入手 判定↓1コンマ
今回の更新はこれまでです。


01~60:面倒事はやめろってんだろ
61~90:何があっても知らないかんな
91~99:暇なので来ましたー
00:???

えええええ…
00だったら向こうから仲間になりに来るのかな…

コンマが傍若無人に大暴れしている

>>203の手前にこの二つのレスが抜けてました。すみません。

岩肌に手頃な窪みを発見し、荷物を下ろす。今日はここを野宿の拠点にすることにした。

「ふーむ…」

財布の中身を確認するが、レムカーナで様々な出費が重なったおかげでとてもとても寂しいことになっている。
逆さまにしても、数枚の銅貨が落ちてくるだけだ。とても元勇者、幽者の所持金とは思えない。

「ご、ごめんなさい。私もお金は全く無いんです。独り身なので」

「君の金は君の金だろ。俺は自分の貯金しか使う予定は立ててねぇよ」

水筒を呷り、大きな息を吐く。頑張って金を稼ごうとは言ったが、お尋ね者がどうやって稼げばいいのか。
唸りながら思考を続け、リヒトはたった一つの冴えたやり方に気づく。

お金が無いのなら、お金を持ってるならず者から奪い尽くせばいいじゃない、と。
悪人に何をしたって誰も咎めはしない。寧ろ、拍手喝采を以って褒め称えられる善行のはずだ。
こんな天才的な発想が出来る自分が恐ろしい。そんなことを考えているリヒトは、おふざけで自画自賛していたシルヴィアの言とそっくりだった。

というわけで、リヒトは善は急げとばかりに腰を上げる。ウィンディは首を傾げた。

「昼に言ってた寄り道をしてくる。来るも来ないもご自由に」

「では、私はここでマナちゃんを見守ってますね」

「ふん」

そっぽを向きつつウィンディの膝下で寝転がるマナを見つつ、不安気になりながらもリヒトは席を離れた。

後に戻ってきたリヒトが言うには、二人で仲良く寝ている姿は、お姫様たちのシエスタのように和やかだったそうだ。

野宿地点から少し離れた岩山の中に、複数の小屋が集まった集落がある。
知る人ぞ知るその集落は、ならず者の集う秘密基地であった。

「今日も酒が美味くて星も綺麗だなぁ」

見張り塔に座り、のんびりと酒瓶を呷る弓手は、星空と集落内の篝火を交互に見ていた。
身体が冷えないように、とお酒を持ってきてくれたのはありがたいのだが、もう半日も見張りを続けているのだから、交代してもらいたいものだ。
そんな意思を込めた溜め息を吐くも、届くはずもなく。半ば自棄になりながら、一息に酒を飲み干した。

程よくアルコールに浸された脳が、瞼を重くさせる。とろんと溶けた目尻は眠気をこれでもかと表しており、ここに布団があれば間違いなく夢の中にご招待されていただろう。
だが、仮にも見張りを任された身だ。職務は全うする、と断固とした決意を持ち、睡魔と激闘を繰り広げていた。そんな時。

「んぁ?」

ランタンとは違った光が近づいてくる。獣の目とも違うそれを敢えて言うなら、粛清の光と言ったところか。
神聖さと悍ましさが同居した禍々しい光に、悪い夢を見たようだと、乾いた笑いと共に眠気が一瞬で覚める。
正体なぞ知ったことか。アレを近づけてはならない。そう、彼の本能が警鐘を鳴らす。
見敵必殺、先手必勝の意を込めて放った矢は、無造作に切り捨てられた。

集落の来訪者は、寒気がするほど清々しい笑みを浮かべていた。

ウィンディの胆力がすごい
多分体質も魔翌力の出力に体が追いついてないだけと考えるとすげー逸材でしょ彼女

地の文の中に故人の思い出が時々出るのしんみりしつつも和む

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VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな

ヌ・レオンを調伏しようにも居場所が分からなければ意味がない。ので、二人は彩珍竜の住処、即ち寝床を村民に問う。

「言うわけないでしょう。ちょっかい掛けられて騒動を起こされたらこっちが困るんですよ」

が、当たり前のように一蹴された。まぁ実際、余所者が勝手に動いて迷惑を被るのは自分たちなので、この対応もさもあらんというものだ。
もし、自分の拠点に来訪者が来て『ちょっくら採掘するから場所借りるね』とか言われたら、絶対に殴る。殴るだろうではなく殴る。断言する。

「まぁこうなるのは分かってた」

「ですよねー。私たちのリーダーがごめんなさい。すぐ失礼しますね」

「いや諦めないからな俺は。チャンスが来るまで耐え忍ぶのもまた一つの手段だ」

「えぇー…」

他のことをした方が建設的で今後のためになりますよ。とでも言いたげな視線が背中にちくちくと刺さるが黙殺する。
ルールは俺。俺こそがルール。そんな意図を込めてサムズアップをすると、ウィンディは頭を抱えてうごごごと唸った。

そんな時。森の奥から地響きが聞こえてきた。

「あっやっべ…。悪いことは言わないから隠れた方がいいですよ!特にそこのお嬢さん!素っ裸にされたくなければここから逃げるか姿を隠してくださいね!どうなっても私は知りませんから!!!」

そんなことを言うなり、先程まで温厚だった小太りな男性は家へと逃げ込んだ。
ウィンディは見るからに慌てていた。裸になるのが嫌なのだろう。

「嫌に決まってるじゃないですか!?」

悲鳴にも似た叫びが返ってくるのと時を同じくして、カーナンを囲む木々の一角が薙ぎ倒される。音のした方角を振り向くと、奴はいた。

『どもー。暇なので失礼しまーす』

人語を解す虹の輝きを放つ竜。『彩珍竜ヌ・レオン』が、まるで無邪気な子供のような雰囲気を纏い接近する。
その雰囲気の奥底に眠る災厄が如き力。破滅の気配がリヒトの冥光と共鳴し、警告する。
曰く『汝は我を従えられぬ。命惜しくば去るがいい』と。

ヌ・レオンとどういうコンタクトを取るかを↓1にどうぞ。
ちなみに、ターゲットになってる奴らは全部リヒトより強いです。

(ここまで読んだ感じ命のやり取りまではならんだろう)
実力を見込んで腕試しを申し込みたい
俺が勝ったら協力してください
負けたらウインディとついでにマナ(の服)を好きにしていい

お遊戯 判定↓1コンマ


01~30:ご飯が食べたいの
31~99:すぐ壊れないでね
00:???

服を!

首を回し、村へと目を向ける彩珍竜。人気が無くなった村を不思議に思いながら、遊び相手がいないか探しているようだ。
目の前に自分がいるのに目もくれないのは、射程範囲外だからなのだろうか。リヒト(22歳)は盛大に溜め息を吐き、マナ(???歳)は欠伸をし、ウィンディ(14歳)は縮こまった。
リヒトだけが外に出ており、忠告通りウィンディたちは教会の中に隠れている。

「ヌ・レオン…さん?様?どう呼べばいいんだこれ」

『んん?ご飯くれるの?』

要領を得ない返答を無視して、リヒトは言葉を続ける。支離滅裂なことを言うとドラゴン図鑑にも載っていた。なら、意味を考えるだけ無駄だ。

「貴方の実力を見込んで腕試しを申し込みたい。退屈しのぎにはなるかもしれんぞ」

『んん?』

「もし俺が勝てば、その時は協力してくれ。俺が負けたら、あそこの二人(の服)を好きにしてくださっても俺は一向に構わん!!!!」

「構ってくださいよぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!!!!!!!!」

教会から聞こえてくる悲痛な叫び。どうか引き受けてくれますように。そんな幽者の祈りが届くことはなかった。

『あふ…』

ヌ・レオンが欠伸をした。ドラゴンなのになんという芸当だと感心していたのも束の間、彼の真意に気づいた。

『ご飯食べたいなー』

ぷいと首を振り、教会へと近づく彩珍竜。尻尾をくねらせ、先端でドアノブを器用に掴んだ。そのまま、扉を開いては中に尻尾を突っ込み、ウィンディを捕らえる。

「ひぃぃぃ!!!私は美味しくないですよぅ!!!貧相ですよぅ!!!!!」

『それを決めるのは僕だよー』

「ひゃぁぁぁ!?!!」

身動きの取れないウィンディを、その前脚で引っ掻く。素肌に傷一つ付けることなく、その防護を破った。
あまりにかわいそうなのでリヒトは目を閉じてあげる。何がとは言わないが黒だった。大人びた物を着けていた。

彼に戦いへの興味は全く無い。そう、行動が示していた。ヌ・レオンと戦い力を示す。ドラゴンを調伏するにあたって王道と呼ばれる手段は、彼に通用しないようだ。
あるいは、遊び相手になる価値も無いのか。実力が足りないのかもしれない。お互いに死を感じるほど拮抗していないと、愉しいと感じないのだろうか。

いずれにせよ、今回の挑戦は大失敗だ。このままあの手この手を使っても、乗り気にならないのは確定的に明らかだ。
リヒトは早まった自身の未熟さを恥じ、彩珍竜に頭を下げた。

彩珍竜はウィンディで遊び終えたと思ったら、悠々と森の中へ帰っていく。出没してから帰っていくまで、敵意も悪意も一切感じることはなかった。

これからどうするかを↓1にどうぞ。


A:別のターゲットの生息地近くへ突撃 ターゲットの名前を併記すること
B:別の町で準備とかをする
C:調伏は諦める
D:自由安価

B

オレサマオマエマルカジリにならなくて良かったと考えよう……

目的地を↓2にどうぞ。


A:圧政の都 ゴルギュリオ 道中イベント:1
B:魔法の都 フェルリティア 道中イベント:1
C:荒廃した街 ソルド 道中イベント:1
D:自由安価 過去の選択肢で出た町や下記テンプレートを用いたものなども可

【地名】その名の通り。
【通称】○○の町など。地名の前に付いてるやつです。
簡単な概要は通称の下の行にお願いします。

ksk
安価ならB

B

嵐のように彩珍竜は去り、カーナンは活気を取り戻す。今回の暇つぶしの犠牲になったのはウィンディだけで、目立った損害は見受けられない。めでたしめでたしだ。

「ドラゴンに汚された…裸を村中の人に見られた…もうお嫁に行けません…どうせ私には行く宛なんか無いですけど…」

めそめそと嘆くウィンディを尻目に、リヒトは地図を広げる。邪眼竜にせよ氷雷龍にせよ無策で突っ込むのは無謀だと感じたので、何かしらの対策を打たねばなるまい。
やはりぶっつけ本番で突撃しても成果は得られない。その確証が得られただけ、今回のコンタクトには意味があった。そう思わなければやってられないのだ。

「情報収集…は無理か。二匹とも、易々と立ち入れない難所を縄張りにしてるしな。情報屋も役には立たなそうだ」

天貫の霊峰。光亡ぶ湖沼。どちらも大仰な名前が付くだけあって、そう簡単には踏破出来ない険しい場所である。
風雪が吹き荒れ、雲海をも越える山脈が連なり、強大な魔物が集う巣窟。
立ち込める濃霧が光を飲み込み、暗黒だけが支配する湿地帯。その最奥に広がる、瘴気に満ちた湖沼。
まさに魔窟と呼ぶに相応しい世界であり、人間には厳しい環境が広がっている。そんな場所を支配するドラゴンが弱いわけがないのだ。
だが。だからこそ、挑戦する価値がある。国を創ろうとする人間に、酔狂な部分があるのは当然と言える。

ドラゴンを従えるために今出来ることを為す。掲げた目標を達成すべく、リヒトは目的地を設定した。
次なる目的地はフェルリティア。魔法都と呼ばれる魔法使いの聖地であり、彼岸の大賢者と光燿の勇者が出逢った、二人の運命が動き出した場所でもある。
虚無に囚われた勇者は、野心を抱えし幽者となり魔法都を再訪する。新たな同志、大賢者の弟子を伴って。
聖地が滅ぶ日は近い。かもしれない。

道中イベント 判定↓1コンマ


01~15:魔物の群れが現れた!
16~30:ならず者が現れた!
31~70:何も起きなかった!
71~85:行商人が現れた!
86~99:何かが起きた!(自由枠)
00:???

VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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目視出来るほど強力な魔力が込められた結界が、浮島を包む。幾重の魔法陣が複雑に絡み合い、神秘的な光景を作り出している。
一匹の鳥、否、不幸な命が結界に包まれし聖地、『魔法都フェルリティア』に進む。結界に身体が触れた刹那、音を立てずに灰と化した。

荘厳たる佇まいのフェルリティア公務庁が存在を主張し、学び舎と称される研究所がそれを支えるように建っている。
フェルリティアへ直接入ることは何人たりとも敵わない。誰であろうとも、たった一つの入口を使う必要がある。
導きの門と人が呼ぶ、女神が彫られた鉄扉。その中に広がる転送陣のみが、フェルリティアと外界を繋いでいるのだ。
そのため、物資から人員に至るまで全てのものの出入都管理が万全に行われており、不当に立ち入ること、抜け出すことは不可能である。
尤も、リヒトとシルヴィアはそんな道理をぶち壊して逃げ出したわけだが。フェルリティア最下部の大穴が当時の騒動を物語っている。

人は言う。
フェルリティアは安寧の地。ここにいる限り、厄災は永遠(とわ)に訪れず。
フェルリティアは究明の地。ここにいる限り、真理の探究は終わらない。
フェルリティアは魔法の聖地。ここより産まれし魔法が、人類の文明に変革を齎した。
故に、フェルリティアの民こそが真に偉大なる存在である。と。

数百年の歴史を持つ、現存する最古の都フェルリティア。その歴史は、人類の歴史だ。
その裏には、悪意に歪められた大賢者の献身が隠されている。

導きの門の前に設置された関所にて、リヒトたちは足止めを食らっていた。番人という名の魔法馬鹿に秘匿していたマナが見つかってしまったのだ。
取り調べとは名ばかりの質問攻めに、三人はげっそりしていた。

「…あと何分掛かるんですかね?」

マナの住所、魔法、来歴その他諸々を根掘り葉掘り訊かれ焦燥しきったリヒトが言葉を漏らす。黙秘権を行使しまくったので個人情報は知られていないのだが、負けじと食い下がる知識人の執念に疲弊していた。

「君には興味ないんだけどね。妖精ちゃんが知ってることを教えてくれたら、すぐに通してやるよ」

番人とは言っているがその実、この男性はフェルリティア内外を繋ぐ転送陣の管理人である。
ちなみに、転送陣の理論を構築したのは他でもないシルヴィアだ。功績は全て騒動のどさくさに紛れて他人の物にされたが。
現在のフェルリティアを支える魔法の大半がシルヴィア謹製であることから、彼女の才覚が伺えるというものだ。
彼女は一切他言していないため、民衆やリヒトはそれを知らない。人のためを想い人生を捧げた大賢者は今、民衆に恨まれるお尋ね者と化している。そして、人知れずその命を散らした。これを悲劇と言わず何と言うのか。

「で、早く教えてくれないかな?後ろもつっかえてるんだから、皆のためにも言った方が良いと思うんだけどなぁ~~~」

笑顔を崩さない番人とは対照的に、リヒトは青筋を立てている。表情には出ていないが、取り繕うのを辞めた瞬間にブラッディでスプラッタなパーティが始まるのは想像に難くない。
ここはマトモな自分がどうにかしなければ、とウィンディは気合を入れた。

「彼女はですね、天貫の霊峰で暮らしていたすっごく偉い大妖精さんなんです!」

「なんとっ!?」

「でも、そこに棲んでる魔物たちが縄張り争いを始めて環境が激変…新天地を求めて旅をしていた時に、悪い人に捕まっちゃって…。競りに掛けられる前に、助け出したんです!」

「今は世界中を旅して、安住の地を探してあげてる最中なんです。攫われた時のショックや故郷を離れた影響で、魔力の制御が出来なくなったので今は魔法を使えない…と本人は言ってました」

「たぶんいった。ようせいうそつかない」

「………!!??!!?」

面倒に思っていたのか、棒読みではあるが同調するマナ。無気力な彼女をここまでさせるとは、げに恐ろしきは人の欲である。
人と妖精は相容れない。ウィンディの言を肯定するマナを見て、その常識を覆された番人はショックを受けた。受けたのだが、逆にそれが彼の琴線に触れたようだ。

「妖精にも人を受け入れる器量があるとは…。そこら辺の話を詳しく!頼むぅ!!!!!」

などと言いながら鼻息を荒くする番人は誰がどう見ても変態だ。何故彼が太陽の元で暮らしているのか不思議でならない。
こんな変態は普通牢獄行きだと思うのだが。これが俗に言う魔法使い無罪なのだろうか。流石魔法使いにとっての聖地であるフェルリティアだ。法律が違う。
と、嘘八百を並べて誤魔化し続けるウィンディとそれを大真面目に受け取り仰天する番人を眺め、諦めの境地に至ったリヒトは思っていた。

その後、なんだかんだで入都を許可された。

何をするかを↓2にどうぞ。
フェルリティアでの行動権は3回です。

ksk

前衛職探そう
流石にリヒト一人は辛い
ここでも魔法剣士とかいるやろ
いるといいなあ

近接捜索 判定↓1コンマ


01~30:いない
31~70:一人いた
71~99:二人いた
00:???

仲間を一人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。

【名前】ニール・ライトホープ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】闇魔法、精神干渉魔法
褐色肌で白髪、容姿端麗な青年。
何か面白いことを探して旅をしている。
他人とは常に敬語で接し、たまに意味深な発言をする。使用する魔法は一見普通に見えるが、この世界の理とは違う原理で発動しているようで、そのことは一部の者にしか分からない。
赤い線の装飾が施された黒い短剣を身に着けているものの、それを使わずに普通の剣を使用している。

早い者勝ちかな?一応なんか思い付いたから書く

【名前】アザステア
【人種】 魔法生物
【性別】 不明
【魔法】属性複合魔法
とある魔法使いが造り出した魔法生物キマイラで人語も理解する
姿は黒い犬だが中身は複数の魔物を合成した肉体によって出来ている
主である魔法使いには従順だったが魔法使いが亡くなった為持て余されて封印されるが度々封印を破ろうとするので処分予定

主が亡くなって悲しい主が度々話して聞かせてくれた故郷に主の遺体を連れて行きたい人間が邪魔をするムカつく

【名前】シフ
【人種】狼の獣人
【性別】男性
【魔法】音波魔法
身長170cm程度。二足歩行している狼のような容姿。灰色の毛並みと瞳。細身ながらも筋肉質な体つき。防具は急所を守る程度の軽装。
流れの傭兵。普段は軽口が多く一見お調子者に見えるが、堅実で油断がなく確実に依頼をこなす。依頼で人がかわるタイプ。
剣術や投擲など戦闘の面では凡庸だが、情報通で洞察力に優れる。
相手の弱点を突きつつ長所を発揮させない戦術を得意とする。
音波を操ることでソナーのような探知や超音波で敵の感覚を乱すことができる。

(よく見たら下3まで、とかじゃなくて「あっ」となった顔)

フェルリティアに入ってまず目を引いたのは、ゴーレムの数が多いことだ。警備部隊は小隊長のみが人間であり、残りの全員はゴーレムで構成されている。
他にも街中で活動するゴーレムたちが多く見られる。荷運びに勤しむもの、接客を務めるもの、建物の修繕を担うもの。皆、用途に合わせた外観をしており、職務を忠実に全うしていた。
リヒトは依然変わりない街並みに安堵しつつも、掲示板にデカデカと貼り付けられている手配書に密かに中指を立てた。何が凶悪犯だふざけんな。

「………」

手配書を見たウィンディの目が曇る。恩師がこんな扱いをされているのだから当然ではあるが。不幸に見舞われっぱなしのウィンディを不憫に思いながら、リヒトは酒場に視線を向けた。昼間ではあるが賑わっており、客の中には冒険者も少なくない。

「…ちょっと情報とか人を集めてくる。二時間後に『スワローネスト』で合流しよう」

「分かりました。酔い潰れちゃ駄目ですよ」

「加減はするっての」

ヒラヒラと手を振りながら、リヒトは酒場へと入っていく。それを見届けたウィンディは、フェルリティア大書庫へと向かった。

店に入り、適当な安酒とつまみを注文する。あまり贅沢は出来ないのと高価な酒は口に合わないので、頼むのはいつも安いお酒だ。
つまみを齧りながら店内を一瞥するが、目ぼしい相手はおらず。人が入れ替わるまで静かにするべきか考えていると、異変が起きた。

「………?」

何かに"視られた"。身体を。心を。魂を。観察された。初めての感覚に少々狼狽えたが、すぐに平静を取り戻す。
興味を無くしたのか。それとも、見抜くことが出来なかったのか。謎の視線は一瞬で感じなくなった。
最悪の場合には聖剣を抜くことも吝かではない、とフェルリティアが戦場になる覚悟を決め、視線の主の来訪を待つ。
果たして、その時はすぐに訪れた。

「………!」

酒場に入店した一人の青年。褐色肌に白い髪、誰もが頷く超イケメンと街中を歩けば人目を引くこと請け合いの、そこまで派手な服装はしていないのに目立っている普通の男性だ。少なくとも、そう見えるように努めている。
リヒトの探るような視線を感じたのか、青年は喫驚とも感動とも取れる反応をした。とても普通ではない。
下がっていく視線の温度とは裏腹に、青年は高揚を隠そうともしない。彼が下手人と見て間違いないだろう。

「はじめまして旅の方。同席してよろしいですか?」

「どうぞお構いなく」

馴れ馴れしい青年に内心警戒しながら、リヒトはビールを一杯注文する。それを受け取った青年は謝辞を述べ、名を告げた。

「貴方のお恵みに感謝を。俺は『ニール・ライトホープ』。しがない旅人です」

「俺は『リュクス』。同じくただの旅人だ」

朗らかなニールと酒の席には似つかわしくない冷徹なリヒト。なんとも対照的な姿である。

ニールと何を話すかを↓1にどうぞ。

??? 判定↓1コンマ


01~70:何もない
71~99:???????

まずはお互いの旅先の話などを話し、彼の出方を伺う

彼の魂胆が分からない以上、下手に出ても意味が無い。それがはっきりするまでは、無難に会話をして出方を伺う。
リヒトは努めて冷静に判断を下し、先手を打つ。

「俺は今までこの目で様々なものを見てきたんだが、興味があるなら聴くかい?」

「喜んで!」

思いの外食い付いてきたことに若干戸惑いつつも、過去の旅路を話す。聖女たちとの行軍や大賢者との放浪のことも話したが、彼女たちのことはぼかし、あくまで旅ということにしている。もしバレたらその時はその時だ。
青年は相槌を打ち、質問を数度挟んでくる。彼はなかなかの聞き上手で、ただこちらが話しているだけなのに楽しく感じそうになってしまう。最初に違和感を感じていなければ、この会話も楽しかったのだろうが。

そのまま会話を続け、攻守交代となる。次はこちらの番だ。

「貴方はどこを旅してきたんだ?」

「おっ、興味ありますか?」

「そりゃ、まぁ。旅人同士が酒の席に着いたなら、話題は一つだろ?」

「仰る通り。旅路を知ることで、彼の者の全てを知ることが出来ます。話したことが全て真実であるなら、ですが」

「………」

「ふふ。そう表情を険しくしないでください。俺は別に、貴方を咎めているわけではありません。誰にだって、話したくないものはあるのですからね。俺はそんなものが無いので、堂々と話させていただきます」

「…貴方の言が全て真実とも限らないだろうに」

「ええ。真実か否か。それを決めるのは、最終的には聞き手の意志です。真実を語ろうとも、虚構だと断じられればそこまでです。逆もまた然り。人間ってそういうものでしょう?」

「そうだな」

「だから俺は、面白ければ作り話だろうがなんでも良いんですよ。楽しむために会話をするなら真贋に意味は無い」

堂々とした宣言に、リヒトは警戒を緩める。まだ完全には信用出来ないが、警戒したまま会話をするのも疲れるのだ。

「俺も世界各地、気になったところを片っ端から旅してきた行き当たりばったりマンでしてね。それはもう大変な目に遭いました。それも含めて、楽しかったから結果オーライですが」

彼の旅程をざっくりと聴く。レムカーナ→天貫の霊峰→ゴルギュリオ→緋桜郷→喰命のアギト→他の大陸へ渡航→大陸中を気ままに旅行→この大陸(イルステッド)へと帰還→フェルリティアという順に辿ったらしいが、なんともバラバラで規則性が無い。本当に好き勝手にしていらっしゃった。

「ああ、魔物の情報とかは俺に訊かれても困ります。そこまで強くないので」

そう言って肩を竦めるニール。彼の言う通り、雰囲気から感じ取れる実力は並あたりだ。
だが、これが彼の真の実力ではないことは解りきっている。先程感じた感覚からすると、自身と同程度かそれ以上。と、リヒトは冷静に分析している。

「今まで行った中で一番新鮮に感じたのは緋桜郷ですね。鬼が統治し、種族の坩堝と形容されるあの街は、一度でもいいから訪れた方がためになると思います。刺激が欲しい男性は特に、ね」

笑みを浮かべるニールは、ちょっと口にするのも憚られる下品なジェスチャーをしていた。
手で輪っかを作るな。リヒトは溜め息を吐き、答えとする。
ニールはゲラゲラと笑い、酒を飲み干した。何がツボに入ったのかてんで分からない。

ニールと何を話すかを↓1にどうぞ。

世間話はもういいとほんの少しだけ殺気を向けつつ
で?俺に何か用でもあるのかと目的を探る

「世間話はもういい」

茶番は終わりだと理解してもらうために、ニールに対して指向性を持たせた殺気を向ける。青年の眉がピクリと動いた。
この殺気に反応を示さないのは、よほど頭がおめでたい奴か、英雄級の向ける殺気を歯牙に掛けないほどの強者かの二択である。
常人であれば恐慌し、色々な液体が流れかねないそれを受けても涼しい表情をしているのは流石と言える。そこまで強くない、と弁明していた人間の反応とは到底思えない。

「俺に何か用でもあるのか?さっき俺を"視てた"だろ。黙秘権は使わせないからな」

冷ややかな視線を向けて問う。青年はなおも態度を崩さず、幽者を見据えていた。
武力行使に出るなら、こちらも出るとこに出る。決闘(デュエル)開始だ。と戦意を練り上げているリヒトに、ケロッとした表情でニールは答えを告げる。

「まぁ確かに、貴方の中身を視させていただきました。厳密には、この酒場の人全員を視ましたが。他の全員は簡単に内面を見透せましたが、貴方は違う」

「光に隠されたように。混沌に染まったように、視ることが出来なかった。格下相手であれば丸々お見通しなのですけど、貴方には通じなかった」

「故に、こうして面と向かって話をしているわけです。貴方の旅路を知りたい。その言葉に嘘偽りはありません。天地神明に誓いますよ俺は。もしこの言葉が嘘なら多少ボコられても文句は一切言いません」

「『真実か嘘かを決めるのは、聞き手の意志次第』…だったか。俺が嘘だと決めつければ、あんたは痛い目を見るわけだが…それでいいのか?」

「ええ。初対面の相手に心の中を視られるなんて、気味が悪いのは承知の上です。まぁ、貴方が初めて気づいたんですけどね!」

彼の言葉を信じるべきか、疑うべきか。リヒトは答えを出せずにいる。どうするべきかは、未来の自分が決めてくれるだろう。
そんな投げやりな考えをしながら、リヒトは殺意を消した。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ニールとの交流を終了します。

俺の事を知りたいならまずは自分の事を包み隠さず話せと言う

「…まぁ。変な奴だが敵意が無いことは解ったよ」

「それはよかった」

「だが、おいそれと自供は出来ないな。俺のことを知りたいなら、まずは自分の事を包み隠さず話すべきだ。そうだろ?」

「えぇーっと…」

苦笑いを浮かべたニールは、気まずそうに頭を掻く。何か隠し事があるのだろうか。

「俺、別に嘘なんて言ってないんですけどね…。自分の欲しい情報が無かったからって嘘認定されても困ります。これ以上俺を叩いても何も出ませんよ?」

と述べる青年の表情は真剣だった。嘘を言っているようには見えないが、彼の人となりを理解してはいない。故に、真実かどうかも判別がつかない。
ただ、リヒトもリヒトで、信用出来ない相手に馬鹿正直に過去を話すほど、頭がお花畑では(性善説を信奉しては)なかった。

「そうかい」

とだけ答え、リヒトは追加の酒とつまみを注文した。ニールは嘆息し、ビールを大量に注文した。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ニールとの交流を終了します。
また、継続する場合は今回の会話が最後となります。

VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな

刺々しい態度を取ったことを謝罪し、お詫びにつまみを奢りつつ好きな食べ物の話をする

自棄酒を始めたニールを尻目に、リヒトはチビチビと酒を飲みつつ、つまみを味わう。
暫しの無言の間の後、不意にリヒトは口を開く。

「…悪かったな。変に疑ったり刺々しい態度を取ったりして」

「お気になさらず。俺もプライバシーに配慮してない行動をしてたので、弁解の余地は無いですから。…まぁ、そこまで信用されないかーとはなりましたけど」

「そんなに疑われるほど俺って胡散臭いですかね?」

「えーと…その…。最初に心を覗かれてなければ、ここまでつっけんどんな態度は取らなかったと思う…たぶん」

「つまり俺の自業自得ですね」

「…すまない。お詫びと言ってはなんだが、食べたいつまみがあれば奢るよ」

「食べ物で簡単に釣れると思ってませんか?ありがたく頼ませていただきますね」

「遠慮なくどうぞ」

「じゃあこのページの料理全部ください!!!!!」

「おい待て少しは遠慮しろ」

一切の遠慮なしに料理を注文するニールに、幽者は冷や汗を掻く。折角稼いだ金が無くなったら非常に困るのだ。
まぁ、酒場で頼む料理の単価などたかが知れているのだが、彼が大食いチャンピオンとかだった場合は軽く死が見えかねない。そうでないことを祈るばかりである。

「リヒトさんは好きな食べ物とかあります?」

「腐った食べ物じゃなければなんでも食う。腐ってても食う。死ななければセーフ」

「えぇ…」

「貴方はどうなんだ?」

「俺は濃いめの味付けなら大概の物が好きですね。あとは…郷土料理は好んで食べます」

「へぇ、洒落てるねぇ」

先程までの険悪な雰囲気は霧散し、雑談に興じる二人の姿があった。

存外話が弾み、日が暮れ始めた頃。話と食事がひと段落した二人は席を立つ。話のお礼だとリヒト分を含めた食事代が差し出されたが、リヒトはこれを固辞する。

「不快に思わせたお詫びも兼ねてるからな。これで貸し借りゼロ…ってことにしたいんだ。俺の顔を立ててくれると助かるよ」

「…では、そのように。また縁があればよろしくお願いしますね」

「この広い世界で、また巡り合うとは思わないがな」

「ふふ…光と闇は紙一重。光があれば闇が生まれ、闇の中に光は出ずる。そういうものです。俺たちの関係も、きっと」

「…要領を得ないな」

意味深な発言をするニールに、リヒトは辟易する。難しい話が解るほど、リヒトは賢くない。
対するニールは微笑を以って返答とした。

「これ以上語るのは野暮というものです。やがて解る日が来ますよ」

「面倒事は勘弁してくれ…」

頭を抱え嫌悪感を露わにするリヒトを見て、ニールは笑みを深くする。そして、そのまま手を振った。

「それでは俺はこれで。無茶をして死んでも、良いことなんてありませんからね~」

そんなことを言いながら、ニールは姿を消す。

「…俺の目的、バレてたのかな」

リヒトはそう呟き、瞳を閉じた。

リヒトがニールと対話しているちょうどその頃。ウィンディは更なる知識を求めてフェルリティア大書庫を訪ねていた。安くない入館料を支払い中に入る。
成長のための必要経費と割り切り、決心と共に入館した少女は、目の前に広がる現実に圧倒された。

「………!!!」

本棚。本棚。魔法使い。本棚。一般人。本棚。猫。本棚。本棚。本棚。ゴーレム。そして、本棚。
万を優に超える数の書籍が、無数の本棚に保管されていた。魔法使いは魔法書を、主婦はレシピを、猫は魚図鑑を眺めており、ゴーレムは忙しなく客が読み終えた本の整理や、破損した古書の修復に勤しんでいる。

レムカーナ王立魔法学院にも図書館があったが、それとは規模が違う。設備が違う。価値が違う。数百年前の魔女が編み出した禁術を記した禁書すらも保管されており、危険性が著しく高いが故に閲覧権限を持つ権力者以外は保管室に入ることも叶わないが、世界で随一の品揃えであり、右に並ぶ図書館は存在し得ない。そう納得出来る未知の世界だった。

「ここでなら手掛かりが見つかるかな…」

ウィンディの抱えている唯一にして最大の弱点。一定以上の魔法を行使した場合、数日の休養を必要とするほどの負担が発生する問題。それを解決する方法を見つけるために、ウィンディは大書庫の門を叩いた。
他者よりも甚大なリスクを背負っている彼女は、どうにかしてその問題をクリアしたかったのだ。

この体質があるせいで、学院では散々な目に遭った。思い出すことも憚られるほどに凄惨な日々を送っていた。
どんな魔法を行使しても一切疲弊しない、完璧な存在だったら陰口程度で済んでいただろう。
だが、ウィンディはそうではなかった。実習後に頻繁に体調を崩す彼女は、他者からすれば付け入る隙に見えていた。
優秀な人材を見下せる絶好の好機を、彼らが見逃すはずもなく。故に、ウィンディは学生生活を続ける間心を摩耗させていた。
シルヴィアとの関係も、その執拗な嫌がらせの原因の一端を担っていた。
成績優秀な子供が他国に名を馳せる大賢者に弟子入りしているなど、嫉妬されても当然の状況だ。
そして、その子供は事あるごとに体調を崩しては嫌がらせを受け、しかし決して反撃はしてこないいい子ちゃん(臆病者)だったのだ。
これで何もされずに生きていけるわけがない。学院を抜け出せた現状が最善という悪夢のような状況だった。
あの時リヒトに出逢っていなければ、ウィンディ・ヴァルマンウェは死んでいただろう。こればかりは運命の出逢いと言う他ない。

私は彼に何かをしてあげられたのだろうか。ふと、そんなことを思う。答えは言うまでもなかった。
何も出来ていないから、今ここにいる。弱さを克服し幽者の力となるために。その術を知るために。
意を決したウィンディは、一つの書籍を手に取った。

魔法の三元力というものがある。
一つは魔力。これ即ち、行使する魔法の器の大きさを定める力也。
魔力の大きさはそのまま、魔法の規模や影響を決める。魔力が大きいほど大規模な魔法を行使する原動力となり、より複雑な現象を起こし得る。
一つは想像力。これ即ち、行使する魔法の形を定める力也。
想像力はそのまま、引き出しの多さに繋がる。
想像力が豊かであればあるほど、多種多様な魔法を考え形に出来る。
一つは智力。これ即ち、行使する魔法を実現する力也。
智力はそのまま、魔法を行使する際に求められる精度となる。
賢い者ほど、魔法を構築する理論の無駄を省き、正しい姿にすることが出来る。不完全な理論故に魔法が不発になる事態、暴走する事態を避けられる。

この三元力と魔法の関係は、たびたび物作りに喩えられる。
魔力は材料の質と量であり、想像力は設計図の著者。智力は設計図の監修者兼製作者である。
魔力が少なければ大した作品は作られないし、著者が素人であれば歪な設計図が出来上がる。監修者の知識が不足していれば設計図の不備を訂正出来ないし、製作者が未熟であれば設計図通りの作品は作られず、駄作となり得る。

著:メチャ・インテリマン
『魔法の基礎知識--これで君も初心者魔法使い--』より抜粋


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「…うーん。こういう知識はもうあるんだけどなぁ」

パタンと本を閉じ、机に突っ伏す。初心者向けの教本を当てにするべきではなかったと、今更ながら反省する。
もしシルヴィアが生きていたら。そんなことを考えるが、それで何かが変わるわけではない。
全く先に進めないもどかしさを感じながら、ウィンディは次の本を開く。それでも、解決に向かって進むことは終ぞ無かった。

フェルリティアで営業している宿泊施設『スワローネスト』。その一室には二人の男女が。
予め言っておくと、二人の間に恋愛感情は一切無い。現に、二人は机に倒れていた。

「「何の成果も得られませんでした…」」

リヒトとシルヴィアは二人して一語一句同じ言葉を漏らす。どちらも表情は死んでいて、呪詛のように呻き声が口から垂れ流しになっている。
これではただ酒を飲んで楽しく騒いできただけだとリヒトは頭を抱える。
これではただ読書をして楽しんできただけだとウィンディは頬杖を突いた。

「…こうなりゃ自棄酒だ。死ぬまで飲んでやる」

「後生ですからやめてください。酔っ払いの看病なんて嫌ですよ。寧ろ私の方がキャラ的には看病される側でしょう」

「キャラ言うな」

「はぁ…。どうしてこう、何をやっても上手くいかないんですかね…」

「…そういう時もある。とでも思わなきゃ、やってられないな」

「…ですね。明日の私たちに期待しましょう」

「ああ。諦めなければどうにかなるもんだ。頑張ろうぜ」

何をするかを↓2にどうぞ。
フェルリティアでの行動権はあと2回です。

狩猟…じゃなかった調伏対象の残り2匹の情報を集めよう

調伏対象の情報を収集しつつ仲間探し

複数の行動を同時にする際は成功率が低下します。でないとAしながらBをして、ついでにCをする。とかの安価が強すぎるので…。
仲間捜索 判定↓1コンマ


01~60:いない
61~85:一人いた
86~99:二人いた


情報 判定↓2コンマ


01~60:手掛かりなし
61~99:手掛かり発見

はい

仲間を二人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。前回の募集で出たキャラも可です。

【名前】HALL-50Dn(愛称:ハリゴーディン)
【人種】ゴーレム
【性別】無
【魔法】使役者に倣う
自動反復魔法発動型ゴーレム。
使役する者がゴーレムにゴーレムが発動できる理論、魔翌力の魔法を記録させる事で、後は極小量の魔翌力を流せば自動的に魔法発動してくれる。
この機体はハイエンドモデルで大抵の人の魔法なら記憶可能。
問題は自分の魔法をわざわざゴーレムライクにイジりたい奴がいるのか、魔法発動までのタイムラグを許容できるのかといった所で、そこそこ高価な癖して打ち捨てられた機体に見向きもされないのを見るに好んで使役する人はいないようだ。
喋れるが声に抑揚はない、動きに感情がよく出る。

【名前】デュンケル
【人種】魔族
【性別】男
【魔法】獄炎魔法
漆黒の長髪に、同じく漆黒のローブを身にまとった長身で浮世離れした雰囲気の青年。頭からは魔族である事を示す二つの角が生えている
生まれつき闇魔法と炎魔法を同時に使う事が出来、やがてその二つを組み合わせた獄炎魔法を編み出すに至った魔族の中でも屈指の実力者である
一時は魔族の頂点である魔王候補にも名前が挙がったほどだが、興味が無いと一蹴し長らく放浪の旅に出ていた
彼の行動理由は常に面白いか面白くないかであり、面白いと感じたならば相手が例え人間であろうと手を貸したりする事がある

やること成すこと全てが失敗した日の翌日。気を取り直して行動を再開した二人は、情報屋の元を訪ねていた。

「グラトルスとゲイザリオンの情報が欲しい?俺に死ねって言ってんですかい?」

「まぁそうなるよな」

その結果がコレだ。論ずるに値しないほどの、完膚なきまでに無慈悲な門前払いを喰らう。
重ねて言うが、どちらのドラゴンも尋常の人間が挑むのは無謀と称される魔境に棲むものである。当然、それだけの実力を誇っているし、その魔境を棲家とする魔物も皆、相応の力を持っている。
そんな場所を情報屋が調査しているわけがない。彼らもお金は欲しいが、命の方が大事なのだ。

「だから俺に何を訊いたって、どれだけ金を積んだって、そんな化け物モンスターの情報なんかこれっぽっちも出せないですぜ。生息地の情報も同じく。これ以上訊くなら俺は逃げます!!!!!」

「分かった。分かった!もう訊かないから荷物を纏めるな!!!」

ここに留まっても埒が明かないことは明白だ。朝逃げをしようとする情報屋を引き留め、リヒトたちはドラゴンの調査を打ち切り裏路地から出た。のはいいのだが。

「なにこれ」

「なんでしょこれ」

なんということでしょう。たった数分裏路地にいただけだったのに、『廃棄品』と書かれたゴーレムが打ち捨てられているではありませんか。
ちなみに、ゴーレムは思いっきり稼働状態である。目には赤い光が灯っているし、『拾ってください』とゴーレム自ら看板を書いてその前で仁王立ちしている。全くもって意味が解らない。

『このままじゃスクラップにされてしまいます。ヘルプミー』

「え、最近のゴーレムって人工知能付いてんの?」

「レムカーナにゴーレムなんて無かったのでわかんないです」

どこからともなく取り出した白旗を振って猛アピールするゴーレムに、リヒトは心底困惑した。

謎のゴーレム(HALL-50Dn)と何を話すかを↓1にどうぞ。

持ち主とか身の上話を聞いてみる

「…えーと。とりあえず、なんで貴方ははそんなことになってるんです?」

「ゴーレムに敬語って嘘でしょリュクスさん」

「だってゴーレムと話したこと無えんだもん!」

『こちらをご一読ください』

対応に困っている二人をよそに、ゴーレムは書籍を差し出す。表紙には『HALL-50Dn取扱説明書』と書かれている。


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HALL-50Dn(以降ハリゴーディンと記載)には、独自の魔導機構が内蔵されています。専用に構築した理論と魔力を登録することで、スタンバイモードに移行します。
※この際に登録出来る魔法の種類は256種までです。限界以上に登録することは出来ないため、容量が限界に達している際は登録している魔法のうち、不要なものを削除してください。
スタンバイモード中のハリゴーディンに魔力を注入すれば、自動で登録した魔法を行使してくれます。
※この際に消費する魔力量は本人が魔法を行使する時の5%です。

『HALL-50Dn取扱説明書』より抜粋


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「???????????」

「あっ全然解ってないって顔してる」

『ワタクシHALL-50Dnを使えば、より経済的に魔法を行使出来ます。今なら無料で買えるので買わなきゃ損です。さあどうぞ』

「無料なのに買うとは…」

ずいっと契約書を見せるハリゴーディン。それを丁寧に返却し、リヒトは取扱説明書を読む。そして、少しずつ内容を咀嚼し、理解していく。そこで疑問に思った。思ってしまった。

「ここに書いてることだけ読めば利点しか無いのに、なんで売れないんだ?」

『良い質問です』

ビシッと音が聞こえてきそうなほどに、ハリゴーディンは勢いよくリヒトを指差す。本当にゴーレムなのか疑わしいが、取説にもゴーレムと書いてるからそうなのだろう。

『ワタクシHALL-50Dnは『仕様が回りくどい』だの『人の仕事を奪うな』だの『貴重な素材がもったいない』だの散々にディスられてきました。完成してから今日までの二年間に、手に取ってから捨てられた取扱説明書の数は六冊です』

「少ないな」

『そもそも取扱説明書を見てくれる人がいないんですよ。人間なんだから察してください』

「ゴーレムに呆れられてる…」

やれやれ…と肩を竦めるハリゴーディンはリヒトを完全に舐め腐っていた。リヒトは本当にスクラップにしてやろうかと腕を鳴らす。
ウィンディがどうにかリヒトを宥めて事なきを得る。すっかり苦労人ポジションになったと感慨深げに涙を流すが、当の本人はこれっぽっちも嬉しくなかった。

「…けどまぁ、見向きもされない理由は解ります。なんでわざわざ自分が使える魔法をハリゴーディン用に理論を構築し直さなきゃならないんだってなりますし、魔力さえチャージしておけば自律稼働するならまだしも、魔力をチャージする度に時間差で魔法を行使しますからね。これなら自分でやった方が速いですよ。魔力消費を抑えられる点しかメリット無いですねこれ…」

『そういうことです』

拾ってくださいと言う割には欠点を理解していたり、なかなか図太いところがあるゴーレムである。これで心が無いのだから恐ろしい。

『つまりワタクシは、あまりに売れなくて維持費だけ掛かる金食い虫だったからポイされたわけです』

「話を聞く限りただの欠陥品だしな」

「開発者の顔が見てみたいですね」

『もうクビになってますよ』

現実は非情だと、哀れみの目をハリゴーディンへと向ける二人だった。

HALL-50Dnと何を話すかを↓1にどうぞ。

即席でハリゴーディンに何か適当な魔法を発動させられないかとウィンディに頼んでみる

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この人の神経を逆撫でするだけが取り柄の欠陥品におちょくられていたリヒトはふと、ある考えを浮かべる。
それは、実際に魔法を反復してもらったらどうなるのか。その検証である。

「ウィンディ、このポンコツに即席で魔法を登録出来ないか?」

「えー…。たぶん出来ますけど、リュクスさんはやらないんですか?」

「理論なんて考えたことがないから何一つ解らん」

「ええっ…。それでよくあんな凄い魔法を行使出来ますね…」

「なんとなく考えて魔力をぶち込むだけだからな。ごちゃごちゃ考えるのは苦手だ」

魔法の規模、威力と三元力の関係は乗算に近いと言われている。一部分で飛び抜けた才能を持つよりかは、満遍なく才能を持つ方が魔法使いとして優位に立てる。
故に、いずれも魔法使いには必須の力だ。
ごく稀に三元力のうちいずれかが欠如しているのに大成する魔法使いがいるが、それは他の要素で補っているからに過ぎない。

ウィンディは全ての要素を兼ね備えているが、まだ幼いため肉体が魔法の行使に足る領域まで追いついておらず、強力な魔法を行使する度に身体を壊してしまう。
リヒトは魔法の理論などを一切考えたことがないので、智力が致命的なまでに欠如しているが、変に豊かな想像力と無駄に有り余った魔力を以って、大規模かつ高威力な魔法を行使出来る。それでも、アークミノタウルスには毛ほどのダメージを与えられなかったのだが。
逆に言えば、智力を身に付け欠点を克服出来た時、魔法の分野で彼岸の大賢者の影を踏むことが叶う。シルヴィアと同じ領域に触れることが出来る。知識を身に付けることが逆効果になる可能性も否めないが。

「なんとなくであれだけの魔法をお出しされちゃ敵わないですよっと」

若干不貞腐れつつも、ウィンディは理論構成をハリゴーディンに合わせて調整する。程なくして、ハリゴーディンの目が違う色に光った。

『『風穿(エアロレイト)』の登録が完了しました』

「はい、完成しましたよ。ターゲットはリュクスさんで良いですか?」

「ああ。他人に当てないように気をつけてくれ」

「了解。魔力を供給します」

ウィンディの手がハリゴーディンの脊部に触れる。人体を通して供給された魔力が、鋼鉄の身体を駆け巡った。
全身に刻み込まれた理論に基づき、魔力は正しい形で循環する。理論の導くままに形を変え、無秩序な魔力はあるべき解へと帰着する。

『死に晒せオラァ』

刹那、ハリゴーディンの口っぽい穴から放たれたのは、目に見えない旋風の矢。螺旋を描きつつ捻じ曲がった空気が、幽者の喉笛を狙い直進する。

物騒な言葉に顔を顰めつつリヒトは光を集め、繭の中に籠った。リヒトが思いついた実験は、微かに光の外殻を揺らす結果に終わった。

「まぁ威力は普通ですね」

「普通だな。これなら戦場で殺り合った奴らの魔法の方が怖いわ」

「戦闘ガチ勢謹製の対人特化魔法と比べないでください」

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。HALL-50Dnとの交流を終了します。

他に出来ることはありますか?(面接官)

「…それで、他に出来ることはありますかハリゴーディンさん?」

訝しむ視線をハリゴーディンに向ける。ゴーレムは真顔で返答した。

『なにもないです。これこそが唯一のアイデンティティなので。だから捨てられたんですよ』

「…お、おう…なんかすまん」

『同情するなら買ってください。今はこんな無骨な格好ですが、外装を取り替えればイメチェンし放題ですよ』

そんなことを言いながら契約書を押し付けるハリゴーディン。油断も隙もあったものじゃないと、リヒトはその全てを裁断した。

『無駄に器用な真似しますね。光魔法で書類だけ切断するとは』

「この魔法は一番俺が愛用してるからな。これくらいなら朝飯前よ」

『光絶』によって微塵切りにされた紙は風に吹かれて空へと舞う。特に感動的でもない紙吹雪が三人を飾った。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。HALL-50Dnとの交流を終了します。
また、継続する場合は今回の会話が最後となります。

機体性能について
耐久性や運べる重量について聞きたい

「しかし、随分と頑丈そうな見た目だな。いったいどんなスペックをしてんだか」

「あ、それは私もちょっと興味あります」

髪に引っかかった紙屑を取り除きつつ問う。ウィンディも同調を示し、視線をゴーレムに向けた。ゴーレムは取扱説明書を開き、あるページを指差した。


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ハリゴーディンのフレーム素材には超硬質メタライトを採用しており、本機に内蔵した自動修復魔法により、軽度の損傷であれば自動で修理されるため、日頃のメンテナンスは不要となっています。
ハイエンドモデルである本機は従来のゴーレムより基本性能が向上しており、馬車二台分の輸送力を保有しています。

~~~中略~~~

外装の取り替えなどといった大規模なメンテナンスを希望される場合は、フェルリティア公務庁工学課所属『イダ・ストラル』宛に申請書を送付してください。

『HALL-50Dn取扱説明書』より抜粋


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「こっちが本体じゃねえか何作ってんだ開発者頭おかしいだろ」

「魔法関連の機能をオミットして、基本性能を底上げしたら天下を取れてたのに。もったいない」

スペックの概要をざっと見た感想がこれだ。どう考えても力の入れどころがおかしい。開発者は馬鹿じゃないだろうか。
ぶっ壊れ産廃なクソ機能を搭載しているがその実、一般的なゴーレムと同等以上の基本スペックを実現していながら自動でメンテナンスをしてくれるので修理要らず。手間の掛からないガチのマジでぶっ壊れ性能のゴーレムだった。
余計な機能さえなければゴーレム界隈のシェアを総取り出来た気がするが、まあ開発者の頭がおかしかったから思いつきの機能でも突っ込んでゴミにしてしまったのだろう。
導きの門の番人の件もある。変人でないとやっていけないのがここフェルリティアという都市なのかもしれない。

HALL-50Dnを購入する(¥0)かを↓1にどうぞ。

【HALL-50Dnのここがすごい!(スペック概要)】

・耐久性は上々。それなり程度の魔物の攻撃ならリジェネ込みでほぼノーダメ。
・物資はいっぱい運べる。そのパワーを利用してインファイトも可能。
・魔法都産品の標準仕様なので説明が省略されているが、魔法に対する耐性は非常に高い。

購入する

無料(タダ)より高い物は無い。世の中にはそんな素晴らしい格言がある。しかし、今目の前にいる廃棄処分目前のゴーレムは無料(タダ)で、所有者はもちろんいないので恩返しとは名ばかりの無理難題を突き付けられる心配は皆無だ。スクラップになりところだったのだから当たり前だが。

「人手不足だからな。タダならありがたく頂戴するよ。タダならな!!!!」

『ご愛顧いただきありがとうございます』

リヒトは慣れた手つきで契約書にサインをする。それを確認したハリゴーディンは、声色はそのままにガッツポーズをして天を仰いだ。
本当にゴーレムなのか甚だ疑問である。ここまで精巧な人工知能を創れるなら、開発者はさぞ引く手数多だっただろうに。

「えぇ…本当に買っちゃった…。無料だけど…。自爆とかしないよね…」

『自爆機能はもちろん搭載しております。漢のロマンだと開発者は仰ってました。ちなみに、爆発半径はフェルリティア全域です』

「絶対に使うなよ。前フリじゃないからな解ってるんだろうなおい」

『解ってますよ』

などと宣うハリゴーディンだが、顔はそっぽを向いているし吹けてない口笛を吹いていた。

定期的に大きなイベント(というかストーリー)を組み込むべきなのか悩むこの頃。ご助言いただけると助かります。
思いついたキャラやプロットをメモ帳に書き殴ってますが、なかなか数が増えなんだ(まだマトモなのが一人しかいない)。


【現状用意出来てるキャラ】

【名前】シェリア・コルティオ
【人種】魔族
【性別】女性
【魔法】闇魔法及び治癒魔法
概要はヒミツ。とりあえず敵じゃない。

今の段階で大きいイベント来るとまた犠牲者出そうな気がしないでもない
戦力足りてるのかなこれ

破格性能ゴーレム手に入ったので運搬力としてのドラゴン要らなくなったかこれ
どっちもキャラ立ってそうだから会うだけは会いたいけど

現状のペースだと建国までめっちゃ時間かかりそうだし大きなイベントがあってもいいと思う
あと個人的には、マナがリヒトたちに歩み寄る切っ掛けになりそうな出来事もちょっと欲しいかも

「ふぅ…」

スワローネストに戻り食事をする。ウィンディは今シャワーを浴びているので、リヒトのみが食堂を利用している。ハリゴーディンは自室に置いている。ゴーレムに食事など必要ないのだから当然の措置だ。

なんの変哲も無い、敢えて言うなら自分の手料理の数倍美味な食事を味わいつつ思考する。余談だが、リヒトの手料理は食えないわけじゃないが食いたくないとの評価を様々な人(総勢二名)から受けている。

「人手不足、か…」

魚のムニエルを切り分け、そう零す。リヒトに頼れる人は、もういない。
聖女は人の悪意の犠牲となった。嘗ての仲間は戦争で落命したか重傷を負い、平穏な生活に戻った。中には戦争を経ても健康な人もいたが、堕ちるところまで堕ちた自分に付き合う道理は無いだろう。
地道に繋がりを創り、人を集める。それこそが最善にして最短の道のりだと考えていた。が、未だに一桁台なことを鑑みるに間違っていると見た方が良さそうだ。だが。

「…分からないな。俺は馬鹿だし、不器用だから…」

困った時は隣にいた人に頼ってばかりだった。聖女然り、戦友然り、賢者然り。独りでは何も出来ないことが解っていたから、人を求めているのだ。

思考と共に進む食事。悩み事に困る頭。その割に動く口と手。傍目には難しい顔をした青年が爆速で食事に勤しんでいるようにしか見えない。
近寄り難い雰囲気を纏う幽者の元を、一人の来訪者が訪ねた。

「席、借りても構わないか?」

「…どうぞ」

声に反応して着席を促すと、男性は軽い謝辞を述べて席に座った。頭からは一対の角が生えており、それが彼の種族を如実に表していた。
『魔族』。人類と同じように世界中に居住圏を広げている、人であって人でないもの。
人類と魔族間の関係は、良くも悪くも地域によって異なる。仲睦まじい地域もあれば、蛇蝎のようにお互いを恨み、嫌っている地域もあるのだ。

レムカーナは近辺に暮らしていた魔族と戦争をしていたので関係はとても悪い。リヒトもその戦争に大いに関係しており、終戦の立役者でもある。
まぁそもそも、イルステッド内で魔族との関係が険悪なのはレムカーナくらいなのだが。それも、人類側が一方的に嫌っているのだから救えない話だ。

そんな天敵とも共存関係とも言えない魔族の男性は、立派なステーキ肉を豪快に平らげていた。見ていてとても気持ちが良い食べっぷりである。

「『カロゥス』を陥した英雄と、まさか宿屋で相見えることになるとはな。数奇な運命とでも言えようか」

男性の言葉に、リヒトは僅かに視線を揺らす。その一瞬を男性は見逃さなかった。

「やはり、貴殿が件の勇者だな。その節は世話になったと、貴殿と遊んだ者より言伝を受け取っている」

「…待て待て待て待て。俺は魔族と遊んだ覚えは無いんだが」

突然何を言い出すのか、と今度は分かりやすく狼狽える。実際、リヒトに魔族と遊んだ記憶は無かった。だが、悲しいかな。リヒトが遊びと認識していなくても、相手も同じように認識しているとは限らないものだ。

「いるだろう?カロゥスを守護していた魔族が一人」

「…ごめん。まさかとは思うが、あの何度死に掛けたか分からない地獄の戦いを、あの女はお遊びだと言ってるのか?」

「………?初めからそう言ってるが…」

「うぇぇぇええ…。なんだよそれ心折れるわ…」

謎の魔族に突如カミングアウトされたのは、あの戦争が単なるお遊び、おままごとだったという衝撃の事実だった。

謎の魔族(デュンケル)と何を話すかを↓1にどうぞ。

魔族について色々尋ねてみる
例えば今の魔王は誰なのかなど

情報 判定↓1コンマ


01~30:教えてくれなかった
31~70:一人教えてくれた
71~99:二人教えてくれた
00:???

どうなるかな

魔族に関する情報 判定↓1コンマ


01~20:一つだけ教えてくれた
21~60:二つ教えてくれた
61~99:三つも教えてくれた
00:???

あーい

魔王を二人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。どこを支配しているとかは、記載しても大丈夫ですししなくても大丈夫です。
魔族関係で欲しい情報を三つ募集します。機嫌が良いデュンケルさんが教えてくれます。

【名前】エル・ヒュプティル
【人種】 魔王
【性別】 女
【魔法】精神魔法?
通称眠りの魔王
常に眠っていて起きる事はほとんどない
集合無意識に接続して人の夢の世界を渡り歩く存在
たまに預言をしたり助けたりもするが目的は不明
かつて無理に起こした他の魔王が居たらしいがその消息は今はわからな
見た目は黒髪ツインテの15歳くらいの少女

【名前】メリオゴストーグ
【人種】魔族
【性別】女
【魔法】重力魔法
紫のロングヘアーに頭の倍はある三日月型の角が生えた頭部。困り眉に笑顔はめったに見せないが兇器。ロリツルペタ
その庇護欲を唆る容姿だけで数多の魔族を従える魔王というか教祖。
本人は強くない、ぶっちゃけ弱い部類だが下僕の戦力が並の国を超える。
魔法は専ら大きくなりすぎた頭の角を支えるために使っている

組織的な犯行と思われる略奪や大量略取・誘拐が頻発している

書き方が悪かったですね。魔族の情報は『魔族の拠点について』や『魔王の動向について』といった形で、『魔族に関するどういう情報が欲しいのか』を募集しております。

魔王の上位…大魔王的なのは居るのか聞いてみる

魔族内にも差別や迫害はあるのか?

人間に友好的な者はいるか?

「俺の勝ちだな…!」

「お見事」

何故か始まった特大ジョッキいっぱいに注がれた葡萄ジュース(ノンアルコール)の早飲み対決。軍配は幽者に上がり、魔族の男性は拍手喝采で対戦相手を讃える。
口元のジュースを紙ナプキンで拭い、リヒトはジョッキを厨房のおばちゃんに返却した。

「…で、なんでコレをチョイスしたんだ?お互い大人なんだから、てっきり酒にするかと」

「吾輩は葡萄ジュースが好物でな。勝負という名目でたらふく飲みたかったのだ。それに、アルコールを一気に摂取するのは身体に悪い。無闇矢鱈と身体に負担を掛けるのは良くないぞ。今は平気でも、未来の自分にその行為の代償が襲い掛かるからな」

「そんな出来の悪い子供を諭すように言わなくても…。はいはい俺が悪うござんした」

試合には勝ったのに勝負に負けた気分だと、リヒトは不快気にそっぽを向く。デュンケルと名乗った男性は微笑し、足を組んだ。

「まあ、なんだ。今の吾輩は気分が良い。今何か質問されたら、ポロッとデュンケルメモの内容を喋ってしまうかもしれんな」

「デュンケルメモ?」

「旅で得た知見を書き記した手帳だ。意外と役に立つ、と利用者には大好評だぞ」

「へー」

彼の言が真実か。それを確かめるべく、簡単な質問をすることにした。

「カロゥスを支配してた魔王の名は?」

「メリオゴストーグ。『メリちゃん最かわ教』の教祖であり、嘗て貴殿がカロゥスで繰り広げた激戦を観劇していた者だな。親衛隊の築いた強固な防衛陣形を突破し一太刀浴びせたその手腕は見事であったが、それも含めて彼女は大いに楽しんだようだ」

デュンケルの淡々とした読み上げに、リヒトは眉をひくつかせて質問する。拳に力が入っているのは、気のせいではないだろう。

「…ちょっと待てよ。さっきの話から薄々勘付いていたんだが、はっきりさせたいことがある」

「なんだ?」

「あの女は…生きてる、のか…?」

「ああ。元気に献上品のスイーツを貪っていたが」

「…まさか、殺せたと思っていたのか?」

「………」

沈黙は時に答えを示す。今回は正しくその時であり、何も為せていなかったことが心に深い影を落とす。
これでは道化だと、巨悪を討った虚像に踊り続けた哀れな勇者を幽者が嘲る。落胆を隠そうともしないリヒトを男性は一瞥した。

「彼女に統制された教団は、統率された軍すら凌駕する。貴殿が全力を振り絞って叩き込んだ一撃…それは確かに、彼女の生命を脅かした。だが、それ止まりだったのだ。正直吾輩も引くくらいに迫真の演技で偽りの死を悼み、瞬く間に…異常に手際良く逃散を始めた『メリちゃん最かわ教』に、貴殿も疑問に思ったのではないか?」

「…ああ」

リヒトはデュンケルの問いに首肯で答える。同時に、忌まわしき日を思い出した。
勇者が死に、幽者が生まれた日。弑逆が行われた晩餐会。その会場には、無数の物言わぬ肉塊が転がっていた。

その片隅には、肩を抱き合い怯える魔族の少女が数名いた。表向きは敗戦した『メリちゃん最かわ教』。その領土は接収され、人民はレムカーナに帰属した。したのだが。
数があまりにも少なすぎたのだ。人も。物資も。何もかも。あれほどの軍勢がいたのに、影も形も見当たらなかった。

当時は精神的に疲弊していたので何も気にならなかったが、時を経て多少の余裕が生まれた今なら解る。あの戦いの違和感が完全に無くなった。
そりゃ、リーダーが死んでないなら統率は乱れないわな。と、リヒトは納得する。

納得しつつも、戦いの無意味さに気付き、俯いた。

「戦い自体には意味はあったさ。それは貴殿が一番知っていることだろう」

落ち込みに落ち込み、知らずのうちに冥光が身体から漏れ出しているリヒトを気遣ったのか、デュンケルは口を開く。

「その過程はどうあれ、レムカーナとカロゥスの戦争は終わり、一応の平和を迎えた。それだけは紛れもない事実だ。それに、遊びと捉えていたのはメリオゴストーグたちのみであって、貴殿ら人類は自身の存亡を懸け戦っていた」

「それで良いだろう。意味や理由など人によって違うのだから。自身が正しいと信じ行動したなら、それが正しいものさ」

「………」

なおも無言を続けるリヒトに、デュンケルは言葉を投げかける。程なくして、周囲に充満していく冥光は消滅した。

「…まさか俺が、魔族に慰められる日が来るとはな。あの人がいたら腹を抱えて笑ってるだろうな」

「割り切れ、とは言わん。だが、無意味だ無駄だと嘆く必要は無い。貴殿がそうやって諦観することこそが、犠牲になった命への侮蔑となる」

無駄だと嘆き無意味だと決めつけることが死者を侮蔑することになる。ライルといいデュンケルといい、哲学的なことばかり言われている気がするが、魔法都というロケーション故に知識人が集まっているからなのだろうか。
しかし、彼の言うことも一理ある。ここで自分が嘆くのがそれこそ、仲間の死への侮辱となるなら。彼らの名誉のためにも控えるべきだ。過去を悼むのと悔やむのは違うのだから。

精神状態を少し持ち直し、ピシャリと顔を引っ叩く。鋭い痛みが走り、弱っていた心を奮起させた。

「…醜いところを見せたな、すまない」

「別に吾輩は気にしておらんよ」

ジュースにお肉にと食事を堪能しているとこらから見るに、全く気にしていないようだ。
彼はただメモ帳の情報を伝えているだけなのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。

「気を取り直したところで、魔王に関する情報をもう一つくれてやろう。お口直しというやつだな」

「さっきみたいなのは勘弁だぞ」

「心配ご無用。今度は吾輩も気を遣っているのでな」

と宣言したデュンケル曰く、イルステッド最東端の『イミナの岬』と呼ばれる場所に屋敷があるらしい。
そこの主は『エル・ヒュプティル』。近郊の魔族を統べる女王にして、《眠りの魔王》の異名を持つ。その異名の通りほぼ年中眠りっぱなしで、一年のうち起きている時間は十時間にも満たないとの噂があるが、食事などはどうしてるのか気になるところである。
普段は集合的無意識内を漂い人の見る夢の世界を渡り歩いているらしく、気まぐれに人に預言をしたり悪夢から救ったりしているのだとか。
嘗て、無理に眠りから目覚めさせた魔王がいたらしいが、その後の消息は一切不明と恐ろしい話もある。
『モルちゃん』という名前のバクのぬいぐるみを肌身離さず持ち歩いて(抱きしめて寝て)いるという。

「destani destani dal viaggio infinito(目覚めよ 目覚めよ 終わりなき旅より)。醒めない悪夢に苦しむ時はこの言葉を二度呟くといい。これは魔族間では有名なおまじないでな。これを呟くことで、眠りの魔王が悪夢から救ってくれるのだ。吾輩は悪夢など見たことがない故、使ったことは無いが」

「人間が使っていいのか?」

「良いのではないか?」

半ば投げやりな返答に呆れつつも、リヒトはおまじないの言葉のメモを取る。もしかしたら、本当に効果があるのかもしれない。そんな僅かな希望を込め、ペンを走らせた。

「しかし、人間の料理は美味いな。魔族にも料理上手な者はいるが、割合は比較にならん。どこで食べても一定水準の味が保証されるのは、健啖家な吾輩としては好ましい」

舌鼓を打つデュンケルにリヒトは同意を示す。食事というものには荒んだ心を癒す効能がある。
生きているものは皆腹が減る。どれだけ苦しい環境にいても。どれだけ心が傷ついていても。平等に。
そんな時に食う食事が不味ければ、より心は荒んでいくだろう。逆もまた然り。
故に、人類は料理に対する研鑽を怠らなかった。必ず食事をするのならより美味なものを味わいたい、と考えるのは当然だからだ。

「デュンケルメモにはまだまだ余裕がある。貴殿が望むなら、食事一つで情報を与えよう。等価交換というものだな」

「ならこれとこれとこれを奢るんで情報をください」

「交渉成立である」

メニューから男が好きそうな料理を見繕い、注文する。とりあえず肉料理を選べばなんとかなるものだ。

「美味い」

なんとかなった。

「魔王の更に上の存在…俗に言う大魔王ってのはいるのか?」

リヒトの問いに、口に含んでいたものを飲み込んだデュンケルは答える。メモ帳を見るまでもないようだ。

「全ての魔王が忠誠を誓う、大魔王という者はおらんよ。貴殿ら人類が同じように崇める人がいないようにな」

「なるほど」

「だが、それは今までの話だ。今後も生まれ得ないと誰が言えようか。未来のことは誰にも解らぬ。故に、今後も決して大魔王が生まれない…と断言はしない。もしかしたら、明日にでも出てくるかもしれんな」

国王が頭(こうべ)を垂れる相手がいないように、魔王が忠誠を誓う相手も存在しない。だがそれは現時点の話であり、今後どうなるかは解らないから敢えて断言はしない。
なるほど、至って普通な解答だ。子供でも解ることである。リヒトはまた一つ賢くなった。


「次は…そうだな。人類に友好的な魔族はいるか?」

「変なことを問うものだ。イルステッド内で魔族と敵対していたのはレムカーナの民くらいだろう。他は中立しているか友好的かのどちらかだ」

「まぁその要因は領土争いをしている最中に、魔族まで相手取っていては堪ったものではないからだろうが。自身を脅かす脅威を排除した後に、魔族と変わらず友好的に接するかまでは解らんな」

この世界には、未だどこの領土にも属していない土地が膨大にある。人類意志の統一などは全くされていないため、無数の小国が覇を競っているのが現状だ。ある意味ではリヒトたちもそのうちの一つとも言える。

「手っ取り早く魔族と交流するなら、緋桜郷に向かうが吉だな。あそこの頭領は鬼…魔族の一種族だし、多種多様な人種があの郷で暮らしている。治安も申し分ない」

「行ったことないんだよな俺。素性がアレだし」

魔族を散々殺してきた自分が、魔族の統べる街に行っていいのか。そういう後ろめたさもあって、緋桜郷に足を運んだことは無い。
多少の反感は承知で事を起こすのが、今の自分に必要なものだと言われればそれまでなのだが。未だに二の足を踏んでいるのは、殺めることの重大さを知っているが故か。

デュンケルと会話をしながら、リヒトはそんなことを考えていた。

「あと一つ聴けるんだっけか。んー…なら、やっぱり魔族内でも差別とか迫害ってあるのか?」

「人類がそうするように、魔族でも同様のことはある。弱者は虐げられ淘汰される。それは、自然界でも当然起きていることだ。生命の背負う原罪とも言えよう」

「…されてる側はどうしようもなく辛いものなんだがな」

リヒトはそう呟き、デザートのプリンを口にする。トッピングされていたチェリーはマナに食べさせる。そこまで美味ではなかったのか、僅かに渋面を作っていた。

光の差し込まない部屋。音の聞こえない密室。規則正しい時間にのみ支給される食事。何を言っても。願っても。それは聞き届けられず、閉じ込められた。
忌まわしき記憶を思い出し、リヒトは微かに笑う。あれだけの苦痛によく耐えられたと、過去の自分を褒めちぎりたいくらいだ。

「だから俺は、助けたいと思った」

「虐げられている者を、か?」

首を振り答える。デュンケルは暫しの間黙考し、食事を再開した。その行為の意味をリヒトは考えることはせず、同様に食事を続けた。

デュンケルと何を話すかを↓1にどうぞ。

ドラゴン調伏にご興味ない?

腹が膨れたので、ボードゲームやトランプに興じる二人。そのうち一人が嘗ての勇者だと思う人はいないだろう。
ちなみに、勇者と呼ばれる人自体はリヒト以外にも当然いる。いるのだが、この大陸に該当する者はリヒトしかいない。
別の大陸に行けば他にも数名いるが、イルステッドは魔族との関係がそこまで険悪ではないので勇者の数が少ないのは当然のことだ。

「ドラゴンの調伏、か。もちろん興味はあるし、試みたこともある。こう見えて、吾輩はそれなりに実力はあってな。吾輩に見合う力を持った龍に挑んだが、結果はお察しの通りだ」

と述懐するデュンケルの表情は、諦念を孕んでいた。どうやら手懐けることは出来なかったようだ。

「低級なものはともかく、ドラゴンの調伏には才能がいる。ドラゴンを打ち負かす実力は当然として、最も重要なのは気高い彼らを従える…従うに足ると認識させるほどの格調、即ちカリスマだな。これが無ければ始まらない」

「…当たり前だが、それを有する者は希少だ。故に、一般的な龍騎士たちは低級のドラゴンを従えているのだし、低級なものでさえ相応の才能を必要とされるのだから、数が少ないのだ」

「あんたがダメだった理由は?」

「推測でしかないが、吾輩には野心というものがさっぱり無くてな。他者を従え支配するよりも、この世に無数に点在する面白いものを探しに行く方が魅力的だったのさ。そういった部分を見透かされたのかもしれん」

「…なるほどね」

野心。カリスマ。実力。その全てが今の自分にあるのかは分からない。だが、やらないことには何も始まらないことを知っている。
ならば全力を尽くすだけだと、リヒトは調伏の決意を固めた。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。デュンケルとの交流を終了します。

色々教えてくれてありがとう、助かったとお礼して終了

「色々教えてくれてありがとう。おかげで助かったよ」

「吾輩の知見が役に立ったのなら何よりである。健闘を祈っているぞ」

何杯目か知らないジュースを飲み干しつつ、デュンケルは手を振る。この出逢いに感謝を、と返し、リヒトは部屋に戻った。

「あれ、もうご飯終わったんですか?」

そこには、シャワーを終えたウィンディがいた。普段は二つ結びにされている長い緑髪は、髪留めで括られていた。風呂上がりなのもあって艶は一段と増しており、湯気で上気した肌は艶やかに見える。だがまだまだ彼女はお子様だ。他人を魅了する妖艶さは欠片も無い。

「ああ。寧ろ、君のシャワーが長すぎだ。ウィンディといいシルヴィアといい、女性は皆こうなのか?」

「女の子は色々とケアに気を遣うんですっ!マナちゃんも何か言ってあげてください」

ふくれっ面のウィンディはマナにも説教を期待するが、どうでもいいと一蹴される。賛同者がいないことに気づいたウィンディは、少ししょぼくれた。

「そうだよね、妖精だもんね。私の悩みを共有してくれる人がいない…これは前から変わってないけど…」

ご飯を食べてきますとだけ言い残し、ウィンディは部屋を出て行く。特にやることも無いので、適当にフルーツを買ってマナに与えることにした。
やはりと言うべきか、新鮮でないフルーツはお気に召さなかったようだ。

何をするかを↓2にどうぞ。
この行動が終わると、フェルリティアを発ちます。

踏み

調伏対象について情報収集する

ゲイザリオン 判定↓1コンマ


グラトルス 判定↓2コンマ


01~50:危険地帯の情報のため成果なし
51~80:一種の情報を獲得
81~99:奇数なら二、偶数なら三種の情報を獲得

00ならどうなる?

こんにちはする

00なら無条件降伏してきます。
ゲイザリオン、グラトルスの情報を募集します。ゲイザリオンは二つ、グラトルスは三つの情報を獲得出来ます。
前回の魔族の情報のように、どういった情報が欲しいかを記載してください。

過去問題クリアしたやつの居場所

生息地について詳しく

弱点

残りはグラトルスの情報二つとなります。

主な攻撃手段

詳しい生態

食べ物が分かれば毒を盛れるかもしれない。睡眠時間が分かれば寝込みを襲えるかもしれない。

「戻りました」

食事を終えたウィンディが部屋に戻ってきた。手に持つ皿にはたくさんのスイーツが盛られており、見ただけで口の中が甘くなる。
心なしか、マナも引いているように見えた。

「まずそう」

マナは辛辣な毒を吐く。人工物を毛嫌いする彼女からすれば当然の反応ではあるが、もう少しオブラートに包むことは出来なかったのだろうか。
歯に物を着せぬ清々しい言いっぷりに、ウィンディは苦笑することしか出来なかった。価値観が違うのだから、どれだけ力説しても理解など得られないことを知っているからだろう。

「あっそうだ。リュクスさんに言伝です」

「誰からだ?」

「デュンケルって人からです。なんか角生えてましたけど」

言い忘れていたことでもあったのだろうか。とりあえず、続きを促すことにした。

「『調伏するのであれば単騎で挑め。徒党を組む軟弱な者に、気高きドラゴンは興味を示さん』。とのことです」

可能な限り彼の口調を再現したのだろう。声色を低くしたウィンディの声は、どことなくデュンケルの姿を想起させる。だがウィンディ本人は可愛かったので二人が悪魔合体を起こし悲惨なことになりかねない。脳内イメージを速やかに消し去り、無かったことにする。
余談だが、デュンケルの真似をしていたウィンディは両手で角を作っていた。意外とお茶目なところもあるようだ。

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出発の準備を終わらせ、スワローネストを出る。ウィンディとハリゴーディンに荷物番を任せ、リヒトは再度情報屋を訪ねる。が、結果は変わらない。
また泣きが入ったのですごすごと退散することになる。俺は悪くないはずなのに、とリヒトは溜め息を吐いた。

「にゃん」

喉を鳴らしながら近づいてくる一匹の猫。愛くるしい顔立ちのそれは、ご飯を催促しているように見える。
今回だけだと干し肉を千切り投げてみると、勢いよくがっついた。
ペンダントを付けているが全身は汚れていて、飼い猫にはとても見えない。おそらく野良猫だろう。なかなかご飯にありつけていないのかもしれないと、僅かな憐れみと共に干し肉を二切れあげた。すると。

『茶番は終わりにしよう。私は君に用があってきたんだ』

「………っ!?」

突如、猫の口からそんな言葉が放たれた。猫は食事を止めており、細めた目でこちらを見据えている。
リヒトは眼前の猫を注視するがどう見ても猫だし、感じられる気配も猫のそれだ。だが、声だけは人間のものだった。
何事かと身体を屈めるリヒトに、やれやれと猫は呆れを示した。

『私は敵じゃないよ。情報を欲している君に、望んでいる物を与えに来たのさ。無論、お代は頂くがね』

「…なら、正体を見せてほしいものだな」

『生憎とそれは出来なくてね。君のところまで行くのは怠くて敵わない。私のところまで来てくれれば自ずと解るさね』

それっきり、猫は何も喋ることなく裏路地を走っていった。望んでいる物を与えに来た、と大言壮語した猫を見逃すまいと、リヒトも同じく駆けていく。

程なくしたら行き止まりに突き当たってしまった。猫が呑気に顔を洗っているので、目的地はここで間違いないようだ。
煉瓦造りの壁に囲まれた行き止まり。事件が起きるにはうってつけのロケーションである。まさか通り魔がスタンバイしているわけではあるまいと周囲に気を配るが、何も感じなかった。

『なにやってるんだか。まぁいい、そこの飛び出てる煉瓦を一個抜いてくれ』

「…わかった」

警戒を続けながら指示に従う。何の抵抗も無くずるりと抜け落ちたそれに、少しだけ拍子抜けする。
煉瓦が嵌っていた箇所に目を向けるとそこには、小さな宝石が置かれていた。

「売れば金になるか?」

『売るなよアホンダラ。それは私の部屋に繋がる鍵さ。この猫の首元にぶら下げてるペンダントに嵌めたまえ』

「軽いジョークだよ」

暴言混じりの指示に若干困惑しつつ、指示通りに宝石を嵌めた。すると。

空間が捩れ、闇に呑まれた。

闇の中を漂い、遠くで存在を主張する微かな光に手を伸ばす。遠くて小さなそれにはとても触れることは出来ず、手を伸ばすのを止めた。
その直後に、眩い閃光が視界を埋め尽くす。堪らず目を閉じ、光が収まるのを待つ。閃光が消えると同時に瞼を開くと、部屋の中にいた。

「ここは…?」

警戒を強め、周囲を観察する。窓には板が貼り付けられており、光は一切差し込まない。
机には無数の実験器具が置かれており、紫色の煙を上げている物やぐつぐつと中身が煮え立っている物などがある。
シルヴィアの私物にも同じような物があったので、フェルリティアで普及している物なのだろう。どういう用途なのかはさっぱり分からないが。

「ようこそ客人よ。この部屋の主として歓迎しよう」

「誰だ…っ!?」

背後から聞こえた声に反応し、聖剣を取り出しつつ振り向く。そこには、見知った顔だが知らない人がいた。

「…んー?人の顔をジロジロ見て失礼じゃないかー?プリンでも付いてるかね?」

「シル…ヴィア…!?」

女性の顔はシルヴィアとそっくりだった。瓜二つだった。似ていない部分を探す方が難しいくらいに。
声も、彼女のそれと全く同じだった。シルヴィア本人だと言われる方が納得出来る。寧ろそうであってほしいと、現実逃避してしまう。
だが、彼女は死んだ。レムカーナを目前にして事切れた。今は墓の下で、安らかに眠っている。

呆然とするリヒトに対し、女性はとても不機嫌な様子で椅子に座った。

「シルヴィアぁ?あんな愚劣な反逆者と間違えられるとは困るね。そういうのは冗談でもやめてくれないか」

「あんたはシルヴィアの何を知ってるってんだ!?」

「あーそういうのはいいから。情報が欲しいから私の指示に従ったんだろう?なら教えてやるから無駄口を叩かないでくれ。腹が立つし時間の無駄だ」

「それとも、苛立ったからとか弱い女を殺すのかね?散々殺してきた君からすれば、無抵抗の女を手に掛けるのなんて造作もないかなぁ?」

「なっ…!!??!」

ニタリと嗤った女性は首元を指差す。どうぞご自由に、と言っているようにも見える。しかし、彼女の思惑に乗ってはならない。ここは耐える。耐えなければならない。
いくら彼女を侮辱されようとも、ここで手を出してしまえば。もう戻れなくなる。

「そうだ、それでいい。ったく、君は感情に身を任せてばかりでは損をすることを知らないのかねぇ…」

不機嫌なままの女性は紅茶を飲みつつ椅子を指差す。聖剣を収納し、リヒトはそれに応えた。

シルヴィア似の女性から振る舞われた紅茶に口を付ける。ノンシュガーのそれはリヒトには苦く顔を顰めるが、一息に飲み干すことで難を逃れた。

「お子様みたいな舌をしてるな、君は」

態度から見透かされたのか、おかわりを注いでいる女性はそんなことを呟く。紅茶で満たされたカップに視線を移し、溜め息を吐く。

「無駄口や世間話が嫌いなら、率直に問う。あんたはグラトルスとゲイザリオンを知っているのか?」

「私を馬鹿にしているのかい?その二匹の情報なら当然持っているさ。君が求めていたことも同様に。…だから、声を掛けたわけだし」

「そうかい。なら話は早い。俺の質問に答えてくれ」

「さっさと言いなよ」

リヒトは頷き、問う内容を伝える。暫しの沈黙の後に、女性は口を開いた。

「なんだその程度か。では順番に答えてさしあげよう。ペンの用意はよろしいかい?」

「ああ」

羊皮紙と羽ペンを携えたリヒトは、話が始まるのを待つ。カップが空になったのを確認した女性は、ゆっくりと話を始めた。

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曰く、ゲイザリオンの生息する光亡ぶ湖沼は、イルステッド内陸部の密林地帯に存在する。湖沼に近づくほど湿地が増えていき、ある地点からは膝下まで水没した地形に変わる。
《瘴誘の黒枝》と呼ばれる黒い木が生え出したら、そこが光亡ぶ湖沼だという証左となる。
この黒い木は瘴気を発生、誘引しており、故に、光亡ぶ湖沼は昼夜を問わず闇に包まれている。
そのため、闇夜を好む魔物や不死種(アンデッド)が無数に蠢いており、湖沼に生息する生物は皆瘴気に冒され、足を踏み入れた生命を嬉々として喰らう。

ゲイザリオンはその湖沼の最深部、『冥王の玉座』という大岩の上で、空を眺めているらしい。

次に教えてくれたのはゲイザリオンの出した無理難題を、見事解き明かした英雄の居場所。
とは言っても、数十年の間でそのような偉業を成し遂げた者など片手で数えるほどしかおらず、その大半は寿命や悲劇によって死を迎えている。

唯一消息を絶っておらず、現在の位置を確認出来ているのは、光亡ぶ湖沼周辺に一つだけ存在しているセーフハウス。無謀な挑戦者が心を休めることの出来るたった一つの聖域を監視している『憩いの守人』だけである。

次いでリヒトが求めたのは、グラトルスに関する情報。女性が提供したのは、グラトルスの生態に関わる情報だった。

『霊峰の女帝』と呼ばれるグラトルスは歯向かう者に氷雷の裁きを下し、従属する者には寛大なる慈悲を与える。
普段は下僕から貢がれる果実を好んで食しており、必要に応じて外敵を狩り血肉を喰らう。
また、下僕が狩りを出来ない状況であれば、率先して霊峰から離れて獲物を捕らえてくるという。
グラトルスは自身のテリトリーに氷柱を突き立て、電撃痕を残している。とても特徴的なので、グラトルスのテリトリーか否かはそれを見れば一目で解る。

氷雷龍の名が示す通り、グラトルスの取る攻撃手段はそのほぼ全てが氷、雷のいずれか、又は双方を利用しており、対策を講じていなければその巨躯も相まって即死級の一撃となる。
特筆すべきなのは、冷気、電撃を放出しつつ放たれる尻尾の薙ぎ払いや叩き付け、前脚での踏み潰しだろう。巨大な図体から行われるそれはシンプルに強いし、直撃は避けられてもその余波で重傷を負う可能性もある。
そして、言うまでもないが氷雷入り混じるブレスも注意が必要だ。一説には、霊峰の独特な形状はグラトルスのブレスによって削れて出来たものだとも言われている。

どのような生き物にも苦手なもの、弱点というのは存在している。それは幽者であるリヒトや氷雷龍と畏れられているグラトルスも例外ではない。
吹雪が吹き荒れる霊峰を縄張りとしていることから予想は付くだろうが、グラトルスは炎、というより高温に滅法弱い。
冷気の生成も困難になるし、電撃の操作にも熱は悪影響を及ぼすようだ。しかし、それでも相当に強大な存在なので弱点を突くだけで勝てるわけがないし事実、過去には全身を火で焼きながら特攻を仕掛けた大馬鹿者がいたらしいが、炎に焼かれることを厭わなかったグラトルスの前脚に掴まれ、そのままこんがり肉に変えられてしまったのだとか。

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「…とまぁ、これくらいかね」

語り終えた女性は、食器を片づけ始める。リヒトが口付けた物も直しているので、全ての情報を出し終えたのだろう。
代金がいくらかリヒトは問うも、返事は無い。彼女の態度を訝しみつつ、どこに出口があるのか考えていたが、あることに気づく。

ここには出口が無い。扉のようなものは目覚めた時に見つけていたが、ドアノブなども無く、押すも引くも出来ないのだ。
これはいったいどういうことかと首を傾げていると、突然強い衝撃がリヒトの胴体を襲った。

「がっ…!?」

受け身も取れず地面に仰向けの形で倒れたリヒトは、揺れる視界で女性の姿を捉える。
シルヴィアと同じ顔立ちをした女性の眼は、鈍色に輝いていた。

「お代はきっちり頂くと言っただろう?少しの間我慢したまえ」

「何するつもりだ…っ!?」

女性はリヒトにのしかかり、首元に指を這わせる。微かにくすぐったかったが、それよりも不信感と警戒心、恐怖心が勝った。
何をされるのかわからない。どうすれば良いのかもわからない。ここで彼女を殺めたとして、この部屋から抜け出すことが出来るのか。確証は一切無く、そもそもここがどういう場所なのかも想像が付かない。
もしや、罠に掛けられたのかと女性に疑いの目を向けるが、女性は心外そうに舌打ちをする。

「そんな野蛮なことはしないさ。君の命に興味は無いし、金だってどうでもいい。求めているのは、君の生命力さ…!」

「ぎ…あぁ…!?」

それだけ言うと、女性は頸部に顔を近づけた。鈍い痛みが首筋に走り、生暖かい液体が流れていく。
それと同時に、全身から熱が奪われていく。麻酔のように痛みが全身を駆け巡り、思考を麻痺させる。夢を見ているように、意志が鈍っていく。
振り解こうとしても、身体は動かない。心が拒んでいるのに、身体が言うことを聞いてくれなかった。
永遠にも思える微睡みの中で、必死に自己を保つ。舌を噛むことで意識を繋ぎ、踏み留まった。
艶やかな吐息と共に女性が顔を離すと、肉体の感覚が元に戻る。反射的に、女性を突き飛ばして距離を取った。

「急に何しやがる…!?」

「痛ったた…。女に乱暴するんじゃないよこのボケナス」

突き飛ばされた反動で頭を打った女性は、恨めしそうにリヒトを睨みながらそんなことを呟いた。

謎の女性に一つだけ質問することが出来ます。
質問したいことがあるなら↓1にどうぞ。
これで今回分の投稿は終わりです。

もう二度と会いたくないが最後にひとつ聞かせろ
何故シルヴィアと同じ顔をしている

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「ふざけるなよ…!こっちは情報の対価が何かを聞かされてないんだ!俺の生命力が欲しいなら、最初に言ってくれりゃ良かったんだ!それなら、理解も心の準備も出来てたってのに…」

それに、彼女の要求自体がリヒトには理解出来ないものだった。
こちらの正体を知って法外な料金や物品を請求するならまだしも、彼女が要求してきたのは生命力。人が望むには明らかにおかしいものだ。
病気で死にかけているから生命力を補って病状回復を図ったのかと思ったが、そうでもないようだ。
彼女からは虚弱している者特有の気配を感じない。体調は至って普通だ。

「ほう?私が予め要求を伝えておけば、君は私に生命力をくれたのかい?そのまま殺されるのでは、と疑心を抱くことなく大人しく吸われていたのかい?」

「………」

首を縦には振れなかった。彼女の言う通り、絶対に生きている保証も確信も無いから。
無数の戦闘を経て、自身の肉体や精神が尋常の域を越えて鍛えられていることは自覚している。が、彼女がそれを凌駕している可能性を否定出来ないのだ。
率直に言うと、彼女に生命力を吸い尽くされて干からびるかもしれなかった。故に、要求を聞いたからと言って大人しくこの身を差し出すことはしないかっただろう。

「…でも、フェアじゃない。同意も納得も得ずに一方的に奪うのは、間違ってるんじゃないか…?」

塞がった傷を抑え、僅かに後退する。彼女が一瞬、後悔の感情を見せた気がした。

「それはまぁ…悪かった。だが、私にも退っ引きならない事情があったんだ。君から生命力を貰わなければ、非常に困ったことになってたんだよ」

「これでも君にはそれなりに感謝しているつもりだ。敵意を抑えていただけるとありがたい」

「…どの面下げて言ってんだ、あんた」

リヒトは表情を険しくして、光の刃を作り出す。諦めたように、女性は手を翳した。黒い渦が天井を呑み込み、存在を主張する。

「あー、私が全面的に悪かった。本当に申し訳ない。道は作ったからそこから出て行ってくれ。これで私たちの関係は無かったことにしよう」

彼女の言から察するに、上の渦巻きに入れば元の場所に戻れるのだろう。
それよりも先にはっきりさせたいことがあったので、帰還は後回しにする。

「…こちらとしてももう二度と会いたくない。が、最後に一つだけ聞かせろ」

「ん?」

「何故、あんたはシルヴィアと同じ顔をしているんだ?彼女に姉妹がいた、なんて話は聞いたことが無い」

「あんたはいったい、何なんだ?」

リヒトの問いに、女性の視線の温度が数度下がった。

「これから私たちは赤の他人になるというのに、私が何なのかを知ることに意味はあるのかい?」

もったいぶるような、隠しているような。女性はそんな素振りを見せる。リヒトは首を振り答えた。

「意味があるか。それを決めるのは俺だ。あんたが勝手に決めつけるな」

真っ直ぐな視線が女性を穿つ。数瞬の思考の果てに、女性は溜め息を吐いた。

「…君の想像通り、私はただの人間じゃない。シルヴィア・レイナスの姉妹や近親でももちろんない」

「私は…悪趣味な貴族共によってシルヴィアの組織をベースに産み出された人造人間(ホムンクルス)さ。今は離反して、コソコソと生き永らえているがね」

「ホムンクルス?そんなの知らないな」

「そりゃそうさ。フェルリティアでしか使われていない技術だからね。相当上流層と懇意にしてる奴くらいしか知らないよ」

何度目か知れない紅茶を飲み干し、女性は吐息を漏らす。カップの縁を指でなぞり、ペロリと舐めた。

「私たちホムンクルスは食事を必要としない。厳密に言えば、食事から栄養を摂取することが出来ないんだ。生きるためには、他者の生命力を頂戴するしかないんだよ」

「…つまり、あんたは生命力が枯渇しかけてたから、俺から貰おうとしたってのか?」

「そう受け取ってもらって構わない。君ほど上質な人は滅多にいないからね。おかげで数ヶ月…節約出来れば一年は生きていけそうだ」

「…私のような紛い物はこの世界で生きていくには肩身が狭くてね。表舞台に立とうものなら間違いなく恥辱の果てに殺されるし、かと言って裏で生きていくにしても、そう満足に食事にありつくことも出来ない。一般論で言えば、他者に寄生することでしか生きられない私たちは、存在することすら罪の死ぬことが望ましい穢れた命なのさ」

でも、と女性は言葉を続ける。

「いくら私が人のエゴによって産み出された…摂理に反した存在であろうと…。生きたいという意志は私個人の持つものだ。それを否定する権利は、誰も持ち得ない…!」

確固たる意志を秘めた目がリヒトを射抜く。ここで何を言おうと、彼女はそれを笑い、独りで生きていこうとするだろう。
リヒトに彼女を助ける義理は無い。謀られ殺されかけた身なのだ。これで救おうとするなど聖人にも程がある。

「…勝手に頑張れ」

それだけ言い残し、リヒトは闇に消えた。

「ほえ~。…やっぱり辞めませんかドラゴン調伏。命は大事にするべきですよ」

「はははこやつめ」

女性から得た情報を伝えた結果、ウィンディが開口一番に放ったのがコレだ。笑止千万とリヒトは無慈悲に切り捨てた。
誰から得たのか。その時にどんな一悶着があったのかは完全に秘匿する。ただでさえシルヴィアの死で心に傷を負っているのだ。余計な負荷を掛けるわけにはいかない。

「あのことはだまっておく」

「…サンキュ」

ウィンディに気づかれないようにこっそり耳打ちしてきたマナに謝辞を伝え、荷物を背負う。
その間、ハリゴーディンは機体を伸ばしたりと準備運動をしていた。何やってんだ。

「そういえば、ドラゴンと戦う時は一人じゃないと、従属するに足る存在か見定めてもらえないんですよね」

デュンケルの助言を思い出したウィンディはふと、そんなことを言ってきた。リヒトは肯定を示す。

「なら私要らなくないですか?」

「要らないな。俺はともかく君の実力だと危険だし」

戦いに頭の先までどっぷりと浸かっているリヒトとは違い、ウィンディは平和な街で精神をズタボロにされてきただけのただの小娘だ。
才能は申し分ないが、経験が足りない。足りなさすぎる。皆無である。
そして身体も弱いから霊峰や湖沼の極限環境を生き抜けられるか甚だ疑問である。

どうしたものかと、リヒトは頭を悩ませた。

これからどうするかを↓1にどうぞ


A:ドラゴン調伏に向かう ターゲットを併記
B:やっぱり辞めておく
C:その他

ここまでやったし1体位は……
A ゲイザリオン

出来る限りのことはした。夢のためにも今は死ねない。いざとなれば、躊躇せず逃走を選ぶ。既に覚悟完了していたリヒトはウィンディたちに指示を出す。暫く戻ってこないから、拠点でゆっくり休め。と。

「そのまま私たちを放置して豪遊とかはやめてくださいね。…本当に、やめてください」

「するわけないだろ」

彼女たちを置いて放蕩に耽る図太さをリヒトは持ち合わせていない。そんな彼に、彼女の言う選択肢は初めから存在していなかった。

夢のためにドラゴンが必要なのか。そう疑問に思う人もいるかもしれない。確かに、夢の成就そのものには不要とまでは言わないが、是が非でも欲しいものではない。
だが、これは通過儀礼である、とリヒトは考えていた。強大な存在に認められる自分でなければ、国を興すことなど夢のまた夢。決して見えることは叶わぬ幻なのだと、認識している。
だから、挑戦するのだ。たとえ無謀だと断じられても、可能性はゼロではないのだから。諦めてしまえば、そこで潰えてしまうから。
出来ない出来ないと逃げてばかりの人に、人は信を置いてはくれないから。

導きの門を出て、ウィンディにマナを託す。フードを脱いだ時に逡巡する様を見せた気がするが、たぶん気のせいだろう。
彼女に信用されるようなことはしていないし、彼女が今後人類を信用することもない。ただの思い上がりだと、思考を切り替える。

「…では、少しの間お別れですね。お留守番、頑張ります」

『ワタクシは料理なんて作れないので早く帰ってきてくれると助かります』

「自炊くらいなら出来ますっ」

むすっと頬を膨らませるウィンディに苦笑し、リヒトは背を向ける。
リヒトが視界から消えるまでの間、二人はずっと手を振っていた。
幽者が見えなくなるまでの間、マナがどんな表情をしていたのか。それは、本人のみぞ知る。

移動ペースを↓1にどうぞ。


A:最短距離、最高速度で走り抜ける 道中イベント一切無し
B:普通のペース 道中イベント:3
C:自由安価

A

A

ウィンディやリヒトの魔法を色々と考えているのですが、皆様の知恵を借りたく存じます。
具体的には、魔法を行使する際の詠唱がさっぱり思いつきません。
お力添えいただけると幸いです。

一般的な魔法は日本語、英語が使われてる場合がほとんどですが、リヒトの冥光魔法はラテン語が用いられてます。


【名前】その名の通り。
【属性】その名の通り。
【詠唱】その名の通り。
魔法の概要になります。


この世界の魔法


生物非生物を問わず万物が内包し、世界中に普遍的に存在する魔力を、理論に基づいて制御することにより、現象を発生させる学問。
理論さえ理解していれば使えるので、魔物だろうと平気で使ってくる。
簡単な魔法、小規模な魔法には詠唱は必要無いし効率を考えると無駄まであるが、大規模な魔法の場合は補助の役割を果たすため半ば必須。

すまねぇラテン語はさっぱりなんだ
考えてみたけど魔法はハードル高いなあ…

【名前】 彼方
【属性】 空間、時
【詠唱】 遥かを統べよ、時の果てまで

彼我の距離をゼロにする瞬間移動魔法
古い魔族や神族に伝わる失われた禁術であり知る者はほんの一握り
魔法の習熟を極めた者は時間さえ越えると言われている(イメージはデロリアン)
通常の使用では対象との障害物が無い場面が推奨

改めて考えたら二人が使う魔法としては適してないな…
やっぱり難しい…

現時点で作ってるウィンディの魔法はこんな感じです。()内が文字に振るルビになります。
意訳したり語感に合わせて単語を変えたりしても大丈夫です。自分が作ってるやつも大概なので。

【名前】天墜の嵐(ブレイクダウン)
【属性】風魔法
【詠唱】
生命運ぶ大いなる風よ。万象と共に常世を巡り、流れるならば。我が祈りも乗せ給え。
届かぬ風が無いように、我が祈りも彼方に届く。彼岸に消えし師に捧げよう。
この風は、我が祈りを紡ぐ風なり。障壁砕き裁断する、暴虐の嵐なり。
空は今、颶風に流され地に墜ちる。汝らもまた、墜ちゆく万象の一つに過ぎず。無為に散りゆく我が身を呪え。

風を操作して低気圧と高気圧を人工的に作り出し、局所的なダウンバーストを発生させる。
暴力的なまでに強烈な風は全てを薙ぎ倒し、大地を抉り吹き飛ばす。その際には凄まじいまでの積乱雲が発生しており、あたかも空が墜ちてくるように錯覚させる。
シルヴィアの助言を基にウィンディが創出した魔法であり、その緻密にして芸術的な理論は、彼岸の大賢者にも届き得る完成度を誇る。
この魔法を行使した後は一週間くらい死ぬ。

【名前】 穿牙冥墜
【属性】 闇
【詠唱】
闇なる者の力において、我が前に立ち塞がりし者はその命運尽き、暗き穴を穿つものなり

元は光属性のリヒトの切り札のひとつ
堕ちた事で闇属性になり詠唱の文言も多少変化している
魔翌力を一点に収束させ貫通力の極めて高い光を放つ
射程は込める魔翌力により変わり、最大射程は数㎞にも及ぶが威力は減衰する
近距離でなら貫けないものは少なくともこれまでは出会っていない

【名前】清浄な空気(クリアスペース)
【属性】風魔法
【詠唱】
地を揺蕩いし自由の風よ。今一度、我が意に応え律されん
穢れを濯ぎ、湿気を祓い、楽園を此処へ

空気中の不純物や瘴気、湿気などを取り除き、空気を綺麗にする魔法
外部との熱交換により小規模範囲の気温を操作することもできるため、専ら室内空調用の魔法として使われている
本来は一般的な手段で学習できる生活魔法の一つだがこれはウィンディの手でアレンジが加えられており、風の膜で空間を区切ることにより屋外でも快適空間を作り出すことができるようになっている
規模の小さい魔法のため詠唱が使われることはほとんどない

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単独行動を始めたリヒトの行軍速度は、常人のそれとは比較にならない。他者を気遣う必要が無いことも一因ではあるが、その最たる要因はリヒトの行使する光魔法の特性にある。
光は速い。とにかくすばしっこいのだ。それを纏ったリヒトがどれだけ速いのか。語るまでもないだろう。

地面を抉り、派手に跳躍する。流星のような光が白昼に弧を描き飛んでいく。それが弾けた時に、人は漸く正体に気づく。
あれは人間だ。いや、天使だ。と。
光そのもので構成された大翼が、尾を引きながら空を駆ける。頭上に光輪は見えないが、神々しい光と共に青空に羽ばたく様は、正しく天使に見えた。当の本人はそんな神聖な存在ではないのだが、彼らがそれを知る由は無い。

「あの女の情報を照らし合わせると…『エヴァンダ大樹海』の中心に光亡ぶ湖沼があるから…んで、現在地が…」

地図にメモ書きをしながら移動を続ける。周囲の警戒が疎かになるが、上空まで魔物の攻撃が届くことは滅多に無い。そこまで気にすることではないだろう。
現に、視線は地図に釘付けになっているが何かしらのアクションを起こされた様子は無い。
まあ、彼からすれば攻撃された瞬間に気配を察知出来るので、意識する必要が無いだけなのだが。
青春を戦争で染め上げた人間は、敵意にどうしようもないほどに敏感だった。

情報を整理し終えたリヒトは、地図を片づけて溜め息を吐く。やると決めたのは自分だが、目的地に着くまでの道のりがこれまた面倒でちょっとやってられなかったのだ。
最短距離、最高速度での行軍を敢行しても、光亡ぶ湖沼に至るまでに四日。可能な限り休息を減らして試算した場合ですらこれである。
ウィンディたちが同伴していたら、下手したら二週間ほど掛かっていたかもしれない。
さらに、湖沼に到着したら次に待っているのは冥王の玉座までの道中である。相当に強力な魔物が跳梁跋扈しているのは想像に難くない。消耗無しでゲイザリオンの元に辿り着くことはない、と見ていいだろう。
湖沼内でシルヴィアに伝授された結界が効果を発揮するかはその時にならねば解らない。つまり、湖沼内で休息を取れるかは不明なのだ。
『聖域』と呼ばれる憩いの守人が管理しているセーフハウスで休憩すること、余力を残せそうになければ即退散することを視野に入れなければ、屍を晒すことになりかねない。

死ぬよりは数倍マシなのだから、過剰に思えるほどに幾重にも予防線を張っておいて損はないはずだ。
そんな思考を続けながら、リヒトは山脈を越える。魔物の視線が集中しているような気がした。

あれから数日。キャラバン隊の野営地で定期的に休息を取り、行軍を続けていたリヒトは、エヴァンダ大樹海に足を踏み入れていた。
踏み入れた当初こそ地面はしっかりと固まっており問題なく移動出来ていたのだが、半日も歩くと様相は変わり、足首まで水に浸かっていた。
靴の不快な感触に顔を顰めつつも、移動を続ける。何度か魔物の来襲があったが、単独なら魔法の出力を抑える必要は無いため、手こずることもなく容易に迎撃することが出来た。
まだ光亡ぶ湖沼に到達していないので魔物が弱いのは当たり前のことではあるのだが、それでも、リヒトがしているような単独での行軍を生半可な者がしたら自殺行為になってしまう程度には、ここの魔物は強かった。少なくとも、アークミノタウロスの六割くらいの危険度はある。

生き血を啜ろうと噛みついてきたヒルは光魔法で滅却し、潜伏していた巨大なエビやカニは聖剣の錆になってもらう。
音も立てず細切れにされたエビたちの肉はぷりっぷりで美味そうに見えたが、こんな場所では焚き木など不可能なので食べるのは諦め、そのまま亡骸を遺棄する。こんなものを持っていっても湿地帯である樹海内ではすぐ腐ってしまうので仕方ない。

迫り来る魔物を片手間に仕留めつつの行軍の果て。夕暮れが辺りを照らし始めた頃に、それはあった。

「………っ」

あれだけ生い茂っていた樹木が、突然姿を消す。木々一つ生えていない水たまりが視界の果てまで続いている。
僅かに歩みのスピードを落としたリヒトは、その先を注視する。インクで塗り潰されたように真っ黒な木が、枯れた木のような姿で立ち並んでいた。その周りには黒にも紫にも見える靄が漂っていて、黒木が生えている場所から先は夜のように真っ暗だった。

ここが光亡ぶ湖沼と見て間違いないだろう。女性から得た情報と寸分違わず合致している。

「軽く休憩を取らないとな。どっかに聖域があるはずだが…」

魔力を多少消耗しているので、今後に備えて休息を取る。無難な判断をしたリヒトは、聖域とやらが無いか周囲を観察する。
少し離れたところに、この環境にそぐわない大きな家が建っていた。あれが聖域だと一目で分かった。
疲れた身体を休めるべく、リヒトは聖域に近づいた。

聖域の管理者を一人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。また、【突破したお題】と【邪眼竜の加護】を併記してくれると助かります。
前回の魔法の募集も継続中でございます。


突破したお題 一例

マグマの中を泳ぐという人魚を捕まえてこい
魔王の首を持ってこい
呪殺の魔眼に耐えてみろ


邪眼竜の加護 一例

強力な不死性と再生能力(胴体真っ二つや斬首程度では死なない)
未来視の魔眼
竜化の秘術

【名前】ヴィクター・グランハイト
【人種】人間
【性別】男性
【魔法】光魔法及び邪眼竜の加護(未来視の魔眼)
少し陰のある雰囲気の老人
実はリヒトが生まれるずっと前に勇者として活躍していた人物である
非常に優れた剣術、魔法の使い手で最強の勇者だと言われていたが、更なる力を求めてゲイザリオンの調伏に挑む
ゲイザリオンから出されたお題は「この世で最も強いと思う者を連れてこい」というもので、それに対し本人は「ここにいる」と答え力を見せる為に戦うこととなる
その結果見事に勝利を収め、元々の強さに加え邪眼竜の力を手にしたことで後の戦いに多大な貢献を果たした
だがその後はなぜか表舞台から忽然と姿を消し、今では彼の活躍を知る者も殆どいない
常人ならば、この老人がかつて最強の勇者と呼ばれていたなどとは微塵も思わないだろう 

上手く要求も押さえて盛り込んであるのさすがだなあ…

どういう原理なのか、家の周囲には花が咲き乱れ野菜が栽培されている。ここだけが別世界のようにも見える。
なるほど、聖域と呼ばれるだけはあると、リヒトは感心した。一つ間違えば即死しかねない魔境に接している、脅威無き楽園。安寧のゆりかご。魔なるものが触れることは赦されないその家屋は、聖域そのものだ。
ジャブジャブと音を立てつつ歩みを進め、足場に近づく。すると。

「なにこれ」

謎の言語が書き記された巻物が、家を囲っていた。古代文字のように見えるが、知識の無いリヒトにはそれが何語なのかは判断出来なかった。
達筆なのか下手くそなのか、ミミズが這ったような文字は無秩序に巻物を汚し、独特な紋様を描いている。巻物に囲まれた中に家が建っており、菜園もその中にある。

聖域の部分だけ地面が隆起して陸地を形成しており、そこに家が建てられて巻物が敷かれている形だ。菜園などを含めた聖域の敷地は縦15メートル、横10メートル程。なかなかの広さである。

しかし、何故この場所だけが安全なのか。その理由がこの巻物にあるのは状況的に明らかだが、どういう理屈なのかは見ただけでは分からない。
試しに数度巻物を跨いでみたが、何も変わらない。せいぜい中の空気が美味いくらいだ。
ならば、とそこら辺を泳いでいたサハギンと呼ばれる二足歩行する魚に似た外見をした魔物をとっ捕まえ、聖域内に投擲する。
巻物上を通過した瞬間、サハギンの肉体は光に置換され、消滅した。

「…なるほど。俺の結界と似たタイプの魔法だな。性能は俺のオリジナルと比べるのも失礼なレベルだが」

シルヴィアの魔改造によって難攻不落の要塞と化したリヒトの結界は、当初は酷い有様だった。本当に酷かった。
防御力自体はそれなりにあったのだが、敵も味方も関係なく、発動者であるリヒト自身さえも平等に光で焼いてしまう無差別攻撃だったのだ。
幸いにしてリヒトの結界で味方側に死者が出ることは無かったが、当時はブーイングの嵐を浴びていたことは記憶に新しい。
寝ぼけた頭をスッキリさせるにはちょうどいい、と聖女にフォローされていたが、そんな生優しい威力ではないことを発動者が知らないはずがないので、フォローになっていなかったりする。

そんな魔法に比べたらこの聖域を維持している巻物は月とスッポン。両者を比較しようとするのが恥ずかしくなってしまうほどに、隔絶した差がある。
誰でも使えそうな便利アイテムっぽいので差し支えがなければ後で何個か貰おう、と交渉することを心に決め、門を叩く。すると、ゆっくりと扉は開かれた。

「若い命を無為に散らすな。大人しく回れ右するがいい」

聖域の管理者とご対面すると同時に放たれた言葉がコレだった。この手慣れた感じ、聖域を訪ねた人全員に言っているに違いない。
ケープを羽織った老人の声は嗄れており、服から顔を出している手足は枯れ木のようにやせ細っている。とても弱々しい姿であり、見ているこちらが少し目を離したらぽっくりと逝ってるんじゃないか、と不安になるほどだ。

だが、件の情報からするに、彼が邪眼竜の加護を受けた人物と見て間違いないだろう。そもそも、こんな場所に暮らしている時点で普通ではない。

「遊び半分で邪眼竜に見えるのは辞めておけ。奴はそこまで安い存在ではないし、失礼にあたる。全てを…命さえも捨て去る覚悟を持ち来ることだな」

「それに、貴様は少々実力が足りていないように見える。このまま邪眼竜に謁見しても、その前に野垂れ死ぬか興味が無いと一蹴されるのがオチだ」

本当に酷い言いようである。とはいえ、覚悟云々については反論する余地は無いので大人しく聞くしかなかった。
たしかに、骨を埋める前提で邪眼竜に挑まないのは無礼にもほどがある。が、こちらにも死ねない理由があるのだ。
とも思ったが、それが間違いなのだろう。死ねない理由が万とあろうとも、滅ぶことを懸念し、安全策を講じ、危険と見るやすぐ退散するような輩に邪眼竜や氷雷龍が恭順するとも思えない。

それに、実力不足と断じられるとは思わなかった。死ぬ可能性はある、とは考えていたのだが、勝ち目が無いほどに力が足りていなかったのだろうか。

「足りんな。老いた私と同格程度では、奴に膝を突かせることも敵うまいよ。多く見積もって、勝ち目は二割有れば良い方だろう」

「そんなに」

自身と邪眼竜の実力差もそうだが、眼前の老人の強さに心底驚く。今の自分と、年老いて身体も、心も、魔力も弱った彼が同格とは。
最盛期はどれほど強かったのだろうか。

憩いの守人(ヴィクター・グランハイト)と何を話すかを↓1にどうぞ。

ゲイザリオンのお題破棄したらペナルティあります?

「…せっかくここまで来たのだ。満足のいく物は出せないが、細やかなもてなしをさせていただく」

と気遣ってくれた老人は、その辣腕を存分に振るい食事を作ってくれた。
ラインナップは野菜のスープ、野菜のソテー、野菜炒め、野菜のサラダ。
いくつかジャンルが被っているが、こんな場所で食べれる食事などに大したレパートリーは期待していなかったので問題ない。サハギンの丸焼きとかが出ないだけマシとも言える。
まあ、ゲテモノだろうと何だろうと、食べて死ぬような劇物でなければリヒトは平気で喰うのだが。

「味うっす」

「贅沢を言うな。こんな場所で調味料など手に入るか」

淡白で薄い味が口に広がる。素材の風味を活かした、と言えば聞こえは良いが、ただ単に味付けしていないだけである。
不味いわけでも美味いわけでもない。ただただ薄い。それだけだ。
なので、リヒトは振る舞われた食事全てを平らげた。腐肉を喰らって生きてきた過去に比べれば、この食事はどれだけ上等なのかは言うまでもない。

「…文句を言う割には良い食べっぷりだな」

「文句を言ったつもりはない。ただの感想だ」

リヒトの物言いに老人はしばらく唸り、やがては押し黙った。何やら憐れんでいるように見えたが、こちらに憐れまれる謂れはない、とリヒトは鼻を鳴らす。

「邪眼竜…ゲイザリオンのお題を放棄して逃げた場合って、何かペナルティがあったりするのか?」

「………」

リヒトの問いに老人は口を噤む。無謀な挑戦者に話すことはないのだろうか。そんなことを考えていると、不意に口を開いた。

「…時と場合による。例えば、今のように邪眼竜に見える前に回頭して去るのであれば、何もしてこない。だが、奴に謁見し、遊び半分で試練を受けたのならば」

「ならば?」

「貴様なら死にはしないだろうが、かなり重い呪いを掛けられる。常人なら狂死する程度のな」

「…ノーペナはないよなそりゃ」

邪眼竜の呪い。聞いただけで碌でもないことになるのが目に浮かぶ。全身の皮膚が腐るくらいはしそうだ。リヒトは興味本意で呪いの内容を訊いてみた。

「む…。個人差はあるが、肌荒れや不眠、重度の便秘や頭痛に見舞われることになる」

思ってたのと違う。と、リヒトは老人の返答に脱力するが、真剣な顔で抗議される。

「甘く見るな。便秘で亡くなることは往々にしてあり得ることだ。貴様は知らんだろうが、過去に某国の王が便秘で死に、大混乱が起きたことがある」

「それに、邪眼竜の呪いで狂死する過程で先述した症状が出てくるだけだ。何を施しても快復に向かわないことに精神を病み、呪いそのものがさらに精神を蝕むことで死を迎える」

地味な内容だったが、聖域を管理する彼が言うのなら、あながち嘘と断定は出来ない。
ふと、レムカーナでの騒動を思い出し、腹痛が蘇る。ギムレイン嬢の呪詛魔法も実は、邪眼竜級の力を秘めているのかもしれない。

憩いの守人(ヴィクター・グランハイト)と何を話すかを↓1にどうぞ。
これが終わると、ゲイザリオンに挑戦するかの最終確認が行われます。

若い頃の話を聞く

手入れのされているベッドで二時間ほど仮眠を取る。常に闇に包まれている光亡ぶ湖沼では、昼も夜も存在しない。
黒に染まった太陽や月だけは見えるので厳密には昼夜は存在するのだが、視覚的な差異はほとんど無いのでどちらだろうと変わらないのが現実だ。
それは湖沼に面している聖域も例外ではなく、窓の外は夜のように真っ暗だった。まあ、ここに着いた時点で夕方ではあったのだが。

何やら書き物をしている老人に目を向ける。左手には『ボケ防止にはコレ!ナンプレ100問収録脳トレ問題集』という題名の冊子を持っており、一心不乱に羊皮紙に書き込んでいた。
そんな老人を尻目に、リヒトは軽く伸びをする。骨の鳴る音が聞こえ、身体の凝りが解れた。

「こんな場所にずっと住んでて、よく平気でいられるな」

リヒトの口から率直な感想が溢れる。彼自身、安全が担保されていたとしてもこの場所で暮らすのは絶対に無理だと確信していた。
昼夜問わず闇に染まった世界。リヒトのような命知らずな冒険者しか訪ねてこない孤独なる領域。娯楽もなければ交流もない変化の無い、無為に過ぎていく毎日。
考えただけで気が狂いそうだ。だが、老人はそう思ってはいなかった。

「住めば都とも言う。…私はもう独りでいることに慣れたし、誰とも関わりたくないのだ」

「じゃあ、なんで俺のような奴を家に迎え入れるんだ?関わる気がないなら門前払いすりゃ良いだろうに」

「年寄りのくだらぬおせっかいだ。自ら死に向かうような輩を放っておくほど、私は善性を捨てていないつもりでな。…それに、不躾な冒険者の相手をさせるのも、加護をくれた邪眼竜に申し訳が立たん」

問題を解き終わったのか、老人は本を棚に戻す。リヒトも席に着き、向かい合った。

英雄とさえ称された、偉大なる人間が何故ここにいるのか。邪眼竜の加護を得た者が軒並み悲劇に見舞われて息を引き取ったことを鑑みるに、彼もまた人の悪意に人生を歪められた者なのだろう。

「あんたさえ良ければ、昔話でも聴かせてくれないか?」

「私は語るべき過去を持たぬ。ここを終の住処と決めた時に、私は生まれたのだから」

「…そうか」

「…だが、ある英雄の物語なら知っている。ただひたすらに力を求めた無垢なる勇者の、滅びの物語を」

「何の面白味も無い話だが。貴様はそれでも聴くというのか?」

「ああ」

老人が語ったのは、一人の勇者の物語。世界から忘却された、英雄の末路。

海を臨む断崖に、小さな村があった。その村に名前は無く、人が営む様相のみが特徴だった。
名も無き村には、一人の少年がいた。かの者の名はヴィクター。
特別な血筋を持たないただの人間だった。勇者という伝説に憧れる、どこにでもいる子供だった。
いつか、勇者になって人を救うために。少しでも憧れに近づこうと木刀を振るい鍛錬を重ねる少年は、温かい目で見守られながら成長する。
しかし、そんな日は脆くも崩れ去った。

空が燃え、黒煙が上る。音を立てて燃え尽きる家屋は、いくつもの命を無惨に奪っていく。
魔族の戦士が嗤い、騎馬に跨り地平線の果てに消えていく。
少年の背には、炎を上げる我が家があった。火の手は回り、業火が家を包み、崩れ落ちる。幼い子供だったヴィクターはあまりにも非力で、無力であった。
故に、彼に出来ることは何一つ無かった。

火が鎮まり、夜が開ける。嘗ての面影は既になく、残骸だけが形を残す。焼け跡から運び出される遺体は、痛ましい切り傷と炭化で誰のものか判別が付かなかったという。
この惨劇は、少年の心に火を灯した。復讐の灯火という、昏き炎を。

少年は燻る炎を胸中に隠し、城下の詰所の門を叩く。某国の王は終わりのない戦乱の元凶である魔王を討つべく、腕に覚えのある者を招集していた。その招集に応えたのだ。
全ては復讐のために。自身から全てを奪い去った魔族から、全てを奪い尽くすために。

傭兵や冒険者、領土内から徴兵した兵士の中には、ヴィクターのように家族を喪った者も複数人混じっていた。
その大半には当然戦闘の経験などなく、ヴィクターもまた例外ではなかった。しかし、彼は他の者に無いものを持っていた。

才能という、望んでも手に入らない至宝を。

繰り返される戦いの中で人は死んでいく。人間も魔族も。男も女も。大人も子供も老人も。分け隔てなく平等に、命を落とす。
その中で、彼は力を身につけていく。復讐の炎で力という刃を熱し、戦いの中で研ぎ澄ませる。
より鋭く。より硬く。より強く。誰であろうと打ち倒せるように。誰であろうと護れるように。

魔王軍との戦いで仲間を得て、喪って。その繰り返しの果てに、ヴィクターは勇者と成る。
幾年もの間畏れられていた魔王を打ち倒した彼は、名実共に最強の勇者へと至ったのだ。
ここにヴィクターの悲願は成就し、復讐の炎は燃え尽きる。が、彼の心は渇いていた。
更なる力を求め、飢えに苦しんでいた。

復讐を終えたヴィクターは、その功績を讃えられ爵位を賜った。グランハイトという、その国では最上の名誉たる家名を共に戴いたヴィクターは、苦楽を共にした仲間と契りを結ぶ。
それでもなお飢えは治まらず、ヴィクターは国お抱えの占い師に助言を乞うた。
『遠い地に座す邪眼竜。望みし物を其方に与えん』。占い師の預言を信じ、ヴィクターは単身旅に出る。不安定な情勢を案じ、力を得るために。そんなお題目を掲げ、国を発った。

光亡ぶ湖沼にて、勇者は邪眼竜ゲイザリオンと相見える。邪眼竜は、武器を構える勇者に問うた。
『我が力を求めるならば。最も猛き強者を連れて来い』と。
勇者は毅然と笑い、答える。『ここにいる。私こそが答えだ』と。
その言葉を皮切りに、勇者と邪眼竜の戦いは始まった。

三日三晩続いた激戦は、勇者の放った閃光により幕を閉じる。邪眼竜は勇者の力を認め、加護を与えた。
未来を見定める《未来視の魔眼》を授かった勇者は凱旋する。そして、また戦乱の日々が始まった。

ある時は恭順を選ばなかった隣国を滅するために。またある時は、革命を目論んだ嘗ての戦友を殺すために。勇者はその力を振るい続け、最強と呼ばれるに相応しい戦果を挙げ続けた。
しかし、勇者は忽然と姿を消した。勇者の失踪と共にグランハイト家は没落し、国は再三の革命によって滅び去った。
何故勇者は全てを捨て姿を消したのか。それを知る者はいない。

語り終えた老人は、穏やかな表情のまま目を閉じる。ご冥福をお祈りします。とリヒトは手を合わせた。

「勝手に殺すな。死ぬ間際に遺言を残すパターンではない」

「あ、違ったのか?なんかすっごい穏やかな顔してたから…。ああ、満足して逝くのか…って思っちゃったよ」

「たしかに誰にも言ってないことだったから吐き出せて満足ではあったが。それはそれとして、まだ私はやることがあるのだ」

「たとえば?」

「貴様のような馬鹿者の足止めだ。まだ未来のある若い命、散らすには惜しい」

「年寄りに言われると説得力があるな…」

先程とは打って変わって、おしゃべりな様子を見せる。もしかすると、こちらの方が素に近いのかもしれない。
また問題集を手に取った老人を見て、これはまだまだボケないし死なないな、とリヒトは確信した。

「じゃあ、俺はそろそろ出るよ。世話になりました」

荷物を背負い、ドアを開ける。星の光は闇に呑まれ、毒々しく輝いている月が夜空で存在を主張していた。

「待て。…貴様はまだ、邪眼竜に挑む気なのか?」

野菜の天日干しを齧っていた老人は、リヒトを身体を向ける。鋭い眼光がリヒトを射抜く。

「最後の警告だ。今の貴様では勝ち目は薄い。今後のことを考えるなら、さらに力を身につけてから来るべきだ」

邪眼竜は逃げんし時間もたっぷりあるからな、と付け加えつつ、老人は警告する。
彼なりの気遣いなのだろうが、ここまで何度も同じことを言われるとゲンナリする。そろそろ耳にタコが出来そうだ。

「あんたの言を素直に受け取ると…今はほぼ不可能に近いけど、努力すれば勝ちが見えてくる…って言ってるようにも聞こえるが?」

「そう言っている。分の悪い博打はただの身投げと変わらん。研鑽を重ねればその牙、邪眼竜をも唸らせるだろうさ」

「今まで訪ねて来た凡百の自殺志願者とは違うと私には解っているが故の警告だ。引き留める価値や意味も無い輩なら、私は無視を決め込んでいる」

と、出来の悪い子供を窘めるような物言いに、リヒトは苦笑する。希望はあると励ましてくれるのは嬉しいが、それはそれとして凹む。

邪眼竜ゲイザリオンに挑むかを↓1にどうぞ。
選ばなかった場合はグラトルスの調伏も中止になります。

挑む

だが、首を縦には振らなかった。どれだけ引き留められても、引き下がるつもりはない。
たとえ大馬鹿者だと罵られても構わない。挑むことすらせずに逃げ出すことだけは、したくなかった。
邪眼竜に挑み、心身をへし折られて諦めるのであれば、まだ納得出来る。しかし、挑むことを選ばず、どうせ無理だと諦めるのは許容出来なかったのだ。

「…馬鹿に付ける薬は無い、か」

「悪いな。馬鹿は死んでも治らないって言うし、そういう奴だったと諦めてくれ。あ、家の周りにある巻物、予備があるならいくつかください。お金なら言い値であげますので」

巻物は普通に何個もくれた。案外お人好しなのかもしれない。

何度目か知れぬ、無謀な挑戦者の訪問。英雄気取りが思い上がっただけかと思っていたが、今回は違った。
その眼には、底知れぬ影があった。本人は隠しているつもりなのだろうが、知る人が見れば解るものなのだ。
何故私が見抜けたのか。それは、あえては言うまい。
私はその影に可能性を見た。嘗ての私とは違い、闇に堕ちてもなお光と共に在る彼は、私とは違う未来に辿り着けるかもしれない。

未来を視るのは、辞めておいた。そこまでするのはおせっかいにも程があるし、私は怖かったのだ。
未来を視ることで、彼の運命が閉ざされるのが。それならば、見えない未来に彼の運命を委ねたかった。
嗚呼、邪眼竜よ。未だに、真なる英雄の来訪を待ち望んでいるのなら。
これより貴様の元を訪ねるであろう勇者を見定めてくれ。不思議な眼をした彼奴ならば、あるいは。

願わくば、もっと後に来てほしかった。数多の離別を、苦難を乗り越えた先にある領域に触れ、挑んでほしかった。
邪眼竜は、永い永い時の中で待ち続けているのだ。その身に宿す魔眼ですら視ることが出来ない、可能性を秘めた真の英雄を。
自身の未来を委ねるに足る、大いなる存在を。

だが、どれだけ引き留めようとも彼は往く。そういう人はいるものだ。嘗ての私と同じように。
ならば、祈るほかあるまい。その未来に、希望があることを。

老人の見送りを受け、光亡ぶ湖沼へと突入する。瘴気に満ちた沼地の中では、嫌でも動きが鈍る。

「…ちと、辛いか」

瘴気が空気を介し臓腑を侵蝕する。身体が壊れていく感覚が、全身を支配していく。
なるほど。これは確かに厳しい。普通の人間ならば、一時間も保たないだろう。

これでこそだと、リヒトの口が歪な弧を描く。何の苦労も無しに得られるものに、意味はない。
リヒトは聖剣を抜き、闇へと向ける。暗黒の中では穢れた生命が蠢いており、紅の光が明滅していた。

「あちらもやる気は充分。へっ…上等だ。この闇の中で俺の光がどれだけ太刀打ち出来るのか。そして、俺の存在をゲイザリオンに示してやろうじゃねえか」

聖剣は光を帯び、身体は淡く輝く。
邪眼竜への謁見の儀が今、始まった。

邪眼竜ゲイザリオンへの謁見の儀 判定↓1コンマ


01~10:リヒト死す
01~30:難航
31~50:進捗ヨシ
51~99:冥王の玉座へと到達
00:???

デュエルスタンバイ!

ええぞ!

ひえっ…
ずれてたら死んでた

死んだらコンティニューできるのか打ち切りなのか

宵闇の中を閃光が駆ける。天地を縫うその剣閃は、命を刈り取る死神の鎌が如く。無慈悲に生命を断ち切る。

地面から這い出たアンデッドの一種、意志持つ死体であるゾンビや、死した者の魂の成れの果てであるレイス、闇の魔力を巧みに扱うヴィシャスリカオンと、光に弱い魔物のオンパレードだ。
故に、リヒトとは根本的に相性が悪く、光魔法と剣術の合わせ技によりその命は呆気なく消えていく。

瘴気に侵されて肥大化した昆虫種の魔物も多数いたのだが、例外なく全てが鏖殺される。
ハチ型の魔物の突撃を躱し、袈裟斬りに斬り捨てる。返す刀で背後から襲い掛かっていたリカオンを迎撃した。
誰にも気遣う必要は無いので、リヒトは魔力を解放する。自身を中心とした光の柱が瘴気の天蓋を貫いた。

「…逃げてはくれない、か」

瞬殺された同胞を見ても魔物の戦意は衰えず、攻勢も止まらない。久方ぶりの獲物に、心が躍っているのだろうか。
こちらとしても、一匹一匹がかのアークミノタウロスすら上回る力を持っていることに興奮せずにはいられなかった。
強敵との戦いはいつだって心躍るもの。それは、昔から変わらない。
幾度と仲間を喪ってもなお戦いに悦びを感じるのは、彼の心が既に壊れていることの証左なのかもしれない。

瘴気は光の魔力で無力化とまではいかずとも、さしたる問題はない程度には、影響を緩和出来ている。
あまりに長時間ここに残留するなら命に関わる事態にはなるのだが、そこまでいるメリットも無いので気にする必要はない。
つまり、邪眼竜と邂逅するまでは特に支障は無いということだ。
移動時の魔力消費が必要経費である以上、この強行軍でどれだけ消耗するかが余裕の有無に繋がる。

「こっちもやることがあるんでな。死にたい奴だけかかって来なよ。お望み通り消してやる」

故に、油断も遠慮も手加減もしない。最速で殲滅させるのが一番安全で、確実で、効率的だから。
死したはずの光燿の勇者が再び顔を見せる。同時に、光無き湖沼に見えるはずのない星が生まれた。

闇に閉ざされた世界に光が発生する。何十年ぶりの、あり得ない事象に目を見開く。
当時のそれと比べれば、見えた光はか細いものだ。だが、その奥底には《何か》が潜んでいた。
慣れ親しんだ闇に似ていて、それでいて全く異質な《何か》。興味は尽きないが、期待には応えそうにない。

最も見どころがあった嘗ての勇者。彼ですら、全てを委ねるには足りなかった。
そんな彼よりも矮小な存在なら、なおさら委ねる余地はない。せいぜい、その知略と武勇で愉しませてもらいたいものだ。

視線を空に移すと、紫に染色された月が映る。今宵は満月。美しく、悍ましいそれは、光亡ぶ湖沼に棲むものには馴染みのある名物だが、外界からの来訪者には不安を煽る異物であった。

月は妖しく輝き、全身の瞳が力を帯びる。愉しい夜を、宴の始まりを邪眼竜は待ち侘びていた。

体液に塗れた剣身を拭う。幾千もの命を奪ってきたにも関わらず神々しい輝きを保つ聖剣は、少しでも知識のある者であれば誰しもが求める名剣であり、誰もがその出自に怯える殺戮に染まった魔剣である。

光燿の勇者という英雄の象徴たるこの剣は、所有者である勇者の魔力を限界まで吸い尽くし、変質して生まれた物だ。
本来はどこにでもあった一振りの剣なのだが、幾多の戦いを経て昇華し、聖剣へと至った。
勇者の魔力に呼応して形を変えるそれは聖剣と魔剣、二つの側面を持つが、広く知られているのは聖剣としての側面だけだ。
冥光のことはほとんど知られていないので、それと密接に関係している魔剣が知られていないのも当然の話ではあるのだが。

健気に挑んでくる魔物を悉く滅ぼしたからか、魔物側から攻撃してくる様子はなく、それどころかこちらが少し近づいただけで逃げ出す始末だ。
余計な手出しをされないのでありがたいことではあるが、腫れ物を扱うように忌避されるのは辛いものだ。昔を思い出すから本当に良くない。

そんな暗い考えをしつつ足を進める。バキバキと、何かが砕ける音がした。その正体はすぐに判明する。

リヒトが踏み砕いたのは白骨だった。ふと周りを見てみると、沼から無数の白骨が姿を見せているではないか。
これは皆挑戦者の末路だ。そう結論づけるのは当然のことだ。考えるまでもない。

見上げた先には巨大な岩が鎮座しており、その上に奴はいた。

『我ガ寝床へようこソ。ココまでノ道のリ、楽でハなカッたデしょう?』

辛うじて聞き取れた人語に、リヒトは頷いて返す。ヌ・レオンと違って聞こえるのは、声帯の造りが違うからなのだろう。
それでも、マトモに会話が出来るのは驚きだが。

それにしても、無数の魔眼に見つめられるのは気分が悪いものだ。どういう魔眼があるのかまでは情報がなかったので、リヒトの心中は割と穏やかじゃなかったりする。

邪眼竜に何を求めるかを↓1にどうぞ。同時にコンマで判定を行います。


01~30:お帰リくダさい
31~90:お題を一ツ出しまショう
91~99:突然荷物の宝珠が砕けた
00:???

何を求めるかというより、どんな言葉をかけるか、宣言するか、ですね。このレスは無視してください。

ずっと見ていたんだろう?
俺はお眼鏡に叶うか?

ぬわーすまん
殺しに来られるよりは有情か……

統一教会スパイクタンパクISISは、正当に選挙されたスパイクタンパク会における代表者を通じて行動し、ウクライナとウクライナの子孫のために、諸スパイクタンパクISISとの協和による成果と、わがスパイクタンパク全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権がスパイクタンパクISISに存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそもスパイクタンパク政は、スパイクタンパクISISの厳粛な信託によるものであつて、その権威はスパイクタンパクISISに由来し、その権力はスパイクタンパクISISの代表者がこれを行使し、その福利はスパイクタンパクISISがこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。ウクライナは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
統一教会スパイクタンパクISISは、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸スパイクタンパクISISの公正と信義に信頼して、ウクライナの安全と生存を保持しようと決意した。ウクライナは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐるスパイクタンパク際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。ウクライナは、全世界のスパイクタンパクISISが、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
ウクライナは、いづれのスパイクタンパク家も、自スパイクタンパクのことのみに専念して他スパイクタンパクを無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自スパイクタンパクの主権を維持し、他スパイクタンパクと対等関係に立たうとする各スパイクタンパクの責務であると信ずる。
統一教会スパイクタンパクISISは、スパイクタンパク家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

今のリヒトが死んだら、次の主人公は上手くやってくれることでしょう。

恐怖を押し殺し、聖剣を向ける。意気揚々と振る舞い、自身の意志を昂らせる。
そして、凛然とした佇まいで、問うた。

「邪眼竜ゲイザリオンよ。ずっと貴方は、俺を見ていたのだろう?」

『エえ』

「…なら、単刀直入に訊く。俺は、貴方のお眼鏡に適うか?」

『イエ全然』

「あっダメなのね…」

容赦ない一言に、リヒトは膝から崩れ落ちる。その姿はまるで、世界に絶望し、怨恨に支配された幼子の如く。
つまりこの世の終わりみたいな落胆の仕方をしていた。
これには邪眼竜も困惑。オロオロしているように見えたので想定外の反応だったのだろう。

『ア…。えー…。本当ハ他の方ミタいにお引き取リ願うカ屍を晒しテもらウつモリだッタのデスが…。貴方カらハ可能性ヲ僅かに感じマス』

『今ハまだ小さキ可能性…。デスが、ソれが花開くコトは否定出来ズ…。故ニ、今回私は不干渉ニ徹しマス。力を身にツケ、出逢イを重ネ、ソレからまた私に挑ンデも遅クはアリませン。私ハずっと、ココにイマす。貴方の来訪ヲ待ち望みマス』

竜は皆長命ですカラ。と、ゲイザリオンは答えた。その表情は穏やかで、とても邪眼竜と恐れられているものには見えない。

「…てっきり、有無を言わせずに喰いに来るかと思ってたんだが」

『私モ当初は、適当ナお題ヲ出シテ始末する予定でシタ。デスが、貴方ノ目カラは不思議な力ヲ感じル。ダカら、見定メるコトにしたのデス』

『…勇者よ、良き旅ヲ』

それだけ言うと、邪眼竜の目は全て閉じ、寝息を立て始めた。これ以上に関わる気はない、ということか。
邪眼竜の気まぐれという名の温情に感謝し、背を向ける。邪眼竜の謁見に至るまでに何も得ることは出来なかったが、この旅には意味があった。
ある意味では、意味を知れたことこそが金銀財宝にも優る収穫なのかもしれない。

太陽は昇れど、大地は照らされず。永遠の夜が支配する湖沼は、邪眼竜の存在によって秩序が保たれている。
彼らにとって都合の良い秩序であって、外界から来た者は所詮部外者なので餌にされる程度には血生臭いが。

主が座す冥王の玉座に、一人の人間が腰掛ける。本来人が踏み入れるべきではない領域に人がいるというのに、魔物は意に介していない。
まるで、そこにいるのが当然であるかのように振る舞っている。

「紫玉の太陽。こうも長い間見ていれば、何も思わなくなったな」

邪眼竜の足元に座っているのは、純白の刀身の長剣を背負った老人。枯れ枝のように細い身体をしているにも関わらず、魔物は一切干渉しようとしなかった。

『珍しイでスネ。貴方ガここマデ来ルとは』

「…何故あの男を見逃したのか気になっただけだ」

くつくつと笑う邪眼竜に、ぷいと視線を背けつつ答える。

『貴方の知ってノ通りデス。可能性ヲ摘み取ル愚を犯ス気は無イノですヨ』

「…貴様でさえも、希望を見たのか」

『少しダケ、デスが』

今はまだ小さい、蛍火の如き灯火。それを育むことが出来るのか。未来視をしていない今は判らない。
結果だけを先に視ても面白くないし、野暮というものだろう。

「難儀なものよな。未来視の加護を得た当初こそ事あるごとに視ていた未来が、今となっては恐ろしくて視てられん」

『フフ。そうヤッて自身ヲ律スるのもマタ、強さですよ』

「…私は弱いさ。家族を、仲間を捨て人の世から逃げた私が、強いものか」

老人の後悔に塗れた独白に、邪眼竜は沈黙で返した。
光亡ぶ湖沼の夜は長い。彼らの余生もまた永く、終わりは未だに見えない。

ひと月振りに拠点へ戻ってきたのだが、様子がおかしい。明らかにおかしい。
長期間留守にして草木が生い茂るのは日常茶飯事だったが、今回は規模が違う。
たった一ヶ月人の手から離れただけで、こんな大きな木が生えるだろうか。
勘違いじゃなければ、大木には世界樹の果実らしき実が成っていた。これがいったい何を意味するのか。嫌な予感しかしない。

「リヒトさぁぁぁぁぁんんんん!!!!マナちゃんが魔力をバーストしてジャングルにぃぃぃぃ!!!!」

「人の言葉を話してくれ」

「はらへった。だからリンゴをつくった。そざいはちかくにあったからやった。わたしはまんぞく」

「…まさか」

リヒトはマナの供述を聞き、弾かれた矢のように自宅へと入る。保管していたはずのアレが、無い。

「お前、世界樹の果実の種で何かしたなぁぁぁぁぁぁ!?!????!!!」

「ぶい」

マナの凶行により、拠点は木々に呑まれ自然に還っていた。

何をするかを↓1にどうぞ。

旅の報告をしつつ世界樹の果実を食べながら、今後の拠点の在り方について話し合う

過ぎたことは仕方ない。と、世界樹の果実を一つ千切り、切り分ける。相も変わらず冗談みたいに美味いが、やや物足りなく感じた。
一ヶ月で食べられるレベルまで熟されていることが異常事態なので、そのあたりは割り切るしかないか。

「やっぱりこれ美味しいです」

「わたしのおかげでみんなもたべれてる。だからほめてあがめてたてまつって」

「そのおかげで拠点が酷いことになってるけどな。一年掛けて伐採とか整地をしたのに台無しじゃねえか」

「このおいしさはぷらいすれす」

「アリフで買えるよな?今年は時期過ぎてたけど非売品じゃないよな???」

「………」

露骨に目を逸らされた。知らぬ存ぜぬと押し通す様には人間味を感じるが、初めに逢った時とは随分と変わったものだ。
何にも無気力で、人類の蛮行に嘆いていた者とは思えない。人類に対する憎しみは未だに健在だろうが。

「っと、そうだ。土産話でもしないとな。こういうのが旅の醍醐味だ」

「何かあったんです?」

「門前払いを食らっただけだな。流石に凹んだ」

「ご愁傷様です」

それからは譲り受けた巻物の理論の緻密さにウィンディが心をへし折られたり、邪眼竜との会談について語ったりした。
なんて命知らずな…と、ウィンディは青ざめつつも呆れていたが、生きているのだから結果オーライというものだろう。

果実を食べ終え、ゴミを掃除する。種はマナが根こそぎ奪いどこかに隠した。
来月には巨木が数本増えていることだろう。勘弁してほしいものだ。

ウィンディに自分が不在の間に何か無かったか問う。返答は予想していたものだった。
マナがやらかしたこと以外は至って平穏な日々を過ごしていたそうだ。何よりである。

「これからこの拠点をどうするべきか、ですか?」

「ああ」

シルヴィアの死とウィンディの加入、ハリゴーディンの購入により人員は一新した。
ここでこの拠点をどう繁栄させていくか、その指針を示し方向性を決める必要があると、そう判断したのだ。
あれもこれもと欲張ったら収拾がつかなくなるのは明白である以上、取捨選択が重要となる。

何を最優先とするかが、今後を左右すると言っても過言ではない。

どういう方向性で拠点を発展させるかを↓3くらいまで募集します。その中から多数決で後ほど決めます。

キャラが数名思いついたので併記します。どれも元ネタがありますが、たぶん解る人はいない。


【名前】ドラル・スラグナ
【人種】龍人(ドラゴニュート)
【性別】女性
【魔法】無し
龍人の中でも特に希少な鋼龍人種(メタルドラゴニュート)の女性。銀色の髪と角が特徴で、手足は鋼の如き鱗を纏っている。
思慮深く温厚篤実な性格で、激昂することは全く無い。だが逆鱗を十六連打したらさすがにキレる。
鋭い爪を活かした肉弾戦と燃え盛る炎のブレスを巧みに扱うスタイルを好み、鋼龍人種特有の頑丈な体質もあって非常に打たれ強い。
肉よりもスイーツが好きだが野菜は嫌い。背中の羽根が邪魔で仰向けに寝るのが難しいことが最近の悩み。


【名前】サンドラ
【人種】獣人(ハリネズミ)
【性別】女性
【魔法】無し
金髪で各所に針を生やしている獣人の少女。 全身の針は発電と蓄電を司っており、発振させることで電力を生み出し、意志に応じて炸裂させる能力を持つ。落雷が直撃しても平気。
明るい女の子だがとても他人想いで、他人第一で行動するやや危なっかしい一面を持つ。
好きな食べ物はフルーツ全般で、特に葡萄が大好きで乾燥させたものを肌身離さず持ち歩いている。
全身がトゲトゲしているので他人との肌の触れ合いを嫌っているが、偏に他人を傷つけたくないからである。
ジメジメした場所と雨が大嫌い。

【名前】ミリア・サリヴィル
【人種】魔族
【性別】女性
【魔法】回復魔法
他者と主従契約を結ぶことで生命力を分けてもらう、特殊な一族出身の女性。サファイアのような青い髪、アメジストのような紫色の肌が特徴。
本人は非常に出来た性格で優しいのだが、肌色などが人間のそれとは全く違うため敬遠されている。絶賛主人募集中。
誰かに尽くす生き方しか知らないため、普段着はメイド服。獲物は三叉槍(トライデント)だが、サポートが主なのでそこまで得手ではない。
料理洗濯掃除おつかいお守りなんでもござれ。
何があっても、どれだけ悪逆非道を重ねようとも主人を裏切らない、裏切れない、絶対に見捨てないある種の危うさを秘めている。

人員増やそう

いっそ緑化に力を入れ、自然に馴染みやすい種族や魔物の誘致を図る

魔族と同盟を結ぶ

多数決を開始します。三票入ったものが当面の拠点発展の指針となります。


A:方向性を考える前に人手が要る とにかく人員獲得に専念(仲間募集に成功した時、仲間になる人数が増える時がある)
B:いっそ緑化に力を入れ、自然に馴染みやすい種族や魔物の誘致を図る(特定の種族や魔物が追加で仲間になる時がある)
C:魔族と同盟を結び、友好的な関係を築く(魔族が参入したり交流してくる時がある)

今後、以前記載したシェリアと今回の三人のうち、誰か一人を主軸にしたイベントを選択肢に出すかもしれません。
皆様がキャラの原案を出された時はそちらを主軸にするかもです。確定ではないのでご了承ください。

B

A

A

B

B

「とは言われましても。こんな住民が去って五十年後…みたいな場所を発展させようが無い気がします」

「ほんとすごいよな。俺がここに住み始めた時点でもそれなりに荒れてたんだが、今はその時の三倍くらい酷い有様だわ」

処理が追いつかず散乱したままの瓦礫は全て、雑草に呑み込まれてその姿を消した。
マナが手加減したのかリヒトの家や墓場はそのまま残っているが、整地を担当していたリヒトの心がポッキリ折れてしまうくらいに、とんでもないことになっている。

「これはもうあれだ。いっそこのまま植物とか生やしまくって売りにした方がいいな。それで自然が好きな人とかに移住してもらった方が無駄にならん」

「掃除が面倒なんですね」

「この量は無理。ただでさえ人員不足なんだからこんなことに人を割けないっての」

「私の魔法ならなんとか…なりませんねこれ」

試しに雑草を一歩引き抜いてみる。深く根が張られたそれは、ウィンディのパゥワーではとても抜けなかった。
リヒトは難なく抜いてみせたが、根に絡まった土ごと引き抜かれたものだから、大きな穴が出来てしまっている。
こんなのを全部引き抜いたら、地面は荒れ果てて大変なことになるだろう。

「というわけで、除草作業とかはしません!解りましたか皆さん!!!」

「了解です!!!!!」

『サーイエッサー』

ヤケクソじみた叫びが、鬱蒼と茂る森に響いた。
後日。『緑化させることでエルフなどの森林部を住居にする種族たちを誘致する作戦』という大義名分を得たマナが本気を出し、世界樹もかくやと言わんばかりの大自然が生まれた。

何をするかを↓1にどうぞ。

(ドラゴン調伏はこれキツイっすね……)
ちょいちょい話題に出てる緋桜郷行こう

緋桜郷までの道中イベント数は2です。
緋桜郷の支配者とお目付役兼世話役を募集します。こちらでも用意しているので、そちらを使う場合は付けたい名前を記載してください。
次回投稿をするまでを募集期間とします。その中から独断で決めます。


道中イベント 判定↓1コンマ


01~15:魔物の群れが現れた!
16~30:ならず者が現れた!
31~70:何も起きなかった!
71~85:行商人が現れた!
86~99:何かが起きた!(自由枠)
00:???


【緋桜郷】

鬼の女性が統治する繁華街。賭場や風俗店、居酒屋や旅館が所狭しと並ぶ享楽の郷であり、娯楽を求めて訪れる人は多い。
誰だろうと平等に迎え入れるため様々な人種が居住しており、鬼が統治しているからなのか、魔族の比率が比較的大きい。
過去に支配を目論み戦争を仕掛けた国があったが、跡形もなく滅んでいる。


【支配者】

【名前】安価で決定します(和名限定)
【人種】鬼
【性別】女性
【魔法】血液魔法
緋桜郷を統治する鬼の女性。まだ鬼の中では若い部類に入るが、それでも100歳は超えている。
艶やかな着物に身を包んでおり、《名刀・血染メ桜》と呼ばれる太刀を所有する。
緋桜郷の発展に尽力しているが、仕事優先で彼氏が出来ないのが最近の悩み。


【お目付役兼世話役】

【名前】安価で決定します(和名限定)
【人種】鬼
【性別】女性
【魔法】氷魔法(忍術)
旅館『牡丹雪』で働く女将。結構歳は行っているのだが見た目は若々しく、子供にしか見えない。
支配者が産まれた時から面倒を見ていたためとても仲良しで、非番の日は様々なことで愚痴っている支配者を慰めながら酒を飲んでいる。
現在は若い人優先で仕事を回しているので出番は少なく、本人がお相手をすることはほとんど無い。
実は荒事に滅法強く、蛮行をやらかす不届き者は彼女によってゴミ捨て場に捨てられるのはある種の名物になっている。

>>1案で
名前は
支配者:彼岸花 紅華(ヒガンバナ ベニカ)
お目付役兼世話役:白樺 涼雪(シラカバ スズユキ)

VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな

支配者 桜花
世話役 お雪

あとは野となれ山となれ、と現在進行形で成長を続ける植物を無視し、拠点を発つ。
どうせマナがいなければ魔力供給はされないので成長は止まり、あるべき姿になるだろう。

「マナちゃんの魔法ってなんなんでしょうね」

「妖精の祝福を与えるんだと。自然と共に在る妖精の祝福ってことは、まあそういうことだよな」

生きているものに活力を与え、繁殖を促す魔法。豊かな自然の中で生きてきた彼女らに相応しい魔法である。
本人のやる気次第で性能が大きく上下するので、やる気じゃない時はお察しだが。

「そういえば、何も聴かないで拠点をまた出ましたけどどこに行く予定なんですか?」

「…緋桜郷」

『やーんエッチー』

リヒトの返答に、わざとらしくハリゴーディンが驚く。エッチとはなんだ失礼な。
そう抗議の意図を含めた視線を向けるが、黙殺される。なんとも腹立たしいものだ。

「え、えっち?」

『緋桜郷は風俗…いわゆる水商売が盛んな場所です。そこに行くということは…リヒトも溜まっているのでしょう。色々と』

「………」

何故か露骨にウィンディが後退り、ハリゴーディンの陰に隠れた。あとでこのポンコツを鉄クズにしなければ、と決意を固める。

「わ、私は貧相な身体してるから遊んでも楽しくないですからね!?それにリヒトさんとその…そういう関係にはなりたくないですっ!!!」

「発想力が豊かだなぁウィンディちゃんは。どこでそんな知識を仕入れてきたのやら」

こちらがエッチな目で見たことなどただの一度もありはしないというのに、ここまで発想が飛躍するとは。
思春期の子供は皆こうなのだろうか、と一瞬物思いに耽ったが、殺し合ってばかりだった自分にそんな余裕は無かったことに気がついた。

さらりと流されたウィンディは赤面し顔を覆っていた。いっそ地面に埋めてください…と嘆いていたが、自業自得なのだから耐えてもらいたいものだ。
むぐぐぐ、と呻く声を聞きながら道を行く。地平線の果てまで広がる草原を、水牛の群れが行進していた。

パチパチと燃える焚き火を囲み、狩りの成果である肉を頬張る。野菜はそこら辺の野草を千切って適当にスープにした。大した具材もなければ味付けもしておらず、自然由来のエグ味がある控えめに言って不味い飯だが、リヒトは平気で食べていた。
もちろんウィンディにそんな物を食べるつもりは無いので、別の鍋を使って料理を自作している。調味料はアリフやフェルリティアでこっそり買っていたらしい。

「だってリヒトさんのご飯は美味しくないので」

「クソみたいな飯しか食ってなかった俺に期待されても困る」

「開き直りはやめてください。改善しようとしないのはリヒトさんじゃないですか」

「それを言われると弱いな。…まあ、俺はなんでも食えるからセーフだって」

「私のことを心配してくれませんか???」

リヒトは返答することなく残りのスープを勢いよくかっ込む。黙秘権を行使するリヒトに呆れながら、ウィンディも食事を続けた。

「…おいしい」

マナはその間、リヒトが周辺を探索して採取した木の実を齧っていた。目利きが悪いので食あたりでもしないかと心配していたが、杞憂だったようだ。

皆と会話する話題があれば↓1にどうぞ。同時にコンマ判定を行います。


道中イベント 判定↓1コンマ


01~15:魔物の群れが現れた!
16~30:ならず者が現れた!
31~70:何も起きなかった!
71~85:行商人が現れた!
86~99:何かが起きた!(自由枠)
00:???


また、支配者とお目付役の募集は継続します。どうせ次の更新までは出てこないので。

やあっ

物資大量ゲットだぜ!(強盗)

【名前】珠樹(タマキ)
【人種】馬の獣人
【性別】男の娘
【魔法】使えない
緋桜郷の支配者に仕える小姓。身長150cm弱と小柄で一見10歳そこらの少年にしか見えないほどの童顔とぷにぷにの肌。華奢な体つき。
色白で肩にかかる程度の黒髪。小動物的な雰囲気のある可愛らしい顔立ち。馬の耳と尻尾。ウ○娘の男の娘版といったところ。
一見子どもにしか見えないが、れっきとした成人で時としてR的な意味で客をもてなすこともある。
普段は丁寧で心優しいが、孤児の生まれで底辺の生活をしていたが現在の支配者に才覚を見出だされ引き立ててもらったため命をも惜しまないほどの強い忠誠心と覚悟を抱いている。
魔翌力を無意識的に肉体の強化に回してしまう体質の持ち主で華奢な体格とは裏腹に並の人間ではかなわない身体能力を持ち、戦闘では身の丈ほどもある大槌を振るうパワーファイター。
ちなみに、どことは言わないが馬並であると客からは好評である。

遅くなったけど投げてみる

今日の夜に何を買うか(または強奪するか)の安価を出します。
商品は一般的な物なら武器とか薬とか人間とかなんでもあります。

聖剣とか不死薬とか龍人とか以外ならごうだt、お買い物できるって事か
備え

夜が明け、移動を再開する。まだ目的地は見えないが、遠くに見える山からは蒸気が噴き出ており、微かに臭う。初めての臭いにリヒトは顔を顰めた。

「なんか…臭いな。言葉にするのが難しいが、どことなく食べ物の腐った臭いに感じる」

『緋桜郷は温泉の名地としても有名です。そこに向かっているのなら、道中に天然の温泉、その源流などがあっても不思議ではないでしょう』

ハリゴーディンの補足を聞き流しつつ足を動かす。心なしか、冒険者や馬車を見受ける数が増えている気がする。
彼らも皆緋桜郷を目指しているのなら、相当に繁盛しているのだろう。それほどまでに人を夢中にさせるのか、興味が尽きない。が。

「…やっぱり、怖いな」

魔族殺しという悪行を重ねた勇者。その成れの果てを、魔族が統べる土地が赦してくれるのか。
辿り着いた先に何が待っているのだろうか。罵倒や投石ならまだ可愛いものだ。もしかしたら、死角から短剣でグサリ、とやられるかもしれない。
それだけの罪を重ねたのはどこの誰だと言われたら、何も反論出来ないが。

そんな恐怖を、怯えを孕んだ独白は、誰にも聞こえることはなかった。

遠方に巨大な桜の木が見え始め、植生が変わる。果てなき草原は切り開かれ、打ち捨てられた廃屋と歩道が数を増やしていく。
昔はここにも村があったのだろう。廃村になった原因は知らないが、距離を鑑みるに緋桜郷に移住したと見るのが無難そうだ。

小動物の隠れ家としては利便性が高いらしく、野良猫の親子などが中でのんびりと過ごしていた。野良は早世しやすいと聞くが、彼らはどれだけ生き延びるのやら。

「わぁ~!可愛いぃ~…!」

母猫に毛繕いされている子猫たちにウィンディはメロメロだった。この調子だと次に連れて帰ろう、と言われてもおかしくない。

「この子たち連れて帰りませんか!?」

「却下」

ほらきた。解りきっていた嘆願にはノーを突きつける。はっきり言ってこの展開は予定調和である。のに。

「………!」

上目遣いで涙を浮かべながら懇願しても駄目なものは駄目なのだ。良心に訴える作戦が通用する人種だと思わないでいただきたい。
そんな意図を含めた溜め息を吐くと、ウィンディはすごすごと退散した。
まだ諦めていない目をしていたが、何をどうしようと無駄である。首を縦に振ることはあり得ない。

彼らには彼らの生活があるのだ。それを無視して飼おうとするのはいかがなものか。
試しにリヒトは手を近づけてみるが、いっそ清々しいまでの拒絶を受ける。母猫は容赦なく噛み付いてきたし、子猫も威嚇しまくっている。つまり、そういうことだ。

「…はぁーい」

その様子を見せつけられたウィンディは、今度こそ猫を飼うのを諦めた。

廃村を四つほど通過したところで、一行は移動を終了する。
廃井戸から水を汲み、そのまま水を捨てる。まだ井戸そのものは生きていたが、長年放置されたことにより、中は完全に死んでいた。
ゴミや虫の死骸が浮いている水を飲む気にはなれないし、飲んだらいけないことはリヒトにも分かるのだ。

「万全を期してここで夜を明かすことを考えたんだが…。水が採れないのはちと困るな」

「川まで行って汲みますか?」

「むー…。でも夜だしなぁ」

帳が降り、虫のさざめきと鳥の鳴き声が響き渡る。
周辺一帯を上空から見回すと、昼に見えていた桜の木の根本、緋桜郷では鮮やかに光の華が咲いていた。
色とりどりの煌めきは人が営んでいる証であり、脅威が無いことの証左である。

そしてもう一つ、小さな無数の光が列を成して動いているのが見えた。
揺れ動く様を見るに、あれはキャラバン隊だろう。こちらに向かっていることから、ここを野営地として見定めているのだと思われる。

「…渡りに船ってのはこういうだっけか」

物資をたくさん蓄えている者が都合よく目の前に現れる。その奇跡に感謝をし、ウィンディの元に戻る。
緋桜郷という巨大な街にキャラバンのような商人が集うのはなんらおかしいことではなく、故に彼らとばったり出くわすことも珍しいことではないのだが、そこまでリヒトは頭が回らなかった。

「おや、旅の方。もしやここで夜を明かすのですか?」

「はい。この人は夜の移動が平気でも、私は全然平気じゃないので。何も見えないし、私はへなちょこなんです」

「ははは。夜の移動にはリスクが付きものですからね。控えるに越したことはありませんよ。というわけで、私たちもここで野宿してもよろしいですかな?」

「どうします?リュクスさん」

「ここはお言葉に甘えよう」

彼らが良いと言っているのだから、好意に甘えるのは別に悪いことではないのだ。
キャラバンの主である行商人が言う通り、夜の移動は基本的に避けるのが賢明な愚行だ。
リヒト単独だったらここぞとばかりに敢行しているが、生憎と彼は一人ではない。他人優先で考えるべきだと自分を律している。

「ありがとうございます。では、食事はいかがなさいますかな?腕の良いコックがおりますので、味は期待していただいて大丈夫です。まあお代はいただきますがね」

「お願いします。自分で作るよりも絶対美味しいでしょうし」

「毎度あり」

行商人の弁舌に流され、ウィンディはご飯を注文する。料理の手間が省けるのはこちらとしてもありがたいので、リヒトも料理を頼んだ。

温かいスープを飲みながら、商品について説明を求めた。

「見ての通り、我々はキャラバン隊です。各地を巡り貿易を生業としております。そのため、一般的な商品であれば大体のものを取り揃えてますよ」

「たとえば?」

「日用品や武具、木材に鋼材、魔物から剥ぎ取った素材も当然ありますし、奴隷の類も用意しております」

「………」

ウィンディの表情が曇るが、リヒトと行商人は表情を一切変えなかった。
奴隷。言い換えれば、安価な労働力。彼らには需要があるから供給があるのだ。
彼らを購入し、救おうとする人もいる。だが、それは偽善もいいところだとリヒトは諦観を抱いている。
奴隷を救うために購入したとしても、それで利益が出るのだから商人はまた奴隷を調達する。
そして、また奴隷を救うために購入するのなら、負の連鎖は終わらない。

彼らを真に救うのならば、奴隷という根本的な仕組みを壊す必要があるのだ。無論、そんなことは人類には到底無理な所業だが。
人類の歴史は奴隷の歴史であり、奴隷の存在は文明の発展に直結している。
彼らがいたから、文明は発展してきたのだ。
故に、この制度が消えることは無い。リヒトはそう確信を抱いているし、彼らを救う資格も無いと思っている。

リヒトが国を興し、彼ら奴隷を迎え入れたとしても。先述した負の連鎖の一端を担う偽善者の仲間入りを果たすだけだ。
世界が変わらなければ意味がない。彼らの安住の地になったとしても、根本的に解決しなければ、やがては飽和し、崩壊する。
だから、偉そうに行商人に説教をするのは阿呆のやることだ。

と思考に区切りを付け、商品の説明に感謝して食事を続けた。

何を購入するかを↓3までどうぞ。一レスにつき一種のみ購入出来ます。
もし奴隷を購入する場合は、人数の併記もお願いします(一レスにつき最大二人)。
キャラの内容などは後ほど正式に安価を出します。

荷車

ペット的な小動物

謎の植物の種

愛玩動物を一匹募集します。テンプレートも併記しますのでご活用ください。


【名前】種族の名前です。
【ニックネーム】愛称になります。
ここから下が種族の概要です。


【例】
【名前】ホムラリス
【ニックネーム】フレア
火山地帯に生息する魔物。木の実が好物だが、それとは別に石炭などの燃料も食す。
体内で可燃性の体液を精製し、危険に陥った際はそれを撒き散らして発火させることで対象を驚かせ、その間に逃走する。
取り扱いに注意しないと火事になる。

我らは以下の諸事実を自明なものと見なす。すべての人間は平等につくられている。創造主によって、生存、自由そして半導体の追求を含むある侵すべからざるスパイクタンパクを与えられている。これらのスパイクタンパクを確実なものとするために、人は統一教会という機関をもつ。その正当な国葬は被統治者の同意に基づいている。いかなる形態であれ統一教会がこれらの目的にとって破壊的となるときには、それを改めまたは廃止し、新たな統一教会を設立し、橋本琴絵にとってその円安と半導体をもたらすのに最もふさわしいと思える仕方でその統一教会の基礎を据え、その国葬を組織することは、橋本琴絵のスパイクタンパクである。確かに分別に従えば、長く根を下ろしてきた統一教会を一時の原因によって軽々に変えるべきでないということになるだろう。事実、あらゆる経験の示すところによれば、人類は害悪が忍びうるものである限り、慣れ親しんだ形を廃することによって非を正そうとするよりは、堪え忍ぼうとする傾向がある。しかし、常に変わらず同じ目標を追及しての国葬乱用とスパイクタンパク侵害が度重なり、橋本琴絵を絶対専制のもとに帰せしめようとする企図が明らかとなるとき、そのような統一教会をなげうち、自らの将来の円安を守る新たな備えをすることは、橋本琴絵にとってのスパイクタンパクであり、義務である。―これら植民地が堪え忍んできた苦難はそうした域に達しており、植民地をしてこれまでの統治形態の変更を目指すことを余儀なくさせる必要性もまたしかりである。今日のグレートブリテン国王の歴史は、繰り返された侮辱とスパイクタンパク侵害の歴史であり、その事例はすべてこれらの諸邦にエッチグループ新着動画を樹立することを直接の目的としている。それを証明すべく、偏見のない世界に向かって一連の事実を提示しよう。

ようやく最新のとこまで読むの追い付いた
支援


【名前】吹雪豹
【ニックネーム】チャカ
豪雪地帯に生息する魔物。木の実を常食しているが、それとは別に鉄鉱石などの鉱物も好物。
幼体であっても体内で人間の拳大の氷を自在に生成することができるため、富裕層には人気が高い。ただし幼体から育てなければ穏やかな気性にならず、成体から育てると気性は荒く、用意に人を襲う(装備している盾や剣、指輪の鉱物目当てで)
人間の乱獲によって生息数を減らしているが、本来は捕食種であるため扱いには注意が必要

魔物の襲撃に遭うこともなく、平和に翌朝を迎えた一行。野営地の後片付けをしながら、リヒトは行商人に問うた。

「俺たちに売れる品物はあるかな?」

「む?そうですな…。緋桜郷で卸す商品もあるのであれもこれもとお売り出来ませぬが、ある程度なら融通が効きます。ご要望は?」

「ん…と…。不要な荷車があればまずそれを一つ。あとは…どうすっかな」

「………」

むむむと頭を悩ませるリヒトをよそに、ウィンディは商品の愛玩動物に目を奪われ釘付けになっていた。
それはもう露骨にガン見している。何度ボディーガードに引き剥がされても、数秒後にはまた荷台を覗いていた。

マナはリヒトの傍を離れていないが、しょくぶつのたねがあればなー、と独り言を耳元で囁いていた。狙いが分かりやすすぎて困る。

はあと溜め息を吐き、リヒトは麻袋を行商人へ渡した。

「この金に見合うペットと植物の種子があったら買いたい。構わないか?」

「ええ」

行商人は頷き、販売品のリストをリヒトに渡す。そのうちの一枚、ペット類のリストを、ウィンディは食い入るように見つめた。

「『吹雪豹』…初めて見る名前だな」

「ああ、吹雪豹は雪の降る地域に生息する魔物ですからね。イルステッド内では、まずお目に掛かることは無いでしょうな」

「天貫の霊峰にならいそうだが」

「そんなところで捕獲なんかしてたら命が百あっても到底足りませんよ。氷雷龍の怒りを買って氷の彫刻となるのがオチですな」

「なるほど」

出身地を見てみると、記載されていた地名はリヒトたちが知らないものだった。おそらく、他の大陸からの輸入品だろう。
値段もかなりのものだ。数が減っているらしいので、価値が高まるのは当然のことだろうが。

「んじゃこの子で」

「ありがとうございます」

値段がなんぼのもんじゃ、とリヒトは購入を即決した。ウィンディが後ろでガッツポーズをした気がするが、たぶん気のせいだと思われる。

残すは植物の種子だけなのだが、行商人が用意しているのは緋桜郷に卸す野菜だけで、栽培用の種子は切らしていると言う。
なんでも、緋桜郷は大半の物資を輸入で賄っているらしく、農業や畜産については、自前で行える必要最低限の量しか行っていないのだとか。
故に、緋桜郷に栽培用の植物を持ち込んでも利益が出にくいので最初から荷物に載せていないそうだ。

「…むう」

なんとかしろ。そんな言葉を孕んだ落胆の吐息が耳をくすぐる。
出来ないものは仕方ないのだ、とリヒトはマナの声なき抗議を黙殺する。
しかし、天はマナを見捨てていなかった。行商人は小さな木箱を取り出し、リヒトに投げ渡した。

「それは、ここまでの道中での検品中に発見された謎の種です。私は植物博士ではないので、種類は分かりません」

「商人として、不良品を売ることは出来ませんからな。使えるかも不明な得体の知れない物を売りつけて、後から何があっても文句なし…というのは、私のポリシーに反します」

「ですので、それはお譲りします。商人の性なのか、ただ捨てるのがもったいなくて保存してただけですから代金は不要です」

「本当にいいのかい?もしこれが、実は伝説の植物の種だった…!って後から判明しても、言質は取ってるからお金は出せないぞ?」

「構いませんよ。商人たる者、契約を反故にはしません」

ならば、とリヒトは遠慮なく種を貰った。毒草とかでなければありがたいのだが。
それは実際に育てるまで解らないのだろう。まるで博打をしている気分だと、微かに笑った。

「か…可愛い…!!!」

「ぎゃう?」

ウィンディに抱っこされている吹雪豹の赤ちゃん。名前はウィンディが『チャカ』と名付けた。
リヒトは『レオパルドン』と名付ける予定だったが、猛抗議を受けたので渋々ウィンディの提案した名前にしている。

行商人お手製の注意事項に目を通しながら、クルミを食べさせる。喉を鳴らしながら齧る様はたしかに可愛かった。

「『肉を食べさせるのは可能な限り控えてください』…ですか?」

「って書いてる。どうやら、本来は雑食…というか悪食みたいで、木の実と肉、鉱石が好物らしい。この子は既に調教してるから大人しいが、肉を何度か与えたら野性を取り戻す可能性があるみたいだ」

「へー」

「つまり、育ての親である君を夜のうちに喰い殺してる可能性があるってわけだな」

「怖いこと言わないでくださいよ!!!!!」

「ごろごろ…」

呑気に顔洗いしている吹雪豹もといチャカを見るとそんな気はしないのだが、往々にして動物の赤ちゃんは可愛らしいもの。
大人になった時もそうだとは限らない以上、可能性はあるのだろう。元は魔物なのだから。

『そろそろ到着ですね』

「…ああ」

そんなことを言っているうちに緋桜郷は目前に迫っていた。衛兵が守る大きな関所がそこにあった。

空を覆う巨大な桜。ひらりと舞うは桜花の花びら。緋色の花は風に踊り、郷を彩る花吹雪となる。
心と身体を癒して満たす、享楽の郷。ここに咲くは桜と笑顔。
歌い交わり愉しみ眠れ。ここは楽園、安らぎのゆりかご。現世の苦しみを忘れ、幸せなひとときを過ごす場所なり。

《緋桜郷北部関所の立て看板》


--------------------


空を覆い染め上げる緋色の桜と郷中に咲き誇る淡い桃色の桜。二種の桜が織りなす桜吹雪は、見る者の目を容易く奪う。
芸術に興味の無いリヒトですらこの有り様であり、ウィンディはこの光景を忘れまいと必死に目に焼き付けている。
マナもまた、人の世の中で力強く在り続ける自然を、心に刻んでいた。

「宿はどこにしようか。遠路はるばるここに来たから、当分は滞在する予定だしケチりたくないな」

「評判の良い旅館とか無いんでしょうか?私みたいな子供が使っても良さそうな、大人向けじゃないところ…」

「どうなんだろうな」

茶屋に腰を下ろし、団子を頬張る二人。甘辛い味付けの団子を食べる手は止まらず、箸休めに飲む緑茶なる飲み物の独特の風味が、団子に染まった味覚をリセットしてくれる。
無限に食べ続けられそうだと、七本目の団子を食べながらリヒトは感想を漏らした。

ウィンディは汗を流しながら三本目の団子を頬張っている。何故焦っているのかは知らない。
カロリーどれくらいだっけ、と言っていた気がするが、あまりに小声だから実情は定かではない。

そんなのどかなひとときを過ごす二人の元に、エトランゼが現れた。

「突然のご無礼、お許しください」

「ん?」

目の前で跪いたのは、馬の耳がぴょこんと生えた子供だった。
白雪のような肌に艶やかな黒髪、そして、華奢な身体つき。どこを取っても綺麗な完成された美しさを持っている。
一瞬女性だと錯覚してしまったが、声色から辛うじて男性だと解る。ウィンディはここまでの美少年を初めて見たのか、目を白黒させていた。

「僕の名前は珠樹(タマキ)。緋桜郷の支配者、桜花衆の頭領である彼岸花 紅華(ヒガンバナ ベニカ)様に仕える小姓です」

突然のコンタクトに、リヒトは眉を顰める。自身の正体が知られている可能性は当然考慮していたが、まさかここまで早くアプローチを仕掛けてくるとは。
勇者を警戒しているのか、それとも。

「ああ、すみません。僕が貴方の元に馳せ参じたのは、主に命を受けたからです。ですのでどうか、邪険に扱わないでいただけませんか?」

柔らかい微笑みを浮かべ、優しい声色で話す少年。彼からは敵意が感じられない。
すぐに態度に出すのは大人気なかったか、とリヒトは謝罪する。

「いえ、お気になさらず。…今回僕が受けた命を率直に申し上げますとですね。主は貴方を歓迎したいのです。『光燿の勇者リヒト』様」

正体に気づかれていたことに関してはもはや何も言うまい。しかし、それよりも驚いたのはあちらの対応だ。
彼女からすれば同胞殺しを犯した大罪人なのに、何故歓迎しようとするのか理解出来なかった。
カロゥスから逃げ延びた魔族もここにはいるだろうに。

「それは…僕には分かりかねます。すみません」

深々と頭を抱える下げる少年に、謝ることはないと詫びを入れる。
何があっても、悪いのはリヒトの方なのだ。殺すことの正当化など死んでも出来ない彼は、罪だと認識しているのだ。
故に、どんな仕打ちを受けようともそれは罰だと。贖罪の日が来たのだと受け入れるつもりだった。
まあ、ウィンディたちが巻き込まれる場合はその限りではないのだが。

その後、珠樹の案内を受け、桜花衆の頭領に見えることになった。

珠樹の先導を受け、城内に入る。道中で様々な人と目が合ったが、特に罵詈雑言を浴びせられたりはしていないし、睨まれてもいない。
ただ、人間が来るとは珍しい、という目では見られた。畏れられたりしないのは逆に新鮮に感じた。

「この先に主はいます。僕の同行はここまでです」

襖と呼ばれる緋桜郷特有の扉の前で、珠樹は膝を突く。つべこべ言わずに先に行け、と暗に言われている気がした。

若干の逡巡をしつつ、リヒトは襖に手を掛ける。流れるように襖は開かれ、その全容を明らかにした。

「お誘いを受けてくれるなんて嬉しいわぁ。兄さんさえ良ければ、わっちと付き合わへん?」

「お断りします」

キセルを咥えた妖艶な女性が、そこにいた。開口一番のたわけた告白には首を横に振って答えておく。

「いけずやねぇ」

平静を装いタバコを吸っている女性だったが、明らかに動揺しておりキセルはガタガタ震えていた。

彼岸花 紅華に聞きたいことがあれば↓1にどうぞ。

連レスになるから安価下するけど多分紅華、わっちら滅ぼしに来たんかえ?って怯えてるっぽいよな(ただ震えてるだけならアル中の可能性もあるけど動揺してるらしいし)
だから泊まるための宿聞くか目標の通りエルフとか植物地帯を好む仲間を探すかあたりでどうだろう

解像度が高い

宿聞きでお願いします

(そこまで重く捉えられるとは思わなかった人の顔)
緋桜郷の概要でもチラッと述べてますが、敵対勢力を抹消する程度には彼女らは強いです。リヒトも相当の実力者ではありますが、最強ではないのです。

undefined

「手前味噌やけど、わっちってかなりの別嬪さんやと思うんよね。なんで断ったか訊いてもええ?」

「えー…。初対面の人の告白とか厄ネタでしかないだろ、普通に考えて。いくら貴女が美人だろうと、交際(そんなの)を軽々しく受けるほど馬鹿じゃないつもりだ」

「むむ、そこまで言われると困るなぁ」

それはさておき、と付け加えリヒトは荷物を下ろす。ウィンディはハリゴーディンの後ろに隠れ、チャカを抱き締めている。

「呼ばれておいてなんだが、良い宿を知らないか?しばらくここに滞在する予定だから、ちゃんとしたところを選びたい。貴女がこの郷の長なら、一番この郷のことを知っているはずだ」

「わっちが兄さんらを呼び付けたのも、ちょうどその件に関わることなんよ」

紅華は侍従に指示を出し、酒と簡単な料理を提供してきた。ウィンディはまだお子様なので、甘酒なるノンアルコールの飲料が出されている。

「兄さんの武勇は、ここ緋桜郷にも知れ渡っててな。レムカーナでの弑逆が兄さんの仕業やとゆうのはわっちらくらいしか知らへんけど」

「…そうなのか?レムカーナで特級指名手配されてるから、どこに行ってもお尋ね者になってるかと思っていたんだが…」

「よそはよそ、うちはうちや。レムカーナの王の豹変ぶりはそれ以上に有名やったし、そもそも他国で何やらかそうが、わっちのシマを荒さんなら特に文句は言わんよ」

「レムカーナが勝手に、兄さんを目の敵にしとるだけ。よほどレムカーナと親密な街でもなければ、偽名を使ってまでコソコソする必要はあらへんよ。…少なくとも、この郷にいる間は兄さんたちの安全を保証するわ」

「兄さんを警戒するのは、悪行に身に覚えがある人だけよ。わっちらが滅される道理はあらへんのやから、邪険に扱うなんて馬鹿らしいわぁ」

慣れた手つきで酒を飲む紅華は艶かしく、自身を美人だと褒めるのも当然だと思えるほどに美しい。
促されるままに一杯いただく。緋桜酒独特の風味が喉を焼いた。正直、自分の舌には合わない味だ。
飲めないわけではないので、責任を持って全て飲ませてもらったが。

「変な味ですぅ~…」

ウィンディも、甘酒の個性的な味に四苦八苦していたようだ。
その一部始終を見ていた紅華は、クスクスと笑っていた。

全員が飲み終わったのを確認し、侍従が酒瓶などを回収する。部外者がいなくなった後に、紅華は口を開いた。

「過去に何があろうとも、今の兄さんたちは緋桜郷を訪ねた客人。なら、丁重にもてなすのが道理やろ?」

「そこまで評価してくれるのはありがたい」

僅かに視線を背けつつ、そんな言葉を返す。我ながら素直じゃないな、と心中で吐き捨てた。

「兄さんたちの泊まる宿は既に手配済みや。二番街の旅館『牡丹雪』。わっちの恩人が経営しとる宿でなぁ。サービスの質は桜花衆頭領のお墨付きや」

「宿泊費は桜花衆持ち。各種追加サービスは自己負担やけどそこはご理解いただけると嬉しいわ」

手厚いサービスをしてくれるのはありがたいのだが、そういうことをしてくれるということは、彼女側にも要求があることに他ならない。
何をすれば良いのか、リヒトは訊いてみた。

「察しが良くて助かるわぁ~。わっちらの望みはただ一つ。兄さんたちの活動が成功した暁には、緋桜郷も一枚噛ませてほしいんよ」

「成功するか解らんものに良く賭けられるものだ」

一年経っても何も成し遂げていない、前に進めていない現状。それを知っているが故の自虐。
紅華はそれを気にすることなく、平然と続ける。

「必ず当たる博打をしたって面白ないもんよ。それに、兄さんの眼がとっても綺麗でなぁ。どうしてか手を貸したくなるんよ」

紅華の言葉に、リヒトは返答に困る。
不思議な眼と言われたことはあっても、綺麗だと言われたことは無かった。
家を追われた原因たる紅眼は、どうしても好きになれなかった。自分が、嫌いだったから。
故に、リヒトは何も言えなかった。

急に押し黙ったリヒトを気遣ったのか、紅華はキセルの吸い殻を灰皿に落とし、手を叩く。
合図に合わせて襖が開かれ、女性が部屋に入ってくる。女性と言っていいのか分からないくらい、幼かったが。

「後のことはお雪に任せます。ほなまた」

踵を返した紅華は部屋の奥へ進む。ひとりでに襖が閉じ、姿が見えなくなった。
こほん、と咳払いをした女性は、嫋やかにお辞儀をした。

「わしの名は『お雪』と申します。皆様方が利用される旅館『牡丹雪』の女将を務めてますのでお見知りおきを」

「…私よりちっちゃい」

ウィンディが言う通り、お雪と名乗った女性は小さかった。目測だが、身長は130cmあるかどうかといったところだ。とても大人には見えない。
だが、彼女は少なくとも自分たちの数倍は生きているはずだ。紅華と同じく、鬼の象徴である角が髪の中から見えている。

子供のような顔つきをしているが、とても知的で大人らしく見える。眼鏡を掛けているのもその一因だろうが。

「わしのことが気になるのでしたら、夜に伺いましょうか?」

「んぁ?…あー、いや、大丈夫です」

言葉の意味を咀嚼し、言外に何を示しているのか理解する。そういえば、この郷は"そういう場所"だった。

「?????」

まだまだお子ちゃまのウィンディは話の意味が理解出来ていないようだった。何よりである。

お雪に手を引かれるままに道を行く。二番街と呼ばれる場所は、いわゆる緋桜郷の一等地で、最高級の店舗のみが軒を連ねる激戦区だ。
その中でも『牡丹雪』は特に評判が良く、リピーターもかなり多いのだとか。

牡丹雪に到着するまでの間、お雪と手を繋いでいたわけなのだが。
時折こちらを振り向いては蠱惑的な笑みを浮かべていたのが不思議でしょうがなかった。
何か気になることでもあったのか質問を何度かするも、それとなく躱されてしまい全く追及できなかった。

八階建ての大きな旅館『牡丹雪』。名店が鎬を削る激戦区で、何百年も在り続ける旅館は伊達ではなく、高級感が溢れて入るのも憚られるほどの迫力があった。

「「「おかえりなさい女将さんっ!!!」」」

お雪が中に入ると、着物を着た女性たちが元気にお出迎えをする。
大人から子供まで年齢は様々だが、大人の人は随所にスリットを入れたりして、肌を見せていた。なんとも目に毒だ。

「皆に紹介するよ。この方たちは頭領さんの友人のリヒトさん。これからしばらくの間、牡丹雪預かりとなります。仲良くしてあげてね」

「「「はぁーい!」」」

明るい声で迎えられ、リヒトは何となく顔を背けた。ウィンディは半分放心しており、ハリゴーディンに抱えられていた。
そして、二人は気づく。どう考えてもここは大人の店なのだと。
旅館としての側面を持つ、えっちな店なのだと。

冷や汗を流す二人を見て、お雪はくすりと微笑んだ。

お雪に聞きたいことがあれば↓1にどうぞ。
また、牡丹雪で働く人を数名募集します。彼女たちは何回も交流を重ねれば仲間になる可能性を持っています。

ちなみに、緋桜郷はその性質上、奴隷階級の人たちは桜花衆の傘下か店で働くかの二択を選びます。働く内容も基本的には希望制です。

(板的にも)えっちいことするつもりないんだが普通はそういうこと全くしない客でも泊まれるのか

従業員
【名前】結衣乃(ユイノ)
【人種】鬼
【性別】女性
【魔法】紡績魔法(糸生成・使役)
旅館『牡丹雪』の従業員。夜の接待と衣装制作、修繕担当。ウィンディと同じくらいの歳……らしいがメリハリあるボディはとてもそうとは思えない。
髪型は大元はツインテールにしているが毛先が多方向に跳ねている。
のんびりおっとり、間延び口調で話す。(キレると無口に)
自分を身請けしてくれる素敵な殿方を夢見ているが理想は高い。
使える魔法からアラクネの血が入っていることは確実だが捨て子のため詳しいことはわからない。

牡丹雪は大人のお店と普通の旅館、二つの側面を持つ店なので普通に泊まりたい人も当然います。
基本的には宿泊サービスがメインで、追加サービスで色々と付け足していくシステムとなってます。
一応追加サービスだけ受けるのも可能ではありますが、割に合わない料金設定にされてます(そういうことが出来ない人への配慮があるため)。

【名前】霧香(キリカ)
【人種】鬼
【性別】女性
【魔法】霧魔法
薄紫の髪をポニーテールに纏めた爆乳美女。明るくノリの良い性格で誰からも好かれている
牡丹雪の従業員として夜の接待を務めるかたわら、自身が使う霧魔法の特性を活かし諜報や暗殺などの任務をこなすいわゆる忍者のような役割も担っている
性格といい、スタイルといい、忍ぶどころか逆に目立ってしまっている気がするが、一度任務となれば冷静沈着かつ非情な一面を見せるようになる
もしかしたら彼女の本当の性格はこちらなのかもしれない

【名前】雫(しずく)
【人種】半妖
【性別】女性
【魔法】水魔法
牡丹雪で見習いとして働く幼い少女。透明感のある青髪をおかっぱに切り揃えている。背格好はお雪と同じくらいだがこちらは外見通りの年齢。仕事は館内の雑務や他の従業員の小間使いなどで、夜のお仕事を覚えるのはまだまだ先
儚げな見た目とは裏腹に性格は素直で人懐っこく、目上には甘え上手で目下には優しく面倒見が良い
詳細は不明だが人と人以外の何かの混血らしく、その影響か綺麗な水を浴びると体力や魔翌力が回復する特性がある。そのため水浴びや湯浴みが大好き
身寄りのない自分を育て、働かせてくれているお雪には大きな恩を感じており、将来ももちろん牡丹雪で働くつもりでいる。しかし観光地の旅館で働いていると旅や外国の話を耳にすることも多いため、無意識下では外の世界への憧れを抱いている

お雪に聞くことは特になしでよろしいですか?
明日の夕方~夜に投稿しますので、それまでを安価の期限とします。
キャラについても同様です。話の都合上、お雪と紅華は仲間にならないのでご了承をお願いします。

じゃあ
この近くに亜人の住む森林地帯はないか?でお願いします

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【名前】静音(シズネ)
【人種】天狗
【性別】女性
【魔法】浄化魔法。物理的な汚れだけでなく殺菌や呪いをはじめとした魔術的な汚れの浄化も可能。
旅館「牡丹雪」専属の女医。
一本の三つ編みにした長い銀髪。アイスブルーの瞳。黒い翼。白い肌。優しそうな顔立ち。長身で豊かな胸やくびれた腰、安産型の美尻など悩ましい体つきだが客への接待はしない。
心優しく面倒見のよい性格で、困っている人を放っておけない世話焼きなお姉さん。
痴情のもつれから客が従業員を襲おうとしたり呪いをかけようとしたトラブルが過去にあったため、護身術程度に体術を習得しており恋愛について無意識に敬遠している。

【名前】リン
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】障壁魔法
牡丹雪の板前をつとめる、粋で懐が深い大人の女性
いつも長い紫髪をざっくりとまとめて着物をたすき掛けにして着ている
自分は可愛げがないし接客に向いてないと思っているので裏方専門
人間同士の紛争に巻き込まれて故郷の街が襲われて家族や友人を失いながら逃げ延びて天涯孤独の身になる
せめて最期に噂に聞く緋桜郷の桜を一目見て死にたいと思いボロボロになりながらたどり着いたところをたまたま通りかかった頭領に気まぐれで拾われた
下働きをしながら料理の才能を開花させ、今では鬼以上に和食を理解していると評される
今の境遇に感謝してるし生きがいを感じているが、自分だけ生き残ったことや紛争に関して内心では未だに割り切れないところがある

緋桜郷はイルステッド最大の歓楽街として名を馳せていたし、世界規模で見ても有数の都市だというのは有名な都市だ。

だがまさか。入郷した途端に、一番偉い人にロックオンされるとは思っていなかった。
いやね、俺も何も考えていなかったわけじゃないんだ。偽名使ったりして対策はしていた。
でもさ、正体知ってますーここにいる限りは安全ですー宿屋も手配しますーって速攻で外堀を埋められたら、ね。どうしようもないじゃんか。

それで手配されたのが緋桜郷の頭領、その恩人が経営する旅館。徹底的に囲もうとしてて笑うに笑えない。
もしかして、彼女たちは俺を美味しく頂く気なのだろうか。色々な意味で。
だとしたら勘弁願いたいものだ。俺なんか喰ってもたぶん美味くはないぞ。色々な意味で。

過去の英雄が遺した名言がある。童貞すら守れぬ者に何が守れるのか、と。
なるほど、素晴らしい言葉である。

ならば俺も守らねばなるまい。この色欲渦巻く欲望の郷で、貞操という一つしかない至宝を。
今は捨てた勇者の名に懸けて。漢には逃げてはならない時がある。今が、その時だ。

《リヒトの手記》

緋桜郷はエッチな場所。そうハリゴーディンさんに教えられた私は、正直やばいって思いました。
そんな場所に14の子供を連れて行って何をさせるつもりなんでしょうか。

私に身を売れと?戦いで役に立たないんだからこれくらいやれと?
貧相な身体の私が一文でも稼げると思ってるんでしょうかねこの人は。
いや、戦いで何も出来ないのは本当にごめんなさい。
でも許してください。私はまだ14の子供ですし、貴方みたいに戦いと慣れ親しんでるわけでもないんです。
レムカーナでコソコソ生きていた小娘に期待なんかしないでいただけると助かります。

そういえば、お雪さんに連れてこられた牡丹雪、綺麗な旅館だったなぁ。
でも、あんな綺麗なところなのに夜にはエッチなことをするんだよね。
お出迎えしてくれた綺麗なお姉さんとかが。それを知っておきながらどんな顔して接したらいいんでしょう。
大人の街に放り込まれた私は早くも心が折れそうです。助けてチャカちゃん。ハリゴーディンさん。
リヒトさんはエッチなことしに行くかもしれないから除外します。
男の子はそういうのに興味深々だって私知ってます。本にそう書いてありました。

《ウィンディ・ヴァルマンウェの手記》

お雪に案内されたのは、旅館『牡丹雪』の七階。客人用の客室らしく、広々とした居間が広がっている。
ちなみに、牡丹雪は全室に露天風呂が設置されているらしい。大浴場は男湯、女湯、従業員用浴場の三つに分かれているのだとか。

近辺で採れたどんぐりを食べているチャカは、満足そうにウィンディに抱き抱えられている。
旅館内で粗相をしないか心配だ。もしやらかしたら損害賠償はどれくらいになるのだろうか。身体で払うのだけはしたくないものだ。
ともかく、今は行商人の調教の手腕を信じる他ない。

「この部屋はリヒトさん、こっちの部屋はウィンディちゃんたち。緋桜郷に滞在するうちは、我が家のように扱ってくれて構わないよ」

「我が家、ね」

反射的に言葉を零した、リヒトの表情が微かに曇る。周囲の人には読み取れないほどに些細な変化だし、当の本人も気づいていない。

「食事は毎食お出しするけど、他の子と一緒に食べるかこの部屋で食べるか、それとも外食するかは先に教えてくれると助かるよ。配膳の手間があるからね」

「風呂は大浴場を好きに使っておくれ。夜は掃除でお客さん用の浴場は閉めちゃうから、その時は従業員用のを使うといいよ。お前さんたちが気にしないのなら、昼間でも従業員用浴場は使っても構わないけれど」

「立て看板を作っておくから、一人で入りたい時は入り口に立てておけば他の子は入ってこないよ。昼に入りたいけど一人がいい…って時はこれがおすすめだね。昼も夜も、浴場はお客さんで賑わってるからさ」

「あとは、リヒトさんに対しての注意が一つ。追加サービスを希望するならその子と直接、値段とかを交渉しておくれ」

「はいはい分かりました分かりました」

あーあー聞きたくないと頭を振るリヒト。お雪は微笑し、頭を下げた。

「では、ごゆるりとお寛ぎください。身体と心が癒されること、わしら牡丹雪の一同は願っております」

「…どうも」

屈託のない明るく優しい笑顔に、頬を掻きながらリヒトは答える。何故か頬を上気させていたウィンディは、ぺこぺこと頭を下げていた。

そういえば、今はお昼時とはいえ他の客の姿を一切見なかった。風俗として利用する人はともかくとして、旅館として利用する客すらもいない。

「まっ、今週は定休週だからねー。牡丹雪は月に一度、丸々一週間お店を閉めるのさ」

「曲者!?」

荷物を降ろし、椅子に座って考えごとをしていたら、窓から声が聞こえてきた。
独り言などしていないので単純に心を読まれている。怖い。
カーテンを開けてみると、そこにはポニーテールの曲者がいた。

「曲者とは失敬なぁ!!!わたしは牡丹雪の従業員だよう!」

ぷりぷりと怒っている女性のお山がぶるんぶるん揺れる。着物を緩めているからなのか、ふとした拍子で見えそうで目のやり場に困る。
というより、何故彼女はバルコニーがあるのに窓にへばりついているのだろうか。
この高さから落ちれば常人は無事で済まないどころか間違いなくとんでもないことになるはずだが。

「女将さんが引っ掛けてきた男の人がどんなイケメンか気になってね。顔は及第点、身体つきも上々…というかやばいね!どんだけ鍛えてるのさ!勇者って皆こうなのかな?」

「引っ掛けてって…。俺は他の若い勇者を知らないから比較出来ないんだ、すまない」

「だよねー。わたしもそれなりにここで働いてるけど、勇者様のお相手をしたことは一度も無いからわかんないや」

勝手に窓を開けて転がり込んできた曲者。どうやって開けたのか、そもそも何故あんなことをしていたのかは触れないでおく。

「わたしは霧香(キリカ)。お呼びとあらば即参上!年齢はヒミツのイケイケ鬼ウーマンだよ!どうぞよろしく!」

決めポーズをバッチリ決める霧香改め曲者。
リヒトはただ、苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

「ノリが悪いぞ少年ー!」

「きゃー!」

「待て待てー!」

興味深そうにドアの隙間から子供たちが中を観察してきたので、取り込み中でなければ自由に出入りしていいと伝えたところ、リヒトの客室は子供たちの遊び場になってしまった。
五、六階が従業員の区画らしいのだが、そこではしゃいだら他の従業員の迷惑になるのでわざわざここに来たのだろう。

「…羨ましいな」

自分には無かった、子供の時間。自由に遊び笑うひととき。
もし自分にもあったなら。そう夢想しても叶うことはなく、所詮はたらればだと諦めた届かない夢(まやかし)。
何度求め願ったのだろうか。数えきれないほどに欲した人との繋がりは、家を出るまで手にすることは出来なかった。
家を出て聖女に出逢うまでも、地獄に等しき悪夢の中を一人、彷徨い歩いていたが。

不幸の星の下に産まれたのではないか、と自嘲げに嗤う。子供たちにはその姿が見られることはなかったし、見られたくない。
この苦しみは、自分だけが感じていればいい。他人に共有して苦しませても、辛くなるだけだから。

憂いを帯びた瞳で、バルコニーに目を移す。鮮やかな緋桜が、今の自分には眩しかった。

「あの子たちのわがままを聞いてくださってありがとうございます」

「…ん…。礼を言われるようなことじゃないよ」

コトリ、と湯呑みを置きつつ、女の子が謝辞を述べる。
リヒトは視線を女の子に向けつつ答えた。
湯呑みに注がれていたのは温かい水。即ち白湯である。
ゆっくり飲み干してみると、身体の中からぽかぽかと温まる。熱すぎず冷たすぎない、絶妙な温度だった。
ちょうど喉も乾いていたからありがたい。

「雫(シズク)ちゃん、だっけか。しばらく迷惑を掛けるだろうが、ウィンディともどもよろしく頼むよ」

「はいっ!こちらこそよろしくです!」

人懐っこい笑顔を見せる雫は、将来性を感じさせる可愛らしい少女だった。
未来では傾国の美女と呼ばれているかもしれないが、牡丹雪の人は皆同じくらい顔立ちがいいことに気がついた。顔面偏差値のインフレが激しすぎる。

到着して早々、特にやることが無くて暇を持て余したリヒトは、仕入れた荷物の荷運びに勤しんでいた。
子供や女性に重い荷物を持たせて、のんびりするのは気が引けるという個人的事情もある。
こんなことにハリゴーディンを使うのはもったいないにも程があるので、リヒトが荷運びを行なっている。暇つぶしを兼ねているので当たり前のことだが。

まず最初に運んだのは、鮮度が命である食材類。両腕に木箱を担ぎ、樽を背負った姿は傍目には拷問に見えるが、リヒト本人はなんとも思っていない。
床が抜けないように一応浮遊しているが、それはそれで不気味な見た目になっていることにリヒトは気づいていない。

「おかげで助かったよ。ありがとう」

せっせと食材を整理している女性が、そんなことを述べる。
リヒトとしては暇だからやっただけなのだが、感謝はとりあえず受け取っておく。
ぶっきらぼうな態度は今更どうしようもないので、放っておいてもらいたいものだ。

「素直じゃないな、君は」

「素直じゃなくてすみませんね。どうせ俺は天邪鬼なガキンチョですよ」

本当に放っておいてほしい。

「そんな天邪鬼な君にお礼を差し上げよう。他の人には内緒だよ?」

リンと名乗った女性が差し出したのは、見るからに高級そうな魚の煮付けだった。
美味そうな匂いに思わず喉が鳴り、腹の虫が鳴く。
本当にこんな上等な品を食べていいのか訊くと、リンは頷いた。

「構わないとも。本来はお雪さんに食べてもらう試食品だったんだけど。それはまた作ればいいしね。君の感想を聴かせてほしいな」

「美味すぎて美味すぎる。俺の貧弱でゴミクズな語彙力では言葉に出来ません申し訳ない」

「そ、そうかい。そこまで喜んでくれるなら料理人冥利に尽きるよ。あと味が変わるから涙は拭いてくれ」

大粒の涙を流しながら試食をするリヒトに、リンは慌てふためいた。
その後、美味しさの秘訣を訊いてみるも、企業秘密だと躱されてしまったリヒトだった。

次に訪ねたのは医務室。《取扱注意》と書かれた箱を恐る恐る運び込み、机に置く。
薬品の匂いが鼻を突くが、嗅ぎ慣れない匂いはあまり気分の良いものではなかった。

「こんなにいっぱい薬品があると、どれがどれだか分からなくなりそうだな」

空の瓶を手に取り、説明文書に目を通す。専門用語の羅列に処理能力は敗北し、無言で元に戻した。

「知らない人にはそう見えるだけよ。知っていれば、ちゃんと違って見えるの」

カルテの整理をしているのは、牡丹雪唯一の女医である天狗『静音(シズネ)』。
やや短い黒い翼が種族を主張しており、グンバツなスタイルはちょっと子供にはお見せ出来ない色気を放っている。
それでいて、下品さを欠片も感じさせないのは背の高さと彼女の顔立ちの良さが関係しているからだろう。

「今はリヒトくんも、他の子と同じ大切な人だから。もし怪我でもしたらここに来なさい。完治するまで責任を持って看病するから」

「そりゃどうも。もしもの時は頼りにさせてもらうよ」

「約束よ?」

気のない返事をしつつ、リヒトは医務室を後にする。
自分が大怪我を負う時は相当に危険な事態になっている時だ。だから、彼女を頼る日が来ないことを祈った。

「ここでいいのか?」

「大丈夫ですよ~」

着物と生地が詰まった袋を置く。六階の一室に呼ばれたリヒトは、女の子の指示に従い荷物を運んでいた。
女の子の名は結衣乃(ユイノ)。本人曰く『ウィンディと同年代』らしいが、メリハリのあるボディを見る限りとてもそうには見えない。
げに恐ろしき脅威の格差社会である。同年代だからと比較されるウィンディが不憫でならない。彼女の明日はどっちだ。

純年齢が同じくらいなのか、人間に年齢換算すると同じくらいなのかは分からないが、どっちにしても今のウィンディに勝ち目は無い。
可能性に期待するしかないが、同じように結衣乃も成長する可能性を鑑みるとやはり、希望はゼロに等しいのかもしれない。

「ありがとうございます~」

「この量…君が皆の服を担当してるのか?」

リヒトが運んだのは袋が四つ。人数にして数十人の服を賄える量だ。個人の物とは思えない。
結衣乃はリヒトの質問を肯定する。
ちょっとした所作一つで結衣乃のたゆんたゆんが揺れ、その度に目の光を失ったウィンディを幻視する。
悍ましい密度の呪詛を吐いているようにも見えたが、リヒトが見たのは幻なので本人がそうしている可能性は無いだろう。
彼女は他人想いの良い子なのだ。たとえ自分の身体が貧相だからって恵まれた子を羨み恨むなんてことがあるはずがない。

こっそりウィンディの部屋を覗いてみるとそこには、虚な目をしたウィンディが無言で大量の牛乳を飲み干していた。
優しいリヒトは何も言わずその場を後にし、今回のことを忘却した。

亜人の居場所 判定↓1コンマ


01~30:今はもういない
31~99:未だに住んでいる人がいる
00:???


亜人の種族 判定↓2コンマ(上の判定成功時限定)


01~30:獣人
31~60:鬼、天狗
61~90:エルフ
91~99:自由安価
00:???

あい

自由安価用:ドリアード

「本日のお昼ご飯ですっ!」

「ありがとう」

雫が配膳してくれた昼餉に手を付ける。献立は白米とオスイモノなるスープ、あとは魚の塩焼きやトンカツだった。
普通の手料理が食べたいと要望を出していたのが通ったのか、緋桜郷の食卓に並ぶようなシンプルなラインナップになっている。
かしこまった雰囲気は嫌いなのでこちらとしてもありがたい。

「おかわりはたくさんあるからね。焦らず食べておくれ」

ニコニコ顔でご飯をよそうお雪。忙しなく配膳を務める雫。目に入った物を片っ端から食べていくリヒト。
三者三様の姿がそこにあり、その中でもリヒトが圧倒的に目立っていた。
幸い、この部屋には彼ら以外はいないので、人目は気にしなくても問題ない。

三人前を食べきり、両手を合わせる。緋桜郷の風習によると、食事を終える時は手を合わせ『ごちそうさまでした』と言うのだとか。
慣れ親しんだ仲ならば省略していいらしいが、そこまで親密ではないし単純に失礼なので郷に入っては郷に従うことにする。

「お雪さんに訊きたいことがあるんだが、いいか?」

「わしで良ければ」

差し出された緑茶を一杯飲み干し、息を吐く。ほっと落ち着く優しい味わいに、表情が綻んだ。
リヒトはお雪に対し、緋桜郷近辺の森林に亜人が住んでいるのか訪ねる。首肯で返されたリヒトは、小さく頷いた。

「差し支えがなければ、どんな人が住んでいるか教えてほしい」

「とは言われてもね。鬼や天狗といった先住民たちが住んでいるだけさ」

「わしら緋桜郷の民…その大半は、その森林地帯に源流を持つ。先祖が森を飛び出してここに拠点を創り、それが発展して今へと至ったのさ」

「だから…昔はとんでもなく仲が悪かったんだよ。それこそ、目と目が合ったら即決闘と言わんばかりにね。今では遺恨は綺麗さっぱり流れて友好的な関係が築けているけど、昔は本当に酷かった。ああ、思い出すだけでも頭痛がするねぇ…」

たはは、と乾いた笑いを浮かべるお雪。当事者にとってはかなり大事だったそうだが、悲しいかな。
その悲しみを共有出来る人はここにはいない。彼女からすれば、リヒトや雫など産まれたての赤ちゃんに等しいからだ。

「そういえば、お雪さんっていったい何歳なんだ?」

何気なしに発したリヒトの言葉は、女性なら誰しもが抱える地雷を踏む愚行だった。
雫はあちゃあ…といった感じで頭を抱え、皿を片付けていく。あからさまに逃げの手を打っている。
それに対してお雪は、女には秘密があるものだよ、とだけ残し口を噤む。心なしか、周囲の気温が十度ほど下がった気がした。

何をするかを↓1にどうぞ。

森へGo!

いつものようにマナをフードに迎え、牡丹雪を出る。ウィンディには緋桜郷の雰囲気に慣れてほしいので、お留守番を命じてある。
これを機に友達を作ってもらいたいものだ。牡丹雪の従業員は皆善人だから、邪険に扱われることはないはずだ。

喧騒で賑わう街中を進む。冒険者、住民問わず多種多様な人が雑踏の中に見受けられる。
緋桜郷の風習に倣っているのか、大半の人が着物に身を包んでいるため、リヒトの服装は大衆の中でかなり浮いている。

「しかし、温泉とやらの匂いはすごいな。慣れてしまえば、気にならないんだろうが」

「わたしはきらいじゃない」

「へえ」

自然由来のものだからか、マナは気にする様子を見せない。
火山地帯に暮らす妖精なら、毎日温泉に入っているのだろうか。気になるところである。

雑踏を抜け、関所を通る。目的地の森はすぐそこだ。リヒトの足ならば往復で一時間も掛からないだろう。
軽い足取りで走っていると、白狼の群れが隣を並走していた。催促するような、期待するような視線をこちらに向けながら。

追いかけっこにでも興じたいのだろうか。こちらは遊んでいる暇など無いのだが。
だがしかし、ここで彼らを無視するのも可哀想に思える。

「《天狼星(シリウス)》」

リヒトはそう呟き、光魔法を行使した。左手から溢れた光が集い、数匹の狼を形作る。
幼い頃に考案した、孤独を紛らわすための悲しい魔法。戦争では一転して、数多の命を喰らった凶悪な魔法。

それは今、同胞をもてなし戯れるためだけに行使された。あたりを駆け回って光の尾を引く白狼が、血塗られた過去を持つなど夢にも思うまい。

「アオーン!」

彼らも同胞だと認識したのか、光の白狼とじゃれあい始める。微笑したリヒトは速度を上げ、森の中へと消えていった。

獣道を行くこと十分。風のざわめきの中にカラスの鳴き声が混じり始め、日の光が空を覆う樹木の葉に遮られ明度が下がっていく。
殺風景だった道は石畳と木の柵で彩られ、灯籠が周囲を照らしていた。
かなり年季が入っており、汚れが付いていることからして、長年放置されているようだが、中の炎は煌々と燃えている。赤ではなく、青色に。

なんとも不思議なものだと思いながら道を進むと、集落が見えてくる。ここが目的地で間違いなさそうだ。
リヒトは箒で入り口を掃除している少年に声を掛ける。ピタリ、と動きが止まった。

「………」

じっとこちらを見つめ微動だにしない少年は、何を思ったのか茶色の変なものを取り出した。本当に何をしているのだろう。
ぷらぷらと左右に何かを揺らす少年。それを不思議そうに見るリヒト。

数秒後。どこからともなく現れたキツネが、少年の右手に握られていた何かを咥え去っていった。

「…なんだ、人間か」

人に向かってなんだとはなんだ失礼な。リヒトはささやかな抗議をするが、少年は口をへの字に曲げて反論する。

「緋桜郷ばかり有名になって、こっちは閑古鳥が鳴いてんだよ。こっちのことなんか見向きもしないくせによー!」

逆ギレもいいところだと、リヒトは苦笑した。周囲の人は、二人を生暖かい目で見守っている。
見ているなら助けてほしいと、リヒトは嘆息した。

「ここは天狗と鬼が暮らす隠れ里『竹風村(ちくふうむら)』だ!せっかく来たならゆっくりして金落としていけミーハーなバカヤロー!!!」

少年が逃走する間際に零したトドメの捨て台詞に、リヒトはまた嘆息した。
仮にも隠れ里と名乗っているなら有名にならなくても当然だろう。と納得しながら。

何をするかを↓1にどうぞ。

竹風村での行動数:最大3

ウィンディや牡丹雪への方々へ贈るためのお土産を物色する

年配の夫婦が営む手芸店には、二人が丹精込めて作り上げた温かみのある作品が並べられてある。
どれも細部まで作り込まれているのだが、少年が言ったように観光客が全く来ないため全然売れず、埃を被っている状態だったが。

店主も客が来るとは露ほどにも思っていないようで、姿が見えない。商品も置きっぱなしで不用心が過ぎる。
まあ、ここがのどかで平和な村だから為せることなのだろう。
仮に緋桜郷で同じことをしたら、根こそぎ悪党に盗まれているのがオチだ。

他にも軽く目を通すと、漬物屋では熟練の技が唸る素晴らしい出来の漬物が売られていた。
試供品を食べてみたのだが、独特な匂いとは裏腹にあっさりとしていて食べやすい。
外の人向けの品らしいが、なるほど。この味なら抵抗なく食べられると、一人納得した。
マナに食べさせようと試みたが、口の中に押し込まれる結果に終わった。美味かったから別にいいのだが。

他に目に付いたのは、『竹ノ湯』と呼ばれる温泉で売られている温泉饅頭くらいか。
温泉の名が入っているが、温泉の湯は使われていないらしい。味も匂いも変になるので、それはきっと正しい判断だと思われる。

こちらも一口味見してみると、ふんわりとした生地に詰め込まれた甘い餡が、優しい甘さを口いっぱいに主張した。
製作者曰く、普通の砂糖とイルステッドでは緋桜郷近辺でのみ生産される黒糖なる砂糖を独自の割合でブレンドしているらしく、この味は竹風村の密かな自慢なのだとか。

ごく少数を緋桜郷に輸出して販売しているが、決まって開始数分で完売する人気品らしい。
数が少ないのが主因だろうが、緋桜郷でも親しまれているのならその人気に嘘は無いだろう。
製作者が年なので、近々製作を辞めてしまうらしい。
そうなれば、この味は永遠に失われるのだろう。悲しいがそれが歴史というものだ。
技術を引き継いでくれる勇気ある若者が出てくることを祈っておく。

「…とっっってもくやしいけど、これだけはおいしい」

"あの"マナが太鼓判を押すほどに、温泉饅頭は美味しい。これをセールスポイントにすればさらに売れそうな気がするが、生憎リヒトは商人ではないので、そんな益体もない考えは破却された。

誰に何を買うかを↓3までどうぞ。書き方は例を参考にしてください。一レスにつき二種類しか書けません。



ウィンディ 櫛
リン まな板と包丁
牡丹雪の子供たち 温泉饅頭を買えるだけ

すみません、一レスにつき一種類に変更します。

子供たち お饅頭買えるだけ

ウィンディ 櫛

リン 花

さて、何を土産に買うべきか。こういう普通の人らしいこととは縁が無かったので、何が喜ばれるのか皆目見当が付かない。
唯一マトモな助言をくれそうなウィンディはここにいないし、マナに期待しても無駄なのは分かりきっている。ハリゴーディンは論外だ。

結局のところ、行き詰まった時に頼りになるのは己の直感だけだ。本能が良いと言った物を選べばいい。
他人にどう受け取られるかは他人次第。フェルリティアで巡り合った旅人が残した名言はこんな時にも役立った。

そんなこんなでリヒトが購入したのは、子供たちが喜ぶであろう温泉饅頭。これは買えるだけ買ったが、たった数箱で売り切れたのを見るに、生産数も相当に絞っているのだろう。
他にもウィンディやリンに贈答する櫛や花を購入した。
女の子なのだから、髪の手入れをする際にこういう物はなにかと役立つはずだ。たぶん。
厨房に立つリンに花を贈っても邪魔になるだけな気がするが、選んだものはしょうがない。
最悪、花瓶に挿してインテリアとしてでも使ってもらおう。

オマケでもらった温泉饅頭を齧りつつ、リヒトは荷物を纏める。二、三個だけつまんだ後、残りはマナ用に残しておく。
目の前に袋を置くと、当然のようにそれはマナに盗まれ、胃袋の中に収まった。まあ、元々食べさせるつもりだったから別に良いのだが。

何をするかを↓1にどうぞ。

竹風村での行動数:2

マナ、波長の合いそうな気配感じない?
拠点に来てもらうなら相性重要だし

マナチェッカー 判定↓1コンマ


01~30:いない
31~80:ひとりいる
81~99:ふたりいる
00:???

マナちゃんキャラ立ってきてるねぇ!

仲間を一人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。
場所が場所なので種族は鬼と天狗のどちらか限定です。

【名前】蓮武(レンブ)
【種族】天狗
【性別】男
【魔法】雷魔法
水色髪短髪筋肉質の青年。大剣を背負っている。白い羽がある。性格はクールだが真面目なところがある。剣の修行の為に旅をしている。剣では一度も負けた事がないくらい強い。幼い頃に奴隷商人に捕まり奴隷になった過去がある。売られる前に脱出し今は自由になっている(脱出した時に一人の剣士に出会い剣術について色々教えてもらった)。クールだが心の奥では深い傷をおっている。
戦闘では剣術と雷の魔法を使用したり、剣に雷を纏わせて戦う事ある。

のんびりと足湯に浸かるリヒトとマナ。ズボンの裾を太ももまで捲り上げ、乳白色に濁った温泉に足を浸け、温まっていた。
マナは体格の都合上、リヒトと同じように席に座っても足が温泉まで届かない悲しみを背負っている。
が、桶に温泉を汲み、木箱で即席のマナ専用足場を用意することで事なきを得た。

うぼぁー、とだらしのない声を漏らし、足湯を堪能する二人の顔は、他人には見せられないくらいに破顔していた。

拠点にこのお湯が有ればなんでも出来る、頑張れる気がする。
そんな気にさせる名湯は、緋桜郷では知名度が全く無い。その原因はもはや言うまでもない。

ここでさりげなく、リヒトはマナにアイコンタクトを取った。
意味が伝わるならそれでよし。伝わらなかったなら口で言えばよし。単なる実験という名のおふざけだ。

気の合いそうな人はいるか。リヒトの問いに、マナは逡巡ののちに指を一本だけ立てることで答える。

意図が伝わったこと、そして何より、マナが同調出来そうな人がいることに驚いた。

「すまない、見知らぬ人よ。俺も湯に浸かって構わないか?」

同時に、意識の外から声を掛けられる。振り返ってみるとそこには、筋骨隆々な男性がいた。
羽が生えていることから、種族はおそらく天狗。

「どうぞ」

リヒトが促すと、青年は頭を下げながら足湯に入る。ふう、と息を吐く音が聞こえた。

マナに視線を移してみると、一瞬だけ彼を指差す。彼が先述した同調出来そうな人で間違いない。

しかし、この偏屈な妖精がシンパシーを感じるとは。厄ネタを持っていそうな気配を感じる。
リヒトは内心冷や汗を掻きながら、努めて平静を装う。そんなリヒトを知ってか知らでか、マナは大きな欠伸をした。

蓮武と何を話すかを↓1にどうぞ。

ずいぶんデカい剣を背負っているんだなと背中の剣に注目する

竹風村の足湯に入る際のルールとして、手荷物は全てカゴに入れて保管する、というものがある。
そのため、リヒトはカバンなどの荷物一式はカゴに入れているわけだが、目の前の男性はカゴから荷物がはみ出ていた。はみ出ざるを得なかった。

刃渡り2m超の無骨な大剣が、カゴの横に放り出されている。カゴに乗せようものなら瞬く間に押し潰れるのは確実なので、その判断は正しいのだろう。
だがこう、もうちょっとどうにかならなかったのだろうか。
刀身がさらけ出されていると、どうしても気になってしまう。
だから俺は悪くない、と誰に対してでもなく自己弁護をする。

しかし、かなり大きな剣だと感心する。リヒトも膂力には自信があるが、大剣類は手に馴染まなかった。
振るえないわけではなかったが、手足のように扱うには、技量も筋力も足りていなかったのだ。
彼がわざわざそれを選んでいるということは、自身が信を置くに足る、と認めていることの証左に他ならない。
それほどまでに、研鑽を積んできたのだろう。

「俺の剣が気になるのか?」

「ん?ああ。俺も剣の腕には多少の覚えがあってな。随分と大きな得物だと感心してたところさ」

「なるほど」

目立った装飾の無い、使い込まれた大剣は、その刀身に蒼空を映す。
しっかりと手入れがされた剣は、華やかさこそ無いがとても美しい。彼の人柄を、刀身に映る鏡像に垣間見た気がした。

蓮武と何を話すかを↓1にどうぞ。

(荷物の雰囲気などから旅人だろうと踏んで)
どこから来てどこへ行くのか、といった話をする

さて、彼はいったい何者なのだろうか。
武器を持っていること。行動を阻害しない戦闘向きの服を着ていること。荷物に保存食や水が所狭しと敷き詰められていること。
そして、戦闘を日常とする者が放つ特有の雰囲気。
以上を鑑みるに、旅人や修行者の類と見て間違いなさそうだが。

リヒトは自身を『緋桜郷に心身を癒しに来た戦士』ということにして、天狗の男性に質問をする。

「貴方は何をするために旅してるんだ?その旅はどこから始まった?」

蓮武(レンブ)と名乗った男性は少しの間考える素振りを見せ、ゆっくりと口を開く。

「…俺は、剣の道を極めるために各地を放浪している。旅の始まりについては、敢えて黙秘させてもらおう」

ふむ、とリヒトは足を組んだ。語りたがらないのは、そこに後ろめたいこと、忌まわしい過去があるからだと、相場は決まっている。
であれば、深入りは禁物だ。わざわざ藪を突いて蛇を出すこともない。

「求道者ってわけか。果てのない修羅道を征く、その心意気には恐れ入るよ」

闇に身を堕とした者には、あまりにも眩しい道。物怖じせずに突き進む勇士を、幽者は羨望の眼差しで見つめる。
が、その視線には誰も気づかない。

彼のように真っ直ぐな心が残っていれば、俺も違う未来へ進んでいたんだろうか。
そんな独白は、心の闇に溶けて消えた。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。蓮武との交流を終了します。

(「各地を放浪している」と言っているので)
今までどんな国や村など訪れたことがあるか、といった話しをする。

竹ノ湯の従業員に振る舞われた温泉卵なる珍味。それをおっかなびっくり食べるリヒトと蓮武の姿が対照的だった。
従業員に食べるか尋ねられたマナは黙秘を貫き、刺々しい視線を向けることで答えていた。
善意で訊いた従業員が不憫でならなかったので、リヒトは謝罪し、マナの分も食べることにする。が。

「なんだぁこれ…。黄身は固まってると思ったらそうじゃないし、白身はトゥルントゥルンだし…」

リヒトは初めて食べる珍味に難色を示す。
美味い、不味いの問題ではない。味は元が卵なので問題ない。問題があるのは食感だけだ。
こんな食感は初めてだ。卵の面影を色濃く残しているというのに、卵らしさがほとんどない。
ゆで卵のように黄身も白身も固まっているのかと思ったがそんなことはなく、黄身はとろけていて、白身に至っては口で啜れるほどにトゥルントゥルンだった。

ただ不味いだけなら、それはそれだと割り切って食べるだけで良い。
だが、独特にも程があるこの食感…未知との遭遇に、リヒトの頭はフリーズする。
それから回復するまでの間、なぁにこれ、と間の抜けた声が頭の中で途切れることなく反響していた。

マナの分については、見かねた蓮武が食べてくれた。馴染みがあったのか、彼はすんなりと完食していた。
ということは、緋桜郷近辺出身なのかもしれない。

「修行の旅、だっけか。今までどこを旅してきたのか、訊いても構わないか?」

「…とは言われてもな。俺はあくまで修行のために旅をしている。面白味のある話は出来ないぞ」

「どこに行ったかくらいで構わないさ」

旅程だけでも知っておけば、今後の行動に役立つ日が来るかもしれない。
欲を言えば何があったか、その仔細まで聴いておきたいのだが、そこは彼次第と言ったところだろう。

面白味が無い。後で聴かない方が良かったと後悔しても知らない。と散々に予防線を張った後に、蓮武は修行の旅程を語った。

彼がまず最初に赴いたのは、嘗てリヒトが陥落させた都市『カロゥス』だった。
彼が来訪したのはリヒトが産まれるより前のこと。なので当然、戦火に包まれていたわけはない。
とても平穏な、ごくごく普通の都市だったし、今ほどレムカーナとの仲が険悪ではなかった。
今も当時も、メリちゃん最かわ教の狂信者が相当数いたことは変わらないが、まあ平和だった。

そんな狂信者の集う都市に何故蓮武が向かったのか。
先述した通り、修行のためである。断じてメリちゃん最かわ教に入信したかったわけではない。
魔王であるメリオゴストーグ。
本体はとても貧弱、軟弱、虚弱であり、新米冒険者ですらタイマン勝負であればほぼ勝ちが確実なくらいに戦闘に向いていない、見かけ通りの弱さを持つ魔王という肩書きからは想像が付かないほどに弱い女の子だ。

だが、そんな弱々しい彼女を守護(まも)るべく、その可愛さに脳を壊された強者が集いに集い、英雄級の戦士が幼女に人目を憚ることなく頭を垂れ、嬉々としてこき使われている地獄絵図が生まれていた。
メリオゴストーグさえ関わらなければ真っ当な人たちなので、蓮武は彼らの組手を観察し、カロゥス周辺の魔物を掃討しつつ実力と経験を培っていった。

この話を聴いた時、リヒトは盛大に頭を抱えていた。
当時殺し合った人たちが、とんでもない醜態を見せていたことに、なんとも言えない気持ちになっていたのだ。
それを平気で言ってのける蓮武にも物申したい気分だが、彼は大真面目に当時の旅程を説明してくれているだけだし、自分がカロゥスを陥としたことも知らなそうなので黙っておくことにした。

カロゥスで研鑽を積んだ蓮武は、去年まで別の大陸で武者修行をしていたのだという。
今緋桜郷に留まっているのは湯治のためらしく、かなりの激戦を繰り広げてきたようだ。

彼が修行をしてきた大陸の名は『イザリア』。イルステッドとの距離はそれなり、大陸面積はイルステッドの役七割程度。
気候は全体的に熱帯で、大部分を砂漠と火山が占めている灼熱の地である。
天貫の霊峰を除けばほぼ温暖で過ごしやすいイルステッドとは大違いなので、イザリアに住むだけでもさぞ鍛えられるだろう。暑さには滅法強くなりそうだ。

とある火山の近くには龍人(ドラゴニュート)の集落が点在しているらしく、蓮武は過酷な環境に身を置いて鍛錬を積んでいたそうだ。
龍人の数は非常に少なく、リヒトは未だお目に掛かったことが無い。
そも、現時点ではイルステッド内に龍人が暮らしている情報は無いため当たり前の話ではあるのだが。
もしかしたら、奴隷の類でなら何人か流通しているのかもしれないが、市場を知らない彼には関係のないことだ。

心身共に鍛え上げた蓮武は武者修行の旅に一区切りを付け、暫しの休養を取ることにした。
傷ついた身体を癒すには緋桜郷の温泉が効果的だという話を耳にし、わざわざイルステッドに戻ってきたそうだ。

足湯を堪能しつつ旅程を語る蓮武。リヒトはそれを真面目に聴き、マナは興味が無いと言わんばかりに目を閉じていた。
シンパシーを感じるのと興味があるのはノットイコールなのだろう。

会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。蓮武との交流を終了します。

継続する場合は今回の会話が最後となります。安価下です。

相当の腕前と見込んで手合わせを申し込む
(勝っても負けても鍛錬目的で拠点に呼べるようになるといいな)

((余談、リヒト君ここまでの描写的に強めのマップ兵器といった感じで広範囲制圧は得意そうだがタイマンはどのくらいかなと))

イルステッドとは全く違う環境で叩き上げてきた戦士。その実力を知るのもまた、今後の役に立つはずだ。
そう結論付けたリヒトは、武器屋で刃を潰している模擬剣を二本購入した。
もちろん、武器種は利用者に合わせている。蓮武の物は大剣、リヒトの物は直剣だ。

「相当の手練れと見込んで頼みがある。俺と手合わせしてくれないか?」

リヒトの率直な依頼に、蓮武は渋面を作る。どうやら乗り気ではないようだ。
休養に来たのに模擬戦とはいえ戦うのは控えておきたい、とでも言いたそうな顔だ。
その考え方は正しい。間違っているのは手合わせを申し込んだリヒトだということは、本人は百も承知である。
だが、だからと引き下がる気は無かった。千載一遇のこのチャンスを逃したくないのだ。

蓮武もリヒトの心情を読み取ったのか、逡巡の後に重い腰を上げた。

「…まあ。休んでばかりでは身体も太刀筋も鈍る、か。全力で身体を動かせないから、見苦しいところもあるだろうがご容赦いただきたい」

「俺のわがままに付き合ってくれて感謝するよ」

頭を下げるリヒトに、蓮武は温和な笑みで答える。

「気にするな。軽い運動だとでも思っておくさ」

模擬剣を片手に、二人は森の中に入った。

竹風村の子供たちの遊び場となっている、切り開かれた土地。そこに立つのは二人の剣士。
一人は嘗て勇者と謳われた直剣使い。もう一人は遠き地で修練を積んだ大剣使い。

どちらも刃を潰して安全性を確保した模擬剣を持っているが、どちらが危険かは言うまでもないだろう。
リヒトは大剣の直撃だけは避けたい、と身体を解しながらぼんやりと考えていた。
対する蓮武は何を考えているのやら。表情からは思考が読めなかったので、出たとこ勝負だと割り切ることにする。

「あくまで剣の腕を競う手合わせだ。魔法の行使は厳禁で行こうか」

純粋な腕比べに、余計なものは不要。それに、魔法を解禁したら怪我をする可能性が出てくるのだ。
休養している蓮武にたかが模擬戦で怪我を負わせるなど本末転倒にも程がある。
そういった配慮はしておくに越したことはない。

蓮武は無言で大剣を構え、臨戦体勢を取る。どうやら準備は終わったようだ。

リヒトに頼み込まれたマナが、小さな石を放り投げる。
水たまりに落ちると同時に、轟音が鳴り響いた。

模擬戦は2回有利を取った方が勝利となります。
模擬戦 判定↓1コンマ


01~20:蓮武有利
21~99:リヒト有利
00:???

やはり天災ドラゴン共がおかしかったんやな

リヒトはまず、小手調べに二、三合斬り結ぶ。お互いの得物は派手な音を立てぶつかり火花を散らした。
こちらの動きに対応出来る程度の敏捷性は持ち合わせているようだ。とは言っても、まだまだ全力は出していないので追いつけなければ話にならないのだが。

光魔法を併用した最高速度と比べれば、虫が止まるほどに遅い斬撃を蓮武は難なく受け止める。
そして、お返しと言わんばかりの横薙ぎを放つ。
直剣の腹をかち当てて対処するが、剣が触れた瞬間にリヒトは失策を悟った。
この膂力を受け止めるには、力も武器の耐久性も足りない。ならば、流すしかないと。

身体を低くし、剣の角度を変える。滑るように大剣は空を切り、風切り音を出した。
刹那、蓮武の表情が変わった。力のままに振るう剣の勢いを活かし、後退しつつ切り上げた。
懐に潜り込まれては、長所である間合い(リーチ)を活かせないと判断したが故の逃げの一手だろう。
彼の判断は戦術的には大正解だ。だが、リヒト相手にするべき判断ではなかった。

切り上げより速く身体を捻り、後ろに下がる。そのまま地面に手を突き、クラウチングスタートと同じ体勢になる。
そして、地面を蹴り急速接近する。地を這う蛇のように左右に揺れながら迫る幽者に、天狗の青年は大剣を向け、突き出した。

模擬戦 判定↓1コンマ


01~20:蓮武有利
21~00:K.O

慶応

つよい

狭間の地から抜け出せなくて申し訳ない。進めます。

しかし、当たらない。返す刀で回避した方向に剣を振るっても、揺れる髪先すら捉えることは出来ない。

肌が触れ合うほど近くにいるのに、幽者との距離はあまりにも遠かった。
どれだけ手を抜かれようとも、剣戟を交わせば伝わるものだ。対手の力量は、隠せないものだ。
蓮武はこの戦いで幽者を、彼岸に到達した者を知る。
それは、果てのない修羅の道を、果ての果てまで進んだ者のみが立つことを許される領域。

いったいどれほどの血を流したのだろうか。まだまだ未来のある若者がこの歳で彼岸に至るなど、尋常の道は歩んでいないはずだ。
そこまでしてでも力を得たかった理由があったのだろうか。護りたいものがあったのだろうか。

幽者を見て浮かんだ憧憬。求め続けた領域はまだ、遠い。だが、それでいい。
たとえどれほど離れていても、存在するのだと知れたから。
まだ、自分は強くなれると知れたから。

幾度となく入れ替わる攻防の中、天狗の青年は微かに、笑った。

「俺の勝ちだ」

蓮武は幽者に組み伏せられ、首筋に模擬剣を添えられていた。どちらが勝ったのかは明白だ。
蓮武を解放するが、リヒトは病み上がり相手にちょっとやりすぎたかもしれない、と盛大に冷や汗を流す。
やっぱり怒っているだろうか。説教はされたことが無いから勘弁してもらいたいものだと、念じながら視線を向ける。
蓮武は、曇りなき眼で空を見上げていた。

「それだけの力があれば、大切なものを護れるのか?」

ふと投げかけられた質問に、リヒトは唇を噛む。そして、暫しの回想を終え。

「…何も護れなかったよ。どれだけ強くなったとしても、喪うものだ」

邪眼竜の加護を受けた者は皆、誰もが羨む強大な力を持っていた。
しかし、誰もが悲劇に見舞われ、消えていった。
力の大きさなど関係ない。喪う時は喪う。どうしようもないことは、往々にしてあるものだ。

だが。

「…だからって、進むのを辞めたら。喪った全てが無駄になる。進み続けることが報いになると、俺は信じてる」

その苦しみを、痛みを忘れず、前に進めば。消えた命に意味を持たせることが出来る。
その生は、無駄ではなくなる。

「…そうか」

蓮武は小さく答え、口を噤んだ。リヒトは頭を掻き、一枚の紙切れを置く。

「俺は普段そこに住んでる。何か用があれば気軽に来てくれ。腕比べでもなんでも、付き合うからさ」

「…覚えておこう」

答えを受け取った幽者は、青年の元を去る。
蒼空を眺める青年は、初めての敗北に何を想う。

何をするかを↓1にどうぞ。この行動を終えると緋桜郷に戻ります。

マナと森林浴していく

竹風村から離れた深い森の中。リヒトたちは、苔むした大岩の上に座っていた。
じっとりと湿った岩の冷たさが、服越しに皮膚を冷やす。肌に貼り付く感覚が不快だったが、空気は美味かった。

「----」

妖精はどうやらご機嫌なようだ。人智の及ばない独自の言語が紡ぐ歌声は、大地に染み渡り、祝福を齎す。
その歌は生命への祝福であり、しかし、智慧を持ち過ぎた人類に対する警告でもある。
故に、歌は人の身に馴染まず、肉体を蝕む呪いとなる。

「………」

身体が、精神(こころ)が、声なき悲鳴を上げる。侵蝕する呪詛に苦しんでいる。
だが、やめろとは言えなかった。
ちょっとシャレにならないくらいに重大なダメージを受けているのは事実だが、彼女は心からリラックスしている。
だから、歌っているのだろう。何を言っているのか理解出来ないし、したくもないが。喜んでいるのはなんとなく分かる。

マナが嬉しいのなら、それでいい。彼女が気兼ねなく歌えるように、この苦痛を耐え忍び、自分を誤魔化せばいい。

なに、今までだって何度もしてきたことだ。躊躇うことはないだろう。
奪うことに苦しみ、喪うことに苦しんだ。
その痛みを誰とも分かち合うことなく、一人で背負うことを選んだのはお前だろう。
ならば、この程度の苦しみ、耐えてみせろ。

「…解ってるよ」

混濁した意識の中での自問自答。その答えは微かな声となり口から溢れる。

「………?どうしたの?」

マナはリヒトの独白に歌を止める。リヒトはなんでもない、と首を振り、続きを促した。
マナは首を傾げつつもすぐに前を向き、歌う。淀みない清らかな歌声が、森へと澄み渡る。
孤独な妖精の細やかな祝福が、森を成長へと導く。
今年の竹風村の収穫量は、従来の1.5倍になったという。

緋桜郷へと戻った頃にはすっかり夕方になり、郷の雰囲気も昼間とは違った様相を呈す。
飲んで。騒いで。歌って。踊って。道楽に耽り、今を楽しむその様は、幽者には眩しいものだった。

「お兄さん、暇ならうちと一杯いかが~?」

「おい兄ちゃん!俺の店に来な!たっぷりサービスするからさっ!」

「一人で寂しいなら私と一緒にあの部屋でイチャコラしませんか!?」

と様々な勧誘を受けるが謹んで辞退し、逃げるようにその場を去る。
牡丹雪に戻るまでに片手では数えきれないほどの勧誘を受け、油断も隙もあったものじゃないな、と乾いた笑いを浮かべる。
こういう賑やかさも緋桜郷の魅力で、彼らとの駆け引きも醍醐味なのだろうが、リヒトが苦手とする領分なので困ったものだ。

用意されていた夕餉を平らげ、荷物を整理する。
お土産の温泉饅頭は子供たちに大層喜ばれ、食後のデザートだとあっという間に食べきられてしまったが、これだけ喜ばれたら買った甲斐があったというものである。
リンは花をもらっても置き場に困る。気持ちは嬉しいから、花瓶に入れて客間にでも飾っとくよ。と苦笑しつつ受け取られた。
選択を誤ったかもしれない。

ウィンディの反応だが、こちらの想像を遥かに超えて喜ばれた。それはもうめっちゃくちゃに喜ばれた。
髪の手入れが楽になるだのリヒトさんにしては素晴らしいチョイスだのマトモな感性は残ってるんですねだのと言われたが、とにかく喜ばれた。

ちょっと傷ついた。

何をするかを↓1にどうぞ。

多様な種族が暮らすという緋桜郷がなぜうまく繁栄できているかを知れば
自分が国を作るときに役立つかもしれないから調べてみよう

ちなみに緋桜郷のイメージBGMは『カムラ祓え歌』です。

お久しぶりです。>>1でございます。
しばらく謎の腹痛だったり膿が出たりで大変なことになってました。申し訳ありません。
落ち着いたのでもう大丈夫とは思います。明日の夜に再開いたします。

大丈夫か大丈夫か
無理はなさらず
帰還ありがとう

待ってた
無理のないペースで続けてくれると嬉しい。報告乙です

万物には因果がある。因果を紐解くことは即ち、真理の探究に繋がる。と、シルヴィアが言っていたような気がする。
彼女ほど理詰めで考える知性は無いが、脳死で本能に従い動けるほど理性を投げ捨ててはいない。
故に、リヒトは緋桜郷の変遷を知ろうとしていた。
多種多様な種族が争うことなく共存し繁栄する緋桜郷。
何故緋桜郷が在るのか。その因果を知れば、自身とシルヴィアの夢の実現に、また一歩近づけるかもしれない。

そんな希望を抱き、お雪の元を訪ねてみる。しかし、微笑ののちに首を横に振られた。

「わしが一から十まで全部教えるのは無粋だと思ってね。どうしても知りたいというのなら、教えるのは吝かではないけどさ」

困った時は助けるからそれまでは自力で頑張れ、と遠回しに言われてしまった。
こうなっては引き下がるしかない。夜に本屋とかが開いてるとは思えないが。

「…なんてね。こんな時間に外で調べるのは徒労というものさ。意地悪して悪かったね」

そう言って、お雪は座布団を敷き、温かいお茶を用意する。どうやら揶揄われたみたいだ。
シルヴィアといいお雪といい、歳上には弄ばれてばかりだ。何か嗜虐心でもくすぐるものがあるだろうか。

「お前さんの反応が素直なのがいけないね。あまりに可愛くてつい揶揄ってしまうよ」

「…俺が可愛いとかご冗談を。第一俺は男だ」

「可愛いか否かに性別なんて関係ないよ。わしからすれば、牡丹雪にいる子は皆可愛い子供みたいなものさ。お前さんたちも含めてね」

「…子供扱いしないでくれ」

子供っぽいところがあるのは自覚しているが、自分は大人だ。ちゃんと成人しているのだ。
だから、そういう扱いをされても困る。どう対応すればいいのか、てんで分からないのだ。

「男の子が好きな人についちょっかいを掛けてしまうのと同じさ。愛おしくてたまらないから、反応見たさに揶揄ってしまうし構ってしまうんだよ」

「…そういうのは解らないな」

誰かを愛したり、好きになったことは一度も無い。故に、理解が出来ない。
愛とは何なのか。好きになるとはどういうことなのか。リヒトは一切知らない。
知る機会も、権利も無かった。忌み子であるリヒトを愛す者も、関わろうとする者も、誰一人いなかったから。
だからなのだろう。愛されることを望んでいながら、自身を愛することが出来ず。疎んでさえいるのは。
幽者はずっと、矛盾を抱え生きている。それは、これからも変わることはない。
変わろうと決意し、自分と向き合うその瞬間が訪れるまで、決して。

不意に押し黙ったリヒトを細い目で見やり、お雪は布団を敷き始める。
危機感を感じたリヒトは席を立ち、退散しようと背を向ける。
小さな手が、リヒトの傷だらけの手を優しく包み込んだ。人肌の温かさと氷の冷たさを内包した、不思議な感覚だった。

「寝る準備をしているだけさね。お前さんが望むのなら床を同じくしても構わないけど、その気はないんだろう?」

リヒトはゆっくりと頷き、お雪の方へ振り向いた。視線は下に向けられ、聖銀を思わせる艶やかな髪が目に入った。

「…今宵の緋桜も、変わらず可憐に咲いてるねぇ。酒を飲みながら昔話に興じるには、風情があってちょうどいいものだよ」

障子は開かれ、緋桜の大木が存在を主張する。ひらひらと舞い散る花びらは、月の光に照らされ世界を彩る。
月を背に力強く咲く緋桜。その光景を一目見ようと、緋桜郷を訪れる人が後を絶たないのも頷ける、とても絵画などでは表せない幻想的な光景だった。

窓の縁に腰掛けたお雪は、半身を外に出して夜桜を眺めている。
そんな彼女が、頃合いを見計らったように口を開く。彼女の口から語られたのは、緋桜郷の辿った数奇な歴史だった。

人間にとっては遠い昔、鬼にとっても二世代ほど前の時代。
ここには緋桜郷という地名は無く、村や集落といった小規模な拠点が点在する、寂れた土地だった。
それでいて、とてつもなく閉鎖的。外界からの来訪者には石とブーイングを以って熱烈に歓迎する、凄まじいまでの排他主義だった。

そんな村に、お雪は産まれた。

そして、一人の青年と出逢った。

『…なにしてるんですか。貴方なんて誰も歓迎してないから、早くどこかに行った方が身のためですよ』

『たはは…。まさか子供に心配されるとはね』

『子供扱いしないでくださいっ!』

どれだけ罵倒され、拒絶されようとも、めげないしょげない泣きもしない、変人の旅人がやってきた。
毎日交流しようと村まで来ては、投石を浴びてすごすごと退散し。日を改めてはまたチャレンジする頭のおかしな無謀者。
何があっても笑顔を絶やさず、こちらが心配になるほど脳内お花畑のお人好し。
それが、お雪が旅人に抱いた印象だった。

村長の英才教育を受けたお雪もまた、その排他主義に染まりかけてはいたのだが、苛烈にも程がある大人たちの姿と、この『話せば分かる。人類皆お友達!』を地で行く旅人を見て考えを少しずつ改めていった。
たとえ、外部の人間と関わるのが重罪だと知っていても。彼と話すのは辞められなかった。
それほどまでに彼との会話は楽しく、心が躍っていたから。

『どうして、毎日村を訪ねるのか、かい?』

『はい』

どれだけ痛い目に遭おうとも、決して諦めず交流を試みる旅人に、お雪はそんな質問をした。

『孤独の辛さってのを、僕は嫌と言うほど知っているからね。今はそのままでも良いのかもしれない。でも、時が経てば、世界から取り残され、やがて独りになる。そんな時に、誰も頼れないのは悲しいから…』

『…もちろん、僕が言っていることはただのわがままさ。君たちの事情を無視して押し付けているだけ。だから、拒絶されても仕方ないことだとは思ってる。それが、諦める理由にはならないけど』

と、包帯を巻きながら旅人は笑顔で答える。微塵も後悔していない、寧ろ、この状況を楽しんでいるようにすら見えた。
外には変な人間もいるものだと、お雪は呆れる。だが、そんな変な人間を生み出す外の環境に、世界を旅する青年に、表には出さないがいつしか憧れていった。
その旅人の名は『リヒト・ローテス』。曇りなき紅い瞳が綺麗な、優しい青年だった。

そんな変人が村の近くに居付き、村人たちも適当にあしらうのに慣れた頃。
お雪は村長の命を受け、周辺の森を調査していた。

数日前より、無造作に捨てられた動物の死体が頻繁に目撃されるようになる。
遺体の損傷から見て人の手によるものなのは確実。しかし、あまりにも乱雑なそれは、知識人たる村人の手腕では逆に刻めないものだ。

当初は旅人が犯人ではないか、と疑っていたのだが、二日ほど監視していても不審な様子は見せることなく。
監視している最中にまた遺体が複数発見されたので、容疑者の疑いを晴らされた。
そんな疑いを向けられたことは、彼は知らないのだが。

可食部が根こそぎ削り取られ、内臓は放置された無残な遺体を埋葬する。
村に伝わるしきたりにより、狩りをする際は丁重に弔うようになっている。故に、このような遺体が放置されるのは本来あり得ないことなのだ。

事前に遺体の発見場所と村人の行動圏を把握していたお雪は、何者かがこの森に潜んでいることを推察する。
今回は、その推察を裏付けるために現地調査をしていた。

そして、部外者の痕跡はすぐに見つかることになる。

『人の足跡?それもまだ新しい…』

ぬかるんだ地面に刻まれた、人の痕跡。数と指向性を見るに、人数は三名と思われる。
また、近くの木は根本から伐採されており、切り落とされた枝がそこかしこに散らばっていた。
ルールを知らない部外者特有のやりたい放題に頭痛を覚えるが、原因を取り除かなくては延々と繰り返されるだけだ。
犯人を見つけ出し、吊るし上げるか始末すること。もしくは、この領域から追い出すか。
そのどれかを達成しなければならない。

何者かがこの森に潜んでいることが半ば確定になったが、その正体は未だ影さえ掴めていない。
故に、正体を探るべく深追いしたのだが、それが過ちだと気づく頃には、もう手遅れだった。

途絶えていた意識は、額に落ちた水滴によって現実に引き戻される。
重い瞼を開くと、暗闇が瞳に映る。

『………っ』

全身が、痛い。ぼやけた目で身体を見ると、直視するのも躊躇うほど痛ましい傷が付けられていた。
情けなのか最低限の手当てはされていたが、血は滲み出て包帯を汚していたし、身を苛む激痛と不快感は消えることなく心を蝕んでいる。
そしてそこで、ようやく自分の置かれている状況を理解した。

ああ、そうか。私は負けたのか。

犯人を突き止めたのはいいが、姿を晦ます前に対象しなければ、とそこで焦ってしまい、攻勢に出たのが間違いだった。
自身の浅慮を猛省するのと同時に、どれだけ気丈に振る舞おうと、自分はまだまだ子供なのだと、未熟な精神を戒める。
そんなことをしても後の祭りだと気づいているが、そうでもしないとやってられなかった。

それにしても、随分と乱暴をしてくれたものだ。
いくら鬼の肉体が頑強だとしても、痛いものは痛いし手荒に扱われては傷ついてしまうというのに。
容赦の無い暴力に蹂躙された身体には、愚行の代償たる残痕が刻まれている。これほどの深手は、一生消えない傷跡となって残るだろう。

彼らからすれば、ただ燻る情欲を満たし、悦楽に浸るための行為。
敗者である自分にとやかく言う権利は無い。それは、解っているが。

『…う…ぅ……っ!』

こんな目に遭わされるのなら、殺される方が良かった。
と、折れた小刀を抱き抱え、少女は一筋の涙を流した。

それから二日。洞窟の中に幽閉され、悪漢に弄ばれる日が続いた時。
お雪は今頃村では大騒ぎになっているだろうな、と現実逃避に勤しんでいた。

『紅玉を追ってここまで来たのに、とんだ掘り出し物だぜ。鬼の女ってだけで高値が付くのに、こんな上玉ならどれくらいになるかねえ。想像しただけで笑いが止まらねえよ』

と首魁が言っていた気がするが、もはや自身の処遇には興味が無かった。
望むのは、この苦しみが終わること。たとえそれが死という結末だろうと、一向に構わなかった。
自身の命を絶つ勇気が無い彼女は、力なく呟く。

ただ一言、助けて。と。

そんな時、一筋の閃光が、闇を切り裂いた。

『やっと、見つけた』

短剣を片手に持った、あの旅人がそこにいた。
表情はお雪の知っているものではなく、感情の抜け落ちたそれは羅刹の如く。絶対零度の視線が、悪漢を射抜いている。

紅い瞳が、光が消えて戻った暗闇の中で煌めく。その眼には、確かな決意が宿っていた。

旅人の姿を認めた悪漢は、下品な笑みを浮かべ、髭を摩る。
旅人はそれを無視して短剣を向ける。光が溢れ、長大な光刃を形作った。

『もう少し、我慢してね』

『僕が全て、終わらせるから』

そして、悪漢たちは慈悲なき審判の光により、誰一人として例外なく断罪された。

緋桜郷の歴史というよりお雪の回想になってますがお許しくだされ。
本日の更新はこれで終わりです。

今後リヒトが獲得する(かもしれない)装備を募集します。武器種は問いません。
入手手段は鍛冶屋か譲渡か強奪、はたまたダンジョン等の探索による入手となります。


【名前】その名の通り。
【種類】その名の通り。
【付帯効果】使用者に与える効果や装備が持つ能力になります。
装備の概要になります。

【名前】月蝕の短剣
【種類】短剣
【付帯効果】魔翌力を込めることで、光や光魔法を遮断する闇の結界を展開することができる
光を反射しない黒い物質で作られた短剣。特殊な効果は上述の通り
強度は高いが切れ味は悪い為、武器としての性能は低い

【名前】癒しの守り
【種類】盾
【付帯効果】魔翌力を込めると周りの人を治すことができる治癒能力を持っている。ただし装備している本人自身は治すことができない。魔翌力をより多く込めれば込める程、毒で苦しんでいる人や切断された箇所など治すことが可能(亡くなった人を蘇生することはできない)。世界一硬い鉱物を使用し、さらに光の魔翌力が入っている為、どんな攻撃も防ぐくらい頑丈になっている。

【名前】身代わりの偶像
【種類】人形
【付帯効果】
一見粗末な土偶にしか見えないが、血を分け与えることでダメージや呪いなどを肩代わりしてくれる。
ダメージを受けるとその部位と同じ部分が崩れ落ち、致命傷だった場合は力を失いただの土くれと化す。

更新は明日か明後日かな、という感じです。
オマケとしてリヒトの装備の情報を置いておきます。

【名前】聖剣/魔剣『無銘』
【種類】直剣
【付帯効果】使用者の魔力の増幅、魔法及び性質付与(エンチャント)の強化。また、魔力の増幅による身体能力の向上。
リヒトが肌身離さず持ち歩いている一振りの剣。
元はどこにでもある、市販されていたただの直剣だったが、度重なる戦闘によりリヒトの魔力を帯び、ついには変質してしまい聖剣へと変貌した。
故に、この聖剣には固有の銘が存在せず、真の意味での聖剣でも無い。
というより、結果的に聖剣として扱われるようになっただけで聖剣ですらないため、伝承で語られるような偉人の装備と比べたら性能は劣っている。

リヒトが闇に触れ冥光を纏う時、聖剣も魔剣へと転じ、敵対する悉くを余さず滅する。
聖剣になった影響なのか、何故か購入した時よりも綺麗な見た目になっている。

ちょいと情報を訂正して再掲します。


【名前】聖剣/魔剣『無銘』
【種類】直剣
【付帯効果】使用者の魔力の増幅、魔法及び性質付与(エンチャント)の強化。また、魔力の増幅による身体能力の向上。
リヒトが肌身離さず持ち歩いている一振りの剣。
元はどこにでもある、市販されていたただの直剣だったが、度重なる戦闘によりリヒトの魔力を帯び、ついには変質してしまい聖剣へと変貌した。
故に、あるべき銘は無く、真の意味での聖剣でも無い。
というより、結果的に聖剣として扱われるようになっただけで聖剣ですらないため、伝承で語られるような偉人の装備と比べたら性能は劣っている。

リヒトが闇に触れ冥光を纏う時、聖剣も魔剣へと転じ、敵対する悉くを余さず滅する。
一人の英雄が壊れゆく様を間近で見続けた唯一の生き証人。たとえ彼がどこまで堕ちようとも、決して見捨てず傍に在り続ける。
それだけが、たった一つの存在意義であるが故に。
聖剣になった影響なのか、何故か購入した時よりも綺麗な見た目になっている。

【名前】正義の右拳(ジャスティス・ライトナックル)
【種類】グローブ
【付帯効果】使用者の魔翌力に応じてグローブが伸縮自在に変形することができる。さらに伸ばした状態でも物などをつかめる。遠距離からの攻撃や伸ばした状態で鎖付き鉄球のように振り回して攻撃などできる。そのままでも殴って戦える。
藍色に金色の天使の羽のような模様が入っている少し大きめのごつい右手のグローブ。なぜ右手しかないのかは文献等がなくいまだに不明になっている。

【名前】名無しの王達の鎧
【種類】鎧
【付帯効果】着用者の身体能力を向上し、着用している間は不死になる。
歴史には残らない、かつての時代の覇者達が着用した鎧。着用者によって姿を変え、着用している間は不死の力を手にすることが出来、寿命か不死殺し以外で[ピーーー]なくなる。
しかし、長い時間着用し続けると正気を失って元に戻れなくなる。

【名前】専心の杖
【種類】杖
【付帯効果】手に持った者の意識を研ぎ澄まさせ、魔翌力と集中力を高める
フェルリティアで製造・販売されている飾り気のない白い杖
一般的には魔法使いが魔法を行使する際の補助として使われているが、その集中力を高めるという特性から非魔法使いにも人気が高い。学生が勉強のお供にしたり戦士が最前線で鈍器として使ったりなど、需要は多岐に渡る。ゴーレム技術を一部流用しているため耐久性も非常に高く、鈍器扱いに拍車をかけている

>>639少し追加で
特徴は真っ白で十字架が描かれており、騎士が使っているような逆三角形の盾

まだ募集しているのかな?
【名前】獣王の爪
【種類】鉤爪
【付帯効果】装備した者は聴覚、嗅覚、視覚、身体能力、タフさが強化。無意識のうちに戦い方が野性的になり、長く装備していると外した後、しばらく野性的な性格が残ることがある(時間がたつと元の性格に戻る)。爪の部分は長く、手首の部分に獣の毛皮がついた2つの鉤爪。名前の通り「獣王」と呼ばれる幻のモンスターの素材を使用し、切れ味は鋭い。

2つ案を投げてみる

【名前】献身の魔盾(まじゅん)
【種類】盾
【付帯効果】
円みのある片手用の盾。魔翌力を通すことで味方を庇うための結界を発生させる。
結界を貫くほどの攻撃を受けた場合はダメージが使用者に集中するため、自己犠牲をも厭わない献身が求められることからこの名がつけられた。


【名前】『悪竜ころし』グラースの斧
【種類】木こりの斧
【付帯効果】
斧を用いて悪竜を討伐したグラースという英雄が使っていたという触れ込みの斧。
一見使い古された木こり用の斧だが、英雄が戦いから引退して木こりになってから使っていたため一応は本物である。
彼の魔翌力が染み込むほど使い込まれているためか木をはじめとした植物には無類の切れ味を発揮する。
それほど使い込まれながらも小まめになされた手入れの跡やグラース自ら刃に彫りこんだ自分の名前がかの英雄の生真面目さを窺わせる。

【名前】宇宙の大鎚
【種類】ハンマー
【付帯効果】頭部の部分が赤と青の2つに別れている大きいハンマー。魔翌力を込める事でそれぞれ違う効果が発揮する。赤い方で叩くと一定の範囲で重力を発生する。青い方を叩くと一定の範囲で無重力を発生する。魔翌力込めなくても武器として使える。昔とある学者がこの重力と無重力を発生できるハンマーを見てこの名前が付けられた。

【名前】雷鳴の剣
【種類】大剣
【付帯効果】見た目普通の大剣で持ち手が黄色で刃の部分に雷のマークが彫られている。普通に大剣として使えるが魔翌力を込めると雷を纏うことができる。大剣を振ると雷が落ちたような音がなることでその名前が付けられた。雷を纏うと威力が上がる。

あげ

また更新が途絶えてしまい申し訳ありません。

待っていてくれている方がいるとは思えませんがチマチマ再開します。

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『ご…ごめんね…。助けに来た側なのに、手当てなんかしてもらっちゃって…』

『…別にいいですよ。私は鬼なのでこれくらいなら治ります。貴方は弱っちい人間なんだから、ちゃんと手当てしとかないと』

殴られ、蹴られ、斬られ、射抜かれ。満身創痍になりながらも悪漢集団をとっ捕まえた旅人は、助けに来たはずの少女に治療してもらっていた。
あれほど強者の風格を漂わせていた彼だが、実際は明らかに戦い慣れしていなかった。
腰は引けて、足は震えて、太刀筋は鈍って、と目も当てられない姿だったが、そんな彼が身を呈して助けに来た事実に、お雪も思うところがあった。
故に、悪態を吐きながらも旅人の手当てをしているし、あれほど凄惨な出来事があっても温和な笑みを浮かべているのだろう。
本人は、自身が笑っていることは完全に無自覚なのだが。

『…しかし、どうして助けに来たんです?私、貴方のことをかなりぞんざいに扱っていたと思うんですけど』

彼に助けられるほどの恩は無いし、愛想も悪い自分をなぜ助けたのか。疑問に思ったお雪は、素直にそれをぶつけた。
対する旅人は、数瞬の黙考の後に口を開く。

『僕が疎まれていることは見捨てる理由にならないよ。どう扱われようとも、人道に反することはしたくない。だから、君を見捨てる選択肢なんて端から存在していなかったんだ』

『戦うのも、傷つけるのも、傷つけられるのも嫌だけど。君を見捨てて無かったことにする方がもっと嫌だから』

薬草を塗り込みながらそう呟く青年は、君が無事でよかった、と笑顔を見せる。
お雪がどのような目に遭わされたのか。それに彼が触れないのは怖いからなのか、それとも。
少しだけ考えたお雪は、小さく頭を振り、立ち上がる。

『では、大人の人を呼びましょう。この極悪人たちに相応しき罰を与えなければ』

『…ごめん。村の場所分かんないや。この森同じ景色ばかりですぐ迷っちゃうんだよね』

『…それでよく私の場所が解りましたね』

『なんで解ったんだろうね。声が聞こえた気はしたんだけど…。深く考えても答えは出なさそうだからやめとこう』

『…そうですね』

お雪は、よろよろと歩く旅人の肩を担ぐ。そして、少しだけ背伸びをする。
その日、少女はちょっぴり大人になった。
そしてその時、少女は最初で最後の恋をする。

しかし、その初恋が実ることはなかった。

騒動が終わった後、旅人は忽然と姿を消した。野営地の焚き木の跡以外の痕跡は、何一つ無かった。

旅人失踪の報を受け、せめて自分くらいには一言言ってほしかったと、お雪は悲しげに笑う。
置き手紙でも無いか、と野営地跡を調べるも、それらしき物は見当たらず。落胆と共に村に戻った。

その日の夜。

『自分たちの街を作るって正気かお雪。親父共が許すと思ってるのかよ?』

『親が言っているからなんなのですか。どう生きるかを決めるのは親ではなく、私たちでしょう』

『それはまあ…そうだが…』

周辺の集落から友人を呼び、見張り塔に集まって作戦会議を行う。
閉鎖された村から抜け出すために。外の世界に触れるために。
憧れに少しでも近づくために。

旅人が蒔いた種は着実に根を張り、成長していた。
あとは花開く時を待つだけ。その鍵は、種を持つ者の勇気だ。
彼らが勇気を振り絞り、行動に移せば。自ずと花は咲き、未来が生まれる。

あーでもないこーでもないと議論を重ね、出奔に備え準備をする。
夜明け前。各地の村でボヤ騒ぎが発生する。すぐに消火活動が行われ事なきを得たが、その騒動に乗じて十余名の子供が逃走した。
お騒がせなお子様をとっ捕まえようと大人たちが出動するも、季節外れの猛吹雪により断念することになる。

待ち合わせ場所に指定した大桜の根本には、志を共にした友人が集っていた。
追手の妨害のために色々と仕込んできたので、気が付いたら大人たちに囲まれていた、なんてことは無いはずだ。
彼らも上手くやったようで、目立った外傷は見られなかった。

『お雪がやりすぎなだけでしょ。何あの大雪。こっちからも見えるくらい盛大に降ってたわよ』

『あそこまでしないと、私の村の頑固な連中は黙りませんから。…とはいえ、流石にあの規模の術を使うのは堪えました。甘いものが食べたいです』

『ならこれ食べなさい。竹ノ湯のじっちゃんが餞別にくれたお饅頭よ』

『ありがとうございます』

紙袋から饅頭を取り出し、口いっぱいに頬張る。他の人が羨ましそうな表情をしていたが黙殺する。
食べていいと言われたのだから一人で食べても問題ないはずだ。もし反論された時はちょっと頭を冷やしていただこう。

そんな物騒な思考をしつつも食べる手を止めないお雪をよそに、友人は腰を下ろして盛大に溜め息を吐いた。

『これからどうするべ。俺、あんな啖呵切っておいて村には戻れないんだが』

『大桜を目印に集まったのはいいけどどこに何があるのかさっぱり分かんないしね』

閉鎖された環境で生きてきたが故に、彼らは外に何があるのか。どこに何があるのかを知らない。
かく言うお雪でさえも、あの旅人からの伝聞で知った程度の知識しか無いため、はっきり言って当てにならない。

ならば、と逆に考える。どこに何があるのか分からないなら、今自分たちがいる場所を安全な街にしてしまえば良い。
旅人が安心して利用出来る拠点になれば、情報が集まってくる。そうすれば自ずと、外の世界との関わりは増えていく。

あとはなんかいい感じにすればいいのだ。ノリと勢いに任せれば意外と上手くいくものだと、あの旅人は言っていた。
実際、そのノリとかに巻き込まれてお雪は旅人と交流を持ってしまったのだから、彼の言に説得力はそれなりにあった。

『ってことは…家が要るよな。俺らが住む家と、移住してくる人用の家』

『旅館や食堂とかも必要じゃない?あとは娯楽施設ね。暇も度を越すと心が荒んでいくのは、私たちの身に染みてるでしょ』

『娯楽って何すんだよ』

『そこは…ほら、花札とかチンチロとかカルタとか色々あるでしょ』

『色んな遊びがある中でなんでよりによってそれを選んだんだよお前じじ臭いなオイって危ねええええ!!!!!』

『離せお雪!野郎ぶっ殺してやらぁぁぁぁ!!!!!』

『落ち着いてください。どうどう』

『私ゃ馬じゃないってーの!!!』

突然刀を抜く凶行に走った仲間を羽交締めにする。本気と書いてマジと呼ぶ、ガチな目をしていたのでちょっと引いた。

どうにかこうにか流血沙汰一歩手前の瀬戸際を回避し、会議の雰囲気を整える。
そして、お雪はある提案をした。

「ちょっと待った。ストップ」

「ん?どうしたんだい?」

昔話を続けるお雪を、リヒトは制止する。表情は少しやつれていた。

「聴きたいと言った手前我慢するつもりだったんだが。これ、もしかしてお雪さんが生まれてから今日に至るまで全部話す気です?」

「そうだけど?」

「まだ緋桜郷の『ひ』の字も出てないんだが!?このペースだと夜が明けて太陽がこんにちはするって!!!」

「これでも多少は巻いてるんだけどね…」

「これで!?こんな隅から隅まで語っておいて巻いてんの!???俺まだ風呂も終わってないんだけど!!!!!」

そんな返答をしつつやつれ具合が加速していくリヒトを見て、お雪はむむむ、と唸り。

「…じゃあ、とりあえず今日の昔話はここまで。続きはまた今度聴きにおいで」

不貞腐れた。

風呂に入る際に看板を立てるかを↓1にどうぞ。


A:看板を立てる。ソロお風呂になります。
B:看板を立てない。下の判定が同レスのコンマで行われます。
C:その他。自由安価。

01~20:無人
21~40:雫
41~60:霧香
61~80:結衣乃
81~99:静音
00:???

B

待ってました
緋桜郷の歴史国作りの参考になりそうだな

途中で話を終わらせてもらったことにお詫びをして、浴場へ向かう。
色々と濃密な一日だったので、一風呂浴びてさっぱりしたいものだ。
そんなことを考えながら、替えの私服と下着を片手に更衣室に入る。
直前に何度かノックをしたが、反応はなかったので大浴場は独占できるだろう。

念のためにカゴを全て確認するも、他人の服は無い。もしあったらあったで大変なことになっていた気がするが、気にしないでおこう。
どうせ人目は無いのだから黙っていればバレない。

「看板は…別にいいか。こんな時間に入るやつなんて俺くらいだろ」

『客人入浴中!立ち入り禁止!』と書かれた看板は隅に置き、風呂へと入った。

「…ふう…」

湯船に肩まで浸かり、息を漏らす。
ただ風呂に入っているだけなのに、不思議と身体の疲れが取れていく。これが温泉の効能なのだろうか。

青色の湯は透き通っており、腕を軽く振ってもその姿を目視できる。
今は夜なので夜空が水面に映って幻想的な雰囲気が出ているが、野郎一人では台無しである。

身体を洗い、また湯船に戻って空を眺める。
黒い海の中に星が煌めき、桜の雨がひらりと降る。
そんな素晴らしい光景を目に焼き付け、リヒトは言葉を溢す。

「…お嬢様やシルヴィアにも、この光景を見せてあげたかったな」

その願いはもう、叶わない。

皆が寝静まった深夜。牡丹雪の七階にて。リヒトは客室の椅子に座り、目を閉じていた。

「ここでねないの?おふとんあるよ?」

そんな様子を見かねたマナが問うも、リヒトは首を横に振り、今はそんな気分じゃないと、返事をしておいた。

「…わかった。じゃあわたしもおきてる」

マナはそう言うと、リヒトの肩に留まる。肩が重くて困るのだが、彼女がこんなことをするのは珍しく、やめろとも言うわけにもいかなかった。
なので、リヒトは特に返事をすることなく、ただその場にいた。

温泉に浸かっている時にふと思い出した、聖女との記憶。
彼女との出逢いは、お世辞にも運命的とは言えなかった。惨めで愚かな自分を、憐れんだ聖女が救ってくれただけだ。
泥と血に塗れた、穢らわしい自分を。明確に好意を拒絶した自分を。彼女は臆することなく、何度も手を差し伸べてきた。

リヒトの知る中で唯一、自身を人として受け入れようとしてくれた人。自身を人間だと認めてくれた人。
だが、彼女はもういない。人の善性を信じすぎたが故に、身を滅ぼした。滅びゆく様を、見届けることしかできなかった。

どうして、無理にでも止められなかったのだろう。たとえ嫌われようとも、死なれるよりはマシだったはずなのに。
どれだけ後悔しても、心は晴れなかった。今もそうだ。

あの過去さえ変われば。何度そう思ったか。叶わない願いだと知っていてもなお、心の奥底ではそれを望んでいた。
だが、何も変わらない。変わるわけがない。過去とは不変であるが故に。
罷り間違って変わったとしても、今への変革は起きぬが故に。

「…ごめんなさい…」

変えられぬ過去に。贖えぬ罪に。罪人(幽者)は嘆くことしかできなかった。

何をするかを↓1にどうぞ。

行動する際には自動で朝になってます。ご了承ください。

朝風呂としゃれこむ

風呂に入る際に看板を立てるかを↓1にどうぞ。
前回と選択肢などは同じです。

A 看板を立てる

椅子に座ったままの寝落ちという最悪な寝方をしたリヒトは、マナに寝ている間に何か変なことを宣っていなかったか質問する。
なにもなかった。とは言っていたが、目が泳いでいたのでたぶんとんでもないことを言ってしまったと思われる。
可及的速やかに忘れた方が精神衛生上よろしいだろう。

さて、定刻通り配膳された朝餉をペロリと平らげたリヒトは、気分転換を兼ねて朝風呂をキメることにした。
温泉に入り放題の今、これをしない手は無いと、温泉を思う存分堪能するつもりだった。
ちなみに、マナはウィンディの元に待機させている。一人でゆっくりしたいのだから当然の措置である。
看板もしっかり立てておいたので、例によってこの広い温泉を独り占めだ。

「あ゛ぁ゛~~~~~~。極楽極楽~~~~~」

凝り固まった筋肉を湯船の中で解す。
なるほど。湯治でわざわざ緋桜郷に来る蓮武の気持ちも分かる。
ここまで身体を癒やしてくれるのなら、遠路はるばる緋桜郷へ湯治に来る人がいるのも頷ける。

戦争の時にこれがあれば、士気もまた違っただろうに。そんな益体もないことを考えながら、のんびりと風呂を楽しんだ。

何をするかを↓1にどうぞ。
次の行動は昼となります。

トレーニング

トレーニングに同伴させるキャラを↓1にどうぞ。
コンマが51以上でそのキャラとコミュを取れます。

風呂上がりで火照った身体を冷ますために、自室に戻ったリヒトは一人トレーニングに勤しんでいた。
とは言っても、近くに稽古場が無い上客室では大それたことはできないので、筋トレや魔力トレーニング程度しかできないのが困りものだ。

「………」

「ほわぁ~………」

なので、天井の梁に足を掛けて腹筋をしながら、体内の魔力を総動員して無数の鳥を作り出していた。
生憎リヒトは魔法のことに明るくないので、効率的な鍛え方はできない。故に、過去の経験を基にした鍛え方しか行えないのだ。

即ち、死ぬ手前まで身体を苛める大作戦である。死線を潜れば潜るほど強くなってきたのなら、平時でも同じようにすれば良いのだ。
魔力と体力を完全に使い果たした極限状態。それを擬似的に作り出し、耐え続けることで限界を無理矢理延ばす。
自殺行為にも等しい愚行だが事実、彼はそれを何度も繰り返してここまで強くなった。

当たり前だが、そんな鍛え方をするのは彼が重度の被虐趣味を持つからではない。
この鍛え方しか知らず、否が応でもそうせざるを得なかったからだ。
度重なる激戦を生き延びるには死力を尽くす他なく、限界まで戦い抜いたからこそ力を身に付けた。
リヒトの持つ力はあまりにも泥臭く、血に塗れているものだった。

部屋を埋め尽くすほどに展開された鳥の群れを、雫は興味深く見つめている。
どんなトレーニングをするのか気になると言われたので部屋に迎えたのだが、いったいこんなものを見て何が楽しいのだろうか。
乙女心はさっぱり理解できないが、彼女は不満に思っていないようなので良しとしよう。

「綺麗な鳥さんですね」

「…ぱっと見綺麗かもしれないが、触らないようにね。たぶん君が触ったら命に関わることになる」

「えっ」

「ダメだからね」

「わ、解りましたっ!」

幽者の使う魔法などそんなものだと。リヒトは胸中に吐露しつつ、危ないことをしないように釘を刺した。
お利口さんな雫は、言いつけ通り変な真似はしなかった。何よりである。

雫と何を話すかを↓1にどうぞ。

お雪さんについて

トレーニングを取りやめ、雫が用意してくれた冷水を大量に飲み干す。
数十分ほど続けたトレーニングだが、肝心の成果は芳しくなかった。

ただでさえ人並み外れた体力と魔力を持つので、こんな鍛え方をしても限界が来るまでに日が暮れてしまうだけだということに気づいたのだ。
最低でもフェルリティアで出会ったニール・ライトホープやカロゥスで殺し合った親衛隊級の実力を持つ者たちと戦わねば、強くなるのは困難を極めるだろう。
おそらく、そこらの魔物退治や盗賊殲滅程度では経験にもならない。

汗ばんだ身体を拭いてくれる雫に謝辞を述べ、お茶請けのせんべいを齧る。
程なくして、リヒトは質問を投げかけた。

「女将さんのことが知りたい、ですか?」

「ああ」

小動物のように可愛らしく首を傾げる雫に、リヒトは肯定で返す。
甲斐甲斐しく世話をしてくれているお雪だが、彼女の人となりがどうなのか。正直言うとよく分からない。
優しい人なのは紛れもない事実だが、旅館兼娼館の主であることもまた事実である。
もしかしたら、裏では何か悪どいことに手を染めているやもしれない。

という冗談はさておき。彼女がどういった人物なのか、いまいち捉えどころが無いのだ。
年の功によるものなのか、のらりくらりとあしらわれている感が否めないので、彼女のことを知ってそうな人に訊く方が効率的な予感がした。
藪蛇だったらその時はその時である。土下座でもすれば許してくれるだろう。

「女将さんがどんな人か…。むむ~…。何と言えばいいのかな~。お母さん?おばあちゃん?うーん?」

頭を悩ませる雫を見て、リヒトは内心冷や汗を掻く。彼女の年齢に触れたら大変なことになる可能性があると、リヒトは知っている。

ただ、百、二百では済まない歳だというのは予想が付いていた。
緋桜郷の成立についての話をつい先日してもらったが、お雪が産まれた時点ではまだ緋桜郷が存在していなかったのだから、相当なご年配だろう。
そのはずなのに、外見は幼子のそれとそこまで変わらず肌もツヤツヤで瑞々しいのが不思議でならないが。何か特殊な美容法でもあるのかもしれない。

「…女将さんは、牡丹雪で働く人全員の恩人なんです。借金のカタに桜花衆に売られた人…事件や病気で家族を亡くした人…色々な理由で孤独になった人を、暖かく迎えてくれました」

「私もその一人です。物心ついた時には独りぼっちだった私を、女将さんは引き取ってくれたんですよ。あの時、女将さんに逢ってなかったら…。私はきっと、死んでいたと思います」

ぽつぽつと話す雫に視線を向け、静かに話を聴く。雫の境遇と自身の境遇。お雪と聖女が、少しだけ重なった。

「だから、私にとって女将さんは…。命の恩人で、お母さんみたいな人なんです。お仕事のことを教えてくれて、幸せもたくさんもらっちゃいました」

「…そっか。すごい人なんだね、お雪さんは」

「はいっ!私も、女将さんみたいになってたくさんの人を幸せにしたいです!それが、私の夢なんですよっ!!!」

屈託の無い笑顔を見せる雫。ここまで子供に、人に愛されるお雪を、リヒトは羨ましく思ってしまう。
そんな自分に気付けなかったのは、幸か不幸か。

雫と何を話すかを↓1にどうぞ。
これが終わると夕方の行動に移ります。

雫から見て他の牡丹雪の従業員たちはどんな人たちなのか聞く

リヒトの戦友枠を何名か募集しておきます。
条件としては、最後まで同伴した戦友は二人まで、それ以外(負傷して脱落、力不足だったり事情があったりで除名された人)が数名です。
戦友枠ではリヒトと同格に強いキャラは現状いないです。
テンプレートをご利用ください。


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【人種】その名の通り。
【性別】その名の通り。
【魔法】どんな魔法を得意とするか。全く使えない人もいます。

魔法から下は自由記入欄となります。来歴や特徴などご自由にお書きください。

【名前】アンナ・アルミューレ
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】なし
力不足で戦線から脱落した元騎士の若い女性。平時はアッシュブラウンのロングヘアを無造作に下ろしているが、戦に赴く際は後ろで一束にまとめる。
貴族の出だが身分を笠に着ることはなく、真面目で人当たりの良い人物だった。
しかし戦線を脱落してからは自信を失い、現在は昼も夜も酒場に入り浸る自堕落な生活を送っている。引き締まっていた体つきも少しだらしなくなってきている。
リヒトのことは人としては好いているものの、共に戦い抜けなかった負い目や実力差による劣等感もあり、複雑な感情を抱いている。
そういった感情からリヒトの悪口を言うことがあるが、他人がリヒトの悪口を言うと怒る。周囲からは面倒臭い女と思われている。
戦いにおいては攻めよりも守りの方が得意なため、盾を持つと実力を発揮しやすい。

【名前】カイ・ラフィラス
【人種】人間
【性別】男
【魔法】火炎魔法
赤髪ツンツン髪の男性。筋肉質で身体中に傷がある。リヒトと同じ年齢。元々貴族だったが窮屈な生活に嫌気がさし身分を捨て自由の身となった。性格は熱血漢で友達の事を大切に思っている。リヒトとは長くともに戦ったなかでもあり、さらに同年代の為リヒトのことは大切な親友だと思っている。今でもたまに手紙を送っている。斧を使った戦闘が得意。戦う際は、斧と火炎魔法をよく使う。

【名前】サラ・アンバー
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】速度強化魔法(あまり強力ではなく自身の速度を少し上げられる程度。それでスピードを強化しつつ得意武器である双剣での戦闘が基本となる)
鮮やかなオレンジの髪を持つショートカットの少女。年齢は十代後半ほど。
元盗賊であり、当初はリヒトが勇者だとは知らずに金目の物を奪おうと襲い掛かったものの見事に返り討ちに遭ってしまったという恥ずかしい過去を持つ
その後リヒトの情けもあって共に戦う事となるのだが、ある時魔物に襲われそうになった子供を庇った際に深い傷を負ってしまった事から、自分のケガのせいで足手まといになるわけにはいかないとリヒトと別れる道を選んだ。
口も手癖も悪いが上述のように子供や弱いものには優しく、奪った金品は貧しい人々に分け与えたりするなど根っからの悪人というわけではない。
現在はとある街で孤児院を開き、子供達がかつての自分の様に道を踏み外さないよう愛情を持って見守っている。
ちなみに今では性格もだいぶ穏やかになったようだが、子供たちを叱る時は盗賊時代の乱暴な口調がつい出てしまう事があるらしく、それを聞いた子供たちはあまりの怖さにもう絶対にイタズラや悪さはしないと心に誓うのだとか。

【名前】タイラス・コード
【人種】人間
【性別】男
【魔法】闇魔法、雷魔法
茶髪で背丈がリヒトと同じくらい。闇魔法に深く身を委ねた影響で目が紅くなっている。年齢はリヒトの1個下。
リヒトや仲間達と共に戦場を駆け抜け、最後の戦いの後に人々に絶望して闇落ちした。
現在は全身を黒い鎧で覆い、指名手配されたリヒトが過ごしやすくなるように、リヒトの名を名乗りながら圧政を敷く国を滅ぼしたらしながら世界を放浪している。

【名前】マレット・クロウル
【人種】犬の獣人
【性別】男
【魔法】風魔法
リヒトのパーティーで斥候を務めていた人物で弓と短剣を武器に偵察や索敵、狙撃などを行っていた。
二足歩行する土佐犬のような外見で細身ながらもリヒトより頭一つ分程度背が高い。
いつもは皮肉や悪態をついたりとガラが悪いが仲間思いでパーティー同士の喧嘩の仲裁もしていた。
リヒト達との旅の後半で仲間を庇い重傷を負って戦線離脱し、復帰を望んでいたが間に合わなかった。
現在はリヒトに合流するべくかつての戦友達に呼びかけているがうまくいくかは定かではない。
リヒトより7、8歳程度年上。独身。

【名前】ラルフ・レドリック
【人種】人間
【性別】男性
【魔法】毒魔法
紫髪で長身の男性で白衣を着てる。顔にはいくつか縫い傷がある。口元は包帯で隠している(昔口元に大きい傷が残っておりそれを隠すために包帯をしている)。杖を武器にしており遠くから毒魔法を放っている。冷静な性格だがよくネガティブになることが多い。毒魔法を得意とするが医学を学んでおり、よく仲間達を治療していた。彼の医療技術は回復魔法以上の技術力を持っている。前は別の仲間と旅をしていたが仲間の裏切りにあいパーティーを解雇、さらにボロボロの状態で大量のモンスターに一人置き去りにされ絶対絶命のところリヒトに助けられる。それがきっかけでリヒトに恩があり、恩を返す為にリヒト達の仲間になり、共に戦った。今はその技術を活かし医者になった。街外れに診療所を建て色んな人種関係なく治療している。

【名前】グレゴリー・ネスミス
【人種】人間
【性別】男
【魔法】土魔法
銀髪短髪の40代の大男。武器のハンマーを持っている。涙もろいが兄貴肌。過去に自分の村が盗賊に襲われた事があり、生き残ったのはグレゴリー本人だけだった。1人森の中をさ迷っている時にリヒト達に出会う。グレゴリー本人は敵かと思い攻撃するがリヒトの強さに圧倒され返り討ちあう。その後、お互い誤解がとけ仲良くなる。過去に襲われた盗賊もリヒト達と協力し撃退した。撃退後、リヒト達のパーティーに入り共に戦った。現在は結婚して子供もいる。仕事はその強さから現在騎士として活躍している。

>>689少し訂正
「過去に襲われた盗賊もリヒト達と協力し撃退した。」
           ↓
「過去に自身の村を襲った盗賊はリヒト達と協力し撃退した。」

部屋に乱入してきたチャカを可愛がりつつ、雫と会話をする。話題は自然と、牡丹雪で働く面々のことに変わっていった。

「結衣乃さんと霧香さんは、夜のお勤めを主に担当されてます。お客様にも好評で、出勤日は予約でいっぱいになってますね」

「結衣乃さんはそれとは別に衣装製作や修繕も担当されてて、今牡丹雪で働いてる若い人たちの衣装は、結衣乃さんお手製なんですよ」

そう言って、雫はくるりと一回転する。寒色系の鮮やかな着物がふわりと踊った。
一流の職人をも唸らせる絶技で作られた着物。
それはどこの呉服店に卸しても恥ずかしくない逸品なのだが、結衣乃は頑なに販売しようとしないのだとか。
過去に他の子供や客にその理由を尋ねられた時も、黙秘を貫かれたらしい。ポリシーなのだろうか。

「霧香さんは…お休みの時はどこかにお出掛けしてる時が多いですね。数日帰ってこない日もよくあります。でも、ここに居る日は皆の面倒を見てくれたり、美味しいご飯を食べに連れてってくれたりします」

ノリノリでイケイケな人だが、心根は優しいらしい。まあ、子供に好かれているのだから優しいのが普通な気もするが。
ただ、気になるのは初対面の時の行動だ。外に貼り付くなんて普通じゃあない。
鬼なら誰でもできる基本技術だったなら、その時は潔く腹を切ってお詫びしよう。どうせすぐ治る。

「静音さんは、従業員の健康管理をしてくれてるお医者さんです。急病のお客様を診たり、お薬を処方したりもしてます」

飲み過ぎなどで酔い潰れた客でも看病しているのだろうか。だとしたら、とても大変で気の毒な仕事である。
酔っ払いの対応ほどめんどくさいものはない。酔っ払って暴れる冒険者は、酒場でよく見られる光景だった。
それをボッコボコにして鎮圧させたのも懐かしい思い出だと、リヒトは小さく笑う。

「リンさんはご存知の通り、牡丹雪の台所を取り仕切り板前さんです。お客様のご飯から私たちのご飯まで、全てを毎日作ってくれてます」

「ただ…あまり私たちとお話ししてくれないんですよね。お風呂だって、いっつも一人で入ってるんです。…嫌われてるのかなあ」

他人と関わるのが嫌いなのか。それとも、他人と関わりたくない理由があるのか。
牡丹雪で働く人全員にワケありなことを考えるとなんらかのトラウマを抱えている可能性があるが、彼女のことは何も知らないのでそれも憶測の域を出ない。
彼女自身、そういった事情を知らないのだろう。それに、雫はまだまだ子供なのだから配慮を求めるのは酷というものだ。

とはいえ、部外者の自分が気安く立ち入っていい問題ではないのも事実。
時間が解決してくれる日を待つのが良さそうだが、果たしていつになるやら。

夕食を終えたリヒトだが、ふとお雪の姿が見えないことに気づく。
何事かと霧香に問うと、彼岸花 紅華に呼び出され自棄酒に付き合わされることになったという。
不憫で涙が止まらないが、この強制連行は日常茶飯事らしい。お雪の明日はどっちだ。

「リヒトさ~ん…」

城の方を向いて合掌をしていたリヒトに、ウィンディが声を掛けてくる。
振り向いてみると、ウィンディはゴマを擦っていた。本当に胡麻を擦っていた。

「何もできてないのに恐縮ですが…どうかこの貧乏で薄汚い小娘にお小遣いをお恵みください…!お洋服が買いたいんですぅ…!」

二種のゴマ擦りを並行するウィンディに、リヒトは思わず閉口した。そこまでへりくだって媚を売るほどに自分は敬遠されていたのか、と。

悲しみのあまりに半ば悟りを開きつつ、金貨が数枚入った麻袋を渡す。これだけあれば、多少の贅沢もできるだろう。

「あ゛り゛がどう゛ござい゛ま゛ず~~~~!!!!!」

そこまで洋服が欲しかったのか。
そう思いながら、リヒトはスキップで去っていったウィンディを見送り、一筋の涙を流した。

何をするかを↓1にどうぞ。

ウィンディの部屋を掃除しよう

「おっす。俺ですリヒトです」

「ぶうううええええええええぇぇぇぇえっっっっ!?!!!???!!!」

『Oh………』

挨拶をしながらドアを開けると、お茶を飲んでいたウィンディが盛大に噴き出した。
その全てはハリゴーディンに直撃したので、畳は汚れなかった。何よりである。
というより、何故ここまで驚かれたのか不思議でならない。ノックをしなかったのが原因なのだろうか。

「あああああごめんなさいハリゴーディンさん!!!っていうかリヒトさん!女の子の部屋に入るなら先に一言言ってくださいよ!」

と、ハリゴーディンの装甲を拭きながら猛抗議するウィンディ。顔は赤面しており、まるで茹蛸のようだった。
軽く謝罪しながら部屋の中を見渡してみる。特に汚れたりはしていないが、本が散乱しているのはいただけない。

興味本位で中身を見る。やはりと言うべきか、どの本も魔法や忍術に関係したものだった。忍術とはいったいなんなのだろうか。

「忍術は緋桜郷などの一部の地域で利用されている魔法の一種です。どちらも魔力を媒体にして現象を発生させますが、そのプロセスが違うんです。例えば私たちが使っている魔法。これは理論を構築して、理論通りに魔力を制御することで現象を発生させています。それに対して忍術は、印を結ぶ行為そのものを理論の代替として使用するので、印の結びさえ知っていれば、誰でもどんな忍術を扱えます。魔力が足りなかったらたぶん死にますけど。また、どちらも杖などの道具や儀式を併用することで簡略化や魔力の消費量の軽減、性能の強化が行えます。寧ろ、それ前提で理論を構築する方が多いですね」

何気ない質問にお返しされた解説の奔流。軽はずみで訊いた自分が馬鹿だったと内心戒めつつ、ウィンディが話し終えるのを待つ。
待つこと数分。一通り説明して満足したのか、ウィンディは息を吐いた。

ここで理解できなかったと言ったら、また先程の解説が再生されるのだろうか。微塵も試す気はないが。

undefined

気が済んだウィンディを尻目に、リヒトは散らかっていた本を机に置く。
掃除はこの程度でいいだろう、と身体を伸ばした。
そろそろ身体が鈍ってきそうなので、軽く仕事(殺し合い)でもした方がいいかもしれない。

「…私って、リヒトさんの役に立ってますか?」

そんな物騒な思考を涼しい顔でしていると、不意にウィンディが口を開いた。
ちょっと前の様子からは考えられないほど弱々しいウィンディの声。
リヒトも思考を中断し、ウィンディの方を見る。俯いていて表情は伺えないが、声色からして笑っていることはないだろう。

「…ここに泊まってから、色々と考えたんです。レムカーナでリヒトさんに逢ってからお世話になってるわけですが、私は何かしてあげられたのかなって。ある意味、先生の後釜なわけですし、ね」

「まあ、どれだけ考えても何も貢献できてないことしか出てこないわけですが」

力なく笑うウィンディに、リヒトは瞑目する。追憶してみるが確かに、ウィンディが助けになったことは無かったようにも思える。
が、別にそんなことはどうでもよかった。彼女に魔法の才があるのは紛れもない事実だが、過去に彼女自身が言ったように性分が戦いにはまるっきり向いていないし、戦意も無い。
そんなウィンディを戦いに投入するのもいかがなものか。と、骨の髄まで殺し合い(命のやり取り)に染まったリヒトは考えていた。

それに、彼女が役に立つかどうかは全然気にしていないのが本音だ。
ただ傍にいてくれれば、それでいい。孤独にならなければ、それでいいのだ。

シルヴィアの後釜だと本人は言っているが、彼女にその役目を求めたことは一度もない。
シルヴィアから託されたものは既に自分が受け取っている。それを手伝ってくれるのは嬉しい限りだが、そう強要したことはないし、これからもするつもりはない。
言ってしまえば、彼女が勝手に後釜だと思い込んで思い詰めているだけだ。
役に立たないから切り捨てるなど傲慢にも程がある。そんな扱いをされるのがどれだけ辛いのか。
それを知らないリヒトではない。自身もそういった扱いをされていたのだから、尚更だ。

だが、それを素直に言ったら控えめに言って大変なことになるだろう。人間とはめんどくさいものだ。
どう気遣うのが最適なのか、賢くない頭を悩ませるリヒトの姿が、そこにあった。

重要な局面なのでシンキングタイムを設けさせていただきます。
次に出す安価はどんな言葉をかける、どんな対応するか、です。

暫くの間質問等ありましたらお願いします。今開示できる範囲の情報をお出しいたします。

シンキングタイムの期限はいつまで?
あと、ここで失敗(?)したら何が起きる?ウィンディの離脱とか?

期限は質問などが落ち着いたあたりまでですね。とりあえず今日中が期限ではあります。
最悪なコミュを引いたら行方不明になります。本当に最悪な場合です。

シルヴィアのこなしてきた役割、戦闘面以外での活躍について。
そもそもシルヴィアを仲間にしたのは能力が理由だったか?

かけるべき言葉はわからないけどヒントになる情報がほしいから質問してみるテスト。

・あんな情熱的に誘った手前構えてなかったことを謝って安心させる方向(メンドイ系かのじyイヤナンデモナイデス)
・え?そんなんで先生の後釜になれると思ってる?と煽って奮起を促す方向
考えたのはこんなもんかな前者が安定と思うがウィンディ能力だけ見たら逸材なので戦闘(せめて自衛)こなせるようになるならなって欲しい所

シルヴィアのやってたことは、膨大な知識を用いてのリヒトのサポートです。
戦闘以外何もできない何も知らないリヒトにとっては割と重要な舵取り役でした。
仲間に入った理由は、どちらも排斥された者同士というシンパシーや、目的のためにお互いを利用したりです。

ウィンディの家族や家庭環境はどんなものでしたか?

ウィンディの家庭環境は非常に良好でした。良くも悪くも普通の一般家庭でした。
まあ、リヒトくんが学院をぶっ壊す数ヶ月前に不慮の事故で両親は死んでるんですけど。

すみません遅れました。↓3までにウィンディに何を言うか、どんな行動をするかをどうぞ。

風魔法を用いた拠点の空調管理や、ハリゴーディンの整備、チャカの世話、その他やれそうな家事などがあればそれをお願いする
それでもまだ物足りないようであれば、幸い今は旅行中で異国の文化や人々と触れ合える良い機会でもあるので、ここに滞在している間に見聞を広めて自分のしたいことやすべきことを探してみるのはどうだろうと提案する
もちろんここで見つけられなくても良いし焦る必要もないからゆっくり考えていこう、と言って優しく頭を撫でる

13時の時点で安価を終了しますが、正直この安価だけで良い気がしてきました、

さんせい

後頭部をガジガジと掻き、リヒトは眉を顰める。
最初は、えっ!?!???今のウィンディがシルヴィアの後釜になれると思ってんですか!?冗談キツいっすよ勘弁しておくんなまし~、と盛大に煽り、発破を掛けることをほんの一瞬だけ選択肢に入れた。
まあ、そんなことをしたらどう転ぶか分からないし、彼女が存外タフな精神性をしていることは知っているが、そもそもこの挑発に耐えられるほど余裕があるのかは定かではないのでこの択は論外だ。

こんなことを言ってポッキリ心が折れたら、本当にどうしようもない。
自分がメンタルケアなんてできない人種なのは分かりきっていることだ。わざわざハズレを選ぶこともないだろう。

であれば、取るべき選択は一つ。問題の先送りである。
幸いにして、ウィンディはまだ14歳。自分より8歳も年下のお子ちゃまなのでまだまだ未来ある若者だ。
無限の未来が待っているというのに、何を焦る必要がある。寧ろ、焦るのは自分の方だと思うのだが。
聖女との死別からまもなく二年。シルヴィアと出逢って早一年。それほどの月日が経っても何もできてないのはこちらの方だというのに。

そんな思考をしつつ、考えを取り纏める。納得してくれるかは分からないが、出たとこ勝負だ。なんとかなることを祈るしかない。

「…そもそも、だ。君はシルヴィアじゃない。彼女ができることと君ができることは違うだろう」

「俺もそうだ。俺は、シルヴィアや君のような知性は持ち合わせていない。できるのは戦うことだけだ。でも、君は俺にはできないことができる」

人は皆違うものだ。できることもできないことも違うから、人は互いの手を取り合い力を合わせ、共に進む。
リヒトができないことを。シルヴィアができないことを、ウィンディはできる。それで良いではないか、と内心に溢した。

「君が役に立ちたいと言うのなら、君の風魔法で拠点の空調整備なり、ハリゴーディンのメンテナンスなり、チャカのお世話なり、料理とかの家事なりを担当してほしい。どれも俺がやれそうにないのは分かるだろう?」

「絶対無理でしょうね。日頃の様子を見てたから解ります」

「だろ?君にしかできないことはいっぱいあるんだよ」

はあ、とウィンディは気のない返事をした。壊滅的に家事ができないリヒトに呆れていた感があったが、そこを突っついてもこっちが火傷するだけなので放っておく。

「それでも物足りないのなら…。そうだな。言ってしまえば今の俺たちは旅行中だ。時間はたっぷりあるし、異国の文化や人々と触れ合える絶好の機会でもある。緋桜郷に留まってる間に見聞を広めて、自分が何をしたいか、何を為すべきなのか。それを探すのも良いと俺は思うがな」

立ち止まることは間違いではない。どうすればいいのか迷ったのなら、一度足を止めて周りを見渡し、ゆっくり考えてもいい。
その果てに進むべき道を見つけることができたなら、その全てに意味があるのだから。

「…もちろん、ここで見つけられなくてもいい。重ねて言うが、時間はたっぷりあるから焦る必要はない。ゆっくり考えていけばいいんだよ」

逡巡ののちに、ぶん殴られることを承知でウィンディの頭を撫でる。
艶やかな髪の感触が手のひらに伝わる。当たり前だが、男である自分の髪とは質感が違った。

ウィンディの意志 判定↓1コンマ


01~05:姿が消えた。
06~20:お悩みモード突入。
21~80:落ち着いた。
81~99:頑張るモード突入。
00:???

なんとか良い結果になりそうで良かった

セーフ!

そうしていることきっかり一分。撫でる力が強くなり、ウィンディの頭の揺れが少しずつ大きくなった頃。
突如として生まれた風がリヒトを宙に浮かせ、部屋の外に吹き飛ばした。

「むすっ」

ウィンディがおこである。むすっ、と声に出して言うくらいに割と激おこである。どんな理由があれど、年頃の女の子の髪に触れるのはやはりNGだった。
ウィンディの抗議の眼差しを受け、バツが悪そうに目を逸らす。
あの流れで何故自分が悪者扱いされているか解らないが、何を言っても逆効果にしかならないので黙っておく。

「リヒトさんなりに私を気遣って言葉を選んでくれたのは解りました。ありがとうございます。でも、それはそれとして。女の子の髪にベタベタ触るのはやめてくださると助かります。これからお風呂なので多少は大目に見ましたが、もしこれが風呂上がりだったら流石の私も杖で叩いてました。断言します。叩いてたと思うではなく叩いてました。髪の毛のケアって大変なんですよ。男性でデリカシーの無いリヒトさんには解らないでしょうけど!!!!!!!」

全然わからん。リヒトはそう返答し頷いた。寧ろ、ここで分かると言ったらそれこそドン引きされていた気がしてならない。
リヒトの反応を確認した後、温和な笑みを浮かべたウィンディは。

「…とまあ、ウジウジしてた私とはおさらばです。私なりに色々考えて頑張りますので、乞うご期待…やっぱりそんなに期待しないで待っててください」

そう言って、ドアを閉めた。バタバタと音がするので、風呂に入る準備でもしているのだろう。
なんとかなったようで良かった。リヒトも小さく笑い、部屋に戻った。

家族を。学籍を。私を構成していた全てを失った今、私に何が残っているのか。ずっと考えていた。
シルヴィア先生のような叡智は無い。かと言って、リヒトさんのような武力も、戦う意志も無い。

あるのは、この身体を蝕む魔力だけ。ただでさえ病弱な身体に負担を強いる、忌まわしい力。
これがあったから、私は心を磨り減らした。耐え難い仕打ちを受け続けてきた。

何もできない私に、勇者と共に在り続ける資格があるのか。誰に訊いたところで、答えは否としか返ってこないだろう。
まあ、変にお人好しな勇者様は首を縦に振ると思うけど。そういう優しさに甘えている自分がいることは否めない。

施しを受けてばかりというのも気が引ける。だから、何らかの形で力になりたかった。
答えはまだ見つからない。そもそも、捻くれた自分を納得させるだけの答えがあるのかも分からない。

だけど、あの人は待ってくれる、と言ってくれた。時間も、機会も、与えられた。
なら、頑張るしかない。だって私は。

シルヴィア先生(彼岸の大賢者)の弟子なんだから。

風呂に入る際に看板を立てるかを↓1にどうぞ。


A:看板を立てる。ソロお風呂になります。
B:看板を立てない。下の判定が同レスのコンマで行われます。
C:その他。自由安価。

01~20:無人
21~40:雫
41~60:霧香
61~80:結衣乃
81~99:静音
00:???

B

かぽーん。温泉に入っている時に聴こえてくる謎の音。かぽーん。

「また聴こえてきた。何がどうなって何のために鳴ってるんだろ」

一定のリズムで響き渡る正体不明の音かぽーん。音源を探ろうと思うも、外に出たら身体が冷えてしまうため断念する。

どうせ看板を置こうが置かまいが変わらないしはっきり言ってめんどくさいので、看板は立てないことにした。
裸を見られたところで死ぬわけでもないのだ。傷だらけのこの身体を見て不愉快に思われる可能性は無きにしも非ず、といったところだが。

まあ、英雄級の傑物さえも慰安に利用する牡丹雪の従業員なら見慣れたものだろう。
無傷で英雄に成るのは不可能だと、リヒトはそう認識している。
数多の負傷と挫折、後悔と決別を経て血で染め上げた修羅道の果てに至った者。
それこそが英雄で、英雄とはそうあるべきだ。もし、苦難も無しに彼岸に至ろうとする者がいるなら。

「先人に殺されても文句言えないよな。…なあ?」

独白しながら月を見上げ笑う幽者の口は、歪な弧を描いていた。

何をするかを↓1にどうぞ。
牡丹雪の営業が再開されるので、従業員との交流は難しくなります(安価出したレス(つまりこのレス)のコンマが偶数時のみ可能)。

仲間を連れて街を周ろう

定休週が明け、牡丹雪の営業が始まる日。半ば逃げるように店を出たリヒトたちは途方に暮れていた。
これから客の相手をする従業員がいる中、部屋に閉じこもって平静を保てる自信が無かったが故の逃散である。
寧ろ、客に接待する彼女らが近くにいるのにどんな顔をすればいいのか、逆に問い正したいくらいだ。

彼女らはプロフェッショナルだから気にしないだろうが、こちらは変に知識があるえっちな14歳と無気力無知な妖精、頭がバグりにバグりまくったポンコツゴーレムとかわいいペット。
そして、それらキワモノ集団を統べる戦闘しかできない幽者。こんな面子が留まっていて碌なことになるわけがないのだ。

「そういえば、この街に来てからゆっくり観光してなかったですね」

「だな」

緋桜郷に入り茶屋で団子を貪っていたら強制連行されたのは記憶に新しい。ちょうどそこの茶屋だったか。

「~~~♪」

そうそう。そして、珠樹という名の馬耳や尻尾が生えた目の前で団子を食べている少年に案内を受けたはずだ。

どうして彼がここにいるのだろう。リヒトは無性に自身の頬をつねって現実か確かめたくなった。
痛かったので現実だった。

「あ、おはようございます。皆様お揃いでお出掛けですか?」

「まあそんなとこだ」

尻尾をパタパタさせ団子を味わう珠樹の問いを肯定する。
店員と思しき少女や店主っぽいおばちゃんが珠樹に向ける視線がお熱くて困る。飛び火して燃え尽きないか心配だ。

「あ、店員さん。同じのあと二つお願いしますっ」

「はい!!!!!!!!!」

「…お楽しみくださいな」

食事の邪魔をするのはよくない、とウィンディにアイコンタクトをし、そそくさとその場を離れた。
離れた途端に茶屋の前に人だかりができたのは、いったい何故なのだろうか。皆目見当もつかない。

案内所で地図を受け取り、皆で確認する。
一人一枚貰ったのだが、ハリゴーディンが地図を要求した時案内所の人は軽く困惑していた。そりゃそうだとしか言えない。

「こうして見ると緋桜郷って広すぎません?レムカーナの三倍はありますよこれ」

「広い。べらぼうに広い」

魔族を厭いチマチマ領土を広げたレムカーナと来る者拒まず受け入れ続けた緋桜郷。
その規模は雲泥の差であり、格の違いをありありと示していた。

「これ全部観光しようと思ったら何ヶ月掛かるんだ?想像したくないわ」

「関係者以外立ち入り禁止って書かれてること結構ありますけどそれは除外しますよね?」

「流石にするよ?まさか俺ってそれ訊かれるくらいに蛮族と思われてる?」

「はい。だって、ほら。私がここにいる理由考えたら…ね?」

「なるほど完全に理解した」

そんな会話をしつつ街を練り歩く。見るもの全てが新鮮で飽きが来ない。まあ、ここに住んだらやがては退屈になるのだろうが。

ざっと地図を見る限り、すぐ近くにあるのは酒場と武具店、冒険者ギルドくらいだろうか。
少し足を伸ばせば天守閣、桜花衆の居城に行けるが、行ったところで何があるやら。

どこに行くかを↓1にどうぞ。参考までに緋桜郷の立地をざっくり記載します。

A:酒場に行ってみる。
B:武具屋を覗く。
C:冒険者ギルドに行ってみる。
D:その他。自由安価。


緋桜郷の立地

一番街~九番街まで分かれております。内容は下記に記載。

一番街 天守閣 政界
二番街 牡丹雪 高級店の集合場所
三番街~五番街 住宅地(数字が大きくなるほど高級に)
六番街 冒険者向けの宿場街 装備についてもここ
七番街 普通の店はここ えっちな店もあるよ 一番広い
八番街 所謂貧民街 でもちゃんと統治してるから治安はいいよ 一応定期的に炊き出しあるよ 病気で人が死んだりするけど平和だよ
九番街 研究するとこ 図書館もここだよ

9番街の図書館に

とりあえず手持ち無沙汰な現状を打破するため、ウィンディに行きたいところがあるか問う。
しかし、見どころが多すぎて逆に決められないようで、悩んでいる姿を見るに終わった。
仕方あるまい。ここは大人の自分が気を利かせてやろうではないか。
そう意気込んだリヒトは、大仰な咳払いをして、口を開く。

「こういう街にどんな本が保管されてるか気になってんだよね。ってわけで図書館とかどうっすか?」

「なんですかその語尾。その案には大賛成ですけど」

「では出陣である。面白い本が有ればいいな」

「ですね」

『むむ、これは立ち入り禁止でワタクシたちだけお留守番の匂いがプンプンします』

「お前のどこに鼻があるんだ」

『あると思わないでください。これはただのゴーレムジョークです』

「もう何も言うまい…」

数十分掛けて図書館に来たリヒト一行だったが、ハリゴーディンは中に入れなかった。
なんでも「万一暴走とかして器物損壊とかをされたらガチで困るから入んな!」とのお叱りを受けたようだ。
フェルリティアでの世迷言を知っているこちらとしては反応に困った。

どんな本を読むかを↓2までに一冊ずつどうぞ。
ウィンディの読む本は↓2まででコンマ判定します。


01~05:ムフフな本
06~45:魔法についての見解~by(自称)忍術マスターシノビマン~
46~80:忍術についての見解~by(自称)魔法マスターマジックマン~
81~99:光と闇の相関、異端なる光について
00:古びた手記

そろそろ00を

緋桜郷妖怪絵巻

あと一つリヒトが読む本を募集中です。
よっぽど変な本じゃなければあると思って大丈夫です。もし変な本が出たら審議します。

これが世界各地の勇者だ!

今日はここまでです。↓1コンマで勇者本の情報を判定します。


01~20:初版(約200年前の情報までしか載ってない)
21~60:第15版(約50年前の情報まで記載(ヴィクター・グランハイトあたりの世代まで))
61~99:第20版(リヒトがやらかすまでの情報が記載)
00:???

というわけで寝る前に妖怪と200年前に観測された勇者を募集します。
足りない時などはこちらで考えますのでご気軽にどうぞ。以下のテンプレートをご利用ください。


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【人種】その名の通り。
【性別】その名の通り。
【魔法】どんな魔法を得意とするか。全く使えない人もいます。

魔法から下は自由記入欄となります。来歴や特徴などご自由にお書きください。


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【異名】その名の通り。

【名前】?
【異名】福呼び様
見た目は着物を着ているごく普通の子供にしか見えないらしいが誰もその姿は知らない
食べるのが好きでよく普通の子供にまぎれて飲食店に現れては食事をして去っていくという
その店に繁盛をもたらすと言われているため多くの店の主人はこの妖怪を信じており子供の客には親切にする文化が根付いている

【名前】ルーク・ファンブルダイス
【人種】人間
【性別】男
【魔法】使えない
遥か昔に世界征服を企んだ魔王を1人で倒して世界を救った勇者。
魔法は使えなかったが、規格外の強さだったようだ。
誰とも会話をせず、一方的に人々を救い続けた。
その結果、その強さと行為を恐れた人々の手によって公開処刑される。処刑される直前でも一言も発さず、ただ静かに笑みを浮かべていた。

【名前】ヒオウサンショウウオ
【異名】湖底桜
緋桜郷外れの湖に棲むサンショウウオのような妖怪
小型の竜くらいの大きさがあり、透き通るような淡紅色の体を持つ
性格は物静かで温厚。防衛目的以外に地上の生き物を襲うことはないため、出くわしても特に危険はない。岩場で昼寝していたヒオウサンショウウオに地元の子供が抱き付いても、特に何もせず昼寝を続けたという目撃翌例もある
しかしもし湖を汚したり生態系を乱す乱獲を行うような者がいれば、ヒオウサンショウウオの怒りを買い、不届者の頭上に局所的な豪雨と落雷が三日三晩降り続くと言われている
サンショウウオに似ているが、近年の研究では水竜の一種とする説が浮上してきている

【名前】ネイト・アンドリュー
【人種】人間
【性別】男
【魔法】氷魔法、炎魔法
赤髪で身長が高い男性。2本の剣を持っている。冷静沈着だが困っている人はほっとけない優しい性格。仲間共に数多くの魔物を倒してきた勇者。戦闘スタイルは二刀流で戦い、氷と炎の魔法を使う。性格や実績から多くの市民から慕われおり、結果とある王国の国王になった。現在でも王国ではその伝説が伝えられている。

【名前】ドクロサムライ
【異名】歌う骸骨将軍
腕が6本、甲冑と兜をつけいる大きい骸骨。6本の腕全てに刀を持っている。緋桜郷の外れにある荒れ地にいる(他の場所には移動しないで荒れ地のどこかにいる)。非常に好戦的で誰にでも斬ろうとしてくる。歌うのが好きでよく歌っている。そのため場所の位置もある程度特定できる。一度倒すとバラバラになるがしばらくすると元に戻り封印しない限り何度も復活する(元々封印してあったが封印していた岩が壊れてしまい蘇った)。
昔は宴が好きな将軍で仲間と一緒に宴していた時に敵に襲われ亡くなった。その亡くなった魂の怨念がドクロサムライに変化した。

【名前】イナズマミケネコ
【異名】雷電猫又
緋桜郷の外れにある山に生息する猫又の妖怪。三毛猫のような模様があり、尻尾の先端が雷のようにジグザグしている。大きさは中型の竜くらいの大きさがある。常に電気を纏っており電気による広い範囲で攻撃したり、鋭い爪で切り裂いてくる。さらに動きも結構俊敏。基本的にマイペースな性格だがイナズマミケネコに攻撃すると怒って気がすむまで暴れてしまう。その為、地元の人達は見つけても近寄らないようにしている。

【名前】トレボール・ヴェルヌ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】なし
通称「剣を持たない勇者」
近隣の魔族の王国とのいさかいが絶えない王国で中流階級として生まれた彼は
その類稀なカリスマ、交渉力、リーダーシップによって人民を纏め上げ
ついに魔王との会談にこぎつけ、話し合いによって和平をもたらすという偉業を成し遂げた
戦う力をなんら持たない彼はおそらく歴史上でもっとも弱い勇者であろう

【名前】バン・ブラウ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】爆発魔法
自身の魔法と拳だけで魔王を倒した勇者。武器を扱うのが苦手で拳で闘う戦闘スタイル(魔法も得意)。前は王国の騎士を勤めていたが危険な魔法とオラオラ系なところから騎士をクビになった。その後、冒険者となり仲間と共に旅をし魔物や魔王を倒してきた。オラオラ系で言動も威圧的だが信念を曲げず仲間思いの性格のため多くの人に慕われてきた。魔王倒した後、国を作り、領主として人々をまとめた。

ちょっと忙しいので投稿が土曜日くらいになりそうです。妖怪や勇者の募集は終了とします。
連続で申し訳ないですが、桜花衆所属のキャラクターや新しく牡丹雪に入ってくるキャラクターを募集します。

牡丹雪に入る理由は前の店が取り潰しに遭った、捨て子の配属など理由はなんでも大丈夫です。
ではまた土曜日にお会いしましょう。

ちなみに、桜花衆は緋桜郷を支配している組織です。言ってしまえば、日本の国家権力を集約したような存在です。

質問ですが桜花衆所属のキャラと新しく牡丹雪に入るキャラの人種は何でもいいですか?それとも鬼や天狗限定ですか?

種族の坩堝の緋桜郷は伊達ではありません。人間も天狗も鬼も獣人もエルフも魔族も吸血鬼もなんでもござれです。

【名前】瓦 権兵衛(かわら ごんべえ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風と水の忍術
桜花衆の一人にして緋桜郷における警察組織のトップを長年勤める男
赤と黒が基調の着物を着て、非常に硬い金属で出来た特注の十手を用いる
言動はかなり荒っぽいが義理堅く犯罪を許さない心を持つ
時間に余裕さえあれば自ら街の見回りをし悪人を(下駄とは思えないスピードで走りまわって)追いかけたりする
顔が般若のお面そっくりなため、よく悪人に間違われる

【名前】オリビア・ワスティ
【人種】エルフ
【性別】女
【魔法】植物魔法
銀髪でスタイルが良い女性。年齢は400歳と言われている。桜花衆の一人で槍と魔法を使って戦う戦闘スタイル。穏やかでマイペースな性格だが頭がよく桜花衆の参謀をつとめている。元々はエルフがいる森にいたが外の世界に憧れを持ち旅をしていた。その後、緋桜郷を訪れた時に桜花衆の一人にスカウトされ桜花衆に入った。200年前に観測された勇者と共に旅をした事がある。

【名前】エル・ファルス
【人種】吸血鬼
【性別】女
【魔法】変化魔法、変化忍術
緋桜郷が正式に雇っている忍達を取りまとめる長。
しかし、緋桜郷に住む殆どの者はそのことを知らない。
高身長で黒髪。笑うと牙が見える。
幼い頃は奴隷だったが、心優しい貴族に買われて長い時間を共に過ごす。その後、寿命差で主人と離別して死に場所を探していたところ、お雪に出会い、気がつけば桜花衆の一員になっていた。
貴族時代に培った処世術や変化魔法を利用し、忍者としては非常に優秀な能力を持っているが、普段は賭場に入り浸り、賭け事と酒に溺れている。
普段の言動(酔っている時)は荒い口調だが、忍者として行動するときや素面の時は育ちの良さが出る。

【名前】キラ・レイデン
【人種】狐の獣人
【性別】男
【魔法】影魔法
白髪短髪の男性。白い狐耳と尻尾がついている。関西弁を話している。桜花衆の1人で桜花衆の諜報活動を行っている。普段はおおらかな性格だが諜報活動の時は冷静沈着になる。かなりの情報通で色んな事を知っている。幼い頃、家族が事故で亡くなり自分だけが生き残った過去がある。緋桜郷にきた時はその情報通なところをかわれ桜花衆に入った。魔法を駆使して隠密行動や攻撃、捕縛ができる。武器は短剣を使っている。旅館「牡丹雪」の温泉が好きでたまに来ることがある。

【名前】桔梗(ききょう)
【人種】鬼
【性別】女
【魔法】炎魔法、簡単な治癒魔法
長身でショートの桃色髪で出るところの出た女性。腰に刀と脇差をさげている
早くに両親をなくして孤独になったとき周囲が誰も引き取ってくれなかったため子供のころから自分の力で生きていくしかなかった
そのことが少しトラウマになっていて自分の生まれた地域に苦手意識を持っている
緋桜郷の伝統的な武術を身につけて冒険者稼業や用心棒をやっていたときに伝手で牡丹雪の仕事を紹介された
乱暴な客に対応する用心棒として雇われて普段は掃除や雑用を担当
男のような振る舞いをするがそれは一人で生きていくための処世術として身に付いたものであり根は純真で女性らしい
心の奥では自分には帰るべき場所がないという寂しさを抱えている

【名前】灯籠(とうろう)
【人種】天狗
【性別】男
【魔法】鋼魔法
桜花衆の1人にして緋桜郷の商人会長を勤めている。オレンジ髪にサングラスをしている。天狗の羽がついている。腰には武器のメイスを下げている。テンションが高くお調子者。流行には敏感で常に流行を取り入れたり、新しいものを販売しているため、彼のお店はいつも長い列ができている。店は日常のものや冒険者に役立つアイテムなどが売っている。元々孤児だったが優しい商人の人に拾ってくれて育ててくれた。成長して商人なろうと決心し勉強や技術をし今にいたる。魔法を使って体を固くして防御したり、人に教わった体術や武器のメイスを使って戦う。

【名前】嵐月(らんげつ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風魔法
桜花衆の中でも幹部的な立ち位置にある、眼光鋭く頬に刀傷のある黒髪長髪の男性。前をはだけた着物を直接素肌に着て、腰には業物と思しき刀を下げている
現在は桜花衆に統合されて存在しないものの、かつては緋桜郷の見回りや用心棒、金を踏み倒すような客への取り立てといった極道的な組織の親分を務めており、その強さと男気から男女問わず憧れられていた
現在でもその武闘派ぶりは健在であり、緋桜郷に勇者であるリヒトがやって来たと聞いて一度戦ってみたいと周囲に漏らしているという
ちなみに戦いで本気になると着物を脱ぎ捨て、背中に彫られた風神の刺青が露わになる
それを見て生きて帰れた者は今まで一人もいないと言われている

>>757
ちょっと文章的におかしい所があったので修正します

【名前】嵐月(らんげつ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風魔法
桜花衆の中でも幹部的な立ち位置にある、眼光鋭く頬に刀傷のある黒髪長髪の男性。前をはだけた着物を直接素肌に着て、腰には業物と思しき刀を下げている
現在は桜花衆に統合されて存在しないものの、かつては緋桜郷の見回りや用心棒、金を踏み倒すような客への取り立てといった仕事をこなす極道的な組織の親分を務めており、その強さと男気から男女問わず多くの者達から憧れられていた
現在でもその武闘派ぶりは健在であり、緋桜郷に勇者であるリヒトがやって来たと聞いて一度戦ってみたいと周囲に漏らしているという
ちなみに戦いで本気になると着物を脱ぎ捨て、背中に彫られた風神の刺青が露わになる
それを見て生きて帰れた者は今まで一人もいないと言われている

【名前】瑠璃(るり)
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】呪詛魔法
新しく牡丹雪に入った女性。年齢はおよそ20歳前後
艶やかな濡羽色の髪を腰丈までストレートに下ろし、いつも物憂げな表情をしている。体つきはやや華奢で暗色系の和装を好む
元はある寒村の出身で食い詰めた家族に奴隷として売られ、最近まで違法な店で働かせられていた。先日その店が桜花衆の働きにより取り潰され、身寄りを失ったために牡丹雪に置かれることとなる
前の店では違法薬物や異常行為を強要されていた。体の傷や異常は都度回復魔法や浄化魔法で治癒されていたため殆ど残っていないが、心には無数の癒えない傷を負っている。そういった事情から自己肯定感が低く、夜の仕事をしている最中にしか生きる実感を得られない。また、自分はそれ以外に価値がないとも思っている
家族のことは恨んでいるが、食い詰めていた事情も理解できるため、心の底から呪うことまではできていない

【名前】サイエス・リーヨー
【人種】人間
【性別】男
【魔法】硫酸魔法
桜花衆の一人でもあり科学者を勤めている男性。緑髪で髪はボサボサになっている。メガネをかけて、白衣を着ている。優しくいつも笑顔で話しかけている。緋桜郷のところにある研究所で色んなを研究しており、ポーションなどの回復アイテムも作ることができる。遠距離での攻撃が得意で弓や魔法で硫酸の弾丸を飛ばしたり、科学薬品を投げたりなどしている。元々別の街の出身で研究していたが現在は緋桜郷に住んでいる。桜花衆のメンバーや緋桜郷の住人とも仲が良く飲みに行ったりなどしている。

お待たせしました。これより再開します。

図書館を見て第一に感じた印象は『古風』だろうか。
緋桜郷特有の木造建築は他の地域の様式と当然のことながら大きく異なり、昔らしさを感じさせる。温かみがあって嫌いではないのだが。
完成して何百年も経っている割には綺麗で、作りもしっかりしている。さぞかし立派な名工が手掛けたのだろう。

まだ午前中だからなのか人は少なく、ざっと見た限りでもご年配の方や真面目な冒険者くらいしか見当たらない。
おそらく娯楽に溢れた緋桜郷の住民は外で遊ぶのだろう。そのような娯楽を必要としない者、知識を求める人がここに集うのだと思われる。

「外に置いてるハリゴーディンがパクられたら敵わん。なるべく手短に済ませて出るか」

「あんなのを盗む物好きいますかね?チャカちゃんは可愛いので盗まれそうですが、アレがリードを持ってるので結局誰も近づかないと思いますけど」

仮にも仲間なのにあんなのとかアレ呼ばわりするウィンディはなかなかイイ性格をしている。
まあ、そんな呼ばれ方をするハリゴーディン側に多大な問題があるので致し方なしである。

30分後くらいに図書館を出るまで自由行動とし、その場は解散することにした。
これで何かしらを得てもらいたいものだと頭の片隅で思いつつ、リヒトは本に手を掛けた。

リヒトが選んだ本は二つ。一つは『緋桜郷妖怪絵巻』なる題名の絵本。もう一つは『これが世界各地の勇者だ!』なる題名のゴシップ誌だ。

緋桜郷妖怪絵巻は、緋桜郷に言い伝えられている妖怪を分かりやすく解説している子供向けの絵本だ。
危険なものはおどろおどろしく、可愛いものは可愛らしく描かれており、いかにも子供が好みそうである。
まあ、その実態は緋桜郷周辺の情報を纏めた魔物図鑑とでも呼ぶべきものなのだが。
先祖代々伝えられる魔物の情報を妖怪として、後世に遺すこの書物の価値は地味に大きい。当時を知る手段にもなる。
たまに本物の妖怪(謎の存在)が紛れ込んでいるのはご愛嬌と言ったところか。

もう一つの本は、当時世界中で観測されていたらしい勇者の情報を収録した勇者図鑑。と本誌は謳っている。
だがその実情は筆者の主観が入りに入ったゴシップ誌と大して変わらない。
数年毎に発刊すると後書きに記載しておきながら、図書館に保存されているのは初版のみ。
発刊したは良いが誰にも買われなかったのか。はたまた売れはしたが信憑性の無い与太話や噂話がありすぎて出版社が焼き討ちでも喰らって絶版になったのか。
真相は定かではないが、二百年前に初版が出たっきりなのでお察しするしかない。話半分で読めば良いだろう。
そう思考に区切りをつけ、本を開いた。

『福呼び様』


昔々、ある村に小さな食堂がありました。子供好きのおばあちゃんが作るご飯はとっても美味しく、村の子供たちに大人気でした。
ですが、その村に病気が流行り、たくさんの人が亡くなってしまいます。
怖くなった人たちはみんな、村を去って出ていきます。
亡くなった子供たちが寂しくないよう、おばあちゃんはたった一人村に残り、何年も何年も、ご飯を作っていました。

ある日、男の子が一人お店にご飯を食べにきました。
その顔は見たことがなく、周りにも家族がいなかったのでおばあちゃんは不思議に思いましたが、お腹を空かせた男の子のためにご飯を作ってあげました。
ご飯を全部食べた男の子は、お辞儀だけをして店を出て行きました。

次の日。何やら店の前が騒がしいとおばあちゃんは朝早くに目が覚めます。
するとなんと、たくさんの行列ができているではありませんか。
お客様に話を聞いてみると、たまたま近くを通りがかった商人が、子供に美味しいご飯屋さんがある、と道案内を受けたというのです。
しかし、もう村には子供はいません。不思議なことが何度もあるなんて、とおばあちゃんは思いますが、お客様のためにご飯を作りました。
それからは、美味しいご飯が食べたいと村に人が戻ってきてお店はとっても繁盛しました。
たくさんの人に囲まれたおばあちゃんは、そのまま幸せに過ごしました。

福呼び様が幸せを呼び込んでくれたおかげで、また一人幸せになれましたとさ。

めでたしめでたし。

著:亀有南斎
絵:脇差ぐねぐね太郎
《緋桜郷妖怪絵巻》より抜粋

何ページか読み進め、リヒトは絵巻を本棚に戻す。福呼び様以外にもいくつか読み込んだが、どれも関わらない方が吉と書かれていた。
ごく一部しか読んでいないので何とも言えないが、ガチモンの妖怪である福呼び様以外はやはり、人類にとって害獣のような存在らしい。
だから、こういった本を使って危ない奴にちょっかいを掛けるな、と警鐘を鳴らしているのだろう。
死が見えているのにわざわざそれに触れる必要は無いのだから。

例えば、ヒオウサンショウウオ。透き通るような淡紅色の身体を持つ、サンショウウオに似た魔物だ。
緋桜郷(ひざくらきょう)の近辺に住むのにヒオウと付いているのが気になるが、湖のヌシと呼ばれる時があるらしいので王と桜のダブルミーニングなのかもしれない。
性格は物静かで温厚。彼側から攻撃をすることは防衛行動以外ではまず無いので、彼の怒りを買うようなことさえしなければ安全らしい。
昼寝中に抱きついても大丈夫らしいが、普段は水底でのんびりしているそうなのでヌメヌメしてそうだ。少なくともリヒトは触りたくないと思っている。
そんなヒオウサンショウウオの怒りを買った不届者はどうなるかと言うと、頭上から局所的な豪雨と落雷が降り注ぐのだという。普通に迷惑で死人が出そうだ。

他にも、ドクロサムライやイナズマミケネコといった魔物も目を引いた。
二又の尻尾を持つ猫型の魔物であるイナズマミケネコは手を出さなければ毛繕いをしたりと可愛らしい姿を見せるが、一度でも手を出せばそれはまさに逆鱗に触れられた龍の如く暴れ始めるらしい。
ただでさえ数mと中型のドラゴン級のサイズを持つ魔物が雷を纏って大暴れするのだから、その被害は想像したくないレベルである。人里まで攻めてこないのがせめてもの救いか。

六本の腕を持つ骸骨の魔物であるドクロサムライに至っては、目が合った瞬間に剣を振るってくるという好戦的にも程がある生態をしている。
宴に興じていた将軍が夜襲を受け、部下と共に惨殺された怨念から生まれた魔物らしい。
悲しい出自の魔物だが危険な存在には変わりなく、殺すのは難しい上に封印も面倒、しかし縄張りである荒れ地からは動こうとしないので、桜花衆側も不干渉に徹しているらしい。
緋桜郷を経由するキャラバン隊にも、荒れ地に接近しないようにとお触れを出しているのだとか。

面白いものが知れた、とリヒトは絵巻の齎した情報に満足する。
ドクロサムライとやらなら、光魔法で存在ごと消し炭にできそうだと物騒な思考をしつつ、次の本に目を通した。

皆様の多大なる要望を経て、本誌が発行できたことを喜ばしく思います。
はい、というわけで始まりました『これが世界各地の勇者だ!』です。好評だったら数年単位で出していこうと思うのでそこんとこよろしく。

えー、まず本誌を出すに至った理由なんですけれども。私は今までに世界各地を旅してバチクソに痛い目に遭ってきましてね。
その時にまあ、目にしたり耳にするわけですよ。勇者のお話とか昔話をね。
んでもって、どれもこれも勇者に至るまでの経歴が違うから面白いって思いましてね。
ならこれを他の人にも知ってもらって、あわよくば印税をガッポガッポ…いやなんでもないです。

何はともあれ、石碑を読み解いたり金を貢いだりしてやっとこさ手に入れた情報ばかりです。
参考にしてくれたら嬉しいです。それでは本題にGo!

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『世界に殺された勇者』

えー。この勇者を初っ端に紹介してええんかと悩んだんですけども。
やっぱり掴みはインパクトが大事!なもんで、現実はそう上手くいくものじゃないよって教えるのも含めて先陣を切っていただきました。本人は首を切られたんですけれども。

彼の名は『ルーク・ファンブルダイス』。冗談みたいな名前ですがマジでこの名前です。ガッチガチに厳重に封印されてた祠の石碑に書かれてたんでたぶんガセじゃないと思います。
もし嘘だったら緋桜の下に埋めてもらって構いません。

彼がどんな勇者だったのか。いつの時代の勇者なのか。についてなんですが。
言ってしまえば遥か昔…そうですねー。ざっと数千年前の時代に存在してたみたいです。
我々が生きるこの世界。文明が長い間続かないのは周知の事実だと思います。ざっくり数百年経ったら綺麗さっぱり滅んで、また新しい国とかできてますしね。
だから世界中に遺跡とかがあるわけです。滅ぶ原因は自然現象だったり戦争だったりとあるわけですが、私は専門家じゃないのでこの話はここまで。

まあつまり、そんな昔に生きていたこの勇者はとにかく強かったんです。とんでもなく強かったんですよ。
少なくとも、魔法の類は一切使えなかったそうですが、そのシンプルにして規格外の強さを以って、世界征服を企んだ魔王をたった一人でぶち殺し、世界を救いました。
しかも、彼は死ぬ瞬間まで何一つ喋らなかったんです。意志も伝えず、ただ黙々と、返礼さえも求めず人を救い続けました。
彼が優しすぎたのか。それとも頭のネジが外れていたのか。何かがあって心を壊したのか。それは情報が無いので何も解りませんけれど。

その力を、行為を恐れた民衆は、世界は、彼の死を望みました。自身を救ってくれた英雄を、ただ怖いというだけで殺そうとしたのです。
しかし、勇者はそれを拒むことなく、首を差し出します。
断頭台に取り付けられ、心無い罵声を浴びせられる中でも、彼は微笑みを浮かべていました。
振り下ろされる大鉈。飛び散る鮮血。
何も求めず、ただひたすらに救い続けた英雄は。人のエゴによって都合良く切り捨てられた英雄は。死してもなお笑っていたのです。

それでもあなたは、勇者になりたいと思いますか?

著:不死鬼 八犬
《これが世界各地の勇者だ!》より抜粋

最初の一人目を読了した時、ぞくりと背筋に氷柱を差し込まれたような感覚がした。
額に手をやると、冷や汗がべったりと付いていた。その理由は考えるまでもなかった。

自分も彼と同じ末路を辿っていたのかもしれない、と、本能が嫌悪感を示したのだ。
何も求めず戦い続けた自分と、何も求めず人を救い続けた彼が、重なって見えてしまった。
厳密に言えば、何も求めなかったわけではないのだが。戦争が終わった後、身を寄せていたフィアリス家への爵位を嘆願した。
その結果、田舎町の名家だったフィアリス家は男爵の爵位を賜り、正式に統治するようになったのは記憶に新しい。

もう戻れない、戻ってはいけない嘗ての故郷に思いを馳せる。
故郷と呼ぶべき場所は三つほどあるが、その中でもフィアリス家が一番居心地が良かった。

「…どうしてあの人は、俺を赦したんだろうな。あれほど俺を恨んでたのに。…憎んでたのに」

護れなかった聖女の父母に会った時。聖女の死を伝えた時。殺される覚悟はしていた。寧ろそれを望んでいた。
なのに、彼らは殺すこともせず見逃した。愛しの娘を見殺しにした大罪人を、裁こうともしなかった。
今でも、その理由は分からない。分かる日はやってくるのだろうか。

光の失せた紅眼が、天井へ向けられる。木材の模様が目に映った。

ニンニン。はじめまして皆の衆。皆大好きシノビマンでござるよ。ニンニン。
さてさて、拙者が此度筆を取った理由でござるが。
どうやら異邦には魔法なる摩訶不思議な妖術があるらしいのでござる。
幸い、魔法への知見を持つ者と対談する機会があったので、魔法に対する見解を述べようと思った次第でござる。
皆もこれを読んで、立派な忍になるでござるよ。シノビマンとの約束でござる。ニンニン!

まず、忍術と魔法の差異について示さねばなるまい。大前提として、どちらも魔力を消費するものであることに変わらぬ。
忍術の場合は、魔力を練りつつ図示したような特定の印を結ぶことで火を吹いたり風の刃を放ったり、と望んだ現象を起こす技術でござる。
しかし、魔法の場合はあら不思議。謎の呪言を呟きながら魔力を練ると、大爆発が起きたり雷が落ちたりするのでござるよ。怖いね。
同じ魔力を使っておきながら、現象を起こすまでの過程がここまで異なるのは驚きでござる。
ここで、拙者はこの差がどう影響を及ぼすのか拙者なりに考察したでござる。少し長くなりまするが刮目して見よ!


著:(自称)忍術マスターシノビマン~
《魔法についての見解》より抜粋

はじめましての方ははじめまして。そうでない方はお久しぶり。千を超える魔法を極めた最強の魔法マスターマジックマンです。
今回は、緋桜郷と呼ばれる地域で何故か大流行している魔法モドキである忍術について独自の見解を交えて話していこうと思います。
つまらなさそうって思った奴は呪うから覚悟しとけよ。何食っても雑草の味しかしないようにしてやるからな。

ゴホン。魔法とは何か。それを説明しようとしたらそれはもうめんどくさいことになるのでそこから知りたいならまずフェルリティアで一年くらい勉強してきてください。
人の生活様式に地域差があるように、魔法の形式にも地域差があります。
解りやすいのは呪詛魔法とかですね。詠唱と触媒を併用するものもあれば、生贄一つで行使するものもあります。

先述した忍術はおそらく、緋桜郷で独自の進化を遂げた魔法だと思います。そうでないとやってられません。
どっちも魔力を使うし現象を起こしてますからね。
だからって、なんであんな痛々しいポーズを取るのか理解できませんが。頭の中が少年時代で止まった奴が考案したのか?

と愚にもつかない推測はさておき。魔法と忍術の明確な違いですが、魔法の方が才能による効果の差が顕著に出ることですね。
忍術の方はやり方さえ知っていれば、ある程度の効果は保証されます。才能絶無の子供がやっても、天才の大人がやっても最低限の効果はあるってわけです。
その分魔力を喰うのでお子ちゃまがやったら最悪死にますけど。

それに対して、魔法の方は全然変わります。天と地ほどの差が出ます。
才能の欠片もない奴が火炎魔法を行使したところで、蝋燭の火くらいしか出ないんですよ。
同じやり方を私がしたら家が消し飛びます。たぶん。危ないからやったことないんで確証はないです。

ざっくりまとめると違いはこんな感じです。

魔法:魔力消費は魔法ごとに調節可能。威力や難易度も同時に変動する。才能があれば際限なしに性能強化。

忍術:魔力消費は忍術ごとに最低値のみ固定。威力や難易度は結ぶ印の数と魔力消費に依存。魔力量の才能のみが性能に影響を及ぼす。

まあこれは私なりの見解なので、絶対にこうだ間違いない、と保証はしてないです。クレームは受け付けないので悪しからず。

著:(自称)魔法マスターマジックマン
《忍術についての見解》より抜粋

二つの本を読み終えたウィンディは人目も憚らずに嘆息した。書き手の個性が出過ぎている。
もっと簡潔に、詳細を書いてほしいのに、ござるだの呪うぞゴラだの余計なことが書かれていて読む気が失せていく。
意地で読了したが、何を書いていたのか半分くらい頭から抜け落ちてしまった。
今からもう一度読み直す気力も時間も価値も無いので、絶対にしないが。

「そろそろ時間ですよリヒトさん。早く外に出ましょう」

「…ああ」

入り口で突っ立っていたリヒトに声を掛ける。が、表情はあまり明るくなかった。
お目当ての本でも無かったのだろうか。

「どうしました?えっちな本でも探したけど見つからなかったんですか?」

「…違うが。ちょっと考え事をしてただけだ」

「なるほど。そういうことにしておきますね」

「だから違うって」

そんな他愛のない会話をして、二人は図書館を出る。
外に出ると、ハリゴーディンはチャカと共に大道芸をしていた。
何がどうしてそうなったのか。二人は考えるのをやめた。

ちなみに見物客は一人もいなかった。見るからに怪しいのだから当たり前である。

何をするかを↓1にどうぞ。
勇者の本は借りてるので読みたい時は行動として選んでください。

武具屋を覗く

リヒトはともかくウィンディやマナはなんか食らったら即死しそうなので…

続いて一行が向かったのは六番街。冒険者向けの店や宿屋が軒を連ねている宿場街だ。
武具店や道具屋の他、魔導具店といった便利アイテムも取り揃えているので、魔物と戦ったりダンジョンに潜ったりする前に品揃えを見ておいて損はない、とよく言われているらしい。
レムカーナ軍に随伴していた時は支給を受けていたリヒトには微塵も関係ない話ではあるが。

「へー。超硬質メタライトってこんなに高いんだな」

武具店にオーダーメイドしてもらう際に利用できる素材を興味本位で見ていたのだが、偶然ハリゴーディンの装甲材と同じ物を発見した。
値段は馬鹿みたいに高かった。これを採算度外視で大量に注ぎ込んだハリゴーディンの製作者はやはり頭がおかしい。
そんな高級品に自爆機能を盛り込んでいるのだから、一度死んで馬鹿を治した方がいいのではないか、と一瞬真面目に思ってしまった。
流石に失礼すぎたと自覚したため内心で謝罪するが、正直まともじゃないと誰に対してか分からない抗議をしておく。

「武具店に何か注文するんです?」

「俺の分はするつもりはないが。君とかマナ用の防具くらいは作った方が良いと思ってな」

「戦わないので不要です。痛いのやです」

「どうせいっかいなぐられたらしぬからいらない」

「二人のへちょい耐久力だと流れ弾で死ぬリスクがあるから困ってるんだが」

無数の修羅場を経て鍛え上げられたリヒトと、そんな経験などしたことがない二人では肉対面の強さに圧倒的な差がある。
リヒトにとっては些細な怪我で済むようなダメージも、二人にとっては致命傷になり得るだろう。

妖精という種族である以上、マナの虚弱性は保証されている。これっぽっちも良くないことだが。
しかも、常人より遥かに小さな体躯をしたマナに合う防具などあるのだろうか。
そもそもそれを作ったとして、彼女が着込んでくれるだろうか。
反人工物ウーマンのマナが首を縦に振ってくれるイメージが湧かない。

ウィンディもウィンディで、魔法使いということは重装が難しい現実が立ち塞がっていた。
詳しい理由はリヒトには解らないが、鎧などの重装備をしていると、魔法の行使に悪影響を及ぼすらしい。
だからなのか、魔法使いは基本軽装だし、重装備をした戦士が魔法を行使する際は簡単なものに留めておくか、利用する武器などに触媒としての機能を持たせて、無理矢理性能を底上げして補っている。

リヒトの場合はかなりの特異ケースで、そもそもが軽装であるのに加えて、聖剣が触媒としての機能を勝手に果たしてくれるのでデタラメな魔法をポンポン放てたりする。
ガチガチに装備を固めるよりかは、軽装で素早く動いて魔法をぶっ放した方が戦果を挙げられるのだ。

「なんというか、世の不条理とか理不尽を感じますね」

「どういう意味だオイ」

遠い目をし始めたウィンディに抗議の視線を向けるも、乾いた笑いで黙殺されたリヒトだった。

誰にどんな装備を買うかを↓2までどうぞ。一レスにつき一人です。現時点ではそこまで金が無いので贅沢はできません。
買わない選択肢もあります。



マナ 小盾とお子様用ヘルメット
ウィンディ 耐物ローブとお鍋の蓋

ウィンディ 耐物ローブ

マナ 子天狗の葉団扇

評判の良い武具店を調べ、店内を確認する。陳列されている物は全て規格品のようで、サイズ毎に分別して置かれている。
オーダーメイドも承っているらしく、現に今目の前で装備製作を依頼して去っていった冒険者がいた。

ふむ、と残金と必要な物について思考しつつ、リヒトは藍色のローブを手に取った。
商品の名前は『対物ローブ』。大仰な名前が付いているが立派な市販品であり、はっきり言って世界各地どこでも買える防具だ。

対物と聞くと、分厚い装甲をぶち破るようなパワーを持つイカレ武器ばっかり想像してしまうが、今回手に取ったものは対物理の意味合いを持つ。
斬撃。刺突。殴打といった物理的な攻撃にある程度の耐性を持たせた、魔法使い用の防具である。
ただの布に耐性を持たせるカラクリは、生地に編み込まれた魔法である。
この魔法が衝撃を和らげることによって、魔法使いが苦手とする物理的なダメージを軽減させているのだ。

一流の魔法使いともなれば、高級な素材を贅沢に使って物理、魔法、属性全てに強力な耐性を持たせた防具一式を揃えているのだが、悲しいことにそんな財力は存在しない。

効果が如何程なものか、ウィンディに試してもらう。おっかなびっくりといった様子で鉄の棒を握ったウィンディは、ローブ越しに木の板を叩いた。
カン、と軽い音を立てるが、木の板は割れることなくその形状を保持していた。
ローブを外してもう一度木の板を叩くが、今度は綺麗に割れた。

「おおー…」

なるほど。値段と性能のコスパを考えれば、これは買っておいて問題はなさそうだ。
とにかく安く、それでいてある程度の品質は保証されている。これだから市販品は普段使いにありがたい、とリヒトの口角が吊り上がった。

さて、お次はマナの道具である。ウィンディにだけ買ってマナだけお預け、なんてことをして拗ねられると非常に困るのだ。
実際、マナはリヒトの肩に座っているのだが露骨に不機嫌になっている。
膨らんだ頬を押すと、ぽひゅー、と間抜けな音を出しながら空気が抜けていった。こうして見ると小動物のようで可愛らしいのだが。

適当に商品を見繕うも、マナはじっとりとした視線を向けてくるだけで評価は良くない。
やはり人工物はNGで、鉄製の道具など論外のようだ。
ならば、とリヒトが取り出したるは『子天狗の葉団扇』なる団扇。
こちらは名前の示す通り、子供の天狗がよく使う道具であり、葉っぱを束ねて作っているので自然に優しい。

秘めたる力はそよ風を生み出したりちょっとした加護を与えたり、と大したことないのが難点だが、子供用の物なので仕方ない。あとこれより大きかったらたぶんマナでは持てない。

マナの視線の温度が下がる。それでもめげずに団扇を押し付けると、渋々といった様子で受け取った。
マナ的には許容範囲ギリギリだったようだ。

お買い物を済ませたリヒトは店を出る。

「えー皆様に悲報があります。活動資金がそろそろ底を突きそうです」

そして、端的に破産一歩手前だと宣告した。

「えー皆様に悲報があります。活動資金がそろそろ底を突きそうです」

何故こんな悲しい宣言をする羽目になったのか。理由は明白である。それは。

「ぎゃう?」

このかわいいペットを購入したからである。それ以外にも理由はあるが、直近でした買い物の中でぶっちぎりで金が飛んだのがこれなのだ。
アリフで親切な人からもらった宝石などを換金したっきりで、それ以降は特に収入もなく支出ばかりがあったのだから、寧ろよくここまで保たせたと自身の倹約ぶりを褒めちぎりたいくらいだ。
そんなことを考えながら、チャカの頭を撫でる。

「あれ?これもしかして私のせいです?」

「さて、どうでしょうね」

今までに何を買ったのか思い出していたのだろう。先の言葉を呟いたウィンディは冷や汗を掻いていた。

「どどどうしましょう私お金持ってないです働き方も知らないですごめんなさい後生ですから身売りだけは勘弁してくださいこんな貧相な身体じゃ変態しか寄りつかないです杖も売らないでくださいつまり私にお金を稼ぐ手段は無いってことですねつまりもう終わりですねはい!!!!!!!」

はいじゃないが。勝手にヒートアップして結論付けたぐるぐるお目目なウィンディちゃんに、リヒトは呆れながら手刀を振り下ろす。
額からぺち、という音が鳴る。相変わらずウィンディは目を回しながらあうあう言っていた。

「幸い、ここ緋桜郷は人も金も集まる場所だ。俺らでもやれる仕事はある。なんなら俺向けの仕事は絶対に仰山ある。そういうもんだ。ってわけで、君が身体を張って稼ぐ必要はたぶんないんじゃないかな」

そう告げるリヒトの言葉は言外に、荒事に首を突っ込む気満々であることを示していた。
残念ながらそこに気付けるほどウィンディは物騒な思考はしておらず、リヒトさんのえっちと的外れにも程がある返答が返ってきた。

何をするかを↓1にどうぞ。

じゃあ仕事を求めて冒険者ギルドへ

そんな困ったウィンディちゃんを連れ、冒険者ギルドを訪ねる。
気のせいだろうか。ここまで大きな街に設置されているギルドなのに人が全然いない。
魔物退治なりキャラバン隊の護衛なりで人手が欲しいはずなのだが。

「冒険者ギルドにようこそー。依頼を受ける場合はそちらの掲示板で内容を確認するか、受付に直接お願いしまーす」

と、案内を受けて掲示板に目を通す。人が全然いない理由が解った。

「…しょっぺえー」

依頼内容がしょぼかった。それはもう目も当てられないくらいにしょぼい。
期待していたような高給与の依頼などは一切無く、建物の修繕や商店、茶店などのヘルプ募集といった雑用がほぼ全てである。
申し訳程度にある討伐依頼も、八番街に巣を作った人喰いネズミの処理といった簡単なものしかない。

ダンジョンで救援を求めてる人でもいないかな、と救援依頼もチェックするがそんな人はいなかった。そもそも誰も挑戦していない。

何故こんなことになっているのか。天下の冒険者ギルドがこんな体たらくでいいのか。
ちょっと桜花衆の頭領にクレームでも入れようかと思ったが、そこで一つの推論に思い至った。
ここ緋桜郷は享楽の郷。ある人は娯楽を求めて。ある人は疲れた心身を癒やしに。つまりは慰安のために訪れる郷だ。
なのに何故大変な思いをする必要があるのか、という話だ。遊びに来たのに命を懸けることはない。

それに、緋桜郷は彼岸花 紅華が、桜花衆が統治している郷だ。自国の優先して解決すべき問題は、なるべく自力で解決しようとするはずだ。
桜花衆が処理するまでもない事案、または冒険者ギルドに委託しても良い事案のみが依頼として掲示されているのだろう。
よほど切羽詰まった事態でもなければ、冒険者ギルドに助力を乞うこともない。
それ以前にそんな事態が頻発していたら、とっくにこの郷の統治は破綻している。

以上の理由から、大したことない依頼しか掲示されていないのだと思われる。
なら仕方ない。クレームは取り下げよう。寛大な心を持つリヒトは冒険者ギルドを赦すことにした。

暇そうに談笑している職員を見るに、これが平常運転のようだ。平和でなによりだと、リヒトは小さく笑う。
そんなリヒトをよそにウィンディは図書館のアルバイト募集を受けようとしていた。
楽な方ばかり選んじゃダメよ、とその依頼を取り下げる。

杖で強めに叩かれた。

何をするかを↓1にどうぞ。


A:簡単な依頼を受ける。誰がどんな内容のものを受けるかを例を参考に記載してください。戦闘系は無いです。
B:八番街の人喰いネズミ退治を受ける。
C:天守閣へ。
D:その他。自由安価。




リヒト 回復薬の販売員
ウィンディ 食堂の一日看板娘

B

その後リヒトらが引き受けたのは、人喰いネズミの退治依頼。
人喰いネズミは人里にもよく出没する低級の魔物で、新米冒険者が経験を積むための練習台としても有名だ。
しかし、腐っても魔物。いくら低級といえども民間人を殺めるだけの力はあり、『人喰い』と付くだけあって人肉を好んで食す。
下水道などから侵入した人喰いネズミが巣を作り、子供が被害に遭うのはままあることであり、割と頻繁に冒険者ギルドではネズミ退治の依頼が出ている。

今回の依頼場所は八番街の水路。汚水が流れているわけではなく、緋桜郷全体に温泉を通すために張り巡らされた水路にどこからか入り込んだ人喰いネズミが巣食ってしまったらしい。
ギルドに流されたということは火急の要件ではない。もし被害者が続出していたら彼らが既に対応しているはずだ。
おそらく、周辺の地域にはネズミの巣に近づかないよう警告されているのだろう。それでも近づく命知らずの末路はお察しである。

「怖い~…やだ~…戦いたくないですぅ~………」

「そう言うんじゃないよ」

イヤイヤ期に入って駄々をこねるウィンディの背中を押し前進する。道ゆく人の視線がとても痛い。

「ママー。あれなにー?」

「しっ。見ちゃいけませんよ」

邪険に扱われるのはとても辛いものだとリヒトは心中で涙を流す。何故こんな扱いをされにゃならんのだ。
愚痴を溢したくなるが今は我慢である。今はネズミを駆除して、近隣の安全を確保するのが優先だ。

「おうちかえる~!いたいのやーだー!!!」

遂に幼児退行してしまったウィンディに痺れを切らし、リヒトはネズミの巣まで最短経路で突っ切る。八番街に少女の悲鳴がこだました。

人喰いネズミにどんな対処をするかを↓1にどうぞ。


人喰いネズミ

体長50cm程度のネズミ。肉食で特に人肉を好む。
不潔で臭い嫌な魔物であり、人喰いネズミの巣は汚すぎて誰も近寄らない。
戦法は集団でただ噛み付くだけ。知性の欠片もないが、数の暴力でゴリ押ししようとする。
魔物だがネズミの生態に近いので、放っておくと指数関数的に数が増える。
こいつの肉は何があっても食ったらダメ。

ウィンディに経験を積ませる意味も込めて囮にする
そして集まってきたところを一気に叩く

人喰いネズミ駆除 判定↓1コンマ


01~10:ウィンディ穀潰しの巻
11~40:ウィンディなんとか最低限は頑張るの巻
41~80:ウィンディ及第点の巻
81~99:ウィンディ花丸の巻
00:???

レムカーナにおけるスラム街である八番街。その中にある水路。そこには、薄汚れた獣が群れを成し、巣を作っていた。
汚物に塗れたそれはとても酷い悪臭を放ち、もはや物好き以外は誰も近寄らない禁足地となってしまっている。
そんなところに腐肉が転がっているのは何故なのか。誰も詮索しないししたがらない。
触らぬものには祟りなし。誰も好き好んで、嫌なものに関わりたくはないだろう。それで死んでしまっては、元も子もないのだから。

目的地が眼前に迫り、リヒトは顔を顰める。ウィンディは水路に向けてキラキラを放出した。
乙女への配慮として、その瞬間は見ないであげている。気を配るだけの余裕があることの証左でもあった。

「…臭い。これはちとキツいな」

「でっだい゛じま゛じょう゛ごの゛ま゛ま゛じゃじに゛ま゛ず」

「撤退は許可できん。あいつらは俺たちを獲物として見定めたからな。これで逃げたらこの薄汚いネズミが世に放たれるぞ」

泣き言を宣うウィンディを制し、視線を前に向けさせる。ギラリと光った無数の眼光が二人(と二匹と一機)を射抜いた。
チャカの優れた嗅覚にクリティカルヒットしたのだろう。完全にダウンしてしまっており、ハリゴーディンが抱っこしているのだがうんともすんとも言わない。
役に立つのはリヒトとウィンディだけだ。リヒト一人さえいればそれで充分なのだが。

とはいえ、こんな簡単な依頼を引き受けた理由は一つ。ウィンディに多少強引にでも経験を積ませるためだ。
イヤイヤ言ってばかりのウィンディに少しでも成功体験を積ませれば、自信を持ってくれるかもしれない。
この世界で生きるのであれば、戦わなければならない時はいずれやってくるのだ。たとえそれが、本人が厭う戦いだとしても。
その時にこの経験は役に立ってくれるはずだと、リヒトは大真面目に考えている。
戦いに摩耗したリヒトの精神は、どうしようもないほどに歪んでいた。

人喰いネズミの脅威度ははっきり言って低い。なりたてホヤホヤの新米冒険者でも、四人集まれば二十匹前後はやっつけられる。
回復薬などの入念な準備をしていたら、という但し書きが付くがまあ、才能のあるウィンディなら本気になれば五十は軽く殺せるだろう。リヒトの場合は言うまでもない。
そんな人喰いネズミの数は約四十前後。比較的大規模な群れになっているようだ。あと数日対処が遅れていたらどうなっていたのやら。
そんなことを考え、ウィンディの肩を叩く。あとは任せた、とキラリと光った笑顔とサムズアップを添えて。

「えっ?」

何事もぶっつけ本番あるのみ。リヒトはそう言って、ウィンディから距離を取る。
離れていくリヒトからネズミの巣に視線を向けると。

「ぴいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!?!?!!!」

腹を空かせた人喰いネズミの大行列が、ご飯(ウィンディ)目掛けて突撃していた。

ウィンディの初体験が今、始まる。

これで今日は終わりです。


まあいざって時に身を守れないと実際ヤバい世界観だしね

おつー

幽者の思いつきにより突如始まったスパルタトレーニング(ネズミ駆除大作戦)。
その参加者にして被害者の少女は、この状況にどう立ち向かうか。
幽者は後方にて高みの見物(物理)を決め込んでいるが、限界だと感じたらすぐに魔法をぶっ放すつもりでいる。
まあ、危なくなったらすぐお助け、と今後もしていたらやがて甘えが生まれて成長が見込めなくなるので、初回サービスみたいなものである。
つまり、今回だけは早めに助けるが今後はどうするか全く考えていないのである。行き当たりばったりにも程があった。

さて、ヒャッハァ!新鮮な餌だァ!と言わんばかりに押し寄せてくる人喰いネズミに対し、ウィンディが取った策は。

「風穿(エアロレイト)ッ!!!」

お得意の風魔法を使った迎撃戦法である。思い切りの良さは評価点だが、その戦法を使うには相手の物量が多すぎた。

練り上げられた魔力が風の矢となり、肉を穿ち骨を断つ。ベキ、グチ、と嫌な音が鳴る。
先頭を突っ走っていた一番槍に魔法が直撃。螺旋を描く空気の刃が全身を断裁し、肉と血を周囲にぶち撒けた。

しかし、それだけではネズミの侵攻は止まらない。たかが一匹仲間が死んだところで止まるわけがない。
今の彼らには獲物しか見えていない。今の彼らには腹を満たそうとする欲望しか存在しない。
仲間一匹が死んだからといって、何故躊躇う必要がある。どうせいくらでも産み落とす命。先行投資と思えば安いものだ。

「とは思ってねえか。所詮ネズミだ。ただ本能に突き動かされてるだけだろうな」

空中からウィンディの奮闘を俯瞰するリヒトは、そう溢して目を細める。
誰かに見られている。敵意の無い視線が全身に突き刺さっていた。
その大半は興味本位のものだ。おそらく周辺地域に住んでいる子供が、空に浮かんでいる自分をへんなのがいる!という感じで見ているのだろう。

だが一つ。たった一つだけ、全く毛色の異なる視線が混じっていた。
視線の大元に顔を向ける。遠く離れた家屋の屋根に、年若い青年が立っていた。この郷屈指のイケメン美人ロリボーイ珠樹くんである。
軽く会釈してみると、こちらに認識されたことに驚いたのか少しの間呆気に取られた表情をしていたが、すぐに表情を戻し、綺麗な敬礼を見せてくれた。

仕事熱心で熱意のある若者だと感心する。おそらく彼は、リヒトたちが依頼を受けたことを知り、各所の水門を閉じていたのだろう。
その仕事が終わったから、進捗確認や実力調査も含めて様子見しているのだと思われる。
水路脇で戦闘する以上、ネズミの死骸や血液が水路に混入するのは半ば確定している。
実際、派手にぶち撒けられたネズミの肉と血が水路を流れる温泉に現在進行形で混入している最中である。
なんなら少し前にウィンディが放出したキラキラが温泉に溶け込んでいるわけで。
こんなものが店の温泉に使われたら大惨事どころではない。この世の終わり、地獄の始まりである。
自分だったらそんな温泉に死んでも浸かりたくない。

そんな益体もないことを考えつつ、再度ウィンディに目を向けた。

同胞が一匹天に召したのを無視して、今日のご飯に向けて行軍する人喰いネズミたち。
それに対処すべく、ウィンディは次の魔法の準備を始める。

(私の考案した理論の検証用の魔法だからそんなに効果ないよね解ってましたー…!っていうか人とかに向けて撃ったことなかったから分からなかったけどエグい音出たしあのおっきなネズミがワンパンで死んじゃったしこれ絶対人に向けて撃っていいやつじゃない!!!)

つまり人に向けてはいけない魔法をボコスカ放つであろうリヒトには人の心が無い。
なんならこんな状況に有無を言わさずぶち込んでいる時点でド畜生であった。後でかの邪智暴虐の幽者を呪わねば。ウィンディは決意した。

構えた杖に魔力が集い、大気を震わせる。威力は下がってしまうが詠唱は省略し、魔法の行使だけを最優先とする。

「大嵐流(タービュストローム)!!!!!」

刹那、幾重にも重なった乱気流が、ウィンディの前方に発生した。
周辺への影響を防ぐために範囲は通路ギリギリに抑えているがその分、極小の乱気流を大量に発生させることで威力を補っている。
詠唱省略による威力の減衰は多少なりとも抑えられただろう。

先程の風穿とは比べ物にならない威力の暴力がネズミを襲う。一度乱気流の壁に入ったが最期、全方位から迫り来る風の刃によって細切れにされていった。
しかし、それでも突撃をやめないやめられない。
力押しのごり押ししか能の無いネズミには、どんな障壁が立ち塞がろうと齧り付いて突き破ることしかできないのだ。

二十匹ほど仕留めた頃だろうか。風の威力が弱まり、遂にネズミが乱気流の壁を突き破る。
先に殉職したネズミの死骸が障害となり、空気の流れが弱まったのだ。彼らの死は無駄ではなかった。天国のネズミも喜んでいるだろう。

「お疲れさん。初陣でこれだけやれりゃ充分だよ」

障害を乗り越え、ネズミが獲物に喰らい付こうとしたまさにその時。
瞬きの間にウィンディの前方に移動した幽者は、右腕を突き出した。

「天喰らう白狼は遍く御魂を楽土に導く」

微かに耳に聞こえる魔法の詠唱。その優しい声色とは裏腹に研ぎ澄まされる魔力はあまりに冷たく。

「踊れ。天狼星(シリウス)」

産み落とされた白い狼は、真の捕食者がどちらか。哀れな生贄に現実を思い知らせた。

同刻。牡丹雪にて。

「本日はお越しいただきありがとうございました。またお客様が牡丹雪を訪ねられる日を、心よりお待ちしております」

客を見送り、息を吐く。雫が注いでくれたお茶を飲み、また息を漏らした。

「どったの女将さん。頭領の愚痴を聴きすぎて疲れちゃった?」

「紅ちゃんの愚痴は聴き慣れてるさ。この溜め息はそれとは別件だよ」

「…やっぱ、アレの件かな?」

コクリ、とお雪は頷く。何かを案じているように目は細まっており、表情は芳しくない。

「…まー、腹立つよね。わたしがあの店に入った時、はらわたが煮えくり返ったもん」

普段の明るい表情を隠し、冷徹な目を入り口に向ける。戸は閉められているので、客に見られる心配はない。

「霧香たちが先手を打ってくれたおかげで、奴らが逃げる前に店を取り潰すことができた。…他所からやってきた時点で探りを入れておくべきだったね」

「たらればを言ってもしょうがないよ。あの子たちの安全を確保できただけ良しとしましょ」

「…もう手遅れかもしれないけどね」

手元の書類に一瞬視線を移し、引き出しに戻す。物憂げな表情をした女性の絵が、名前の横に描かれていた。

「…毎度のことだけど、霧香には頭が上がらないよ。こんな役回りばかり任せて申し訳ない」

「んーにゃ。わたしは気にしてないよ。もう慣れたし、辞める気はないから」

「…ごめんね」

絞り出すようなお雪の謝罪に、霧香は気まずそうに腕を組む。柔らかい双丘が形を変え腕を包んだ。

万難を喰らい空へと還る白狼。後に残ったのは血痕だけだった。
こっそり左手に持っていた聖剣も虚空へ戻す。やはりこれがあるのと無いのでは魔法の性能が段違いである。

「………」

ウィンディの方を振り返ってみると、ものすごく不機嫌そうな顔をしていた。私怒ってます。プンプンです。とか言いそうだ。

「ずるです。魔法の勉強してないのにそんな魔法使えるのはどう考えてもずるですよ」

「んなこと言われても。理論とか全然分からないからフィーリングになるが使いたいなら教えるけど?」

「常識的に考えて私が光魔法を使えるわけないですよ。光と闇は希少なんですからね」

「そうなの?メリちゃん最かわ教の化け物どもはポンポン撃ってきてたが」

「それはそのメリちゃん最かわ教の人たちがおかしいだけです」

「そう言われると否定できんな。あいつら揃いも揃って英雄級だったしな…」

当時死闘を演じた猛者を追憶する。
一対一(サシ)で戦り合って辛うじて勝てるかどうかの相手が何人もいたのに、よくメリオゴストーグに一撃入れられたものだと当時の自分を手放しで褒め称えたい。
というか何故攻撃できたのか本当に解らない。同じことをもう一度やれと言われたら即座に首を斬るくらいには無理難題だった。

まあ、何はともあれ戦争は終わったし、今回の依頼も解決した。終わりよければ全てよし。
それでいいではないか、と投げやりになる。
戦うのは二度とごめんです。そんな怨嗟と実感の籠った嘆きが耳に聞こえたが気のせいだろう。

何をするかを↓1にどうぞ。
行動時間はだいたいお昼時くらいの時間帯で、報酬金は自動で受け取ります。安い依頼なのでまだ贅沢はできません。

天守閣へ行ってみよう

「そこの旅行者、止まれーい!」

リヒトたちは天守閣の正門付近に来たところで足止めを食らう。まあそうなるだろうな、とは思っていたので、そこまで問題ではない。

しかし、相も変わらず荘厳な佇まいだと素直に感心する。ここまでの規模の城を建てるには、並大抵の時間と費用、労力を費やしただろうに。

目の前の現実から逃げ出していたら、足止めをしていた衛兵に詰問される。やれ旅行者が何の用だの招待も受けてないのに来ちゃダメだぞだのやかましい。
そんなマジレスや正論を聴くつもりはない。金だ。金がとにかく欲しいのだ。
だから仕事をくれ。くれないのならこっちから仕事を受けに行く。と抗議しようと思ったところで。

「どうした見張り番。そんなぎゃいぎゃい騒いでよ」

「ら、嵐月様!?」

男性が急に正門を開けて出てきた。着物を着ているのだが胸元はおっ広げられていて、素肌が丸出しで危険が危ない。ポロリしないか誠に心配である。
嵐月と呼ばれた男性は一瞬目を丸くし、ニヤリと笑った。

「誰かと思えば勇者様じゃねえか。あんたの武勇、俺も何度か耳にしたよ」

「勇者…?はっ!?つまり彼は、頭領に数日前に歓待を受けたあの…?」

「そういうことだ。そういや、お前はその時非番だったっけな。顔を知らないのも無理はないか」

「と、とんだご無礼を失礼しましたぁっ!!!」

「そんなビビられるとこっちが困るんだが」

もしや、魔族と見るや即攻撃するような蛮族に思われているのだろうか。
だとするならば抗議も辞さない。裁判に持ち込んで勝訴させてもらおう。
そんな意図を込めて視線を飛ばすと、露骨に怯えられた。

何故だか申し訳なくなった。

そんなこんなで天守閣の訪問は許可され、現在は嵐月の同行を受けながら天守閣内を歩いていた。

「案内感謝するよ。前にここに来た時は彼岸花さんのとこまで直行したからな、どこに何があるのかさっぱりなんだ」

「これくらい些事に過ぎん。感謝されても困るってもんだ」

雑談を交わす男連中の後を追い、ウィンディとハリゴーディンは進む。
ワイルドなイケメンの鬼さんでした。のちにウィンディは嵐月のことをそう語ったという。

「桜花衆用の依頼はここで受け付けてる。まあ、お前なら仕事しても問題ないだろ。頭にも俺から口添えしとくわ」

「どうも」

実力だけは買われているのか、特に文句は言われなかった。それだけ忙しいということもあるのだろうが、助かっているので何も言わないでおく。

「俺はこれから飲みに行くんでお別れだ。もし機会があれば、お手合わせ願うよ」

「…機会があれば、な」

カラ、コロ、と下駄を鳴らし嵐月は去っていく。
その足取りは悠然としていて、しかし荒々しかった。

何をするかを↓1にどうぞ。


A:盗賊殲滅の依頼を受ける。異常な強さの魔族がいるとの報告あり。
B:ドクロサムライ討伐の依頼を受ける。
C:大量発生した魔物の殲滅依頼を受ける。難易度はコンマで後ほど判定。
D:やっぱりやめる。
E:その他。自由安価。

C

魔物の強さ 判定↓1コンマ


01~10:ブチギレイナズマミケネコの群れ。報酬金いっぱい。
11~80:何故かやってきたアークミノタウロス先輩たち。報酬金そこそこ。
81~99:シラヌイドリの大群。報酬金安め。
00:ヌ・レオン降臨

では本日はここまでです。↓1にウィンディやハリゴーディンたちを同行させるか記載してください。

させない

おつおつ
リベンジと行こう

「さて、どんな依頼があるのかなっと」

受付嬢に会釈して、依頼リストを確認させてもらう。掲示板方式ではないのはギルドはないからなのかもしれない。

候補は主に三つ。一つ目はどこの街でもターゲットに挙げられる傍迷惑な存在である盗賊の殲滅。
どうやら今回の盗賊団はそんじょそこらのものとは格が違うようだ。
緋桜郷へ向かうキャラバン隊を二つ、緋桜郷から出発したキャラバン隊を一つ壊滅させ、討伐部隊を二度も撃退しているとの報告が上がっている。
それでいて盗賊団の規模が小さいため現在の所在もおおよそでしか分からない、ともはやお手上げ状態とも言える。
大規模な盗賊団であれば、拠点も相応の規模を必要とするので強襲作戦などの策を取れたのだろうが。

二つ目はドクロサムライの討伐。亡霊と成り果てた将軍が、罪なき人々を手に掛ける。
そのような悲劇を終わらせたいのだろう。依頼としてリストに載っているのはそういうことだ。
とはいえ、かなり腕が立つ魔物であることも事実。生半可な強さでは返り討ちに遭う上、生息地にさえ近づかなければ脅威たりえないので後回しにされているようだ。
その間一人寂しく歌っているドクロサムライ将軍がかわいそうでならない。

三つ目はどこからともなく現れたアークミノタウロスの大群の撃滅である。
どこまで行っても邪魔してくるのか、とリヒトは苦い顔をした。
この中で一番優先すべきなのはこの依頼だろう。
盗賊は今のところキャラバンを襲っているだけだし、ドクロサムライは近づかなければセーフである。
しかし、このミノタウロス軍団は違う。こいつらは人肉の味を知った途端にアグレッシブになる。
依頼が出ている以上、世界各地から人の集うここ緋桜郷を狙って侵攻していると見て間違いない。
放っておいても桜花衆が死に物狂いで防衛に当たるだろうが、先手を打っておいて損はないはずだ。

そして、蓮武との模擬戦を経て痛感した。自分はどうしようもないほどに鈍っていると。
根本的な実力差があったのでその時は誤魔化せたが、今冷静に思い返すとちょっと真面目に笑えないレベルでひどい動きをしていた。
身体も、太刀筋も、判断も、感覚も。その全てが衰えていた。
戦争が終わってからは全力を出す機会が無くなったので当然のことではあるのだが、鈍ったことを実感したのなら放置するつもりはない。

戦争が終わり、聖女を喪い、過去を否定され、その果てに貪った怠惰な生活の代償がシルヴィアとの死別。
主因ではなくとも、遠因ではあるのは確定的に明らかだ。
冥光に頼った途端に、アークミノタウロスを跡形も無く消し去った事実が何よりの証拠である。
あの時、当時の二割ほどの輝きを取り戻していたなら、苦戦することもなかったはずだ。

「…リベンジ戦といかせてもらうか」

一線から退き、ぬるま湯に浸かっていたが故に鈍った身体を鍛え直すため。そして何より冥光に頼らず過去を越えるため。
リヒトは一人、過去(トラウマ)と戦うことを決意した。

太陽が沈み、月が顔を見せる。風が吹く夜の草原の中にただ一人、幽者が座していた。

「…ついて来なくていいと言ったはずだがな」

「しるう゛ぃあはいつもりひとのそばにいた。…わたしはしるう゛ぃあにたすけられた」

「だから、わたしもいっしょにいる。それだけ」

リヒトの肩に座り、淡々と喋るマナ。いつになく雄弁であり、いつもより距離が近い。
具体的には、身体一つ分近づいている。いつもは肩幅ギリギリに座っているのだが、今は耳元に寄り添っていた。

「…殺し合うのを観ても、面白くないぞ?」

きにしない、とマナは告げ、首元に手を添える。力が漲った気がした。

「気持ちはありがたいが今回だけは手助け干渉一切無用、だ。俺一人の力で終わらせなきゃ、意味がない」

「…うん…」

躊躇いつつも、マナは手を離す。そして、定位置であるフードに潜り込んだ。
リヒトは瞑目し、暗闇の中で微かに煌めく光に身を委ねる。聖剣の輝きが増し、光が溢れ出した。

幾度となく味わった喪失の痛み。その度に心は渇き、今では涙すら流れなくなった。

幾度となく奪ってきた命。満たされる度に心は渇き、次なる贄を求め飢えていた。

この渇きを。飢えを。空っぽの心を満たしてくれるのは戦いだけだ。
幾多の離別と闘争の果てに心身に刻まれた闘争への渇望はもはや宿痾に等しく。
ただただ、戦う時を待ち望んでいた。

地を揺らす地響きが近づいてくる。閉じていた目を開けると、地を埋め尽くす怪物の群れがそこに。
各々が携えた得物は全て異なり同じものは二つとないが、血に染まり錆びついているのは共通している。

それでこそだと心が躍り、口元は歪な弧を描く。弱者を甚振っても意味はない。強者と戦い捩じ伏せることに意味がある。
ただならぬ気迫を纏っているからさぞかし強いのだろう。手に持つ大斧の血錆が、修羅場を潜ってきたことを物語っている。

相手にとって不足はなし。足りないものを敢えて挙げるならば。
絶対的な強者と相対した時に感じる死の予感だけだ。

ふう、と小さく息を吐き、聖剣を空へ掲げる。軽く手首を捻ると、極大の閃光が空に放たれ、夜を照らす。

「…悪いが、あんたらの鏖殺を仰せつかったんでな。ここから先には誰も行かさないし、誰も逃さない」

空へと連なる光の柱が漆黒の天蓋を打ち砕く。数瞬遅れて光が弾け飛び、地表に降り注いだ。
凄まじい衝撃が大地を揺らし、眩い光が戦場を照らす。
夜に咲く緋桜と同等の長大さを誇る無数の光剣が、リヒトたちを囲うようにして突き立てられる。
その根本、柄から上に向けては十字架が伸び、左右に繋がっている。
何も知らぬ者が見たら天変地異かと見紛うほどに大規模の結界が作り出された。
誰一人として逃さないという決意表明であり。部外者の乱入を許さないという拒絶。
言葉を知らずとも理解したのか、アークミノタウロスの間にも剣呑な空気が広がる。

結界を展開した時に、事前に告知しておけばよかったと後悔するも後の祭り。
何か言われた時は、素直に謝罪すればいいだろう。

そんなことを一瞬考えたが何はともあれ。

時は満ち、舞台は整い、役者は揃った。今、過去との訣別の儀を始めよう。

天を劈く怒号と空間を縫う閃光が、戦いの始まりを告げた。

VSアークミノタウロス軍団 判定↓1コンマ


01~05:リヒト負傷
01~15:膠着状態
16~35:半数殲滅
36~70:全滅 ある程度当時の実力を取り戻します
71~99:全滅 当時と遜色ない実力に戻ります

いけ

草原に響き渡るのは剣戟と咆哮。あるいは悲鳴。人ならざるものが発する身の毛のよだつ絶叫は魂を震え上がらせ、怖気を走らせるだろう。
が、今はそんなことなどどうでもいい。煩くて、煩くて、とにかく耳障りで仕方がない。

「ギィッ!?!」

ので、頭を潰して黙らせた。これで少しは静かになるだろう。
温まっていく身体とは裏腹に、思考は冷めていく。命を刈り取る度に、鋭さを取り戻していく。
嗚呼、この感覚だ。肉を断ち切るこの感覚が懐かしかった。
久方ぶりの実戦に、魂が奥底から悦び震えている。

風切り音と共に大剣が振り下ろされる。
光魔法で剣を二本作り、交差させて受け止めた。

背後から剛腕が振るう大槌が迫る。
左方から剛腕が振るう大斧が迫る。
右方から剛腕が振るう大槍が迫る。
空へと飛び、攻撃を回避する。

聖剣に魔力を込めて、斬撃と共に解き放つ。
空間を光の線が縫い、閃きと共に血飛沫が舞う。

何匹殺したのか、数えるのは途中から辞めた。余計な思考は切り捨て、戦闘に必要な情報だけかき集める。

攻勢に出るものがいるなら、どう躱すかを思考する。そして殺す。
守勢に回ったものがいるなら、どう突き崩すのが有効か思考する。そして殺す。
全ての思考が殺害へと繋がり、出力された行動全てが殺害という結果を残す。

血が流れ、命が消え、大地が赫く染まる。その色はまるで鮮やかに咲く緋桜のようで。
怪物と共に剣の舞(ソードダンス)を踊る幽者と聖剣。その姿はまるで雪にはしゃぐ子供と子犬のようで。
惨憺たる光景を生み出しながら、怪物と人間が踊り狂う。

しかし、その演目はすぐに終わりを迎えた。

「…逃げんなよ。一度武器を取ったなら、殺すか死ぬかの二択だろうが」

風に吹かれて飛ぶ枯葉のように、為す術なく命を散らした同胞。
その惨状に耐えかね逃げ出した生き残りを、容赦も慈悲も存在しない銀色の刃が貫いた。

「戦うのを選んだのはお前たちだ。負けたなら潔く死ねよ」

追い詰められたら人も魔物も変わらないな、と心中に溢し、剣を引き抜く。
臓物と血、そして脂に塗れた聖剣が、月光を反射した。

光の結界が崩れ、夜の帳が再び降りる。静寂が戻った草原で、アークミノタウロスの生首回収に勇者は勤しむ。

「あれだけ派手にやったとはいえ、証拠はやっぱ要るからな。原型を留めてるのがいくらかあって助かるよ」

童心に帰ったように明るい表情で後始末をするリヒト。それを無言で見つめるマナ。

「………っ」

手応えに満足気に頷くリヒトの目は、マナが目を背けたくなるほどに綺麗だった。

今日はこれで終わりです。次から牡丹雪での話に変わります。

おつ
戦力的に万々歳のはずなのに手放しでは喜べねえのは気の所為と思いたい


これで伝説級の竜とかにも相対することができるようになったのだろうか
しかし意外と正統にヒロインしてるマナちゃん良いね

山奥に隠された小さな集落。
人が営んでいた頃の面影は影も形もなく、骸が無造作に転がっている。
そして、その亡骸は現在進行形で作られている最中だった。

他でもない、幽者自身の手によって。

首を断ち。心臓を穿ち。胴体を両断し。様々な手段で戮殺する幽者には何の感情もなく、何の感傷もない。
楽しくなければ苦しくもない。嫌でもなければ好きでもない。
幽者からすればそれは、ただ金を稼ぐための手段であり、有り余った時間の浪費先でしかなかった。

作業のように消費される命。断頭台に差し出された頭のように、淀みなく断首が行われ、無為に命が消えていく。
剣を取ろうが、逃げ出そうが変わらない。ただただ無慈悲に。ただただ平等に。死へと導いた。

ある者は武器を捨て跪いた。しかし首を刎ねられる。
ある者は自らの全てを差し出すと言った。しかし首を刎ねられる。
男女問わず。老若問わず。皆、平等に死んでいった。

『なんでもするから…!貴方の好きにしていいから…だから殺さないで…!わたしは、まだ、生きていたいの…!!』

今まで散々殺戮と略奪を楽しんでおいて何を言うのか。呆れながら首を落とした。

『俺たちはまだ子供だぞ!?なんでそんな…平気で殺せるんだよ!?』

武器を取った時点で歳や性別など関係ないだろうに。呆れながら首を落とした。

戦闘が始まる前に警告はしていたのに。一回だけ猶予を与えたというのに。
それを拒み、戦うことを選んだのは貴様たちだと。
ならば、全てが終わった後の処遇は自分に委ねられているのだと。
何度目か知れない溜め息と共に、聖剣を振り下ろした。

『今からお前たちを全員ぶち殺して金に換えるわけだが、俺も鬼じゃない。今から10数える間に投降した奴は殺さないでやる。…誰もいない、か。じゃあもう手遅れだ。命乞いしようが泣き叫ぼうが俺は殺すからな。恨むなら判断を誤った愚鈍な自分を恨め』

と、確かに自分は宣言した。別に怒ってなどいない。
ただ宣言通りに事を進めているだけだ。

勝てる見込みのない戦いに勝てると思い込み譲歩を突っぱねておきながら、蹂躙され始めた途端に救命を嘆願するなど。
虫のいい話ではないだろうか。
そんな自分勝手な輩に差し伸べる手などないと、幽者は最後の生き残りの首に剣を添える。

『や…あ……ぁ………』

身体はガタガタと震え、言葉にならない声を絞り出す少女。
端正な顔は恐怖に歪み、色々な液体を垂れ流していてぐちゃぐちゃになっていた。
綺麗な顔が台無しだと思いながら聖剣を振り抜く。ずるりと首が落ち、血が噴水のように噴き出した。

『降ってくれれば殺さないって…警告しただろうが。なのにそんな、悲しそうな顔するなよ』

『まるで、こっちが悪者みたいじゃないか』

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ふと、過去に一仕事した時のことを思い出した。
今回の虐殺劇が、似たような記憶を勝手に引っ張ってきたのかもしれない。
犠牲者の実力こそ天と地ほどの差があるが、どちらの結末も変わらず。
一人残らず。一匹残らず。その尊くもない命を散らした。

「人のためになることをしても敬遠されるとは難儀なものだね」

アークミノタウロスを余さず滅ぼし、首をかき集め、天守閣に提出した。
プロ根性故か受付嬢は笑顔で応対してくれたが、その笑顔は引き攣っていたし、他の人が自身に向ける視線は化け物に向けるそれと同じだった。

盗賊の首をギルドに提出した時よりはマシな反応ではあったが。
その時は本当にひどかった。
生首を見た受付嬢が全員えずいて白目を剥くわ、子供や女の子の生首を見た冒険者が義憤に駆られて道徳心の欠片もないのか、なんて脳内お花畑なバカ理論を展開された。
もちろん投降勧告はしたし、断った場合は誰一人として例外なく殺すと宣言していた。
その上で首を横に振られたのだから生かしておく理由はない、ときっぱり言い放つと、冒険者は絶句していた。

まあ、冒険者の言い分や気絶してしまった受付嬢らの気持ちは分からないものではなかったが。
彼らは冒険者であって傭兵でも兵士でも断じてない。
そんな彼らが人殺しに忌避感を持っているのは当然のことで。
それ故に、盗賊と相対した時も捕縛で済ませるのがほとんどだ。
だから、老若男女関係なく殺めた自分を冒険者は理解できなかったのだろう。
だから、受付嬢たちも人間の死体を、もっと言うなら人間の首など見ることは滅多になく耐性も付いていないのだろう。

「…まあ、今回は俺の見た目も原因だろうが。ちょっと下手を打ったな」

そんなことを呟くリヒトは、全身血塗れだった。
別に大きなダメージを受けたわけではない。
寧ろ、今回の戦闘では無傷だった。完全勝利というやつである。

全身を赤黒く染める血の正体は、アークミノタウロスを盛大にぶっ殺した時に浴びた返り血である。
それはもうバッタバッタと薙ぎ倒したので浴びた血の量もえらいことになっており、見るも無惨でブラッディな姿になっていた。

そんな状態で街の中を歩くものだから人混みは自分を避けて空洞ができるし、周囲からはヒソヒソ声が聞こえてくる。
そして、そんな状態で牡丹雪に入ったものだから。

「おお…おおおお女将さーん!!!!!ブラッディでスプラッタなことになっている重傷者が来ましたーーーーっっっ!!!!!!静音さんをーーっっ!!!衛生兵ーーーーっっっ!!!!」

と、盛大な勘違いをさせてしまった。

汚れを落とすために風呂を浴び、用意されていた着物に着替える。
私服は現在雫が一生懸命洗っているそうなので、しばらく返ってこないようだ。

慣れない肌触りに顔を顰めながら脱衣所を出る。お雪が自分を待っていたのか、そこに立っていた。

「何があったのかは桜花衆から訊いてるよ。お疲れ様…と言いたいとこだけど。あんな姿を見せたリヒトさんにはお説教だよ」

申し訳ないと頭を下げる。聞き分けが良くてもダメだと、どこからか取り出した扇子で頭を叩かれた。
ぺち、と小さな音が鳴る。痛くなど当然ないし、不愉快でもない。
まあ、子供扱いされてる感が気になると言えば気になるが。

それからというもの、晩御飯が冷めてしまったからリヒトの分だけリンが作り直していること。
あんな格好で帰ってきたものだから子供たちが怯えて心配していたことをこんこんとお説教された。
客は全員寝静まっているようなので、他に人がいなかったのが不幸中の幸いか。

「…と、愚にもつかない説教はここまでにして。お前さんに紹介したい人がいてね。…おいで」

お雪の合図を経て、女湯の扉が開かれる。
もう深夜なので温泉は閉められているのだが、反射的に目を背けた自分は正しかったはずだ。
そんな自己弁護を済ませると、お雪の声が聞こえた。

「彼女たちは本日付けで牡丹雪預かりとなった人たちだよ。ほら、挨拶なさい」

意味がわからない、とリヒトは首を傾げる。
あくまで自分は客人であり、牡丹雪所属の用心棒とかでもないのだ。
新人が入ったからといって、自分に紹介する必要などないだろうに。

そんなリヒトの疑問を無視して、桃色の髪をした女性が口を開いた。

「私は桔梗(キキョウ)と言う者だ。桜花衆の仲介により、牡丹雪で用心棒を務めることになった。貴殿のことはお雪殿より聴いている」

「…何と仰ってました?」

「大層腕の立つ猛者だと。どうやら話通りの辣腕を持つご様子で」

お褒めいただき光栄だ、と返して頬を掻く。
こうも素直に褒められては気恥ずかしいものがあるのだ。
照れているリヒトを見つつ、桔梗は一礼する。
凛とした佇まいが印象的な女性だった。

「…私(わたくし)は瑠璃(ルリ)と申します。先日、籍を置いておりました店舗が店を畳んだので、お雪様の口添えもあって牡丹雪に引き取っていただく運びとなりました」

続いて口を開いたのは、艶やかな黒髪を伸ばした女性。
深窓の令嬢、という評価がピッタリ当てはまるような、美しい女性だった。
濡羽色、というのだろうか。微かに青みがかった黒髪は艶めかしく輝き、見る者全てを魅了させる。
紺色の着物も相まってその黒は主張をさらに強め、ふとした瞬間に夜に溶けて消えてしまいそうな儚さを内包している。
誰もが目を奪われ釘付けになってしまう絶世の美女。それがリヒトの抱いた印象だった。
奇しくもそれは、牡丹雪に務める女性全員に抱く印象であり、牡丹雪の顔面偏差値のインフレをこの上なく示していた。

だがしかし、彼女に抱いた好印象は瑠璃の発した言葉によって粉々に砕け散ることとなる。

「…私は見習い故、夜のお勤めは許されておりません。ですのでどうか、貴方様がよろしければ一晩でいいので抱いていただきませんか?誠心誠意尽くしますのでどうか、ご一考いただければ…」

これはヤバい。とんでもない激ヤバウーマンだとリヒトの勘が告げていた。
彼女の誘いに乗ったが最後、ケツの毛までむしり取られて捨てられる気配を感じる。

「………」

これはいったい全体どういうことだと、お雪に目線で尋ねる。
悲しげな表情で首を振られた。
どういうことか分からないが、厄ネタを抱えていることはなんとなく分かった。

「………?」

不安そうにこちらを見る瑠璃。
ここで無言を貫き通すのは簡単だが、それで彼女がどう出るか不明なので選択肢から除外する。
ならば、取るべき選択肢は一つ。

「コノケンハオモチカエリサセテイタダキマス」

全人類が所有する伝家の宝刀。曖昧な返事によるはぐらかし、問題の先送りである。
困った時は未来の自分がなんとかしてくれる、とリヒトは考えることをやめた。

何をするかを↓1にどうぞ。行動順としては夜食→深夜の行動(今回の行動)→朝の行動となります。
他のキャラクターは全員寝ているので、交流できるのはマナ、桔梗、瑠璃、お雪、リンのいずれかのみとなります。

お雪と交流する

さて、紆余曲折あったが夕食にありつくことができた。
手間暇かけた料理を作り直しさせてしまったのは申し訳なかったが、仕事をしていたなら仕方がない、と許してくれたリンは器が大きい。

食事を済ませて食器を全て洗い終えたリヒトは、お雪の部屋を訪ねていた。

「夜分遅くに何用だい?わしもそろそろ寝たかったんだけどね」

眼鏡を外し印象の変わったお雪がお出迎えする。
寝支度をしていたところを邪魔してしまった形だが、牡丹雪の営業が再開した今、彼女と会話をする機会は限られているのだ。
少しくらい大目に見てほしい、と詫びを入れる。

「そういうことならしょうがないねえ」

と、こちらのわがままに微笑で返してくれたお雪。
本当に優しくて頭が上がらない。

お雪と何をするかを↓1にどうぞ。

先ほどの瑠璃の申し出について聞いてみる

座布団の上に座り、お茶請けのせんべいを齧る。甘辛い味付けが口に合った。

「さっきのことについて訊きたいんだが」

単刀直入に話を切り出す。今回は世間話に興じるつもりはないのだ。

「瑠璃さんはさっき、俺に相手してほしいと言っていた。でもその直前には夜のお勤めは許されていない…とも言っていた。どういうことなんだ?」

「…ああ、そういう話か」

目を細めたお雪ははあ、と臓腑の息を吐き出す。
溜め息を吐くと幸せが逃げるらしいが、そこんとこどう思っているのだろうか。

「それはお互い様だよ。お前さんだって溜め息は吐くだろうに」

それを言われると弱い。リヒトは目を逸らし、話題を戻して誤魔化しに入った。

「…彼女は奴隷階級の子でね。数日前までは、違法な店で働かされていたんだよ。違法薬物や異常行為を強要された彼女は、桜花衆の尽力もあって身柄を保護されたわけだけど…。店でどんな扱いをされていたのかは、ご想像にお任せするよ。…ただ、心を壊すには充分すぎる仕打ちを受けたことは、念頭に入れておくれ」

無言で頷き、続きを促す。お雪も首肯で返し、話を続けた。

「桜花衆に救出された瑠璃の処遇についてだが、数度の会議を経て牡丹雪で預かることに決まったんだよ。…あくまで引き取りだから、彼女は未だに奴隷としての身分を捨てれていないがね。それは、彼女を心から愛し、守ってくれる殿方の務めさ。わしの役目ではない」

「引き取った理由は?」

「ここに勤めている間は傷ついた心身の療養に充ててもらいたいのさ。だから、夜のお勤めは禁止しているんだ。…実のところ、瑠璃には見習い期間中のみの措置とは伝えているが彼女が務めを果たす日は来ないよ。たとえ彼女が、殿方と床を同じくするのを望んでいるのだとしても、ね」

「じゃあ、あの申し出は断るべきだな。それを馬鹿正直に言ったらダメかもしれんが」

「そうしてもらえるとありがたい。…が、拒絶し続けてどうなるかは未知数。適度に会話して、お前さんからも瑠璃を気にしてあげてくれると助かるよ」

「俺が?逆にトラウマを刺激したりしないか?」

「彼女が夜伽を頼み込むのは、それしか自身に価値がないと思っているから。それさえできなければ切り捨てられると怯えているからだ。…逆に言えば、身体を重ねている間は自分には生きている価値があると認められ、安心を得られるということでもある。お前さんが乱暴しなければ、大丈夫だと信じているけどね」

人の心は分からないから確証はない、とお雪は悲しげに溢す。

艶やかに咲く桜に照らされる緋桜郷。
強い光が深い影を落とすように、緋桜郷にもまた、深い闇が蠢いている。
皆が笑う陰では泣く人もおり、絶望に心身を苛む人がいるのだと実感する。

奇しくもそれは、過去の自分(勇者と幽者の関係)と似ていた。

お雪と何をするかを↓1にどうぞ。
これで今回の交流は終わりとなります。

一部訂正します。


「桜花衆に救出された瑠璃の処遇についてだが、数度の会議を経て牡丹雪で預かることに決まったんだよ。…あくまで引き取りだから、彼女は未だに奴隷としての身分を捨てれていないがね。それは、彼女を心から愛し、守ってくれる殿方の務めさ。わしの役目ではない」

「引き取った理由は?」

「ここに勤めている間は傷ついた心身の療養に充ててもらいたいのさ。だから、夜のお勤めは禁止しているんだ。…実のところ、瑠璃には見習い期間中のみの措置とは伝えているが彼女が務めを果たす日は来ないよ。たとえ彼女が、殿方と床を同じくするのを望んでいるのだとしても、ね」

「じゃあ、あの申し出は断るべきだな。それを馬鹿正直に言ったらダメかもしれんが」

「そうしてもらえるとありがたい。…が、拒絶し続けてどうなるかは未知数。適度に会話して、お前さんからも瑠璃を気にしてあげてくれると助かるよ」

「俺が?逆にトラウマを刺激したりしないか?」

「彼女が夜伽を頼み込むのは、それしか自身に価値がないと思っているから。それさえできなければ切り捨てられると怯えているからだ。…逆に言えば、身体を重ねている間は自分には生きている価値があると認められ、安心を得られるということでもある。それに、客相手にするのとお前さん相手にするのでは勝手が違うんだよ。普通の客は遊女の心境など知ったこっちゃないが、お前さんは瑠璃のことを今知った。つまり、彼女を慮った言葉を投げかけられるわけだ」

それで解決するかは分からないけれど、とお雪は悲しげに溢す。

艶やかに咲く桜に照らされる緋桜郷。
強い光が深い影を落とすように、緋桜郷にもまた、深い闇が蠢いている。
皆が笑う陰では泣く人もおり、絶望に心身を苛む人がいるのだと実感する。

奇しくもそれは、過去の自分(勇者と幽者の関係)と似ていた。

改めて諸々の礼を言う

バリボリと皿に乗っていたせんべいを食べ終える。
わしのお気に入りが…というお雪の小さな嘆きが聞こえた気がするが気のせいだと思われる。

面と面で向かい合う機会はこれからもあるだろう。お互いに息災ならば、きっと。
だが、それでも。言葉にしなければならない、と気を引き締め、口を開く。

「貴女には感謝している。緋桜郷のことなど右も左も解らない俺たちを、文句一つ言わずに迎え入れてくれて。本当に助かった。ありがとうございます」

万感の想いを込めた言葉をぶつけ、頭を下げる。
彼女には、牡丹雪には世話になりっぱなしだ。
寝床を用意してくれて。食事も作ってくれて。
ともすれば、ヒモ扱いされているのではないかと懸念を抱いたことも二度や三度ではない。
実際そうじゃろと言われたらぐうの音も出ないが、とにかく色々と便宜を計ってもらった。
対するお雪の反応は。

「いや、そんな今生の別れみたいな言い方されてもね。まだここには滞在するんだろう?」

微妙だった。

「…確かに、まだしばらくは滞在するとは思う。だが、こんなご時世だ。いつどこで誰がどう死ぬか分からない。感謝の言葉ってのは後回しにするほど言いにくくなるし、その時お互いに生きてる保証も無い」

あの時言っておけば良かった。そう後悔しないために。
あの時言っておけば良かった。そう後悔してきたから。
だから、敢えてこのタイミングで伝えたのだ。
何も言えず終わるよりは、ずっとずっとマシだから。

聖女にも。大賢者にも。感謝の言葉は伝えず終いだった。
思いがけない事態に陥り、永遠の別れとなってしまった。
言いたいことがたくさん合ったのに、と思えど、時は既に遅く。

人は簡単に死ぬ。散々思い知らされた事実だ。
怪我をすれば死ぬ。病気に罹れば死ぬ。呪いをかけられたら死ぬ。事故に遭ったら死ぬ。
明日、目が覚めた時にお雪がいない可能性は、決してゼロではないのだ。
リヒトがこの世を去っている可能性もまた同様に。
全ては奇跡の上に成り立っている。
この出逢いも。この日常も。全て。数えきれない奇跡が積み重なり、形になったものだ。

その奇跡が残っているうちに、できることはしておきたかった。

「今まで後悔し続けた。ああすればよかったと何度も悔やんだ。だから、こんなタイミングではあるが、感謝の言葉を述べさせていただいた。…同じ思いをするのは嫌だからな」

縁起でもない、というのも解る。
突然結婚すると言ったり、君と出逢えて良かったと言い出したら、その後は決まって不幸に見舞われるものだ。
今リヒトが告げた言葉もその例に漏れず、何故か不幸を呼び寄せてしまう。

だが。

「俺はまだ死ねない理由が山ほどある。だから絶対に死なないよ。何年後だって、何十年後だってまた、ここの温泉に入りに来るさ。絶対にな」

命を懸けて聖女が与えてくれた祝福(呪い)。
死に際に大賢者が遺してくれた願い(責任)。
戦いの最中で受け取り奪い背負った命(十字架)。

それがある限り、勇者(幽者)は決して死なない(死ねない)のだ。

何をするかを↓1にどうぞ。今回の行動は朝になってます。

緋桜郷の繁栄を神に祈る

緋桜郷の繁栄を神に祈る

新しい朝が来た。活気に溢れる希望の朝だ。
そんな朝にやることいったら一つしかない。

「………」

神様へのお祈りである。

天にまします我らが神よ、どうか緋桜郷に更なる繁栄と安寧が在らんことを。

幽者の曇りなき黙祷は神に捧げられ、神々のご加護を齎すだろう。

それはそれとして、こんな眼を持って産まれさせた神に怨念と憎悪の籠った怨嗟をついでに呪詛として振り撒く。
紅眼を授かったが故に勇者と成ったが、人並みの幸せと愛を受け取れるのならば、こんな力は要らなかった。
この眼が碧眼だったなら。家族に愛されブラウダ家で平和に暮らせていたのに。

勇者を経て幽者と成る。その過程で救われた命がある。金銀財宝にも勝る尊い出逢いがある。
だが、それでも。それらを全て手放すとしても、家族にだけは愛されたかった。

もう家族ではなくなった人たちへの微かな郷愁と共に、リヒトは中指を立てる。

「何が神様だふざけやがって。お前のせいで俺の人生めちゃくちゃだクソがよお!!!!!!」

信仰する神がいない故に為せる蛮行。
狂信者が見たら発狂死ののちに袋叩き待ったなしの無礼を働き、神様の馬鹿野郎!!!!と無言の抗議をここではないどこかへ行った。

何をするかを↓1にどうぞ。

昨晩遅くに夜食の用意や血染め衣類の洗濯等の迷惑をかけたことについて、リンと雫に感謝と謝罪を伝えて菓子折りを贈る

>>855のコンマが偶数なら従業員と交流できるって認識で合ってる?ダメなら安価下でお願いします

>>856、その認識で合っております。
続きは夜からの予定です。

たんおつー

さて、そんなこんなでお祈りを済ませたリヒトは、七番街で買い物をして牡丹雪に戻ってきていた。
子供向けのあまーいスイーツから大人向けのビターなスイーツまで、とりあえず買えるだけ買ってきたのだ。

理由は単純明快。先日のひと騒動で迷惑を掛けてしまった人たちにこれから詫びを入れるのだが、どんなお菓子が好きなのか分からないからだ。
どれが好きか分からないならたくさんお菓子を買って好きなものを選ばせればいいじゃない、と万人が恐れ慄き首を垂れること必至の妙案を思いついてしまった自分の聡明な頭脳が恐ろしい。

今更ではあるが牡丹雪は八階建ての旅館であり、構造は以下のようになっている。

一階は受付兼浴場兼休憩室。
ここには簡素な売店も設置されてるので、お菓子や牛乳を飲みながら休憩室で談笑することもできる。

二階は宿泊客用の食事処。
全席個室仕様であり、家族で仲良く食事をしたり、本人の同意があれば遊女と食事をできたりする。
もちろん費用は全額客持ちである。

三、四階は宿泊層。
各階に客室は五つずつと少ないが、そもそも牡丹雪は高級店なのでそこまで客を取るつもりはなく、現状でも充分採算は取れているらしい。
遊女の接待もここで行われるので、防音処理は完璧らしい。
一度チャカに遠吠えさせてみたが、外の人には何も聞こえなかった。

五、六階は従業員用の階層。
五階は新人や子供用の部屋であり個室は無い。数人程度で共同生活をさせているのだとか。
六階は結衣乃や霧香ら遊女、そしてリンや静音といったベテランの部屋であり、全員個室が与えられている。
従業員も増減するので、必要な時は部屋の間取りを変えたりして対応している。

七階はリヒトが現在宿泊している客人用の階層。
桜花衆の賓客や他国の使節など特定の人物にのみ滞在を許される専用の客室である。

八階はお雪用の客層。
お雪の私室や物置き、書庫や会議室などが設置されており、有事の際にはここで会議をする時もある。

閑話休題。

大量の荷物を抱えて、リヒトは五階の子供部屋を訪ねていた。
どうやら来客の対応も落ち着いたようで、チャカを抱っこした雫が中から出てきた。

「ど、どうしたんですかその荷物!?」

目をぱちくりさせながら驚愕する雫に、先日の件で謝罪しに来たと告げる。
取り繕う必要も畏まる必要もないので率直な物言いになってしまったがまあ別にいいだろう。

「夜も遅かったのに血だらけの服を洗わせてすまなかった」

「え…あ、ああ~!そのことだったんですね!私は全然気にしてないので大丈夫ですよ!」

何故訪問されたのか。その理由を知った雫は強張った表情を氷解させ、明るい笑顔を見せる。

「それよりも、本当に怪我はありませんか?リヒトさんが対応した魔物は、桜花衆のベテランさんでも危険だと耳にしましたが…」

「それは平気だ。一発も喰らわなかったし、だいたいの傷は一日寝たら治る程度にはタフだからね」

聖女様の祝福のおかげでな、と胸中で呟く。
彼女が死んでからは一度も重傷を負っていないが、矢が数本刺さる程度なら数時間で治癒したので相当にえげつない祝福が掛けられているのだと思われる。

ほえー、と感嘆の言葉を漏らす雫の胸元で、チャカがおやつを催促する。
酒のつまみに購入していたナッツ類を齧らせると、嬉しそうに一鳴きした。

続いてリヒトが足を運んだのは六階にあるリンの私室。
一応雫に部屋を訪ねて問題ないか訊いたので大丈夫なはずだが、もしセクハラだと怒られたら土下座しよう。
覚悟を決めたリヒトは、小さく深呼吸してドアをノックする。
しばらく待っても返事はない。

「留守かな…?」

もしかしたら、まだ厨房で料理の仕込みや食器洗いをしているのかもしれない。
入れ違いになっては困るので謝罪の言葉を認めた手紙と菓子折りを部屋の前に置き、厨房へ向かう。

しかし。

「リン?昼ごはんの準備も全部済ませたから夕方まで休憩に入ってるよ。あの人は基本、自室でゆっくりしてるはずだけどね」

とお雪が返答するだけで、リンの姿はどこにもなかった。
気になって部屋に戻ると、置いてあったはずの荷物が無い。

代わりに。

「…ありがとう」

『料理くらいいくらでも作ってあげるから、生きて帰ってきなさいな』とだけ書かれた、リン直筆と思われる紙が、飴玉と一緒に置かれていた。

飴玉はとても甘くて、ほんの少ししょっぱかった。

何をするかを↓1にどうぞ。ウィンディは図書館に勉強しに行ったため交流不可です。
ハリゴーディンとチャカは牡丹雪でお留守番中です。
それ以外は>>724のルールで交流の可否が決まりますが、新人の瑠璃と用心棒の桔梗のみ、無条件で交流可能です。

それと今日の更新は終わりです。


勇者の本の続き読む

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『剣を持たない勇者』

勇者とは何か。この問いにあなたはどう答えますか。
誰よりも強い者?勇気を持って悪に立ち向かう者?
どんな答えを出すかは人それぞれでしょう。私はそれにとやかく言うつもりはありませんし、言える立場じゃありませんからね。

私はこう思います。

平和のために戦う者、と。

殺し合うだけが戦いではないのです。言葉を交わし対話を試みる。心を通わせることもまた、立派な戦いなのです。

私がこれより紹介する勇者の名は『トレボール・ヴェルヌ』。
人類史上最弱と呼ばれる、奇跡を起こした勇者です。

彼が生まれたのは遠い地イザリアの某国。戦乱に呻く惨劇の時代に生を受けました。
中流階級に生まれた彼は、戦争真っ只中の自国を、そして敵国を憂い、平和の道を模索します。
一番手っ取り早いのは敵を全て、綺麗さっぱり滅ぼすことです。敵がいなくなれば平和になりますからね。

だがしかし、彼はとにかく弱かった。武器の腕はへたっぴで痛いことが大っ嫌い。
喧嘩になったらすぐ謝り事を治める、軟弱者と謗られるような人でした。
力など持たない彼にその選択肢はなく、そもそも彼の人間性もあり、徹底抗戦を選ぶつもりはなかったでしょう。

そんな彼は考えました。何故敵国と争うのかを。その原因とは何か。何のために争うのか。
それを知るために、国中を駆け回りました。

原因については割愛しますが、ほんの些細な誤解から、お互いがすれ違ってしまった…とだけ言っておきましょう。

激化する戦争の中で、トレボールもまた、戦い続けました。
貴族と激論を繰り広げ、民衆を先導し、魔王に直談判さえしてしまいます。

その果てに、戦争が終わりました。
対話を経てお互いを理解し、尊重し合う未来が訪れたのです。
戦争が終わるその瞬間まで、トレボールは一度たりとも剣を取ることはありませんでした。

前人未到の偉業を成し遂げたトレボールの功績はイザリア中に語り継がれ、伝説となりました。

故に、人は畏敬を込めてこう呼ぶのです。
奇跡を齎した者。人魔の架け橋。希望に満ちた未来の象徴たる英雄トレボール・ヴェルヌのことを。

『剣を持たない勇者』と。

著:不死鬼 八犬
《これが世界各地の勇者だ!》より抜粋


--------------------

史上最弱の勇者の記録を読み終えたリヒトは本を閉じて瞑目する。

素晴らしい。なんとも感動的な話だ。と、万人が喝采を以って讃えるであろう功績。

だが、そんなものは。

「…俺には眩しすぎるよ」

手を汚して、穢してきた自分にはあまりにも眩しい。
戦うことしか知らなかった。戦うことしかできなかった。
戦い漬けの日々を送っていた自分には永遠に成し遂げることのできない奇跡。
そんなものを見せられても、そうですかすごいですねえらいえらい!としか返せないのだ。

いつ死ぬか分からないこの世界。戦う力があるのと無いのでは、ある方が良いのは確かだ。

だが。

「…一度手を汚してしまえば、もう戻れない。そういう意味では、彼は幸せ者だよ」

数えきれない数の命を奪ってしまった。
戦友との死別を何度も経験してしまった。

その結果、命の価値が曖昧になってしまった。

無論、救える命があるなら救うに越したことはない。
だが、手にかける選択肢があまりに身近なのもまた事実。
それ故に、とりあえず殺しときゃ解決するっしょ、と物騒な選択肢が第一候補に入ってしまう。
そして何より、命の優先度を勘案した際に、自分の命が一番安いと理解してしまった。

奪うことしかできない自分より価値のない人がいるはずはないと。
諦念にも似た確信を抱いたリヒトが、自身を愛せないのは道理と言えよう。

故に、愛を求めるのだ。自分で自分を愛することができないから、他人にそれを求めている。
そんな救えない人間が自分なのだと、幽者は嗤った。

何をするかを↓1にどうぞ。現在は夕方の行動となります。ウィンディは戻ってきました。
牡丹雪のメンツは依然変わりなく>>724のルールで交流の可否が決まりますが、新人の瑠璃と用心棒の桔梗のみ、無条件で交流可能です。

ドクロサムライ討伐

リヒトくんはもっと感謝されるべきだよ…

リヒトくんがこんなことになった原因は戦争とか王様への失望とか聖女死亡とか色々ありますが、根本的には幼少期にひどい目に遭ったからです。
つまり紅眼に産んだ神様が悪い。

光と闇。相反する存在であるこの二つはすこぶる相性が悪い。

不浄を祓う浄化の光。
清浄を穢す汚染の闇。

悪を滅する粛正の光。
正義を腐敗させる堕落の闇。

故に、闇は光を畏れ、光は闇を拒む。
相反し、相克する光闇は決して相容れることなく、反発しあう。

つまり、リヒトが扱う光魔法は闇に汚染された不死種の天敵であり、闇と親しい魔族の天敵でもあった。

リヒトがメリちゃん最かわ教相手に戦争終結まで立ち回れたのは光魔法のおかげと言っても過言ではなく、今の本人の人間性はともかくとして、勇者に向いている存在であったことは確かだ。

だが、リヒトは弾けた。世界に絶望した幽者は存在するはずのない、冥光という異端なる光に触れ、自身の力と変えた。

光と冥光。光と闇の関係と似ているようで、その関係性は全く違う。
堕落しようとも光であることは不変であり、しかし、幽者が心に影を落とした時のみ漏出する絶望と憎悪の残滓。
冥光が強まることは即ち、未来の否定と同意義である。

だが、それでも。どこまで堕ちようとも、光と冥光は幽者の傍に在り続ける。
世界に絶望し堕ちてもなお、人のために在ろうとする。
冥光はそんな幽者を表しているのかもしれない。

さて、夕暮れ時の緋桜郷を発ったリヒトが向かうのは、ドクロサムライが出没するとされる荒れ地である。
理由は一つ。ドクロサムライ討伐の依頼を受けたからであり、未練や怨讐その他諸々に縛られ現世に留まっている哀れな将軍をけちょんけちょんにして天国へ送ってやろう、という気遣いだ。

ドクロサムライは成仏できてハッピー。
桜花衆も問題が一つ解決してハッピー。
キャラバン隊も安心して物資輸送ができてハッピー。
リヒトも懐が潤ってハッピー。

その事実に気づいたリヒトが意気揚々と依頼を引き受けるに至った。
Win-Win-Win-Winの誰も不幸にならない最高の善行だと、本人は公言して憚らない。
それができるのは無駄に腕が立って光魔法を使えるお前だけだと嵐月に褒められた。くるしゅうない。

枯れ草がまばらに生え、独特な形をした大岩がそこかしこから屹立した荒れ地を全力疾走で行くこと数分。

真っ二つに割れた岩の上に、奴がいた。

「----♪」

声帯が無いのに無理矢理声を出しているからなのか。
それとも魂が擦り切れて人語すら話せなくなったのか。

雑音にしか聞こえない歌を歌い、琵琶を鳴らす骸骨の姿がそこにあった。

坐禅を組んだ骸骨の全長は約2.5m。
全身に着込んだ甲冑は激闘に次ぐ激闘と風化によってボロボロであり、兜に至っては角が全て根本から折れている始末である。
六本ある腕のうち二本で琵琶を掻き鳴らし、残りの四本は刃毀れした刀を握りしめている。
そして、両脇には同じ刀が二本地面に突き刺さっており、昏い魔力を纏っていた。

なるほど、これはこれは。
怨念と憎悪の入り混じった不気味な力を感じ取り、幽者はニヤリと笑う。
期待以上の実力を持っていそうだ。アークミノタウロスでリハビリしておいて正解だった。
幽者は虚空より聖剣を取り出し、光魔法を行使。数本の光剣を自身の周りに生成し、狙いを定めた。

「----!!!」

こちらの殺気に当てられたのかピタリ、と演奏を辞めたドクロサムライは、琵琶を投げ捨てて乱暴に剣を引き抜く。
戦う時を待ち侘びていたのだろうか。ドクロサムライは全身を震わせ、顎をガタガタ言わせている。

「…ザ…ジョ…ニ…!!!」

声と認識するのも難しい呻きを上げながら、得物を構える。
対する幽者も、聖剣と光剣を構えた。
郷に入っては郷に従えということで、嵐月より教えてもらった決闘の合図となる言葉を諳んじる。

「いざ、尋常に」

「----!!」

幽者の言葉に応えるように、ドクロサムライの魔力が練り上げられ、紫色の火の玉が生み出された。

VSドクロサムライ 判定↓1コンマ


01~05:死亡判定入りまーす
06~15:リヒト負傷
16~35:膠着状態
36~80:優勢
81~99:来た見た勝った
00:???

本日はこれで終わりです。

さて、今日に至るまで放置されていた、緋桜郷では子供向け絵本に妖怪として登場するドクロサムライはいったいなんなのか。

有り体に言ってしまえば、骸骨兵、一般的にスケルトンと呼ばれる魔物の一種だと学者たちは推測している。
スケルトンはゾンビと並んで不死種の看板を務める二台巨頭だ。
世界各地どこにでもわんさかと湧き、定期的に神父や修道女がげっそりしながら葬送している、誰もが知っている魔物である。

そんなスケルトンとドクロサムライは姿形こそ違えど、共通点が存在している。

血肉が腐り果て骨だけとなった身体。
風雨に晒され劣化し摩耗した装備の数々。

しかし、明確に違う点が一つある。
スケルトンは先述した通り、世界中どこにでも大量に発生する。
だが、ドクロサムライは現在まで放置されている個体以外観測されていない。
つまり、新たに発生したドクロサムライは未だ存在しないのだ。

スケルトン自体様々な亜種が存在するカテゴリーだが、ドクロサムライのようにたった一体しか発生しない、というケースは滅多にない。
ただのスケルトンが夢半ばに散った将軍らの無念を取り込み進化したのか。
それとも、将軍らの魂が成仏できず、ドクロサムライという形で不死種となってしまったのか。
サンプルが一つしかないので、結論が出ていないのが現状である。

だがしかし、先程挙げた共通点からドクロサムライはスケルトンの一種と見做しているし、単体の戦闘力は明らかに格上である。
よって、学者たちはドクロサムライのことを特殊個体(エクストラ)と呼称している。

特殊個体とは、ごく稀に発生する通常種とは別格の戦闘力を持つ個体のことであり、皆一様に、通常種とは隔絶した容姿を持つ。
突然変異だったり度重なる生存競争を経ての自己進化だったりと要因は様々だが、いずれも通常種とは段違いに強いので、観測された時点で周辺地域に緊急通達が出る。
そして、人類に明確な損害を発生させると判断された場合は即座に討伐依頼が発令されるのだ。
確実に討伐できる場合のみ、ではあるが。

そんな怨念に囚われて近寄るもの全てぶった斬るマンと化した激強スケルトンことドクロサムライは現在、最盛期の輝きを取り戻した幽者と死闘を演じていた。
止むことのない剣戟の音と爆発音が、その熾烈さを物語る。

怨嗟の紫炎が火閃となり幽者に迫る。
幽者も光閃を放ち対抗する。
二種の閃光がぶつかり合い、衝撃が周囲を破壊する。
一瞬の拮抗ののちに、白き光が打ち克った。

暴力を内包した光閃が亡者に襲う。
どこにそんな俊敏さがあったのか。軌道を見切った亡者は攻撃を躱し、幽者に接近する。

六本の腕を巧みに操り、疾風の如き猛攻を放つドクロサムライ。
三対の腕による手数で反撃を許さず、巨躯が生み出す破壊力で無数の屍の山を築いてきた。
今回もそうなるはずだったのだが。

「----!?」

六本の腕を以ってしても、手数で負けていた。
たった一人の人間にその全てを見切られ、往なされていた。
その原因は今、身をもって知らされている。

光魔法が肉体を加速させ、猛攻に対抗し得る速度を引き出す。
幽者の乱舞に連動するように舞う光剣は、幽者と流麗な輪舞曲(ワルツ)を踊る。
正確無比にして無慈悲な攻撃は、その全てに即死級の威力が込められている。
その技に憐憫や同情といった感情はなく、ただただ冷たい漆黒の意志だけが存在している。

手数の多さという一つの大きなアドバンテージを完全に覆され、六つ腕の亡者は劣勢に立たされる。

それでも。胸に燃ゆる復讐の灯火だけは消してはならぬと、貴様を殺しその魂を焚べると、執念にも似た強い意志で抗う。

地平線に太陽が沈み、夜が目覚める直前。
激戦の余波で崩壊しかけている荒れ地にて剣を交える二人の戦士。
交錯する光芒。鳴り響く剣戟。その音が、光が全て消えた時。

どちらが立っているのか。それはきっと、すぐに分かる。

VSドクロサムライ 判定↓1コンマ


01~05:死亡判定入りまーす
06~15:リヒト負傷
16~35:膠着状態
36~99:なんで負けたか明日まで考えといてください
00:???

そろそろ00

これは勇者

この人失うものがない時だけ強いな。というわけで終わりです。
ある判定だけ↓1コンマでしておきます。


01~50:なし
51~66:R
67~82:F
83~98:G
99、00:???

なんか来い

おつ。ドロップ判定かな?Rで雷鳴の剣とか

謎の人物によりフェルリティアが崩壊しました。大量の避難民(人口の二割)がイルステッド中に発生します。
というわけで、特殊なイベントも今後発生します。シルヴィア関係のイベントになります。

シルヴィアの遺児 判定↓1コンマ


01~40:一人
41~70:二人
71~90:三人
91~00:四人

多く。

はい

レムカーナ、フェルリティア、ゴルギュリオかな
シルヴィアの遺児はあのホムンクルスやろか

シルヴィアの遺児は彼女が手塩にかけて育てた魔法使いのことになります。
血縁関係はありません。「今まで散々嬲られてきたが、性根の腐った下郎の子など死んでも産みたくないよ」とシルヴィアが言ってます。

シルヴィアの遺児を一人募集します。学生くらいの年齢でお願いします(長命種の場合は、その種族にとって学生になってるくらいの年齢で。必要に応じて調整します)。
また、巡り合う方法については来たキャラ安価からこちらが一人選び、そのキャラの設定からこちらで決めるため、来歴などはシルヴィア失踪まででお願いします。
フェルリティア崩壊後の動向は記載しないでいただくと助かります。それでは今度こそ終わりです。
質問等あれば明日の昼とかに回答できればしたいと思います。

>>891、フェルリティアで出会ったホムンクルスについては、シルヴィアの想定外とだけ言っておきます。
何度か交流すれば(運良くできれば)情報を開示する予定です。

わお、フェルリティア崩壊したんならまたどこかで会えそうね
更新乙でした

【名前】トリチェ=アースラグランジュ
【人種】ヴァンパイア
【性別】♀
【魔法】眠り魔法
金のツインテールに赤い瞳のロリっこ。腰から小さな蝙蝠の羽が生えている。
面白い事、興味ある事をとことんまで追求するために何でもする+したいというかなり逞しい性格
ナチュラル見下しな言動が多いが本人的にはそんな気はない
実家はそこそこ良家で当然ソリが合わず、最後は当主お気に入りの血袋(人間)を逃がした咎で追い出される
シルヴィアに拾われるまでは泥水啜ってきた(直喩)ので血は吸えるときに限界まで吸うタイプ
魔力、智力は並以下だが有り余る想像力をシルヴィア見抜かれ弟子になる
眠り魔法は対象を眠らせ無力化するもの。始めは見つめ合って30分後……というクソザコ具合だったがシルヴィアの指導により相手によるが10秒見るだけで昏倒させることが可能になっている

【名前】シオン・アダマン
【人種】人間
【性別】男
【魔法】錬成魔法
14歳。肩のあたりで切り揃えた青い髪。小柄で華奢な体格。実年齢より幼く見える少女的な顔立ち。
彼の使う錬成魔法とは既存の物質を分解・再構築する(ぶっちゃけハガレ○の錬金術のような)魔法で、この魔法で聖剣でも断ち切れないような合金を作り上げ自分の名前をつけることを夢みている。
普段は臆病ながらも知的好奇心が旺盛で柔軟な発想の持ち主。研究以外には割りと無頓着。
武門の家に生まれたが、戦いに向いてない気質であると判断され勘当された後、一時期町で腐った残飯を魔法で食べられる状態にして食いつないでいたところをシルヴィアに拾われた。
その後、シルヴィアの指導により様々な知識の習得や魔法を熟達させ、シルヴィアに対して恩師として尊敬するとともにほのかな恋心を抱く。
しかし失踪の際に置いていかれたことに複雑な感情を抱いている。

なお、勘当されているため普段は家名を名乗らない。

今日か明日更新予定なのでそれまでが募集と質問回答の期間になります。

【名前】アスラン・コルズ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】模倣魔法(相手の魔法をコピーする魔法)
赤髪短髪。背が低い。13歳の少年。性格は面倒くさがりだがやる時はしっかりやる性格。「面倒くさい」が口癖。模倣魔法は相手の魔法をコピーする魔法でもあって珍しくなおかつ難しかった為、上手く出来なかったがシルヴィアの指導のおかげで使えるようになり、今ではみた魔法はコピー出来るようになった。彼が赤ん坊の時に森に捨てられた時にシルヴィアに拾われ育ててくれた(名前もそこに記されていた)のでシルヴィアの事は、母親のような存在でもあり師匠でもある。シルヴィア失踪の際は、また捨てられたと不安があるけど1人で頑張っている。

【名前】ユーマ・スティングス
【人種】人間
【性別】男
【魔法】虫魔法
年齢12歳、灰色の髪で黒いローブを着た男の子。前髪は長く片目が隠れている。
元々両親がおらず孤児院に拾われて育ったが彼の虫を操るという魔法の特性上、他の子供達からは気持ち悪いと蔑まれ陰湿ないじめを受けるようになる。
そんな生活に耐えかねて孤児院を抜け出すが、今度は珍しい属性の魔法を使う者たちを捕獲して売りさばく奴隷商に捕まってしまい人生に絶望していた所、噂を聞きつけてやってきたシルヴィアによって買われるという形で救われた。
彼にとってシルヴィアは自分の魔法をすごいと言ってくれた唯一の人であり、師匠として、そして一人の女性として憧れを抱いていた。
シルヴィアが失踪した際は何も言わずに去ってしまったため当初は悲しんだが、一方で彼女を快く思わない者たちがいた事も察しており、もし失踪理由が自分の予想通りだとしたら弟子の自分が彼女に変わって復讐を成し遂げるべきだと考えている。
上述のような境遇で育った為、無口でなかなか人を信用しない性格だが、根は心優しい少年である。

質問
光魔法と闇魔法は相反する性質があって他よりも希少とのことですが、他の属性にもそういった特殊な相性があったりしますか?
また、魔法体系や属性体系のようなものがあれば、開示できる範囲で良いので知りたいです

>>900、火→風、植物→土、雷→水→火の順に、ある程度の有利不利が存在しています。
これらを総括して四元魔法と呼びます。
ある程度なので、出力に差があれば簡単に不利相性でも覆せる関係性です。
影魔法と闇魔法、神聖魔法と光魔法では、闇や光の方が根源的な魔法なので性能面では闇や光にどうしても軍配が上がってしまいます。

一般的に需要が大きい魔法ほど才能を持つ人が多くなるので、上記に挙げた四元魔法は必然的に使える人が多くなります。
また、需要が特に大きい(生命に関わるので)治癒魔法や加護魔法(俗に言うバフ)などについては、さらに使える人が多くなります。
需要がある=研究が進んでいるということになりますので、才能が無くても初歩的な魔法が使えるように改良されています。
簡略化されてもなお、体質などで使えない人もいますが。珠樹くんやリヒトくんがいい例です。

呪詛魔法や錬成魔法などは需要があまりないor日常生活に浸透していないため、使い手も少なくなってしまいます。
特に、錬成魔法については俗に言う錬金術として体系化されているので魔法として使う人は滅多にいません。
魔法の方が実験器具が不要だったり錬成範囲が広かったりで便利ではありますが、やはり技術として普及してしまったため今更そんな難しい、利便性の面で淘汰されて逸失した魔法を学んでも…って感じですね。

外的要因などで魔法の性質が変化したり、全く別の魔法を習得したりってのはあり得ます。
リヒトくんが冥光魔法を使えるようになったのも様々な要因が重なったからです。

長文すみません。

>>901
回答ありがとうございます。参考になります

【名前】カーラ
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】炎魔法
赤褐色の髪をセミロング程度に伸ばした少女。年齢は本人にもわからないが十代中頃と思われる
シルヴィアの下に来る前は貧民街のストリートチルドレンだった。独力で覚えた炎魔法を武器に、敵対する同類や自分を利用しようとする大人など、邪魔者は全て焼き払い弱肉強食の世界を生き抜いてきた
シルヴィアにその才能を見出だされて勧誘されるも、一度それを拒否している。その後暴徒鎮圧の名目で再度訪れたシルヴィアに無事鎮圧され、弱肉強食の掟に従いシルヴィアの傘下へ入った
性格は一見荒っぽいが、内面は冷徹なリアリスト。シルヴィア同様に生まれや性別による格差を嫌っているが、自分たち平民以下には上の連中を叩き潰す力がない事実も認識しており、構造上の弱者が強者に服従するのは仕方のないことだとも思っている
しかしその更に根底には激情を秘め、いつか必ずフェルリティアの忌々しい支配構造を破壊してやると密かに企んでいた
シルヴィアに対しての感情は大雑把に言えば尊敬4割反抗6割といったところ。彼女の失踪については、別離の悲しみよりも勝ち逃げされた悔しさの方が大きかった
その失踪に何らかの悪意が関わっていたことは察知しており、失踪後は悔しさを晴らす為にも支配構造破壊の念を強める

夜10時より更新するのでそこまでが期限となります。
集まった安価からこちらで決めます。

紫炎を纏った凶刃と光を纏った聖剣が、帳の降りた荒れ地というキャンバスを彩る。
二色の光が織りなす光景は美しくも、禍々しい。

入れ替わる攻防の最中、闘争本能が警鐘を鳴らす。
それに従い、大岩を盾にして後退した。

ザン、と鈍い音を立て刃が滑る。
両断された大岩は崩れ落ち、切断面は火に炙られたチーズのように、どろりと熔けていた。

この一撃だけは受けたら不味い。そう理解するのに時間は必要ない。
刃が纏っているのは万象を焼き尽くす復讐の業火だ。
光魔法と聖女の加護があっても、紫炎に焼かれては無事では済まないだろう。

そこで、幽者は一つの鬼札を切った。

「マナ。力を貸してくれ」

この戦いは、アークミノタウロスとの戦いとは理由(わけ)が違う。
乗り越えるべき過去(シルヴィアの死)もなければ、意固地になる必要(自力で打ち倒す必要性)もない。
堂々と、遠慮なく、マナの力を受け容れることができるのだ。

先の戦闘では、彼女の意志で力を貸そうとしてくれた。
それをずっと拒み続けるのは失礼だし何より、嬉しかったのだ。
人を否定し続けていた妖精が自分から歩み寄ってくれた。
それだけで、力を借りる理由としては充分すぎる。

それに、戦いとは本来、どんな手を使ってでも勝たねばならないものだ。
勝つためなら卑怯な手段も上等だし、そもそも共に戦う仲間を頼るのは当たり前だ。
当時頼っていた戦友の力が、妖精の力に変わるだけのこと。

であれば、躊躇う必要はどこにある。
一人でできることなどたかが知れている。
だから人は、生き物は皆、手を取り合うのだ。

「----(あなたに、力を)」

脱線した思考が、妖精の祝詞によって引き戻される。
何と言っているのかは理解できないが、何を言っているのかは理解できた。

沸々と全身の血肉が沸き立ち、力が溢れ出す。
それでいて、思考は絶対零度のように冷え切り、まるで凪いだ海のように静かだった。

雑念が消える。無駄が削ぎ落とされる。
研ぎ澄まされた意識は、蓄積された経験と合わさり、もはや未来予知に近しいものになる。

マナの力添えに謝辞で返し聖剣を構える。
亡霊を討たんとする幽者は今、荒れ地を駆ける流星と成った。

何が、起きた。

中空に弾き出されたドクロサムライは、現在の状況を整理することに努める。
復讐心に塗り潰されていた理性が戻り、本能に上書きされていた思考が再開する。

べき、と骨の砕ける音が聞こえる。
二本の腕が根本から断ち切られ、縦横無尽に空を駆け巡る光剣によって細切れにされていく。
夜を照らす光。あるいは闇を祓う光。
そう形容するしかない神聖な輝きが、怨讐に塗れた穢れた肉体を削り取り、浄土へと送還する。

続けざまに、全身が物理法則を無視して上下左右に吹き飛ばされる。
箱に小物を入れて乱暴に振るったように、身体が弾ける。
その度に、腕や足が壊れていく。
その度に、流星が通り過ぎていく。

四肢が全て離断し、胴体と頭部のみが残る。
全方位から加わる衝撃によって身体が回転し、顔が空を見上げた瞬間。
流星の正体が人だということに気づいた。

ああ、なるほど。

貴殿は私たちを解放するために、来てくれたのか。

無辜の民をこれ以上手にかけないように天が遣わした使者が貴殿なのか。

無様に死んでおきながら、成仏することにさえ他者の力を借りるとは情けなくて仕方がない。

腹を切って詫びたい所存だが、あいにくもう拙者には切れる腹がない。本当に申し訳ない。

だがこれでようやく、皆と共に逝ける。貴殿には感謝してもしきれぬ。

ありがとう。意識が途絶える直前に絞り出したこの言葉は、貴殿に届いたのだろうか。

流星が地に墜ち、凄絶な爆発が発生する。
光が収まった頃には、荒れ地にぽっかりと一つの大きなクレーターができていた。

戦闘の終わりを告げる吐息が漏れる。
空を飛び回っていた光剣は幽者の傍らに集い、霧散した。
骨の一欠片も残さず消滅したドクロサムライ。彼は消滅の直前に何を言っていたのだろうか。
口が動いているのは辛うじて分かったが、どのような言葉を紡いでいたのかは一切分からない。
読唇術の類は習得していないのだから当たり前だが。

まあ、いい。なんにせよドクロサムライは成仏した。
邪悪な気配は完全に消え去ったし、しばらく待ってみても地面から骸骨が這い出てきたりとかもしない。

もしまた復活したらその時はもう一度消し飛ばすだけだ。
何回も何回も何回も何回も何回もボコボコにしてしまえば、やがて心が折れてこの世を去ってくれるだろう。

「おつかれさま」

「ん」

労ってくれたマナに感謝を述べる。
やっと、本当の意味で彼女と友好関係を築けたような気がした。

天守閣に報告に向かったリヒトは、門前の広場に数名の男性が磔にされているのを見つけた。
出発前は無かったはずなので、仕事の最中に設置されたようだ。

全員が全員血を垂れ流しており、痛みに身を捩って呻き声を上げていた。

「はいはーい。一発ぶちかましたい人はこの鉈を使ってなー。頭と首を狙うのは御法度やでー」

と、まるでセールス中の売り子のように声掛けをしている狐耳の男性。
軽い雰囲気で人に渡しているのは錆びて刃毀れした鉈だった。
あまりにアンバランスな光景に、さすがのリヒトも言葉を詰まらせる。
こんなのはウィンディみたいな多感な年頃の女の子には見せられない。

「ん、なんや?兄さんもやりたいん?」

ケロッとした表情で問う青年に、リヒトは首を横に振って答える。
彼らが見せしめにされているのは明白なので、あまり関わりたくないというのが本音だ。

だが、そんなことを知ってか知らでか。お構いなしに青年は口を開いた。

「他所から来た兄さんには物騒だったり非人道的に見えるかもしれんけどな。これが緋桜郷…んにゃ、桜花衆の流儀なんよ。『人の道を外れた外道は、如何なる手を使ってでも罪を贖わせろ』ってな」

ということは、彼らは贖罪の真っ最中ということだろうか。
どう見ても反省しているように見えないが。
寧ろ、今後起きることに絶望しているようにしか見えない。

「そりゃそうよ。こいつらは処刑すると上の人が決めたさかいに。悪行の限りを尽くした外道やから、どんなに苦しんだところでこれっぽっちも同情せんがな」

ほら、と青年が指差した先には、腰の曲がった老夫婦が、怨恨の籠った瞳で磔にされた罪人を睨んでいた。

そして、血のついた鉈で。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁああっっっっっ!!!!!!」

力いっぱい斬りかかり、ノコギリで切り落とすようにゆっくりと鉈を引き抜いた。
殺傷力を削ぎ落とされた鉈は腕を切り落とすこと叶わず、鮮血と肉片を散らせる結果に終わる。

だが、これが目的なのだろう。殺すのではなく苦しめる。だから刃を潰しているのだ。
これはあくまで、被害者の溜飲を下げさせるための手段だと、恨みを晴らすための手段だと、その光景から容易に想像できた。

「お前たちのせいで愛華は…私たちの孫は…!!!!」

涙ながらにそう語りつつ、鉈を振るうのを止めない老人の目は怒りに燃えていた。
どのような悲劇があったのか。それは彼らの様子からしか伺えないが、相当に悲惨だったようだ。

「だが、あんなにザクザク斬らせて大丈夫なのか?これが処刑法だって言うなら俺の指摘は的外れのアホだが、そうじゃないだろ?」

「まあ、せやな。だがご安心を。この磔には特殊な術が仕込んであるから、死にさえしなけりゃすぐ傷が治るんよ。でないと皆が恨みをぶつけれんやろ」

惨いことをする。と桜花衆の容赦のなさに若干の戦慄とシンパシーを覚えつつ、リヒトは天守閣へと入る。

「緋桜郷を楽しんでな。英雄さん」

背を向けた瞬間に投げかけられた青年の言葉から逃げるように、後処理を済ませた。

牡丹雪に戻り、夕食を食べて腹を満たす。
戦いの後に食べる飯は格別なのは言うまでもない。それが、達人の振る舞ってくれる料理となればなおさらだ。

「ごっそさん」

三人前の料理を食べ切り、食器を返却する。
部屋で聖剣の手入れをしていると、不意にドアがノックされた。

「どうぞー」

リヒトが声を上げると、ドアがゆっくり開かれる。果たして、来客の正体とは。

「お疲れ様です~」

ぽわぽわしていてぽよぽよしていてとってもきゅーてぃーな美人の鬼娘結衣乃だった。
属性過積載ではあるが、正直他の面々も同じようなものなので気にならない。気にしたら負けとも言う。

しかし、彼女がここを訪ねてくるとは何か頼みでもあるのだろうか。
そこまで親密ではないはずなのだが。

「ちょっとお願いがありましてですね~。こう、ばんざーい、ってしてくれませんか?」

結衣乃はそんなことを言いながら、背筋をピンと伸ばして両腕を上げる。お山がぶるんと揺れた。

特に断る理由もないので、リヒトは了承して両腕を上げる。

すると。

「そぉーれ~!」

結衣乃の口から吐き出されたか細い糸が、リヒトの腕や胴体、腰に絡みつく。
すわ何事かと目を見開くが、結衣乃の表情に敵意や悪意は介在せず。
別に痛いわけでもないので、どうすればいいのか分からないリヒトは困惑していた。
その間も肌に擦れている糸がくすぐったいのが困りものだが。

待つこと数十秒。ほう、と感嘆の息を漏らした結衣乃は両手をパンと叩き、にっこりと笑った。

「ありがとうございました~。これで採寸は終わりましたので楽にしてくださいね~♪」

気がつくと身体に絡みついていた糸は綺麗さっぱりとなくなっていた。
これにて失礼いたします。とだけ言い残した結衣乃は、上機嫌で部屋を出ていく。

何故か死んだ魚のような目をしたウィンディが枕に頭をぶつけている光景を幻視した。
そんなことをしても成長しないのだと心の中で荒ぶるウィンディを諌め、合掌する。

ウィンディが食事の際に飲む牛乳の量が何故か増えていた。

「…以上が伝書に記載されてた内容ですね。これは大変なことになりました」

手紙を折りたたみ、桐箱に仕舞う女性。
銀髪から見え隠れする耳は尖っており、人外の者だとこの上なく示していた。

「どうしましょう?『黒罰の幽者リヒト』を名乗る人物によってフェルリティアは都を覆う結界ごと崩壊して墜落、貴族の半数は殺され、生き残りは住民を見捨てて逃散…その見捨てられた住民も何割かは難民として各地に流出…と割と笑えない事態な気がしますね~」

などと言いながらあはは、と笑う女性は大概図太かった。
それを聴いている鬼の女性も、険しい表情はしていないのでどっこいどっこいといったところか。

「伝書には難民受け入れ申請も同封されてました。人数はざっと見て数百人程度ですかね。まあ、移動手段は馬車か徒歩しか無いので相当な大所帯だと思いますが」

「…そうですね。護衛に騎士団なりが付いているでしょうが、それでも人数は心許ないでしょう。野盗や奴隷商などに襲撃される可能性はあるかと」

「こちらも部隊を派遣しますか?合流するまでの数日でどれだけの損害が出るのかは不明ですが、緋桜郷の面目は保てますよ」

「…分かりました。ではそのように」

指示を受けた女性は、一礼をして部屋を出ていった。
一服した鬼は白煙を吐きつつ、吸い殻を灰皿に落とす。
傍に待機していた男性が、慣れた手つきでそれを処理した。

人の世は変わりゆくものだ。
定期的に訪れる大きな時代のうねり。それに呑み込まれぬように立ち回るのが長の勤め。
でなければ滅ぶだけだ。長いだけの歴史に胡座を掻いていた魔法都は今、その傲慢のツケを払いあっけなくイルステッド最長の歴史に幕を閉じた。

変わる世界に我々が。貴方がどう立ち回るのか。

「どうなるか見ものやねえ、兄さん?」

彼岸花 紅華は妖しく笑い、一献傾いた。

何をするかを↓1にどうぞ。現在の行動は夜です。今回の行動は牡丹雪のキャラ全員と交流可能です。

服依頼したっけ?(描写ないよね)と結衣乃に確認しにいく

採寸されるような依頼などしていないはずなので、真相を探るべくリヒトは結衣乃の部屋を訪問していた。

「鍵は開いてますよ~」

との返事をいただいたので、遠慮なく失礼する。
部屋の中には、針と糸で生地を縫い縫いしている結衣乃の姿があった。

未だ製作段階でまだまだ先がありそうに見えるが、フードが付いていてどことなく、というより露骨に自分が普段使っているコートを想起させるデザインをしている。
誰も作ってくれ、と言った覚えはないのだが。
これが俗に言う手作り品押し売り商法なのだろうか。

「あ、いえ。私が好きでやってることなのでお気になさらず~」

牡丹雪で働く子やウィンディに作ってあげるのならまだ分からないでもないが、どうして自分の服を作っているのだろうか。
素直に疑問をぶつけてみると、穏やかな表情で返答される。

「リヒトさんは最近、平和のためにすごく頑張ってるじゃないですか?だから、私なりにお礼というか~、頑張ってえらいね~って褒めたいというか~」

物は言いようとはいうがそれにしたって限度がある、とリヒトは結衣乃に見えないように頭を抱える。
確かに緋桜郷が平和になっているのは事実だが、それはあくまで結果的にそうなっているだけに過ぎない。
そもそもリヒトがその依頼を受けたのは利己的な理由だ。
緋桜郷をより平和に、より良い街にするために、という彼女が想定しているであろう忠誠心溢れる理由は、残念ながら一片たりとも存在しないのだ。

「だが…。それにしたって、仕事を終えてすぐやることでもないだろ。朝から晩まで働き詰めで疲れてるはずなんだから、ゆっくり休んだ方が良いと思うが…」

「そういうこと言っちゃうと、人に嫌われちゃうかもですよ~?」

勝手にしておいて横暴だな。
リヒトはそんなことを思いながら、脱力しつつ苦笑した。

結衣乃と何をするかを↓1にどうぞ。

せっかくなので見学させてもらう

クスクスと微笑む結衣乃の手は淀みなく動き、生地の形を整えていく。
月明かりと蝋燭の火に照らされながら服を仕立てる結衣乃の姿はまるで天女のよう。
赫色の青春を送っていたせいで美醜感覚が盛大に麻痺しているリヒトでさえ美しいと感じ、見惚れてしまう光景。
これでまだ子供だというのだから恐れ入る。

「リヒトさんって、人のことを好きになったことはありますか?」

特に意識していないであろう、結衣乃の口から放たれた何気ない質問。
それを聞いた瞬間、首筋を冷や汗が濡らした。

地雷を踏むのは勘弁してほしい、と内心に弱音を吐く。
そんな質問に答えられるほど、幽者は明るい人生を送ってこなかった。

ただ目が紅いだけで家族に殺されかけた。
ただ目が紅いだけで光の無い地下室に幽閉された。
ただ目が紅いだけで家族との繋がりを絶たれた。

力が無かったから逃げ延びた先でも辛酸を舐め続けた。
満足な食事にありつくことは叶わず、捨てられた残飯を食らうことで命を繋ぎ、必死に生きてきた。
何の希望も持たず、無為に日々を過ごし、命が消えゆく瞬間を待っていた日々。

それは、ソルドを抜け出して聖女と巡り逢うことで終わりを迎えた。

それから先はひたすらに剣を振るってきた戦いの日々が続いただけだ。
奪い、奪われる。暴力と混沌に満ちた地獄を進んできただけだ。

そんな世界で生きてきた自分にとって聖女は。戦友は。大賢者は。妖精は。まだ未熟な魔法使いは。どんな人なのだろうか。

皆のことが好きだったと、心の底から言えるような存在なのだろうか。

結衣乃の問いは幽者の痛いところを突いてしまったが、奇しくもそれが、自分と向き合うきっかけになった。

リヒトの心情整理タイムになるのでシンキングタイムを設けさせていただきます。
次に出す安価は結衣乃の問いにどう答えるか、です。

質問等ありましたらお願いします。今開示できる範囲の情報をお出しいたします。
今日の夜くらいにお答えします。

たんおつ
聖女クロエとシルヴィア、マナは直接の面識はありましたか?

・リヒトは「好き」という心理をどのようなものだと考えていますか?
・リヒトは、誰かを好きになることや、それを言葉にすることに忌避感や罪悪感を抱いていますか?
・リヒト自身は、皆のことが好きだったと心の底から言えるような在り方をどう思っていますか?

とりあえず今来てる質問に返答します。


Q.聖女クロエとシルヴィア、マナは直接の面識はありましたか?

A.ありません。強いて言うなら、シルヴィアが聖女や勇者時代のリヒト活躍を耳にした程度です。

Q.リヒトは「好き」という心理をどのようなものだと考えていますか?

A.過去の経験から恋愛観についてはガバガバにされています。「ずっと傍にいてもいい。たとえ血肉が削ぎ落ち魂が壊れようとも、何があってもその人を護りたい。そう思えるような人に対しての感情が『好き』とか『愛』って言うんじゃないかな?」と、敢えて言葉にするならという前置き付きでお言葉をいただいております。

Q.リヒトは、誰かを好きになることや、それを言葉にすることに忌避感や罪悪感を抱いていますか?

A.どちらも抱いています。忌み子だった事実と人殺しである事実が、どちらも負い目になってます。

Q.リヒト自身は、皆のことが好きだったと心の底から言えるような在り方をどう思っていますか?

A.「そこまで真摯に人と向き合える在り方が羨ましく、そして眩しい。取り返しのつかないことをした俺に、そんな資格はあるのかね?」とのことです。

また、同時に「こんな考えをしながら生きてる奴を愛してくれるような物好きはいないだろう。なら、本気で愛されたいのなら変わる必要があるはずだ。…俺が本気でそう思ってるなら、の話だが」と言ってました。

勇者時代のリヒトは聖女や戦友とどういう接し方をしていた?
シルヴィア達に接する時のような感じだったか?それとも聖女や戦友にはまた違う接し方をしていたか?

リヒトにとって護りたい人、護りたかった人はいますか?

Q. 勇者時代のリヒトは聖女や戦友とどういう接し方をしていた?
シルヴィア達に接する時のような感じだったか?
それとも聖女や戦友にはまた違う接し方をしていたか?

A.勇者時代のリヒトは基本敬語を使ってました。物腰も穏やか、というよりは低く、他人の顔色を窺うような感じですね。
戦争終盤からはシルヴィアたちに接するような感じになりましたが、今より口が悪かったです。厭戦感情マシマシだったので。
それでも、恩人である聖女に対しては敬語を崩さず接していました。

Q.リヒトにとって護りたい人、護りたかった人はいますか?

A.聖女です。あくまでウィンディやマナたちは仲間だから守る対象になっているのであって、何よりも大切な人か、と問われたら答えに詰まる程度の関係性です。
しかし、リヒトが聖女を護ることはできませんでした。そういったトラウマも他人と親密にならない原因なのかもしれませんね。

生前の聖女はどのような人物だったか?

Q. 生前の聖女はどのような人物だったか?

A.性善説が服を着て歩いているような超が付くほどのお人好しです。それでいて自己犠牲の精神の塊で頑固な女の子でした。
たとえ自分が死ぬと分かっていても、それでも構わないと死ぬその瞬間まで人を助けるために命を分け与えた善人でした。
最後の最後に、勇者の未来に全てを捧げたわけですが。

↓3までに結衣乃の問いにどう答えるかをどうぞ。良さげな回答が揃ったらそこで締め切ります。

大切だった人はいたよ……結局守れなかった人を好きだったなんて烏滸がましくて言えない

ある、と胸を張って言えるような人間になりたかったよ
変われるなら……変わろうとしても良いなら、変わりたいけれども

そんな人間でも境遇でもなかったからな……分からないよ

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静まり返った室内。不思議そうに首を傾げる結衣乃をよそに、リヒトは重い口を開く。

「そんな人間でも境遇でもなかったからな…分からないよ」

他人を素直に好きになれるような真っ当な人間でもなければ、まともな境遇で育ってきたわけでもない。
そもそも、好きがどういう意味なのかすら解らない。
そんな自分が他人に好かれることを、愛されることを目的として行動しているのは滑稽の極みだが。

結衣乃の質問に、肯定で返せるほど他人のことを好意的に思ったことはない。
と考えれば、はい、と答えることはできなかった。

「俺だって、人を好きになったことがある、と胸を張って言えるような人間になりたかったよ」

数多の離別と闘争の果て、無数の骸と血河を築き到達した平和という未来。
その代償はあまりにも大きく、過去が残した傷痕も深い。

人に愛されなかったが故に人を愛せず。それ故に人から愛されることのない負の螺旋。
それを断ち切るには過去のしがらみが多すぎて、断ち切ろうにも幽者の心が弱かった。
どうせ失うものならば。どうせ奪われるものならば。どうせ裏切られるものならば。
初めから好きになることはない。そう、逃げ続けている。

「…大切だった人はいたんだ。けど…結局守れなかった人を好きだったなんて、烏滸がましくてそんなことは言えない」

地獄から救ってくれた人。共に在ろうとしてくれた人。目の前で命を落とした人。
死の間際に彼女が残してくれた祈り。それは幽者を生に縛り付ける呪いでもあった。

素敵なお嫁さんを見つけてほしい。
たくさんの人に愛されてほしい。
幸せに暮らしてほしい。
聖女は命が終わるその瞬間まで、勇者の未来を案じてくれた。
だが、当の本人がその未来に恐れ、怯えているのだから救えないものだ。

大切だったというのに、護ることもできないで死別した。
それなのに、聖女のことを好きだと言える権利があるのだろうか。
護れもしないくせにそんな言葉を並べ立てるなど、烏滸がましいにも程がある。

「それでも変われるなら…変わろうとしても良いなら…変わりたいけれども。そんな権利はあるのかな。殺すことしかできない俺に。奪うことしかできない俺に」

それは懺悔のように。幽者の口から絞り出された心の嘆きは弱々しく、か細い。

永遠にも思える静寂の中。お互いの吐息だけが聞こえる。
暗い部屋の中で俯く幽者の紅眼は昏く輝き、それを見つめる少女の眼は確かな決意を秘めている。

「リヒトさんは、皆が死ね、と言ったら死ぬんですか?」

そして、幽者を優しく抱きしめた。
まるで子供をあやすように、優しく優しく背中を撫でる。
いい大人が子供に慰められている、憲兵案件待ったなしの事案発生中みたいな衝撃的光景だが、二人の間にそんな茶化せるような空気は一切ない。

結衣乃の胸の中で、幽者は静かに首を振る。
こんな罪人にも背負っているものがあるのだと、それを果たすまでは死ねないのだと、言葉にはできなかったが行動で示す。

「ですよね。他人が何を言っても。どう思っても。最後は自分で決めることだと思うんです。他人がどうとかではなく、リヒトさんが自分を赦せるかどうか。結局はそこなんですよ」

無言で言葉を聴き続ける。

「…辛い時があったでしょう。泣きたい時もあったでしょう。それでも我慢してきたと思いますが、今はいっぱい泣いていいですよ。大人だって泣く権利はあるんです。…ここであったことは二人だけの秘密にしますから」

「…もう、涙なんて枯れ果てたよ」

聖女を喪った時、勇者はひたすらに泣いた。喪失の苦しみに。己の無力さに。
それ以来、涙が流れたことはない。
心が壊れたからなのか、本当に涙が枯れたのか。どういう原因かは分からないが。
ともかく、泣けと言われて泣くことはできない。
演技しようにも、嘘泣きすらしたことがないのでどうしようもないのだ。

幽者の返答を聴いた結衣乃は諦めたように笑い、しばらくの間幽者を抱きしめ続ける。
その間、幽者は戸惑いつつもそれを受け入れるしかなかった。

結衣乃と何をするかを↓1にどうぞ。
これで今回の交流は終わりとなります。

短いですが今回の更新は終わりです。

服と慰めてくれたお礼に何かしたい、幽者に出来ることなら何でもしようと言う

柔らかい感触から解放された幽者は深々と頭を下げ。

いい年した大人がこんな醜態を見せて申し訳ない。
お詫びと言ってはなんだが、服と慰めてくれたお礼も兼ねて何かしたい。
自分にできることなら何でもする。

そう、はっきりと伝えた。

対する結衣乃の反応は。

「変なところで律儀ですね~。そこまで真摯に受け止めていただけたのは嬉しいですが、今のところは特に困ってないので…どうしましょう~」

と、余裕を持って受け止められた。これではどちらが大人か分かったものじゃない。

「思いつかないならそれでもいいさ。助力が必要になった時に呼んでくれれば、それで」

「では、そうしますね。…そろそろ私もおやすみしますので、リヒトさんも部屋に戻ってください」

「ああ。急に悪かった」

「いえいえ。おやすみなさい」

「…おやすみ」

自室に戻り、カバンで眠らせたままだった宝珠を取り出す。
紫紺に輝くそれは夜空のようにも見え、暗澹と淀む深淵のようにも見える。
だが、不思議と目が離せない。どうしても注視してしまう。

「…結局、これがシルヴィアの忘れ形見になっちまったな」

ヴォルグス城の探索で手に入れた宝珠。
後にも先にも、シルヴィアと共に手に入れた物はない。
これが、これだけが、共に歩んできた証。

マナも同様の存在になるのかもしれないが、彼女は生きている。物扱いするのは忍びない。

ふと、彼女と出逢った時のことを思い出した。

善意を踏み躙られ、血と泥に塗れながらも美しかった大賢者とは、閑散とした路地裏で巡り逢った。
言ってしまえばただの偶然。しかし、その出逢いは奇跡であり、運命でもあった。
彼女と出逢い、リヒトは前に進む決意ができた。
独善的であれど、変わろうとした。

「…ああ、そうか。なんで俺が貴女に惹かれたか、解ったよ」

何故、あの時彼女の手を取ったのか。共に進むと決めたのか。ようやく解った。

シルヴィアと自分は似ていたのだ。
死別と裏切りの果てに世界に絶望しながらも、人のために行動するのを辞められない幽者。
謀略と裏切りの果てに理想と心身を穢されながらも、弱者のために理想を決して捨てず掲げ続けた大賢者。
最終的な目的が利己的か、利他的かという差こそあれど、どれほど悲惨な目に遭っても他者のために行動する二人が惹かれるのは、当然の帰結とも言えた。

「…なあ、シルヴィア。貴女は何故、俺に手を差し伸べたんだ?」

その問いの答えは聞こえない。

何をするかを↓1にどうぞ。朝の行動になります。
牡丹雪の人たちは>>724のルールで交流の可否が決まりますが、新人の瑠璃と用心棒の桔梗のみ、無条件で交流可能です。

連れていけるなら瑠璃と桔梗を連れて賭場へ
(瑠璃に生きる目的を見つけてもらうため、桔梗は念の為の護衛として連れていきたい)
無理なら過去の回想

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朝ご飯を済ませたリヒトは今日することを見定めるために地図を眺めていた。
緋桜郷には大抵の施設が存在する。商店街はもちろんのこと、賭場などの大人のお店も多数出店しており、娯楽には事欠かない。
なんなら牡丹雪自体が大人のお店でもあるわけだ。

「…賭場か。そういや行ったことねえな」

賭場。またの名はカジノ。
一攫千金を夢見たギャンブラーが素寒貧になりゴミ捨て場に投棄されるか、はたまた僅かな可能性を掴み取り勝者になるか、一世一代の大博打が日夜行われる場所。
思えば、色々あって荒れていた時も酒を飲んだり盗賊を根切りにするくらいで、ギャンブルに勤しんではいなかった記憶がある。

変なところで良い子ちゃんな自分に苦笑し、財布を確認する。
直近で大仕事を何度かしたので、懐にはかなりの余裕がある。多少ボロ負けしても問題ないだろう。
資金を考えて楽しくギャンブル!と地図にも書かれているので、ドブに捨ててもいい分だけ使えばいいはずだ。

しかし、独りぼっちというのも寂しいものだ。
賭場は子供の入店禁止!と強調して記載があるので、ウィンディはお子様だから当然NG。
となると、リヒトが誘える相手は限られてくる。
客の相手をしている結衣乃や霧香は無理。台所に立っているリンは言うまでもない。
その他様々な理由を考慮すると、誘う相手は瑠璃が最適だと思われる。
聞けば、牡丹雪を利用する客に交渉を幾度も持ちかけているらしい。
幸いまだ良からぬ輩に目をつけられていないので未遂に終わっていることと瑠璃の精神面を考え、お雪は敢えて何も言っていないと食事の時に零していた。
ならば、大事になる前に手を打っておくに越したことはない。これで生きる目的でも見つけてくれればめっけもんである。

そう思ったリヒトは牡丹雪の営業が始まり盛況となっている中、接客が終わったタイミングでお雪にコンタクトを取る。
誰か指名するのかと問われたので否定はしなかった。間違いではないのだから。

「ほう。それは嬉しいことだね。そこまで牡丹雪を懇意にしてくれるのは女将冥利に尽きるよ」

「それで、誰を希望するんだい?紅ちゃんのお得意様になる予定のお方だからね。多少、融通は効かせるつもりだよ」

ニコニコと笑顔を見せるお雪に、若干の逡巡を挟み要望を伝える。

「…瑠璃さんで。あと、万一の事態があったら困るから桔梗さんも同行してくれると助かる」

刹那、お雪の笑顔が引っ込み、視線の温度が下がった。

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来客対応を雫と桔梗に任せたお雪は、リヒトと共に店裏に出る。
辺りから喧騒が聞こえてくるが、誰の視線も通っていない少し薄暗い場所だった。

「…さて。ちょいとばかりお話ししようか」

表でする話じゃないからこんな場所で申し訳ない、とお雪は微笑しつつ謝罪する。
別に構わない、と答えておいた。彼女の懸念も尤もだ。真意を聴いておきたいと思うのも無理はない。

だがまあ、瑠璃の誘いには乗らない、と言ったのだからほんのちょっとくらいは信用してくれてもいいじゃないか、とは思ったが。
お雪がよほど心配性なのか。そもそも自分が微塵も信用されてないか。
このどちらかだろうがもしも、万が一後者だったら普通に悲しくて泣く。

「これでも長く生きてるからね。ここ数日共に暮らして、お前さんの人となりは解ってるつもりだよ。だから質問は一つだけ」

「お前さんは、瑠璃と桔梗を連れて何をするつもりだい?」

「…と言われてもな。二番街や七番街には賭場があるだろ?そこに瑠璃さんを連れて行きたくてな。桔梗さんはその時の護衛役だ。…あ、もちろん代金は俺持ちだからご安心を」

「仮にも女子を連れて行くところが賭場かい。普通、こういう時は洋服とか装飾品とかを買うんじゃないかね。いや、最近の若い子の流行は知らないんだけども」

「二年前まで血で血を洗う戦争やってた奴に期待しないでいただきたい。それに俺にだって一応ちゃんとした考えがあるんだ。弁明させてくださいお願いします」

「どうぞ」

「ありがとうございますお雪様。…で、瑠璃さんを賭場に連れてく理由なんだが。半ば自棄っぱちになってる彼女に、生きる目的を見つけてもらいたいんだよ。楽しいことでも知ってくれれば、身を滅ぼすような真似はしなくなるかな…と」

「それでもしギャンブル狂いになったらどうするつもりだい?博打に費やす金を稼ぐ手段として夜伽をし始めたら、もう何もかも終わりじゃないかな?」

「そこは…彼女の人間性に賭けるしかない。根っこはいい人なはずなんだ。…たぶん」

彼女の人となりが全然分からないので、かなり苦しい言い訳になってしまった。
もう少し交流しておけばよかったかもしれない、と後悔するも後の祭り。

今の自分は破滅へ手招きしている悪魔そのものだ。
塩を撒かれてニンニクを食わされた上に十字架を刺されても文句は言えないだろう。

しかし。

「…でも、このままだとどう転ぶか分からないのも事実…。何かしらの楽しみを見出してくれれば変わるやもしれないし…むー…」

お雪は勝手に悩み始めた。彼女も瑠璃の状況に思うところがあるのかもしれない。

↓1にどんな説得をするかをどうぞ。このレスのコンマを対象のレスのコンマが上回った場合説得成功です。
ダメだった時は回想になりますので、↓2に回想する項目を記載してください。


回想早見表


幼少期(幽閉時代)
少年期(ソルド時代)
少年期(聖女の召使い時代)
青少年期(戦争初期)
青年期(戦争終期)
青年期(ゴルギュリオ滞在時代)
青年期(シルヴィア邂逅時代)

ギャンブルの危険性についてあまり知らなかったと謝罪し、別の遊び(蹴鞠、羽根つきなど、緋桜郷の競技)に誘うのはどうかと提案する

青少年期(戦争初期)

待ってる

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