星の陽炎型 (101)
陽炎から秋雲まで。
陽炎型姉妹実装17人分。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1653276503
【 陽炎 】
『 鶯餡に鶯(うぐいす)の肉は入ってない 』
間宮さんを恐れる雪風に、真実を告げられないままでいる。
『 鹿の子餅に鹿の肉は入ってない 』
伊良湖さんに怯える時津風に、未だ言えないままでいる。
駄目なお姉ちゃんを、許してほしい。
陽炎はまだまだ未熟です。
黒潮「陽炎」
不知火「陽炎」
陽炎「これは無理。 普通に無理。 とても無理」
黒潮「だって言わんと」
不知火「恥をかくのは雪風達です」
陽炎「だから無理って! うなぎパイの時だって、大変な騒ぎになったじゃない」
不知火「うなぎパイには入ってますよ。 うなぎ」
陽炎「えっ」
黒潮「絶賛うなぎ祭りやで」
陽炎「えっ」
不知火「うなぎパイの常識です」
黒潮「知らんのは陽炎だけやで」
陽炎「ええぇーーっ!?」
【 不知火 】
漣「うなぎパイキターー!!」
巻雲「うなぎパイ大好き」
春雨「うなぎパイ美味しいね」
野分「もっと食べたいです」
卯月「おかわりするぴょん!」
子日「うなぎパイ最高だよー!」
国後「もう、うなぎパイしか見えないから」
陽炎「何でこんなに人気なのよ」
陽炎「そんなメチャクチャ美味しいものでもないでしょ?」
陽炎「そもそも、何でうなぎなんか入れてるのよ」
黒潮「そら、夜のお菓子やし」
陽炎「は?」
初風「うなぎには滋養強壮の効果がね」
親潮「男の人が元気になっちゃう的な……」
陽炎「えっ」
陽炎「えっ? 夜のお菓子って、そういう…… ///」
不知火「うなぎパイ美味しいですね」サクサク
不知火「不知火も大好きです」モグモグ
初風「……」(ピンク……)
親潮「……」(ピンクは淫r…)
不知火「? どうかしましたか」
黒潮「いや、うん。 せやな、美味しいわな」
陽炎「美味しいわよねー」
【 黒潮 】
陽炎「明日は休日ね」
不知火「不知火は買い物に行ってきます」
陽炎「アンタはどこか行かないの」
黒潮「行かへんでー」
陽炎「何でよ、せっかくの休みなのに」
黒潮「だってウチ、出不精やから」チラッ
陽炎「……」
不知火「……」
黒潮「出不精やからなー、これはしゃーないわー」
陽炎「自虐ネタを織り込んできたわね」
不知火「そこまでして笑いが欲しいんでしょうか」
陽炎「ツッコんだら負けよ」
黒潮「最近ウエストきつなってきたなー、何でやろ」
黒潮「やっばデブ症やからかなー」チラッチラッ
陽炎「容赦ないわね、このデブ」
不知火「激しくツッコミたいです……」
親潮「黒潮さん! 明日は親潮も家にいます! 一緒にゲームしましょう」
黒潮「えっ、ああ、うん」
親潮「親潮も部屋にいる方が好きです!」
陽炎「う~ん、このボケ殺し」
不知火「親潮つよいです」
黒潮「親潮。 ヒント、ヒントやで」
親潮「ヒント?」
黒潮「カタカナや。 片仮名で言うんや」
親潮「片仮名……」
黒潮「ウチ、出不精やねん」
親潮「ワタシもー、出不精デース!」ヘーイ!
黒潮「いや、カタコトやなくてな」
親潮「イツデモ、一緒デース!」ニコーッ
【 親潮 】
黒潮「親潮ー、紅茶淹れてきたで」
親潮「わぁ、ありがとうございます」
黒潮「今日はダージリンやでー」
親潮「ふふ、おしゃれですね」
黒潮「親潮、何してたん」
親潮「星を見てました。 綺麗ですよ」
黒潮「何や、ロマンチックやん」
親潮「あ、紅茶美味しいですね」
黒潮「せやろ? ちょっとブランデー入れてみたんや」
親潮「でも夜中に紅茶なんて、眠れなくなりませんか」
黒潮「少しだけやから平気やでー」
親潮「ふふ、そうですね」
黒潮「シュークリームもあるから」ガサゴソ
親潮「こんな時間に食べて大丈夫でしょうか」
黒潮「少しだけやから平気やで」ニコ
黒潮「そういえば不知火は」
親潮「さっき窓から抜け出してましたね」
親潮「きっと司令の所でしょう」
黒潮「あー、初風と天津風もコソコソどっか行ってたな」
親潮「これは鉢合わせのパターンですね」
黒潮「また一騒動ありそうやな」
親潮「困ったものです」ヤレヤレ
黒潮「紅茶おかわりしよ。 親潮、タルトもあるで」
親潮「タルトまで食べて大丈夫でしょうか」
黒潮「少しだけやから平気やで」モグモグ
◇
親潮「私たちも」
黒潮「ん」
親潮「私たちも、いつか恋をするのでしょうか」
親潮「あんな風に誰かに心を奪われて、胸を焦がしたりするのでしょうか」
黒潮「そらするやろ」
親潮「想像つきませんね」
黒潮「せやなー、実感湧かへんわ」
親潮「黒潮さんはモテそうですね」
黒潮「何やの、急に」
親潮「美人で可愛いですし、性格も明るくて社交的で」
黒潮「いやいや、褒めすぎや」
親潮「いえ! 黒潮さんは素敵です! 世界で一番、魅力的です!」
親潮「私がもしも男性だったら、出会ったその日に求婚します!」
黒潮「何やの? メッチャ情熱的やん」
親潮「うふふ、美味しい紅茶のせいですね」
黒潮「えっ? あっ! ブランデーか」
黒潮「えー、嘘やん、こんなんで酔うの」
親潮「身体がー、ぽかぽかしますー」
黒潮「それやったら親潮もやで」
親潮「私ですか」
黒潮「清楚やし、物静かで可愛いし」
親潮「わ、私はそういうのは、あまり……」モジモジ
黒潮「親潮の場合はリードしてくれる人がええかもな」
親潮「リード?」
黒潮「そや、グイグイ引っ張ってくれて、黙って俺について来い! みたいな」
親潮「男らしいですね」
黒潮「亭主関白タイプやな」
親潮「黒潮さんはどんな人がタイプですか」
黒潮「ウチは優しい人がええなー」
黒潮「そない格好ようなくてええから」
黒潮「優しくて、ウチの事をずーっと大切にしてくれる人がええわー」
親潮「わー、ずるいです。 私もそっちがいいです」
黒潮「アカンねん、もう黒潮ちゃんに売約済みや」
親潮「えーっ、そんなー」
黒潮「恋は早い者勝ちやねん」
親潮「世知辛いですねぇ」シクシク
親潮「ところで司令はどうなんでしょう」
黒潮「どう、って」
親潮「未だに誰ともケッコンしてませんが」
黒潮「あー、それな」
黒潮「なかなか難しいんちゃうかな」
黒潮「何や言うて、大きな組織の長やからな」
黒潮「誰かを選べば、陰で泣く娘も出る訳やし」
親潮「でも、こんなに沢山の女の子に囲まれて」
黒潮「まあ、ちょっとくらいお手つきしても、誰も責めんと思うんやけど」
親潮「鋼の意志ですね」
黒潮「それか、他に要因が」
親潮「それは……やはり噂の」
黒潮「女の人には興味がなくて、男同士の方がええとか」
秋雲「話は聞かせてもらったよ!」ドアガチャバターン!
秋雲「誰と誰とがホモだってぇ!?」
黒潮「また騒がしいのが来た」
親潮「何でこんな時間に起きてるんですか」
秋雲「なに言ってんのさ! 夜は秋雲さんの領域だよ」
秋雲「さあさあ、ホモバn……恋バナの続きをしようともさー!」
黒潮「メッチャ元気や」
親潮「水を得た魚ですね」
秋雲「あ、黒潮。 紅茶貰うね」
黒潮「チョコクロもあるで」
秋雲「いいねー!」
親潮「夜中なんですけど大丈夫でしょうか」
黒潮「少しだけやから平気やで」ニカッ
秋雲「やでー」ニコッ
【 初風 】
秘書艦は日替わり制
本日の担当は天津風
天津風「あなた、ほら襟が曲がっているわ」
提督「ああ、すまない」
天津風「資料は全部用意してあるから目を通しておいてね」
提督「いつもありがとう」
天津風「はい、これお弁当」
天津風「い、一応……手作りなんだから……ね ///」
提督「わあ、嬉しいなぁ」
初風「……」
初風「……」
傘太郎「アレハ?」
初風「妹の天津風よ。 とっても優秀なの」
傘太郎「イモウト」
初風「美人だし優しいし気も利くし、自慢の妹よ」
傘太郎「ソウナノカ」
初風「自慢の……妹なんだけどね」
傘太郎「?」
初風「優秀過ぎて……私じゃちょっと、敵わない、かな」ジワッ
傘太郎「……」
初風「あ、あはは、何でもない、何でもないわよ」ゴシゴシ
傘太郎「ゴシュジンサマ……」
初風「さっ、遠征行ってくるわ。 留守番お願いね、傘太郎」
傘太郎「……」
◇
深夜
傘太郎「……」
傘太郎「ゴシュジンサマ、ナイテタ」
傘太郎「……」
傘太郎「……」
傘太郎「アイツサエ、イナクナレバ」
傘太郎「……」
◇
天津風「ちょっとコンビニに行ってくるわね」
舞風「暗いから気をつけてね」
天津風「大丈夫よ、すぐそこだし」
時津風「ついでにアイス買ってきてー」
谷風「谷風さんのもー」
天津風「ハイハイ」
◇
天津風「~~♪」
傘太郎「……」スーッ
傘太郎「アイツサエ、イナクナレバ……!」グワッ!
ガシィッ!!
足柄「そこまでよ」
傘太郎「!!?」
足柄「ズルは駄目」
足柄「アンタのご主人様を、卑怯者にするつもり?」
傘太郎「ア…ァア……」
足柄「好きなだけじゃ駄目なの。 大切なだけじゃ駄目なの」
傘太郎「オ、オレ、ゴシュジンサマニ……シアワセニ……」
足柄「こんな事、もう二度としないと自分自身に誓いなさい」
傘太郎「オレ……オレハ……」
足柄「一度だけ、見逃してあげる」
足柄「これから先、どうやって生きるのかは、アナタ自身が決めなさい」
傘太郎「ァ……ウゥ……」ガクッ
◇
那智「甘いな」
足柄「誰にだって間違いはあるわ」
那智「正さねば、またやるぞ」
足柄「えー、正してるつもりだけどなー」
那智「もっと骨身に刻むべきだ」
足柄「姉さんはちょっと厳しすぎ」
那智「それが優しさだ」
足柄「そうだけどさー」
那智「まあいい、次に何かあればお前が責任をとれ」
足柄「大丈夫だって」
足柄「次、は ないから」
那智「……」
足柄「さ、飲みに行きましょ」
那智「まだ飲むのか!?」
足柄「夜はこれからよー」ワオーン!
【 雪風 】
どんな絶望の死地からも、必ず生還を成し遂げる。
そんな偉業は畏怖となり、いつしか彼女に異名がついた。
陽炎型 八番艦 駆逐艦 “ 雪風 ”
艦隊の── “死神”
陽炎「別にそれほど強くないわよ」
野分「強くない?」
陽炎「綾波なり夕立なり、あの子より強い艦娘はいくらでもいるわ」
野分「では何故雪風だけが、あんなにも戦果をあげられるのでしょうか」
野分「どうして彼女だけが、あんなにも生き残る事が出来たのでしょう」
陽炎「経験ね」
野分「経験」
陽炎「縁側で茶を啜っているだけじゃ、人は強くなれないわ」
陽炎「踏んだ場数の分だけ、潜った修羅場の数だけ、理由があるのよ」
陽炎「それこそ本当に死んでしまうような、全てが終わってしまうような死線をね」
野分「死線……ですか」
陽炎「そんな経験、私だって数えるほどしかしてないわ」
陽炎「でも、あの子は違うの」
陽炎「駆逐艦雪風の毎日は、常に死と隣合わせよ」
野分「……」ゾクッ
◇
不知火「陽炎、大変です! 雪風がブランコから落ちました!」
黒潮「アカン、頭打っとる! 意識がない」
陽炎「しっかりしなさい雪風! 雪風ーっ!」
◇
不知火「陽炎、大変です! 雪風が飴を喉に詰まらせました!」
黒潮「アカン、白目むいとる! 意識がない」
陽炎「しっかりしなさい雪風! 雪風ーっ!」
◇
不知火「陽炎、大変です! 雪風がドブに嵌まりました」
黒潮「アカン、腰まで浸かっとる! 意識がない」
陽炎「しっかりしなさい雪風! 雪風ーっ!」
◇
陽炎「……」
野分「……」
陽炎「常に死と隣合わせよ」
野分「えー……」
【 天津風 】
天津風「いい風」サアアァ
天津風「空気が澄んでいるわね」
天津風「星がこんなに綺麗に見えるなんて珍しいわ」
白雪「そうですか?」
深雪「普通じゃね」
初雪「むしろ……霞んでる」
天津風「ええー?」
綾波「ウチの村だともっと鮮やかに見えますよ」
敷波「街灯もコンビニもないしなー」
吹雪「夜の濃さが違うよね」
天津風「どんだけ田舎に住んでるのよ」
磯波「でも、いい所だよ」
浦波「空気は美味しいし、水は綺麗だし」
敷波「いつか遊びに来なよ」
吹雪「収穫したての野菜食べたら驚くよ」
初雪「味が……全然違うから」
白雪「タヌキも時々見れるしね」
深雪「あいつら可愛いよな」
天津風「ふ、ふ~ん、いいかも」
叢雲「虫も沢山いるわよ」ヒソヒソ
天津風「えっ」
叢雲「蛭とかムカデとかも」ボソボソ
天津風「うわ、それは無理かも」
浦波「慣れたら平気だべさー」
磯波「んだんだー」
【 時津風 】
今は昔。
陸奥「長門、あなたいい加減にしなさいよ」
長門「む」
陸奥「昼は間宮さんでもぐもぐ、夜は鳳翔さんでもぐもぐ」
陸奥「いつも食べてばっかりじゃない! 何かしなさいよ」
長門「執務ならちゃんとしているが」
陸奥「仕事以外で!」
陸奥「おしゃれなり、買い物なり、あるでしょう」
長門「そんな事を言われてもな」
長門「服は制服があるし、買い物も支給品で事足りる」
陸奥「じゃあ遊んできなさいよ、スポーツでもいいわ」
長門「ジムなら早朝行ってきたぞ」
陸奥「筋トレじゃないわよ」
陸奥「それ以上ゴリラになってどうすんのよ」
陸奥「そもそも何で鎮守府にいるのよ。 今日は非番でしょ」
長門「それは有事の際に備えてだな」
陸奥「あなた以外にも艦娘はいるの!」
陸奥「それとも何? そんなに他の娘が信用出来ないの」
長門「いや、そういう訳では」
陸奥「最後に私用で外出したのはいつ?」
陸奥「最後に私達以外と話をしたのは?」
長門「む」
陸奥「真面目なのもいいけど、度を過ぎればそれは正しい事ではないわ」
長門「むむ……」
陸奥「出掛けてらっしゃい。 夜まで帰ってこなくていいからね」
◇
長門「出掛けろと言われてもな……」スタスタ
長門「……」
長門「……あれ?」
長門「何をすればいいんだ」
長門「……」
長門「思い浮かばないぞ」
◇
陽炎「あーっ、もう! 毎日毎日訓練訓練! 厳し過ぎでしょ」
不知火「先週は五回ほど死にかけました」
陽炎「そのうち二回は実際に死んでるからね」
不知火「何と! そうなのですか」
陽炎「誰が蘇生呼吸したと思ってんのよ」
不知火「知らない間に不知火のファーストキスを」
陽炎「文句は鬼通さんに言って」
不知火「文句は別に。 お互い様ですし」
陽炎「えっ」
ときつかぜ「あそんでー」
陽炎「ん?」
不知火「時津風」
ときつかぜ「おねえちゃん」
陽炎「あー、ゴメンね。 お姉ちゃん今から訓練なのよ」
不知火「申し訳ありません。 時津風はいい子だから大丈夫ですよね」
ときつかぜ「あうー……」
陽炎「ゴメンね。 帰ったらおやつあげるから」
不知火「なるべく急いで戻ります」
ときつかぜ「う、うん……」
長門「……」
◇
ときつかぜ「……」ショボーン
長門「おい」
ときつかぜ「!」ビクンッ!
長門「ひとりなのか」
ときつかぜ「う、うん」
長門「……」
ときつかぜ「……?」
長門「今から外に出掛けるが、一緒に来るか」
ときつかぜ「遊んでくれるの!?」
長門「まあ、暇だからな。 遊んでやってもいい」
ときつかぜ「やったー!」
長門「どこか行きたい所はあるか? どこでもいいぞ」
ときつかぜ「う~んとね~」
~ 河川敷 ~
長門「こんな所でいいのか」
ときつかぜ「遊んで、遊んで!」
長門「遊ぶと言っても何もないぞ」
ときつかぜ「これ投げて!」
長門「ゴムボールか」
長門「別に構わんが……そら、取ってこーい」
ときつかぜ「わーい」タタターッ
ときつかぜ「もう一回!もう一回!」キャンキャン
長門(かれこれ50回くらい投げたが……)
ときつかぜ「もっと、もっと!」ワンワン
長門(飽きないのか、こいつは)
◇
長門「よし、飯にしよう」
長門「何か食べたいものはあるか」
ときつかぜ「う~んとね、はんばーぐ!」
長門「ハンバーグか。 近くにファミレスあったかな」
ときつかぜ「あれ、あれ!」
長門「む、あれはハンバーグではなくてハンバーガーだ」
ときつかぜ「?」キョトン
長門「そうか、分からないか」
◇
長門「どれが食べたい」
ときつかぜ「あのね、たまごのやつ」
長門「これか、よし」
長門「む、そういえば注文の仕方が分からんな」
長門「まあ何とかなるか」
店員「いらっしゃいませー、ご注文はお決まりですかー」
長門「このタマゴのやつを一つと」
店員「てりタマですねー、おひとつー」
長門「あと、こっちの一番デカいのを20個くれ」
店員「はい、ジャンボマックを20……20個ぉ!!?」
◇
ときつかぜ「おいしい、おいしい」モグモグ
長門「一つでいいのか。 何個でもいいんだぞ」
ときつかぜ「そんなに食べれないよー」
長門「やれやれ、随分と燃費がいいな」
赤城「それではジャンボマックを20個ほど、遠慮なく」
加賀「こちらはテリヤキとグラコロを10個ずつ いただくわ」
長門「お前らには言ってないぞ」
加賀「珍しい組み合わせね」
長門「む、まあな」
長門「やはり変か」
赤城「いえ、いい事だと思います」
長門「む」
赤城「長門さんの優しい顔が見れましたし」
長門「なっ!?」
加賀「そんな顔も出来るのね」
長門「バカな、何を言って……」
赤城「ふふ、いいと思いますよ。 本当に」
加賀「あなたは少し堅苦しいわ。 表情も、性格もね」
長門「お前が言うのか」
◇
赤城「それではお先に」
加賀「ええ、行きましょう。 赤城さん」
ときつかぜ「ばいばーい、あかぎー」
長門「こら」ペシッ
ときつかぜ「あうっ」
長門「赤城さん、だ」
ときつかぜ「あかぎさん?」
赤城「ふふ、あかぎでいいですよ」
ときつかぜ「あかぎー」
赤城「友達ですもんね」ニコ
長門「いや赤城、それは困るぞ。 示しがつかん」
赤城「そうですか」
加賀「私の事は、レディーカガと呼んで下さい」
長門「ちょっと待て、お前本当に加賀か!?」
加賀「あなたは堅苦し過ぎなのよ」フッ
ときつかぜ「かがー」ニコーッ
◇
長門「さて、飯は食ったが……帰るにはまだ早いな」
長門「ふむ、何か欲しいものはないか」
ときつかぜ「ほえ?」
長門「ゲームでもオモチャでも何でもいいぞ」
ときつかぜ「これがいい!」
長門「なわとび? こんなものでいいのか」
ときつかぜ「わーい」
◇
ときつかぜ「見ててね、見ててね」ピョンピョン
長門「同じ事を何度も何度も……」
長門「飽きもせずよく続くものだ」
ときつかぜ「……」チラッチラッ
長門「ああ、見てるぞ。 なわとび上手いな」
ときつかぜ「!!」ペカーッ
ときつかぜ「えっとね、後ろ跳びもできるよ!」
ときつかぜ「これはね、ちょっと難しいんだよ」
長門「ほお、それは是非見てみたいな」
ときつかぜ「跳ぶからね、見ててね!」ニコーッ
◇
長門「遊び疲れて眠ったか」
長門「起こすのも可哀想だし、おぶって帰るか」
長門「よいしょっ……と」
長門「!!」
長門「……軽いな」
長門「こんなにも軽いのか」
長門「こんなにも小さな身体で、これから戦うのか」
長門「あの、海の化け物達と」
長門「……」
◇◇◇
後日。
陽炎「失礼します」
長門「駆逐艦か。 どうした」
陽炎「陽炎型一番艦陽炎です」
不知火「陽炎型二番艦不知火です」
陽炎「先日は妹の時津風と遊んでいただいたとの事で」
陽炎「大変喜んでいました。 ありがとうございます」
長門「む、いや別に大した事はしてないぞ」
不知火「帰ってからもずっと、長門さんに遊んでもらったとはしゃいでいました」
不知火「よほど楽しかったのでしょう」
長門「そ、そうか……? まあ、それは良かった」
陽炎「それで……図々しいお願いではあるのですが」
長門「ん?」
◇
ゆきかぜ「ずるいです! ずるいです! ときつかぜばっかり!」
ゆきかぜ「ゆきかぜも、ゆきかぜも、ながとさんと遊びたいです!」
ときつかぜ「なわとび買ってもらった」ンフー
ゆきかぜ「むうう~」
ゆきかぜ「ときつかぜはずるっ子です! ゆきかぜも! ゆきかぜも!」
陽炎「時間のある時で構わないので、あの子とも遊んでやってもらえませんか」
不知火「何卒宜しくお願いします」
ときつかぜ「この持つ所がね、ピカッて光るんだよ~」ドヤァ
ゆきかぜ「うわああーん! ときつかぜの馬鹿ー!」
長門「あ、ああ。 考えておこう」
陸奥「考えておこうじゃないわよ」バシッ!
長門「!?」
陸奥「今すぐやるから大丈夫よ。 どうせ暇だからね」
長門「な、何を? 暇ではないぞ」
陸奥「いいからほらほら、後は私がやっておくから」
陽炎「あ、あの、えっと」
陸奥「連れてっていいからね~、こき使ってあげて頂戴」
長門「おい、陸奥!」
陸奥「夕方まで戻ってこなくていいから、じゃあね!」バタン!
長門「」
◇
提督「いい傾向だね」
陸奥「これで姉さんが、少しでも変わるきっかけになれば」
提督「しかし、想像つかないな」
提督「あの長門が駆逐艦と一緒に遊ぶだなんて」
陸奥「まったくだわ。 けしかけておいて何だけど、上手くいくかしら」
提督「最初はかくれんぼとかかな」
陸奥「いきなりハードルが高いわね」
提督「かくれんぼでも無理なの?」
陸奥「だって、長門よ」
提督「あー、うん。 長門だもんね」
陸奥「はてさて、どうなる事やら」
◇
長門「長門だ」
ときつかぜ「ながとキター!」ワオーン!
ゆきかぜ「やったー!」キャッキャッ
【 浦風 】
香る紅茶に美味しいお菓子。
金剛主催のお茶会は、いつでも誰でもウェルカム。
浦風「今日は妹を連れてきたんよ」
比叡「わあ、ようこそ」
榛名「いらっしゃいませ。 歓迎します」
萩風「みなさんこんにちは、萩風です」
嵐「みなさん初めまして! 陽炎型 十六番艦 駆逐艦 嵐 です!」ビシィッ!
嵐「本日はお招き頂きまして、ありがとうございます!!」
浦風「」
萩風「」
比叡「ひ、ひえ~?」
榛名「ず、随分礼儀正しい方ですね」
浦風「あ、嵐?」
萩風「ど、どうしちゃったのかな」
嵐「これ、つまらない物ですが、どうぞ」ササッ
金剛「あ、ありがとデース……」
霧島「ふむ……嵐、ですか」キラーン
~ 回想 ~
摩耶「いよいよ霧島姐さんに謁見かー」
天龍「くれぐれも粗相の無いようにな」
木曾「手土産を忘れるな」
嵐「そんなに怖い人なんスか」
摩耶「いや、普段は優しいぞ」
天龍「そうそう、口調も丁寧だしな」
木曾「ただ、キレたらヤバい」
嵐「摩耶さんよりもッスか」
摩耶「馬鹿、あたしなんか話になるかよ」
摩耶「姐さんがキレたら、ここにいる全員でも止めらんねーよ」
木曾「あれはマジでヤバい」
嵐「そ、そんな人とどうやって話を」
摩耶「金剛だ。 とにかく金剛をもてなせ」
嵐「金剛さん?」
摩耶「とりあえず他の奴らはどうでもいい」
摩耶「金剛が全てのトリガーだ」
摩耶「金剛さえ笑顔なら、姐さんがキレる事はない」
嵐「じゃあ、もし金剛さんに何かあったら」
摩耶「……」
天龍「……」
木曾「……」
摩耶「あ、ヤバい。 膝が震えてきた」
天龍「俺も、ちょっと吐きそう」
木曾「気持ち悪い、ヤバい、頭痛い」
嵐「そんなに!? そんなにヤバいんスか!?」
◇◇◇
浦風「萩風はハーブを植えとるんよ」
比叡「ハーブですか!」
榛名「それは素敵ですね」
萩風「無農薬で有機栽培なんです」
萩風「ジャスミンやカモミールなんかも」
萩風「今度みなさんにお持ちしますね」
比叡「いいんですか!?」
榛名「わぁ、嬉しい」
金剛「それでは今度のお茶会はハーブティーにするデース」
霧島「とてもいい考えですね」
嵐(さすが萩風。 あっという間に場が和やかな雰囲気に)
嵐(よし、このいい流れに乗って……!)
嵐「吹雪から聞きました! 第五遊撃部隊の時の話」
金剛「ブッキー、ですか」
榛名「どんな話なんです」
嵐「『金剛さん、初めて会った時も気さくに話し掛けてくれてすっごく優しい』」
嵐「『戦闘も強くてカッコいいし、私がピンチの時はすぐ駆け付けてくれて、すっごく頼りになる人だよ』 って」
浦風「おおー」
比叡「流石です! お姉さま!」
金剛「いや~、照れるデース ///」
金剛「私はただ、当たり前の事をしただけデスから~ ///」テレテレ
霧島「嵐」
嵐「はっ、はいっ!?」ビクッ
霧島「紅茶のおかわりはいかが?」
霧島「あと、こないだビスマルクから強奪……いえ、プレゼントされたシュトレンもあるけど」
嵐「あ、ありがとうございます」
嵐「あと、摩耶さんや天龍センパイからも色々」
霧島「続けて」
嵐「『金剛さんは英国からの帰国子女でセンスがある』」
嵐「『美人だし気品もあって正直憧れるわー』 と」
榛名「よく見ていますね」
比叡「金剛お姉さまの魅力が分かってます」
金剛「彼女達は霧島のお友達デスね?」
霧島「はい、仲良くさせてもらっています」
金剛「では、今度お茶会に招待したいデース」
金剛「たくさんお話してみたいデース」
霧島「それは……摩耶たちもきっと喜ぶと思います」
金剛「あー、楽しみデース」ニコニコ
霧島「嵐」
嵐「は、はいっ!」
霧島「先日ローマから略奪……いえ、プレゼントされたティラミスがあります。 食べていいですよ」
嵐「は、はいっ」
霧島「沢山あるから良かったらお土産にも、どうぞ」
嵐「ありがとうございます。 戴きます」
金剛「もっとお話を聞きたいデスね」
霧島「嵐、他に何かありますか」
嵐「えっと……司令が」
金剛「テイトク!?」ガタッ!
嵐「『金剛は古くからこの鎮守府を支えてくれて、みんなからの信頼も厚い』」
嵐「『もちろん俺も頼りにしているし、彼女には感謝しかない』」
嵐「『艦隊には欠かす事の出来ない、とても大切な女性だよ』 ……って、こないだ言ってました」
金剛「~~~!!?」ガタガタッ!
金剛「テ、提督が私をそんな風に!!?」
比叡「やりましたね!お姉さま!」
榛名「これはもうプロポーズなのでは!?」
霧島「早急にハネムーンの準備を進めるべきですね」
霧島「あと、嵐」
嵐「はいっ!」
霧島「貴方、今日は泊まっていきなさい」
嵐「えっ」
霧島「リシュリューを呼びつけて高級フランス料理を作らせ……」
霧島「いえ、夕食を用意するから一緒に食べましょう」
霧島「貴方とはもっとお話がしてみたいわ」ニッコリ
嵐「はっ、光栄であります!」ビシッ!
浦風「霧島姉さんが上機嫌すぎて何か怖いのぉ」
萩風「言葉の端々に不穏な単語が混じるのはどうしてなのかな」
【 磯風 】
◇ 三途の河原 ◇
死神「何や、またキミか。 皆勤賞やな」
雪風「はわわ、真っ暗です」
死神「ほな、一緒に河を渡ろか」
雪風「嫌です! 雪風は渡りません!」
死神「ええやんか、お花畑綺麗やで~」
雪風「雪風はみんなの所に帰ります!」
死神「しゃーないな、ほなまた今度にしよか」
雪風「えっ? いいんですか」
死神「まあ、どの道いつかは渡るしな」
雪風「ありがとうございます!」
死神「ほら帰り。 出口はあっちやで」
雪風「はーい!」
死神「あ、ちょい待ち。 お土産や」
雪風「何ですか」
死神「“経験値”や」
雪風「けいけんち?」
死神「いやキミ、毎回貰とるやろ」
雪風「どうやって使うんですか」
死神「これがあるとな、明るくなるんや」ピカーッ
雪風「はわわっ! 眩しいです」
死神「これなら道を踏み外さんと帰れるで」
雪風「踏み外すとどうなるんですか」
死神「奈落やな。 二度と戻れへん」
雪風「ふわあー、怖いですー」
死神「せやろ? 気いつけて帰りや」
雪風「ありがとうございます! また来ます」
死神「いや、来んでええから」
◇◇◇
提督「戦況はどうなったかな」
大淀「大逆転勝利です」
大淀「絶体絶命の状況から、瀕死の雪風がカットインを連続で決めました」
大淀「ありえない動きだったそうです」
提督「そうか。 あの不落の海域を攻略したか」
大淀「あんなに小さな身体で……本当に末恐ろしい子です」
提督「うん、よし。 とにかく皆にはゆっくり休んでもらおう」
提督「補給も順次、滞りなくね」
大淀「はい、早急に手配します」
◇◇◇
磯風「……」
神通「眠らないのですか」
磯風「神通」
神通「自信を……失いましたか」
磯風「……」
磯風「どんな魔法を使えば、あの域にまで達するんだろうな」
磯風「アイツは……化け物だ」
神通「言葉が過ぎますよ」
磯風「化け物じゃなければ神様だ。 どう考えても、あんな動きは人には無理だ!」
神通「……」
磯風「……」
神通「魔法なんて使えませんが、努力なら教える事が出来ます」
磯風「努力ならしている! 毎日、毎日! 毎日だ!」
磯風「無理だ!そんなもので! 努力だけであの雪風を超える事なんて……!」
神通「本当に?」
磯風「ッ!」
神通「努力で彼女を超える事は出来ないと、本当に、思っていますか」
磯風「……」
神通「それは努力をやり尽くした人間だけが言える言葉です」
磯風「……」
磯風「だって……これ以上……どうすれば」ポロポロ
神通「魔法など知りません。 奇跡など分かりません」
神通「教える事が出来るのは努力だけです」
神通「それだけです」
神通「気が変わったら来て下さい。 演習場で待っています」
磯風「ううっ……」
◇ 三途の河原 ◇
死神「よー、姉ちゃん。 久しぶり」
磯風「またお前か」
死神「ほな、一緒に河を渡ろか」
磯風「誰が渡るか!」
磯風「それよりも早く土産をよこせ」
死神「何や、つれないなー。 もう帰るんか」
磯風「当然だ、こんな場所いつまでもいられるか」
磯風「ん? これっぽっちか。 もっとよこせ、ほら」
死神「死神相手にムチャ言うな、キミ」
死神「お土産持って早よ帰り」
磯風「言われなくてもこんな場所……」クルッ
神通「……」
磯風「ッッ!?!」
磯風「じ、神通!? 何でお前ここに」
神通「まだ息があるんですね」ジャキッ!
磯風「ちょ!? 神通? 待っ……ッ!!」
磯風「……! ……!!!」
◇
死神「えげつないな、あの姉ちゃん。 こんなとこまで追い込みに来よったで」
死神「ヤバいわ。 馬乗りでフルボッコやん」
死神「な、なあリボンの姉ちゃん、アカンで。 そないに殴ったらホンマに死んでまうで」
神通「構いません」
死神「」
神通「この程度で死ぬならば、それがこの子の寿命です」
死神「この姉ちゃんヤバいやろ。 ウチより死神に向いとるんちゃうか」
◇
神通「お騒がせしました」
神通「連れて帰りますね」
死神「帰って!もう早よ連れて帰ったげて!」
死神「お土産あげるから!たくさん!」ドササッ
神通「また、来ます」ニコッ
死神「もう来ないで!!」
◇◇◇
磯風「」
神通「星が綺麗ですね」
神通「ぐっすり眠って、起きたらまた頑張りましょう」
神通「あなたは強くなれます」
神通「きっとなれます」
神通「私がそうします」
神通「何度でも地獄に連れていき、何度でも連れて帰ります」
神通「だから今だけは、ゆっくりと休みましょう」
神通「おやすみなさい」
磯風「」
【 浜風 】
お世話になった神通に、美味しい料理でお礼がしたい。
いつになく真剣な面持ちで、磯風がそう切り出した。
浦風「どうしてこいつはこう……恩を仇で返そうとするんじゃ」
浜風「いや、本人はそんなつもりじゃないですし」
浦風「心から喜んで貰おうと」
浜風「そう思っている筈です」
浦風「無理じゃ」
浜風「無理って」
浦風「他所の磯風なら兎も角、ウチの磯風にはもう無理じゃ」
浦風「こいつは強くなる度に料理がポンコツになる」
浦風「そういう仕様なんじゃ」
浜風「仕様って」
浦風「多分こいつは、前世で何かしでかした」
浦風「少し痛い目をみろという、神様からの罰なんじゃ」
浜風「痛い目にあってるのは周りの人なんですがそれは」
浜風「どうにかなりませんか」
浦風「どうにかと言われてもな」
浜風「いっそ私達が代わりに作っては」
浦風「それは駄目じゃろ、意味がない」
浜風「ですよね」
浦風「代わりが駄目なら一緒になら」
浜風「一緒にですか」
浦風「磯風の隣で、全工程を監視するんじゃ」
浦風「手順を間違ったら指摘して、何回でもやり直させる」
浜風「それなら……まあ」
浦風「時間は掛かるが確実じゃろ」
浜風「磯風が納得しますかね」
浦風「これでもウダウダ言うなら、ウチが腕ずくで黙らせる」
浜風「浦風もう少し穏便に」
◇
磯風「やったぞ! 完成だ」
磯風「磯風特製幕の内弁当!」
磯風「感謝するぞ、二人とも。 これなら神通も大満足だ!」
浜風「……疲れ果てて死にそうです」グッタリ
浦風「……まさか全部の手順を間違えとるとは」ゲッソリ
浜風「でもまあ、確かに大満足です」
浦風「食べても死なないって素晴らしい」
磯風「早速神通に渡してくるぞ」
浜風「いいですね? もう余計なアレンジはいりませんよ」
浦風「そのまんま何もせんで渡すんで」
磯風「ああ、分かってる。 綺麗に包んでこのまま渡すさ」
浜風「綺麗に包めますか?」
浦風「風呂敷は結べるんか?」
磯風「……」
浜風「ほら、貸して下さい」
浦風「お前ホンマ、手が掛かるの」
磯風「むむ……」
◇
浜風「はい、出来ましたよ」
浦風「今度こそバッチリじゃ」
磯風「ああ、何度もすまない。 行ってくるぞ」
磯風「浜風、浦風、本当にありがとう」ニコーッ
浜風「やれやれですね」
浦風「あの笑顔に免じて許してやるわ」
◇◇◇
那珂「大変だよ、大変! 神通ちゃん息してないよ!」
川内「畜生! 誰が神通を!」
由良「救護班急いで! 急いで!!」
木曾「信じられん、あの神通が一撃でだと」
名取「しかも無抵抗だよ、ありえないよ」
天龍「賊はとんでもない手練れだぞ、油断するな」
多摩「まだ遠くには行ってないはずにゃ、徹底的に探すにゃ」
五十鈴「厳戒態勢よ、見つけ次第殺していいわ」
球磨「神通の弔い合戦クマ! 絶対に探し出すクマ!」
浜風「」
浦風「」
浜風「大変な事になってますね」
浦風「心当たりがありすぎる」
磯風「今日は鎮守府が騒がしいな」
浦風「お前、弁当はちゃんと渡したんか」
磯風「勿論だ。 ケーキも忘れずに届けたぞ」
浜風「は?」
浦風「ケーキ?」
磯風「デザートだ。 私が事前に作っておいた」
浜風「」
浦風「」
磯風「ケーキには自信があるんだ」
磯風「改二パーティーの時に、陽炎も褒めてくれた」
浜風「ああ、あの時限式の」
浦風「あれか、デスギフトか」
浜風「どうしましょう」
浜風「自首と隠蔽の二択ですが」
浦風「ホンマ手がかかるの、お前は」
磯風「?」キョトン
◇◇◇
死神「何しに来たん! 帰って! 帰ってや!」
神通「何しにと言われましても……」
死神「やめて! 殺さないで! 帰って!」
【 谷風 】
出掛ける支度をしていると、めざとく谷風がやって来た。
清霜から話を聞き付けて、慌ててここに来たようだ
谷風「お好み焼き屋に行くんだって? 谷風も連れてっておくれよぅ」
生粋の江戸っ子である谷風にとって、お好み焼きは欠かせぬソウルフードなのだと言う。
那智(お前のソウルフードは、お好み焼きではなくてお菓子だろう)
那智は心の中でそう思ったが、口に出すのは止めておいた。
那智「別に構わんが、退屈だぞ」
谷風「がってんだー!」パアアァ!
”生粋の江戸っ子”という言葉の意味を、那智は百回くらい教えたが。
大阪生まれ広島育ちの谷風は、大きく「うん!」と答えるだけで、最後まで理解を示さなかった。
武蔵「フッ、随分待たせたようだな」
果たして約束の時間になると、のそり、と武蔵がやって来た。
足元にはいつものように、清霜が纏わりついて離れない。
那智「いや、時間通りだ」
清霜「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
◇◇◇
武蔵「随分と洒落た店だな」
那智「ここはすごいぞ」
那智「関西風も広島風も、何でも出来る」
武蔵「ほう」
谷風「もんじゃ焼きはー?」
那智「もんじゃも大丈夫だぞ」
清霜「すごーい」
谷風「やったー」
武蔵「ならば私は関西風にしてみよう」
那智「私は広島風にするかな」
谷風「谷風さんはもんじゃ焼きを頼むぜ!」
武蔵「清霜はどうする」
清霜「わたしはねー、今川焼きー!」
武蔵「」
那智「」
武蔵「いや清霜、今川焼きというのは……」
店主「はい! お待たせしましたー!」ドン!
那智「あるのか!?」
武蔵「すごいな、この店」
◇
谷風「もんじゃうめー!」
清霜「今川焼き美味しい」
那智「お好み焼きも旨いな」
武蔵「ああ、素晴らしくビールに合う」
那智「ん? 鉄板焼きもあるのか」
武蔵「好きな材料を選んで自分で焼くみたいだな」
那智「よし、なら何か頼んでみるか」
谷風「わーい」
清霜「やったー」
◇
那智「ホタテ旨いな」
武蔵「イカもいけるぞ」
那智「自分のペースで焼きたてを食べられるし、これはいいな」
武蔵「次はエビでも頼んでみるか」
那智「お前たちは何を焼いているんだ」
清霜「ホットケーキ!」
那智「」
武蔵「」
谷風「バニラ乗せようぜ!」
清霜「わたしハチミツかける!」
那智「お、おう……」
武蔵「お前らすごいな」
◇
那智「寝たか」
武蔵「ああ」
那智「しかし、夕飯に今川焼きとホットケーキとはな」
武蔵「発想が異次元だな」
那智「子供らしいと言えば、まあそうかもな」
◇
那智「子供の頃 近所の駄菓子屋にな、小さな鉄板があったんだ」
武蔵「ほう」
那智「店の婆さんがお好み焼きを焼いてくれるんだ」
那智「お好みと言っても、小麦粉の生地にソースを塗っただけの簡単なものだ」
武蔵「ふむ」
那智「しかしこれが子供にとってはやたらと旨い」
那智「小銭を握りしめては、毎日のように通ったもんだ」
那智「駄菓子屋だから食べるものは沢山ある」
那智「砕いたうまい棒や千切ったさきイカなんかを、そのお好みに入れて食べる」
那智「食べ物で遊ぶなと今なら怒られるだろうな」
那智「それがまた実に旨く、楽しいんだ」
武蔵「ふむふむ」
那智「で、毎日足柄と一緒に通っていた訳だが」
那智「こいつが毎回ソースカツばかり買うんだ」
武蔵「ブフォ!」
那智「毎回毎回、同じものだ。 三枚入りのソースカツ」
武蔵「その頃からなのか」
那智「それで一枚はそのまま食べて、二枚目はお好み焼きに入れて、残りを私にくれるんだ」
武蔵「ほう、優しいな」
那智「いや、毎回だぞ?」
那智「毎日毎日ソースカツばかり買っては、毎回毎回カツを一枚よこすんだ」
武蔵「今と同じじゃないか」
那智「私はいらないから全部お前が食べろと、何回も言ったんだが」
那智「こいつは全く人の話を聞かないからな」
那智「毎日毎日、笑顔でソースカツを持ってくる」
武蔵「……」クックッ
那智「笑い事ではない」
那智「結局私も根負けして渋々カツを食べるんだが」
那智「毎日毎日無表情でカツを食べる私は、周りからしてみればさぞかし可愛げのない子供だったろうさ」
武蔵「はっはっは」ケラケラ
那智「まさか大人になってまでそれが続くとは思わなかったぞ」
武蔵「人に歴史ありだな」
那智「まったく、三つ子の魂はなんとやらだ」
【 嵐 】
深雪「嵐ー! サッカーしようぜ!」
嵐「おっ、いいな。 すぐ行くー」
島風「早く早くー!」
提督「みんな元気だなぁ」
萩風「今日はいい天気ですもんね」
嵐「なあ、司令もサッカーやらないか」
天霧「人数足りないんだ、頼むよ」
提督「む、サッカーか」
皐月「司令官、お願ーい」
提督「いいけど、あまり上手くはないよ」
深雪「いいからいいから」
時津風「やったー! メンバー揃ったよ」
◇
提督「…… ///」
提督「君たち、どうして制服のままなの」
嵐「えっ」
天霧「いつもこうだぜ」
提督「体操着とかに着替えないのかな」
皐月「この方が慣れてるし」
深雪「戦闘の時だってこの格好だよ」
提督「いや、それはそうだけど」
島風「試合始めるよー!」
嵐「ほら、行くぜ司令」
深雪「絶対勝つからなー!」
提督「お、おーう…… ///」
◇
提督「みんな短いスカート姿」
提督「走る度にスカートが捲れて、パンツがチラチラ ///」
提督「こ、これは流石に良くないな」
◇
嵐「はあ? パンツ」
深雪「別にいいぞ、減るもんじゃないし」
時津風「たたがパンツじゃん」
雪風「雪風は平気です!」
天霧「あたしスパッツだし」
不知火「不知火はむしろ……もっと……見て ///」ハァハァ
吹雪「パンツは見せつけるものですよ司令官」
提督「ああ、うん。 吹雪はちょっと落ち着こうか」
島風「はーやーくー!続きー!」
提督「お、おう?」
◇
舞風「提督動き悪いね」
萩風「意外と運動苦手なのかな」
提督(め、目の毒だ……早く終わってくれ…… ///)ゼェゼェ
【 萩風 】
萩風「あ~、お風呂いいねぇ」
嵐「運動の後は格別だな」
萩風「大活躍だったね、嵐」
嵐「まあな、嵐を巻き起こしたぜ」
萩風「ふふふ」
萩風「ウチのお風呂はいいよね」
嵐「ちょっと古いけどな」
萩風「広いし内装も凝ってるし、私は好きだなぁ」
嵐「露天風呂欲しいな」
萩風「あー、露天いいよね」
嵐「今日みたいな日は星を見ながらさー」
萩風「いいねー」
嵐「司令に頼んでみようか」
萩風「えー、改築を? 流石に無理だよ」
嵐「まあまあ、駄目元でさ」
嵐「新しい艦娘も増えてきてるし、ここも拡張するかもしれないじゃん」
萩風「それはそうだけど」
嵐「パーッと景気よくさ、大改装!」
嵐「露天風呂とか、サウナとか、ジャグジーとかも」
野分「野分はジャグジーがいいです」
舞風「舞風はサウナに入ってみたいな」
萩風「ふふ、いつかそうなったらいいね」
嵐「あれ? そういえば時津風は」
萩風「姿が見えないね」
野分「もうあがったのでは」
舞風「いや、最初からいないよ」
嵐「……もしかして男湯に行ったんじゃ」
萩風「えーっ! 男湯?」
嵐「ずっと司令にじゃれついてたじゃん」
嵐「そのままうっかり、ついていったとか」
萩風「あー……ありえるかも」
舞風「時津風だしね」
嵐「まっ、時津風ならいっか」
天霧「別に問題ないな」
深雪「うっかりしてたなら仕方ないよな」
初風「!?」
不知火「!?」
天津風「!?」
初風「ちょ、ちょっと! 男湯よ? 提督がいるのよ」
嵐「別にいいじゃん」
深雪「わざとなら兎も角さー」
天霧「そうそう、うっかりなら仕方ないさ」
初風「うっかりなら!?」
不知火「仕方ない!?」
陽炎「嫌だったらすぐ出てくるでしょ」
舞風「むしろ提督の方が嫌かも」
嵐「騒がしくてさ」
萩風「ゆっくり浸かれないよね」クスクス
野分「そういえば男湯って、どうなのでしょう」
野分「女湯よりは狭いみたいですけど」
嵐「そりゃそうだろ」
萩風「司令しか使わないしね」
萩風「けど内装が凝ってて、女湯より豪華らしいよ」
萩風「ジャグジーとかもあるんだって」
舞風「えーっ、何それ、いいなー」
萩風「まあ来客用でもあるからね」
嵐「あー、なるほど」
萩風「そもそも司令自体が偉い人だし」
舞風「みんなの上司だもんね」
嵐「そっかぁー、女湯と違うんだー。 いいなー」
舞風「興味深いね」
萩風「じゃあ、うっかりしてみる?」
嵐「えっ」
萩風「時津風みたいにさー、うっかり男湯に」
嵐「えーっ! 何それ!」
萩風「うっかりだからねー、仕方ないねー」
舞風「そうそう、わざとじゃないからさー、怒られないよー」
嵐「そ、そんなの出来る訳ないじゃん! ///」
初風「うっかり…… ///」
不知火「うっかりなら大丈夫…… ///」
天津風「うっかりなら仕方ない…… ///」
【 野分 】
野分「ふう……」
野分「やはり風呂上がりにはフルーツ牛乳ですね」
野分「それにしても、うっかり男湯に入るだなんて」
野分「時津風には困ったものです」
時津風「呼んだ?」ヒョコ
野分「と、時津風!」
時津風「わーい、時津風も牛乳飲むよー」
野分「えっ、えっと、司令は」
時津風「しれぇはもうお部屋に戻ったよ」
野分「や、やはり一緒だったんですね」
時津風「うん。 さっきまでお風呂だったよ」
時津風「いやー、うっかりしちゃってさー」
野分「うっかりって……もう、時津風は仕方ありませんね」
時津風「えへへー」
野分「そ、それで、どうでしたか? 司令と一緒だったんですよね」
時津風「うん! おっきかったよ!」(大浴場)
野分「おっきかった!」
時津風「あとねー、変なかたちしてた」(凝った内装)
野分「変なかたち!!」
時津風「それから、すっごく激しかった!」(ジャグジー)
野分「!!?!」
野分「えっ、えっ!? 激しかったって」
時津風「あと、すっごく気持ちよかった」(湯船)
野分「!?!?」
野分「ちょっと待って下さい」
野分「は、初めてですよね? それなのに気持ちよかったのですか」
時津風「最初はね、ちょっと痛かった」(電気風呂)
野分「!」
時津風「でも途中から気持ちよかった」(慣れた)
野分「!!」
時津風「特に下半身」(半身浴)
野分「ああああああーーっっ!!」
野分「そ、そんな事をしたら、赤ちゃんが……!」
野分「司令は、ちゃんと付けてくれたのですか」
時津風「付ける?」
野分「あ、アレです、アレ。 スッポリと被せる」ゴニョゴニョ
時津風「あー、アレね」
時津風「時津風はね、付けようとしたんだけど」(シャンプーハット)
時津風「司令がね、もう大人だからそんなの外そうねって」
野分「鬼畜ーーッ!!」
時津風「他にもいろんな道具使ってね、身体の隅々まで擦ったりして」(ボディーブラシ)
野分「マニアーーック!」
時津風「硬いのをゴリゴリするのはイヤだったかも」(角質落とし)
野分「ハードプレイィィーーッ!!」
野分「鬼! 悪魔! オーク!」
野分「失望しました! 司令がそんな人だったなんて」
時津風「でも、しれぇと一緒にいるとね、すごくドキドキするの。 頭もポーッとする」(湯あたり)
野分「違います! 騙されては駄目です! それは恋ではありません!」
時津風「身体の芯からね、ジンジン熱くなってくるの」(サウナ)
野分「心とは裏腹に! 幼い身体は熱を! 熱を帯びて!!」
時津風「あー、でもあの匂いは苦手かも」(入浴剤)
時津風「あの白いのもヌルヌルして何かヤダ」(ボディーソープ)
野分「最初はそう! 最初はみんなそう言うんです!」
時津風「そうなの?」
野分「でも途中からもの足りなくなって! それ無しじゃ駄目な身体になって!」
野分「もっと! 濃いのをもっとくださいって!! 自分の方から!!」
時津風「そうなんだー」
時津風「あとねー、お外にも行ったよ」(露天風呂)
野分「外おおぉっ!?」
野分「ぜ、全裸で外に!? 野外で露出!?」
時津風「外はダメだね。 何回も刺されたよ」(虫)
野分「何回も挿された!?」
時津風「後ろも前も何回もだよ」
野分「絶倫ーーッッ!! 驚異の回復力! スッポンエキス配合!」
時津風「最後は頭から熱いのたくさん掛けられた」(シャワー)
野分「か、顔に」
時津風「えっ」
野分「顔にかけられたのですか、熱いのを!」
時津風「ううん、全身だよ」
野分「全身! 熱いのを! 全身に! ぶっかけでフィニーッシュ!!!」
野分「うう……時津風はもう、全て汚されてしまったんですね」ガクッ
時津風「えっ? 汚されてないよ」
時津風「時津風は綺麗だよ」
野分「ッッ!!」
野分「そっ、そうですよね! その通りです!」
野分「時津風は汚くありません! 汚されてなんかいません!」
野分「時津風は……時津風は、綺麗なままです!」
時津風「えへへー」
時津風「今度はねー、野分も一緒に入ろうね」
野分「え、男湯にですか? む、無理です」
時津風「だって気持ちいいよ」
野分「そ、そんなの駄目に決まってます」
時津風「わざとじゃないから大丈夫だよ」
野分「えっ」
時津風「うっかり間違ったら仕方ないよね」
野分「し、仕方ない?」
陽炎「アンタたち早く寝なさい」
時津風「あっ、陽炎」
陽炎「ほらほら、湯冷めするわよ」
時津風「はーい」
陽炎「あと野分、お風呂にタオル忘れてたわよ」
野分「えっ」
陽炎「ほらこれ、アンタのでしょ」
野分「あっ、はい、すみません」
陽炎「ホーント、うっかり屋さんね」
野分「!!」
時津風「わーい、うっかり屋さんだー」
野分「そ、そうですね、うっかりしてました。 あはは」
陽炎「ほら、時津風。 部屋に戻るわよ」
時津風「うんっ、じゃあ野分おやすみー」
野分「あっ、はい、おやすみなさい」
陽炎「野分も夜更かししちゃ駄目よ」
野分「はい、おやすみなさい」
野分「……」
野分「野分は……うっかり屋さん……」ドキドキ
野分「うっかりなら……仕方ない?」ドキドキドキ
嵐「のわっち、顔赤いな」
萩風「のぼせたのかな」
舞風「イチゴ牛乳おいしーっ」プハーッ
【 舞風 】
親潮「水平線に向かってひたすら進むと、やがて黒い世界に辿り着きます」
親潮「光が届かない夜の海はとても暗くて、吸い込まれそうな深い黒です」
親潮「暗くて寂しくて、とても怖くて。 みんなが嫌いな場所です」
親潮「けれど、そこで見る星空は違います」
親潮「鮮やかで眩しくて、地上では決して知る事のない輝きです」
親潮「そして、空を映す水面もまた幻想的で」
親潮「まるで星を敷きつめたかのように瞬きます」
親潮「そんな光の世界の中で、舞風はひとり踊るのです」
親潮「いつもの元気なダンスと違い、ワルツのような舞踊のような、ゆっくりとした静かな舞いです」
親潮「それが本当に……美しくて……」
親潮「親潮は踊りの事は分かりません」
親潮「それでも心が震えます」
親潮「何故だか分からないままに、自然と涙が零れるのです」
提督「そんなにすごいんだ」
親潮「出来るなら司令にもご覧になって頂きたいんですが」
提督「う~ん、でもそれは海を征ける艦娘だけの特権だろうね」
提督「例え船で沖へと出ても、そんな光景にはきっと出会えないだろうからね」
親潮「はい、そうかもしれません」
提督「だとしたら、せめてその踊りだけでも舞風に頼めないかな」
親潮「それが……無理なんです」
提督「えっ」
親潮「以前舞風に聞いてみたんですけど、自分でもどうやって踊ったのか分からないらしいんです」
提督「分からない」
親潮「踊った事は覚えてるけど、どこか自分じゃないような」
親潮「知らない誰かが踊っているみたいな、そんな感覚だったそうです」
提督「えー?」
親潮「にわかには信じ難い言葉です」
親潮「けれども、あの星の降る夜を思い返してみれば」
親潮「あながちありえない話ではないと、親潮は思うのです」
提督「なるほど、不思議な事もあるんだねぇ」
提督「それは、つまり……」チラッ
親潮「?」
陽炎「ちょっと黒潮!」
黒潮「うわっ!? 陽炎」
陽炎「アンタまた甘いもの食べたでしょう!」
黒潮「ちゃうねん、あれはウチじゃない」
陽炎「アンタ以外に誰がいんのよ!」
黒潮「あれはウチやけどウチやないんや、もうひとりのウチなんや」
陽炎「はあ!?」
黒潮「ドッペルゲンガーみたいなもんや。 ドッペル黒潮ちゃんや」
陽炎「なに訳の分からない事言ってんのよ!」
黒潮「だからホンマにウチやないんやて~」
提督「……」
親潮「……」
提督「……つまり、ああいう事かな?」
親潮「違うと思います」
【 秋雲 】
流れ星を探して星空観察をしていた姉達が、極寒の中で死んでいた。
田舎の夜の冬空は想像以上の厳しさらしい。
コンビニで買ってきた熱々の救援物資を差し出すと動き出した。
待望の握手会で狂乱状態のファンの群れに囲まれ、全ての逃げ場を失っても笑顔を絶やさなかった那珂ちゃんの気持ちを、少しだけ理解する。
オイテケー オイテケー タマゴオイテケー
オイテケー ワタシトマトー ズルイワタシモー
こんな状況でもちくわぶは人気がない。
陽炎「冬はやっぱりおでんよね」 大根
不知火「身体が温まります」 はんぺん
黒潮「コンビニのも美味しいな」 タコ
親潮「種類も豊富ですしね」 ゴボウ巻き
初風「前より美味しくなってるわ」 トマト
雪風「雪風も大好きです!」 出汁巻き玉子
天津風「ほら、慌てると火傷するわよ」 白滝
時津風「おツユも美味しいねー」 ウインナー
浦風「ウチは関西風がええな」 牛スジ
磯風「出汁が薄めの方か」 ロールキャベツ
浜風「こっちの方が上品ですね」 厚揚げ
谷風「てやんでい! 関東風に決まってらぁ!」 玉子
野分「他にも味噌おでんとかありますね」 こんにゃく
嵐「何それ美味そう」 がんもどき
萩風「鳳翔さんに頼んでみようか」 銀杏
舞風「賛成ー! 味噌おでん食べたーい」 巾着餅
秋雲「あ、でも鳳翔さん今日お休みだよ」 ちくわぶ
磯風「ふむ……つまり私の出番という訳かな」(名推理)
全員「あーっ! 急にカップ麺食べたくなったわ! 絶対カップ麺だわ! カップ麺しかありえないわ! おでんはいらないわー!」
以上です。
読んでくれた人ありがとう。
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