男「4630万円の誤送金って返さなくていい?」 (17)


友「今話題の奴だな」

男「うん」

男「TVでそんなこと言ってたからさ」

男「事実だとしたら羨ましいな~って思って」

友「……逮捕されてる状況になって同じ事が言えるのかよ」

男「そうそれ」

男「その逮捕ってのが分からなくて」

男「あと何で返さなくていいってなるんだ?」

友「じゃあまず、件の男性がなぜ逮捕されたのか」

男「うん」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1653102197


友「まあ簡単に言えば」

友「誤送金と知りながらお金を移動させたからだ」

男「その辺が良く分からないんだよな……」

男「なんで移動させたからってなるんだ?」

男「普通に使ったから、で良いんじゃないの?」

友「まず理由として」

友「間違えて振り込まれたため、振り込まれた側は」

友「意図せずに入って来たお金である為、責任が無いから」

友「ってのがある」

男「ええぇ……」


友「例えになるが、男が知らない間に自分の口座に」

友「15万円振り込まれたとして」

友「それを、ああ、給料振り込まれたんだなーと思って使ってしまっても」

友「しょうがないだろ?」

男「それはそうだけど、さすがに4630万はおかしいって気が付くだろ……」

友「まあ額からしたら無理があるのは分かるが」

友「過去、振り込まれた側に落ち度はないと」

友「ある裁判で判断されたんだ」

男「へえ……」

友「あとここまで言って置いてなんだが」

友「あくまで『使ったお金に対して返済の義務はない』」

友「という事なんだよ」


男「使った……?」

男「あっ!」

男「それで件の男性は『すべて使った』と言い張ってたのか!」

友「そう。そこが重要なんだよ」

男「なるほどなぁ」

友「結局、額が額だけに、警察としても」

友「何らかの事情聴取をしても取り合わなかったので」

友「間違えて振り込まれたお金と知りつつ移動させた」

友「という別件逮捕に近い形で件の男性を逮捕したんじゃないかな?」

友「と、俺は思ってる」

男「…………」


男「なあ……気のせいかもしれないけど」

男「友は件の男性に同情してるのか?」

友「う~ん……無いって言えばウソになるが」

友「どちらかと言えば、これから『押し貸し詐欺』が流行るかもしれない」

友「という懸念の方が強いかな」

男「押し貸し詐欺?」

友「実はさっき言った裁判の判例なんだけど」

友「その詐欺行為の裁判だったんだ」

男「ふうん……」

友「って断言した後で言うと信憑性が無くなるが……」

友「その判例の裁判の確認をしようとしたら」

友「俺の記憶もあやふやで検索でも引っかからなかったから」

友「もしかしたら全然別の裁判だったかもしれないので悪しからず」

男「分かった」


友「まず『押し貸し詐欺』という詐欺なんだが」

友「簡単に言うと、誰かの口座に無理やり金を振り込んで」

友「金を借りた事にして法外な利息を取る、という手口だ」

男「うえ……そんな詐欺があったのかよ」

友「そこで裁判で争われて、被害者の側に落ち度は無いとして」

友「使ったお金に責任はない、とした判断が下された」

友「そんな感じだ」

男「そういった経緯があったのか……」

友「あくまで俺の記憶だから別の裁判だったかもしれないのは」

友「頭に入れといてくれ」

男「おう」


友「ここまで言えば分かるかもしれんが」

友「今回の事件で別件逮捕が出来る事が証明されてしまったので」

友「それをネタにした『押し貸し詐欺』が発生するかもしれない」

友「俺はそれを懸念している」

男「……例えば?」

友「今回の事例で間違って振り込まれたお金なのに」

友「自分の物にしようと使った事にしている」

友「というレッテルを貼られ、裁判沙汰になったら」

友「もう取り返しが付かないぞ、と脅せるようになったんだ」

男「……酷ぇ」

友「まあ……擁護に聞こえるかもしれないが」

友「件の男性も役所の手違いで大金の振り込みが無ければ」

友「今回の様な事は起きなかっただろう」


友「目の前に大金が入ってきて、それを自分の物に出来る方法がある」

友「あくまで俺個人の意見だが、自分が件の男性と同じ状況に立たされたら」

友「果たして正気を保って居られるか……」

男「う~ん……」

友「そういう意味では件の男性も被害者であると」

友「俺はちょっと思ってしまうよ」

男「……確かに役所の落ち度を指摘する声もあるな」

友「そして、そういう視点から考えると」

友「TVメディアが件の男性のプライベートまで」

友「どんどん悪辣に報道しているのも気に入らない」

男「あ~……あれは確かになぁ」


友「俺が懸念している『押し貸し詐欺』を助長すると思うから」

友「あれは本当に止めるべきだと言いたい」

男「寄って集っていじめてる様に思えるよな」

友「繰り返しになるけど」

友「役所にも落ち度はあったのだから」

友「全額返金を求めるとしても、もう少しやり方が有ったんじゃないだろうか?」

友「と俺は思う」

男「例えば?」

友「例えば、落とし物を拾った場合、届け出た者には」

友「落とし主から約一割の金額を謝礼として支払うってなってるよな?」

男「ああ、なるほど!」


男「返金に応じてくれたらいくらか支払うって言えば」

男「件の男性の態度も変わったかもしれないな」

友「そう」

友「水面下ではそういう話があったのかもしれないが……」

友「もっとも、そういう事にしてしまうと」

友「役所の所員と振り込まれ側がグルになって」

友「故意に大金の誤送金をしてしまう事になりかねないけどな」

男「……え?」

男「あ……そういう事か」

男「10億円とか誤送金してしまったら、一割だと1億円が……」

友「そうなる」

男「難しい問題だ……」


友「なので上限を設けたらいいんじゃないかと思う」

男「上限?」

友「例えば原則、謝礼金は一割としながら上限として10万円まで」

友「とすれば、そういった不正行為は防げるんじゃないかと思う」

男「おお!」

男「高額の誤送金でも上限10万円じゃ」

男「グルになっても割に合わないな」

友「もし、それで儲けようとしても」

友「大量の誤送金を繰り返さないといけないので」

友「発覚もしやすいしだろうし、免職も免れないだろうと思う」

男「名案じゃないか!」


友「褒めてくれて嬉しいが……」

友「これでも件の男性の様な人は完全には防げないだろうし」

友「俺の思いつかい方法で悪用する人も出るかもしれない」

男「う~ん……」

友「件の男性は今回の誤送金で社会的制裁を加えられ」

友「プライベートも何もかもを破壊されてしまった」

友「もちろん彼のやった事に擁護は出来ないけど」

友「大金を目の前にして魔が差す気持ちは分からないでもない」

友「そして役所の落ち度に対する対応もTVメディアの叩き方も気に入らない」

友「ってのが……俺の正直な気持ちだな」

男「俺も良く分かったよ」


友「読者の皆さんはどう思ったでしょうか?」

友「今後、こういった誤送金事件を防ぐにはどうしたらいいか?」

友「ひとつ、考えてみてください」

男「ください!」

友「それじゃこの辺で」

男「またな、友」



おしまい

HTML化依頼しましたが、なんか反映されない……

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom