友「今話題の奴だな」
男「うん」
男「TVでそんなこと言ってたからさ」
男「事実だとしたら羨ましいな~って思って」
友「……逮捕されてる状況になって同じ事が言えるのかよ」
男「そうそれ」
男「その逮捕ってのが分からなくて」
男「あと何で返さなくていいってなるんだ?」
友「じゃあまず、件の男性がなぜ逮捕されたのか」
男「うん」
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友「まあ簡単に言えば」
友「誤送金と知りながらお金を移動させたからだ」
男「その辺が良く分からないんだよな……」
男「なんで移動させたからってなるんだ?」
男「普通に使ったから、で良いんじゃないの?」
友「まず理由として」
友「間違えて振り込まれたため、振り込まれた側は」
友「意図せずに入って来たお金である為、責任が無いから」
友「ってのがある」
男「ええぇ……」
友「例えになるが、男が知らない間に自分の口座に」
友「15万円振り込まれたとして」
友「それを、ああ、給料振り込まれたんだなーと思って使ってしまっても」
友「しょうがないだろ?」
男「それはそうだけど、さすがに4630万はおかしいって気が付くだろ……」
友「まあ額からしたら無理があるのは分かるが」
友「過去、振り込まれた側に落ち度はないと」
友「ある裁判で判断されたんだ」
男「へえ……」
友「あとここまで言って置いてなんだが」
友「あくまで『使ったお金に対して返済の義務はない』」
友「という事なんだよ」
男「使った……?」
男「あっ!」
男「それで件の男性は『すべて使った』と言い張ってたのか!」
友「そう。そこが重要なんだよ」
男「なるほどなぁ」
友「結局、額が額だけに、警察としても」
友「何らかの事情聴取をしても取り合わなかったので」
友「間違えて振り込まれたお金と知りつつ移動させた」
友「という別件逮捕に近い形で件の男性を逮捕したんじゃないかな?」
友「と、俺は思ってる」
男「…………」
男「なあ……気のせいかもしれないけど」
男「友は件の男性に同情してるのか?」
友「う~ん……無いって言えばウソになるが」
友「どちらかと言えば、これから『押し貸し詐欺』が流行るかもしれない」
友「という懸念の方が強いかな」
男「押し貸し詐欺?」
友「実はさっき言った裁判の判例なんだけど」
友「その詐欺行為の裁判だったんだ」
男「ふうん……」
友「って断言した後で言うと信憑性が無くなるが……」
友「その判例の裁判の確認をしようとしたら」
友「俺の記憶もあやふやで検索でも引っかからなかったから」
友「もしかしたら全然別の裁判だったかもしれないので悪しからず」
男「分かった」
友「まず『押し貸し詐欺』という詐欺なんだが」
友「簡単に言うと、誰かの口座に無理やり金を振り込んで」
友「金を借りた事にして法外な利息を取る、という手口だ」
男「うえ……そんな詐欺があったのかよ」
友「そこで裁判で争われて、被害者の側に落ち度は無いとして」
友「使ったお金に責任はない、とした判断が下された」
友「そんな感じだ」
男「そういった経緯があったのか……」
友「あくまで俺の記憶だから別の裁判だったかもしれないのは」
友「頭に入れといてくれ」
男「おう」
友「ここまで言えば分かるかもしれんが」
友「今回の事件で別件逮捕が出来る事が証明されてしまったので」
友「それをネタにした『押し貸し詐欺』が発生するかもしれない」
友「俺はそれを懸念している」
男「……例えば?」
友「今回の事例で間違って振り込まれたお金なのに」
友「自分の物にしようと使った事にしている」
友「というレッテルを貼られ、裁判沙汰になったら」
友「もう取り返しが付かないぞ、と脅せるようになったんだ」
男「……酷ぇ」
友「まあ……擁護に聞こえるかもしれないが」
友「件の男性も役所の手違いで大金の振り込みが無ければ」
友「今回の様な事は起きなかっただろう」
友「目の前に大金が入ってきて、それを自分の物に出来る方法がある」
友「あくまで俺個人の意見だが、自分が件の男性と同じ状況に立たされたら」
友「果たして正気を保って居られるか……」
男「う~ん……」
友「そういう意味では件の男性も被害者であると」
友「俺はちょっと思ってしまうよ」
男「……確かに役所の落ち度を指摘する声もあるな」
友「そして、そういう視点から考えると」
友「TVメディアが件の男性のプライベートまで」
友「どんどん悪辣に報道しているのも気に入らない」
男「あ~……あれは確かになぁ」
友「俺が懸念している『押し貸し詐欺』を助長すると思うから」
友「あれは本当に止めるべきだと言いたい」
男「寄って集っていじめてる様に思えるよな」
友「繰り返しになるけど」
友「役所にも落ち度はあったのだから」
友「全額返金を求めるとしても、もう少しやり方が有ったんじゃないだろうか?」
友「と俺は思う」
男「例えば?」
友「例えば、落とし物を拾った場合、届け出た者には」
友「落とし主から約一割の金額を謝礼として支払うってなってるよな?」
男「ああ、なるほど!」
男「返金に応じてくれたらいくらか支払うって言えば」
男「件の男性の態度も変わったかもしれないな」
友「そう」
友「水面下ではそういう話があったのかもしれないが……」
友「もっとも、そういう事にしてしまうと」
友「役所の所員と振り込まれ側がグルになって」
友「故意に大金の誤送金をしてしまう事になりかねないけどな」
男「……え?」
男「あ……そういう事か」
男「10億円とか誤送金してしまったら、一割だと1億円が……」
友「そうなる」
男「難しい問題だ……」
友「なので上限を設けたらいいんじゃないかと思う」
男「上限?」
友「例えば原則、謝礼金は一割としながら上限として10万円まで」
友「とすれば、そういった不正行為は防げるんじゃないかと思う」
男「おお!」
男「高額の誤送金でも上限10万円じゃ」
男「グルになっても割に合わないな」
友「もし、それで儲けようとしても」
友「大量の誤送金を繰り返さないといけないので」
友「発覚もしやすいしだろうし、免職も免れないだろうと思う」
男「名案じゃないか!」
友「褒めてくれて嬉しいが……」
友「これでも件の男性の様な人は完全には防げないだろうし」
友「俺の思いつかい方法で悪用する人も出るかもしれない」
男「う~ん……」
友「件の男性は今回の誤送金で社会的制裁を加えられ」
友「プライベートも何もかもを破壊されてしまった」
友「もちろん彼のやった事に擁護は出来ないけど」
友「大金を目の前にして魔が差す気持ちは分からないでもない」
友「そして役所の落ち度に対する対応もTVメディアの叩き方も気に入らない」
友「ってのが……俺の正直な気持ちだな」
男「俺も良く分かったよ」
友「読者の皆さんはどう思ったでしょうか?」
友「今後、こういった誤送金事件を防ぐにはどうしたらいいか?」
友「ひとつ、考えてみてください」
男「ください!」
友「それじゃこの辺で」
男「またな、友」
おしまい
HTML化依頼しましたが、なんか反映されない……
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