シンジ「死人の声をきくがよい」 (58)
(個人的)名作ホラー漫画「死人の声をきくがよい」をエヴァのキャラクター達で再現したSSです。
原作からだいぶマイルドにしてありますが、微グロ&胸糞描写に注意。
(ただし最後まで読んでもらえれば心がポカポカするかも…)
このSSで原作に少しでも興味を持っていただけると幸いです。
それでは、お楽しみください~。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1650781762
第1話 綾波レイ失踪事件
第三新東京市立第壱中学校 保健室
リツコ「…熱はないみたいね。体調はどう、碇シンジくん?」
シンジ「………だいぶ良いです」
リツコ「よかったわ。…でも授業中にいきなり鼻血を噴いて倒れるなんて」
リツコ「一度病院でちゃんと検査をした方がいいんじゃない?」
シンジ「……いえ。子供の頃からよく倒れるんです」
シンジ「もう慣れてますから……」
リツコ「あら、そうなの?ちゃんとごはんは食べてる?」
リツコ「私の弟も昔はあなたみたいに病弱だったのよ」
リツコ「…まぁ、成長してからは元気すぎて困るくらいなんだけどね…」フフ…。
シンジ「はあそうですか」
シンジ「……そんなことよりリツコ先生」
シンジ「『綾波』はこの保健室と何か関係があるんですか?」
リツコ「?」
リツコ「綾波…?もしかして、あなたのクラスメイトの『綾波レイ』さんのことかしら?」
リツコ「彼女は確か今行方不明になってるらしいけど…」
リツコ「…ごめんなさい。あなたの言ってる意味が私にはよく分からないわ……」
シンジ「…そっか…違うのか」スクッ…。
シンジ「……じゃあ『綾波』は先生に個人的に」
シンジ「何か言いたい事があるのかな…」
リツコ「え………?」
ーー僕にはつまらない能力がある。
レイ(………)
死んだ人間の姿ーー『幽霊』が見えるんだ。
リツコ「?」
シンジ(綾波の『幽霊』がリツコ先生の背後から、僕を見つめてくる……)
シンジ(やっぱり綾波の死には先生が関係してるのかな…それとも…)
シンジ(幼なじみだった僕に、なにか伝えたいことがあるんだろうか……?)
シンジ「……やっぱり何でもないです……失礼します」フラッ…。
ガララ
リツコ「ちょ、ちょっと待ちなさいシンジ君!」
リツコ「あなた、ホントに大丈夫なの!?」
シンジ「………」
スタ…スタ…。
ーー霊たちが現れるのはたぶん理由がある。
誰かに何かを訴えたいのかもしれない。
でも僕はできることなら関わりたくない。
たとえそれが幼なじみのクラスメイトだとしても。
いつだって……ろくなことにはならないからだーー。
放課後の帰り道
シンジ「あ、やっと鼻血止まった…」スポッ
トウジ「なんやシンジぃ、ま~たいつもの鼻血ブー!かいな」
ケンスケ「赤城先生に手厚く介抱してもらったんだって?いや~んな感じ!」
トウジ「あ~あ!わしも倒れてリツコせんせに介抱されたい、抱かれたい!!」ギュッ!
シンジ「…だからそんなんじゃないってば…」ハハ…。
ケンスケ「あ、そういえば聞いた?1年生でも1人行方不明だってさ」
ケンスケ「綾波につづいて3人目だぜ…なんかこわくね?」
トウジ「こうも立て続けに中学生が消えるっちゅーことは、やっぱ事件に巻きこまれたんかいな?」
トウジ「…やとしたら、胸糞の悪い話やで、ホンマ…!」ペッ…!
シンジ「………」チラッ…。
レイ(………)
シンジ(困ったな…ついて来ちゃった)
シンジ(目合わせなきゃ良かった…)
シンジ(あんまり巻きこまれたくないけど…)
レイ(………)
シンジ(…綾波、だもんな…)
シンジ(……逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……!)
クルッ
ケンスケ「おい碇?」
トウジ「どこ行くんや。お前んち、そっちちゃうやろ」
シンジ「ごめん。ちょっと呼ばれちゃって」
ケンスケ「はあ?」
トウジ「呼ばれたって…誰にや?」キョトン…。
シンジ「…仕方ないよ。小さい頃はよく遊んでくれたし」
ケンスケ「??」
シンジ「たぶん最後の機会だと思うから…」
スタ…スタ…。
トウジ「相変わらずワケのわからんやっちゃの~…」
レイ(………)
スタ…スタ…。
シンジ(綾波…バス停に向かってるのかな…?)
シンジ(遠出になっちゃいそうだ。…お金、足りるかな…?)チャリン
……ブロロロ……。
バスの中
レイ(………)
シンジ(綾波が僕の隣に座ってる……他にいくらでも座席は空いてるのに…)
シンジ(でも……昔はこんな風に毎日一緒にいたっけなあ)
シンジ(いつの間にか話すこともなくなって)
シンジ(あげくにこんな若さで死んじゃうなんて……)
シンジ(綾波は今、どんな気持ちでこの世にいるんだろう……)
レイ(………)
とある田舎のバス停
ガラッ……ブロロ……。
シンジ「ずいぶんと山の奥まで来ちゃった…」
シンジ「陽も落ちて来たし…なんか嫌な感じだ…」
レイ(………)
シンジ「えっ、まだ森の中へ進むの?」
レイ(………)
シンジ「ま、待ってよ…綾波!」
ダッ
テク…テク…。
レイ(………)
シンジ(綾波…どこまで行くつもりなのかな…)
シンジ(もう…歩き、疲れて…へとへとなんだけど……)ハァ…ハア…。
レイ(………)
…ピタッ
シンジ(…あっ。綾波の足が止まった)
シンジ「ここは……」
ゴオオオオオオ……。
シンジ(こんな山奥に不つりあいな豪邸だ…)
シンジ(誰かの別荘なのかな…表札の名字は…)
『赤城』
シンジ「赤城……だって?」
シンジ(まさか…リツコ先生となにか関係が…?)
レイ(………)
スイーー……。
シンジ「あ、待てよ綾波!」
ギイィィーー……。
シンジ「ダメだよ綾波!勝手に人の家の敷地に入っちゃ…!」コソコソ…。
レイ(………)ピタッ
シンジ「…ん?綾波の足元になにか落ちてる」
シンジ「あれは…うちの学生証?」
シンジ「少し汚れてるけど…誰のだろう」ヒョイッ
『綾…レイ』
シンジ「えっこれ……」
シンジ(もしかして綾波の……?)
レイ(………)
シンジ「まさか…綾波、君はここで…」
レイ(………)
シンジ「え?」
バ キ ッ ! !
シンジ「うわあっ!?」
ドサッ……!!
ーーー
ーー
ー
赤城邸
…ギエエエ…!
リツコ「ねえ…もうやめて」
リツコ「もう無理…これ以上は無理よ…」
ギ エ エ エ エ ! ! !
リツコ「お願いよ…うぅ…」
リツコ「…他人に危害を加えるのはやめてちょうだい…」
リツコ「もう……隠しておけないわ」
バ シ ッ
リツコ「キャアッ!」
バ シ ッ 、バ シ ッ
リツコ「ごめんなさい、もう言いません…!」
バ シ ッ
リツコ「あっ、お腹が空いてるんですね」
バ シ ッ !
リツコ「ごめんなさい…ごめんなさい…」
バ シ ッ ! !
リツコ「すぐに準備しますから」
リツコ「あっ…あうっ……」
バ シ ッ バ シ …… 。
ーーいかりくん、まって。
ーーほら、あやなみ!こっちだよ、こっち!
ーーまってよ、いかりくん……あっ。
ーーわあ!あやなみ、だいじょうぶ?
ーーころんじゃった…。
ーーご、ごめんよ…ぼくのせいだ…。
ーーいいの、あなたはきにしないで。
ーーあっ、そうだ!
ーー? なぜ、てをさしだすの?
ーーあやなみをまもるためだよ!
ーーまもる?いかいくんが……わたしを?
ーーうん。あやなみがもうころばないように、ぼくがきみをささえてあげる。
ーーだからぼくをしんじて、このてをとってよ、あやなみ。
ーーいかりくんがまもってくれる……わたしを……。
ーーわかったわ……はなさないでね。
ーーうん!
ギュッ……。
赤城邸 地下室
シンジ「う…う~~ん…」ボヤー…。
シンジ(ここは…どこだろう…)
シンジ(頭が痛い…誰かに後ろから殴られた?)ズキ…ズキ…。
シンジ(隣に誰かいる…綾、波…?)
レイ(遺体)「」
シンジ「!!?」
ゾ オ ッ … ! !
シンジ「ングググ~!!?」
シンジ(綾波がし、死んでる……!?)
ジタバタ…!
シンジ(手足が縛られてて、ガムテープで声も出せない……!!)
シンジ(なんなんだよこれ……。いったい、何が起こってるんだよ!!?)
シンジ(だ、誰か…!誰か助けてよぉ!!!)
レイ(………)ソ~…。
シンジ「!?」
シンジ(綾波……の幽霊……!)
レイ(……)
ピッ…。
シンジ(部屋の奥を指さしてる…。見ろ、ってことなのか?)
生徒1(遺体)「」
生徒2(遺体)「」
シンジ(ひっ……!?)
シンジ「ン~~~~!!」
シンジ(ほ、他にも遺体が……たくさん!!)
シンジ(まさか、みんな行方不明になった中学生なの!?)
シンジ(……もしかして、これも全部リツコ先生が……?)
ガタッ…。
シンジ「!!」
ギシ…。
ギシ…。
シンジ(だ、誰か来る…!)
ギシッ……。
リツコ「………」
シンジ(リツコ……先生……)
リツコ「……」ボーーッ…。
シンジ(顏中アザだらけだ…どうしたんだろう…?)
シンジ「ン~ッ、ン~ッ」
リツコ「………」ジロ…。
シンジ(あ…手になにか持ってる…)
シンジ(あれは……大きな……)
シンジ(ハサミ!!?)
シ ャ キ ン ! !
シンジ「ンググーーン゛ン゛~~!!」
リツコ「………」
ジ ョ キ ッ!
リツコ「…シーーッ。弟に気づかれないうちゅに逃げて」
シンジ(縄を切ってくれた…?)
リツコ「家を出たらすぐに警察へ行って」ビリリ…。
シンジ「な、なにがあったんですか…?」イテテ…。
リツコ「今までかばってきたけど……もう限界……」
リツコ「私の弟は…化け物なの」
シンジ「えっ…?」
リツコ「…私は養護教諭になる前に、ある特務機関に所属していたの…」
リツコ「そこで開発していた新薬の副作用で…」
リツコ「弟は脳が委縮し、かわりに筋肉がゴリラ並みに発達して……」
… ギ エ エ エ エ エ ーー ! ! !
リツコ「はっ…!?」
シンジ「?」
ギ エ エ エ エ エ エ エ エ ~~~ ! ! ! ! !
リツコ
(…途中で送信してしまいすみませんでした…。)
ギ エ エ エ エ エ エ エ エ エ ~~ ! ! ! ! !
リツコ「ああっ、弟がこっちへ来るわ!」
リツコ「なんておぞましい声なの……」ビクビク…。
シンジ「…………何を言ってるんですか?」
シンジ「声なんてなにも聞こえません」
リツコ「もう手がつけられないわ!!」ガシッ!
リツコ「……あっ……」
化け物『………』
ヌ オ オ ォ …… ! !
リツコ「お願いもうやめてぇぇ!!」
リツコ「これ以上人を殺してはダメエェエエエ!!!」
シンジ「……リツコ先生……」
シンジ「あの……僕たち以外誰もいません」
シンジ「少し落ち着いていただけませんか?」
リツコ「やめてええええええぇ!!!」
化け物『………』
ド カ ッ
リツコ「キャア!!」
シンジ「せ、先生!」
ゴツ ゴツ ゴツ
リツコ「痛いっ」
ゴツ ゴツ ゴツ
リツコ「やめて、お願い、もうイヤ」
ゴツ ゴツ ゴツ
リツコ「痛いいぃっ」
シンジ「リツコ先生……何してるんですか!?」
シンジ(じ、自分で壁に頭を打ちつけてる……!!?)
ゴツ ゴツ ゴツ ゴツ ゴツ
ゴツ ゴツ ゴツ ゴツ ゴツ
ゴツ ゴツ ゴツ ゴツ ゴツ
シンジ(とにかく先生を止めないと…!)
シンジ「リツコ先生っ!」
グイッ
リツコ『………』
グルンッ…。
シンジ「あっ……」
リツコ『………』
ガッ
シンジ「う…!?」
シンジ(首を…絞め、ら…れ……すごい力だ……っ!!!)
グ グ グ …… ! !
リツコ(やめて!!)
シンジ「う う う っ」
ガッ……!!!
シンジ「…お…弟なんていない……」
シンジ「全…部…リツコ先生の……妄想だ…」
リツコ(!!?)
グ グ グ …… ! !
シンジ「うう…」
ダラ…ダラ…!
レイ(………)
シンジ(綾…波ぃ……っ)
グ グ … !
リツコ『………』
リツコ(……そう……そういうこと…だったのね…)
リツコ(……シンジ君……)
リツコ(……ごめんなさい……)
リツコ(…『私たち』を……赦してね……)
……パッ
シンジ「!!?」
シンジ(手が……離れた!?)
リツコ『………』
ガシッ… ド ス ッ !
シンジ「先生!!」
シンジ(ハサミで……自分のお腹を!!?)
ドスッ!! ドスッ!!
リツコ『ギャーーーーッギャーーーーッギャーーーーッ』
ドスッ!!! ドスッ!!!!
シンジ「……!!」
リツコ「………」
……ドサッ
シンジ「………」
レイ(………)
ーー警察に事情を説明したが、全てを信じてはもらえなかった。
リツコ先生が弟の妄想に憑りつかれていた件は無視され、異常者による連続殺人とだけ報道されたーー。
ーー先生は幼い頃に弟を亡くしていた。
死因は…リツコ先生の過失だったらしい。
もしかしたらその罪悪感が彼女の心を蝕み、恐ろしい凶行へと駆り立てていたのかもしれない。
ところでーー
数日後の帰り道
シンジ「………」
レイ(………)
ーー実はあれからずっと綾波が僕のそばにいるのだけれど……。
一体どういうわけなんだろうかーー。
シンジ(…先生が死んで事件も解決したのに)
シンジ(なぜ綾波はまだこの世にいるんだろう…)
シンジ(なにか未練があるのかな?)
シンジ(…でも、これ以上僕にできることはないし……)
シンジ(はぁ…、毎日が気まずいよ…)
シンジ(幽霊を見るだけじゃなくて、話しが出来ればよかったのに……)
レイ(………)
スッ…。
シンジ「?」
シンジ(…綾波がいきなり手を差し出してきた…)
シンジ「綾波、これは?」
レイ(………)
シンジ(急にどうしちゃったんだろう……)
シンジ「……あっ……」
ーーねぇいかりくん。
ーーどうしたの、あやなみ?
ーーあなたにまもってもらうばかりじゃわるいわ。
ーーわたしも……いかりくんをたすけてあげたい。
ーーあやなみがぼくを?
ーーええ。いかりくん、よくあぶないことにまきこまれるもの。
ーーそ、そうかな?
ーーうん。
ーーこのままじゃいつかいかりくんがしんじゃうかもしれない。
ーーだから……わたしがまもってあげる。
ーーほんと?
ーーだいじょうぶ。このてをつないでいるかぎり、あなたはしなないわ。
ーーわたしがあなたを
ーー守るもの。
シンジ「…もしかして綾波、あの時の約束を覚えてるの…?」
レイ(………)
コクッ…。
シンジ(それじゃあ綾波は恨みや未練じゃなくて、まさか…)
シンジ(僕の為にこの世に留まっていたの……?)
シンジ(そんな……!?)
レイ(………)
スッ…。
シンジ「うっ……」
シンジ(まだ手を差し出してくる…)
シンジ(やっぱり手を繋がなきゃいけないのかな…でも…)
シンジ(もし手を取ったら、綾波をこの世に縛り続けることになるんじゃ……)
レイ(………)
ーー本当はいけないことだと頭では理解していた。
けど、この時の僕はこの忌まわしい能力に疲れきっていたのかもしれない。
誰でもいい。たとえそれが幽霊でも、この呪いにも似た重荷からほんの少しの間でも解放してくれるのならーー
シンジ「あっ……」
ーー気がつくと僕は無意識に、差し出された綾波の手に自分の手を重ね合わせていたーー。
スッ…。
シンジ(…何も感じない…って当たりまえか)
シンジ(この綾波は幽霊なんだ。幻に触れているようなものじゃないか)
シンジ(……でも何故だろう)
シンジ(こうしていると…自分の中の空っぽだった部分が、なにかで満たされていくような……)
シンジ(……そうだ……これは……心が……)
シンジ「………ポカポカする………」
ツゥーーッ…。
レイ(………)
シンジ「…ハッ!?な、なんでもないから…!気にしないでよ……!!」
グシ…グシ…。
レイ(………)
シンジ「……そ、そろそろ帰ろうか…綾波」
レイ(………)
……コクッ……。
シンジ「………〃〃」
レイ(………)
テク…テク…。
ーーあんなにも怖い目にあったというのに、なぜか今の僕の気持ちは晴れやかだった。
『あなたはもう一人じゃない』
なにも語るはずのない綾波の声が、帰り道でふと聞こえたような気がしたーー。
終劇
ーYOU ARE(NOT) ALONEー
※例のBGM推奨
次回予告(仮)
凄惨な事件を経て再び繋がる2人のチルドレン。
隠れキリシタンの伝承が残る旅先の島で、シンジは新たな運命の少女と出会う。
彼女の名は真希波・マリ・イラストリアル。
秘密を抱えた島民たち、打ちあがった警官の遺体に、闇の奥で蠢く異形の影ーー。
はたして、奇妙な運命に翻弄される子供たちは無事に本土へと帰還できるのかーー。
次回、シンジ「死人の声をきくがよい」【破】
「バテレン島の伝説」
この次も、サービスサービスゥ!
……このスレは以上になります!
勢いで書いたので至らない所もあると思いますが、これでひよどり祥子氏の漫画に興味を持ってもらえたら幸いです。
諸事情でIDが変わったこと、予告だけ書いて次回もやるかどうかもわからないことをこの場でお詫びさせていただきます。
ありがとうございましたーー。
このSSまとめへのコメント
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