【アサルトリリィ】鶴紗「暁に笑う」 (10)
夢結「鶴紗さん。こんな場所でなにをしているの?」
鶴紗「夢結様。なんでもありません、夢結様のお手を煩わせるほどの事ではありませんから」
夢結「そんな顔をしてなんでもないワケがないでしょう。わたしに話せないような内容なのかしら」
鶴紗「そういうわけでは……ただゲヘナの奴らが、性懲りもなくこんな連絡を差し出してきまして」 スッ
夢結「またゲヘナ絡みね。わかっているとは思うのだけれど、もちろん断りなさい。あの娘が心配するわ」
鶴紗「そのつもりです、もうあんな危険な真似はしません。ただ少しだけ、気になることがありまして」
鶴紗「──迷い猫の保護。そんな誰にでもできることを、わざわざ強化リリィのわたしに頼むはずがない。きっとなにかを企んでるんだ」
夢結「なるほど。その猫を保護することが真意なのか、あなたをおびき寄せるための罠か──どっちにしろロクでもないことは確かね」
鶴紗「だけど、ゲヘナがその子を使ってなにかしようとしているのも事実です。夢結様、ここはわたしに任せてくれませんか?」
夢結「わかったわ。だけど約束しなさい、危なくなったらすぐにわたし達を頼るのよ。心配なのは梨璃だけではないのだから」
鶴紗「夢結様、本当に丸くなりましたね。まあすぐに終わらせて帰ってきますよ」 ザッ
夢結「……はぁ、梨璃のようにうまくはいかないわね……」 ボソ
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鶴紗(報告によるとこの辺りか。エリアディフェンスの外はなにが起きても不思議じゃない、用心しないと)
鶴紗「──見つけた。よかった、怪我はなさそうだね」
猫「フーッ、フーッ!」
鶴紗「そんなに怯えないで、ここは危険だから。すぐに安全な場所に連れて帰ってあげる、ほら猫缶だって──」
猫「シャァァァッ」 ガリッ
鶴紗「痛っ、逃げられたか……元気なヤツだな」
鶴紗(……? 《リジェネレーター》の発動が遅い。いや、あの猫が近くにいると発動しなかった? まるであの時のギガント級と同じ──)
鶴紗「ゲヘナの奴ら、猫にまで強化手術を施したな……! 強化リリィはヒュージを引き寄せる、早く見つけないとマズい!」
鶴紗「待て、止まるんだ! いま逃げたらヤツらの思うツボだぞ!」 ダッ
鶴紗(けどレアスキルを無力化する異能を付与するだなんて、いったいどういうつもりだ? なにを考えている……!)
─グォォン
ヒュージ「グォオオォォオオッ!!」
猫「──! ミィ……」
鶴紗「くそっ、遅かったか! だがラージ級ならわたし一人でもなんとかなる、はやくこっちへ来い!」 ダァン
ヒュージ「──! ォオオォォオオッ!」 ジュゥゥ
鶴紗(なに!? 傷が修復していく……あの時と同じ《リジェネレーター》持ちのヒュージだと!? それに──)
猫「フニャァァッ!」 ギュゥ
ヒュージ「────!!」 ズドォン
鶴紗「くっ! 《ファンタズム》が使えない……! そのうえこいつを庇ったまま《リジェネレーター》なしで戦えって言うつもりか!?」
鶴紗(レアスキルを封じる猫に改造ヒュージ──やはり最初からわたしを始末するための罠か!)
猫「ニャア……」 ブルブル
鶴紗(こいつを逃がしてもヒュージはどこまでも追ってくる。それにレアスキルを発動できたとしても、守り切れる自信はない……!)
ヒュージ「オオォォオオォォッ」 ズダダァン
鶴紗「あぐっ!? 身体の動きが鈍く……!傷が治らないとこんなに戦いにくいだなんて知らなかった……!」 ガク
鶴紗(い、一瞬だけ……この子を見捨てて《リジェネレーター》で回復しないと、どのみちジリ貧で負け──) ジリ
鶴紗「は、はは……馬鹿かわたしは。守るべきものを見殺しにするだなんて、アイツらと一緒だ……」
猫「……っ」 ギュウ
鶴紗「お前は絶対に見捨てない……ここでお前を死なせて自分だけ生き延びるだなんて、そんなのは嫌だ!」
鶴紗(もうわたしの目の前で誰も死なせたりはしない。梨璃に誓って、この意志だけは絶対に曲げるものか!)
鶴紗「《リジェネレーター》の弱点は知っている。マギ切れするまで消耗させるか、急所を一撃で破壊すればいい!」
鶴紗「お前ごとき、レアスキルなしでも葬れる! わたしを甘くみるなぁ!!」 キィィン
鶴紗(時間をかけるほど不利になるのなら、バスターランチャーで一気にカタをつける! これで終わりだ!!) カッ
ヒュージ「────!!」 ガキィィン
鶴紗「あ……ありえない、《マギリフレクター》すら持ってるだなんて……」
鶴紗(はは、は……無理だ、勝てない。わたし一人の手に、負える相手じゃ──)
ズドォォン
ヒュージ「!? オォォオォォ──」 グラ
鶴紗「援護射撃!? いったいどこから……!?」
夢結「……まったく、世話を焼かせる後輩ね。いったい誰に似たのかしら」 フッ
夢結「あなたの帰りが遅いと梨璃が悲しむわ。立ちなさい鶴紗さん、ここで諦めることは許さないわよ」
猫「フシャァァァッ!」 バッ
ヒュージ「────!?」 パキィィン
鶴紗(異能の力で《マギリフレクター》が崩壊していく!? それだけじゃない、いまなら傷を癒す暇を与えずにヤツを倒せる──!)
鶴紗「無茶なことを……! だがお前が一緒に戦ってくれるのなら、これ以上心強いことはない!」
鶴紗「聞こえているんだろうゲヘナ! これがお前達が失敗作だと罵った、わたし達の意志だぁあああぁぁぁ!!」 バッ
ズバァァァッ
ヒュージ「オォォオオォォォ──」 バシュゥゥ
鶴紗「はぁ、はぁ……やった、やったぞ! わたし達が、勝ったんだ……!」
猫「アオゥ?」 スリスリ
鶴紗「ふふ、あんまり頭をこすりつけないで。まだ傷が治ってないから」 ナデ
鶴紗(朝焼けが眩しい。もうこんな時間なのか)
鶴紗「お前、どこか痛むか? まったく、あんな無茶をして……怪我でもしたらどうする?」
猫「ニャ」 ゴロゴロ
鶴紗「傷一つないなんて、運がいいヤツだね。まさかお前のために持ってきた包帯を自分に巻くだなんて思ってもなかったよ」 シュル
鶴紗(痛みがまだ鈍く残ってる。痛いのは好きじゃないけど、なんと言うか……生きているって実感がある気がする)
鶴紗(傷ついても時間が身体を癒やし、また立ち上がれるようになる。《リジェネレーター》がわたしから奪った、懐かしい感覚だ)
鶴紗「……もう少し、このまま一緒にいるか?」
猫「アォ」
おわり
以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました。
リジェネレーター持ちなのに包帯巻きがち鶴紗さん
過去作(Discordリンク):https://discord.gg/q6BRrp67TT
おまけ(元ネタ)
2月13日 安藤鶴紗誕生日メモリア《暁に笑う少女》
https://i.imgur.com/VXctq3x.jpg
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