橘純一『Daring!!』 (39)
アマガミ×ラブライブ
橘純一と西木野真姫のお話です。
やりたい放題です。
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~プロローグ~
『ある寒い日のこと。遠い遠い記憶の――――』
――――――屋上
??「ほら、あれがオリオンざで、ちょっと上におうしざ、下にうさぎざとおおいぬざ!」
?「へぇ…すごいなぁ、~~ちゃんは!なんでもしってるんだね!」
??「ふふん、そう?まぁ、これでもてんたいかんそくはしゅみだから!」
?「かっこいいなぁ、しゅみかぁ…」
??「~~くんには、しゅみはないの?」
?「うーん…」
?「…あ!じゃあぼくも、きょうからテンタイカンソクをしゅみにするよ!」
??「うぇぇ!?」
?「だから、いろいろおしえて!~~ちゃん!」
??「でも、ごほんとかよんだほうがくわしく…」
?「ううん!ぼくは、~~ちゃんにおしえてもらいたいよ!そのほうがたのしいもん」
??「そ、そう…」カァァ
?「どうしたの?」
??「っ…なんでもない!しかたないから、おしえてあげる!」
?「やったー!ありがとう、??ちゃん!」
??「ぅん…」クルクル
??「…あ、じゃあとくべつにおしえてあげる!」
?「え?なにを?」
??「あのねあのね、あそこ!みてみて!」ビッ
?「どこどこ?」
??「あの、あっちのそら!」
?「えーっと…あのあかいほし?」
??「そう!あれはね、ほんとうは『かせい』ってほしなの」
?「きいたことある!あれが『かせい』かぁ…」
??「でもね、ちがうの。てんたいかんそくをしてたわたしはべつのなまえをつけたのよ!」フフン
?「えっ、すごい!~~ちゃん、ほしになまえまでつけたの!?」
??「そうよ?あのあかいほしはね…」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――――
橘「…」パチッ
橘「…」
橘「…ああ、夢…」
橘「…」
橘(あの夢)
橘(…子どもの頃、体調を崩して、両親の都合で少し遠くの病院に入院していたときのこと)
橘(病院の屋上で、僕はよく仲良しの女の子とおしゃべりしていた)
橘(その子と一緒に夜空を見上げては、星の話を聞いたり、星をつなげて適当な名前をつけて笑いあったり…)
橘(…)
橘(…それ以上のことは、あまり思い出せない)
橘(退院でこの家に戻ってくるとき二人して大泣きしていた、というのは親から聞いた話)
橘(もう会えないというのがショックで、押入れに閉じこもっていたのも。…あの子のことが忘れられなくて、押入れの中に蛍光ペンで星の落書きをしたのも)
橘(全部親から聞いた話だ)
橘(…未だに押し入れのプラネタリウムは気分が落ち込むと使うくらいには気に入ってるけどさ)
橘(まぁ、それはともかく)
橘(そんなに小さかった僕はもう高校二年生で)
橘(…ここ何年か、寒い季節になってくるとたまにこの夢を見る)
橘(あの病院で会った、赤毛の女の子と楽しくおしゃべりする夢を――――――――)
これはもしかして、昔あったアマガミとラブライブ!のクロスオーバーの続き物か?
~デアイ~
『アイドルが転校してくる…大イベントじゃないか!』
――――――教室
ザワザワ…
橘(…やっぱりみんな、落ち着きがない)
橘(それはそうか。なんてったって今日は…)
橘(スクールアイドルの特別転校!その初日!)
橘(一年生というのがちょっと残念だけど…それでも期待はしちゃうよな!仕方ない!)
橘(どんな子なんだろうなぁ…)ワクワク
梅原「よ、大将。おはよーさん」
橘「梅原。おはよう!」
梅原「なんだなんだ、気合入ってるな!さては、アレか?」
橘「ああ!だってアイドルだぞ?きっとかわいいんだろうなぁ…」
梅原「そんな大将に朗報だ。俺も実際見たわけじゃないんだが、目撃者から情報が届いてるぜ!」
橘「おおっ!流石は梅原!それでそれで?」
梅原「えーっと…まずは発達途上ながらなかなかのプロポーション」
橘「き、期待できそうだな…」ゴクリ
梅原「そして、顔立ちはどちらかというと綺麗系らしい」
橘「なるほど…かわいいタイプではないと…」
梅原「おう。赤毛の美少女!って噂だぜ!」
橘「赤毛…?」ピクッ
橘「…赤、か」
橘「…」
梅原「…どうした?」
橘「…いや、なんでもない!楽しみだな!是非見に行かないと!」
梅原「ああ…?」
橘「でも、どうして急に転校なんだろうな。中途半端な時期に…」
梅原「なんでも、スクールアイドルの大きな大会の認知度を上げるのと、地方の高校を活気づけるためとからしいぞ」
橘「そんな無茶苦茶な…」
梅原「学力審査を通った上で、各アイドルグループ内の話し合いで決まった人がランダムで比較的近くの高校に配属される…ってさ」
橘「ふーん…?」
梅原「あと、期間は1ヶ月程度らしいが…俺にもこれ以上詳しいことはわかんねぇ」
橘「十分だろ…よく知ってるなそんなこと」
梅原「まぁな!梅原正吉の情報網を舐めちゃならねぇ、ってこった!」ハハハ!
橘「ははは、恐れ入ったよ」
橘「そういえば、名前とか出身校はわからないのか?」
梅原「ん?そうか、当たり前の情報過ぎて忘れてたぜ!」
橘「おいおい頼むよ梅原~」
梅原「すまんすまん…出身は音ノ木坂学院。国立の名門だな」
橘「音ノ木坂…聞いたことあるぞ!たしか女子校だよな!」
梅原「よく知ってるな!そこのスクールアイドルグループ、μ’sのメンバーでな」
梅原「作曲担当、名前は西木野真姫!」
橘「西木野…」
橘「…真姫」
梅原「おう!」
橘「…」
梅原「…?」
橘「うーん…聞いたことあるような…」
梅原「あー…」
梅原「スクールアイドル界でも、μ’sは最近特に勢いをつけてきてる!どっかで名前を見たことあるかもな!」
橘「…」
橘「そうか…そうだな!」
梅原「それにしても今日はおかしいな大将。体の調子でも悪いのか?」
橘「え?そんなことないけど…」
梅原「ならいいけどよ」
橘「ああ」
橘「…」
橘(アイドルの情報…)
橘(今日もいつもの夢を見たから、赤毛っていうのに変に反応してしまった)
橘(梅原も訝しんでたし、気をつけよう…)
橘(それに、西木野真姫…)
橘(たしかに、どこかで…)
橘(…)
橘(…ダメだ、思い出せない)
橘(梅原の行ったように、テレビか何かで見たのかもしれないな…)
>>8
数年前にエタってしまったリベンジです…
ご存じの方いてうれしい限りです。がんばります!
『休み時間になったし、早速噂のアイドルを見に行こう!』
キーンコーンカーンコーン…
橘「んー…」ノビー
橘「はぁ…」ダラン
橘「やっと終わった…!なんだか体感時間がすごく長かったぞ…」
橘(さて、梅原でも誘って一年生の教室でも行くか…)スクッ
橘「梅原ぁー」
梅原「んが…んあ?ああ…数学終わり?」ゴシゴシ
橘「なに寝ぼけてるんだよ…休み時間だ。西木野真姫、見に行かないか?」
梅原「!」ガタタッ!
梅原「そうだな!行こうぜ大将!」キリッ
橘「お、おお…」
―――――1年生、教室前
梅原「…ここだな!このクラスだ!」
橘「…本当に?」
梅原「おう!」
橘「うーん…アイドルがいるにしては、なんだか落ち着いてるというか、人もいないし…」キョロキョロ
梅原「…確かに、そうだな…教室は合ってるはずなんだが」
美也「あれ?梅ちゃん…と、おにいちゃん」
梅原「あれ?美也ちゃん。よっす!」
橘「美也。そうか、美也のクラスだったか」
美也「なにー?2人して何の用?」
梅原「今噂のスクールアイドルを拝みにちょいとな」
美也「へー…おにいちゃんも?」ジトッ
橘「え?う、うん…」
美也「ふーん…そっかぁー…」シラーッ
橘「な、なんだよっ!いいだろ別にっ!」
美也「…」ムムム…
梅原「あー…でさ、美也ちゃん。その、アイドルは…?」
美也「真姫ちゃんなら、逢ちゃんが今学校案内してるよ。どこ行ったのかは知らない!」
梅原「七咲がぁ?そうか…」
橘「なんで七咲が案内なんて…」
美也「騒ぎになりすぎたら困るから、って先生が選んだんだよ。みゃーだって一緒に行きたかったのに…」ブツブツ
橘「あー…」
橘(美也と一緒にするとそれだけで騒がしくなりそうだしなぁ…)
美也「むっ!今なにか失礼なこと考えたでしょ!」
橘「へぇっ!?そ、そんなことないぞ!!」
美也「うそだ!みゃーにはわかるよ!ばかにぃにっ!」
橘「だからにぃにって呼ぶなって…」
美也「知らない!」ダッ
梅原「あ、美也ちゃん!…行っちまったか」
橘「けど、これで何があったのかはわかったな。七咲と一緒か」
梅原「先生に選ばれたって言ってたな。なんで七咲…?」
橘「さぁ…本人に聞いてみるか?」
梅原「…それは名案だが、探すには時間が足りなくねーか?昼休みならまだしも、今は普通の休み時間だぜ?」
橘「それもそうだな…仕方ない、また昼休みにでも出直すとしよう」
梅原「そうするか。あーあ、期待が募るばかり、だな」
橘「でも、長く楽しめてお徳かもしれないぞ!」
梅原「お、大将珍しく前向きだな」
橘「珍しくって…」
『昼休みだ…昼食を捨ててアイドルを追うかどうか…』
――――――屋上
橘(…)モグモグ
橘(屋上で購買の売れ残りパンを食べる…)
橘(なんでこうなったのか…)
橘(梅原は、
『今日はデラックス定食の日…!アイドルは逃げねぇが、デラックス定食はいつ来るかわからねぇ!すまん大将!』
と言い残して学食へ向かった)
橘(一方僕は、やるったらやる!と、1年生の教室に向かった…)
橘(が、結果はごらんの通り。またも七咲が校内を案内していた(不機嫌な美也と慰める中多さん談)ため、空振り…)
橘(こうしてここでパンを齧っているのである…)モグモグ…
橘(…)
橘(寂しい)ヒュウウ…
橘(こんなことなら、梅原と学食行けばよかったかな…)
橘「…」
橘(いや!)
橘(僕は信念を貫いたんだ!悔いはない!)
橘(…)
橘(ないったら…ない…)
橘「…」
橘「ハァ…」モグモグ
ガチャ
橘「…?」
橘(誰か来た…気まずいから、カップルじゃないといいけど…)
??「はい、ここが屋上。…何もないけど、強いて言うならちょっと広くて、景色はいいかな」
??「ホントね。なかなか素敵な景色じゃない」
橘「…」
橘「ぶーっ!?」
??「!? な、なに!?」
??「あれ…先輩」
橘「な、七咲!と…!」
??「…あの色、二年生の人…?」
七咲「えーと…真姫ちゃん、こちら橘純一先輩。美也ちゃんのお兄さん」
真姫「あぁ、あの子の…」
真姫「…そう」
真姫「…」フーン…?
七咲「先輩、こちら、転校してきたアイドルの…」
橘「西木野真姫ちゃんだねっ!?」
真姫「ぇえ!?そ、そう、だけど…」
橘「や、やった…やったぞ梅原…僕はついに会えたんだ…!」
七咲「あのー…先輩?真姫ちゃん、怖がってるのでその辺で…」
橘「えっ!?ご、ごめん!つい…」
真姫「…別に、いいわよ」クルクル
七咲「先輩、私たちを探してたんですか?」
橘「なっ、どうしてそれを!」
七咲「だって、さっきついに会えたって」
橘「あ…」
七咲「…さては、美也ちゃんがさっきの時間不機嫌だったのも先輩のせいですね」
橘「えー…その…まぁ…」
七咲「はぁ…そんなに真姫ちゃんに会いたかったんですか?」
橘「そ、そういうわけじゃ…!」
七咲「ないんですか?」
橘「う…そ、そうです…」
七咲「運が良かったですね。私たちがたまたま屋上に来て」
橘「ソウダネ…」
真姫「…」ジッ
七咲「…真姫ちゃん?どうかしたの?」
真姫「…ん、なんでもないわ。よろしくね、橘先輩」
橘「え、あ、うん!こちらこそ!よろしく!」
七咲「先輩、緊張しすぎです」
橘「え!?そ、そう、かな?はは、は…」
七咲「さて、じゃあお弁当食べに教室戻ろっか。時間なくなっちゃうし」
真姫「ええ。そうしましょうか」
七咲「では、というわけで失礼します、先輩」
橘「あ、うん…」
真姫「…」ジッ
橘「…?」
真姫「…」
真姫「まさか、ね」ボソッ
橘「へ?」
真姫「…またね、先輩」プイッ
橘「は…」
真姫「…」ツカツカ
橘「…」
橘(こうして、噂のアイドルとの第一接触は終わった)
橘(たしかにかわいい子だったけど、なんだかツンケンしてたなぁ)
橘(…あと、あんまり気にしてないけど、初対面でタメ口ってどうなんだろう)
橘(あの七咲が親しげに名前で呼んでたのも気になる…)
橘(まぁ、十中八九美也の影響だろうけどさ…)
橘(…)
橘(またね、か…)
橘(…)
『西木野さんに会えたことを梅原に自慢しよう!』
梅原「なにィ!?屋上でばったり!?」
橘「ああ!しかも『またね』なんて言われたぞ!」ムフフ
梅原「ちくしょー…俺も行けば良かった…」
橘「ふふふ…まだまだだな、梅原!」
梅原「くそー…で、どうだった?やっぱかわいかったか?」
橘「もちろんだよ!前評判どおり、1年生とは思えない美人さだった!」
梅原「くぁー!いいなぁ大将…」
梅原「俺も美人に『またね』って言われてぇなぁ…」
橘「ま、肝心なのは諦めない事だよ、梅原」ポンポン
梅原「ぐぐぐ…」
橘「はっはっは!」
『そろそろ家に帰ろう!』
――――――橘家
橘「~♪」
橘(今日は初日から西木野さんと会えたし)
橘(またね、なんて言われちゃったぞ!)
橘(ふふふ…なんていい日なんだ!)ニヤニヤ
美也「…」
橘「フフ…フフフ…」ニヤニヤ
美也「…にぃに」
橘「フヘフヘフヘ…」
美也「にぃに!」
橘「おわっ!?なんだ、美也か…」
美也「なんだじゃないよ!すっごいだらしない顔してたよにぃに!」
橘「ええっ!?そ、そんなに顔に出てたか?」
美也「外でそんな顔してたら捕まっちゃうよ?」ニシシ
橘「ひどいな!?」
美也「それで、どうかしたの?なにかいいことあった?」
美也「あ、もしかしてかわいい女の子と知り合えた…とか…」
美也「…もしかして、真姫ちゃん?」
橘「なっ」
美也「やっぱり…いいなぁにぃに…みゃーも仲良くなりたい…」
橘「そういえば、なんで美也は一緒じゃなかったんだ?あと、七咲って別に委員長とかでもないのになんで…」
美也「逢ちゃんはね、しっかりしてるから…先生に頼られることがあるんだよ…」
橘「ふーん?そうだったのか」
美也「みゃーはね…一緒にいると騒ぎになりやすいからって…」
橘「あー…」
美也「せっかく予習までしたのに、あんまりだよー!」ウワーン!
橘「予習?」
美也「うん…逢ちゃんがね、パソコンでμ’sの動画が見れる、って…」
橘「μ’s…西木野さんのグループか」
美也「ゆーちゅーぶにあるよ。にぃにも見てみたら?」
橘「…そうだな。そうしようかな」
美也「みゃーはお風呂入ってくる…のぞいちゃだめだよ?」
橘「のぞくかっ!」
―――――――――自室
橘(美也もなんだかかわいそうだな…七咲に会ったらそれとなく伝えておくか…)
橘(それはそれとして、パソコンパソコン…)
橘「えーっと…」カチカチッ
〈ハロウィンイベント♪スクールアイドルライブ動画!〉
橘「これかな?」カチッ
イッツアマージカール!フシギガグウゼンヲマーネイーテールー
橘「…!」
橘(西木野さんだ…本当にアイドルやってる!)
橘(いや、当たり前か…でも、こうして直接見るとやっぱり違うよね)
モットモットーオードラセテー! ミンナミンナートーマラナイー!
橘(…すごい。こんな人が、うちの高校に…)
橘「…」
橘(…ん?μ’sの紹介ページ?)カチッ
橘「西木野真姫…作曲担当」
橘「μ’sの曲は全て自作しています…?」
橘(すごい…じゃあさっきの曲も西木野さんが…)
橘(…)カチッ
橘「ラブライブ出場、優勝に向けて頑張ります?ラブライブって…梅原が言ってた、大会のことかな」
橘「…」カタカタ
――――――――――――――――
―――――――――――
――――――
橘「…」
橘(なんてこった…)
橘(スクールアイドル…μ’s…)
橘「すごいんだな、西木野さんって…」
橘(…)
橘(さっきまで調子に乗っていた僕を殴ってやりたいよ…)
橘(もしかしたら、なんて…思ってた僕を…)
橘(…)
橘(…ダメだダメだ!前向きに行こう!)
橘(せっかく知り合えたんだ!もっと仲良くなって…)
橘(一番仲のいい先輩後輩になるぞ!)
橘「おーっ!」
パソコン<イミワカンナイ!
『音楽室に誰かいるぞ!…なんだか落ち着くピアノだけど、誰だろう?』
橘(昨日の決意もそこそこに、今日はまったく西木野さんに会えなかった…)
橘(行動はしたんだけどなぁ…どこ行ってもすれ違いで、運が悪いよ…)
橘「…よし」カチャ
橘(ふー…やっと理科室の片付けが終わった)
橘(梅原め、この前の腹いせに逃げ出すなんていい度胸じゃないか…)
橘(今度のお宝本取引、覚悟しろよ!)
橘(…)
橘(…疲れた。教室までカバンを取りに行って帰ろう…)
―――――音楽室前
ポロロン…
橘(…ん?音楽室に誰かいるのかな)
橘(合唱部…?でも、この間大きな大会が終わってしばらく休みって聞いたけど…)
橘(…)
橘(なんだか、聞いてると落ち着くピアノだなぁ…誰が弾いてるんだろう)
橘(…少し、のぞいてみようかな)
橘(…)ソーッ
橘(…)ヒョコッ
真姫「…」ポロロン…
橘(…!西木野さん!)
橘(…綺麗だなぁ。ずっと聞いていられるし、見てられる)
橘(…)
真姫「…」ピタッ
真姫「…ダメね。こんなのじゃ、A-RISEには…」
真姫「…?」
真姫(…)
真姫「…」チラッ
橘「…」ジーッ
真姫「ヴぇぇ!?何してるのよ!!」
橘「うわぁっ!見つかった!?ご、ごめんなさい!」ガララッバッ
真姫「ちょ、ちょっと…そんな、土下座までしなくても…」
橘「…あ、しまった…つい癖で…」サッ
真姫「どんな癖よ…」
橘「ごめんね、西木野さん。綺麗なピアノだったから、ついのぞいちゃって…」
真姫「…お世辞はいいわよ」
橘「お世辞なんかじゃないよ!聞いてて落ち着くというか…安心するというか…」
橘「とにかく、いつまでも聞いていたくなるような…」
真姫「…そ」
橘「本当だよ!嘘は苦手なんだ」
真姫「…」
真姫「…」ジッ
橘「…?なに?」
真姫「っ…なんでもない!」
橘「え、ごっ、ごめん…」
真姫「…」
橘「あの、邪魔、かな?出て行ったほうがいい、とか…」
真姫「…別に、いい」
真姫「聞いていたいなら、そこにいていいわ。なんだか、あなたは不思議と嫌な感じがしないもの」
橘「へ…」
真姫「聞いてていい、って言ったの」
橘「あ、え、ありがとう」
真姫「…」スゥッ
ポロン…
真姫「愛してる、ばんざーい♪ここでよかった―――――」
橘「ぁ…」
橘(ピアノと…歌声…)
橘(…)
真姫「――――――♪」
橘(どこかで聞いた、優しい歌声…)
橘(…どこで?)
橘(…思い出せない。でも、ずっと、ずっと昔)
橘(…)
――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
真姫「――――…」ジャジャン…
真姫「…ふぅ。どうだった?」
橘「…」ポーッ
真姫「…?ねぇ…」
橘「…綺麗だ。まるで、女神みたいに…」
真姫「なっ…!」
橘「…はっ!あ、あの、曲もそうだけど、西木野さんも綺麗だったというか、音楽と弾いてる姿が合わさって女神みたいだとか、ぐわっ!な、なにを言ってるんだ僕はっ!」アタフタ
真姫「~~~~!」カァッ
橘「あわわ…」
真姫「あ、あなたねぇ…」プルプル
橘「わーっ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
真姫「…」プルプル
真姫「…」
真姫「もう、いいわ…」
橘「えっ」
真姫「…褒めてくれたし、ありがたく受け取っておいてあげる」
橘「ほ…よかった…」
真姫「だからって調子に乗らないでよ!次変なこと言ったらただじゃおかないんだから!」
橘「は、はい…」
――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――――――
真姫「――――♪…」
橘「…!…!」パチパチパチ
真姫「…飽きないわね、あなた」
橘「西木野さんのピアノならいつまでも聞いていられるよ。お世辞じゃなくさ」
真姫「…」
真姫「ふん」プイッ
橘「あれ、照れてる?」
真姫「なっ…!」
橘「ははは、冗談だよ」
真姫「ぅ…もう!からかわないで!」
橘「ごめんごめん」
真姫「…そういえば、あなた橘さんの兄だったわね」マッタクー
橘「美也のこと?そうだよ」
真姫「たった今理解したわ…そっくりよ橘兄妹…」
橘「もしかして、美也も同じようなことを?」
真姫「ええ。いい子なのはわかるけど、かわいいって言っては顔が赤いだの照れてるだの…」
橘「あー…」
真姫「…でも、やっぱり不思議」
真姫「あなたたち兄妹は、嫌な感じがしないもの。どうしてかしら…」
橘「…?」
真姫「…」フム…
真姫「…さて、そろそろ私は帰るわ。もう遅いし」
橘「え?うわ!?もうこんな時間!」
真姫「鍵は返しておくし、あなたももう帰ったら?」
橘「そうしようかな…」
真姫「…」
真姫「…また」
橘「?」
真姫「また明日も、放課後は音楽室にいるから」
真姫「…来たかったら、来たらいいじゃない」
橘「!」
橘「絶対来るよ!」
真姫「ヴぇぇ!?そ、そう…」
橘「!」フンス
橘(こうして、西木野さんと放課後を過ごした…)
橘(いい時間だった…)
橘(…)
橘(…でもやっぱり、なにか引っかかるなぁ)
橘(なんだろう…)
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