【R18逃げ上手の若君】風間玄蕃「中先代恋情異聞」【玄雫】 (26)

逃げ若の風間玄蕃×諏訪雫のR18SSです。
以前書いた【R18逃げ上手の若君】北条時行「中先代春情秘史」【尊氏×時行】(ショタエロ注意)
のアナザーストーリーになっていて、影武者になった玄蕃視点でのif展開になっています。

※冒頭部は同じですが、こっちのSSは男女ノーマルエロです
※破瓜・レイプ・ロリ・ごっくん要素あり






鎌倉の至る所で戦火が揺らいだ夏の夜の事、諏訪神党らが身を寄せる南御堂の一角に玄蕃は呼び出された。

灯火一つ点っているのみの薄暗い堂の真ん中に頼重が一人鎮座している。

いつもの捉え所のない様は影を潜めていて、至って神妙な視線を彼はこの狐面の間者に向けていた。

「――相談ってのは何だよ、頼重」

「玄蕃」そう言うと頼重はスッと頭を下げた「頼む。お前のその命を……この頼重にくれ」

「待て待て、一体何の話だ」

玄蕃は慌てて片膝を立て、その礼を制した。

「明神様なんだろ。シンパの大勢いるここで、簡単に下げていい頭じゃねぇはずだ」

やや顔を上げた頼重に玄蕃は単刀直入に尋ねた。

「……話というのは坊々の事だろ」

後醍醐天皇の許可を待つ事無く京から神速で進軍してきた尊氏軍に、鎌倉に在留していた時行軍はあっけなく蹂躙された。

流石は天下に轟く戦上手である。時行軍は鎌倉に根を下ろす間も碌に与えられず駆逐される形となった。

その戦乱の最中に主君・北条時行が行方不明になって、はや数日が経過していた。

玄蕃も日夜問わず四方奔走してはいるものの、至る所に尊氏側の精鋭がはびこっていて、捜索は難航を極めていた。

この様子ではとっくに敵方の手に落ちたと見なしても、そう不思議ではない。

ただでさえ負け戦に負け戦を重ね続けている時行軍。

この上大将が不在となれば形勢不利と見て離反する輩も止まらなくなるだろう。

「それだけなら、まだマシな方だがな……」

玄蕃の言葉を紡ぐように、頼重は続ける。

「『仲間郎党を見捨てて、一人だけ逃げた』という噂が立てば
 途上で吸収した兵たちの士気は大いに下がり、最悪、軍の体を成さなくなる。
 若君は決してそのような人物ではないが、途上で参加した者たちの中にはその為人を知らぬ者も少なくない。
 根も葉もないこの噂は、放置していれば求心力低下に繋がる。
 再起にすら影響が出ると言っても過言ではない。
 短い間ではあるが朝廷側を相手取り、若君は見事鎌倉を奪還なされた。
 あの御子は最早、鎌倉再興の象徴そのものなのだ。
 やっと点ったこの復古の灯火を絶やしては、鎌倉も北条得宗家も滅亡あるのみ。
 決して絶やしてはならないのだ、玄蕃」

「……。それで?」

「……。玄蕃、今日からお前は『北条時行』として生きてほしい。
 風間玄蕃という男は、ここで死ぬのだ」

狐面をつけたまま、玄蕃は真っ直ぐ頼重を見据えている。

「――承知したぜ。風間家は俺の代で終わりだ……」

頭を垂れた玄蕃はそのまま狐面を捏ね上げ、再度その顔を上げた。

その愛らしくも凛々しい尊顔はまさに北条時行のものだった。

「北条時行として私は地方に落ち延びる――これで良いな、頼重?」

「勿論ですとも、若君」

頼重はニコリと微笑んで恭しく頭を下げた。

「存外すんなりと請け負っていただき、恐悦至極に存じまする」

「……請け負わなければどうするつもりだったのだ、頼重」

そのまま「北条時行」が頼重に問うた。

「お前はもう……腹を斬っているのだろう?」

涼し気な笑みすら浮かべる顔とは裏腹に、頼重の腹部からはじんと紅い血痕が滲み出てきた。

それはゆっくりと服の白地に地獄のような紅蓮の染みを広げ、ポタポタと板床に滴り落ちていく。

建武二年八月十九日――頼朝公が建立したこの勝長寿院で

諏訪頼重・時継父子を始めとする時行側の郎党四十三人は自刃した。

北条時行は敗走する軍を束ねて諏訪へと向かった後、そのまま地方へと落ちていき秘かに牙を研ぐ事となる。


   #  #  #

北条時行となった風間玄蕃は落ち延びた後、再び北条残党の旗頭として鎌倉攻略の兵を挙げた。

しかしあの若君に取って代わったとはいえ、彼に超人的な逃げ足などあるはずがない。

だが周囲は彼の並々ならぬ逃げ上手ぶりを期待していた。

最初吹雪は瘴奸入道の時のように彼を上手く敵の大将と一騎討ちに持ち込ませようとあの手この手で策を練った。

それは結果的に玄蕃を局地に陥らせたが、何とか一命を繋ぎつつも彼の軍は鎌倉入りを果たした。

しかしそこで玄蕃が最初にした事は、治安回復でも支持基盤の確保でもなく妾の斡旋だった。

元より好色な彼ではあるが、死線に継ぐ死線の連続を経験し、図太いその神経も流石に摩耗しつつあった。

女を抱く事で彼はその疲労を忘れたかったのだろう。

戦後処理や統治は他の者に丸投げして、彼自身は館で女相手に田楽に興じて遊び耽った。

以前に執権を務めた足利直義が人心を掌握して良政を敷いていた所に

この中先代であるから、鎌倉の庶民の支持を得るのは容易くなかった。

「兄様、近頃遊び過ぎではございませんか」

そんな玄蕃に対して、雫は諌言した。頼重亡き今、誰の諌めも彼は聞き入れようとしない。

そこへただ一人、民意を伝えるべく足繁く通ったのが雫である。

今夜もまた彼女はやってきた。

酒を飲んでいた玄蕃は頭をゆらゆらと揺らしながら酒杯を傾けている。朝から晩までこの調子なのだ。

「海野様たちが政務をしているとはいえ、上に立つ者がこれでは示しが付きません」

いつもはうるさいと言って追い返す玄蕃だったが、今夜の彼は相当出来上がっているようだった。

苛立ちすら向ける事なく酒気に曇ったその瞳をただじっと雫に向けている。

「雫……悪いが、よく聞こえなかったから近くに来て喋ってくれ」

雫は膝を立てて玄蕃の傍に寄った。酒臭い香りはますます濃くなり、思わず胸が悪くなる。

「きゃああッ……!」

雫は声を上げた。玄蕃は酒杯を捨てると彼女を抱き寄せ、その可憐な口を吸い始めたのだ。

「んッ……んうッ……やぁッ……んふ……」

吐息と吐息の境が分からないほど密着した雫は、しばらく卑しい唾蜜の交換を強いられた。

皓歯の列を相手の下卑た舌がねっとりとなぞり舐めていく。

幾度も絡まり合う舌と舌の会合に、彼女は理性が巻き込まれ、口から引きずり出されそうに感じた。

初恋の貴人からのキスのはずなのに、拭い切れない不安と違和感。

その正体が奈辺にあるのかも分からないまま、唇と舌による愛撫は口から首へ、首から肩へと降りていく。

「……ああッ……止めてぇ……!」

胸元を乱暴に晒された雫の顔は羞恥に染まった。

露わになった眩い少女の肢体は、この二年で急速に柔和を帯び始め、女の兆しを色濃く示している。

特にツンと澄ました慎ましい膨らみの美乳は、育ちの良さと無垢さを内包していて彼の目を綻ばせた。

「……いやぁ……ッ!」

唇を嬲り攻めたあの赤い舌が、今度はその萌乳を吸い愛で始める。

卑舌に弄ばれていく中で、雫の乳尖は戸惑いながらも喜びを感受し、その芯を秘かに硬くしていった。

チュッ、チュッ、とわざと音を弾ませて聞かせながら、玄蕃は美少女の乳房を吸い食む。

細かな吐息を漏らしながら、彼女の白頬は艷やかに朱を差していった。

こうして双乳共に恥唾で淫らに濡れ光るまでになると、彼はにわかに腰帯を解き、袴を下ろし出した。

「……!」

雫の眼前に、男の象徴が曝け出された。

それは先端がやや見える包茎ではあったものの、既に女犯の悦びに目覚めていた。

日々婢女たちと戯れ、それらの淫水に身を浸らせているためか

道具の色は歳不相応なまでに浅黒い仕上がりを魅せている。

「どうしたんだ、雫。ただ見ているだけ?」

玄蕃はそれをやおら乱暴に雫の唇へと押しつけてくる。

汗と尿臭と、先程まで抱いていた女の体臭を纏ったそれは

得も言われぬ香りを放っていて、美少女の無垢な鼻腔を犯した。

「教えてあげるよ、女の舌でね、男のこれを尺八のように咥えるんだ」

「やぁッ……やだ、そんな事……んうッ……!」

有無を言わさず、玄蕃は雫の小さな唇を雄で犯した。

口の中で包皮の捲れ上がったそれはドクンドクンと強かに脈を打ち、唇肉を辱めた。

接吻して間もない彼女の小さな口中は男の肉で一杯になった。

吐き気がして堪らない雫は離れようとするが、後頭部を押さえられてそれもままならない。

「はぁッ……はぁッ……雫……雫ぅ……!」

玄蕃は青い肉欲の命じるまま腰を盛んに突き上げ、雫の唇と舌を存分に嬲り、蹂躙していく。

雫は口一杯に男の摩羅肉を頬張らされ、小さな鼻で必死に呼吸を繰り返す。

初めて若君と逢った日から、いつか夫婦となる日を夢見ていた。

しかし、果たしてこれがそうなのだろうか。

遊び女のように口ではしたなく魔羅を舐り清めながら雫は涙を滲ませて羞恥に堪えていた。

臭気はますます濃くなり、唾汁はそれに反応して口に満ちていく。

激しい口淫の応酬により、それは口端からとろとろとやらしく垂れ漏れ、ポタポタと巫女装束に滴り落ちていった。

「ちゅぶッ……! んふぅ……ッ! んうッ! ぢゅるッ……むふ……ぢゅるんッ……!」

「んううッ……!」

――ドビュウウッ!

刹那、口中に青臭い奔流が湧き起こった。

一際濃い青臭いドロッとした粘りが咽頭となく舌となくぶつかり纏わりついていく。

「おおぅ……で、出るぅ……!」

玄蕃は口を尖らせながら法悦の相を見せていた。

彼は腰を浮かし、なおも彼女の口へとあの卑蜜とドクドクと噴き注いでいく。

吐き気がうっと込み上げる中、雫は口の中一杯に、その粘蜜を溜めた。

「北条得宗家のありがたい子種だ……飲め」

肉魔羅がチュポンと抜き取られた。
白濁を吐き出そうする雫の下顎をクイッと上げ、玄蕃が囁く。

彼女は目を潤ませながらそれを数口に分けて喉奥へと落としたが、元より経験した事のない臭気である。

うっと呻くと可憐な口元から飲み切れなかった種蜜が泡のように垂れ落ちた。

その苦しげな様子を見た相手は底意地の悪い笑みを浮かべている。

むせ返りつつも、雫は彼の瞳をじっと見た。

仮面が見透かされているようなゾクゾクとする感覚を玄蕃は感じていた。

「ゲンバ……君……?」

少女の視線は相手の化けの皮を容易く剥いでみせている。

思いの外酩酊し、演技が雑になっていたのか、兎も角彼女は時行の顔をした男の正体を知った。

「……そうだ。俺は玄蕃だ」

時行の貌をした狐は不敵に嗤った。上擦った声には相手の眼力に対する賞賛も含んでいる。

「父様と一緒に、ゲンバ君は……」

雫は葛藤しながら二の句が継げない。

ここにいるのが死んだはずの玄蕃なら、本物の北条時行は一体どこにいるのか。

その先にある聞きたくない真実に耳を塞ぎたかった。

「間違ってねぇよ。あの時……風間玄蕃は死んだ。そしてここにいるのは北条高時の遺児、時行って訳だ」

「兄様……兄様は……」

「坊はあの鎌倉炎上からずっと行方不明さ。これだけ待っても出てこないんだ、もう諦めて死んだと思え」

この野卑な間者に対する怒りが、どうしようもない哀しみと共に彼女の中へ込み上げてくる。

「言っておくがな、俺だって好き好んで坊のお株を奪っちゃあいないんだよ。
 頼重の野郎から北条時行になれと懇願されたから引き受けたんだ。
 お前だって、腹を切った親父が死に際に頼んできたら嫌とは言えないだろ?」

玄蕃は酒を煽った。

「諏訪神党は兎も角、南朝軍なんざ所詮寄せ集め……西方の親王さんは上手くやってるみたいだがな。
 旗頭を失えばすぐ瓦解する。そうなりゃあ北条の再興など覚束ない。
 北条の残党で唯一鎌倉を奪還した坊を失うってのは、そういう事なんだよ。特別なんだよ、特別。
 風間の玄蕃なんか鎌倉復興のために何人くたばってもいいが、北条時行は是が非でも死なせてはいけない。
 どんだけ逃げ続けても、また鎌倉を奪還しないとな……ふん……」

深酒で淀んだ眼で、玄蕃は庭園を眺めていた。

いや、彼の目には庭園など映ってはいない。もっと遠くにある朧気なものを見ている。

もう雫の姿すらゆらゆらと揺れていたその瞳は鈍色の孤独を奥に帯び、酷く寂しげだった。

「……で、だ。雫……この事を知っているのは俺とお前だけだ。亜也子や狐次郎にも漏らしてねぇ。
 吹雪は流石に感づいているかもな。恐らく俺が坊の影武者足り得るか見定めている途中だろうよ」

その時雫は虚ろな玄蕃の瞳に兆し始めた危険な色を見た。

「これからは、お前も共犯者だ……口約束は信用しないから、手形になるものをもらっておくぜ」

そう言って玄蕃は雫を押し倒した。

彼女はほとんど抵抗する事なく彼を受け入れた。

北条時行を兄様と呼称し、欺瞞を重ねていた彼女の初恋――その終幕を知らされ、芯の抜けたようになってしまったのだ。

「んん……ッ……! ………ッウ……!」

あどけなさを留めている美少女の身体に逞しい「芯」が荒々しく挿入されていく。

自分の知らない秘奥に届いたそれは無惨な破瓜痕を身に纏ったまま、激しく前後に滑り穿つ。

「はぁッ……はぁッ……! いいぜ、雫!
 おとなしい顔してなかなかイイ穴してるじゃねぇか!」

玄蕃は粘り強い腰で雫を嬲っていった。

遊女との刺激的な遊びを覚えた彼は、抑え切れない男女の欲をこの儚げな美少女へと打ち込んでいく。

パンパンと幼さの消えていない二人の下腹がぶつかり、閨の闇に響き、溶けていく。

権力に尻を振る女たちと違い、恋に染まりきらずにいた彼女のそこは動かす度に緊々と雄の欲望を締め付けてくる。

「兄様、兄様ぁ……!」

「諦めろ、ここでは俺が時行なんだ。これからもずっとな……」

身体が女の色に染まっていく中で、雫は最後まで時行を想っていた。

そんな彼女に、玄蕃は苛立ちを隠せない。

自分がもう時行である事を彼女に分からせたくてならなかった。

「やぁッ……! んッ……ああッ……!」

玄蕃は雫の背後に回り込み、その片脚を抱えてみせた。

丁度障子を前に足を掲げて横になっている姿勢だった。

小さな胸乳も窪んだ臍も、玄蕃と繋がった箇所も晒したまま、彼女は涙を流して嘆いている。

そんな彼女に己の存在を誇示するかの如く、彼は初々しい乙女への鉄槌を止めようとしない。

太腿の付け根に生々しい破瓜の爪痕が赤く垂れている。

その赤い筋も止め処ない淫姦奔流に浚われ、やがて消えていった。

「雫、お前は良い女になるぞ。俺はな、初めて会った時からお前が欲しくて堪らなかったんだ。
 頼重の奴も許してくれるさ。何せ娘が北条時行と夫婦になるんだからな!」

「ああッ……ダメぇ……! 助けてぇ……兄様、兄様ぁ……!」

乱突に伴って、雫の乙女はじんと濡れていった。

恥毛一つないつるりとしたその萌門は朱を帯びて火照っていく。

ようやく少し膨らんできた彼女の慎ましい乳房を、玄蕃は乱暴に愛撫する。

ツンと尖った乳雛が愛撫と興奮で汗ばみ、しっとりと濡れた。

「ほらっ、雫……時行の子種を注いでやるぞ!
 知ってるんだぜ、俺は。これを女の穴に流し込むと種汁が赤子になるんだ」

拒絶する雫の箇所がまた一際きゅううと締まった。

もう彼女の意志とは裏腹に、結合部位は新しい主人に傅き、しなを作っている。

「あはぁッ……父様ぁ……兄様ぁ……!」

根元まで密着した玄蕃の魔羅はドクンと大きく揺らいだ後、大きな肉擬宝珠を更に膨らました。

刹那、雫の恥奥にあの雄蜜が猛々しい勢いで次々と迸り狂った。

ドビュッ、ブビュッ、ブピュウッッ!

亀帽を盛んに振り乱し、幼膣を引きずりながら熱い律動を繰り返していった。

全身に駆け巡る未知の痙攣と痺れに、少女は戸惑った。

背後の彼は、気怠げな吐息を彼女の耳朶へと漏らしながら、抱いた女の温もりをいつまでも貪っていた。

「はぁッ……はぁッ……はぁッ……」

閨の真ん中で雫は虚空を見つめていた。涙で天井は木目すら覚束なかった。

玄蕃の抱擁が去ると、チュポンッ、と彼の摩羅が滑り出た。

まだ毛も生え揃っていない幼い女門からは、とろぉりと粘りつく雄汁が垂れている。

   #  #  #

その後、「北条時行」は尊氏軍に駆逐され、また地方へと落ち延びる憂き目に遭った。

実際、玄蕃は征く先々で上手く北条時行を演じていた。

しかし四六時中赤の他人の演技をし続けていると、人はどうなるだろうか。

元々無頼の徒である彼が、品のある少年貴族を演じ続ける事自体、相当の精神的負担を強いる無理難題なのだ。

案の定、彼は幾度となく己を見失いかける場面があった。

玄蕃が時行の真似をしているのか、時行が玄蕃の真似をしているのか。

気がつくと何とも白昼夢めいた曖昧な感覚に陥ってしまう。

このような危うい精神状態はいつしか慢性化し、彼の内面を徐々に蝕み、程なくして静かな狂気へと駆り立てていく。

表で品行方正たる北条時行を演じていた彼は、一度閨房の闇へ潜ると艶めかしい女人たちと淫交に耽った。

他の女とは戯れるだけに留まっていた彼は、共通の秘を握る雫を前にすると朝まで離さなかった。

早朝、閨房より顔を出す彼女を見て女房連中は息を呑む。

その艶を帯びた美しい玉肌に、朱く大きな平手の痕や無法にも駆け巡る縄の痕を見出したからだ。

「時行様はどうして雫様にあのような仕打ちをなさるのでしょう」

妾たちは、正妻たる雫のみが何故あのような仕打ちを受けているのかと他人事ながら眉を顰めていた。

権力者におもねる性悪の妾が、ある夜、閨房でこう囁いた。

「ねぇ、時行様……雫様をそれほどまでにお嫌いでしたら早く郷里に返してはいかがですか?
 あのような幼稚で胡散臭い女性は、貴方様のような大望ある御方に相応しくないと存じまする」

それを聞いた時行は「……本当にそう思うのか?」と聞いた。

正妻の地位を狙っていた妾は我が意得たりとばかりにうなづいた。

すると玄蕃はその妾に対し、「不可」と頬に大きく墨で書いて郷里に返してしまった。

それから誰も雫の悪口を囁かなくなった。

雫は玄蕃の相変わらずの仕打ちに、健気なまでに耐え忍んだ。

玄蕃が演技を用いず接する事の出来る異性は、最早彼女以外に居なかったのだ。

歪な関係ではあったものの、確かに二人は男女の仲であり、彼は彼女を片時も離す事はなかった。

後世において、北条時行が何故本来の政敵たる後醍醐天皇の傘下に入ったのかと首を傾げる史家は少なくない。

尊氏憎しとはいえ時行が南朝に組したのは、そもそも根無し草たる玄蕃自身に建武政権への嫌悪が希薄だったからに他ならない。

もし時行本人が居たのならば、どう立ち回っていたか――それは神のみぞ知る所だ。

南朝方の一武将としての時行の活躍は見過ごせないが、やはり鎌倉奪還後の立ち居振る舞いは同じものだった。

思えば、これが彼の限界だったのだろう。

それでも雫は、虐げられつつも彼の傍を離れなかった。

   #  #  #

「雫、お前いつまで俺のそばにいるつもりだ?」

この頃の玄蕃は殊の外荒れていた。

潜伏中にもかかわらず昼夜の別なく酒を煽っては、傍の雫に当たり散らしていた。

「年貢の納め時というのが、その頭で分からないのか」

「そう乱暴な事を言って、私を逃がすおつもりでしょう?」

「……」

玄蕃は酒杯を上げようとしなかった。

密告者により北条時行の潜伏先が敵方に漏洩していた。

逃げようにも既にこの集落周辺には敵が至る所に配置され、まさに四面楚歌の様相を呈していた。

「へっ、誰が捕まるかよ……私は北条時行、天下第一の逃げ上手……」

「貴方」

「あ?」

「手が、震えてるわ」

玄蕃のこめかみにツッと冷たい汗が一筋、伝った。

本物の時行が生きていたのなら、このような窮地に陥っても脱する事が出来たかもしれない。

彼は今、自分が北条時行でない事を痛感していた。

そして、北朝側の武士に捕らえられ、罪人として斬首される直視し難い未来をまざまざと見させられた。

その抗い難い未来の前には流石の玄蕃も震えが止まらなかった。

「……ここまでだ、雫。一生を棒に振ったが……俺は、とうとう……坊に成れなかった」

「いいえ、貴方は立派な北条時行です」

恐怖に強張っていた玄蕃を雫は真っ直ぐ見つめて返す。

その柔和な言葉は寒雲の狭間から差す陽光にも似ていた。

「私は貴方を――妻として誇りに思います」

その夜、雫は玄蕃に身を任せた。

この一夜が今生との別れを惜しむものである事を、二人はひしひしと感じていた。

いつもと違い、彼は面を枕辺に置いて雫を抱いた。彼は女を抱く時も風呂に入る時もその面を手放したりはしなかったのだ。

鎌倉炎上から十八年、彼女は玄蕃の素顔を見た。その下の素顔は悲愴に満ちていた。

不安、焦燥、劣等感、恐怖、孤独――それらの負の感情が彼の容貌を長年に渡って蝕み、深く染み、刻まれている。

まだ二十八だというのにまるで不惑を過ぎているかのようだった。

運命に翻弄され、疲弊しきった哀れな男の顔がそこにあった。

「雫」

玄蕃は雫の花弁に似た唇を吸い食む。その接吻は花蜜を愛でるように優しかった。

いつもの噛みつかんばかりの荒々しさはどこにも見当たらなかった。

死を目前にした彼の心境は凪のように静かだった。

熱い湯にゆったりと浸かっているような心地の中で、彼の唇が下方へと続いていく。

慎ましい乳房の膨らみが熱く疼いた。

縄の味を覚えたそこに、今の彼の舌は悲しいほどに優しかった。

舌は可愛い乳雛と戯れる。

歯痕もつかない甘痒い舌遣いにそれは戸惑いを覚えながらもゆっくりと押し返していく。

「あんッ……んくぅ……!」

小さくもキレの深い雫の股に玄蕃は顔を埋めた。

そして舌の形が充分残るまで、長い間彼女の萌溝を愛撫し尽くした。

「早いな、濡れるのが……」

別れを惜しむようにゆっくり、ゆっくりとそれは蝸牛の如く這っていく。

彼の熱い鼻息が雛尖を何度もそよぎ撫でた。

今までにない優しい愛撫を受けて全身を火照らせ、なだらかな快頂を

一つまた一つと迎え、一区切りつく頃にはすっかりと蕩けきってしまった。

充分に潤いを得たその箇所に、彼は己の剛物を臨ませる。

待ち望んだ挿入は、染み入るような優しい感触だった。

重なり合った胸から互いの熱く切ない鼓動が伝わってくる。

共鳴し合い、そのまま一つになっていく。

この瞬間が永遠に続けば良いと思った。

だが、次は決して来ない。これが最後なのだ。

一挿一抜を味わうかのような深い蜜交の果てで、春池に白酒が勢い良く迸る。

雫は玄蕃の首に腕を絡め、萌した子宮にドクドクと注がれていく愛する男の種を感じていた。

出し切ると玄蕃は腰を浮かせた。雫は彼の腰に縋り付き、仕事を終えたばかりの柔砲を口に含んだ。

いつになく愛しいそこを恥舌と朱唇でゆっくりと愛撫していく。

彼女の殊勝さが彼のを再び揺さぶる。

「淫乱な妻を持つと苦労する」

「そうね。だから、お願い。もう一度……」

いつも睦事が過ぎ去るのを耐えに耐えていたというのに、今夜は酷く寂しかった。

雫は自ら玄蕃の上に乗り、細く嫋やかな腰を悩ましげに奮った。

途中、玄蕃と他愛もない話を挟みながら、出来るだけ長く味わった。

初めて会った日、主上の綸旨を燃やした日、酒を注いだ日、厳冬の中で諏訪湖の氷上で遊んだ日――全てが大切な思い出だった。

「んッ……貴方ぁ……」

東の空が白ずんできた頃、彼女は泣きながら静かに果てた。

   #  #  #

「……どうしても行かれるのですか?」

「……ああ。どうせ死ぬなら坊として死ぬ」

夜が明けた頃、人目を引く派手な装束を玄蕃は身に纏った。

完全包囲された今となってはそれも死装束と同義だった。

裏には馬も控えているが、二人共立ってこの集落の包囲網を突破する事は至難の業だ。

「お前の親父殿と交わした約束だからな……『娘婿』としちゃあ、今更反故には出来んだろ?」

昨夜の情事を思い出し、雫は頬を朱に染めた。

思えば玄蕃が頼重を義父とみなしたのはこれが初めてだった。

馬を引いてくると、彼女は緩んでいた顔をキッと引き締めた。

「私はもうどこにも行く気はありません……最期までお供いたします」

「……。腹の子も、そう言ったのか?」

雫はハッとして下腹へ手を当てた。

その手の向こうには、小さいながらも確かに芽生えていた命が在った。

無言でうつむいている彼女に、玄蕃は小さな桐箱を手渡した。

中を覗いてみるとそこには見事な装飾を柄に施した匕首が鞘に収まっていた。

「これを持ってここから逃げろ。もしもの時になったら抜け。それだけだ……」

「!? 貴方、私は……!」

その言葉も終わらないうちに玄蕃は雫の身体をサッと担ぎ上げ、そばにいた馬の背に乗せた。

「貴方!」

雫が二の句を継ぐ間もなく、馬の尻に思いっきり蹴りが叩き込まれた。

堪らず嘶いた馬は前脚を大きく持ち上げた後、夜明けの村道を駆け走っていく。

振り落とされないように、雫は馬首に必死でしがみつくしかなかった。

途中茂みから武士が数人飛び出てきたが、興奮した馬の暴走など誰にも止めらない。

それでも数人が雫を捕らえようと追ってくる。

「私は北条時行! この首級を所望される御仁はいるか!」

背中の向こうで大音声が聞こえた。玄蕃だ、彼の声に間違いない。

振り向くと人影がワラワラと現れ、山となっている所がある。

雫を追っていた男たちも、彼女を囮と判断して急いで踵を返していく。

こうして三町ほど駆けると、敵はもう居なくなった。

「……」

追手を撒いたものの、雫は生きた心地がしなかった。

最後に見た武士の人集り――あの中に、玄蕃がいたのだ。

捕まえられた彼は、近い将来処刑されるに違いない。

「北条時行の影武者」という身の丈に合わない大役を玄蕃は一生かけて演じ切った。

諏訪一族の者として、彼には感謝し足りない。

彼のおかげで逃若党は今日まで生き延びる事が出来たのだ。

一度立てた操のため、雫は母子共に一足先に冥府に参る覚悟をしていた。

最初はあれだけ嫌いだったのに、今はもう玄蕃が居ないと辛くて仕方なかった。

どんな鞭や縄よりも、それは彼女に苦痛を与えた。

彼女は匕首を手にした。

震えていたからだろう、それは手を滑って床に落ちた。

「あっ……」

現れた刃は一寸にも満たなかった。

その匕首は柄ばかりが大きく、甚だ不格好な形状をしていた。

しかもその刃先は丸く削られていて、胸に刺しても死ねそうになかった。

ものの役に立ちそうにない匕首の鞘には一通書が隠されていた。

酷い金釘文字で教養の欠片もないそれは、玄蕃の生の筆跡だった。

『もうお前からは奪わない』

それだけの短い手紙を読んだ時、雫は泣き崩れた。

玄蕃は彼女がきっと自害するだろうと知って、この一寸もない丸刃の匕首を渡したのだ。

それは決して命を絶ってくれるなという彼の願いが込められていた。

彼女はそこに無限の優しさを感じて膝を折ったのだ。

夫に救われたこの二人分の命を彼女はどんな事があっても絶やしてはならない

必ず逃げ延び、生き続けてみせよう、そう決心した。

   #  #  #

(俺の命運も、ここまでか……)

鎌倉龍ノ口に北条時行は引き出された。

数瞬後に眼前の砂利には血が飛び散るだろう。

その上に落ちて転がる、自身の生首――彼はずっと収まらない震えに神経を擦り減らしていた。

取り留めのない後悔が脳裏に反響する。

(俺はあのまま坊の誘いを振り切って、ケチなこそ泥を続けていた方が良かったのではないか……
 そもそも頼重の奴がくたばろうが、俺に何の関係があって……
 結局国どころか六文銭を受ける羽目になってしまったじゃないか……)

恐怖から逃れようと、行方も知れない坊へ無言で悪態をつき散らした。

だが、その後で浮かんだのは雫の嫋やかな姿だった。

思えば彼女の半生だって碌なものではない。

北条の御旗に付き従っての逃亡生活、おまけにその御旗は途中で馬の骨にすり替わっているときた。

女遊びの激しいそのなり損ないに犯され、事ある毎にその綺麗な体を縛り、鞭打たれる。

そんな淫獄に在りながら、雫は秘密を守り通し、ずっと不平を口にする事なく付き添ってくれた。

(あの夜、俺を憐れみながら、俺が擬物と知りながら、共に死ぬとまで言ってくれた……)

彼は思った。

ああ、刑場に彼女が引き出されなくて本当に良かった。

どこへだっていい。好きな所に逃げてくれ。

元気な子を産み、母子共々幸せでいてくれ。

再婚したっていい。雫は美人だし、妻に望む奴だって少なくないだろう。

今度は俺みたいなろくでなしにつかまるんじゃないぞ。

雫を思い出すと不思議な事に恐怖が和らいでいくのを感じた。

そして玄蕃はなけなしの勇気を振り絞り、今際の際まで北条時行を演じる決心を固めた。

処刑を前にした彼の放つ粛々とした態度に、遠巻きに眺めていた見物人は思わず固唾を呑んだという。

役人の刀が天に掲げられ、そのまま無情に玄蕃の首の根へと振り落とした。

胴から離れ、赤い軌跡を絵描きながら砂利の上を首級が転がる。

その時だった。

野次の中から小さな影がサッと抜け出て、それを口に拾い上げた。

「あっ、待て!」

それは狐だった。

首切り役人たちの前に、狐が一匹また一匹と野次から躍り出てくる。

彼らはまるで玄蕃の首を守るようにして立ちふさがると

最初の一匹はその口に玄蕃の髪を咥えたまま、その場から逃げ去った。

慌てて追う役人へ残りの狐たちは躍りかかり、肩も顔も関係なく引っ掻き、噛みつき、刑場はしばらく混乱した。

玄蕃を持ち去った狐たちは刑場を離れ、鎌倉を出て、諏訪へと続く獣道をひたすら駆け走っていく。

その先の先に在る諏訪湖の畔には、巫女装束の美女が一人――。

「……貴方……」

彼女は狐から首級を受け取ると、それを胸に抱いていつまでも泣いていた。

それを狐たちは座を正して下から眺めていた。

   #  #  #

その後鎌倉ではまことしやかな噂が流れた。

刑場から狐が持ち去った時行の首級――それが星霜を経て肉体を取り戻し、北朝の天子と将軍に祟りをなすというものだ。

口性のない者たちは秘かにそう囁き合い、それは北条時行が処刑から逃げ延びたという噂となって各地に広まっていった。

残されたあの首切り役人たちはこの変事に恐ろしくなり、詳細を誰も上に報告しなかった。

ただ「鶴岡社務記録」には、文和二年五月二十日鎌倉龍ノ口で北条時行が処刑された、とだけある。

以上です

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月21日 (木) 08:29:34   ID: S:5OxHos

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