勇者「バカな……早すぎる……」 (59)
【メルクリア王国、カルスト山】
魔法使い「やれやれ……。予言より、五年も早いとはね……」
魔法使い「運命というのは残酷だよ。こちらの準備はまだ整っていないというのに……」
魔法使い「とはいえ、もうどうしようもないか……。封印は既に解かれてしまったのだから……」
カラス「」カァー、カァー!!
魔法使い「ああ、わかってる、リュード。今から僕も行くよ」
魔法使い「あの時の『約束』を果たしにね!」
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【シャルナ帝国、ルクセント村】
戦士「来てしまったか……。予言の時が……」
妻「あなた……」
戦士「悪いな。少し出かけてくる。夕飯までには戻ってくる……ってのはちょいときつそうだがな」
妻「……どうしても行くの……?」
戦士「ああ。世界の危機だからな。そして俺は戦士だ。行かない理由がない」
妻「…………」
戦士「大丈夫だ。俺は必ず帰ってくる。心配するな」
妻「でも……。もしも……もしもあなたが……」グスッ
戦士「大丈夫だ」
戦士「俺は死なない」
戦士「お前がここで待ってる限りは、絶対にな」
【ザルキューレ王国 クレナ町の教会】
女僧侶「それでは、行って参ります」ペコッ
神父「ええ、お気をつけて……。私は町の皆さんの避難に全力を尽くしますから……」
女僧侶「避難……ですか」
神父「……わざわざ言わなくても結構です。どこに逃げるのか、と問いたいのでしょう。『あの』大群から逃げる方法などあるのかと……」
神父「空が黒く見える程に『奴等』で埋まっているこの世界で……一体、どこに逃げるのかと……」
女僧侶「…………」
神父「恐らく、世界の果てに行ったとしても無駄でしょう……。わかっています……。今日、世界は滅びる……。わかっているのです……」
女僧侶「いいえ、違います」
神父「え……?」
女僧侶「終わらせません」
女僧侶「私達が終わらせません。決して!」
女僧侶「必ず『滅びの運命』から救ってみせます。女神様の名にかけて!」
【ナイカレア中立地帯、森の中、木の上】
女武闘家「おぉー、すっげーな。見なよ、あの空。『奴等』ホントに来やがったよ。これマジでヤバくない?」
男武闘家「そうだな。予言によると、恐らくあれは尖兵だ。これから更に増えていくはず」
女武闘家「マジで? あれで尖兵? それヤバいって、ヤバい、ヤバい、超ヤバいじゃん」
男武闘家「そう言いつつ、お前は何故か嬉しそうだな?」
女武闘家「えー? 別に嬉しくはないよ? たださあ」
男武闘家「ただ?」
女武闘家「殺しがいがあって楽しいなって、それだけ」ニヤリ
男武闘家「」フッ
男武闘家「戦闘狂が」
女武闘家「うっさい。死ね」
男武闘家「死ぬのは断る。代わりに奴らを殺すとしよう」ヒュン!!
女武闘家「だねっ! とっとと『約束の場所』まで行こっか!」ヒュン!!
【ツイナ連邦、首都デイズルークス、路地裏】
盗賊「」ハァ
盗賊「ったく。しょうがねえなあ……」テクテク
謎の少女「……どこ行くの?」
盗賊「空見りゃわかんだろ。『奴等』が鬱陶しいから黙らせに行くんだよ。……どうせ『例の場所』にみんな集まってるだろうからな」
謎の少女「ふーん……。おじさんも行くんだ? おじさんはそういうのに興味がないと思ってたんだけどなあ」
盗賊「世界が終わったら盗賊も出来ねえ。興味は全くねえがやらなきゃいけない事ってのが世の中には一つか二つはあるんだよ。……誰にでもな」
謎の少女「へえ……。そうなんだ。でも、私はまだ『子供』だから、そんな難しい事言われてもわかんないけどね」
盗賊「冗談言ってねえでお前も来い。……お前が子供? 笑わせんな。化物モドキがよ」
謎の少女「はあい」クスクス
盗賊「ったく。命の危険を感じて抜け出してきたってのによ。何で俺はこういう選択しか出来ねえんだよ! あー、腹立つ、クソがっ!」
【ヌーバタッド合衆国 バイラントタウン ルクセント銀行、本店内】
商人「んーっ、いや、凄いなこれは」
踊り子「……何がよ?」
商人「いや、この大きな銀行に誰一人いないんだぞ。見てみろよ。客どころか店員すら誰もいない。ほら」
シーン……
踊り子「そりゃね……。当たり前じゃない。全員もうどっかに逃げたか隠れたわよ……」ハァ
商人「今なら銀行強盗も余裕だなあ。そうだろう? はっはっは。金を取り放題だ」
踊り子「バカな事言ってないで行くわよ。ここの金庫に預けてあった『アレ』を持ってくるのも、私達の役割の一つなんだから」
商人「……わかってるともさ。必ず届ける。これはワシらにとっての……いや、人類にとっての『最後の希望』なのだからな」
踊り子「神に祈るのは聖職者がやる、私達は祈らない。力で平和をもぎ取りに行くのよ……!」
【ブイラロホ独立国、ラクイマ村】
ギャァァァ!! ワァァァ!!! ヒィィィィ!!!
村人A「आखिर मिकोची सबसे अच्छा है!!」
村人B「मैं लूसिया से प्यार करता हूँ!!」
村人C「पेको पेको पेको पेको!!」
村長「केवल नोएल ही जीत सकता है। बकवास मत बोलो……」
村長「पर मुझे भी कनातन पसंद है……」
通訳「」フムフム
通訳「ダイタイ、ワカタ」
賢者「彼等は何と?」
通訳「……ッテ、イッテルヨ」
賢者「……わかりました。ありがとうございます」
賢者「やはり、ここか……」
賢者「いいですか、皆さん。これから私は行くところが出来たので出かけてきますが、皆さんはこの結界の外には絶対に出ないで下さい。でないと、命の保証は出来ませんから」
通訳「オウ、ワカタ。デモ、オマエ、ドコイク?」
賢者「『禁断の森』に」
通訳「!?」
賢者「これは私にしか出来ない事なので。世界で唯一、時空魔法を使える私にしか……」クルッ、スタスタ
通訳「オ、オマエ、ヤメロ! マテ! モドテコイ! シヌゾ!」
【ゼイラッカ王国、キノ町、塔の頂上】
女旅芸人「来たのね……『滅びの時』よ」
女旅芸人「ずいぶんと早かったわね……。もう少し長引くと思っていたのに……」
女旅芸人「おかげでもうタイムリミットじゃない……。私はまだまだこの世を満喫していないというのに……」
女旅芸人「……残念だわ。……本当に残念」
女旅芸人「勇者……。悪いけど私は先にいくから……」
女旅芸人「私はね……もう負けていたのよ……。『奴等』が現れる前から……心が折られてしまっていたの……」
女旅芸人「だって『奴等』は……。『人間が勝てる相手じゃない』んだから……」
女旅芸人「古文書の解読を終えた時……私はそれに気付いてしまったの……。でも、それをあなた達には言えなくて……嘘を……」
女旅芸人「だから……これからみんなが死んでいくのは……全部、私のせいなの……」
女旅芸人「……私はもう……あなた達の仲間じゃない。そんな資格なんか……私にはない……」
女旅芸人「今の私は……研究者の道から外れ……人の道からも外れた……気狂いの道化……」
女旅芸人「さようなら……勇者。あなたの事……好きだった」
女旅芸人「さようなら……みんな……」ツイッ……
ヒューーーーー……
グチャッ!!
【ラスタ連邦、バラキフナ島にある小さな島】
俺「ぎゃあああああっ!!!」
俺「ひいっ!! に、逃げっ!!!」
俺「うぎゃあああああっ!! た、助けっ!! ひぃぃぃぃぃぃ!!!!」
俺「ふぇっ!! ひゃいっ!!! く、来るなっ!!!」ブンッ、ブンッ
ザシュッ!!
ブシュゥーーーーー!!!
俺「血がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ガクガク、ブルブル
【リッドライト王国 アルサナ湖のほとり】
隻眼の青年「…………」
片腕の女性「来たね……『奴等』が」
隻眼の青年「…………」
片腕の女性「わかってる……。私達はまだ動かない」
隻眼の青年「」コクッ
片腕の女性「……どんな戦いだって、犠牲の上に勝利は成り立っているんだから」
隻眼の青年「…………」
片腕の女性「私達が動くのは……『あの人達』が目一杯戦って、敵を減らして、そして死んでから……」
隻眼の青年「…………」
片腕の女性「私達、『呪われた子』はその為に作られたのだから」
隻眼の青年「…………」
片腕の女性「『人間では勝てない相手』、それを滅ぼす為にね……」
隻眼の青年「…………」
今日はここまで
またそのうち
ネットの日本人を見てみ。口が悪くて偉そうな奴ばっかだろ?
どこが謙虚で礼儀正しい日本人、なんだ?
集団で個人叩きをしまくるくせに
いじめ問題や、欧米人によるアジア人差別は良くないとか言いやがる。
どの口が言ってんだって話。
ネット以外の日本人もそう
芸能人は人の悪口で笑いを取る。日本人は人の悪口が好きだからそういうのが人気になる。
マスコミは常に差別を煽る。ひとつの悪を作り出し視聴者(日本人)に叩かせる。
んで日本人は人を叩くのが大好きだからまんまと叩きだす。
それでいてテレビは「いじめや差別を辞めよう」
もういい加減気づこうや。
日本人は謙虚じゃないし優しさも無い。
謙虚な人は「おれの血税が」「おれの税金が」とか言って
生活保護の方々や皇族の方々を叩かない。
日本人は自己顕示が強く人を叩くのが大好きで嫉妬深い。(嫉妬深いから叩く)
外国も一緒とか言う奴いるけど信じるなよ。
日本人がダントツ最悪だからな。
【ハネルト王国 シュライト市 城壁前】
ヒュー……グチャッ!! ドサッ!!
バキッ!! ドシュッ!!
「ぐはっ!!!」バタッ…
「た、助けっ……」ザシュッ!!
兵士「ちくしょうっ!! 仲間が次々とっ!!」
兵士「隊長! このままじゃ全滅してしまいます! 一旦撤退する事を具申します!!」
隊長「撤退!? 撤退だと!? どこに撤退するって言うんだ! 化物どもと一緒に城壁内にか!? 中にはまだ市民が大勢いるんだぞ!!」
兵士「で、ですが、このままでは俺達が全員死んでしまいます!」
隊長「黙れ! 我等は兵士だ! 国と国民を守る為に死ぬのも仕事だ! 貴様も兵士なら、卑怯者と罵られて死ぬより、勇敢に戦った無能者として死ねっ!!」
兵士「ぐ、うっ……!」
隊長「いいか! 聞こえている奴がいるなら、最後の命令を出す! 市民が避難する時間を一秒でも多く稼ぐ為に、全員ここで戦って死ね! ここが我等の墓場だと心得ろ! 以上だっ!!」
ザシュッ!!
隊長「がっ!!」ドサッ……
兵士「う、うわああぁぁぁぁぁ!!!」ダダダダダツ
【カティナ共和国 トナイス地方 灯台上】
女狙撃手「それっ」バンッ!!
男狙撃手「Fire!」バンッ!!
バンッ!! バンッ!! バンッ!! バンッ!!
女狙撃手「ねえ……今、思ったんだけどさ」バンッ!!
男狙撃手「どうした?」バンッ!!
女狙撃手「狙撃手としてさあ、これほどつまらない相手いないって思わない?」バンッ!!
男狙撃手「まあな。照準付ける必要がほぼないからな。撃てば当たる。数が多すぎて」ガコッ、バンッ!!
女狙撃手「撃ち落としたの、それで何匹目?」バンッ!!
男狙撃手「さあな。100から先は覚えてない」バンッ!!
女狙撃手「ホントだよ。もう数える気も起きないしさあ」ガコッ、バンッ!!
男狙撃手「……そうだな」バンッ!!
女狙撃手「もう近付かれ過ぎてさ。数える必要もなくなっちゃったしね……」バンッ!!
男狙撃手「……弾丸もそろそろ尽きるな。……ここで終幕か」バンッ!!
女狙撃手「……悪い人生じゃなかったよね、私達」バンッ!!
男狙撃手「……そうだな」バンッ!!
バサッ、バサッ…… ドスンッ!! ドスンッ!! ドスンッ!!
女狙撃手「とうとうここまで来ちゃったか……。これでチェックメイトかな……。頑張ったんだけどね……」
男狙撃手「……俺達が殺した分だけ、代わりに生き延びた人間がいると信じよう」
女狙撃手「きっと、二人で千人ぐらい救ったよ。……神様も私達の事、見てくれてたよ、絶対」
男狙撃手「そうだな……。これでまた天国で会える。次は……幸せに生きれるな。人を殺す仕事からようやく離れられる」
ザシュッ!! ズバッ!!
女狙撃手「」ドサッ……
男狙撃手「」ドサッ……
【ディセドニア王国 都市ナグナ スラム街にある『裏教会』の屋上】
教祖「ははっ!! ははははははははははっ!!!」
教祖「見たまえっ! 同士達よっ!」
教祖「遂に来たっ! 遂に来たのだっ!!」
教祖「全知全能神『ルフェーゼ』様が降臨なされたっ!!!」
教祖「我が教会の悲願っ! 千年以上もの宿願っ! それが今っ! 果たされたっ!!」
教祖「見ているかっ! 教会の愚か者どもっ! 我等を異端者だと罵り! 石を投げてきた愚か者どもよっ!!」
教祖「それは全て逆だっ! 貴様らが異端者なのだっ! これがその証拠っ!!」
教祖「この光景こそがっ!! 我等が待ち望んだ『聖戦』!! 『審判の時』だっ!!!」
バサッ、バサッ……
教祖「おおおっ!! こちらに来たっ!! そなた、ルフェーゼ様の使いか! 私を迎えに来てく」
ザシュッ!!!
教祖「」ドサッ……
【エイラック自治区 教会 隠し地下室内】
少女「う、ううっ……」グスッ、ヒック
少年「おい、大丈夫か……? 怖いのか?」
少女「うっ、ううっ……」フルフル
少年「大丈夫だ。無理するな。暗いし、狭いし、怖いのは当たり前だ」
少女「うううっ……」グスッ
少年「だけど、ここなら安全だから。『奴等』だって、こんなところ絶対気付かない。だから怖くても、静かにしてて、助けが来るのを待っていような」
少女「ちが、ちがうの……」グスッ
少年「違う?」
少女「あのね……聞こえるの……」グスッ
少女「声がね……聞こえるの……みんなの声が……」グスッ、ヒック
少年「?」
少女「たくさん……たくさん……聞こえるの……。頭の中で……。助けて……殺さないでって……」グスッ
少年「…………」
少女「みんな……みんな……そう言いながら……声が消えてくの……」グスッ
少女「それで……どんどん……どんどん……声が少なくなっていくの……」グスッ
少女「みんな……みんな……死んでっちゃうの……」グスッ、ヒック
少年「……神さま。どうか……どうか……僕らを助けて……。見捨てないで……」
【ミシドル王国 ハルサキ山】
女子高生「」ハァ
女子高生「で、今度の転生先はここ?」
女子高生「ふうん、そう。それで、今度は何? また私が世界を救うの?」
女子高生「だってそうじゃない。これまで四回転生してるけど、その度に世界を救えだの魔王を倒せだの、そればっかりで」
女子高生「今まで一回も平和な世界に転生したことないでしょ。私にまともな生活を送らせる気ゼロじゃない」
女子高生「大体、アンタ、神様なんでしょ? なら、自分でやればいいじゃん。どんだけ人を利用する気? なんか段々腹が立ってきてるんだけど」
女子高生「は? 出来ない? 強過ぎて? アンタ、ホントに役立たずね」
女子高生「でも、これで最後? ホントに?」
女子高生「」ハァ……
女子高生「わかった。だけど、ホントにこれで終わりにしてよ。あと、この世界救ったら一生遊べるだけのお金ちょうだいね」
女子高生「ん。オッケー。取引成立」
女子高生「半日で終わらせてあげる」
女子高生「アンタは凱旋パーティの準備でもしてて。目一杯豪華なのヨロシクね」ヒュン
【シャルナ帝国 ワークレア要塞】
緑の瞳の騎士「『奴等』が現れてからずいぶんと時が経過したが……未だ陛下からの命令は来ず、か」
銀髪の女騎士「この光景を見れば想像はつくよ。多分、帝都も今『奴等』に襲われてるんだと思う。宮殿にはアルナがいるから陛下は御無事だと思うけど……」
緑の瞳の騎士「命令がなければ我等は動けない、か。辛いところですね」
銀髪の女騎士「……そうだね。きっと他の場所では人がいっぱい死んでるのにね……。こんな無力感、たまらないよ」
バサッ…… バサッ……
緑の瞳の騎士「……とはいえ、こちらに向かってくる相手なら命令なしで迎撃は出来る
、か」
銀髪の女騎士「『奴等』をこちらにおびき寄せるいい機会かもね。ほら、早くこっちに来なよ。仲間をたっぷり連れてきてさ」
銀髪の女騎士「『帝国七剣』筆頭、『神殺しのノエル』が全員の相手をしてあげる」
緑の瞳の騎士「『無敗のジークフリート』も相手になろう。私の二つ名が嘘偽りで無い事を教えてやる」
銀髪の女騎士「人類最強って言われてる私達に喧嘩を売った事、文字通り死ぬほど後悔させてあげるから」
【シュルベスト王国 グーテル地方 全滅した町】
二刀流の剣士「」フゥ……
二刀流の剣士「あまりに酷い……。どこを歩いても血の海、死体だらけとは……」
二刀流の剣士「出来る事なら全員供養してやりたいが……。『奴等』の気配がまだ残っている……。そいつらを片付けてからでないと」
ピチャッ、ピチャッ……
二刀流の剣士「!」
二刀流の剣士「今の音は……? この路地裏からか……?」ソーッ
「ううん。後ろ」
二刀流の剣士「!?」クルッ!!
シーンッ……
二刀流の剣士「いない!? そんなはずは……」
「だから、後ろだって」
二刀流の剣士「そこか!!」ズバッ!!
シーンッ……
二刀流の剣士「またいない……!? 一体どこに……」
「二回ハズレだから、もうお終い。じゃあね」
ドシュッ!!!
二刀流の剣士「」ドサッ
「死んだ、死んだ、また死んだ。ホント楽しいねえ」
死霊使い「あーあーあーあー……人間殺しちゃ駄目だって言ったのにさあ、あーあーあーあー……参ったねえ」
死霊使い「まあ、この剣士君も、私の仲間になるんだからいいかあ……。『奴等』を殺す戦力アップって事で許してくれるよねえ、きっと」
死霊使い「町一つ分の怨念、『奴等』にどれだけ効くか楽しみだよ。ははっ」
【ジパング連邦 カントー地方】
天才陰陽師「」テクテク……
天才陰陽師「さて……ようやく着いたね。『奴等』の相手をしながら来たので、ずいぶんと遅くなってしまった」
首塚「」……
天才陰陽師「しかし、一度封印したものを、また解き放てとは、非常時とはいえ無茶な命令を帝も出される」
天才陰陽師「『この方』を封印する為に、高名な陰陽師がどれだけ犠牲になったか、帝もよく御存知なはずなのだがね……」
天才陰陽師「背に腹は代えられない、とは正にこの事か」
天才陰陽師「あるいはこうお考えなのかな」
天才陰陽師「化物には、化物をぶつける。それが自然だとね」
【ザイリッシュ王国 ルクドバニア領】
メイド「旦那様、帝国にいる仲間から新たな報告が入りました」
貴族「ふむ……。それで?」
メイド「帝都が陥落し、『帝国七剣』の一人、『神速のアルナ』が討ち死にしたそうです。その際、皇帝も討ち取られたとか」
貴族「ほう……。あの不細工な皇帝はともかく、アルナが討ち死にしたとはね……。美しい娘だったが……残念だよ」
メイド「そうですね……。御冥福をお祈りします」
貴族「しかし、これで『帝国七剣』はもう残り四人となってしまったか。どうやら、私の予想は外れたようだ……。彼等なら、もう少し『奴等』に対抗出来ると思っていたのだがな……」
メイド「……旦那様。やはり旦那様が動かれた方が宜しいのでは? 『通常人』では『奴等』の相手は荷が重いのではないかと……」
貴族「」フゥ
貴族「どうやら、そのようだね。私もそろそろ動くとしよう」
貴族「寿命をこれ以上縮めたくはなかったのだが……仕方あるまい」
貴族「『竜の血族』、最後の生き残りとして、やるべき事はやらねば」
【日本 群馬県 土手】
ピュー……ザワザワザワ……
平凡そうな男「風が……騒がしいな」
ロングの女「ええ……。でも、この風、泣いています」
平凡そうな男「…………」
ロングの女「……行きますか?」
平凡そうな男「ああ……良くないものを風が運んで来る前に」
ロングの女「それが私達……多元世界の守り手たる『十二神将』の務め……」
平凡そうな男「行こう」
ロングの女「はい」
ピュー……ザワザワザワ……
今日はここまで
またその内
【ワリナル中立地帯 絶望の砂漠 東部】
賢者「…………」
商人の死体「」……
踊り子の死体「」……
女僧侶の死体「」……
賢者「間に合わなかったか……」
賢者「すまない……僕だけ遅くなって……」ソッ…
賢者「だけど、君達の死は絶対に無駄にはさせない」
賢者「君達が命がけで運び、そして守った人類最後の希望、『星の勾玉』」
賢者「そして、僕が『禁断の森』で手に入れた、この『時の記憶』」
賢者「この二つがあれば世界を救える」
賢者「勇者、待っていてくれ。これを君に必ず届けるから!」
【ワリナル中立地帯 断罪の丘 北部】
男武闘家の死体「」……
女武闘家の死体「」……
拳聖「……嫌な予感はしていたんじゃ。だが……こんな事に……」
剣聖「……あんたの弟子はきっと立派に戦ったんだろう。地形がここまで変わるんだ。『奴等』の死体も腐るほどある。ただでやられた訳じゃない」
拳聖「だからどうだというんじゃ……。死ぬまで戦えとワシは教えた事は一度もないぞ……。ただの一度も……」
剣聖「…………」
拳聖「バカタレが……。どうして逃げなかった……。自分の身を守る事こそが、武の本質じゃと最初に教えたのに、どうして……」
剣聖「爺さん、気持ちはわかるが俺は先に行くぞ。あんたの弟子には気の毒だが、俺にも不肖の弟子がいてな。あいつの事が心配だ。まだまだヒヨッコだからな」
拳聖「いや……ワシも行こう。弔いをするのは仇を討ち終わってからじゃ。でなければ死んだあいつらも浮かばれんからな」
剣聖「……そうかい。なら、行くぞ、爺さん」
拳聖「ああ……。生涯最後の本気を出す時じゃ。一匹残らずぶち殺してやるわい、『奴等』を」
【ワリナル中立地帯 破滅の森 洞穴の奥深く】
魔法使いの死体「」……
盗賊「」ハァハァ……
盗賊「おい……魔法使い……」ゼェゼェ
盗賊「大丈夫か……? まだ死んじゃいねえよな……」ハァハァ……
盗賊「『奴等』を撒くのに時間がかかっちまってよぉ……。すまねぇなあ……」ハァハァ…
盗賊「でもよぉ……。どうにか逃げ切れたんだからよ……。俺達、幸運だぜ……。ツイてるなぁ……」ゼェゼェ…
盗賊「俺はな……昔から運だけは良かったんだよ……。だから、今日まで生き延びてこれたんだけどな……」ハァハァ…
謎の少女「おじさん」
盗賊「何だよ……。何か用か……」ハァハァ…
謎の少女「魔法使いなら、もう死んでるよ」
盗賊「………………」ハァ…ハァ…
謎の少女「おじさんも、もうすぐ死にそうだね」
盗賊「………………」ハァ……ハァ……
謎の少女「何か言い残す事、ある?」
盗賊「……お前の……封印を……解く」ハァ……ハァ……
盗賊「……代わりに……『奴等』を……必ず……」ハァ…………ハァ…………
謎の少女「」クスクス
謎の少女「うん。いいよ。契約成立」
謎の少女「じゃあね、もう死んでいいよ」ガブッ!!
盗賊の死体「」……
謎の少女「……これでようやく本気が出せる。本当に運だけは良い男だった。封印されている妾を遺跡から見つけ出したのだからな」
謎の少女「願い通り、『奴等』は喰らい尽くしてやるとも。なにせ遥か昔から、動く生物は全て妾の『食事』と決まっているのだからな」
【ワリナル中立地帯 奈落の泉 木陰】
戦士「」ガタガタ、ブルブル
戦士「すまない……勇者。すまない……」ガタガタ
戦士「俺は……卑怯者だ……。自分の命が惜しかった……」ブルブル
戦士「妻の顔が……声が……どうしても頭から離れなかったんだ……」ガタガタ
戦士「だから……だから……」ブルブル
戦士「俺だけ逃げてしまった……。お前を一人置き去りにして……」ガタガタ
戦士「すまない……。勇者……すまない……」ブルブル
戦士「俺は……どうしようもない臆病者だ……。救いようがないクズだ……。ううぅっ……」グスッ
【ワリナル中立地帯 地獄の谷 東部】
魔王「……情けない。こんなところで朽ち果てているのか。無様な」
勇者の死体「」……
側近「女神の加護を受けているとはいえ、所詮は人間。こんなものでしょう。『奴等』に対抗出来るはずがありません」
魔王「だが、ここまで勇者達が弱いとは思わなかったぞ。まだ『奴等』の尖兵が来ただけだ。本隊はまだ到着してもいないというのにだ」
側近「失望なさいましたか? 人間の弱さに」
魔王「というよりも、我が先祖が恥でならんな。こんな雑魚を相手に、祖父も父も苦戦し、魔界まで撤退したというのだから。一族の面汚しだ」
側近「我等は魔界の『第三世代』です。たいして父君達は『第二世代』。時代が違いますから、そう責めるのは多少酷かと」
魔王「」ハッ
魔王「では何か、側近? 時代が違うから弱くても許されると? それで多くの兵を犠牲にしてもか?」
側近「そういう訳ではございませんが……」
魔王「覚えておけ、側近。弱いのは、この世で最も重い罪だ。強者に理由もなく殺されるのは、そいつが弱いからだ。弱い奴は文句すら言えない。誇りもなく、ただ虫のように逃げるだけだ。それを忘れるな」
側近「……はっ」
魔王「さて……ではそろそろ始めるか。『奴等』を全て殺し、この世界を救ってやろう」
魔王「魔界より連れてきた全部隊に通達しろ。『奴等』を残さず冥界に送ってやれとな」
魔王「『奴等』は破壊の化身だ。支配するには不向きだからな。人間どもを統治するのはその後だ」
側近「はっ!」
【ワリナル中立地帯 悲鳴の滝】
俺「いたぁぁ!! 姐御ぉ! 『奴等』がいましたよ! やっちゃって下さい!」
女子高生「…………」ボンッ!!!
俺「あ、姐御、あそこにも!! 頼んます!!」
女子高生「…………」ドガンッ!!!
俺「いやぁ、流石っすねぇ、姐御は! 無敵じゃないっすか! よっ、日本一ぃぃ!!」
女子高生「…………」
俺「可愛いし、強いし、姐御は完璧超人すっねえ。あ、俺、水くんできます! 姐御、喉乾いてるでしょうから! しばしお待ちをー」ダダダッ
女子高生「マジめんどくさい……。何なのコイツ……」
【ワリナル中立地帯 死者の草原 南部】
隻眼の青年の死体「」……
片腕の女性の死体「」……
錬金術師「」トポトポトポ……
錬金術師「」グビッ、ヒック
バサッ…… バサッ……
錬金術師「ははっ。ははははっ。『奴等』、やっと来やがったか。待ちくたびれてすっかり酔っちまったじゃねえか」ヒック
錬金術師「おーい、見ろよ、お前ら! そこに転がってるのが我が生涯最後の最高傑作だ!」グビッ
錬金術師「今じゃただの肉塊だけどな。ピクリともしない。お前らに嬲り殺された後だからよ」グビッ
錬金術師「本当になぁ、笑っちまうぜ。世界を救う為だと自分に言い聞かせてよ、女旅芸人と一緒に人の道から外れてだ」ヒック
錬金術師「二人で殺人以上のおぞましい事をして得た力がこれだ。見ろよ、大笑いだ! 世界一間抜けな人間のクズがここにいるぞ! お前らも一緒に笑えよっ!!」
バサッ、バサッ……ドスンッ!!
錬金術師「」ハハッ……
錬金術師「笑う気なしか……。いいよ、もう。とっとと俺を殺せ。出来るだけ惨たらしくな」グビッ
錬金術師「あいつらが死んだ以上、俺はもう生きてちゃいけない人間なんだ。お前らとたいして変わらねえ。違うのは、人か化物かってそれだけだ。中身はほぼ一緒」
錬金術師「骨を折って、腹を割いて、苦しみながら死なせてくれ。それで俺の罪が消える訳じゃないが、それでも」
ザシュッ!!
錬金術師「」ドサッ……
【ワリナル中立地帯 絶命の山岳 麓付近】
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
聖女「主よ、私に悪魔どもを屠る力と勇気を与えてくれた事、心より感謝致します」スチャッ
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
巫女「神よ、これまでの、そしてこれからの荒事をお許し下さい。森羅万象、全ての命を守る為なのです」シャンッ
聖女「……そちらは片付きましたか?」
巫女「……ええ、つつがなく」
聖女「…………」
巫女「…………」
聖女「一応、言っておきますが、あなたを認めたという訳ではありませんから。いつか異端審問にかけさせてもらいます」
巫女「それはこちらも同じです。怪しげな邪教を広め多くの人々を惑わせた罪、いつか裁かせてもらいます」
聖女・巫女「ですが、今だけは手を組みましょう」
聖女「背中は預けましたよ、異端者。聖地を血で汚した悪魔達に裁きの鉄槌を」スチャッ
巫女「後ろは任せましたよ、邪教徒。穢れを持ち込んだ不届き者に神罰の代行を」シャンッ
【ワリナル中立地帯 殺戮の平原 南部】
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
暗殺者「」シュボッ
暗殺者「」フーッ…
暗殺者「……これで二万匹、丁度だな」フーッ…
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 中心部】
お嬢様「ほらほら、こっちよ、こっち」チョイチョイ
猫A「」ニャー
猫B「」ペシペシッ
猫C「」ウニャー
弓使い「……何だ、お前は? ここで何をしている?」
お嬢様「……それはこちらの台詞ですわね。声をかけられるまで気配に気付かない、あまつさえ背後に立たれるなんて、生まれて初めての経験ですわ。……あなた、一体、何者ですの?」
弓使い「名乗る程の者ではない。ただの弓使いだ」
お嬢様「『ただの弓使い』がここまで辿り着けるはずがありませんわ。ここは世界の最果て、『奴等』の出現場所ですのよ」
弓使い「俺の事はいい。それよりもお前だ。お前こそ何者だ。世界の最果てでドレス姿で猫と戯れているお前の方こそ『ただの令嬢』ではなかろう。……もしや、物の怪の類か?」
お嬢様「」フッ
お嬢様「私が人間以外のものに見えて? 無礼千万ですわね」
弓使い「人間にしてはお前は強すぎる。それぐらいは雰囲気でわかる。それに、匂いもだ。お前からは血と、それを隠す為の香水の匂いしかしない」
お嬢様「そうかもしれませんわね。ですが、血の匂いはここに来るまでに『奴等』を殺し過ぎたからですの。香水は淑女の嗜みに過ぎません。乙女が血の匂いを漂わせているなんて、はしたないにも程がありませんこと?」
弓使い「無駄話はいい。結論を聞きたい。……何者だ、お前は? 答えないのであれば、この場で殺す。お前は異様を通り越して、あまりに『異質』過ぎる」ギリリッ
お嬢様「」ハァ…
お嬢様「ずいぶんと短気な殿方ですわね。しかも、女性の名前を尋ねる方法としては最悪のやり方と言わざるをえませんが……。まあ、良いでしょう」
お嬢様「『ダリア家』の当主の一人娘、と言えばおわかりになるかしら? ほとんどの方にはそれで通じるのですけれども」
弓使い「……そうか。あの『異才の家系』の直系か。……という事は、お前の名前はシャルロッテだな。『現実知らずの女王』の」
お嬢様「……私の名を知って、なお、その無礼な口と態度を直さないというのはいただけませんわね。『世界五大勢力』の一角を担う『ダリア家』を何だと思っているのかしら? お望みならば、あなたの生まれた街どころか、生まれた国すら滅ぼして差し上げてもよろしくてよ?」
弓使い「やれるものならば、やってみるがいい。俺の生まれ故郷は『レイガ島』だ。世界を巻き込む大戦争に発展させたいのであれば好きにしろ」
お嬢様「……あなた、あの島の一族でしたの。という事は、持っているその『弓』は……」
弓使い「答える必要はない。それにその時間もない。見ろ、上を」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
お嬢様「……開きそうですわね。『次元の扉』が」
弓使い「ああ。『奴等』の本隊のお出ましだ。前哨戦は終わり、ここから先が本当の戦争だ」
お嬢様「望むところですわ。この子達も退屈しないで済みますし。ねえ、あなた達」
猫A「」ンナーッ
猫B「」シャーッ
猫C「」フシャーッ
【遥かな未来 宇宙戦艦内】
青年「おい、ちゃんと聞いているのか? お前も凄い事だと思うだろ」
友人「聞いてるさ、この歴史ミステリーオタクめ。『世界事変』の話だろ。『奴等』の正体が実は『宇宙ワーム』とかいう」
青年「そうさ。『奴等』の正体についてはずっと謎とされてきたんだけど、近年になって『宇宙ワーム説』が確実視されてきているんだよ。というのも」
友人「ドルイド星系で当時の記録とよく似た新種のワームを発見したから、だろ。流石に俺でもそのニュースぐらいは知っているさ」
青年「それを聞いてお前は凄いと思わないのか? 現代でさえ退治困難なレベルSの『指定特殊危険生命体』なんだぞ。それを二千年以上も前の人類がどうやって退治したのか、未だにはっきりしていないんだからさ」
友人「まあな……確かその頃って、まだ『剣と魔法』の時代だろ? 科学や魔法学が全然進んでなかった頃の」
青年「そう。なのに『奴等』の巣穴まで倒しに入って、そして退治して帰ってきた『英雄』が『七人』もいる。これが誰なのかも記録がバラバラで未だにはっきりしてないしな。世界最大級のミステリーになっている」
友人「『七英雄』が誰か、か。そういえば昔、授業で先生もそんな事を話してたな。今のお前みたいに目を輝かせてさ」
青年「そりゃそうだろ。当時の世界での『最強の七人』なんだから。下手すりゃ今の時代でも『最強の七人』かもしれない。そういうのを考えて想像するだけでもワクワクするだろ。あの時代に、どうやって『奴等』を退治したのかとかさ。勇者レオンは本当にそのメンバーに入っていたのか、とかさ」
友人「まあ、好きな奴は好きだからな……。その手の話は」
青年「いつかタイムマシンが発明されて、それで過去に行けるようになったら、俺は絶対にそれを確かめに行くぞ。歴史をこの目で見に行くんだ」
友人「……まあ、いつか、そんな時代も来るかもな。ただまあ……」
青年「どうした?」
友人「今は、遠い過去より近くの未来を考えようか。船長、敵襲だ。噂をしてたら例の宇宙ワームだぞ」
オペレーター「レーダーに反応多数! 数は……! 把握出来ません! 尋常じゃない程の数です!!」
青年「」フゥ……
青年「全砲塔、反応弾から核ミサイルに切り替え。『奴等』なら南極協定も関係ない。遠慮せず派手に撃ち込むぞ」
友人「まったく……こんなバケモノを二千年前の人類がどうやって倒したんだか……。そいつらの方がよっぽどバケモノだろ」
今日はここまで
またその内
『奴等』出現から、二十四時間経過……
この間に、世界人口の三割が『奴等』に殺される
世界人口の一割が、家屋の倒壊や火災などの二次災害により亡くなる
『世界五大勢力』の一つ、シャルナ帝国は事実上の崩壊に至った
世界は緩やかに、だが確実に、破滅へと向かっていた
残された人々は恐怖と絶望に支配されていた
予言は告げる。その日、世界は終わるのだと
戦士達はことごとく死んでいき、生き残る者は誰もいないのだと
しかし、二十四時間──つまり、『その日』がとうに経過しながらも、まだ人類は生き残っており
そして、未だに『奴等』と戦っている『強者達』がいた
その人数──人・魔・人外含め──『残り22人』
彼等こそが人類最後の希望だった
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 東部】
バッサ、バッサ…… バッサ、バッサ…… バッサ、バッサ…
緑の瞳の騎士「ほう……。ようやくここまで辿り着いたと思ったら、いきなりの大歓迎だな。恐れ入る」
銀髪の女騎士「相手の数は数万といったとこかな。いちいち相手にしてたらキリがなさそうだね」
緑の瞳の騎士「団長。恐らくあいつらが予言にあった本隊だ。確かに前の『奴等』よりも巨大で凶悪そうに見える。遠目でもわかる」
銀髪の女騎士「で、それがどうかしたの? もしかして、強そうだから撤退しようって、そういう話?」
緑の瞳の騎士「」フッ
緑の瞳の騎士「いつから冗談を言うように? 思わず俺が笑ってしまった」
銀髪の女騎士「そういう事だよね。私達に逃げるって選択肢はないんだよ。あるのはたった一つだけ」
銀髪の女騎士「戦って勝つだけ。それ以外は活路も興味もなし!」チャキッ
緑の瞳の騎士「勝利を我が手に。名誉や栄光はドブに捨ててでも」チャキッ
銀髪の女騎士「帝国七剣、最後の二剣は絶対に折れない!!」ダダッ
緑の瞳の騎士「押し通る!!」ダンッ
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 西部】
『奴等』A「」ガブッ!!
『奴等』B「」ガジリッ!!
悪霊A「あああああああああああああああっ!!!」ジュワッ…
悪霊B「ひぎゃあああああああああっ!!!」ジュワッ…
死霊使い「おいおいおいおい……嘘だろ、おい……」
死霊使い「どうなってんだよ……町どころかいまや国一つ分の悪霊になったんだぜ……」
死霊使い「それが次々と喰われてくってどういう事だ……。『奴等』の本隊ってのは何なんだよ……」
死霊使い「『奴等』、人の魂まで直接殺せるってのか……? 冗談はよしてくれよ、おい……」
死霊使い「そんな事されたらな……。そんな事されたらだ……」
死霊使い「俺なんか、何の役にも立たない一般人じゃないか!! ここまで順調に来させといて、いきなりそれは反則だろうがよ!! 理不尽じゃねえか!!!」
『奴等』C「」チラッ
死霊使い「ひっ!!」ビクッ
死霊使い「お、おい! やめろ、来るな!!」
死霊使い「来ないでくれ!! やめてくれ!!」
死霊使い「お願いだ!! 助け」
ザシュッ!!!
死霊使い「」ドサッ……
『残り、21名』
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 南部】
首塚の怨霊「」ジュウウウッ……
『奴等』A「」ムシャムシャ
『奴等』B「」ムシャムシャ
『奴等』C「」ムシャムシャ
『奴等』D「」ムシャムシャ
天才陰陽師「おやおや、これはまた……」
天才陰陽師「『あの方』すら、餌としてしまうのかい、君らは」
『奴等』A「」ギロッ
『奴等』B「」ギロッ
『奴等』C「」ギロッ
『奴等』D「」ギロッ
天才陰陽師「おや、いけないよ。君らはまだ食事の途中だろ。それを中断して私に攻撃を仕掛ける気かい?」
天才陰陽師「それは行儀が良くないな。私はこう見えて結構礼儀にはうるさい方でね」
天才陰陽師「君らの悪食は許容出来ても、それはいただけない。いいかな? 私は先に忠告しておいたよ」
『奴等』A「」ダンッ!!
『奴等』B「」ダダッ!!
『奴等』C「」ブンッ!!
『奴等』D「」ビュンッ!!
ドシュッ!!
ポタッ……ポタッ……
天才陰陽師「だから、忠告したはずなんだけどね。私に攻撃を仕掛けるのは良くないと」
天才陰陽師「私と、私の式神はそんなに甘くないよ」
式神(鬼)「」フシュウウッ
『奴等』A「」ドサッ…
『奴等』B「」ドサッ…
『奴等』C「」ドサッ…
『奴等』D「」ドサッ…
天才陰陽師「では、行こうか。『あの方』が露払いしてくれたおかげで私もずいぶん力を温存する事が出来た」
天才陰陽師「おいで。私の可愛い式神よ。私を中心部まで乗せていっておくれ」サッ、ボンッ
式神(巨大鳥)「」バサバサ
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 北部】
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
貴族「いやはや、待ってくれ諸君。本隊である君達ですらこの体たらくか?」コキッ、コキッ
『奴等』A「…………」
『奴等』B「…………」
『奴等』C「…………」
『奴等』D「…………」
貴族「どうした? 来たまえ。見ての通り私は素手で、しかもまだ『人間形態』のままだぞ。この状態で戦いを挑まないようでは、諸君らの名誉に傷がつくというものだろう」
貴族「遠慮はいらない。一斉にかかってきたまえ。後ろからでも良し、囲んでも良し、好きにしたまえ。その行為は私相手なら決して卑怯とはならない。弱者が強者に勝つ為の当然の選択なのだからな」
貴族「さあ、来たまえ。覚悟を決め、決断の時だ。時間はいつまでも待ってはくれないぞ」クイッ
『奴等』A「」ダッ!!
『奴等』B「」ダダッ!!
『奴等』C「」ブンッ!!
『奴等』D「」ズバッ!!
貴族「良く決断した、諸君。褒美をやろう!」
ドゴッ‼ ガスッ!! ゴキャッ!! メキョッ!!!
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
貴族「諸君らは勇敢に戦ったと伝えておこう。君らの『女王』にな」
貴族「私の一張羅についた返り血がそれを証明してくれる。感謝したまえ」クルッ、スタスタ
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 南東部】
平凡そうな男の死体「」……
ロングの女の死体「」……
天使A「…………」
天使B「……大天使様に報告を」
天使B「『十二神将』は全滅した。この方達で最後だ……」
天使A「創造主すら超えるか……『厄災』め……」
天使B「やはり、生命体に進化という機能を与えるべきではなかったのだ……」
天使A「今更遅い……。もう後は成り行きを見守るだけだ」
天使B「……神々のいない世界で、か」
天使A「そうだ。神は死んだ。全員が」
天使A「私達は無力だ」
天使B「…………」
『残り、19名』
【ワリナル中立地帯 地獄の谷 東部】
賢者「…………嘘だ」
賢者「……どうして、どうして」
賢者「……君が……そんなっ!!」
賢者「勇者ぁぁぁぁぁ!!!!」
カラス「」カァー、カァー
勇者の死体「」……
【ワリナル中立地帯 奈落の泉】
剣聖「蓮華翔波斬!!」ズバッ!!!
『奴等』「」ガフッ!!
拳聖「天火崩烈拳!!」ドゴッ!!!
『奴等』「」ゴフッ!!
剣聖「っし! 全部片付いたな! おいっ、無事か、ルーク!!」
拳聖「生きておるか、小僧!!」
戦士「……そ、その声…………し……師匠……ですか……?」ハァハァ……
剣聖「そうだ! 無事なんだな! 良かっ……」
拳聖「……おぬし、足が。……目も」
剣聖「爺さん、手当を!! 急げっ!!!」
拳聖「そ……そうじゃな。任せておけ。むんっ!!」パァァ
戦士「……ぅ、ぁ……」ハァハァ…
剣聖「待ってろ、ルーク! お前を絶対に死なせない! 今、包帯と止血薬を!」ゴソゴソ
戦士「……し、師匠。お……俺は……」ハァハァ…
剣聖「黙ってろ!! 喋るな!!」サッ、ギュッ
戦士「お、俺は……弱くて……で、出来損ないで…………」ハァハァ……
剣聖「……もういい! 喋るな!」
戦士「卑怯物で……お、臆病者で……」グスッ、ポロポロ
戦士「だ……だから……こんな目に……」ポロポロ
剣聖「うるせえ!! 関係あるか!!」
戦士「こ……このまま……死ぬんだ……俺は……こんな……ままで…………」ポロポロ
剣聖「馬鹿みたいな事を言ってんじゃねえ!! お前は俺の大事な弟子だ!! そんなに簡単に死なせてたまるかよ!!!」
戦士「し……しょ……う…………」ハァ…ハァ…
戦士「……た…………す…………」ハァ……ハァ……
戦士「」ガクッ……
剣聖「……おい、ルーク。……どうした、おい」
拳聖「…………事切れた。……もう脈が……」
剣聖「………………」
戦士の死体「」……
拳聖「……辛いな。年寄りが生き延び、若者が死んでいくのは……」
剣聖「………………ああ」
『残り、18名』
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 南東部】
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
『奴等』の死体「」……
魔物の死体「」……
魔物の死体「」……
魔物の死体「」……
魔物の死体「」……
魔物の死体「」……
水の四天王「流石に本隊は強いですね……。部下の大半が死んでしまいましたか」
炎の四天王「相討ちなら上等ってとこだな。ま、ザコにはザコの使い道があるって事だ」
水の四天王「しかし、これでは戦力の消耗が激し過ぎます。『奴等』を全滅させても、人間界まで支配するのは手駒不足で難しいかと。魔王様はそこのところをどうお考えなのでしょうか」
炎の四天王「さあな。それは魔王様に聞け。俺は小難しい事は考えない主義だ」
水の四天王「相変わらず単純ですね、あなたは。ある意味、羨ましい」ハァ
炎の四天王「」ドサッ…
水の四天王「え……? どうしました、急に倒れ……」
謎の少女「邪魔だぞ。そなたら」シュパッ
水の四天王「」ドサッ…
謎の少女「妾の道をふさぐでない。喰う気などなかったのに、つい殺してしまったではないか」
謎の少女「来世ではもう少し美味そうな匂いをさせておくのだな。お前達は不味そうでかなわぬ」スタスタ
炎の四天王の死体「」……
水の四天王の死体「」……
『残り、16名』
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 南西部】
魔物の死体「」……
魔物の死体「」……
魔物の死体「」……
魔物の死体「」……
魔物の死体「」……
俺「はっはー、見たか、姐御は無敵なんだぜぇ。おら、先にケンカ売ってきたのはてめえらだろ、今更なにビビってんだよ」
女子高生「…………」
風の四天王「我が精鋭部隊を……。何者だ、貴様らは!」
土の四天王「ただ者じゃないな、お前ら……! だが、俺達二人に会ったのが運の尽きだ!」
女子高生「はいはい。そういう会話はもういいから。これまで何十回も聞いてるし」シュパッ
風の四天王「なっ!?」
土の四天王「消えた!?」
女子高生「だからさあ。あんた達二人のセリフ、完全にかませ役のセリフなの。自分で言ってて思わない?」
女子高生「ほいさっと!」ドゴォォォンン!!!
風の四天王「ごふあぁぁぁっ!!!」ビューンッ
土の四天王「げふぁぁぁぁっ!!!」ビューンッ
俺「」フッ
俺「地獄で後悔しな、ベイビー。死神にたっぷり可愛がってもらうんだな」
女子高生「……あんた、とりあえず一回殴っていい?」
俺「はいぃぃ!? どうしてっすか!?」ビクッ!!
『残り、14名』
【ワリナル中立地帯 終焉の荒野 北東部】
聖女「恐れなさい。主は決して悪魔達を許さない!」ブンッ!!
側近「がっ!!」メキョッ!!
巫女「悔やみなさい。穢れた者として生まれたその前世の罪を!」ピカッ!!
側近「ぐあっ!!!」ドガッシャァン!!
側近「ま、魔王様……お、お逃げ下さ……」ハァハァ…
聖女「天の裁きを受けよ!」ドゴッ!!
側近「」ドサッ…
魔王「………………」
巫女「さて……残るはあなた一人ですね」シャンッ
聖女「主は、慈悲深い御方ですが、あなたには一片の慈悲すら与えないでしょう」スチャッ
巫女「悔い改め、来世に望みをかけなさい」スッ…
魔王「……ふっ、ふはははははっ!」
巫女「何がおかしいのですか、穢れきった者よ」
聖女「それとも、私達を愚弄するのですか、魔界の王よ」
魔王「愚弄? そうだな、これは愚弄で間違いないだろう。お前達があまりにも滑稽で笑えたのだからな」
魔王「そうであろう? それだけの力を持ちながら、何故、世界を自分のものにしようとしない? 何故、神などという弱者に支配されている?」
魔王「強い者が全てを手に入れる。それが自然の摂理だ。だが、お前達はそれに逆らっている! 神ごときにいいように騙され、不様にも利用されている!!」
魔王「これが滑稽でなくて、何と言う! 無知で愚鈍な偽善者どもがっ!!」サッ
聖女・巫女「世迷言を!!」ズシャッ!!! キランッ!!!
魔王「ぐふっ!!」ゴフッ!!
魔王「い……異端児……ども……め…………」グラッ…
魔王「」ドサッ…
聖女「弱肉強食など、この世で最も唾棄すべき思想です。人は獣と同じではありません」スチャッ
巫女「そのような考えを持つのは、あなたが弱い心を持っているからですよ、魔界の王」シャンッ
聖女・巫女「慈悲と慈愛こそが神の御意志です」
『残り、12名』
今日はここまで
またその内
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