【飼っている金魚がいきなり人間の言葉を話したら】

〜紬宅〜

白石紬「ただいま帰りました。今ご飯を用意しますね」

金魚「…………」

紬「あなたは本当に落ち着いていますね。Pにも見習っていただきたいものです。まったく、今日のあの人ときたら──」

金魚「まあまあ、そんなに責めないであげてください〜。Pさんもがんばっているんですよ〜」

紬「え……？ な、何やら声はが聞こえるような……」

金魚「紬ちゃん、私です〜。紬ちゃんが飼っている金魚ですよ〜」

紬「！？」

紬「な、なぜ人間の言葉を……」

金魚「紬ちゃんと話したいと思っていたら、いつの間にか話せるようになっていたんです〜。奇跡ですな〜」

紬「そ、そうですか……」

金魚「む〜ん、あまり嬉しそうではありませんね〜。紬ちゃんは私と話したくないんですか〜？」

紬「い、いえ、そのようなことはありません！ ただ、突然のことですので、困惑していて……」

金魚「難しく考える必要はありませんよ〜。私たちの仲なんですから、もっと気楽になりましょう〜。何か私に聞きたいことはありませんか〜？」

紬「そうですね……。金沢にいた頃は家族が家にいましたが、一人暮らしをしているとそうもいきません。私が学校やお仕事に行っている間、寂しい思いはしていませんか？」

金魚「大丈夫ですよ〜。紬ちゃんは何をしてるんだろうなんて考えていれば、1日が過ぎるのはあっと言う間ですからね〜」

紬「それは何よりです。他には……ご飯は口に合っていますか？ 暑くなってきましたが体調はいかがですか？」

金魚「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ〜」

紬「心配するのは当然です。今の私にとって最も近くにいる家族はあなたなのですから」

紬「何かあればすぐ教えてください。せっかく話せるようになったのですから」

金魚「むむ、そうですね〜。では紬ちゃん、机の下を見てくれませんか〜？」

紬「机の下ですか？ わかりました」

宮尾美也「てってれ〜。ドッキリ大成功ですな〜」

紬「きゃーーーーー！！！」

【私生活のことをクイズにされたら】

島原エレナ「765プロチャンネルへようこそ！ 今日の動画はクイズだヨ！ 挑戦者は〜？？？」

紬「皆様こんにちは、白石紬です」

エレナ「司会はワタシ、島原エレナだヨ！ ツムギ、今日は全問正解目指してがんばってネ！」

紬「はい。どのような問題が出ても答えてみせます」

エレナ「それじゃあ第1問！ ツムギは一人暮らしで自炊をしているんだけど、暑さと忙しさでヘトヘトになっちゃってるんだって。そんなツムギがここ1週間毎日食べているものはなにカナー？」

紬「し、島原さん、今日は確か金沢に関するクイズが出るはずでは……？」

エレナ「あー！ 回答時間が終わっちゃうヨ！ あと3秒ダヨ！」

紬「え！？ ……そ、そうめんです。お恥ずかしながら料理をする気力が出ず、そうめんばかり食べています……。申し訳ありません……」

エレナ「ツムギはね、この前のお弁当もそうめんだったんだヨ。水筒にめんつゆを入れて──」

紬「つ、次の問題をお願いします！」

エレナ「第2問！ 和菓子が好きなツムギが1回で食べたおまんじゅうの数の最高記録はいくつでショウ？」

紬「え……？」

エレナ「ちなみにこれはツムギのママンが提供してくれた問題だヨ」

紬「かーか(『お母さん』の金沢弁)はなんしとるん！？」

エレナ「ほらほら〜、時間がきちゃうヨ〜？」

紬「くっ……。……個です」

エレナ「え？」

紬「12個です！ 1箱全て食べました！ 子どもの頃の話で、食べていいと言われたから食べたのです。いけないのですか？」

エレナ「ウンウン、好きなものなら仕方ないよネ」

紬「もうっ、いったいこれはなんなのですか！」

エレナ「まあまあツムギ、落ち着いて！ 次が最後の問題だヨ！」

紬「はあ……わかりました」

今日はクイズの動画を撮るって言ったけど、本当はドッキリだった。マル？ それともバツ？」

紬「……マルです」

エレナ「ピンポ～ン！ 大正解だヨー！」

【たい焼きだと言われて渡されたものがたい焼き型たこ焼きだったら】

紬(ここ数日、おかしいことが続いています。宮尾さんも島原さんも私を驚かせたり騙したりして……いったいなんなのでしょうか)

高山紗代子「紬ちゃん、おはよう！」

紬「はい、おはようございます」

紗代子「なんだか元気なさそうだけど、どうかしたの？」

紬「いえ、最近色々とありまして……」

紗代子「疲れてるときには甘いものが1番だよ。たい焼きがあるけど、よかったら食べる？」

紬「高山さん……ありがとうございます。いただきます」

横山奈緒「甘い匂いの元はここかー！」

紬「きゃっ」

紗代子「あ、奈緒ちゃんおはよう」

奈緒「あー！ こっそりたい焼き食べようとしてるやん！ ずるいずるい！ 琴葉あたりにチクッたろ！」

紗代子「琴葉さんはたい焼きくらいじゃ怒らないよ……。はい、奈緒ちゃんの分もあるよ」

奈緒「ありがとう！ いや〜持つべきものは友達やな」

3人「いただきます」

紬「……！？！？！？」

奈緒「お～、美味しいなあ」

紗代子「最近できたお店なんだけど、生地がしっかりしてて食べごたえがあるんだよね。紬ちゃんはどう？」

紬「え、ええ。美味しいです……」

紬(……何かの間違いでしょうか。いいえ、そんなはずがありません。私のたい焼きに入っている具の、この食感は、蛸……)

紬「あの、高山さんたちの具は……」

紗代子「今日買ってきたのは全部あんこだよ。……あ、もしかしてカスタードの方がよかった？」

紬「いえ、そういうわけでは……」

奈緒「いやあウマいウマい。これで午後のレッスンもがんばれるわ。紗代子、もう1個食べてもええ？」

紗代子「もう、食べ過ぎだよ。これは他のみんなの分」

紬(2人の様子におかしなところはありません。つまり、たい焼き型たこ焼きなのは私の分だけ……？ これもドッキリ……？ ですが、横山さんはともかく高山さんがそのようなことをなさるでしょうか……)

紗代子「あれ？ 紬ちゃん、あんまり食べてないね……。やっぱり美味しくなかった？」

紬「そ、そういうわけではないのですが……」

奈緒「あ、せや紬。たい焼きにはこれかけるとウマいんやで。よかったら使ってや」

紬「ありがとうございます……これは、ソースとマヨネーズと、青のり……」

紗代子「紬ちゃん、ごめん！」

奈緒「ドッキリや」

紬「」

【劇場が爆発すると言われたら】

紬(もう騙されませんもう騙されませんもう騙されませんもうドッキリには引っかかりません！)

紬(今朝も真壁さんから『絶対に劇場に来ないでください』というメールが来ましたが、これも私をからかおうとしているに違いありません。何度も騙される私ではないということを思い知っていただきましょう)

紬「……おはようございます！」

真壁瑞希「白石さん、どうして来てしまったのですか……」

紬「えっ……。真壁さん、泣いておられるのですか……？」

瑞希「私のことはいいです。早くここから逃げてください」

紬「そ、そう言われましても……。いったい何があったのですか？」

瑞希「……マジックに失敗しました。まもなく劇場は爆発します」

紬「爆発！？」

瑞希「あと5分です」

紬「あと5分！？」

瑞希「どうしてあんな危険なマジックをしてしまったのでしょうか……。一生の不覚だぞ」

紬「そ、それなら真壁さんも逃げんと……」

瑞希「いいえ。私はここに残ります。罪を償うため、この大好きな劇場と最期を共にさせてください」

紬「真壁さん……」

瑞希「白石さん、今までありがとうございました。みなさんにもそうお伝えください」

紬「……何を言っているのですか！ 確かにここは大切な思い出の場所ですが、壊れても建て直すことができます。しかし真壁さんの命に代わりはありません！」

瑞希「ですがみなさんに申し訳が……」

紬「申し訳ないと思うなら謝ればよいのです。とにかく、真壁さんもここを離れましょう。残ると言うのなら力づくで連れて行きます」

瑞希「……ありがとうございます。私はどうかしていたようです。おかげで目が醒めました」

紬「わかっていただけたのなら何よりです、
さあ、早く逃げましょう。もう時間がありません」

瑞希「待ってください白石さん。もう1つ、どうしても言っておかなければならないことがあります」

瑞希「これ、ドッキリです」

紬「なんなん！！！！」

奈緒「というわけでテレビに出るときのためにお互いにドッキリを仕掛け合う『ドッキリweek』も終わったわけやけども」

エレナ「ツムギ、一緒にゴハン食べようヨ！」

紬「そうやって、また私を騙すおつもりですか。その手には乗りません」

紗代子「紬ちゃんだけみんなから集中砲火されちゃったみたいだね……」

瑞希「すっかり心の距離ができてしまいました。39プロジェクト発足当初のことを思い出します」

美也「飼い始めたばかりの野良猫のようですな～」

(おしまい)

week…週間
weak…弱い

なんか半角と全角の「～」が混在してるな