アイドルマスターミリオンライブ!のSSです。
地の文となっておりますのでご注意ください。
ライブ良かったですねぇ……。
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硬いアスファルトを大きな雨粒が叩く。
黒い空からキラキラ、チカチカしながら降ってきて、まるで真っ黒な宝石のよう。
ともすれば見飽きるほどの季節であって尚、島原エレナはこの荒天をそう称した。よっぽど機嫌が良いらしい。濡れないように早く車に入るように、と声を掛けようとしたプロデューサーは、喉を突いたその言葉を飲み込んだ。
代わりに、明日は天気が良くなると良いな、と独り言のように呟いた。その言葉はしっかり彼女の耳に届いたようで、島原エレナは笑顔の花を後部座席に咲かせながら「そうだネ♪」と答える。
「そういえば、海美はまだか?」
「アレ? 入口まで一緒だったんだけど」
プロデューサー、島原エレナ、高坂海美は明日から始まるライブの会場に向けて今まさに出発しようとしていた。
「エレナちゃん。タオルタオル」
「ミサキ、ありがとっ」
失礼。青羽美咲も含め、四人で出発しようとしていた。
直前の直前まで別の仕事が入っていたエレナと海美は、ライブ前日の夜に会場入りする予定になっていた。
二人の出演日は二日目なのだが、長い髪をタオルで拭いているエレナは、一秒でも早く現地入りしたいという気持ちを抑えられずにいるようだ。
その原因は度々光っているプロデューサーの携帯に送られているメッセージにある。ライブのリハは当日の午前中。にも関わらず、多くのアイドルが既に現地入りしていて、都会では吸えない空気を満喫しているようだった。
遊園地で遊ぶことは叶わなかったが、みんなで一緒にお泊り会。女三人寄れば姦しいとは言うが、その約十倍のアイドルが一堂に会しているのだ。姦々しいとでも言えば良いのか。旅館から苦情が来ないことを切に望む。
ばちゃばちゃとブーツで派手に水飛沫を立てながら、水色の合羽に身を包んだ影が近づいてきた。
「お待たせー!」
「どうした海美、忘れ物か?」
「うーん、なんか……うーん」
発言に合わせて海美の拳の上に乗せられた顎がユラユラと揺れる。合羽を着ていてもズブ濡れになりそうな天候の中で、一向に車に乗り込もうとしない海美を一同が不思議そうに眺める。
プロデューサーと美咲が心配そうに車の荷台に目を移す。ライブに必要な荷物は既に送ってあるので、今日の荷物はアイドルの私物や、直前まで確認していた書類の束など、最悪無くても大丈夫そうなものばかりのはずだ。といっても三十九人分とあっては、こうして大きな車を借りる必要に駆られるわけだが。
「なーんか、忘れてるような……?」
「劇場のカギは警備員さんに渡してきたから大丈夫だろ? 電気も消してきた、よね?」
「はい! 私が確認しました!」
「早く行こうヨ~! ワタシもみんなと一緒にお喋りしたいヨ~!」
「う~ん……」
高坂海美とは思えないほど緩慢な動きで、後部座席に乗り込む。ムムムと唸りながら合羽のフードを持ち上げ、その後ろ手をゆっくりとドアに手を掛け、力を入れようとしている。普段の彼女の勢いならば、ここまで二秒もかからないだろう。
「あっ、そうだ!」
再び彼女のブーツが地面の鏡面を蹴破る。
合羽をバチバチと雨粒が叩く音に負けないぐらい、海美は大きく息を吸い込んだ。
「行ってきま~~~~~~す!!!!」
冷たい空気を吹き飛ばすくらいの快活な大声が、誰もいない駐車場いっぱいに広がった。
それは暗い空に吸い込まれていき、すぐに雨音で上書きされていった。
いつもの劇場の大きな影を確認してから、濡れ鼠になった海美は車に乗り込んだ。
「忘れ物って、今の?」
「うん。もう大丈夫だよ! 出発出発~!」
「イエ~イ!」
「海美ちゃん、タオルタオル!」
高坂海美は勢いよく車に乗り込むと、派手に音を立てながら車のドアを閉めた。
掴みかかられかねない勢いで発車を促されたプロデューサーは、どこか安心した様子でアクセルをゆっくりと踏み込んだ。
――後日
高坂海美は後部座席でぐっすりと眠りについていた。
ライブは好天に恵まれ、大盛況の下に幕を閉じた。
他のメンバーが参加する一日目でも現地でしっかり大騒ぎした後、二日目にはステージの上で大騒ぎしていたのだ。帰路で寝てしまうのも無理もないだろう。
それだけに留まらず、ライブ終了後には宿舎で大騒ぎ……は流石にしなかったが、興奮で寝付けなかったらしい。舞浜歩と共に中谷育に怒られていたと聞く。
「劇場が見えてきましたね」
助手席に座る美咲の言葉に反応したのは海美と歩だった。何やらモニョモニョ言いながら身体をもぞもぞと動かしている。その二人に挟まれている福田のり子は、擽ったそうに困った笑顔を浮かべた。
しかし、薄い瞼のカーテンでは明るい太陽の光を遮ることは出来なかったらしい。高坂海美は一度眉間に力を入れた後、音がしそうな勢いで目を見開いた。
「着いたっ⁉」
「海美、着いたら起こすから寝てても良いよ?」
「ううん、起きたから大丈夫!」
目覚め良いなぁ、と美咲は笑った。
「おはよう海美、着いたら荷物降ろすの手伝ってくれるか?」
「うんっ! 任せて!」
窓を開けると、潮の匂いが飛び込んできて、海美の胸いっぱいに広がった。運河の水面には明るい空が広がっている。
「はい到着~。のり子、歩を起こして」
「ほいほい」
「ねぇねぇみさきっち。鍵ちょうだい! 私、ドア開けるね!」
「ちょっと待ってね……はい」
「ありがとー!」
駆け出すという言葉では足りないくらい、海美は勢いよく翔け出した。
駐車場からは勝手口の方が近い。こちらから入ると事務室に続く廊下があるだけの、無機質な空間が広がっている。それでも海美は叫ばずにはいられなかった。
「ただいまーーー!!!!」
遠くの公演で遊んでいた親子が二人でキョロキョロしている。
荷を降ろそうとバックドアを開けていたプロデューサーは苦笑していた。
「ね、ちょっと私、開けてくる!」
なにを、と誰かが聞く前に海美は走り出し、廊下の角を曲がって行ってしまった。
誰もいない劇場はとても静かだった。
空気は澄んでいて、まるで静けさを溜め込んでいるよう。森の中のライブ会場の空気とはまた違う、「何もない」空気の匂いだった。
海美は一気にエントランスまで駆け抜けると、両手で大扉を勢いよく外側に押し広げた。ドアの隙間から太陽の光が差しこんで、次いで潮の香りがする風が海美の襟足を吹き抜けて、エントランスの天井まで広がっていった。
大扉を固定して振り返ると、海美の視界にはいつもの劇場のエントランスが広がっていた。海美はもう一度大きく息を吸い込んだ。
「ただいまーーー!!!!」
誰もいないエントランスは声がよく響く。まるで沢山のアイドルが「ただいま」って言っているみたい。
「お土産、たくさん持って帰ってきたからねー!」
海美は大きな声でそう伝えると、元気に仲間たちの下に走っていった。
廊下を駆け抜ける海美の後を追うように、劇場に再び温かさが広がっていった。
おわり
終わりです。HTML依頼出してきます。
ライブ良かったですね。海美ならきっと「ただいま」も元気いっぱい言ってくれるはず。
確かにうみみは劇場に向かっていってきますとただいまいいそうではある
乙です
高坂海美(16) Da/Pr
http://i.imgur.com/ZphZ4F4.png
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島原エレナ(17) Da/An
http://i.imgur.com/XFxxOMN.png
http://i.imgur.com/WtkzDaV.png
青羽美咲(20) Ex
http://i.imgur.com/N78dpoq.png
このSSまとめへのコメント
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