pipipi...

美優「……」

pipipipi...

美優「……ん……」

pipipipipi...

美優「……むぅ……うるしゃい……」

pip

美優「……」

美優「…………」

美優「………………すぅ」

pipipipi...

美優「……うーん、もぉ……」

pip

美優「……」

美優「…………」

美優「………………すぅ」

pipipipi....

美優「……むぅ……しつこ……」

美優「……っ！」

美優「朝っ！？」

美優（7時半。良かった……！）

美優（ありがとうスヌーズ。ありがとう昨日の私）

美優（……いや、そもそも昨日の私がお酒を飲んだから、今朝の私がこうなってるわけで……）

美優（『美優ちゃん誕生日前祝い』って。ふふ、もうただの飲みに行く口実ですよね）

美優「うーん、朝、どうしよう……冷凍庫のご飯を温めて――」

　　――――――――
　　――――――――



千早美優「「2月25日」」



　　――――――――
　　――――――――

千早「今日の予定は……」

千早「……あ、三船さん。おはようございます」

美優「あら、千早ちゃん。おはようございます」

千早（そういえば、三船さんも明日が誕生日だったわよね……。確か、自己紹介の時にそう聞いた覚えが……）

千早（でも明日誕生日ですねって話を振るのも変な感じだし……）

千早（あ、そうだ……音無さん、『大人の女性にとって誕生日は難しい問題』って言ってたわね）

千早（とすると、やっぱりこちらから触れない方がいいのかしら……？）

美優（そういえば、千早ちゃんも明日が誕生日だったかしら……？　うん、そうそう。二人同じ日だって、顔合わせの時に話したもの）

美優（……いえ、でも、もしかして千早ちゃん、自分の誕生日のこと意識していないかも……自分のことにあまり頓着するタイプじゃないみたいだし……）

美優（……！　も、もしかしたら春香ちゃんたちがそんな千早ちゃんのためにサプライズパーティーの用意をしてるんじゃ……）

美優（だ、駄目！　迂闊に触れないようにしないと……）

千早「……」

美優「……」

千早「……あ、あの」

美優「……え、えぇと」

千早「あ、すいません。どうぞ」

美優「う、ううん、大したことじゃなくて、千早ちゃんの方から……」

千早「……い、いえ、私こそ大したことじゃ……」

美優「……そ、そうなんだ」

千早美優（（き、気まずい……っ！！））

千早（フェスでユニットを組むようになって、最近は普通に仲良くなれたと思ってたのに……）

美優（昨日も楽しくお話できてたのに……一つ話しちゃいけないってなった途端に……）

千早（……やっぱり）

美優（……私って）

千早美優（（人付き合い苦手なんだ……））

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未央「……ねぇねぇ、はるるん。あれ、何だと思う？」

春香「うーん、そうだね……多分、明日がお互いの誕生日だってことに触れていいか分からなくて、考え過ぎて、行き詰まっちゃった感じかな？」

未央「……さ、流石」

春香「面白そ……何かあったらフォローに入れるように、もう少し見てよっか♪」

未央「今、面白そうって」

春香「未ー央ちゃん？」

未央「うす。何でもないっす。お付き合いさせて頂くっす」



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千早「……そ、その！　い、いい天気ですねっ！」

美優「え、ええ！　最近は大分温かくなって来たものね」

千早「もう3月に入る……あっ」

千早（バカバカバカっ！　どうしてわざわざ今が2月の下旬だって意識させるようなことを……）

美優（千早ちゃん、今、『あっ』って！　もしかして今のやり取りで誕生日に気付いちゃった？　ていうかやっぱり誕生日気付いてなかった？　バカバカ私のバカバカ！　どうして温かくなって来たなんて言っちゃったの……っ）

千早「あったかい物がまだまだ美味しいですけどね。き、昨日はお鍋を作りましたし」

千早（ごめんなさい嘘ですご飯だけ炊いてスーパーの総菜で済ませました）

美優「そ、そうなんだ！　千早ちゃん、自炊してて偉いわね」

美優（セ、セーフ？　これはセーフ？　まだ大丈夫？）

千早（ごめんなさいごめんなさい嘘ついててごめんなさい偉くないですごめんなさい）

美優「お、お鍋は一人暮らしの味方よね！」

千早「そ、そうですよね！」

美優「ち、ちなみに昨日は何のお鍋だったの？」

千早「えっ！？」

美優（え？　待って待って、また私何かやらかしちゃった？　分からない分からないごめんなさい）

千早「え、と、何だったかしら……そ、そう！　豆乳鍋です！　豆乳鍋でした！！」

美優「そ、そうなんだ！　豆乳鍋かぁ……いいわね。女の子って感じよね……」

千早（ごめんなさい本当は食べたこともないですごめんなさいごめんなさい）

千早「み、三船さんはっ！　お鍋だと何がお好きなんですか？」

美優「私？　そうね……この前居酒屋さんで食べたもつ鍋が美味しかったかな……ちょっと女性っぽくは無いかもしれないけど……」

千早「そんなことはないと思いますけれど……もつ鍋ですか……福岡でライブをやった時に一度食べたことがあります。お鍋自体もそうですけど、〆の麺がとても美味しくて……」

美優「そう、もうお腹いっぱいかなって思ってたのに、美味しくて全然食べられちゃうのよね」

千早（……よし！　三船さんが話題をくれるお陰でちゃんと会話できてるわね……！）

美優（良かった……千早ちゃんがお話を振ってくれるからお話できてる……）

千早（このまま誕生日のことには触れずに……）

美優（お仕事の時間になって、お仕事をやらせて頂いて……）

千早（一緒にお昼ご飯を食べて？）

美優（午後はレッスンがあって？）

千早（……）

美優（……）

千早美優（（あれ、これ、無理なんじゃ……））

春香「あっ、千早ちゃん！　美優さん！　おはようございます！！」

千早「春香？　おはよう。今日も元気ね」

美優「おはようございます、春香ちゃん」

春香「そういえば今日は2月24日ですね！！」

千早「えっ！？」

美優「えっ！？」

未央「ちょぉぉぉっ！！！」

千早「ほ、本田さん？　おはようございます？」

美優「み、未央ちゃん？　おはようございます？」

春香「未央ちゃん？　おっきな声出してどうしたの？」

未央「『どうしたの？』じゃないでしょうがああ！！　あ、ちはりん、みゆみゆ、おはようございます！！」

春香「そういえば千早ちゃんと美優さんには素敵な共通点がありますよねー？」

未央「だからああああああああ！！！！！！」

春香さん説明中……

春香「――だから、千早ちゃんも美優さんも、気にしなくて大丈夫ですよ」

千早「そういうこと……ありがとう、春香。お陰様で大分気が楽になったわ」

美優「私からもお礼を言わせてください。このまま今日一日ずっとこんな感じなのかなって……」

春香「えへへ」

未央「……な、何だか釈然としない……っ！」

　　――――――――
　　――――――――

美優「さて、そろそろ千早ちゃんにメールを、と」

美優「うん。……って、あれ、千早ちゃんからメール？」

美優「ちょ、早苗さん留美さん、待ってください！　飲みます、飲んでますから、ちょっとメールを……」

From:如月千早ちゃん

Sub:お誕生日おめでとうございます

受信日:2021年2月25日 0時0分



お疲れさまです。千早です。
三船さん、お誕生日おめでとうございます。

それと……今日は、色々と気を使わせてしまったようで申し訳ありませんでした……。
私はあまり人付き合いが得意ではないので、自分の中で勝手に勘違いして、三船さんをたくさん困らせてしまったことと思います。

でも、こういうことを言うと失礼かもしれないのですけれど、三船さんの事情を聞いて共感を覚えたというか……
それに、三船さんが私のことを考えて悩んでくれていたというのが、嬉しかったんです。
今日一日で、また少し三船さんと仲良くなれたんじゃないかなって……これも勝手な勘違いだったら申し訳ありません。


改めて、お誕生日おめでとうございます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。


P.S.
よろしければ、今度、一緒にお鍋を食べたいです。

美優「……ふふっ！」

美優「いえ、今、とても素敵なことがあって……あ、楓さんダメです見ちゃダメ……！」

千早「三船さん宛に、今……！」

千早「よし、これで大丈夫よね？　……？　三船さんから？」

From:三船美優さん

Sub:お誕生日おめでとうございます

受信日:2021年2月25日 0時0分



夜分遅くにごめんね。美優です。
千早ちゃん、お誕生日おめでとうございます。

それに、今日は本当にごめんなさい。
一人で勝手に思い込んで、千早ちゃんを困らせちゃったわよね……？
お話した通り、私、人付き合いがあまり得意じゃなくて……これでも少しは向き合うことができるようになったつもりだったんだけど……

でもね、今日千早ちゃんとお話して、すれ違いもあったけど……だからこそ、千早ちゃんのことをよく知れたような、私のことを知ってもらえたような……
ご迷惑だったら、申し訳ないのだけれど……

改めて、お誕生日おめでとう、千早ちゃん。
これからも、一緒に頑張って行きましょうね。


追伸
千早ちゃんさえ良かったら、今度一緒にお鍋しましょう？

千早「……ふふっ！」

From:如月千早ちゃん

Sub:私たち

受信日:2021年2月25日 0時10分



似てるのかもしれませんね
何だかちょっと嬉しいです

おやすみなさい……美優さん

From:三船美優さん

Sub:そうね

受信日:2021年2月25日 0時14分



私も、ちょうど同じことを思っていたの
ふふっ

おやすみ、千早ちゃん
良い夢を

　　　　　千早美優「「2月25日」」