※ご注文はうさぎですか? 短編
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マヤ「筆記試験の方は自信ついてきたんだけどさ、面接の方が不安なんだよ」
マヤ「だからシャロにお願いして練習させてもらってるんだけど」
マヤ「『こういうのは色んな人に面接官役やってもらったほうがいいわよ』って言われて」
チノ「そうですか」
メグ「マヤちゃん頑張ってるねー」
マヤ「それでさ、2人とも面接官役になって私に色々聞いてみてくれない?」
チノ「いいですよ」
メグ「面接官役なんて上手くできるかなぁ?」
マヤ「どんな質問が来ても慌てずに答えるための練習だからさ、なんでも聞いてよ!」
メグ「わかった、行くよー」
メグ「あなたはどうしてこの学校を志望したのですか?」
マヤ「はい、きっかけはここのオープンハイスクールに来たことです」
マヤ「それまで、この学校は保守的で堅苦しい校風、というイメージを持っていたのですが」
マヤ「むしろその反対で、ここで出会った先輩方はみんな初対面の人にとてもオープンで、喜んで歓迎してくれました」
マヤ「自分の知らない世界をもっと知りたい、そんな興味と好奇心をみんな一人一人が持ってるんだと伝わってきました」
マヤ「私も好奇心が強いほうで、経験したことのない世界へどんどん飛び込んでいきたいといつも思っています」
マヤ「この学校でなら、そんな仲間と一緒に新たなことへの挑戦がたくさんできると思い、志望しました」
メグ「おおー」
チノ「さすがですね」
マヤ「まあ、志望理由は定番の質問だからね」
チノ「マヤさんとは思えないほどしっかりした答えです」
マヤ「むっ、どういう意味だよー?」
メグ「あはは」
マヤ「じゃ、次はチノが何か聞いてみてよ」
チノ「私ですか……」
マヤ「ほらほら、面接官になったつもりでさ」
チノ「うーん、でしたら」
チノ「あなたは──」
マヤ「はい」
チノ「私とメグさん、どちらの方が好きですか?」
マヤ「え?」
チノ「私とメグさん、どちらの方が好きですか?」
マヤ「いや聞こえてるけど……え?」
チノ「どちらが、好きですか?」ズイッ
マヤ「迫ってこないでよ近い近い」
チノ「……」
マヤ「えと」
マヤ「どちらも大好きです! 順位は付けられません!」
チノ「……」
マヤ「……」
チノ「はー……」
チノ「このままだと落としますけどどうします?」
マヤ「怖いよ!」
メグ「チノちゃんどうしたの?」
マヤ「いつものチノじゃないぜ?」
チノ「緊張感を出すためにちょっと怖い面接官を演出してみたのですが……」
マヤ「怖いの方向性がおかしいよ!」
マヤ「あと質問もなんか変!」
チノ「ずれてましたか」
マヤ「うーん、メグのを参考にしてみてよ」
メグ「じゃあ今度は私が聞いてみるね」
チノ「お願いします」
メグ「こほん、では」
メグ「あなたの長所を教えてください」
マヤ「はい、誰に対しても物怖じせずに会話できるところです」
マヤ「初対面の人でも、年上でも年下でも関係なくすぐに仲良くなれます」
マヤ「高校生になってからも、多くの人とつながりをもって新しい世界に積極的に踏み出していきたいです」
メグ「いいねー」
チノ「なるほど」
マヤ「どう、わかった?」
チノ「何となくつかめてきました」
マヤ「じゃあ次チノの番ね」
チノ「はい」
チノ「あなたは、そうやってすぐに色んな人と関係を持っちゃうんですか?」
マヤ「ん?」
チノ「古くなった友人関係は飽きてポイしちゃうんですか?」
マヤ「いやそんなことは」
チノ「マヤさんは、私を捨てますか?」ズイッ
マヤ「怖い怖い怖い! 捨てません! 捨てません!」
マヤ「新しい人間関係は積極的に作っていこうと思いますが、中学のころの友達ももちろん変わらず大事にします!」
チノ「変わらず大事に?」
マヤ「はい!」
チノ「小学生のときの友達と、あなたは今も変わらず関わり合いを持っていますか?」
マヤ「それは……」
マヤ「合う頻度は下がったと思います、けど」
チノ「……」
マヤ「……」
チノ「はー……」
チノ「このままだと落としますけど、どうします?」
マヤ「だから怖いって!」
マヤ「さっきから様子がおかしいよ、チノ!」
メグ「PCR検査受けたほうがいいんじゃ……」
マヤ「コロナだとしたら凶悪すぎる変異してるよ!」
チノ「メグさんの質問を参考にしてみたのですが……」
マヤ「参考にはしてるけど根本的に違うよ!」
チノ「そうですか……」
メグ「じゃあ私がもう一問聞いてみるねー」
マヤ「頼むぜーメグ」
メグ「あなたを動物に例えるとなんだと思いますか?」
マヤ「はい、私はネコだと思います」
マヤ「ネコは自由気ままに町中をかけ回る動物ですが、私もフットワークが軽く、好奇心のままにあちこちへ足を運ぶのが大好きです」
チノ「ネコは懐きやすいけれど気まぐれですぐに愛を忘れてしまうと言いますが──」
チノ「あなたもそうだということですか?」
マヤ「急に出てこないでよ!」
チノ「今は私に明るい笑顔を見せてくれますが高校では別の人たちに同じ笑顔をみせるんですね?」
マヤ「そ、そりゃ笑顔くらい見せるよ……」
チノ「好奇心はネコをも殺すといいますがあなたの場合は誰に殺されると思いま」
マヤ「怖い怖い怖い! どういう意味!? もしかして脅しかよ!?」
マヤ「さっきからチノってば怖いよ! 一体どうしちゃったの!?」
メグ「やっぱりコロナなんじゃ……」
マヤ「だからコロナで人格変わらないって!」
チノ「えーと」
チノ「すみません、怖がらせてしまったみたいで」
チノ「全部ちょっとしたジョークのつもりだったのですが……」
マヤ「え?」
チノ「ほら、最近マヤさんって受験勉強が忙しくてちょっとお疲れ気味だったじゃないですか」
チノ「たまには大笑いして気を抜く時間があってもいいかなって思ったんです」
マヤ「あれで大笑いして気が抜けると思えるそのセンスが怖いんだけど」
チノ「それに……」
マヤ「?」
チノ「やっぱり私、お二人と離れてしまうのが寂しいんです」
チノ「どの高校を受けるかいっぱい悩んで、考えて」
チノ「私だけ別の高校を受けると決心して」
チノ「その決断にもう迷いはありません」
チノ「ですがこうやって一緒に過ごせる時間が少しずつ無くなってるんだと考えると」
チノ「やっぱり、いつまでも離れたくないって……思わずにはいられないんです」
メグ「チノちゃん……」
マヤ「チノ……」
チノ「すみません、なんだかしんみりした雰囲気にしてしまって」
マヤ「……」
マヤ「大丈夫だって、心配すんなよ」
ワシャワシャ
チノ「あ……」
マヤ「別々の高校になったらさ、そりゃ今よりは一緒に過ごす時間は減っちゃうかもしれない」
マヤ「新しい友達だって絶対できるよ……私たちにも、チノにも」
チノ「はい……」
マヤ「けど、それって良い事だと思うんだよね」
チノ「え?」
マヤ「3人で同じ学校に通って、同じ景色を見て、同じ経験を分け合う……それもいいけど」
マヤ「私たちそれぞれが別の景色を見て、別の経験をして……」
マヤ「また出会ったときにそれを持ち合って共有するんだよ」
マヤ「それってすっごく楽しくてわくわくすると思わない?」
チノ「マヤさん……」
マヤ「チノにしかできない経験をいっぱいして、チノにしか出会えない人といっぱい出会って」
マヤ「また会ったときにさ、チノが歩んだ世界のことを、私たちに話してよ」
マヤ「楽しみにしてるからさ」
チノ「……」
チノ「そうですね」
メグ「チノちゃん、高校生になって急に大きくなっちゃったらどうしよー?」
チノ「ふふ、今はメグさんが一歩リードしてますが、私もまだまだ大きくなる予定ですからね」
マヤ「私だって成長期はこれからだからな!」
メグ「マヤちゃんはもう……」
チノ「残念ですが……」
マヤ「なんでだよー!」
フフフ アハハハ
マヤ「それにしても、チノがあんなジョークをかましてくるなんて驚いたよ」
メグ「初めて会ったときより面白くなったよねー」
チノ「まあ、ココアさんの影響が大きいでしょうか」
マヤ「ココアの?」
チノ「ココアさんってば、最近家にいるときに急にあんな感じのボケをしかけてくるんですよ」
チノ「このまえなんて深夜に……」
☆
チノ「スー……スー……」
ココア「チノちゃん、チノちゃん……」トントン
チノ「……? なんですかココアさん、こんな時間に」
ココア「チノちゃんは、リゼちゃんと私どっちの方が好き?」
チノ「え?」
ココア「リゼちゃんと私どっちの方が好き?」
チノ「なんで夜中にそんな質問を……」
ココア「私だよね? チノちゃんは私の方が好きだよね?」
ココア「チノちゃんは私だけを愛してくれるよね?」
ココア「チノちゃんには私だけいればいいんだよね?」
ココア「私がいないとチノちゃんは生きていけないよね? そうだよね?」
チノ「ちょ、もう何ですか……というか目キマりすぎでしょ!」ププッ
ココア「私にとってチノちゃんがすべてであるようにチノちゃんにとって私がすべてだよね?」
☆
チノ「わざわざ深夜に人を起こして……あんなとがったネタで……シュールすぎですよ……」プルプル
チノ「んふふっ……すみません、思い出し笑いが……」ブフッ
メグ「……」
マヤ「いやその話が一番怖い!」
END
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