【リゼロSS】ラム姉様の華麗なる日常 (74)
※4章~5章の間の話なのでアニメ勢の方はネタバレ注意
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【1話目】
ロズワール邸随一の敏腕メイド
老若男女全てがひざまずき、森羅万象も讃える国宝級の可愛い女…
そう
「それがラムよ」
スバル「どうした姉様。朝から絶好調だな」
ラム「絶好調?笑わせてくれるわね、今ラムはとても怒っているわ」
ラム「バルスが不服そうな顔をしているから改めて私の華麗さを説いてあげただけよ」
スバル「色々ツッコミてぇが今はまぁいい……確かに俺が悪かったよ。俺が100%悪かった」
スバル「でもさ、ちょっとはしゃいでただけじゃん!そこまで怒らなくて良くない!?」
ラム「まだ言い訳をやめないのね、エミリア様とベアトリス様を見習いなさい」
エミリア「すごーく反省してます…」シュンッ
ベアトリス「…」シュンッ
ラム「ちゃんと大人しく自らの非を認めて二人ともいい子だわ。今日のお菓子抜きは撤回してあげましょう」
スバル「遠回しにエミリアたんまで子供扱いしてね?」
ラム「聞きなさいバルス。あなたが以前のように居るのか居ないのかよく分からない使用人の頃ならラムもここまでしつこく怒らないわ」
スバル「言い方…」
ラム「けど、今のバルスはエミリア様の騎士であり正式な主従関係。それを、あの朝みたいな情けない惨状、もし他の王選候補者にでも見られていたらどうするの。笑い事じゃすまないわよ?」
エミリア「はい…」シュンッ
スバル「本当にその通りでした…申し訳ありません…」
ベアトリス「正論なのよ…」
ペトラ「…あれ?皆さんどうしたんですか?」
スバル「おう、ペトラ」
ラム「…あぁ、ペトラはメィリィへの朝食を運んでいたから見ていないのね。いいわ、説明してあげる」
30分前…
エミリア「見てスバル!夜すごい雨だったのに綺麗に晴れてる、いいお天気ね!」
スバル「お天気ではしゃぐエミリアたんマジEMT…」
ベアトリス「またくだらないこと言ってるかしら」
スバル「俺も雨上がりの晴れた景色は好きだね。なんか雰囲気とかいいよね。ほら、ベア子も一緒に見ろよ」
ベアトリス「急に抱っこするんじゃないのよ!」
スバル「この方がよく見えるだろ?」
ベアトリス「…まあ、確かに悪くはないかしら。もう少しこうしているのよスバル」
エミリア「ふふ、二人はすごーく仲良しね」
スバル「ガキん頃、雨やんではしゃいで外で遊んで…カタツムリ見つけたり、泥だらけになって叱られたりしたっけ……」
エミリア「ふーん。私、パックから『汚れるから雨降ったあとあんまり外で遊ぶな』って言われてたから…」
スバル「あの過保護猫め…」
スバル「そうだ、ベア子!カタツムリいないか探してみようぜ、子供らしいことしよう!」
ベアトリス「そのカタツムリってなんなのよ…」
スバル「まあそれっぽい虫とか居るかもしれないし!行こうぜ、ベア子。雨上がりの庭を探検だ!」
ベアトリス「ちょっ、待つのよスバル!」
エミリア「探検面白そう、私も行く」
スバル「うん、エミリアたんも行こう!」
そして庭へやってきた三人
エミリア「お日様気持ちいい~」
スバル「あそこの植木の中とかなんか居そうじゃね?雨上がりだけに出る虫とか生き物居たりする?」
エミリア「うん、なんか殻付いててネバネバした感じのちょっと可愛いのとか…」
スバル「それカタツムリじゃね!?」
ベアトリス「スバルが一番子供みたいにはしゃいでるのよ」
スバル「そうだ、あそこの植木のとこまで競争しよう。子供は外を走り回るもんだ」
ベアトリス「べ、別にベティーは子供みたいに競争したいとか…」
スバル「じゃあ手ぇ繋いで走るか!!」
ベアトリス「そういう問題じゃないのよ!」
エミリア「ふふふ。私とも手、繋ご?ベアトリス」
ベアトリス「二人して何なのよ!止まるかしら~!」
スバル「こうして三人で一緒に走ってると親子みたいだね、エミリアたん」
エミリア「そうね、スバルがお兄ちゃんでベアトリスが妹!」
スバル「待って、それだと俺とエミリアたんの関係は何!?」
ベアトリス「スバルが私の兄だなんて100年早いのよー!」
そうして三人で手を繋いで走る、そんな微笑ましい光景が繰り広げられていた……
しかし
ズルッッッ!!
スバル「あ…」
ベアトリス「……っ!?」
エミリア「きゃあっ!?」
スバルが足を滑らし
スバル「ずべああぁっ!?」
ベアトリス「ふぎゃーっ!」
エミリア「はぶっ!?」
三人揃って盛大に転んでしまった
水溜まりと雨でぐちょぐちょになった地面の上に
スバル「あ…は、ははははは!」
エミリア「あはは、転んじゃった!」
ベアトリス「も~…何が楽しいのよ!ベティー泥だらけになっちゃったかしら!」
スバル「ははは……悪い悪い。けど、今のベア子も子供らしくて悪くないぜ?」
ベアトリス「子供扱いすんじゃないかしら」
ベアトリス「スバルこそ顔が泥まみれで、ただでさえかっこよくもない顔が余計に酷くなったのよ」
スバル「お、言ってくれたなベア子!」
エミリア「あはは、本当だ。スバル顔泥だらけ、カッコ悪い」ニコニコ
スバル「エミリアたんに笑ってもらえて嬉しいが複雑な気持ちだよ…」
ベアトリス「…ふふ…」
スバル「へへ。笑ったなベア子、もっと笑おうぜベア子!」
ベアトリス「わ、わ、笑ってなんかないのよ!」
エミリア「笑って笑って」
「………全然笑えないのだけれど?」
ベアトリス「…っ!!」ビクッ
スバル「やべぇ、この声は…」
エミリア「あ、あのね、これは…えっと……」
ラム「主従揃って朝から泥んこ遊びですか?王選候補者とは思えない惨状ですね」
エミリア「う…その、ごめんなさい…」
ラム「そして何より」
ラム「その泥だらけの服や荒れた庭、誰が綺麗にすると思ってるんですか?めんどくさい仕事増やさないでください」
スバル「最後のが本音だよね?姉様」
ラム「ーーーということがあったのよ」
ペトラ「え………」
ラム「見なさいこの子の顔を。擁護してあげようにも擁護の言葉が見つからない困った顔をしているわ」
スバル「くうぅ…っ!ごめんなさい!」
ペトラ「その、元気なのはいいと思うよ!あ、思います!」
スバル「うん、フォローありがとう。でもいいよ、正直に言いたいこと言ってくれて」
ペトラ「泥だらけの服も荒れたお庭も綺麗にするの大変…」
スバル「本当にすみませんでしたぁっ!」
エミリア「ごめんね、ペトラ…」
ベアトリス「…ごめんなさいなのよ…」
ペトラ「あの、ラムお姉様。三人とももう反省してるみたいですし…」
ラム「そうね。優しいペトラに免じてこの辺りで許してあげましょう。バルス以外」
スバル「なんでっ!!?」
ラム「冗談よ」
スバル「姉様が言うと本当か冗談か分かんねぇよ…」
ラム「ハッ!」
ラム「…で、外で遊ぶのは構いませんが泥や水溜まりは避けてください。今度からはもう少し気を付けてくださいね」
ベアトリス「わかったのよ…」
エミリア「うん、わかりました。気を付ける!」
ラム「なんで主人に対しても子供相手みたいな注意しなきゃダメなのかしら…」
スバル「姉様、それせめてエミリアたん居ないとこで言おう?この子が主人だよ?」
ビチャッ!ビチャッ!!
エミリア「ん?なんだろ?」
ベアトリス「泥のような音がするのよ」
ラム「………」ハアーッ
スバル「まさか…っ!」
シュッ!ビシュッ!シュッ!
ビチャッ!ビチャッ!!
ガーフィール「フンッ!どらァッ!!おらラァッッ!!!」
ビチャアッ!!!
ラム「…ねぇ……あのバカは何をやっているの?」
スバル「あ、あ~…トレーニングしてんだろうな。特に今日は朝からテンション高かったし…ははは」
ベアトリス「あんなベチョベチョの地面で動き回るから泥だらけなのよ」
エミリア「あちゃ~…」
ガーフィール「おォッ!ラム、大将!見てっかよォッ!?」
ガーフィール「俺は今日は朝から調子いいぜェッ!トレーニングも捗るってもんよォッ!!」
ビチャアァッ!!!
ラム「バカガーフゥッッ!!!」
このあと、ガーフィールはラムとフレデリカから叱られることになるのは言うまでもない。
1話目 おしまい
【2話目】
ガーフィール「くっそォッ!まあッた負けちまったァッ!」
オットー「まだまだですねぇ、ガーフィールは。シャトランジ盤はもっと戦略を練ってですね…」
スバル「オットーのドヤ顔が気に入らねぇ。俺とオセロで勝負だ」
オットー「なんか訳のわかない理由で勝負を仕掛けられた!?しかもナツキさんの得意分野で!」
スバル「ったりめぇだ。シャトランジ盤じゃオットーには絶対勝てねぇ。だからオセロだ」
オットー「潔いのか潔くないのか分かんねぇ!」
ラム「あら、三馬鹿。真っ昼間から何をやっているの?」
スバル「会うなりいきなり三馬鹿て」
ガーフィール「もうちょい言い方ってェもんがあんだろうがよォ」
オットー「僕も馬鹿に入っているのが納得いかないんですが…」
ラム「なに?ラムに文句でもあるの?あまり生意気言ってるとオットーするわよ?」
オットー「オットーするって何なんですかねぇ!?」
スバル「今ので1オットー加算だな」
ガーフィール「あァ。今日で合計6オットーだぜ、大将」
オットー「あんたらの間で『オットー』はどういう意味の単語なんですかねぇ!!?」
ラム「…なるほど、最近仕事疲れが溜まってるオットーをリフレッシュさせてあげてたのね。てっきり仕事が嫌になって逃げ出したオットーが真っ昼間からゲームして遊び散らかしてるのかと思ったわ」
スバル「姉様、オットーは逃げたりなんかしないよ」
ガーフィール「あァ。オットー兄ィの根性は俺も認めてッからよォ」
ラム「そうね、確かにその通りよ。先程の発言は撤回しましょう、オットー」
オットー「いえいえ、ラムさんが本気で言ったわけじゃないくらい僕にだって分かりますから。あはは…」
ラム「あなたには一生ここに居て貰わなきゃ困るわ。今後ともロズワール様の為だけにその身を捧げなさい」
オットー「それ本気か冗談か分かんないのが怖いですよ!一生居るつもりはないですからねぇ!?」
スバル「そう言うなよオットー、連れねぇなぁ」
ガーフィール「俺達ァ、あれだオットー兄ィ。親友ってェ奴だ。なァ大将」
スバル「おうともよ!」
オットー「嬉しいけど複雑っ!!」
ラム「やっぱり三馬鹿ね」ハアーッ
オットー「呆れたような顔するのやめてくれませんかねぇ!?」
スバル「そういや姉様こそこんなとこで遊んでていいの?」
ラム「今ラムは見ての通り休憩中よ。そしてやらしい目を向けてくる男達に掴まってしまったか弱い女の子…それが今の私の状況よ」
ガーフィール「いや、自分からここに入ッて来たんだろッがよォ」
オットー「ブレないなぁ、この人は」
ラム「まあいいわ。私もシャトランジ盤、またはオセロを相手してあげてもいいわよ」
スバル「もしかして姉様もゲームに混ざりたかったの?」
ラム「ハッ!」
ーーーーー
オットー「くうぅ…強い…!」
ラム「さあ、どうするの?」
オットー「ならこうですよ!」
ラム「おっと、そう来たの。さすがに強いわね。危ない危ない。オットットー」
オットー「余計な一言付けるのやめてくれません!?」
ガーフィール「ラム、強ェな…俺じゃとても勝てッこねェよ」
スバル「あぁ。オットットーが苦戦するくらいだからな…」
オットー「真似しなくていいですよぉっ!!」
ガーフィール「そういや、いつもくっついてるベアトリスはどうしてんだッ?大将」
スバル「あぁ。ペトラの買い物に、エミリアたんと一緒にベア子も行かせたんだ。微笑ましいだろ」
スバル「ベア子も、たまには俺以外と過ごす時間を作ってやった方がいいからな」
ガーフィール「ッだなァ」
オットー「…あぁっ!勝ったぁ!」
ラム「くっ…!」
スバル「おぉっ!」
ガーフィール「やったじゃねェかよォッ!」
ラム「…もう一回よ!」
スバル「姉様もハマってんなぁ」
フレデリカ「こら、ラム!いつまで遊んでいますの!」
ガーフィール「あ、姉貴」
ラム「…」
ラム「私は休憩中よフレデリカ」
フレデリカ「休憩時間はもうとっくに終わりましたわ、仕事に戻りなさいラム」
ラム「…」
ラム「ハッ!」
オットー「素直に遅れてごめんなさいって言えないんですかねぇ…」
2話目 おしまい
【三話目】
ペトラ「恋話しませんか!?」
ベアトリス「ベティーの自慢の髪の毛を弄くりながら何を言い出すのかしらこいつは」
ラム「男について語り合いたいだなんてはしたないわ…」
フレデリカ「まあまあ、それくらい良いでしょう。ペトラだってお年頃の女の子なんですから」
ペトラ「えへへ、ごめんなさい。こうやって女の子全員で集まるなんて珍しいなって思って……そういう話なんかも皆でしてみたいなって」
エミリア「そうね、ペトラ。女の子の友達で集まるの、私もすごーく新鮮」
ラム「エミリア様。私達は友達ではなく……いえ、やっぱいいです」
エミリア「それで、コイバナって何をするの?何をした人が勝ち?」
フレデリカ「いえ、勝ち負けを競うようなものではなく…」
ラム「最も濃い匂いの花を見つけたものが勝ちのガチンコレース…それがコイバナです」
エミリア「へー」
フレデリカ「エミリア様、ラムのからかいを真に受けてはいけませんわ」
ペトラ「好きな人のことを話したりするんですよ」
エミリア「好きな人?」
ペトラ「例えば私だったら~…スバ…」
ペトラ「きゃー!やっぱ恥ずかしい!」
ラム「スバルでしょう?見てれば分かるわ。というかほぼ言ってるわ」
ペトラ「ベアトリスちゃんは!?」
ベアトリス「ふん、ベティーは恋なんか興味ないのよ」
ベアトリス「それなしで単純な好きで良いなら…にーちゃと。まあスバルかしら」
ペトラ「私は?」
エミリア「私は?」
ベアトリス「べべ、別に嫌いではないのよ!!」
フレデリカ「ふふふ」
ペトラ「フレデリカお姉様は?」
フレデリカ「私も参加したいのですが…ごめんなさいねペトラ。私も恋愛的な意味での好きな相手というのは居ないんです」
ペトラ「じゃあベアトリスちゃんみたいに他のでも…」
フレデリカ「そうですわね……それならやはりガーフでしょうか。何だかんだで可愛い弟ですよ」
ラム「そうね、ガーフは弟として見れば可愛いわ」
フレデリカ「それ本人には言わない方がいいですわよ?」
ペトラ「ラムお姉様は…」
ラム「ハッ!悪いけれど、ラムはそんな恋愛話にうつつを抜かしたりはしないわ…ペトラ。ただ」
ラム「世界で最も尊い男性を挙げるならばそれはラムにとってロズワール様以外には有り得ない。例えば、まずロズワール様の…」
ペトラ「え、あ、はい…」
フレデリカ「どの口で言ってるんだ、ぐらいは言い返してもいいですわよペトラ」
エミリア「次は私の番?」
ペトラ「はい!エミリア様どうぞ」
エミリア「えっとね~…好きな人は、スバル!」
ペトラ「う……やっぱかぁ…」
エミリア「それと、パックも好きだし~」
ペトラ「え?」
エミリア「ラムもベアトリスもペトラもフレデリカも、オットーくんもガーフィールもパトラッシュちゃんも好き!」
ラム「…」
ベアトリス「…」
フレデリカ「まあ…」
エミリア「それとね、今は覚えてないけど。ずっと眠ってるレムのことも好きだったと思うの」
ペトラ「えっと…」
ラム「………」
エミリア「とにかく。私は皆のことがすごーく好き!」
ペトラ「ん~…ま、いっか」
ベアトリス「まあ別に悪くないかしら…」
フレデリカ「うふふ、ありがとうございます。エミリア様」
エミリア「えへへ。みんな仲良くが一番ね!」
ラム「…今、珍しくバルスに少し同情しているわ…」
エミリア「え、なんのこと?」
ラム「いえ、何でもありません」
三話目 おしまい
男子の恋話編に続く
【四話目】
スバル「なあ、オットー、ガーフィール。男同士もっと青春っぽいこと話さね?」
ベアトリス「ベティーの自慢の髪の毛を弄くりながら何を言い出すのかしらこいつは」
ガーフィール「青春だァ?大将。誰がケンカ強ェかッとかかァ?」
スバル「不良同士の青春ならそれでいいだろうけどここに居るのお前以外インドア派だからね。まあオットーは武闘派でもあるけども」
オットー「誰が武闘派ですか」
スバル「例えば、好きな女の子の話とかだ。恋話だな」
ガーフィール「んな、女みてェな会話してられッかよォッ」
スバル「おいおい、男子だってするぞ。なあ?オットー」
オットー「知りませんよ、僕そういう会話したことありませんし…そもそも商人の仕事やら今はここの仕事やらで、そんなこと考えてる暇も無いですから」
スバル「でもよ、やっぱ恋はいいもんだ。頑張れる気力にもなるしな。オットーは素材は良いんだからもっと顔キリッとさせて目立つ大活躍すりゃモテるぜ?もうそれこそハーレム築けるくらいにな」
オットー「僕がモテる訳ないじゃないですか。いちいちからかうの止めてもらえませんかねぇ」
スバル「いや今のは結構真面目に言ったんだけど…」
ベアトリス「弄られ体質が身に染み付いちゃっているのかしら」
ガーフィール「もッと自信持てよ、オットー兄ィ」
スバル「まあ気を取り直して。気になる女の子について語り合おう」
ガーフィール「フンッ、俺の気になる女なんざ今も昔も…」
ラム「面白そうな会話をしているわね。ラムにも聞かせなさい」
ガーフィール「げ、ラム!」
ラム「げ、とは何かしらガーフ」
スバル「何ってそりゃあ…なぁ?」
ラム「ガーフのこれから話すであろう気になる女の子ご本人が登場したからかしら?」
ガーフィール「ああ、もうそうだよチキショオッ!おめェ分かってて今乱入して来たッだろ!?」
ラム「いえ、残念ながらたまたまよ。オットーの不運がガーフにも回ったわね」
オットー「しれっと何言ってくれるんですかねぇ、この人は」
ラム「まあ邪魔するつもりはなかったのよ。続けてどうぞ」
ベアトリス「自分の話題が出されるの分かってて、ここまで堂々とできるの凄いのよ…」
ラム「安心なさい。ラムは口が堅いから聞いた話を無闇に他人に吹聴したりしないわ。そして話してる途中におちょくりもしない」
スバル「姉様の口の堅さに関しては信頼してるけど、おちょくりは絶対にしてくるよね?」
ガーフィール「…大将、俺ァ、ギブだ。変わッてくれ」
スバル「おう、仕方ねぇ。任された」
ラム「バルスの恋話?ハッ!どうせ、いやらしく鼻の下伸ばしながらエミリア様のことばっかり語るのでしょう。朝から晩まで」
スバル「舐めんなラム。朝から晩どころか一週間ぶっ続けで語れる」
ラム「ふん。ラムはロズワール様のことなら一年語れるわ」
スバル「ぐっ…なら二年だっ!」
ラム「ロズワール様五年。レム五年」
スバル「ぐっ!エミリアたん五年、レム五年、ベア子五年で十五年だあっ!!!」
オットー「なんの勝負ですかこれ!?」
ベアトリス「訳わからんのよ」
ガーフィール「なら俺ァ100年だぜェ!ラムゥ!」
オットー「あんたまで混ざらなくていいんだよ!!」
ラム「あなたもツッコんでばかり居ないで恋話したらどうなの?」
スバル「そうだよ、ちゃんと混ざれよオットー」
オットー「僕には訳の分からないバトルが始まったようにしか見えなかったんですがねえ!!」
ラム「あとバルス。悪い虫がレムを五年も語ることは許さないわ」
スバル「悪い虫は酷くね!?」
スバル(…まあ、記憶なくしてもレムへの愛情が深いのは嬉しいけど…)
ラム「何をニヤニヤしているの?まさか私にボロクソ言われて嬉しいの?ドの付く変態ね、最悪だわ」
スバル「姉様、あんま言われたらさすがの俺も傷つくよ」
スバル「…で、オットー。別に好きな女の子でなくてもいいんだ。うちの陣営内で『この子なら付き合ってもいいかなー』って子でも居ないの?」
オットー「そんなこと考えた事もないですからねぇ」
ガーフィール「じゃア一人一人挙げてみッか」
スバル「んだな。じゃ、まずはベア子」
オットー「いきなり何なんですか。考えるまでもなく年齢的になしでしょう」
ベアトリス「そもそも仮にベティーが大人だったとして、オットーは勘弁なのよ。ごめんなさいかしら」
オットー「そしてなんか勝手にフラれたんですが!?」
スバル「そもそも俺の娘はやらん」
オットー「あんたは何なんだ!!」
ラム「では次に行こうかしら……ペトラなんてどう?」
オットー「あんたらは僕をどうしたいんですかねぇ!?」
ラム「いい子よ?」
オットー「いい子なのは分かってますけど!そういう問題じゃないでしょう!!」
ガーフィール「ンじゃあ、姉貴なんかどうよ?」
オットー「フレデリカさんですか…まあ、悪くはないですね。この陣営の中じゃ一番安心感があります。しっかり者で真面目な良い方ですし…」
ラム「良かったわねガーフ。お兄ちゃんが増えるわよ」
ガーフィール「本当の兄ちゃんになンのァ複雑だなァ…」
スバル「つまりガーフィールの家に遊びに行くたびオットーも居んのか…いつまでも一緒に遊べるなっ!」
オットー「いやなに勝手に話を進めてるんですか。あくまで陣営の中では女性として悪くないって話ですからね?」
スバル「じゃあラムは?」
オットー「ラムさんですか…」
ラム「ラム様よ」
オットー「何故に!?」
ラム「寛大な心を持つラムは何を言われても怒らないわ。性的な視線を少しでも向けてきた瞬間その目を潰すけれど」
オットー「おっかないですよ、この人っ!!結婚しようなんて言った瞬間様々な罵倒が飛んできそうですよ!?」
ラム「そこまではしないわよ。ただ国を1つでも差し出せば、ギリギリ考えてあげる余地を許してあげないこともないだけね」
スバル「すっげぇドヤ顔ですっげぇ事言ってる」
オットー「もうツッコむ隙すら与えない勢いですね…」
ラム「ハッ!」
ラム「なら最後に、エミリア様はどうなの?」
スバル「おいこらオットーてめぇ」
オットー「僕まだ何も言ってないですよねぇ!?」
ベアトリス「反応が速すぎるのよ」
スバル「分かってらぁ、冗談だ。ほら言ってみろオットー」
オットー「そうですねぇ、エミリア様の頑張り屋で優しいところは僕も高く評価していますよ。立場だけでなく純粋に僕個人としても彼女を応援したいと思っています」
スバル「えー。その個人としても応援したいとはどういう意味でしょうか?」
ベアトリス「スバルちょっと顔怖いかしら」
オットー「心配しないでくださいよ、あくまで人として尊敬してるってだけの話ですから」
スバル「ははは、そうかそうか!だよな、エミリアたんは応援したくなるよな!よく分かってらっしゃる、さすが親友っ!!」
オットー「ははは…」
ガーフィール「…で、結婚相手として見たらどうなンだよ?」
オットー「あー…」
オットー「いや、それは無いですね。なんというかエミリア様は……気分としては頑張ってる子供を見守ってる感覚に近いです」
ガーフィール「あー…」
ラム「その通りね」
ベアトリス「分かるかしら」
スバル「やべぇ、その意見には俺も何も言えねぇ…」
四話目 おしまい
【五話目】
この日、ラム、フレデリカ、ペトラは食堂と厨房の大掃除を行っていた。
ラム「ふー………ペトラ、あとはここ任せたわ…」
ペトラ「はい。休んでてください、ラムお姉様」
フレデリカ「…ペトラ、もう少しラムに厳しく言ってもいいんですわよ?」
ペトラ「…ラムお姉様のお身体のことを知らないときは言いそうになりましたけど。今はあの人の事情も少しは知っていますから」
フレデリカ「そう…ペトラはいい子ですわね」
ラム「はあ…」グタァッ
フレデリカ「て、ラム!さすがにそんなはしたない休み方は看過できませんわ!なんですのその高慢な女王様の様な座り方は!」
ラム「いいのよ、私はラムなのだから」
フレデリカ「本当に可愛いげのない子!」
フレデリカ「…ではペトラ。私は厨房の方へ行ってますので、こちらは頼みますね?」
ペトラ「はい!」
ラム「………」
ペトラ「んっしょ、よいしょっ」
ラム「………」
ペトラ「んん~~~っ!!」
ラム「…ペトラ。そんな大きな荷物無理して運ぶことは無いわ。後でフレデリカに任せておきなさい。ふらついてるじゃないの」
ペトラ「でも、フレデリカお姉様にここは頼まれたから…少しでも」
ラム「頑張りと無茶は違うの。転んで下敷きになっても知らないわよ」
ペトラ「大丈夫ですっ!」
ラム「ペトラ…」
ゴンッ!!!
ズルッ!!
ペトラ「きゃ…っ!?」
ラム「っ!!!」
ペトラ(タンスにぶつけちゃった、あ、荷物が…下敷きに、タンスの上のものも……ダメ、間に合わな……)
ガタンッ!
ガラガラッ!!ガシャッ!!
ペトラ「…っ!!!」
ペトラ「…あ……れ?」
ラム「はあ…はあ…っ、バカね。だから言ったでしょう…」
ペトラ「ラムお姉様!?私を、助けるために…っ」
ラム「わかった?もう無茶はしないこと…まったく…」
ペトラ「ごめんなさい、ラムお姉様!ごめんなさい!…ありがとう…」
ラム「…ふん…」
ペトラ「大丈夫…ですか?立てますか…?」
ラム「…ちょっと横になりたい、このまま休ませて……」
バタンッ!!
フレデリカ「ペトラ!大丈夫ですか!?何か大きな物音が…っ」
フレデリカ「って、ラム!?床で寝るだなんて言語道断ですわよっ!!?」
ペトラ「あ!フレデリカお姉様、違うの!これには訳が…!!」
ラム「…」
五話目 おしまい
【六話目】
今日はラムの隣町への買い出しにエミリアも付いてきていた
ラム「…なぜエミリア様も付いてきてたんです?ラムは別に構いませんが」
エミリア「たまには気分転換に外に出たかったし、ラムと二人でお出掛けもしてみたかったの」
ラム「…前の王都の時みたいにはぐれないでくださいね」
エミリア「うん、大丈夫!」
「おや、エミリア様…お久しぶりです」
ラム「!」
エミリア「あ!」
ユリウス「まさかこのような場所でお会いするとは」
エミリア「ユリウス、久しぶりね!」
ユリウス「変わらずのようで何よりです」
エミリア「ユリウスは何をしてるの?」
ユリウス「この付近に住んでいる商人の方とアナスタシア様が交渉をしていらっしゃり…私はその護衛として参りました」
エミリア「なるほど」
ユリウス「ラム女史も魔女教との戦いの時…少しだけ顔を合わせた以来ですか」
ラム「ええ。覚えて頂いていて光栄です。まったくバルスにもその礼儀を見習わせたい」
ユリウス「ふ…ナツキ・スバル殿も騎士になったとお聞きした彼は元気だろうか?」
ラム「はい。バルスは相も変わらずバルスで本当に困ったバルスです」
ユリウス「なるほど、変わらず彼は元気と」
エミリア「凄い、今ので伝わってる…」
ラム「それと、彼が敬称で呼ばれるのは何だか気味が悪いです」
ユリウス「ふ、実際に彼にも文句を言われそうですよ…礼儀として初めはそう呼びますが」
書き溜めてメモしてた分を間違えて消しちゃったので、また明日投下します
ユリウス「そういえば、この町では最近スリや盗みが流行っていると聞きます。一グループによる犯行と疑われては居ますが……お気をつけください」
エミリア「まあ…分かったわ、ありがとう。気を付ける」
ラム「その様な輩は見付け次第ラムが徹底的に制裁を加えますので御安心を」
ユリウス「貴女のような方が側に居れば安心ですね」
エミリア「うん、ラムはすごーく頼りになるの」
ーーーーーーーーーー
ジャリッ ジャリッ
エミリア「見て見て、ラム。あそこの肉屋さんのお惣菜美味しそうね」
ラム「はいはい、後で買ってあげますからいい子にしていてくださいね。まずは買い出しを終わらせましょうね」
エミリア「最近ラムに子供っぽく扱われてる気がするわ」
ラム「気のせいです」
エミリア「そういえば久しぶりにユリウスとお話できて嬉しかったわね!」
ラム「他意が一切ないことは分かっていますが、それバルスが聞いたら怒りますよ。バルスには話さないでくださいね」
エミリア「え、スバルにも『ユリウスは元気だったよー』って教えたら喜ばないかな?スバルとユリウス、仲直りしてお友達になったんでしょ?」
ラム「ユリウス様の方はバルスを友人として認識して居ますが…」
ラム(説明めんどくさいわね)
ラム「…あれです、男同士の友情に女が土足で入るのはマナーに反するのです」
エミリア「あれ?でもラム結構スバルやオットーくんやガーフィールがお話してるとこに割り込んでなかった?」
ラム「マナーに反するのです」
エミリア「え、はい…」
ラム「なので、バルスには何も言わなくて結構なのです」
エミリア「う、うん…分かった……わ?」
ラム(エミリア様相手でも苦しい誤魔化しだったわね)
ラム「…では、ここでの買い物を済ませば終わりですね。エミリア様は地竜用の餌を頼みます」
エミリア「うん」
ラム「いいですか?ラムより先に買い物終わっても勝手に外をうろつかないでくださいね?ちゃんと待っていてくださいね」
エミリア「そんな念を押さなくても…」
ラム「それでは」
エミリア「うん!……さて、と」
エミリア「パトラッシュちゃん達のご飯…ん?」
「泥棒ーーーっ!!!」
エミリア「!」
ダダダダダッ!!
「誰か捕まえておくれ、泥棒だよぉ!!」
エミリア「まさか、ユリウスが言ってた……」
エミリア「ラム、ごめんなさい!」
シュダッ!!
ザッザッザッザッザッ!!
少年「はあっ!はあっ!よし、今日も成功だ…」
「待ちなさ~い!」
少年「ん?女の声?まあ女じゃ俺には追い付けな…」
シュダダダダダッッ!!
エミリア「悪い子は、メッしちゃうんだからあっ!」
少年「って、はっやいな!?何あれ!!?」
エミリア「えいっ!」
少年「ぐあっ!」
ズザザッ!!
エミリア「こんなことして、お父さんとお母さんが怒るわよ!?」
少年「…お父さんと、お母さん……?」
少年「居たら、こんなこと…!」
エミリア「…え?」
小柄な少年「お姉さん、覚悟しなぁ!」
エミリア「!?」
ブンッ!ブンッ!
エミリア「きゃっ!」
ベチャッ!!
エミリア「わ、臭いっ!なにこれお馬さんの糞!?…私には付かなくて良かった…」
大柄な少年「今だ、逃げろっ!」
少年「悪いなお前ら!!」
エミリア「あぁ、とんずらこいちゃった!!」
エミリア(…あの子、一瞬…悲しそうな顔をしてた…)
「…まったく、私が居ない間に巻き込まれて…」
エミリア「!」
ラム「盗みの上に、女に糞を投げ付けるとは躾のなってない子供ね…」
ラム「お仕置きが必要だわ」
エミリア「えっと、糞の片付け…」
ラム「…幸い町の外なので放置でいいです、いえ良くはないですが」
ラム「それより追い掛けますよ!」
エミリア「うん!」
ザッザッザッザッザッ!!
少年「よっと!!」
シュタッ
少年「お前らも早く上がってこいよ!」
大柄な少年「おう、ちょっと待てって!」
小柄な少年「あ!あれ!」
エミリア「ラム、あそこの木を登って崖の上に逃げるみたい!」
ラム「すばしっこい奴等ね…」
ラム「フーラッ!!」
ビシュッ!!
ズウゥッンッ!!
少年「なっ!?」
大柄な少年「いぃっ!?」
小柄な少年「やべぇ、木が折られた!!」
大柄な少年「お前は早く逃げろっ!!」
小柄な少年「妹が待ってんだろぉ!」
少年「くそ…悪いっ!!」
ラム「…妹…ね」
大柄な少年「俺達は少しでも時間を稼ぐぞ!」
小柄な少年「女だからって手加減しねぇ!」
エミリア「人に汚いもの投げちゃ、メッでしょ!」ペシンッ!
小柄な少年「デコピン!!」
大柄な少年「舐めんな、俺は三人で一番つえぇ!!」
ラム「はいはい。お尻ペンペンの刑よ」
大柄な少年「待って、痛い!待って!」
ラム「盗んだものは…持ってないわね。さっきの子供の逃げ先を教えなさい」
大柄な少年「そ、それだけは…言わねえ!!」
ラム「…」
少年「はあっ!はあっ!はあっ!」
ザッザッザッ…
「そこまでだ、少年」
少年「…っ!!」
ユリウス「ふむ…アナスタシア様が手に入れていた情報通り、犯人は子供か」
少年「な…」
ユリウス「逃げるルートも調査済みだった。アナスタシア様の交渉相手だった方が最近、二度ほど盗みの被害に遭い…犯人の確保を頼まれていたものでね」
少年「ど、どけろよ兄ちゃん!俺は帰らなきゃいけねぇんだっ!!」
ユリウス「…おとなしく盗んだものを返し、罪を償いたまえ。私とて子供に手荒な真似はしたくはない」
少年「うっせぇんだよ!邪魔すんじゃねえっ!!!」
ユリウス「…向かってくるか…」
少年「おおおぉぉっ!!!」
ユリウス(…あの目は…)
ユリウス「そうか…君も、守りたいがあるのだな」
少年「!!!」
ビタァンッ!!!
少年「ぐはぁっ!?」
ユリウス「だが、如何なる理由があれど悪事を働いた責任は負うべきだ」
少年「くっ、そ……離せ…っ!!」
ユリウス「そういう訳にはいかない。君をこのまま野放しにはできない」
エミリア「ユリウス!」
ラム「そちらは捕らえていましたか…」
ユリウス「お二方とも…巻き込んでしまい申し訳ありません…」
エミリア「いいの。それより…」
少年「…っ」
エミリア「…話を聞かせて」
訂正
× 守りたいが
○守りたいものが
ーーーーーーー
エミリア「…え…」
ユリウス「魔女教、か…」
少年「俺が留守番で、両親と妹が出掛けてて…それで、魔女教に、襲われて…!」
ラム「…」
少年「父ちゃんも母ちゃんも、死んだ。そして妹は生きてたけど…記憶喪失になって、帰ってきた…」
ラム(クルシュの様な症状………私からレムも奪った『暴食』の仕業か)
エミリア「ごめんね。私、無神経に…」
少年「いいよ、あんたは、事情なんか知らなかっただろ…」
ユリウス「それで残る妹を支えられる者が君しか居なくなった…か。村の大人や親類には頼れなかったのか?」
少年「…閉鎖的な村だからさ。魔女教に狙われる様な家には、関わるなって…」
エミリア「…」
少年「でも、あいつらだけは俺と友達で居てくれて」
大柄な少年「そ、そいつは悪くねぇ。仕方なくやっちまったんだ…」
小柄な少年「ちゃんと正しい道に導けなかった俺達の責任だ!」
少年「違う、俺が悪いっ!だから、あいつらは見逃して…」
ユリウス「…君達の意も汲んであげたいところだが、そうも行かない。情状酌量で多少は罪も軽くなるかも知れないが、罰せられることは避けられないだろう」
少年「…そしたら、妹は、誰が……」
エミリア「ユリウス…」
ユリウス「…ご心配なくエミリア様。我々も鬼ではありません」
ユリウス「この三人の身柄は我々が預かる。ラム女史もよろしいでしょうか?」
ラム「えぇ。構いません」
訂正
×クルシュ
○クルシュ様
少年「…罪は償います…けど、妹を…」
ユリウス「分かっている。妹の心配しなくていい」
ユリウス「…そういえば、最近雑用係が三人ほど人手が足りなくてね。君くらいの年齢でも出来そうな仕事だが…」
少年「え?」
ユリウス「いや。今はまだこの話はいいだろう」
エミリア「…ふふ。ユリウスは優しいわね」
ラム「…すみません。最後に少しだけ、その少年とよろしいでしょうか」
ユリウス「えぇ。お構い無く」
ラム「…あなた」
少年「な、なに…」
ラム「………」
少年「…何なの?」
ラム「…私はね、妹の記憶が無いのよ」
少年「え?」
ラム「それでもね。私は、妹を愛している」
少年「…」
ラム「いつかきっと記憶が戻るとか、根拠なく希望的観測だけで言えるようなお気楽な性分ではない。けれど…」
ラム「もし暴食と直接会うことがあれば、その時は私が奴を八つ裂きにしてあげるわ」
少年「…うん」
ラム「あなたも妹を愛しているのでしょう?」
少年「当たり前だ」
ラム「ならしっかり、妹から愛される兄で居なさい」
ラム「…それだけよ」
【六話目】おしまい
【七話目】
スバル「第三回!EMT陣営腕相撲選手権ーっ!!」
ベアトリス「わーっ、かしら」
エミリア「ウデズモー?」
ラム「第三回って何?一度もやった覚えがないのだけれど。妄想で二回やったの?」
スバル「今まで男子組だけで二回やったからな。残念ながら妄想ではない」
エミリア「ウデズモーって何?美味しいもの?」
スバル「食べ物違う」
オットー「ナツキさんから教えてもらった……まあ分かりやすい力比べですね」
ガーフィール「腕っぷしの強さを競いあうンだ!俺ァ大将にもオットー兄ィにも完勝したッぜ!」
フレデリカ「まあそれなら勝てるでしょう」
ラム「その二人相手に力比べで負ける方が大問題よ、ガーフ」
スバル「なんかシレッと雑魚扱いされてる?」
オットー「否定できないのが苦しいですね」
エミリア「私あまり人を叩いたりは…」
スバル「大丈夫だよエミリアたん、痛いことはしない遊びだから。手本を見せてあげよう。よしペトラこっち来い」
ペトラ「はい!」
スバル「こう…手を握り合って……」
スバル「相手の手の甲をテーブルに付けさせた方が勝ち!というシンプルなゲームだ!」
スバル「さあ、やれペトラ!」
ペトラ「えいっ!」
ビタンッ!
スバル「ぎゃー!やられたー!」
ラム「え…子供にまでやられてる……バルスという名も勿体無いわ。もうバね」
スバル「いや、今のはレクチャーとして皆に教えるためにわざと負けたんだからね?あと最早言ってる意味が分からない」
ラム「ハッ!」
エミリア「面白そう!私もやってみたい」
スバル「うん、皆でやってみよう!」
そして、第三回EMT陣営腕相撲選手権大会はトーナメント方式で行われた
対戦カードはくじ引きによって決められる
スバル「予選の組み合わせは決まったな!」
予選
スバルVSオットー
エミリアVSラム
ガーフィールVSフレデリカ
ベアトリスVSペトラ
ロズワール「面白そうだから、見て楽しませてもらうとしようかぁーな」
スバル「ロズっちは参加しねぇの?」
ロズワール「私が参加することに不服そうな子が、二名ほどいるからねぇーっえ」
ガーフィール「…」
ペトラ「…」
スバル「あぁ……だな。言っとくが同情はしねぇぞ」
ベアトリス「お前の自業自得なのよ」
ロズワール「お厳しいねーぇ」
ガーフィール「おォ、まずは大将とオットー兄ィからだッぜェ」
スバル「よし。手加減しねぇぜオットー」
オットー「僕の台詞ですよ、ナツキさん」
『スバルVSオットー』
スバル「エミリアたん、俺の為の声援を頼む!」
エミリア「わかった!スバル~、オットーく~ん!頑張ってー!」
スバル「オットーの名前も入ってるよ!?」
ベアトリス「いちいち締まらん奴かしら」
ラム「この二人の勝負で負けた者は実質この陣営最弱よ。心して掛かりなさい」
オットー「そう言われるとプレッシャー半端ないんですがっ!」
ガーフィール「よーしッ、始めッぜェ」
スバル「勝てばエミリアたんからの祝福、負ければ姉様からの洗礼が待っているだろう」
オットー「後者は考えたくありませんね」
ガーフィール「スタート、だッ!!」
スバル「ふんぬぅっ!!あぁっ!!」
オットー「い、あぁぁっ!!!」
グググググッッ
エミリア「わ、結構いい勝負してる!?」
ラム「正直バルスが瞬殺されるものかと思っていました」
ベアトリス「スバルもこの半年以上鍛えてきたのよ…以前とはちょっとは違うかしら」
ロズワール「更にオットー君はここ1週間仕事が多かったから、体力も万全じゃあ無いだろうからね~ぇえ」
ラム「ちょうどいいハンデになってる、と言ったところですか」
ガーフィール「どっちも頑張れやァ!」
オットー「ナツキさん、やっぱり強くなってますねぇ…!聖域で殴り合った頃より!」
スバル「へっ!あんときゃ、お前は暴れすぎて森をメチャクチャにしたっけなぁ!」
オットー「いや僕そこまではやってないですけどねぇ!?」
グイッ!!
スバル「ぐあっ!やべぇ!ツッコミ入れる程にオットー力が高まんのか!?」
オットー「変なこと言ってるとこのまま僕が勝ちますよ!?」
スバル「わ、真面目にやべぇなおい!くっそおぉぉ!!」
ベアトリス「スバル、もっと気張るかしら!」
ペトラ「頑張ってスバル!」
エミリア「スバル頑張って!オットーくんも頑張って!」
ラム「負けた方が最弱よ」
スバル「ぬぐうぅ~…なんか色々と複雑な声援だ!!」
スバル「だがやる気は増して来たぜぇ!!」
グイッ!!
オットー「わ!まだ来ますか、でもそれでこそ男ですナツキさん!」
スバル「必殺、カイザーダイナミックゴッドハンドぉ!!!」
オットー「大層な名前の割りに特に変わんねぇ!!」
ガーフィール「かっけェ…」
『…噛ませて』
オットー「ん?」
『噛ませて』
ぷ~ん
オットー「わ、虫!?ちょっ…」
スバル「オラアぁぁっ!!!!」
ダアアァンッ!!
オットー「そんなあぁぁっ!?」
ロズワール「勝負ありだぁーねっ」
スバル「しゃあぁ、勝ったー!!」
エミリア「やったわね!」
オットー「納得いかない!絶妙なタイミングで虫さえ来なければぁ!」
ラム「運も実力の内よ。おとなしく敗北を認めなさい」
オットー「ぐうぅ…!」
スバル「まあ落ち込むなオットー。あれがなけりゃぶっちゃけ俺が負けていた。今回は俺が運良かっただけだな」
オットー「次は負けませんからねぇ!」
スバル「はっはっはっ!!」
ラム「バルス、運良く勝てただけで調子乗った顔するのはやめなさい。あんなもので能天気に勝ったと言えるとは幸せものね」
スバル「さっき運も実力の内て…」
オットー「…よく考えたら僕、立場的に騎士でも戦闘員でも無いんだから負けても問題ないのでは?」
『エミリアVSラム』
エミリア「次は私達ね!」
ラム「えぇ。ラムはか弱いので自信はありませんが…」
ガーフィール「よッく言うぜェ…」
フレデリカ「あなたがか弱いなら私もか弱い女の子ですわね」
ラム「ハッ!」
ラム「…腕相撲の間くらいなら、ある程度の力は出せるので御安心を」
エミリア「わかったわ、私もすごーく頑張っちゃう」
スバル「すごーく応援してるよ、エミリアたん!」
エミリア「もう、真似しないでよ。スバルのあんぽんたん」
スバル「あんぽんたんってきょうび聞かねぇな…」
ガーフィール「エミリア様ァ強えェぞ、ラム」
ラム「分かってるわよ。だから私だけを応援なさいガーフ」
ガーフィール「何様目線だよォ」
フレデリカ「それでは両者とも準備はよろしいですか?」
エミリア「うん!」
ラム「問題ないわ」
フレデリカ「始めっ!」
ビシイッ!!
エミリア「んん~~~っ!!」
ラム「…くっ…!!」
グググッ!
エミリア「やっぱり、ラムは強い…!けど」
エミリア「私だって負けないんだから!」
グンッ!!
ラム「うぅっ!?」
ベアトリス「エミリアの方が優勢なのよ」
スバル「ああ。だが勝負はまだ分からねぇ」
ガーフィール「ラムはまだまだやれッぜ!!」
ロズワール「…」
ラム「…ふー…」
ラム(ロズワール様の前で…)
ラム「情けない姿は見せないわ!」
グオォッ!!
エミリア「きゃっ!?」
フレデリカ「ラムが巻き返しましたわ!」
ペトラ「どっちも凄い…」
オットー「凄いですね。ラムさんの視線があの人に瞬間、力が…」
ガーフィール「ハハッ!俺だァ、俺様ッの激励がラムに届いたんだぜッ!!」
オットー「はいもう、そういうことでいいですよ」
訂正
×あの人に瞬間
○あの人に向いた瞬間
エミリア「う~~~っ!」
エミリア「まだまだ頑張る!!」
ラム「くうぅぅ…っ!!」
グググググッッ!!!
スバル「行けー!行けー!エっミリっアたっ」
ラム「うあっ!!」
ガクンっ!
スバル「おいラム危ねぇぞ!」
ベアトリス「スバルはどっちの味方なのかしら」
スバル「くっ…心はエミリアたんへの味方250%だけど、仲間がピンチになる姿を見たらつい反射的に…!」
ラム「ごちゃごちゃうるさいバルスね、あんたから心配されるほど落ちぶれてないわ!それよりオットーにすら正攻法で勝てない自分を心配なさい!」
スバル「姉様は心配せずとも大丈夫そうだな。なら心置きなく…」
スバル「頑張れ!エミリア!EMT!」
ガーフィール「行けえェ!ラムー!!」
ラム「はあああっ!!」
エミリア「えーいっ!!」
ダアンッ!!
ラム「…はあ…」
エミリア「…やった!」
スバル「エミリアたんの勝利だ!」
ガーフィール「ラムぅっ!」
エミリア「楽しかったわ、またラムとやりたい」
ラム「ふ…今日はもう無理ですよ…」
フレデリカ「ラムも頑張りましたわ。お疲れ様です」
『ガーフィールVSフレデリカ』
ガーフィール「さて、やろッかよォ、姉貴」
フレデリカ「ガーフとの力比べだなんて久しぶりだわ」
ガーフィール「ハッ、やり方は違ったがなァ」
スバル「ちなみに過去の戦績の方は?」
ガーフィール「姉貴にャア一回も勝てなかった」
エミリア「凄いフレデリカ!」
フレデリカ「あくまで以前の話です。今は昔みたいに勝てる自信はありませんわ」
ペトラ「応援してます、フレデリカお姉様!」
スバル「よし!俺とオットーで応援ダンスを踊るぜ、ガーフィール!」
オットー「応援はしますがダンスまではしないですよ!」
ラム「…雑談はそろそろいいかしら?さっさと済ませるわよ」
フレデリカ「急かさないの、ラム」
ガーフィール「準備は万端だ」
ラム「はい、始め」
グッッ!!
ガーフィール「ッらアアァッ!!」
フレデリカ「う…っ!」
フレデリカ(以前のガーフとは比べ物にならない…なんて力…!)
グググググッッ!!!
フレデリカ「本当に、強くなりましたわね、ガーフ…」
ガーフィール「ハッ!姉貴ッこそ相変わらず強ェじゃねぇかよォッ!!」
フレデリカ「はい?」
ガーフィール「身体がメチャクチャでかくなっただけァあるなッ!腕力も油断したらやべェぐらい…」
フレデリカ「…今、なんと?」
ガーフィール「アァン?だから身体がメチャクチャでかく…」
ブォンッ!!!
ビタァッ!!
ガーフィール「うお!?ッぶね、急に負けたッかと思ったじゃねェかよォ!」
フレデリカ「女性に対し失礼な発言をするんじゃありませんわ!ガーフ!!」
ガーフィール「ちょっ、ちょっと口が滑っただけだろッがよォ!!」
グンッ!!
フレデリカ「それがいけないと、言っているんです!そもそもあなた今の自分の立場を分かって居ますの!?」
グンッ!!!
ガーフィール「んなもン、エミリア様の盾だぁッ!!」
フレデリカ「ならもっとそれらしくなさい!!」
スバル「姉弟喧嘩が始まっちゃったんですが…幼馴染のラムさん」
エミリア「大丈夫なの?」
ラム「大丈夫です、仲が良い証拠ですよ」
フレデリカ「公の場でさっきの様な失礼な発言を行った時、印象が悪くなるのはあなた一人だけでなく陣営全体なんですわよ!!」
ガーフィール「わーッタ!わかった!俺が悪かった!」
ガーフィール「気を付けるッよオォッ!!」
ビタンッ!!!
ラム「…勝負あり」
ガーフィール「はあ…勝ったぜェ…」
フレデリカ「たまにはこういうのもいいですわね」
ガーフィール「…ラム、俺の勝利をもっと讃えてくれても良いッンだぜ」
ラム「そうね。さすがガーフよ、あなたなら勝てると思っていたわ…」
ラム「姉弟喧嘩は惨敗だったけどね」
ガーフィール「余計なこと言わなくていッンだよォ!!!」
『ベアトリスVSペトラ』
ペトラ「ん~~っ!」
ベアトリス「こ、この小娘、なかなかやりやがるかしらっ!」
スバル「平和な光景だなぁ」
エミリア「ふふふ。すごーく可愛らしいわね」
ラム「幼女使いの騎士の名に恥じぬ光景ね、バルス」
スバル「その呼び方はやめて姉様。マジで」
ベアトリス「スバル、ちょっとベティーと手を繋ぐのよ!」
スバル「ん、どしたの?ペトラと手ぇ繋ぐだけじゃ足りない?」
ペトラ「じゃあ私の左腕も繋ぐ?ベアトリスちゃん」
ベアトリス「そういう意味じゃないかしら!」
ベアトリス「手を繋いでバルスからちょっとでもマナを分けてもらうのよ!そうすればもう少し力を出せるかしら!!」
スバル「いや試合中にそれはダメだよベア子。ズルだよ」
ペトラ「えーいっ!」
ベアトリス「ふぎゃ~、かしら!」
べたんっ!
ペトラ「勝ったー!」
ベアトリス「ぐぬぬ~、もっかいやるのよ!」
ペトラ「後でね」
スバル「ふ…ベア子も大きくなったなぁ」
エミリア「も~、スバルったらおじさん臭いんだから」ニコニコ
スバル「どゆこと!?」
予選終了
準決勝
スバルVSエミリア
ガーフィールVSペトラ
ミスです
ベアトリスがスバルを「バルス」と呼んでいるとこがありました
『スバルVSエミリア』
スバル「さて、エミリアたん…いくら君がEMTでも今は真剣勝負。本気でやろうぜ!」
エミリア「うん、私も全力全開でやっちゃうんだから!」
スバル「いや、全力全開はちょっと俺の腕がヤバイかも…」
ベアトリス「カッコ悪いのよ」
オットー「そんな弱気な発言して恥ずかしく無いんですかねぇ」
ガーフィール「男なら堂々と受け入れたらどうだッ大将」
ラム「まったく、騎士様が笑わせてくれるわね」
スバル「後ろからの言葉に耳が痛い」
グッ!
ベアトリス「それじゃあ、始めるかしら!」
スバル「いくぜ、ふんっ!があぁっ!!」
エミリア「…」
ピタッ
スバル「んんんっ!!?」
エミリア「…」
スバル(え、何これビクともしないんだけど)
ピタッ
スバル(エミリアたん強いのは知ってたけどここまでの差があんの!?)
エミリア「?」
スバル(そして何そのキョトンとした顔!?いや可愛いけど!なんかちょっと悔しい!)
エミリア「…スバル?もう始めてもいいのよ?」
スバル「いや、もう俺は始めてるんですけどねぇ!?エミリアたぁん!?」
エミリア「え、あっ!ごめんなさい!」
スバル「逃げも隠れも誤魔化しもしない!来い、エミリア…」
エミリア「よいしょっ!」
ダアァァァンッ!!!
スバル「たああぁぁぁんっ!!?」
エミリア「勝った!」
スバル「瞬殺…今更だが自分が情けねぇぜ…」
エミリア「スバル、手は大丈夫?」
スバル「大丈夫大丈夫!むしろエミリアたんに手を叩き付けられるなら光栄よ!」
エミリア「もう、またそうやって茶化して」
ラム「ちなみにバルス、勝負時間は20秒よ」
スバル「なんでわざわざ俺のだけ数えてるのかな姉様?おちょくるため?」
ラム「いえ、むしろ褒めているわバルス。予想より20倍長く持っていたもの」
スバル「1秒で負ける予想だったの!?」
オットー「まあ正直僕もそう思ってました」
スバル「んなっ!?」
ガーフィール「安心しろ大将、俺ァ5秒は持つと思っていた」
スバル「どっちにしろほぼ瞬殺!!」
ベアトリス「…まあエミリアの天然が無ければ1秒だったかしら…」
スバル「…うん…」
エミリア「またしようね、スバル!」
スバル「うん…次はもっと頑張る…」
『ガーフィールVSペトラ』
ペトラ「よろしくお願いします!」
ガーフィール「おオよ」
エミリア「ペトラ~!」
スバル「ペトラ!お前ならやれる!」
オットー「頑張ってペトラちゃーん」
ガーフィール(…皆の応援はペトラ行ってんな、ま、そりゃそうか。まだ小さいガキだし…)
ラム「さあ、始めなさい」
ペトラ「やーっ!」
グッ
ガーフィール(女のガキ相手にはどうすんのがいいんだ?なんか勝つのも大人げない気がすっぞ。わざと負けた方がいいのか?)
ペトラ「ん~!強い~!」
ラム「…ガーフ、あんたの考えてることは分かるわ」ボソッ
ガーフィール「!」
ラム「甘さは捨てなさい」
フレデリカ「わざと負けたりする方が失礼ですわよ、ペトラは本気でやってます。ガーフも答えてあげなさい」ボソッ
スバル「…ガーフィール!!」
ガーフィール「…ふん、ま、そッだよな」
ペトラ「え~いっ!」
ガーフィール(本気でやってるやつにわざと負けるなんざ相手をバカにしてるのと同じだ。…勝ってやらぁ!)
グッ
ペトラ「やーっ!えーい!」
ガーフィール「…」
スバル「…ん?ガーフィール、なんか本気出すぜ的な顔さっきしてたけど特に変わってなくね?」
ガーフィール「るっせェな!加減が難ッしいンだよ!!あんま力入れて怪我でもさせたらヤベェだろが!!」
オットー「乱暴な口調で言ってることは優しい…」
ペトラ「うぅぅ…っ!!」
ガーフィール「おら、よっ!」
ベタンッ!
ラム「終わりよ」
ガーフィール「ふゥッ」
ペトラ「わーん、負けちゃった!」
スバル「頑張ったぞペトラ!」
フレデリカ「えぇ、よくやりましたわ」
エミリア「お疲れ様」
ガーフィール「…ま、その年のガキにしちゃア、なかなかだったぜ…」
ペトラ「えへへ、ありがとうございます、皆」
決勝戦
エミリアVSガーフィール
ロズワール「最後に残ったのは、エミリア様とガーフィールだーぁねっ」
ラム「えぇ。まあ最後にこの二人が残るのは初めから分かっていたことですが」
スバル「一番大事なのは誰が強いかじゃなくて皆で楽しむことだからいいんだよ」
『エミリアVSガーフィール』
エミリア「頑張りましょうね、ガーフィール!」
ガーフィール「ハッ、加減ァしねェぜ?エミリア様よォ!!」
スバル「さあさあ、いよいよ最後だ!みんな盛り上がって行こう!!」
ペトラ「わー!」
ベアトリス「わーっ、かしら」
オットー「小さい女の子に囲まれてナツキさんが一番盛り上がってますねぇ」
ラム「幼女使い…」ボソッ
スバル「聞こえてるよ!?姉様っ!!」
フレデリカ「頑張ってくださいね、ガーフ」
ガーフィール「おオ、今日一番腕ッがなるぜ」
スバル「エミリアたん、ガーフィールはマジで強いからな!」
エミリア「うん、大丈夫。私負けないから!」
ラム「もしエミリア様に傷をつけたらガーフを叱りつけておきますので」
エミリア「もう、そんなことしなくていいわよ」
ガーフィール「俺にも声援送ってくれや、ラム…」
ラム「勝ったら褒美にラムの肩叩き権を贈呈するわ」
ガーフィール「あんがとよ!」
スバル「それでいいんだ」
スバル「…さて、準備OK!?」
エミリア「ん、おーけー!」
ガーフィール「いつでもやれるぜェ」
スバル「よし、スタートだあっ!!」
ビシイイィッ!!!
ガーフィール「ッラアアアァァァッッッ!!!」
エミリア「よいしょおっ!!」
ラム「エミリア様の掛け声は気が抜けるけれど、本気のガーフィールと張り合っている…さすがね」
スバル「あぁ、こりゃもうヤベェな…互角の力がぶつかり合いマナが共鳴してヤバイことが起きるかもしれん。こいつぁそれ程の接戦だぜ…」
ベアトリス「訳わかってて言ってんのかしら、スバル」
スバル「すまん実はわかってない」
オットー「わかってないのかよ!!」
グググググッッッ!!!
エミリア「うんしょーっ!!」
ガーフィール「どらアアァッしゃああァァァッッ!!!」
スバル「エミリアたんの掛け声のせいで緊迫感薄れてるけど、これ凄い戦いなんだよな?」
ロズワール「もちろんだーぁとも。ここまで高レベルの接戦が出来る者は王国内でも数少ない」
フレデリカ「格の違いを感じますわ…」
エミリア「よっこいしょー!!」
ガーフィール「負けッかよオォッ!!!」
ミシッ
ミシッミシッ!!
スバル「なるほど………ん?ミシッ?」
ペトラ「なんの音?」
ミシミシッ!ベキッ!
オットー「…!いけません、あの二人を止めてください!!」
スバル「え?」
ラム「エミリア様!ガーフ!それ以上は…!」
ベアトリス「…もう、手遅れなのよ…」
スバル「……あぁぁっ!!?」
バキ、バキッ!メキィッ!!
エミリア「あ…」
ピタッ
ガーフィール「やべ」
ピタッ
ラム「………」
スバル「テーブルが破壊されちゃったあぁっ!!?」
エミリア「ごめんなさい、肘に力を入れすぎて…」
ガーフィール「悪ィ、夢中になりすぎた」
オットー「えぇ…どうするんですかそのテーブル…」
スバル「買い替えか修理だろ……」
ベアトリス「この勝負は引き分けかしら」
エミリア「ごめんなさい」
ガーフィール「すまん」
ラム「はあっ………」
七話目 おしまい
あと三話くらいで終了予定ですが
残りは書き溜めてから一話ずつ投下していきます
【八話目】
聖域の事件解決から10ヵ月が過ぎた…
ペトラ「スバル!いつまで寝てるのだらしない!」
スバル「だって今日すげぇ寒い…大丈夫、もう起きるから…」
ペトラ「まったくもう!あとでラム姉様にもどやされたらいいよスバルは!」
スバル「てか様付け無くなってる…」
ペトラ「だらしない人に敬称なんか付けません!」
スバル「厳しいなぁ…」
ペトラ「さて、フレデリカ姉様のとこに行かないと!」
スバル「…最近ペトラの俺への当たりが強い気がするんだけど。反抗期かな…」
ベアトリス「スバルのだらしない姿を頻繁に見てれば言いたくもなるかしら」
スバル「…身長も伸びてきてるし、仕事や口調もテキパキするようになって…ペトラも成長してんだなぁ」
スバル「娘を持つ親父の気分だぜ」
ベアトリス「何か言ってるのよ」
ラム「あら起きたのね。もう少し起きるのが遅ければ私もバルスをボコボコに出来たのに」
スバル「何なの?姉様は俺を言葉で叩くのが趣味なの?」
ラム「日課ではあるわね」
スバル「涼しい顔して何言ってんだ」
ラム「それはそうと、朝からとある問題が起きているのよ。バルスの力が必要だわ」
スバル「え?俺そんな特別な力とか無いよ?オットーの方が色々できる…」
ラム「オットーはダメよ。メィリィの事だもの」
スバル「あぁ…メィリィか。ならオットーはダメだな。あいつメィリィから『弱そうな人』とか呼ばれてるもんな」
ラム「バルスの騎士としての力を発揮するときが来たわ。ワガママ言うメィリィに言うこと聞かせて来なさい」
スバル「仕方ねぇ。頼られちゃあ、この騎士ナツキ・スバルも見過ごせないな!」
ラム「そんなに張り切って…やっぱり幼女使いの騎士だったのねバルス」
スバル「て、おい待てコラ!!」
『座敷牢』
スバル「…で、メィリィは何をワガママ言ってるわけ?」
ラム「今朝、様子を見に行った時の事よ…」
メィリィ『今あるお人形だけじゃ飽きちゃったわあ。他にもっと面白いものちょうだぁい』
メィリィ『くれなきゃ嫌いなお野菜食べてあげないんだからあ!』
ラム「とか何とか生意気な事を…」
スバル「殺し屋だから最初は警戒してたけど、あいつも子供っぽくて可愛いとこあんだよなぁ……」
ラム「そういう甘いところが本当にバルスね」
スバル「本当にバルスってなに?」
ラム「着くわよ」
スバル「俺が開ける、ちょっと待ってろラム」
コンッコンッコンッ
コンッコンッコンッ
コンッコンッコンッコンッコンッコンッコンッ
スバル「OKだな」
ラム「何?今の」
スバル「俺が3ノックを二回やったら、7ノックするようメィリィに教えたんだ」
ラム「意味のわからない事を教えるのね」
スバル「よっ、おはようメィリィ!」
メィリィ「おはよう、お兄さぁん。今日は何を持って来てくれたのかしらあ?」
スバル「すまんまだ何も持って来てないんだ。その前に話が…」
メィリィ「なら知らなぁい」
スバル「メィリィさん、せめてお話だけでも聞いてください」
メィリィ「つまんないからやあ」
ラム「聞きなさいメィリィ。このバルスこそがあなたの新しい玩具よ」
スバル「おいラムてめぇ、俺をどうしたいんだよ」
メィリィ「いらなあい」
スバル「いらなあいって何かちょっと複雑!?」
ラム「まあ確かに私もいらないけれど」
スバル「なに?なんか俺、今日特に扱い酷くね?」
ラム「朝ダラダラと起きた癖によくそんな偉そうにしていられるわね。その図太すぎる神経がラムは怖いわ」
スバル「それ言われたら何も言えねぇ…」
メィリィ「クスクス」
スバル「お…!」
メィリィ「そうねえ、二人が私の前で今みたいに面白いとこ見せ続けてくれたらいいわあ」
ラム「却下」
スバル「即答だな!」
ーーーーーーーーー
スバル「…という訳だ」
エミリア「メィリィが最後笑ってくれて良かったわね」
スバル「うん、まあそうなんだけど本題はそこじゃなくてねエミリアたん」
スバル「なんとかメィリィの機嫌をよくしなきゃならない…頼りになりそうなペトラもフレデリカも仕事だし」
スバル「我等が武闘派内政官オットーも仕事がたくさんだ。最初は呼ぼうと思ったがさすがに可哀想だからやめておいた」
ベアトリス「私達だけで何とかしなきゃダメかしら」
ガーフィール「そいつア、また難儀だなァ…」
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
『座敷牢』
メィリィ「あら、また来たのねえ。今日は賑やかだわあ」
エミリア「こんにちは。メィリィ」
スバル「俺達賑やかし隊がお前を楽しませてやるぜ」
スバル「まずはお前と年の近い遊び相手、ベア子だ!」
ベアトリス「ベティーはお人形遊びに興じるほどお子様ではないかしら。ま、仕方ないから付き合ってやるのよ」
スバル「お前が言っても可愛いだけだな」
ベアトリス「で、ベティーに何をして欲しいのかしら?メィリィ…」
メィリィ「私のお気に入りの人形を勝手に触らないでえ!お嬢ちゃんにこの子達は上手く扱えないわあ!」
ベアトリス「か、可愛いげのない奴なのよ!」
スバル「おい、メィリィ…人と一緒に遊ぶことも大事なんだぞ?」
メィリィ「ならその髪の毛触らせてちょうだい、楽しそうだわあ」
ベアトリス「ちょっ、ベティーの髪をグチャグチャにするんじゃないかしらっ!」
スバル「ははは」
ベアトリス「微笑ましいもの見るような顔するんじゃないのよ!」
ガーフィール「しゃ、次は俺だナァ」
メィリィ「牙のお兄さん。何それ?」
ガーフィール「ちょっとした小せェ机と椅子だがな。ちょい前、暇潰しに作ってたもンだがァ、お前にくれてやってもいい」
スバル「色付けは俺とベア子で行った」
ベアトリス「感謝するのよ」
メィリィ「わあ凄い!」
スバル「ちなみに安全面もまずはオットーに使わせて試した結果大丈夫だったから問題ねぇ」
ガーフィール「今この場に居ねえのにオットー兄ィのツッコミが聞こえた気がしたぜ」
メィリィ「ありがとねえ」
エミリア「じゃあ、この机で私とお絵描きしましょメィリィ!最近、絵のお勉強もしているの」
メィリィ「いいわよぉ、私は魔獣ちゃん描こうかしらあ」
スバル「エミリアたん、何を描くの?」
エミリア「見てからのお楽しみ」
メィリィ「描けたわよぉ」
ガーフィール「なかなか上手ェじゃねぇかよォ」
スバル「あ、これあれだ。始めて俺が戦ったあの魔獣…シャマクさん大活躍したとこの」
ベアトリス「どんだけシャマク好きなのよ」
エミリア「私も描けたわ!」
メィリィ「わあ!ヘンテコだけど可愛い魔獣ちゃんね、名前はなんて言うのぉ?」
エミリア「魔獣じゃなくてパトラッシュちゃん描いたんだけど…」
スバル「あー…うん、口の形とかよく特徴捉えてるね!」
エミリア「そう?ありがと」
ベアトリス「苦しいフォローかしら…」
メィリィ「お兄さんは何かないのお?」
スバル「あぁ、待たせたな。俺からはこいつだ」
スバル「いつもより奮発して作った大きめな新作ぬいぐるみ、クジラくん人形だっ!」
メィリィ「わあぁ!丸っこくて可愛いっ!お魚みたいな子ねえ」
スバル「まあ、哺乳類だからどっちかつーと獣…?でも見た目魚っぽいし…」
スバル「まあ魚でいいか。これはデカイ魚だメィリィ」
スバルは元いた世界の生物学を敵に回した
エミリア「このお人形、抱いて寝たら気持ち良さそうね」
スバル「だろ?大きめに作ったからな。実演してやろう、こういう風にこのクジラくんを抱き付きながら寝転がって…」
メィリィ「本当ね、これ抱き付いたら気持ちいいわあ」
スバル「待って、俺がクジラくん抱き付いてる時に一緒に来ないでメィリィ。これ絵面的にヤバイ」
エミリア「仲良しの兄妹みたいで微笑ましいわよ?」
スバル「いやでも…」
ガチャッ
ラム「…」
ベアトリス「あ」
エミリア「ラム…」
ガーフィール「なんッてタイミングで…」
ラム「…」
スバル「…あ、いや、姉様。違うんだこれは…」
ラム「はあー………」
スバル「溜め息つきながら冷たい目ぇ向けるのやめてくれる!?」
メィリィ「やっぱり二人は面白いわあ」
八話目 おしまい
【九話目】
オットー「…あれは僕が夜、残った仕事をしていた後の事です…」
ラム「なに?残業代の請求でもしたいの?ラムに言われても困るわ」
オットー「違いますよ!その日は僕が自主的に夜中にもやってただけですし!」
ガーフィール「真面目だなァ、オットー兄ィ」
スバル「いつまでも居るつもりは無いとか言いながら、まったくこの照れ屋さんめ…でもあんまり遅くまで仕事すんのは良くねえぞ」
オットー「だって、この陣営でこういう仕事がマトモにできるの僕くらいでしょう?今までどうしてたんですか」
スバル「仕事いっぱい頼んでるのは本当にごめんなさい」
ガーフィール「それに関しちゃア、面目ねェ…」
オットー「まあ別にいいんですけどね」
ラム「オットーが居なければ陣営がマトモに回らないのは事実ね。バルスやガーフよりもよっぽど組織に貢献しているわ」
スバル「言い返せないのが痛い…」
ガーフィール「ぐヌヌ」
ラム「彼はあなた達と違って頭も良いし有能……」
ラム「唯一の欠点はオットーがオットーだと言うことくらいかしら」
オットー「珍しく持ち上げてくれてると思ったらあっ!わかってましたけどねぇ!!」
スバル「…で、始めの話の続きをどうぞ」
オットー「そうでした。夜、仕事が終わりトイレから出たあと部屋へ戻ろうとした時のことです」
ーーーーーーー
オットー『はー…疲れたけど、あそこまでやれば明日はゆっくり出来る』
『…てる』
オットー『…ん?』
『あ…てる』
オットー『女子トイレの方から微かに声が…?』
『あいしてる』
ーーーーーーーーーーー
オットー「…と、何か声が聞こえたんです。それも何度も…」
スバル「はあっっっ!!?」ガタッ
オットー「あんな声、うちの女性陣では聞いた覚えがありません……つまり…」
ガーフィール「幽霊…ッて、事かァ?」
ラム「気味が悪いわね」
スバル「え…!?…はあっ!!?」
ラム「どうしたのバルス、そんなにオバケが怖いの?情けないわね」
オットー「なんかめちゃくちゃ動揺してますね、幽霊苦手でしたらすみません…」
スバル「幽霊ってか……まあ俺の知ってる奴だったらガチの幽霊なんだけど。本当にそいつなら笑いごとじゃねぇぞ………いや1周回って笑えるけど」
ガーフィール「幽霊と知り合いなのか大将?」
ラム「妄想力、ここに極れりね」
スバル「もう好きに言って!!」
スバル(いやまさか嫉妬の魔女が現れたなんて事は……理由が分からねえし。だいたい本当だったとしたら何で女子トイレなんだよふざけんなよ」
オットー「ナツキさん、よく分かりませんが最後の方から声に出てますよ」
スバル「…今夜、俺がもう一度確かめてみるか…」
ガーフィール「オ、幽霊退治か?面白そッだなア!!」
ラム「バルス、ラムも行くわ」
スバル「いや、何かあったら危ないから…」
ラム「男だけで女子トイレに入るつもりなの?あなた達が社会的に死なないためにラムが配慮しているのよ、わかりなさい」
スバル「あ…確かにそうです、はい」
オットー「まずは他の女性陣にも聞いて情報を集めてみましょうか」
ーーーーーーーー
エミリア「トイレにオバケ?んーん、見たこと無いけど」
スバル「そっかぁ。実はオットーが昨夜、女子トイレから変な声を聞いたみたいで」
オットー「ええ。何か聞いたことのない小さな声が…」
エミリア「え?オットーくんトイレ間違えちゃったの?」
オットー「そういう事じゃなくてですねえ!?」
エミリア「私も初めて屋敷に来たとき、実は一回間違えちゃったの。ついうっかりね。うふふ」
ラム「エミリア様、屋敷外ではそういう間違いは絶対にやらないでくださいね。トイレを間違える王様とか言われたら洒落にならないので」
スバル「本当もうやめてね?今初めて聞いてビックリしたよ」
エミリア「そんなに心配しなくてもわかってますっ」
ガーフィール「悪ィ。実は俺も一回間違えた」
オットー「流れで一緒に明かさなくていいですからそんな話!」
ベアトリス「…私もそんな声は聞いた覚えが無いかしら」
スバル「んー…ならペトラとフレデリカにも聞いてみっか」
ーーーーーーーー
フレデリカ「すみません…その様なものは見たことも聞いたこともありませんわ」
フレデリカ「トイレを間違えたガーフになら会ったことはありますが」
ガーフィール「その話はいいだろ」
ペトラ「ごめんね、スバル様、オットーさん。私も知りません」
スバル「女性陣はみんな知らないか…ちなみに聞き忘れてたけど姉様は?」
ラム「知ってたら言うわよ。そもそも遭遇したら、その場で生意気なオバケとやらを吹き飛ばしてるわ」
スバル「姉様つえぇ…」
ペトラ「今朝もそこのトイレの掃除をしてましたけど、特に変わったものはありませんでした」
オットー「んー…昨日だけたまたま聞こえたのか、夜だけに出るのか…」
ラム「もしくはオットーの妄言か、どれかね」
オットー「せめて『聞き間違い』とか言ってくれませんかねえ!?」
夜 トイレ前廊下
ラム「真夜中に女子トイレの前でたむろする男達…」
オットー「やめてくださいその言い方」
ガーフィール「本当に来たのッかよォ、ラム」
ラム「私が居なくなる事は貴方達の行為を弁護する者が居なくなるということよ。社会的に死にたいなら帰るけど」
スバル「いえ居てくださいお願いします。誰かに見られたら是非弁護を」
ラム「仕方ないわね」
スバル「さて、エミリアたんは勉強中…ベア子はお寝んねでペトラも就寝中だ」
オットー「今のところトイレの中から声は聞こえません」
ガーフィール「いざとなッたら俺に任せなァ」
オットー「寝てる子達を起こさないようなるべく静かに行きましょう」
スバル「…三人はいったん待機しててくれ、俺が先に行ってみる。いざとなりゃガーフィールはオットーとラムを頼んだ」
ガーフィール「おオ?」
オットー「あれ、なんかやけに凄く慎重ですね」
ラム「…待ちなさい、バルス。危険よ」
スバル「ラム…?どうした?」
ラム「一人で女子トイレに入れば、やらしいバルスの理性が外れ何をやらかすか分からないわ」
スバル「お前は俺を何だと思ってんの!?」
オットー「ナツキさん静かに!」
ガーフィール「いきなり何言ッてんだよ…」
ラム「震えは止まったわね、行きなさい」
スバル「……おう」
スバル(ラムには俺が半分ビビってる事がバレてたか…)
スバル(俺の緊張を解くためにわざわざラムの奴……ったく。ビビんな俺、この目でしっかり確かめてやらぁ)
ザッ
ザッ
ザッ
スバル「ただの勘違いなら別にいい。だが、もし居るなら出てこいよ…嫉妬の魔女」ボソッ
スバル「まあ本当にこんな場所に出て来られても困るけど…」
ボトッ!!!
スバル「ぎゃあああああああああああっっっ!!!」
オットー「ナツキさんっ!?」
ガーフィール「大将の声だ、今ッ行くぜ!!」
ラム「バルスっ!!」
ザッザッザッザッザッ!!
スバル「あ…ああ、あああっ!!!」
ラム「バルス、落ち着きなさい!」
オットー「何があったんですか!?」
ガーフィール「なにか出たッてェのか?幽霊だろうが俺がぶっ潰して…」
スバル「あたま、頭…」
ラム「頭?」
スバル「頭に、ムカデが、落ちてきたああぁっ!!!」
ラム「…は?」
ガーフィール「ムカデだァ?」
カサカサカサ!
オットー「うわ!本当だ、居る!」
スバル「マジでビビった、もうこの世の終わりかと…まだ心臓バクバク言ってやがるぜ…」
ガーフィール「あァ…まあ分かるぜ大将。俺も聖域に居た頃、寝てた布団にムカデが入り込んでたことあってビビったからなア。ありゃ怖かッた」
オットー「とりあえず、ナツキさんが無事だったのは良かったです…ただ」
ラム「…」
オットー「ラムさんがものすっごく冷たい視線向けてますよ」
スバル「う…」
スバル「仕方ないじゃん、本当に恐かったんだからさあ!ラムだって実際に経験したら分かる!」
ラム「…」ゲシッ!ゲシッ!!
スバル「ちょっと痛いっ!無言で蹴らないで!本当に痛いっ!」
オットー「まあ騒ぎすぎたナツキさんが悪いですよ。それだけラムさんも心配してたって事ですから…」
ラム「黙りなさい、口の中にその帽子突っ込むわよ」
オットー「なんで僕まで怒られたんだろう…」
ラム「なるほど分かったわ、オットーが昨夜聞いた声はムカデの声だったのよ。あなたの頭の上に落ちたいくらい愛していたのよ。良かったわねバルス」
スバル「ムカデから愛されたって嬉しくないんですけど!?せめて控えめに現れて!?」
オットー「まあまあ、ラムさんもその辺で…」
オットー「…ん?ムカデの声?」
ガーフィール「どうしたァ?オットー兄ィ」
スバル「おい、まさか本当にムカデの声とかじゃ無いよね?」
オットー「いえ安心してください、それは違います」
オットー「しまったなぁ、僕としたことが…暗闇から変な声が聞こえた恐怖で冷静な思考が出来ていなかった」
ラム「何か思い付いたのね?」
オットー「他の女性方は聞いたこと無くて、僕にだけ聞こえた声…このトイレの位置、その下には…」
ラム「…なるほど。そういえばこのトイレの窓のすぐ下には、竜舎があるわね」
スバル「…!まさか!?」
ガーフィール「どういうこッたよォ?」
ラム「つまりね…」
オットー「とりあえず下に行って確認してみましょう。それで違ったら本当の幽霊疑惑が高まりますが」
スバル「それだけは避けてえな」
竜舎
フルフー『おや坊っちゃん。こんな時間にどうしたんで?』
オットー「昨夜…この竜舎に、『あいしてる』とか言ってる地竜いませんでしたか?フルフー」
フルフー『ええ、居ましたよ。彼女、パトラッシュさん』
パトラッシュ「…」
フルフー『その隣にいる雄の地竜がね』
地竜♂「…」
オットー「あぁ…あの子ですか」
フルフー『どうやら彼、パトラッシュさんに惚れた様で…それで愛を伝えようとしていたみたいですが、ことごとく振られてしまったんです』
オットー「はあ…そういう経緯かあ……」
フルフー『もう夜も遅いです。坊っちゃんもそろそろ休まれてくださいな』
オットー「そうですねえ、じゃあ。ありがとうフルフー」
スバル「…どうだった?オットー」
オットー「はい、そこの地竜くんがパトラッシュちゃんを口説こうとしてたみたいですね」
スバル「まあ、うちのパトラッシュは女子力高くて姉御肌な乙女だからな。惚れられたって不思議じゃねぇ」
ガーフィール「確かにいい女だぜ、パトラッシュはよォ。俺も分かる」
パトラッシュ「…」
スバル「でもあの雄地竜もなかなかイケメンだと思うんだがなぁ…」
オットー「まあ僕らが口を挟むことでは無いですよ」
ラム「結局大した事は無かったって訳ね。夜更しする程でもなかったわ」
スバル「まあ、そう言うなよ。不安が無くなるのはいいことだ」
オットー「わざわざありがとうございました、ラムさん」
ラム「私への正しい接し方が分かってきたじゃないのオットー。なら、この後もするべきことは分かるわよね?」
オットー「感謝の上に更に何をしろと!?」
ラム「ハッ!」
ガーフィール「そろそろ帰ろうぜ。あんま遅くまで起きてると姉貴もウッセェからよォ…」
ラム「そうね」
オットー「じゃ、地竜の皆さん。夜遅くに失礼しました」
スバル「みんな悪かったな。パトラッシュもおやすみ」
パトラッシュ「クアァ」
ザッザッザッ…
ラム「…バルス」
スバル「ん?どうしたラム」
ラム「今なら誰も聞いてないわ、話しなさい」
ラム「何故あんなに怯えていたの?」
スバル「え?」
ラム「ただオバケが怖いだけの怖がり方では無かったわ。…何にあんな怯えていたの?」
スバル「姉様は…よく見てるな」
ラム「ラムを甘く見ないでちょうだい」
スバル「…悪い。本当に誰にも話せないことなんだ」
スバル「けど、まあ今回はただの俺の勘違いだっただけだし!?何事も無く解決したんだからそれでOK…じゃあダメ?」
ラム「バカね…」
ラム「弱くて泣き虫で臆病で、しょうもなくて一人じゃ何もできないただのバルスが………何でもかんでも一人で抱え込むもんじゃないわよ」
スバル「はは、姉様にしちゃ分かりやすい気遣いだな」
ラム「本当の事をいっただけよ」
スバル「…ありがとうな」
ラム「ふん」
九話目 おしまい
次回、明日の投稿で完結の予定です
【十話目】
ラム「…」
ラム「今夜も来たわよ……レム」
レム「…」
ラム「…」
屋敷の一室で、いまだに眠り続ける少女…
声を掛けても勿論、返事が返ってくることはない
レム「…」
ラム「…今日も、色々なことがあったわ」
ーーーーーーーーー
スバル「ぬおおぉっ!!」
ダッダッダッ!
ベアトリス「ゴールかしら!」
スバル「ぶはあっ!」
ズザザッ
エミリア「スバルもすごーく頑張ってるわね」
ラム「…エミリア様、何故お弁当を四人分持ってきているのですか?バルスとベアトリス様への分の筈では…」
エミリア「うん、ついでだから皆で食べようと思って。ラムも一緒に食べましょ?」
ラム「まあ構いませんが」
スバル「はあ、はあ……疲れた…」
ベアトリス「先月よりもまた少し、記録は良くなってるみたいかしら」
スバル「そうか…そりゃ良かった。タオルありがとなベア子」
ザッザッザッ!
エミリア「お疲れ様スバル、はいお水」
スバル「今日のエミリアたんはまた一層輝いてるな…EMM(エミリアたんマジ女神)…」
エミリア「もう、またおかしなこと言ってる」クスクス
スバル「俺なりの最大級の感謝の気持ちだよ」
ラム「バルス、受け取りなさい」
ブンッ!
スバル「ぶわっ!?お前…タオルの渡し方乱暴過ぎない?放り投げんなよ」
ラム「タオル一枚じゃ足りないと思ったから私からもくれてやったのよ。まずは感謝なさい」
スバル「くれたのは嬉しいけどさあ…もうちょい優しく出来ないのかね」
エミリア「もう、ラムもあまりスバルに意地悪しないの。程々に、ね?」
ベアトリス「程々にならいいのね…」
ラム「ご安心くださいエミリア様。バルスはああいう厳しいやり方に喜びを感じる男なので」
スバル「勝手に人をドMみたいに言わないでくれる!?」
ラム「ハッ!」
エミリア「二人がすごーく仲良しなのはわかったけど、そろそろお昼にしましょ?」
スバル「ちょっと待ってエミリアたん」
ラム「勝手に仲良し認定しないでくれますか?」
ベアトリス「相変わらずな奴等なのよ」
ーーーーーーーーー
ラム「…本当に、エミリア様はどっか抜けていて困ったものだわ」
ラム「帰ったら、帰ったで、ガーフとフレデリカが喧嘩…いえ、一方的にガーフが怒鳴られていたわね。ペトラも混じってたわ」
ラム「更にそこがオットーの仕事部屋の前だったから、三人とも揃って怒鳴られて…」
ラム「ああ、きっとあなたはオットーを知らないわよね。まぁそういう名前の男が新しく増えたのよ」
ラム「…で、エミリア様はその光景を見て困った顔をしながら平和そうに笑っていたわ」
レム「…」
ラム「…エミリア様は、抜けているけれど、強くなられた」
ラム「ベアトリス様も心を開くようになった」
ラム「ガーフとフレデリカも、ちゃんと話せるようになって…」
レム「…」
ラム「………」
ラム「ついさっきまで、バルスもここに居たわ。真剣な顔でじっと見つめて、あなたの手まで握って、喋りかけて…」
ラム「本当にバカな男よ」
レム「…」
ラム「…なんて、ラムも人の事は言えないわね。触れても、話し掛けても、何の返事もないことは…分かっているのに」
ラム「………らしくないわね」
レム「…」
ラム「もう、私も寝ましょう…」
立ち上がり、自室へ戻る準備をする
扉へ向かい、部屋から出る前に彼女へもう一度振り向き
レム「…」
ラム「…明日もまた来るわ。レム」
おしまい
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