【ポケモン】セレナ「クリスマスイブに...1人か」 (8)

彼女にとって21歳の冬。
12月24日クリスマスイブ...雪景色の商店街で仲睦まじく歩く母娘を遠目で見つめ、セレナは涙を流していた。
自分には共にクリスマスの喜びを分かち合う人は居ない。...彼がここにいればと夜空に輝く星に願いを乗せる。

セレナ「...あっ!」

サトシ「セレナ?セレナじゃないか。久しぶり」

星が想い人と出会わせてくれたことを喜び、セレナはサトシに寄り添う。
それに戸惑ったサトシはセレナから避けて距離を置く。11年の間に2人の間に壁が作られているようだった。

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サトシ「なんだよ...。俺、急いでるんだ。用があるなら手短に済ませてくれないか?」

セレナ「用...って...!せっかく私達会えたのに...!」

サトシ「そりゃ...友達に会えたのは嬉しいけどさ」

『友達』の単語に反応し、セレナはサトシの頬を引っ叩いた。
突然の事にサトシは左手で頬を抑え、驚きを隠せないでいた。

セレナ「私達は恋人でしょ!?友達じゃない!!運命の赤い糸で繋がった...恋人よ!」

サトシ「セレナ。...ごめん!」

セレナ「分かってくれたらいいのよサトシ///」

サトシ「違う!...俺、もう結婚してるんだ」

セレナ「...は?」

セレナ「相手は誰よ!?」

サトシ「昔旅してた...ってセレナに話しても分からないか」

セレナ「なっ...!」

サトシ「じゃあな。俺、妻と子にプレゼント買って帰らないといけないからさ!」

セレナは自分の隣を通り過ぎていくサトシを引き留めることはしなかった。
本物のサトシはこんな事はしない。これはニセモノだ。...ニセモノが消えれば本物が帰ってくる。
恐ろしい事を考え、セレナはバッグからハサミを取り出し、サトシに向かって駆け出した。

ドスッ!

サトシ「...セレナ?...っ!...こ、これは...血...?」

セレナ「消えてッ!偽者ッ!」

抱き締めるようにハサミをサトシに深く刺した事を確認し、セレナは目の前の偽者の命の蝋燭が溶けていくのを実感した。
ハサミをサトシから引き抜くと彼は糸の切れた操り人形みたいに力なく地面に倒れこんだ。

サトシ「...はぁ...っ...!どうして...っ!」

セレナ「さよなら、偽者。さーて!早く本物のサトシを迎えるパーティの準備をしなくちゃ///」

朦朧とする意識の中でサトシは妻子の事を思っていた。

サトシ「...(帰れそうに...ない...ごめん...)」

10年後...

初恋の夢から覚め、株で儲けたお金を使って始めた映画会社を経営しているセレナは忙しそうではあるが満足した表情で仕事に励んでいた。
今日は会社に来訪予定のトレーナーとの面会が入っていた。

セレナ(ポカロンの一番にはなれなかったけど...今の私は映画会社の社長で誰よりも輝く存在!)」

トレーナーが待っている応接室のドアを開けると落ち着いた表情の少年が椅子から立ち上がり、軽くお辞儀をした。

セレナ「よく来てくれたわね!新たなポケモンチャンピオンさん!...それで私に用ってなに?」

サトル「初めましてセレナさん。僕の名前はサトル。...ずっと子供の頃からあなたに会いたくて会いたくて...仕方なかったです」

セレナ「...もしかして私のファン!?て、照れちゃうな~」

サトル「...違います。僕はこれをあなたに返したくてカントーからこんな倒産寸前のこの映画会社に来たんです」

セレナ「からかいに来たの!?...それで返したいものって?」

サトルは黙ったままテーブルに置かれた箱の中からハサミを取り出す。
どこにでも売られてる安物だが、セレナはそれを見た瞬間、背筋が凍った。...彼女がサトシを刺したのと同じものだからだ。
その一瞬を見逃さずサトルはセレナの懐に潜り、胸を狙いハサミで一突きした。
復讐の攻撃をセレナは喰らうことになった。

セレナ「がはっ...」

サトル「父上の...仇だっ!」

復讐を終えたサトルは父親の墓に語りかけていた。

サトル「父上の命を奪った悪女は俺が成敗しました。...だから安心して眠っててください」

タケシ「...終わったようだね」

サトル「師匠」

タケシ「警察の知り合いに頼んで事件を処理しておいた。君の痕跡が出る事は100%ない」

サトル「..」

タケシ「もう終わったんだ。復讐は終わっていいんだ」

サトル「...はい」

タケシ「今日は奢りだ!回らない寿司でも行くか」

サトル「...師匠」

タケシ「ん?」

サトル「割り勘にしましょう」

タケシ「...あぁ!」

ー完ー

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