【ゆるゆり】結衣「そういう空気の作り方」 (61)


(結衣の家)


テレビ「・・・このように、首を左右に振る運動で」

テレビ「血行が良くなり、肩凝りの予防にもなるのです」


京子「へー・・・」

結衣「本当に効果あるのかそれ」



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京子「こんな感じ?」フリフリ

結衣「早速、やってるし・・・。どう京子?」

京子「うーん、けっこう効くかも」

結衣「本当に?」



京子「結衣もやってみ?」

結衣「じゃまぁ・・・。こうでいいの?」フリフリ

京子「ダメだなー、全然なってない」

結衣「何でだよ」



京子「こうだよ、こう」フリフリ

結衣「一体何が違うんだ」

京子「結衣もやってみて?」

結衣「あ?ああ・・・こうか?」フリフリ



京子「違うなー、もっとこうえぐるように」フリフリ

結衣「意味がわからんぞ・・・」フリフリ

京子「もー、それじゃダメだって」ピタ

結衣「もう、じゃ一体どう」ピタ


結衣(あれ?なんか思った以上に顔が近・・・)



京子「・・・」

結衣「・・・」

チュ

京子「・・・」

結衣「・・・」



京子「・・・」

結衣「・・・」


結衣(・・・え?今何で?)

結衣(今、お互いめっちゃ自然に・・・)

結衣(キス・・・したよな?)



京子「・・・」

結衣「・・・」


結衣(京子も・・・。びっくりしてる?)

結衣(そうだよな。私もびっくりしてるし)

結衣(えっ、今何でそうなった?)



京子「・・・」

結衣「・・・」


結衣(と、とりあえず・・・。何か言った方がいいのか?)

結衣(けど、何を言ったらいいのかわからん)

結衣(謝る・・・?いや、それも何か変だよな)



京子「・・・」スク、スタスタ…

結衣「・・・」


結衣(京子が、台所に行った・・・)

結衣(・・・というか、逃げたなありゃ)

結衣(た、確かに、どうしたらいいかわからないし。まず、この雰囲気に耐えられん)


ジャー…


結衣「・・・」


結衣(京子が台所に行ってくれたお陰で、多少間が持った・・・)

結衣(・・・けど、帰って来たときどうする?)

結衣(改めて、さっきの話振る?いや、なんかさっきよりハードルが上がった気がするぞ?)



京子「・・・」スタスタ…スワリ

結衣「・・・」


結衣(京子が、普通に帰ってきた・・・)

結衣(やっぱ、さっきの事気にしてるよな)

結衣(どうする?さっきの事に触れるべきか?いや・・・)



京子「・・・あ、そんでさ結衣」

結衣「な、なに?」

京子「今日、見たい番組あるから7時になったらチャンネル変えていい?」

結衣「あ、う、うんいいよ」


結衣(まるっきり、関係ない話を振ってきた)

結衣(これは、さっきの話はしたくないって事か・・・?)

結衣(そ、そうだよな。さっきの事は触れない方がいいよな、お互いに)



テレビ「このように、芸術家ダリは・・・」


京子「・・・」

結衣「・・・」


結衣(あれから、30分・・・)

結衣(京子は、普通にテレビを見てる。いつも通りの光景だ。・・・けど)

結衣(違う・・・。何かが違うんだ)



テレビ「現在でも、多くの人々が影響を受け・・・」


京子「・・・」

結衣「・・・」


結衣(な、何だ、このめちゃめちゃ気まずい雰囲気)

結衣(身動きすら、し辛い・・・)

結衣(きょ、京子に声がかけられん・・・。幼馴染なのにこんなのは初めてだ)



京子「・・・さーて、テレビも見終わったし今日は帰るかー」

結衣「ん?あ、ああ、今日は早いな」


京子「だって、宿題溜まっちゃってるからねー」

京子「たまには、早めに帰ってやっとかないと」

結衣「ああ、そうか。そうだよな・・・」



京子「そんじゃー、また明日なー結衣ー」

結衣「ああ、気をつけてなー」

バタン

結衣「・・・」


結衣(逃げたよなあれ)



結衣(あー、そりゃそうだよなー)

結衣(私が同じ立場でもそうする気がする)

結衣(今まで一緒にいて、こんな気まずくなった事なんてない・・・)



結衣(はぁ、明日京子と顔合わせづらいったらない・・・)

結衣(どんな顔して会えばいいんだ、京子に)

結衣(まさか、思いっきり避けられたり?まぁ流石にそれはないだろうけど)



結衣(はー・・・。しばらくは気まずいんだろうな・・・)

結衣(たぶん京子、当分家には来ないだろうし)

結衣(何でこうなった?あー、明日が来るのが憂鬱だ・・・)


―――

――



(次の日)



結衣「ふぅ・・・」


京子「おーっす結衣ー」



結衣「あ、きょ、京子?」

京子「ん?どしたの結衣?目の下にクマなんか作っちゃって」

結衣「あ?う、うん、い、いや別に・・・」

京子「まーたゲームやって夜更かししてたのー?」



京子「夜更かしはダメだよー、結衣ー」

結衣「お前が言うな」

京子「お肌に悪いよお肌にー」

結衣「お前だっていつもマンガ読んで夜更かしして、たまに徹夜して・・・」



京子「だから、私はその分学校で寝て・・・って、おー、おはよう、あかりにちなつちゃーん」

ちなつ「おはようございます」

あかり「おはよー、京子ちゃんに結衣ちゃん」

結衣(京子、いつもと様子が変わってないな・・・良かった。何だかホッとした・・・)













(放課後、結衣の家)


テレビ「何でやー、それ違うやろー!」


京子「あはは・・・」

結衣(そして、何事もなかったかのように普通に私ん家に来てるし・・・)

結衣(昨日私がさんざん悩んだアレは何だったんだ)



京子「ん?どうしたの結衣?」

結衣「ん?あ、いや別に」

京子「そう。あはは・・・ほら見て結衣、おもしろ・・・」

結衣(まぁ、何にしても良かった・・・。私が気にしすぎてたんだ)



テレビ「だから、ちゃうやろー?ホンマにお前は・・・」


京子「あははは・・・」

結衣(平和な、いつもの光景だ・・・)

結衣(二度と戻って来ないんじゃないかと思った。良かった・・・)



テレビ「ええかげんにせえよー?大体・・・」


京子「はー、面白・・・」

結衣(・・・しかし、まだほんの少しピリピリしたものが漂ってる気がする)

結衣(一歩間違えば、この空気は一瞬にしてまた真冬のシベリアみたくなる)

結衣(何だか、そんな気配を感じる・・・)












(一週間後)


テレビ「このように、現代人の食生活とは大きく異なり・・・」


京子「へー、昔の人って1日2食だったんだねー」

結衣(もう、すっかり元に戻ったな)

結衣(平和な日常の中に、実は一瞬で全てが無になる可能性が潜んでいるという事を経験した)

結衣(一見のどかな草原に、実はあちこち地雷が埋まってるようなもんだな・・・)



結衣(あんな雰囲気味わうのは、もう二度とゴメンだ)

結衣(何でだ?何であの時ああなった?うーん、よくわからん・・・)

結衣(そういう空気になったから、としか言いようがないな)



結衣(うーん・・・。二度とあんな事が起こらないよう)

結衣(どうしてああなったのか、ちゃんと原因を調べないと)

結衣(原因がわかったなら、今度はそういう空気になるのを防げるし。・・・よし)



テレビ「また、肉食は禁止されていて、代わりにお米を大量に・・・」


京子「へー、今の人と全然食べてるものが違ったんだなー」

結衣(まず・・・。この前は、お互い顔を見つめ合ったからああなったのか?)

結衣(じゃあ、ちょっと試しに)



結衣「京子」

京子「ん?」

結衣「私の顔、じっと見てみて?」

京子「へ?うん、いいよ」



結衣「・・・」ジ…

京子「・・・」ジ…

結衣「京子、テレくさいとかない?」

京子「ううん?何も?」



結衣「私も、全くなんにも・・・。そりゃそうだよな。私たち、幼馴染だもんな」

京子「うん。長い付き合いだしねー。結衣の顔なんか見慣れちゃってるし。もういい?」

結衣「ああ、ありがとな京子」

京子「なーに、いいって事よー」



テレビ「食生活が現在のように変わったのは、戦後から・・・」


京子「へー・・・」

結衣(まぁ、そうだよな。確かに京子の顔なんて見慣れてるしな)

結衣(顔を見合わせても、全く何にもない)



結衣(じゃあ、距離か?お互いの距離が近すぎたのか?あの時)

結衣(距離が近すぎると、ああいう空気になるのか?)

結衣(じゃ、試しに・・・)



結衣「よいしょっと」ズイ

京子「ん?どしたの結衣。そんなくっついてきて」

結衣「ん?いや別に。恥ずかしい?」

京子「ううん?」



結衣「そうだよな。こうしてても見事に何にも感じないな」

京子「まーねー。ちっちゃい頃一緒の布団入って寝てたりもしてたからねー」

結衣「何だか、自分にでもくっついてるみたいだ」

京子「まー、一緒に過ごした時間が長いからね。そりゃそうなるさー」



結衣(・・・うーん、距離は関係ないのか?)

結衣(もっと密着すればどうかな?)

結衣(よしじゃ、試しに・・・)



結衣「・・・」ノシ

京子「ん?どしたのさ結衣?もたれかかってきて」

結衣「ううん。こうした方がラクかなと思って。恥ずかしい?」

京子「全然?じゃ私もー」ノシ



結衣「・・・うーん、本当の本当に、ただラクなだけだな」

京子「そだねー。お互いの体重で支えあってるからねー」

結衣「どんな相手でも、ちょっとは何か感じるはずなのにな」

京子「私と結衣の仲だからでしょー。ちっちゃい頃からずーっと一緒だしさ」



結衣(お互い体をもたせかけあっても、本当、全く何も感じん・・・)

結衣(まさか、こんなに何ともないなんて。・・・まぁ、幼馴染だから当然か)

結衣(・・・それじゃ、もっと密着して)



結衣「・・・」コテ

京子「ん?どしたの結衣。頭ももたせかけてきて」

結衣「うん?あ、こっちの方がもっと楽かと思って。嫌?」

京子「ううん?じゃ、私もっと」コテ



結衣「はー、こりゃ首がラクだなー・・・」

京子「んー、だねー・・・」

結衣「もたれかかるグッズとしていいかもな京子」

京子「結衣もだよー」



結衣(こんなに体を密着させているのに、照れくさいとかそんなの全然ないな)

結衣(逆に、何か不安になってきた。こんなに何も感じなくて大丈夫か?)

結衣(じゃ、こういうのは・・・)



結衣「・・・」ギュ

京子「ん?どしたのさ結衣。手なんか握ってきて」

結衣「いや、あまりに何も感じなくて逆に不安になって。京子、照れくさい?」

京子「ぜーんぜん?こんなんで照れるわけないじゃん」


結衣「うーん、本当にそうだな。大丈夫か?私たち」

京子「こんなモンじゃないのー?ちっちゃい頃手つないだりしてたしさー」

結衣「きっと、お互い慣れちゃってるんだな」

京子「そうなんだろうねー」



結衣(こんだけ体寄せて、手まで握っても全くなんともない)

結衣(まぁつまり、ああいう空気になる事はめったにないって事だ)

結衣(ふぅ、何だか安心した・・・)













テレビ「今日は、冬の空に輝く星座について・・・」


京子「・・・」

結衣(京子と体もたせかけあって手を握ったまま、30分・・・)

結衣(何だか、ガマン大会みたくなってきた)



テレビ「冬空に輝く、冬の大三角は・・・」


京子「・・・」

結衣(お互い、何も言わずに結構時間がたった・・・)

結衣(何か、ちょっと緊迫したみたいな雰囲気になってないか?)

結衣(何となく、下手に言葉を発せないっていうか・・・)



テレビ「青く輝くプロキン、シリウス、そして・・・」


京子「・・・」

結衣(京子・・・。時々チラッとこっち見てため息なんかついたりして)

結衣(そして、何だか京子の顔が少しづつ)

結衣(こっちに向いて来てるような・・・?)



テレビ「そのすぐ傍らには、オリオンが寄り添うように・・・」


京子「・・・」

結衣(京子が、とうとう完全にこっちを見つめた・・・)

結衣(目がうるんでて・・・。何だかいつもの京子じゃないみたいだ)

結衣(そして、何だこの空気・・・前も何か・・・ん?待てよ?そ、そうか、これは!この空気は!)



京子「・・・ねぇ、結」

結衣「わかったぞ!」


京子「へ?わ、わかった?何が?」

結衣「そう、わかったんだ!」

結衣「そういう空気の作り方!」



京子「そ、そういう空気?」

結衣「そう!いい、まず」


結衣「私たちって、幼馴染だろ?」

京子「う、うん」

結衣「だから、こうやって」



結衣「見つめあっても、何ともない」ジ…

京子「うん」


結衣「こうやって、近づいても何ともない」ズイ

京子「うん」



結衣「そして体を寄せ合って」ノシ

京子「うん」


結衣「頭をもたせかけて」コテ

京子「うん」


結衣「手を握っても、何ともない」ギュ

京子「うん」



結衣「けどな、いい?このまましばらくじっとして・・・」

京子「うん」


結衣「それから、ゆっくり顔を見合わせればー・・・?」

京子「せればー・・・?」


結衣「・・・」

京子「・・・」





チュ





終わり




結衣「な・・・な?こんな風に・・・あれ?」

京子「ふふっ・・・」


以上です
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