【P5x俺ガイル】八幡「やはり俺の友達は9股するなんてまちがっている」完 (265)

立つかな?

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【P5x俺ガイル】八幡「やはり俺の友達は9股するなんてまちがっている」
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【P5x俺ガイル】八幡「やはり俺の友達は9股するなんてまちがっている」続
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ペルソナ5とやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。のクロスです。
P5は何周も、俺ガイルはアニメのみの補完で原作未読です
完結お付き合いください

~11月30日~

ー朝 都内拘置所ー


鴨志田「以上が僕の罪です…」

葉山弁護士「わかった。やはり何度取り直しても同じか………なあ、卓?」

鴨志田「はい…」

葉山弁護士「お前がしっかり反省してるのはよくわかった。だがそれじゃだめだ」

鴨志田「ダメ…というと?」

葉山弁護士「もっと精神鑑定の時に事件について否定しろと言ってる」

鴨志田「…ですが…僕は…」

葉山弁護士「確かにお前の今の状態なら裁判の際にそれなりに心象良く見えるだろう」

葉山弁護士「何度も言うがそれでは連中の思い通りに事が運びすぎる」

鴨志田「連中というのは…?」

葉山弁護士「決まってる。怪盗団だ」

葉山弁護士「ま、精神暴走事件の被害認定がそろそろ下りると見て間違いないしな。今後はさらに精神鑑定で否定しろ。反論は許さん」

鴨志田「ですが!」

葉山弁護士「卓、大丈夫だ。お前が起こした不祥事は最終的に精神暴走事件によるものだと結論付けさせてやるから心配するな」

鴨志田「………」

葉山弁護士「今まで何度も精神鑑定は入った。だが、”精暴”と診断されなければお前に対する社会的なダメージは軽減されないんだよ」

葉山弁護士「な?そうしろ。ちゃんと次回の精神鑑定を申請しておくからな」

鴨志田「ですが!ですが僕は悪意を持って事件を起こしてしまったんです!それは僕の罪なんです!」

葉山弁護士「いや違う。その悪意は怪盗団に植え付けられたものに違いない。だからお前は何も悪くないんだよ」

葉山弁護士「お前が”やった事”じゃない。お前が”やらされた事”なんだ。大きな違いだ」

葉山弁護士「かつてのお前を知る人間なら、こんな事件を起こすはずはないと知ってる。そいつらの証言も少しずつ集まってる」

葉山弁護士「お前は精神暴走事件の被害者であり、その被害者によりいたいけな学生たちに被害が出てしまった。そういう悲しい事件なんだよ」

鴨志田「………」

葉山弁護士「いいか?もう一度言うぞ?お前は加害者じゃない。被害者なんだ。精神暴走事件に巻き込まれ、怪盗団によって自分が引き起こした事件だと思い込まされているだけなんだよ」

葉山弁護士「だから自分を卑下する事はないし、罪だ罰だとのたまう必要もないんだ」

葉山弁護士「最初から罪など存在しないんだからな」

鴨志田「………」

葉山弁護士「さて、そろそろ帰るか。また来る。いいか?ちゃんと鑑定で拒否しておけ。ああそうだ…」

鴨志田「…?」

葉山弁護士「記憶のない時期があると何度も繰り返し言え。いいな?絶対だぞ?お前は何回それを忘れた?わざとか?とにかく言うだけでいい。言い続けろ。じゃあまたな」

ガチャ…バタン


鴨志田「…先輩……あなたという人は…」

ー葉山弁護士の車内ー

トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル…

葉山弁護士「もしもし?朝早くすみません。また1人診てもらいたい人間がいまして」

葉山弁護士「……ええ、そうです鴨志田です。出来れば今日中にお願いします。はい」

葉山弁護士「どうにか精暴で行きたいので…ええ、そのように。え?待ってください!夏にもすでに………わかりました。ではお願いいたします」

プツッ…

葉山弁護士「クソ医者がふざけやがって…倍を出せだと!?ふざけるな!!」ガンッ!!

葉山弁護士「………」

葉山弁護士(クソ医者共め…弁護士からすれば精神暴走に収めるほど楽な道筋はない)

葉山弁護士(それをわかってるからこその手間賃。俺が医者なら俺でもそうする…良い金儲けだからな)

葉山弁護士(だが精暴と診断するだけの手間賃にしては高すぎるだろう…それでも医者、それも警察の者か?クソッ!!)

葉山弁護士(大山田がいた時はやつを仲介に楽な流れ作業だったが…今やそうはいかんからな)

葉山弁護士(くそったれの怪盗団め…余計な事ばかりしやがって)

葉山弁護士(大体、先生は何をしてるんだ?あれだけ懐を温めてやっただろうが!!)

葉山弁護士(オクムラフーズの一件で怪盗団人気は鎮火したが…今や他に問題が移っている)

葉山弁護士(怪盗団の恩恵を受けられる職種は限られてるからな。俺も警察で医者やっとくんだったな)

葉山弁護士(いつまで続くんだ……怪盗団ビジネスは…)

葉山弁護士(このままでは犯罪者如きのために俺の懐が痛む日がいつか来るかもしれん)

葉山弁護士(何か手を打たねば…)

ー昼 八幡ベストプレイスー


八幡「もぐもぐ」

蓮「もぐもぐ」

志帆「もぐもぐ」

モルガナ「もぐもぐ」

八幡「ごくっごくっ」

蓮「もぐもぐ」

志帆「プ~リンっ、プ~リンっ」

モルガナ「もぐもぐ」

八幡「ふう……」

蓮「ごちそうさまでした」

志帆「もぐもぐ」

モルガナ「にゃーん」

八幡「お前ほんと猫好きだよな」

蓮「俺が好きなんじゃない。猫が俺を好きなんだ」

モルガナ「!?」

志帆「そっかぁ。いつもぴったりくっついてるもんね?ほんと好きなんだね蓮のこと」

モルガナ「~~~~~っ!!!!!」ジタバタ

八幡「そういやうちも猫飼ってんだよ」

蓮「カマクラだろ?雪ノ下さんが言ってた。けどこないだ見かけなかったな」

志帆「雪ノ下さん?」

蓮「八幡がいる奉仕部の部長なんだ」

志帆「ほーしぶ?」

結衣「あーーーー!!!!ヒッキーいたあぁーーー!!!!」

八幡「なんだようっせーなぁ…」

結衣「あ、れんれんやっはろ~!」

蓮「ゆいゆいやっはろー」

志帆「!?ゆいゆいって…」

結衣「っと~…えっと?れんれんのお友達?」

八幡「おい。何で俺に聞かねえんだよ?」

結衣「だってヒッキーの友達ってれんれんだけしかいないの知ってるし!」

志帆「え?違うよ?」

結衣「え?」

蓮「モルガナ膝に乗るなら爪しまえ」

志帆「私、蓮の隣のクラスの鈴井志帆です」

結衣「あ、えっと…あたし由比ヶ浜結衣です!よろしくね!」

志帆「はい、よろしく」ニコッ

蓮「結衣、志帆は八幡の友達だ。あと俺の友達で、俺の友達の友達だ」

結衣「へっ?」

八幡「マジだぞ」

志帆「マジだね」

結衣「ええぇ~~~~~っ!?」

蓮「だからモルガナ爪が痛いって」

結衣「そんな…そんなぁ!ヒッキーが……そんなぁ!!」

八幡「なんだよお前…驚きすぎだろ悲しくなるわ」

志帆「ほんとに友達いないんだね比企谷くんって」

八幡「うっせーなぁ。ほらみろお前のせいでこんな事言われちまったぞどうしてくれる」

結衣「………その…2人ってその……つっつつつっつ付き合ってるの!?」

八幡「はあ?いや、だから友達だって言ったばっかだろうが」

志帆「付き合ってるっていうと友達付き合いって事ではあるよね」

結衣「えーーーーーっ!?」

蓮「モルガナ、ほんと太もも痛いから爪たてるな」

結衣「2人ってその…いつから?」

八幡「ああ?昨日だな」

志帆「うん。昨日からだね」

結衣「ええぇ…なんで?どうして?どういうアレでコレ?」

八幡「昼休みに蓮に紹介されたんだ文句あるか」

志帆「うんうん」

結衣「…っえーーーーーーーーーっ!?」

八幡「なんかどんどん声高くなってってない?」

志帆「最後には電話かけられるんじゃないかな?」

蓮「いてぇなモルガナいい加減にしろよこの野郎」

結衣「ちょっとれんれん!?マジなの!?」

蓮「ああマジだ」

八幡「おい何だどうした?」

結衣「あたしは!?」

八幡「ん?」

結衣「だからあたしは!?」

八幡「お前は由比ヶ浜結衣」

結衣「そうだけど!そうじゃなくって!」

八幡「じゃないなら何なんだよドッペルさんですか?」

結衣「あたしはその…ヒッキーの……その…」

八幡「何?」

結衣「うぅぅう~~~~………ヒッキーのバカ!きもい!」

八幡「何なんだお前いきなりきもいとか。いつもの事だけど」

志帆「いつもきもいって言われてるの?」

八幡「そうなんだよ。こいつ事あるごとにきもいきもい言いやがる」

志帆「そっかぁ。比企谷くんも大変なんだね」

八幡「ああほんと大変だ。心労認可下りるまである」

結衣「ゆきのんに言いつけてやるから!バカ!」

八幡「好きにしたらいい。だから何?って言われるだけだろうよ」

志帆「部員なのにそんな感じなの?」

八幡「おうそうだぞ。基本的に俺は卑下され罵られる毎日だ」

志帆「それ何の部活なの?罵倒部?」

八幡「鈴井、馬術部みたく言っても全く違うぞ?まあ罵倒の数々を乗りこなしてはいるが」

結衣「だから!あたしは!?」

八幡「お前は由比ヶ浜結衣」

結衣「あーもぉーーー!!!!!」

志帆「ループって怖いね」

八幡「こういう時って壊れたCDみたいに繰り返すーとか例えるよな」

志帆「CDって持ってる?親は持ってるけど私一枚も買ったことない」

八幡「そういや何か買ったような気がするな…何だったっけな?」

志帆「親はね、クラシックならCDよりレコードがいいっていうの。ほら、何か黒い円盤。知ってる?」

八幡「あぁ~あれか。確かにクラシック好きな人はそうらしいな」

志帆「でも音楽聴くためにああいうの買うのって躊躇わないのかなぁ?」

八幡「どうだろな?何でもそうだが趣味に走る人ってのはゴルフもそうだが色々揃えるもんだろ?そういう事じゃね?」

志帆「あ、そっかなるほどね?」

結衣「ちょっと!!シカトしないでよ!!!!」

八幡「何だよシカトなんかしてねぇよ」

志帆「由比ヶ浜さんはCD持ってるの?」

結衣「うぇ!?うん、えっと…あるよ!」

志帆「そうなんだ?好きなアーティストとかいるの?」

結衣「うーんママがZARDって人のファンであたしも好きかなぁ…あ、そういえばゆきのんがオススメしてくれたのは聴いてた」

志帆「そうなんだ?何ていうアーティスト?」

結衣「ドラゴンホース!」

志帆「ケンタウロスみたいな事かな?上半身がドラゴンで下半身が馬なの?そういうアーティスト?」

八幡「それドラゴンフォースじゃね?」

結衣「なんかヘビーメタルっていうんだって!ババババボボボボペポペポペポペポペポペポペポ!!って感じだった」

八幡「なんだその擬音しかない感想は」

志帆「ヘビーメタルって名前は聞いた事あるけどそんな感じなんだ?」

結衣「うん!ソイヤハイヤスチームっていうアルバム貸してくれたの!」

志帆「なんかすごいタイトルだね」

八幡「それソニックファイアストームじゃね?つか何だソイヤハイヤスチームって。くそ熱い祭りの掛け声が押し寄せそうだな」

結衣「なんでヒッキー知ってるの?好きなの?」

八幡「いや、前に雪ノ下が好きだって言ってたからよ」

志帆「そうなんだ?私もちょっと聞いてみたいなぁ」

八幡「気になるのか?」

結衣「うん。映画もそうだけど知らなかったタイトルとかストーリーとかって気にならない?」

八幡「なるな」

結衣「あーうんなるなる!!」

志帆「うんやっぱりそうだよね?」

結衣「てか志帆ちゃんてすごい話やすいね!」

志帆「え?そうかな?」

結衣「うん!またいっぱいお話しようね!」

志帆「うん。そうしようね」ニコッ

結衣「やばい!志帆ちゃん可愛い~!」ギュー

志帆「ちょっ…苦しいよ由比ヶ浜さん」

八幡(やっぱすげぇな由比ヶ浜は…)

蓮「………」

八幡「どした蓮?ずっと黙ってにこにこ見ちゃって」

蓮「いいよな、女の子同士って」

八幡「お前ってそういう趣味?」

蓮「仲良い事は良い事だ」

八幡「ごまかしてるつもりか?」

蓮「あきらめるのか?」

八幡「たまに出るけど何だそれ?何をだ?何を諦めるってんだ?」


ピロリン

ー放課後 奉仕部部室ー


結衣「でね!ヒッキーずっとしほしーにデレデレしてたんだよ!ありえなくない!?」

雪乃「鼻の下伸び谷くん?何か反論はあるかしら?」

八幡「大いにあるぞ。なんだその長ったらしい呼び名は。もっと他になかったのか?」

八幡「つかしほしーって…いつの間にそんなあだ名に」

結衣「しほしーも秀尽から転校してきたんだってね?」

雪ノ下「あらそうだったの?それで雨宮くんを通して知り合えたわけね。まあ彼のような人がいない限りあなたのような珍獣が女子と知り合う機会なんてないでしょうしね」

八幡「誰が珍獣だ誰が」

雪ノ下「あら?あなたの真名ってヒキコモリガエルだったと記憶しているのだけれど?」

八幡「そんな真名じゃ呼び出したマスターの方が可哀想まである。つかその記憶は消去されるべきだ何しろ改ざんがひどい」

結衣「それにしてもれんれんすごい慌ててたね?」

八幡「ああ…あんな蓮は初めて見た」

雪ノ下「どういう事かしら?」

結衣「あのね、ヒッキーたちがお昼食べててね、そこにあたしが登場っ!したんだけどね?話してる途中でれんれんの携帯鳴ってすぐ帰っちゃったの」

雪ノ下「早退したの?」

八幡「そういう事だな。何かあったんだろうな」

結衣「大した事ないといいよね?ヒッキーも心配でしょ?」

八幡「そりゃあな…」

雪ノ下「あら?案外あっさりした回答ね?何か知ってるように見えるのだけれど?」

八幡「まあな」

結衣「えー?そうなの?なになにどういう事?」

八幡「誰にも言えねぇ話だ、諦めろ」

結衣「そっかぁ。れんれんも大変なんだね」

八幡(誰にも言えない隠し事、か…)

~時は少し遡って~

ー昼過ぎ ルブラン店内ー


TV「…ました。この精神鑑定の結果により、鴨志田卓容疑者に精神暴走事件の被害者と一致する部分があると認められた場合、冤罪による無罪での釈放の見通しと……」


蓮「本当だったのか…」

竜司「冗談じゃねえぞクソが!!!」

モルガナ「ほんとだぜ!ありえねえよ!」

杏「こんなのおかしい絶対間違ってる!!」

真「ありえないわ…一体どういう事なの…」

春「これじゃ報われないよ…」

冴「事実よ。事実なの…」

惣次郎「しかしこれはなぁ…あんまりだよな…」

双葉「私はいつかこうなるんじゃないかと思ってた」

祐介「鴨志田が釈放されるなんて事がわかってたというのか?」

杏「あんだけやらかした鴨志田が釈放なんかありえないから!!」

竜司「おうよ!んなもんありえてたまっかよ!!!」

真「お姉ちゃん、何度も聞いて悪いけど…これは確定なの?」

冴「確定ではないわ。ただ精神鑑定の結果が精神暴走事件の被害者と符号する事も多いらしくてね。釈放が濃厚という話よ…」

惣次郎「まさか精神暴走事件の被害者だなんて扱いになっちまうとはなぁ…」

モルガナ「なあフタバ?さっきの話だが。こうなると思ってたってのはどういう意味なんだ?」

双葉「そりゃ簡単だ。”責任転嫁”の一言で済む」

祐介「それはそうだろうが…具体的にはどういうことなんだ?」

双葉「いいか?よーく聞いとけよ?」

双葉「こないだ録音した黒幕の名前が出た音声、覚えてるだろ?」

双葉「あの中でも言ってただろ?これまでの、そしてこれからの精神暴走事件は怪盗団が引き起こしたものにするって」

双葉「実際オクムラ社長の件からそういう世論に切り替わって来てる」

双葉「その中に当然、初期メンバー4人で解決したあの鴨志田事件も入るに決まってる」

双葉「斑目と金城については自ら犯罪に手を染め、そしてその隠蔽をしていたわけだから”精暴”からは除外される」

双葉「斑目も金城も、その目的は金だったからな」

双葉「じゃあ怪盗団がこれまで実際に関わったやつの中で精神暴走事件として見れなくもないものは何だ?」

双葉「そう、鴨志田事件だ。それまで良い教師と思われていた鴨志田による過剰な体罰と暴力」

双葉「マスコミも煽りやすい。怪盗団のせいで教師という人間だけでなく、その生徒までもが被害者になってしまった。とかな?」

双葉「それでもしやと思って調べてわかった事がある」

双葉「警察内部の悪どい医者が、弁護士の依頼で犯罪者を精神暴走事件の被害者に仕立て上げるケースが増えてる」

双葉「”精暴”に見せかけた虚偽の診断書一件についての報酬はそりゃ高額なもんだ。そしてそれが横行し出した具体的な時期はメジエドの前辺りからだ」

双葉「今やすっかり下火になった怪盗団人気だが、その手口の異常性に乗っかった”怪盗団ビジネス”なんて呼ばれてるぞ」

双葉「ま、わかってるのは大体こんなとこだな」

竜司「ふっざけんなよ…どこまで腐ってんだよこの国の大人共はよぉ!!!!」

杏「怪盗団ビジネスって何!?何でそうなっちゃうの!?」

モルガナ「ほんとありえねえぜ」

惣次郎「ちょっと前に流行った怪盗団グッズだってある意味それと同じなんじゃねえのか?」

春「確かに…」

真「やっぱりあの時の私たちって浮かれてたのよ…。グッズなんかが出回る異常性に対して何か手を打つべきだったわ…」

祐介「しかし今さらそれを言っても手遅れだろう?ましてや医者とはいえ警察関係者が犯罪者を金で釈放させている。これはもう異常どころの騒ぎではない」

冴「双葉ちゃん、確証はあるのよね?」

双葉「もちろんだ。私は何のソースもなくこんな事言わない。確証があるから言ってる」

冴「そう…そうよね。あとでそのデータもらえないかしら?」

双葉「それはやめといた方がいいな」

冴「どうして?私だって検察として、いいえ…人として見過ごせないわ!何としても暴かないと!」

双葉「真の姉ちゃん1人じゃ太刀打ちできない。検察にどれほど協力者がいる?どう立ち向かう?相手は警察の闇のさらに奥にあるもんだぞ?」

冴「………」

双葉「”怪盗団ビジネス”なんて呼ばれ方してる時点でもう手遅れだ。1人2人改心させる程度じゃ終わらない。悪どい医者と悪どい弁護士がいる限り横行し続ける。止める術はない」

竜司「そりゃどうしてだよ?何かあんだろ!?」

双葉「忘れたのか?敵はこれまでの、そしてこれからの精神暴走事件を私たちの仕業だとおっかぶせ続ける気なんだぞ?」

双葉「それはつまり、個人でなく団体だ。いや、集合体だ。お前たちがメジエドを相手にする時、嫌というほど実感したんじゃないのか?怪盗団がまともに相手に出来るのは”個人相手”だって」

双葉「そしてこれはほんの一端でしかない。結局、私らはあの黒幕を相手するので手一杯。その間、周りで起きる事はどうにも出来ない。いつまでも続いていく。なぜなら相手はまさに”不正と言う名の行い”そのものだ」

双葉「そこらへんを歩く人を全員止められるか?無理だろ?それと同じ事だ。今、怪盗団に出来る事はあの黒幕を改心させる事。それだけだ」

全員「………」


蓮「だからって黙ってられない」

祐介「ああ、そうだな」

竜司「そうだぜ…このまま黙ってられっかよ!」

モルガナ「やってやろうじゃねえか!」

真「パレスの攻略を急ぎましょう」

春「そうね。少なくともあの黒幕を改心させたらきっと何かが変わるよね?」

杏「そこんとこどうなの?双葉?」

双葉「変わるのは間違いない。何せ”怪盗団ビジネス=認知訶学ビジネス”だ。やつを抑えられれば間違いなく静止する」

惣次郎「大丈夫なのか?そりゃ大元のやつを叩けば下火には出来るだろうが…」

双葉「そうじろうたまには冴えてるな!」

惣次郎「たまにはってどういうこったよ…」

冴「どういう事なの?」

双葉「確かにそうじろうの言う通り、認知訶学を使ったビジネスはその大元が消える事で下火になる。が、精神暴走事件に怪盗団が関与してるのではという疑惑は残る」

竜司「それダメじゃね!?」

双葉「おう!だめだ!」

真「だめだって…じゃあどうすれば…」

双葉「疑惑ってのはそうそう簡単に潰せるもんじゃない。だーかーらー元凶である黒幕を叩くほかない」

双葉「弁護士から医者へ、その医者からやつへと金は流れ続けてる。さて、どうする?どうしたい?」

蓮「そんなもの決まってる」

祐介「そうだな、決まっている。だがどうする?」

竜司「ヤロウをぶっ叩くっきゃねえだろ!?」

真「そうね。今の所、他に手立てがないのも事実だし…とにかくパレス攻略が最優先だわ」

杏「やっちゃう!?」

春「やっちゃおう!」

モルガナ「やっちまおうぜ!」

双葉「そうかやっちゃうか。覚悟決まったんなら私に提案がある」

惣次郎「そりゃどんな案だ?」

双葉「ついに蓮専属ドライバーって仕事しかなかった冴がまともに活躍する時が来たぞ!よろこべ!」

冴「双葉ちゃん…」

真「ちょっと双葉!人のお姉ちゃん何だと思ってるの!?」

蓮「冴さん運転上手いから安心して乗ってられたよ」

モルガナ「ああ、それはワガハイも同感だぞ。いつもウトウト寝ちゃうレベルだ」

竜司「それ、誰も聞いてねえしあんまフォローにもなってねえと思うぜ?」

蓮「ただ車内BGMには驚いた。冴さんはこう見えてヴィジュアル系のゴェゴェした声の音楽が」

冴「その先はちょっと黙ってくれる!?ずっと黙ってくれる!?というかいつ聞いたの!?」

春「冴さんってそうなんだ…」

杏「まあほら…人によって好みってあるからね!ねっ!?」

祐介「ヴィジュアル系とはなんだ?恍惚としたイメージが浮かぶのは気のせいか?」

冴「油断も隙もないわね…」

蓮「あの凛とした冴さんが車内ではBGMに乗せてヘドバンしてると思うと微笑ましくもあり若干怖くもあるが逆にそこが可愛い」

冴「何で知って…じゃなくて!ほんとに黙ってちょうだい!」

竜司「すげえスラスラっと話したな蓮…珍しく」

モルガナ「な?ワガハイの言った通りたまに長台詞あるだろ?」

祐介「なあ、ヘドバンとはなんだ?活動的な響きを感じるが」

真「あなたたち…人のお姉ちゃんを何だと思ってるの…」

双葉「ツッコミ要員!」

真「冗談じゃないわ!ツッコミなら私がいるじゃない!」

杏「え…」

春「真はどちらかというと天然なせいでツッコミってイメージはないよね。というか真の場合ツッコミでなくただの正論が多いから笑いにはならないよね?」

杏「春きっつい…」

真「私って天然だったの…?」シュン…

冴「真も少し黙りなさい」

竜司「なあ…もう話進めねぇ?」

双葉「というわけで冴にはこれを渡しておく」

冴「これは何のデータかしら?」

双葉「リストだ」

真「何のリストなの?」

双葉「不正を働いてるやつらを根こそぎリストアップした」

竜司「やっぱすげぇなお前!」

モルガナ「やるじゃねえかフタバ!」

双葉「だがこれはあくまで報酬のやりとりがあった一部のやつらだ。さすがに報酬を手渡しにしてるやつらまでは探しようがない」

冴「ありがとう双葉ちゃん。早速参考にして手を考えるわ」

双葉「さっきは止めとけって言ったが皆もうやる気だからな。撤回するっ。だが気をつけろよ~?相手はかなりの大物だぞ。”不正そのもの”なんだからな」

杏「ほんと双葉ってすごいよね!よく調べられるよね?」

双葉「条件を設定すれば探し出すのは簡単だ。使途不明金の痕跡があればそこからそいつの銀行データを根こそぎ暴ける。芋づる式で報酬を送金したやつも、さらに別の受け取ったやつも浮き彫りになる」

双葉「どこの誰にいくら送金されたか?なんて私にかかれば数秒だ。ついでに相手の名前も手に入るしな。名義や社名を変えて誤魔化そうが無駄なあがきだ」

竜司「なんかよくわかんねえけどすげえなお前」

双葉「とーにかくそうやって絡まってる糸をほどいて、繋がりがはーっきり見えた名前だけそこに載ってる。有効に使うんだぞっ!」

冴「ええ、もちろんよ。感謝するわ」

蓮「そっちはお願いします、冴さん」

冴「任せて。何が何でも暴いてみせるわ」

蓮「よし、じゃあ俺たちはこれから乗り込もう。パレスへ」

竜司「おうよ!!」

モルガナ「サクッと終わらすぞ!」

ー放課後 奉仕部部室ー


八幡「………」グテー

結衣「………」

雪乃「………」

八幡「………」ポケー

結衣「ねえヒッキー?」

雪乃「比企谷くん?」

八幡「ほぁ?なに?」

結衣「何かあったの?」

雪乃「………」

八幡「これからちょっとな」

雪乃「用事でもあるのかしら?それにしては呆けすぎじゃないかしら呆け谷くん?」

八幡「ふぁあー。まあな~いいだろ今ぐらい」グター

結衣「………」

雪乃「………」

ガラララッ

平塚「入るぞ」

雪乃「ノック先生」

平塚「えっ」

めぐり「お邪魔するよ~」

いろは「失礼しまぁす」

平塚「今日こそは大丈夫なんだろうな?」

雪乃「ええ、今日は大丈夫です」

八幡「………」ボケー

平塚「おい比企谷」

八幡「あへぁー」グテー

平塚「魚のように口開けるな比企谷…やる気をだせ。久しぶりの依頼者を連れて来たんだぞ?」

八幡「へー」グター

雪乃「どうぞ座って。話を聞かせてもらえるかしら?」

結衣「そだね!どぞどぞ!」

ーひらつか説明中ー


平塚「………というわけなのだよ」

いろは「もうほんっとびっくりしちゃって~ぇ。私的には生徒会長やらない感じでぇ」

八幡「こいつ女に嫌われてそうだな~」

いろは「はあ!?」

結衣「ちょ!?」

めぐり「うわぁ」

雪乃「ぷぷっ」

平塚「おい比企谷…そういう事は口に出すもんじゃないぞ…どうした?お前らしくもない」

八幡「え?口に出ちゃってた?」

結衣「うん…思いっきり…」

雪乃「それで?依頼はどういった内容になるのかしら?」

いろは「はぁ…。まあとにかく生徒会長にはなりたくないって事で……」

八幡「こっちが素かぁーさっきのあざとすぎだもんなぁそりゃ女に嫌われるよなぁ~」

いろは「てめっ!?」

めぐり「わぁお」

結衣「ちょちょっとヒッキー!?」

雪乃「ぷふふぅっ!」

平塚「お前はまた…」

八幡「え?もしかしてまた口に出してた?」

いろは「さっきからこの先輩野郎!何な」

ガラララッ

葉山「失礼するよ」

いろは「葉山せんぱぁ~い!こんなとこで会うなんて奇遇ですねっ!」

葉山「何だ。いろはも来てたんだ?」

いろは「はいっ!てゆーか葉山先輩って今日は部活休みにしてませんでしたっけ?」

葉山「ああ、これから用事でね。比企谷、準備いいか?」

八幡「おう。んじゃ行くか」

結衣「え?ヒッキー隼人くんと遊びいくの?ってか依頼は!?どうすんの!?」

雪乃「一体どういうつもりなのかしらサボり谷くん?目の前の依頼者を放ってそこの金髪モンキーと遊びに行くというの?」

いろは「モンキー!?」

八幡「遊びじゃねえけどこいつと用事でな。すまんがこれで帰る」

葉山「悪いね雪ノ下さん。それじゃ」

平塚「ちょっと待ちたまえ。別に友達と遊ぶなとは言わんが奉仕部を投げ出すのは看過出来んな比企谷」

八幡「は?こいつが友達なわけないじゃないっすか。ほんと元々こいつと共通の用事あったんすよ」

葉山「すいません先生。急いでるんで失礼します」

平塚「待て。話は終わってない」

八幡「先生…いやほんとマジで大事な用なんで勘弁してください」

ガラララッ

陽乃「ひっきがっやく~んお待たせ~ってあれ?」

平塚「陽乃…」

雪乃「姉さんまで…?」

平塚「なんだ…お前絡みか?」

陽乃「え?何の話?」

平塚「とぼけるな。今度はこいつらをどうする気だ?」

陽乃「も~うるさいなぁ。比企谷くんに隼人?時間ないよ、急がないと」

葉山「わかってる」

八幡「じゃすんません先生。俺は不参加って事で。もし俺が必要になったら後日聞きますんで。それじゃ」

平塚「仕方ない…わかった。陽乃、くれぐれも頼むぞ?」

陽乃「はいは~い。じゃね雪乃ちゃん」

ガララッ…バタン

結衣「なんか慌ててたね?ゆきのんも聞いてないの?」

雪乃「ええ。ただ…」

結衣「ただ?」

雪乃「姉さんのあの感じ…ただ事ではないわ。比企谷くんまた何か巻き込まれてると思うのだけれど」

結衣「そっかぁー。大したことないといいね?」

いろは「あのぉ…私の話は…?」

めぐり「お腹空いたな~」

平塚「おはぎ食べるか?」

ー陽乃の車内ー


八幡「で、葉山。首尾はどうだ?」

葉山「ばっちりだよ。可能な限り手に入れたから最低限の条件は整ったよ」

八幡「やるな」

葉山「まあね…さすがに自分の親の事だからさ。情報盗み出す手段はいくらでもある」

八幡「そうか。まあそうだよな。でも本当にいいんだな?この車が着く先ではもう退くことは出来んぞ」

葉山「大丈夫。そのあたりの覚悟はとっくに出来てる。そうじゃなきゃ情報を盗むなんて事しないさ」

八幡「それもそうだよな。わりぃ」

陽乃「隼人の覚悟はいいとして、比企谷くんはどうなのかなぁ?」

八幡「え?俺ですか?そりゃもうとっくに」

陽乃「だけど比企谷くん、この件が上手くいけばその時は隼人の家がめちゃくちゃになっちゃうんだよ?」

八幡「はい。それに対する覚悟ももちろん出来てますよ。だから今こうしてるんです」

陽乃「そっか。わかった。じゃこのまま向かうね」

八幡「お願いします」



八幡(蓮………)

~時は遡って!!月29日~

ー夜 とある橋の上ー


八幡「…マジかよ…」

葉山「………」ガクッ

陽乃「まあまあ隼人。落ち込む気持ちはわかるけど…というかあんたがそこまで落ち込むとこ見たの初めてかもね?」

八幡「そりゃそうでしょ…まさか自分の父親が弁護士って立場を利用して犯罪者を釈放させてるなんて…。確かに陽乃さんに情報収集頼みましたけどこんな闇が出るとは…」

葉山「父さん…」ギリッ

陽乃「比企谷くん、これまで釈放されたのはまだいないの。ただ担当案件のほとんどが精神暴走事件の被害者として進行中でその釈放はまだ不確定なんだよ。あくまでそうしようと動いてる事は確定っていうだけでね」

陽乃「でもまぁ、犯罪者の無罪判決が出れば葉山弁護士の格は何段階も跳ね上がるのは間違いないね」

葉山「もうたくさんだ…」

八幡「葉山…大丈夫か?」

葉山「大丈夫なわけねぇだろ…あの精神暴走事件を自分の仕事に利用するような親だぞ!?」

八幡「そうだよな…すまん」

陽乃「で?どうしようと考えてるのかな比企谷くんは?」

八幡「…こうなった以上、事を暴いて然るべきとこに突き出す他ないでしょう」

葉山「くそっ!!」

八幡「落ち着け葉山。頭ん中めちゃくちゃなんだろうけどよ。考える時だけは冷静になれ」

葉山「ふざけんな!他人事だからそんな事が言えるんだよお前は!」

八幡「他人事じゃねえよ」

葉山「お前からしたら他人だろ!?他人の親だろ!?どうなろうが関係ねえって事だろ!?」

八幡「まあな。そりゃ否定しない。だが他人事じゃねえ」

葉山「だったら何だよ!?」

八幡「俺の友達が危ないんだ。だから他人事じゃない」

葉山「…雨宮か…」

八幡「葉山の親父を放置しとくとまた蓮に害が及ぶ。せっかく噂の上書きを終えて、消滅まで後は放置するだけって状況なんだ、だからお前の親父を放っておけない」

葉山「…はっ。自分の友達のためなら人の親がどうなろうが平気って事かよ…」

八幡「そうだ」

葉山「オラァ!!!」ズガッ

八幡「ぶぁっ!?」

陽乃「はい隼人そこまで。こないだ比企谷くんに殴られたよね?で、隼人は今一発返したんだからそれまで。下がりなさい」

葉山「……くそっ!!」

八幡「いってぇ…」

陽乃「比企谷くんも、ちょっとは考えて言ったら?正直すぎだよ」

八幡「俺はもう迷わないって決めたんです。友達以外に容赦しないし、置いた距離を縮める気はない」

葉山「同感だな比企谷。俺だってそうだ。俺だって自分のグループ以外に容赦しない」

陽乃「あーもうめんどくさいなぁ。黙って協力するってだけの事がなんで出来ないわけ?」

八幡「そりゃ俺はこいつの事が嫌いだからですよ」

葉山「俺だって嫌いだ」

陽乃「だーからめんどくさいってんでしょうが。こんないがみ合いしてる場合?比企谷くんらしくないなぁ」

八幡「………」

葉山「………」

葉山「比企谷に言われるまでもなく、俺は俺の事が嫌いだ。何度もお前に嫌いと言い返したが、別にあれは比企谷の事じゃない…俺だって心底自分が嫌いなんだよ」

八幡「………」

陽乃「………」

葉山「俺はこのまま親のマリオネットで、親の言うままに誘導されて生きてくんだろうよ」

葉山「学校では葉山隼人らしくいなくちゃならない。俺は常に作られたイメージの葉山隼人を演じなきゃならない。うんざりするよ」

葉山「やっと出来たあのグループだって、崩壊寸前だったしな。ほんと、誰よりもグループに固執してるくせに自分1人じゃ何も出来やしない。ただのクソ野郎だ」

葉山「でもな、それでもな。やっと出来た居場所だったんだ。それを守るために自分なりに努力したさ。だが結局はお前たちに救われた」

葉山「俺を嫌う人間に助けられるなんてな。みっともないぜ…俺は…。本当にお前が羨ましいよ、比企谷…」

八幡「そんな事ねえよ」

葉山「ああ?」

八幡「お前はぼっちの何たるかをわかってない。お前が羨ましいと言ったのはな、何も背負うものがなかった時の俺だ」

八幡「かつての俺に対して言ったものだ。そうだろ?」

葉山「………」

八幡「今の俺は守りたいものがある。居場所がある。お前と何も変わらねえよ。違うのは意志1つだ」

葉山「…意志…?」

八幡「そうだ。お前だって修学旅行のあの時、それなりに苦悩したと思う。苦しんだと思う。それを結果的には俺と蓮が解決した」

八幡「もしもあの時、お前がただ諦めて投げ出しただけだったなら俺はともかく蓮はああいう行動は取ってなかったぞ」

八幡「少なくとも蓮はお前の本当の気持ちや真意を聞いてから動く事にしたみたいだしな」

八幡「お前の本音の吐露がなければ、あの場で海老名さんにああいったのは俺だけだったと思う」

八幡「そうなれば雪ノ下とは仲違いに近い事が起きてただろうな。あの時、俺のやり方が1人で決めて実行した事なら拒否感を示す、みたいに言ってたしよ」

八幡「だからな、葉山。俺だって苦しんでんだよ。こえぇんだよ。失くしたくねえもんがあんだよ。そういうのがあるのはお前1人じゃねえ」

八幡「俺は蓮という大事な友達を守ってやりたい。葉山、お前は何のためにここにいるんだ?」

葉山「………」

葉山「俺は…俺らしさを守りたい…。居場所だってそうだ…。誰かの操り人形のまま生きていくなんてもう嫌なんだ…」

八幡「じゃあそれでいいだろ?お前がこれから動く理由は自分のため。いいじゃねえか、十分デカい理由だろ」

葉山「そうか…そうだな……」

八幡・葉山「フッ……」


陽乃「青春だねぇ…クッサいねぇ……クサすぎて芳香剤置きたいぐらい鳥肌ぶるぶるでお姉さん感動しちゃったぁ!!」

八幡・葉山「………」

陽乃「俺は守りたい!」キリッ

八幡・葉山「………」

陽乃「失くしたくないんだ!」キリッ

八幡・葉山「………」

陽乃「俺はま」

八幡・葉山「すみませんもう勘弁してください」

葉山「で、どうする?どうすべきだ?」

八幡「そうだな…さっきも言った気がするがこのまま放っておけば確実に蓮を貶める何かを仕掛けるだろうな。そしてそれはしばらく続くだろう」

陽乃「そうだねぇ。せっかく出来たお友達があれこれ言われ続けるのも比企谷くん的にはなしだもんね?」

八幡「もちろんなしです。とはいえどうするか…相手は大人、しかも弁護士だからな…。というか…そもそもどうして蓮を目の敵にする?なぜ蓮だけに執着する?秀尽を中心に確かな因縁はあるが」

葉山「さあ…?流れからすると鴨志田絡みなのは間違いないだろうけど…」

陽乃「たぶん葉山さんは箔を付けたいんだよ」

八幡「そんな単純な理由なんすかね?」

葉山「確かに陽乃さんの言う通りだと思う。父さんは多分、鴨志田が蓮に秀尽で何かされたと思ってるんじゃないかな?」

葉山「そして父さんはあれだけ騒がれた容疑者を冤罪で釈放させれば、やつを救った弁護士としてかなり評価されるな…」

八幡「なるほど…それは確かに”箔”だよな。けど蓮は教師に何かするようなタイプか?」

葉山「違うだろう。何かしたかしてないかまではわからないけどな」

八幡「もしかして…蓮って鴨志田を社会的に確実に葬れる何かを知ってるんじゃないか?その何かは葉山の親父をも引きずり下ろす何かで…」

八幡「それか別の追撃の何かを持ってる。秀尽って場所が場所だけに、怪盗団に鴨志田の非道をリークしたのが蓮とか…?」

八幡(まさかとは思うが…蓮の隠し事ってのは鴨志田絡みか?だったら頷ける。誰にも言えるわけがない。実際ああして蓮は目の敵にされちまってんだから)

八幡(同じ秀尽だった鈴井には何もない所からしても……)

八幡「うーん………なくはないだろうが憶測の域を出ないな。だが蓮に動かれると葉山の親父が困るってのは確実だろう」

陽乃「そうだね。彼にしかわからない決定的な何かがあるのは間違いないと思うよ」

葉山「父さんは警戒してるんだな…雨宮さんを。転校したばかりの学校でいきなり迫害されたんじゃ、普通は鴨志田どころじゃない」

八幡「そうだよな…そういう裏でもないと辻褄が合わないよな…」

陽乃「お姉さんもそう思うなぁ」

八幡「何にしても憶測しか出せそうにありませんよね…ただ鴨志田絡みなのは間違いなさそうだ」

葉山「そうだね」

陽乃「ちなみにだけど、その鴨志田が釈放間近みたいだよ」

八幡「はあ?あんだけ騒がした上にそもそも自首じゃありませんでしたっけ?」

陽乃「うんそう、自首。だけど鴨志田の弁護についたのが葉山弁護士。そしてこれまでの情報をまとめると…?」

葉山「父さんは何としても鴨志田を精神暴走事件の被害者として仕立て上げるつもりなんだ。そうなれば鴨志田は加害者から一転、被害者に…ははっ、よく出来たシナリオだよ。父さんだけが得するように出来てる」

八幡「葉山…」

葉山「………提案があるんだが」

八幡「何だ?」

葉山「父さんの悪事を暴こう」

八幡「どうやってだ?このファイルじゃ噂程度にも信じてもらえねえぞ?」

陽乃「そうだね。私がかき集めた情報に間違いはないけどね。問題はそれを受け取るのが警察だったら…文字通り紙くずにしかならないね」

葉山「わかってる。だが…だが父さんの身の回りから出たものなら証拠としては十分だろ?」

八幡「つまりお前が動かぬ証拠を探すってことか?」

葉山「そうだ。何が何でも見つけ出す」

陽乃「隼人、事を構えるのなら今のうちに言っておかないといけないんだけど」

葉山「はい」

陽乃「雪ノ下家と葉山家、これまで散々良いお付き合いをしてきた。けどそれも終わりになるよ」

葉山「当たり前の事だな…」

陽乃「あんたはそれで良いんだね?と言っても親同士の付き合いでしかないから今ここで何を言っても無駄な事ではあるけどね」

葉山「いや、大丈夫…。そのつもりでやれって事ですよね?」

陽乃「そうだよ。やるからには決して後戻りは出来ない。あんたも色んなもの無くしちゃうよ。それでもいいんだね?」

葉山「いいんだ。俺はやる。俺がやるよ…やってやる!!」

陽乃「だってさ、比企谷くん?」

八幡「わかった」

八幡「ちなみに陽乃さん、情報収集の過程で物的証拠が出たりしました?」

陽乃「それが何度洗っても状況証拠止まりなんだよねぇ…私もね、証拠は必要と思うからこっそり関係者を当たったりもしたんだけど…」

八幡「当たった?誰にですか?」

陽乃「大山田元医局長。その人は元々うちの親の知り合いでね。ところが怪盗団によって改心させられた」

八幡「怪盗団!?つか雪ノ下家まで怪盗団と遠からず関わりあるとは…」

陽乃「まあね。その医局長は自分の部下が優秀すぎるものだから無理やり辞めさせたりしたんだって」

八幡「パワハラみたいなもんすか?へぇ………つかもしかしてその人が葉山の?」

陽乃「そう。葉山弁護士が担当する犯罪者の精神鑑定先を斡旋してたの」

八幡「あ、斡旋すか…てっきりそいつが直接鑑定して葉山の親父を有利にしてたのかと」

陽乃「大病院とはいえ医局長止まりだからね。犯罪者の精神鑑定なんて回って来ないよ。ただ特定の鑑定人に仕事を回す事は出来る」

陽乃「だから大山田は葉山弁護士から仲介料を受け取り、精神暴走事件の被害者と認定させる事が出来る相手を紹介し続けた。鑑定一回につきいくらってね」

陽乃「ところが怪盗団によって改心され、悪事を自ら公にして大山田は辞職へ。その後、鑑定人との繋がりを絶たれた葉山弁護士は功を焦り、直接その鑑定人に連絡を取った」

陽乃「そのせいで私に足を掴まれるとも知らずにね。たぶん明日にも詳細を話し合うんじゃないかな?鴨志田の鑑定についてね」

陽乃「はっきり言って大山田を通し続けてたならここまでの事はわかりっこなかったよ。葉山さんが自ら動いた事でわかった事だからね」

八幡「なるほど。水面の波紋は必ず広がるもんだからな…それで陽乃さんとしても掴みやすい状況だったのか。葉山、お前どう思う?」

葉山「どうもこうもねぇよ…俺の親父、ただの悪人じゃねえか…」

陽乃「その悪人の手であんたは育ててもらったんだから。育ててくれた事には感謝しなきゃね?」

葉山「陽乃さん…そういう笑えない皮肉はやめてくれませんか?いくら陽乃さんでも殴りたくなる」

陽乃「そう?悪かったねごめんごめん」

八幡「とにかく、陽乃さんのおかげで情報は手に入った。あとは行動だな」

陽乃「その行動はどうする気?さっきも言ったけど警察なんかあてにならないよ?」

八幡「そこなんですよねぇ…」

葉山「警察がダメなら検察じゃないか?」

陽乃「あんた検察に知り合いいるわけ?」

葉山「いるわけない」

八幡「ちょっと期待しちゃったじゃねえかよ…。陽乃さんはどうですか?」

陽乃「いなくはないけど…どうかなぁ?さすがに信用出来る検察の人間となると…」

八幡「あ、そっか…検察の人間ならそれでいいかっつーとそうじゃねえか…ちゃんと信用出来る人間じゃねえと…」

葉山「どうする?」

陽乃「どうしようね?」

八幡「どうすっか…?」

八幡「つかさっきの話の大山田って人は訴えられてないんすか?」

陽乃「そこがおかしいんだよね。厄介な個人を辞職させて、我が病院はこいつとは何の関係もありません!っていうだけならわかるんだけど」

陽乃「大山田の場合はね、すぐに身元引受人が現れたの。そしてどっかに消えちゃった。だから私も情報を追いかけきれなかったわけ」

八幡「なるほど…それで状況証拠止まりって事か」

陽乃「ちなみにその身元引受人がね、どうやら政治家らしくて。そのお抱えの弁護団が付いてるから誰も下手に訴訟なんか起こせないんだよ」

八幡「政治家ぁ!?」

葉山「何か…どんどん事が大きくなってないか?」

陽乃「そりゃ大物政治家の1人や2人関わってるでしょ。弁護士からしたら不利な犯罪者を助けるって良いビジネスだもん。医者にとってもね。ついでに警察からすれば、容疑者確保した時点であの精神暴走事件を真面目に扱ってますよってアピールにもなるし」

陽乃「ま、その警察内部の実情は当然、金と利権でズブズブなわけだけど」

八幡「ちょちょちょ…てことは政治家に警察が敵!?マジすか…どこのドラマだよどこの映画だよ…」

陽乃「おやおや?今ごろ気付いたの?」

葉山「さすがにスケールが…」

陽乃「そうだよね。だから今ならまだ間に合うよ」

八幡「何にですか…?」

陽乃「見なかった事で済ませられる」

葉山「………」

陽乃「2人とも、じっくり考えなさい。この件は本当に闇の根が深い問題だから。正直言うと、一介の学生が関わって良い範疇を大きく超えてる」

八幡「はい…」

葉山「そうだな…」

陽乃「ただまぁ、それでも彼は真正面から戦ってるよね。戦ってるからこそ、転校してきた先にまでこんな手が回ってしまう。もちろん、どういう戦いなのかは私たちにも誰にもわからないけど」

八幡・葉山「………」

陽乃「ま、いいよ。今日は解散にしよう。明日中には2人とも答えを出しておくように。同時に覚悟もね」

陽乃「やるならやる覚悟、やらないならやらない覚悟を」

八幡・葉山「………」

~時は現在に戻って11月30日~

ー放課後 陽乃の車内ー


陽乃「2人とも、そろそろだよ。心の準備はいいかな?」

八幡「いつでも」

葉山「どこでも」

八幡・葉山「よろこんで」

陽乃「何だかんだ言いながら仲良く見えるんだけどなぁ」


ブロロロ………キッ

陽乃「………さ、着いたよ」

八幡「はーっ…」

葉山「………」

陽乃「比企谷くん?」

八幡「はい?」

陽乃「メガネちょっとずれてるよ。ああもう髪もほら、もっとこう…………これでよし。頑張ってね」

八幡「………うっす」

葉山「じゃ、行こうか」

八幡「おうよ」

ー葉山法律事務所ー


ガチャッ…

隼人「こんにちは」

八幡「失礼します」

従業員「あら隼人くん、いらっしゃい。お父様は応接室でお待ちよ」

隼人「どうも」

従業員「あなたもどうぞ?」

八幡「はい。失礼します」

スタスタスタ…ガチャッ

ー応接室ー


葉山弁護士「おう隼人。時間通りだな」

隼人「ああ父さん。あ、彼が弁展高新聞部のヒラキヤくんだよ」

八幡「お忙しい所すみません。初めまして、開屋です。今日はわざわざお時間作って頂いて…」

葉山弁護士「なんだなんだ。最近の学生はやけに堅苦しいんだな。こういう所は初めてで慣れないだろうが、そう堅くならずに気を楽してくれ」

八幡「ありがとうございます」

隼人「座ったらどうだ?」

八幡「そうだね」

葉山弁護士「私もこういったインタビューは慣れてなくてね。弁護士という職業について質問に答えれば良かったんだよな?」

八幡「はいそうです。弁護士を進路にと考える生徒はいますので。彼らに向けた職業インタビューという形で掲載させてもらえたらと思ってまして。よろしくお願いします」

葉山弁護士「いやいやこちらこそよろしく。開屋くんだったね?それで、私は君に何を教えてあげれば良いのかな?」

八幡「じゃあ質疑応答って形で質問させてもらっても構いませんか?」

葉山弁護士「ああ、もちろんだとも」

八幡「まずはじめに、この場を作ってくれた事に感謝します。葉山くん、ありがとう。僕らの我儘聞いてくれて」

隼人「いや、構わないさ。進路ってのは大事なものだから。その進路を決める材料を得る場をたまたま作れただけさ」

葉山弁護士「なかなかどうしてしっかりした学生じゃないか。これからも隼人と仲良くしてやってくれ」

八幡「もちろんです」ニコッ

八幡「では早速。葉山さんの弁護士とは?」

葉山弁護士「………ん?今のは質問かい?」

八幡「すいませんちょっと緊張しちゃってて…」

隼人「まあまあそう堅くなるなよ。じゃ父さん、後はよろしくね」

葉山弁護士「ああそうだな。ついでに飲み物かお菓子でも持ってきなさい。開屋くん、君もリラックスしたまえ」


ガチャッ、バタン

八幡「すいません…実は喉カラッカラでして…」

葉山弁護士「はっはっは。そうか。まあ生徒の中には自分の進路を決めるのに重要になるかもしれない質問だからな。無理もない」

八幡「では改めて。葉山さんにとって、弁護士という職業はどのような…その…」

葉山弁護士「まだ緊張してるようだね。私が弁護士という仕事をどう思ってるか、でいいのかな?」

八幡「はいそうです。すいません」

葉山弁護士「そうだね、弁護士というのは弱い立場の人を守る事が出来る。いわばヒーローのような職業だと私は思っているよ」

八幡「ヒーローですか」

八幡「葉山さんは弁護士になるためにどれほど勉強されたんですか?」

葉山弁護士「勉強か。まあこればかりは個人差のある問題だな。私は…正直言うと、あまりしていなかったんだよ。はっはっは」

八幡「そうなんですか?それでなれるものなんですか?」

葉山弁護士「もちろん最低限の努力は必要だがね」

八幡「そうですよね。葉山さんがこれまで担当された事件ってどういうのがあるんですか?」

葉山弁護士「そうだな。色々あるが…さすがに全ては覚えていないな。それなりに有名な所で構わないかい?」

八幡「はいもちろんです」

葉山弁護士「最近のだと詐欺教祖の事件だろうか」

八幡「詐欺教祖?」

葉山弁護士「そうだよ。勧誘の入り口に占いを使っていた宗教団体のようなもののリーダーで教祖と呼ばれていてね。前に報道がされたんだが。あれは私が担当しているんだよ」

八幡「それって具体的にどういう事件だったんですか?」

葉山弁護士「自称占い師の女性を使って道行く人を占い、お客さんに対して有る事無い事でっち上げてホーリーストーンという高額商品を売りつけた……とまあよくあるタイプの話だね」

八幡「その売りつけられた人を守ったって事なんですね?」

葉山弁護士「いや、逆だよ」

八幡「逆?」

葉山弁護士「その占い師を雇っていた上司こそ詐欺教祖と呼ばれていた被害者だったんだ」

八幡「えっ?でも詐欺師なんですよね?その教祖って」

葉山弁護士「彼は詐欺なんかしてないんだよ」

八幡「そうなんですか?じゃあ何で詐欺に?」

葉山弁護士「その女性占い師が上司の教祖は詐欺師だと告発した上、自首を促したせいなんだ」

八幡「待って下さい。えっと…詐欺と自覚してるから自首したし、罪と自認してるから告発されてそれを受け入れたんじゃないんですか?」

葉山弁護士「その女性占い師の勝手な思い込みで告発されてしまったんだよ。そしてあれよあれよという間に詐欺師扱いされてしまったんだ」

八幡「そういう事が起きるんですか?」

葉山弁護士「これは誰にでも起こり得る事だよ?無実なのに罪をかぶせられるというね。そしてその無実の人を救うのが弁護士の努めなのだよ」

八幡「………」

八幡「でも事件として扱われてる以上、無実なんてありえないんじゃないんですか?」

葉山弁護士「そうだね、事件とされてしまった以上は身の潔白を証明しなければならない。そこで私たち弁護人の出番というわけだ」

八幡「では…その人が本当に罪を犯していたら?」

葉山弁護士「その時はあらゆる観点から罪の軽減を図るんだ。誰だって元々悪い人間なんていないだろう?」

八幡「どうなんでしょうね…?」

葉山弁護士「ちょっと魔が差してしまっただけの言わば衝動的犯行に対して極刑はあまりにも重すぎる。そう思わないかい?」

八幡「まあ…そうですかね」

葉山弁護士「例えば故意で殺人を犯したのなら別だが、故意でないアクシデントの範疇で殺めてしまった。なら罪の軽減はあって然るべきだろう」

八幡「なるほど…そういう事になるんですね。でも中には本物の極悪人もいるんじゃないですか?」

葉山弁護士「ま、それはそうだね。人とはそういうものだから」

八幡「そういう極悪人でも肩を持つんですか?」

葉山弁護士「それが仕事だからな」

八幡「それって…どの辺がヒーローなんですか?さっき弱い者を助ける仕事だって言ってましたけど。やってる事は真逆じゃないんですか?」

葉山弁護士「はっはっは。そうだね。だが本物の極悪人だと証明されるまではその人だってごくごく普通の一般人と変わらないという事さ」

八幡「………」

葉山弁護士「ま、君の言いたい事もわかる。だが青臭い考え方では真実は追えないし、本当に弱い立場の人を守る事も出来ないものなんだよ」

八幡「そうなんですか。ちなみにその詐欺教祖ってどうなったんですか?」

葉山弁護士「まだ裁判の途中でね。あまり多くは話せないが…まあいいだろう。ここだけの話だよ、いいね?実はその教祖と呼ばれた人はね、精神暴走事件の被害者である可能性が高いんだ」

八幡「えっ…あの精神暴走事件のですか?」

葉山弁護士「そうなんだ。さっきも言っただろう?元々悪い人間などいない。環境や流れからたまたま悪と呼ばれる行為に至ってしまっただけなんだよ」

八幡「えっ…でも詐欺ですよね?詐欺師って故意以外にやれっこないんじゃないですか?」

葉山弁護士「ではその故意が、あの精神暴走事件によるものであればどうだい?」

八幡「…罪ではない、と?」

葉山弁護士「その通り。精神暴走事件という大きな事件の被害者なんだよ。よってその詐欺教祖と呼ばれた人も元を正せば被害者なんだ。私はそうした、弱い立場に置かれてしまった人たちを救っているのさ」

八幡「なるほど…」

ブーッ…ブーッ…

葉山弁護士「携帯鳴ってるようだが?」

八幡「あ!すいません…」

葉山弁護士「はっはっは。君は記者としては失格のようだね?」

八幡「そうですよね!すいません本当こういうの慣れてなくって…」

葉山弁護士「まあいいさ。出なくていいのかい?」

八幡「はい。メールだったので……」


隼人【完了だ。もういいぞ】

八幡「…………はい、すいません続き大丈夫ですか?まだお時間って…」

葉山弁護士「ああいいよ、気にしないでくれ」

八幡「どうもありがとうございます。じゃあえっと…あ、もうこんな時間ですね。最後の質問でいいですか?」

葉山弁護士「ああ、構わないよ」

八幡「つい先日テレビで鴨志田容疑者が釈放になるんじゃないかってニュースあったのご存知ですか?」

葉山弁護士「もちろん」

八幡「ああいう本物の犯罪者についてはどう思います?」

葉山弁護士「本物?どうしてそう思うのかな?」

八幡「だって自分の立場を利用して生徒殴ったり蹴ったり、おまけに女子にセクハラしてたんですよ?こんなのさっき葉山さんが言ってた故意以外の何物でもないと思うんですけど」

葉山弁護士「なるほど君はそう見るのか」

八幡「はい。学生としてああいう本物の犯罪者が教師って立場にいたなんて吐き気しますよ」

葉山弁護士「………」

八幡「気に入らない生徒を退学させようとしたりするなんて頭どうかしてるとしか思えません。葉山さんだって弁護士って仕事してなければ同じように思ったんじゃないですか?」

葉山弁護士「さて…どうだろうな」

八幡「え?思わないんですか?弱い立場の人を救うって立派な思想を掲げた人なのに?」

葉山弁護士「立派だなんて事はないよ。弁護士という仕事に対してはそう思っているだけでね」

八幡「ならそれがなければ僕と同じ考えで、同じように嫌な気分になる事件と思いません?」

葉山弁護士「まあそうかもしれないね」

八幡「でも何であんな本物の犯罪者が釈放されるかもって話になっちゃうんですかね?不思議でしょうがないんですけど…その辺、弁護士としてどう思われますか?」

葉山弁護士「それはもちろん、鴨志田容疑者が無実でその嫌疑が晴れるからそういう結果になるだけだよ」

八幡「え?まだ晴れてませんよね?というかとても晴らせるものじゃないと思うんですけど…」

葉山弁護士「腕の良い弁護人なら話は別だ」

八幡「葉山さんのような?」

葉山弁護士「はっはっは。どうだろうな?」

八幡「あの鴨志田ってやつを取り巻く話って…なんか妙な感じしません?」

葉山弁護士「妙というと?」

八幡「…いえ、何でもないです。忘れてください」

葉山弁護士「開屋くん?言いかけで止めるのはナンセンスだよ」

八幡「じゃあ…。だって自首したくせに無罪放免なんてどう見てもおかしいですよ。それに体罰とか事実だったんですよね?ほら、ニュースやってた時に生徒インタビューやってたじゃないですか?」

葉山弁護士「まあ一部ではそういう声もあったようだね」

八幡「一部?いいえ全部でしたよ?僕が個人的に鴨志田周辺を調べた所では」

葉山弁護士「鴨志田周辺を………調べたのかい?君は変わった趣味をしてるね」

八幡「はい調べました。ちょっとまあ…言えない話が関係してるのでこの先は黙秘権使っちゃいますけどね…あはは」

葉山弁護士「はっはっは。さすがに黙秘権は知ってるか。その言えない話というのは私にも相談出来ない話かな?」

八幡「はいまあちょっと……葉山くんと共通の友達に聞いたんですが、怖いやつが総武高に転校してきたと…」

葉山弁護士「怖いやつというのは?」

八幡「何でも前歴持ちのやつが転入してきたらしいんですよ…最悪ですよね」

葉山弁護士「…そうなのか、なるほど。それは怖い話だね。今ここだけの話にしておいてあげるから、話してみてごらん?」

八幡「え?!いやそんな…プロの弁護士にこんなちっちゃい悩み相談なんて…」

葉山弁護士「なあに、気にする事はないよ。で?どういった話なのかな?」

八幡「いやいや!ほんと大丈夫ですから!ちょっと鴨志田とそいつ絡みってだけで!」

葉山弁護士「君はずいぶん遠慮するんだな。だがまだまだ学生だろう?それにお友達の身近にそんな犯罪者がいては君も落ち着かないだろう?」

八幡「ですが…」

葉山弁護士「心配しなくていいよ。ここだけの話だ。どういった内容なのかな?」

八幡「…実はその前歴持ちのやつ、鴨志田がいた秀尽からの転入なんですよ…」

葉山弁護士「ほう…それで?」

八幡「おっかないじゃないですか…よりによって秀尽ですよ?そいつも暴力的に決まってるじゃないですか前歴持ちだし…」

葉山弁護士「まあそうだろうね。近付かない方が身のためなのは間違いない」

八幡「転入してきてすぐに前歴持ちだってバレてたんです。先生に聞いても教えてくれないらしいんですけど前歴持ちって話は本当みたいで」

八幡「それでちょっと思ったんですよ…もしかしてそいつの前歴って鴨志田と何かあったから付いたものじゃないかって」

葉山弁護士「なるほどそう繋がるのは至極自然だね」

八幡「やっぱり葉山さんもそう思います?」

葉山弁護士「ああ思うね。君の推察は正しいんじゃないかな」

八幡「ですよね!良かった何かすっきりしました」

葉山弁護士「お役に立てたかな?」

八幡「はい!」

葉山弁護士「ちなみにその前歴の生徒はどういう風に過ごしてるのかな?」

八幡「友達に聞いた話じゃ、そいつ常に1人ぼっちですよ」

葉山弁護士「ほう…?具体的には?」

八幡「何でも授業はボイコットな態度で寝てばかり」

八幡「休み時間も寝てばかり。でもたまに動いてる様子からして寝たふりしてるだけじゃないかって」

八幡「昼には普段誰も寄り付かないようなとこで1人で食事して、放課後になると知らないうちに消えてるらしいです」

八幡「それに誰も話しかけないし、例えばテニスで2人1組になる時もそいつは1人で壁にボール当ててたり。なので完全にぼっち野郎らしいんですよ」

葉山弁護士「フフッ………そうか。なるほど」

八幡「………」

葉山弁護士「ちなみに先生方はその生徒に対してどういう態度なのかな?」

八幡「最初からずっとシカト状態のようですね。誰も何も言わないようですよ。そいつもたぶん出席日数稼ぎに行ってるだけだと思います」

葉山弁護士「はっはっはっはっは!そうか!なるほどな!はっはっはっは!」

八幡「………」

葉山弁護士「そういう状態であれば何も心配はいらないよ。そのうちいなくなるんじゃないかな?」

八幡「いなくなる?というと?」

葉山弁護士「そんなつまらない学生生活など無意味だからね。そのままいつの間にかまた転校でもするだろう」

八幡「…そうかもしれないですね。確かに退学の話あるみたいですし」

葉山弁護士「ほう!そうなのか!どういう状況なのかな?」

八幡「いえ、これも聞いた話でしかないんですけどね。今、生徒の間で流行ってるんですよ。そいつがいつ退学するか時期を賭けようっていうのが」

葉山弁護士「そうかそうかはっはっはっはっはっは!!まあ何というか、学生でギャンブルは良くないね。だがその生徒に関してはそのまま放置して平気じゃないかな?」

八幡「そうですよね?皆もシカトしてるって事ですし。時間の問題ですよね?」

葉山弁護士「ああ、そうだろう。安心して通学するようにお友達にアドバイスしておきなさい」

八幡「いやぁ相談出来てよかったです!すいませんインタビューと何の関係もない話になっちゃいまして…」

葉山弁護士「いやいや気にする事はないよ。もう質問は終わりかな?」

八幡「はい。後はもう大丈夫です。今日はどうもありがとうございました」

葉山弁護士「気にしなくていいよ。今後とも隼人と仲良くしてやってくれ」

八幡「ええ、もちろんです。では失礼します」

ガチャッ

隼人「…終わったのかな?」

八幡「ああ…。そろそろ帰る。葉山くんは?」

隼人「そうか。俺も帰るよ……」

葉山弁護士「隼人、せっかくだからこれで開屋くんとご飯でも食べてきなさい」

八幡「とんでもないですお話聞かせてもらっただけでも」

葉山弁護士「まあそう遠慮するな。私こそ良い話を聞かせてもらえたからな。2人で行ってきなさい」ニヤッ

隼人「……いいからいいから。行こう開屋?」

八幡『すいませんありがとうございます。じゃあこれで失礼します」

葉山弁護士「ああ。気をつけて帰りなさい」




葉山弁護士「フフッ…。何だ、学校に確認するまでもなく最高の状況になってたのか。これなら卓に集中するだけで良さそうだな。フフッ…」

ー夜 とある橋の上ー


八幡「すまん葉山。先に謝っとく」

葉山「何をだ?」

八幡「………くそったれがぁーーーー!!!!何だあのクソ野郎!!!ふざけやがってよ!!!!!ただじゃおかねえぞあんのクソがあぁーーーーーー!!!!!!!!」ゴンッ!!ゴンッ!!ゴンッ!!ゴンッ!!

陽乃「はいはい比企谷くんその辺でどうどう。無機物とはいえ蹴るのは良くないよ?」

葉山「お前ばかりずるいぞ比企谷」

陽乃「えっ?」

葉山「うぉああぁぁーーーーー!!!!!あんのクソオヤジィーーー!!!!!!最後のあのしたり顔ムチャクチャぶん殴りてえぇぇーーーー!!!!!!」ゴンゴンゴンゴンッ!!

八幡・葉山「クソクソクソクソクソクソぉぉぉあぁぁぁーーーー!!!!!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴンッ!!

陽乃「あんたたちやっぱ仲良いんじゃないの?」

八幡「見たかよ葉山!?蓮のこと悪く言った時のあいつの顔!?ムカつくぜ!」

葉山「部屋の外いたんだぞ見てねえよ!でもわかるぞ比企谷!」

八幡「あの野郎笑いやがったぞ!?蓮のこと悪く言ったら笑いやがったぞ!?ムカつくぜ!」

葉山「笑ってたな笑ってたな!はっはっはっは!……ハァ!?あんな高笑い俺ですら聞いた事ねえぞ比企谷!」

八幡「あの野郎!あの野郎!」ゴンッ!!ゴンッ!!

葉山「クソ野郎!クソ野郎!」ゴンッ!!ゴンッ!!

八幡「くたばれ!くたばれ!」ゴンッ!!ゴンッ!!

葉山「そうだくたばれ!金だけよこせ!」ゴンッ!!ゴンッ!!

八幡「それはどうかと思う」

葉山「お前がだよ」

陽乃「あんたらやっぱ仲良いよね」

陽乃「で?上手くやったの隼人?」

葉山「ああ。比企谷がかなりの時間稼いでくれたおかげで完璧だよ。これで自宅に車と合わせてダメ押しの追撃が手に入った」

八幡「そうか。自宅に証拠らしきものあったはいいけど足りないかも、なんて言われた時は焦ったぞ」

葉山「俺もだ。父さんの事だから関係書類があるとすれば金庫の中だと思ってたんだが。その中がまさか俺のアルバム”メモリーオブマイサン隼人”が入ってただけなんてびっくりした」

八幡「あー陽乃さんに強奪の上に丸々コピーされてたあれか。お前も普通の少年だったよな。ショタ時代は可愛かったぞこの野郎」

葉山「幼少期から今までを網羅してあったからな。ちょっと引いたが親子愛は感じたぞ。あれを見つけた身にもなれクソが」

八幡「親としちゃ良い親だったんだろう。どっかで歪んじまうまではな」

葉山「そうだな。だがもう遅い」

八幡「ああ。遅すぎる」

陽乃「内容がアレだけど基本、仲良い同士の会話だよね」

陽乃「じゃ、あとはいよいよお姉さんの出番かな?」

八幡「はい。お願いします」

葉山「俺は予定通り、ここまでだな。後は頼んだぞ比企谷」

八幡「ああ。よくやってくれた。ありがとな葉山」

葉山「ありがとうはこっちだよ。あんな親でも親は親だ。計画通りの結末になるなら何も文句はない。その事でまた借りが出来たが前の借りは返せたからな」

八幡「そうだな。ま、結末については上手くいけばの話だがな。さすがに弁護士の抵抗がどれほどのものか予測がつかない」

葉山「お前なら大丈夫だよ比企谷。ただくれぐれも気を付けろよ?失敗は許されないぞ」

八幡「おう」

陽乃「もういいかな?結末までのルートは確保したし、あとは通告と本番を迎えるだけだね。じゃ、今日はこれで帰ろうか?」

八幡「はい。そうしましょう」

陽乃「何ならお姉さんとご飯行っちゃう?奢っちゃうよ?」

葉山「事が上手く片付いたら父さんがくれた金で打ち上げと行こう。それでいいよな?じゃあな比企谷」

八幡「ああ、またな」

陽乃「ちょっと隼人邪魔しないでよぉ!それに何あっさりお姉さんのお誘いスルーしてるの!?全くもうほんっとつれないなぁ比企谷くんは!」

ー夜 ルブラン店内ー


竜司「あー。クッソしんどかったな…」グテー

杏「ほんと…マジしんどい…」グテー

祐介「そうだな…さすがに1日で攻略というのはハードだった…」グテー

真「ほんとね…でもオタカラルートは確保したし、あとは…」グテー

双葉「予告状を出して本番だなー……」グテー

春「そうだね。でもほんとに疲れたね…」グテー

モルガナ「ワガハイもへとへとだぞぉ…」グテー

惣次郎「お前は平気そうだな?」

蓮「はい何周かしてますし勝利の雄叫びあるのでジョーカーソロ縛りしてたぐらいですよほらあいつと最終決戦ありますしあそこのためにわざわざソロでやってたまでありますただ周回向けじゃない作りなのが本当に腹立ちますねオクシドの2つはほんとだるくて毎回萎えますよ一周目はよく自力でやったなって毎回自分を褒めたくなります周回初めた時はフタバナビ残してたからそれを取るのに本当に苦労させられましたしっつーかあれおかしいですよね?どれが取れてどれが取れてないかのチェック機能ぐらい付けろってんですよそれなきゃわかんねえよって話ですおかげで9周もしたぞクソがってほんとトロコンした時はやっと終わったよぉ~と心底解放された気分でしたよ何せ960時間突破しちゃってたんですから」

惣次郎「あぁ?何のこと言ってるか俺にゃ意味わからねえが良く一声で言えたな」

冴「みんなお疲れさま。あとは予告状と言ってたし、一先ず事前準備は整ったという事かしら?」

真「うん。そうだよ」

冴「あの予告状ね…。出す必要があるものなのね」

竜司「あれ出さねぇとオタカラ出ないんすよ」

冴「オタカラ?」

真「認知の産物で、材料はその人の歪んだ欲望とでも言えばいいかな?」

双葉「大体それで合ってるぞー。ま、人の欲望が認知によって具現化した宝石と思えばいい」

冴「それを奪う事が改心という事なのね。なるほど…あ、そうそう雨宮くん?そろそろ向こうに戻らないと」

蓮「はい。お願いします」

惣次郎「カレー食ってったらどうだ?」

蓮「はい。いただきます」

冴「えっ」

ー夜 八幡宅ー


八幡「ただいま」

小町「お兄ちゃんおかえり~遅かったね?」

八幡「おう。ちょっと色々ヤボ用あってな」

小町「ふーん。お風呂入れば?」

八幡「そうするわ」

小町「んー」

ー平塚静宅ー


蓮「ただいま静さん」

平塚「おかえり雨宮。話がある。先に風呂に入って来なさい」

蓮「え?はい、わかりました」

平塚「………」

ー八幡宅 風呂ー


八幡(おっさんのあの様子だと今後、蓮についてあれこれ聞く気はなくしただろうな)

八幡(つーかよ、蓮…お前が抱えてる隠し事ってどんだけヤバいもんなんだよ…?)

八幡(普通じゃねえぞ…)

八幡(何にしても精神暴走事件、鴨志田、前歴。うまい具合にリンクさせて話す内容を陽乃さん交えて考えといて正解だった)

八幡(さすがに弁護士相手にアドリブ勝負はヤバいよな。ボロ出そうだし)

八幡(にしてもあのおっさん…蓮がぼっちだって話した時めっちゃ喜びやがったな…どれもこれもちょっと前の俺の事だよちくしょう)

八幡(ま、傍から見りゃああいう反応するのが当たり前なのかもな…)

八幡(いやいや、そんなわけねえよな。蓮がぼっちだって事でニヤけてたわけだし)

八幡(俺は普通。俺は普通)

八幡(誰にも言えない隠し事か…)

八幡(蓮…俺じゃ力になれねえってのか?お前は今もその事で悩んでんのか?戦ってんのか…?)

ー平塚静宅ー


平塚「さて、説明してもらおうか」

蓮「見ての通りです」

平塚「そうか、見ての通りか。つまり雨宮、君は変態なんだな?」

蓮「いいえ違います」

平塚「ほう、目の前に陳列されたこれらを見てもそう言い切るとは。なかなか良い根性してるじゃないか」

蓮「ライオンハートですから」ニコッ

平塚「いいスマイルだ思わず結婚したくなったよ。いや違うそうじゃない褒めてない」

蓮「ですよね」

平塚「とにかくだ…。この女性服の山はなんだ!?説明したまえ!」

平塚「これは何だ!?」

蓮「アンティークなキャミです。部屋着と言えばキャミソール。浮き彫りにするのはスタイルだけではありません。あなたと彼の距離感も、この一枚でいとおかし」

平塚「これは!?」

蓮「バニーベストです。バニーといえばやはり胸から腰までのあのベスト。個人的に首元のチョーカーは白がお好み。脚には穴が細かめの網タイツをぜひ」

平塚「これは!?」

蓮「ダイエットさらしです。お腹を引き締めるだけでなく、シャツに浮き出るあなたのバストをワイルドに」

平塚「これは!?」

蓮「ハイレグインナーです。角度はやはり60度が理想的。外から見えるヒップラインで健康的に扇情しよう」

平塚「これは!?」

蓮「大天使のブラです。ブラなのに大天使とはこれいかに。あなたの両翼-おっぱい-、美しく」

平塚「このきったないのは!?」

蓮「汚れた女性服と汚れきった女性服です」

平塚「ふざけるな!」

蓮「そうですよね。すいません洗う時間なかったので」

平塚「そこじゃないよ!」

蓮「ではそのままがいい、と?」

平塚「そんな事でもない!」

蓮「やはり”何らかの汚れのついた女性服”というのはそれだけで価値がありますよね」

平塚「ふざけるな!」

蓮「すいませんやっぱり洗った方が良かっ」

平塚「違うよそこじゃないってば!」

蓮「先生、素が出てます」

平塚「全く…なんなんだ君は?!」

蓮「雨宮蓮です」

平塚「名前など聞いてない!なぜこんな代物を大量に持ってるのかと聞いてるんだ!」

蓮「戦利品です」

平塚「はあ!?まさか君は夜な夜な何かを盗んでるんじゃないだろうな!?」

蓮「正確にいうと昼や放課後に活動してます」

平塚「ねぇ!?犯行時刻なんて聞いてないんだけど!?」

蓮「先生また素がチラ見えですよ」

平塚「君が冴に連れられて早退したのは知ってる。その冴からこのダンボールを預かってたんだ。見るなよ、と書かれてたが」

蓮「見たんですね」

平塚「仕方ないだろ!ブラ紐らしきものがダンボールからハミてれば……おやおやまさか私ので楽しんだのか!?と確認したくもなる!」

蓮「まあ、見るなって書いたのは冴さんですけどね」

平塚「ちょっと怒らせちゃったかなって思っちゃったじゃないか!!」

蓮「そう簡単に怒りませんよ慈母神ですから」キリッ

平塚「なんだそれは!?」

平塚「いいか!?君は事もあろうに女性服ばかりをかき集めてると知られたんだぞ!?少しは慌てるとかしたらどうなんだ!?」

蓮「やだなぁ男物だってありますよ」

平塚「えっ!?君はやはりそうなのか!?そっちもいけるなのか!?」

蓮「猫物もありますよ」

平塚「ええっ!?私はもう君という人間がわからないよ!」

蓮「雨宮蓮です」

平塚「ほんとその名前ぐらいだよわかってるのは!もうっ!」

蓮「先生また素が」

蓮「はいどうぞ。コーヒーです」

平塚「うむ…すまんな。取り乱してしまって」

蓮「いえいえ」

平塚「それで?しっかり聞かせてもらおうじゃないか。さすがに見逃せんぞ」

蓮「全て拾い物です」

平塚「こんなにか?こんなにもか?」

蓮「落とし物もあります」

平塚「そりゃ拾い物ってぐらいだから落とし物がほとんどなんだろうけど」

蓮「強奪したのもあります」

平塚「ちょっと待てぇ!」

平塚「じゃあ何か!?君は女性から衣服を剥ぎ取ったというのか!?」

蓮「やだなぁ冗談ですよ」

平塚「本当だろうな!?信じていんだろうな!?」

蓮「もちろんですよ」

平塚「なら君は放課後に何をしてるんだ!?」

蓮「主に下見とルート確保を」

平塚「ほら見ろ!ほら見ろ!具体的なの出てきたよ!」

平塚「はあはあはあ……」

蓮「まあまあ静さん落ち着いて」

平塚「落ち着けるか!酸欠にもなるわ!」

蓮「ツッコミ入れる静さん可愛いですよ」

平塚「えっ、本当か?///」

蓮「嘘です」

平塚「もぉぉぉぉおおおぉぉーーー!!!!」

蓮「ほんとは嘘じゃないです」

平塚「えっもう///そういうの……もう!///アイス食べる?」

蓮「うん食べる」

モルガナ(ちょろいな…)

~12月1日~

ー朝 教室ー


八幡「おはよう蓮」

蓮「おはよう八幡」

八幡「今日は鈴井のとこいかないのか?」

蓮「行こうか」

八幡「おう。そだな」

蓮「友達だもんな?」

八幡「おうよ!」

結衣「む~~~~っ……」ムスー

ー隣のクラス扉前ー


八幡「………」

蓮「…見当たらないな?」

八幡「休みか?」

蓮「かもな」

志帆「あ、おはよう…」

八幡「おう鈴井、今きたの………か…?」

蓮「………何があった?」

志帆「うん……その…ちょっと…」

蓮「屋上に行こう」

ー屋上 扉の前ー


蓮「すまない八幡。見張り頼む」

八幡「気にすんな。お前の方が話やすい事だろうから」

志帆「ごめんね…比企谷くん…」

八幡「いいっていいって。気にされる方が何だ、アレだ」

蓮「アレか」

八幡「いいから行けって」

ー屋上ー


蓮「鴨志田だな?」

志帆「うん…そう……冤罪の可能性で…釈放かもって…」

蓮「ニュースでやってたな」

志帆「うん……どうしてかな…あれだけ皆に酷い事したのに…」

蓮「………」

志帆「どうして…弱い立場の人はこうも苦しまなきゃならないのかな…」

蓮「戦わないからだ」

志帆「戦わない…そっか…そうだよね…でも…」

蓮「怖いよな?」

志帆「うん…」

志帆「あのニュースの事、怪盗団はどう思ってるんだろう…?」

蓮「不愉快だろう」

志帆「そっか…そうだよね…」

蓮「何のために戦ってるのかわからなくなる」

志帆「………」

蓮「もしかして戦ってるせいで、かえって弱い立場の皆が傷付いてるんじゃないかって」

志帆「そんな事ない!ありえない!」

蓮「志帆…」

志帆「怪盗団は頑張ってる!皆のために頑張ってきたし今も頑張ってるでしょ!?だからそんな事ない!」

蓮「そうかな…」

志帆「あのね、私…また転校するかもしれないんだ…」

蓮「どうして?」

志帆「親の仕事の事もあってここに来たけど…遠い転校先を確保できそうだって…」

蓮「そうか…その方がいいかもしれないな」

志帆「やっぱりそうかな…?」

蓮「少し距離があるとはいえ秀尽からまだまだ近い方だからな。志帆のためには遠い方がいいかもしれない」

志帆「………」

蓮「寂しくなるけどな」

志帆「そう思ってくれるんだね…」

蓮「当たり前だろ」

志帆「あの人…どうなるのかな?」

蓮「わからない」

志帆「そうだよね…」

蓮「例え冤罪で出たとしても、きっと怪盗団はやつのした事を許さない。必ず罪を償わせる」

志帆「出来るの…?」

蓮「弱いものの味方、それが怪盗団だからな」

志帆「うん…そうだよね。きっとそう。怪盗団の頑張りは皆知ってる。ただちょっと今は周囲に流されてるだけ」

志帆「助けてもらったり勇気をもらった事は絶対に忘れない…私も」

蓮「ああ。志帆みたいな味方がいてくれるっていうだけで励みになるはずだ。だから過去と戦え。志帆なら勝てる。自分で立ち上がれたんだから」

志帆「そうだね………うん!何か勇気でた!ありがとね蓮」

蓮「大した事は言ってない」

志帆「ううん大した事だよ!」



蓮「勇気をもらったのは俺たちの方だ………そうだろ…?」ボソッ

モルガナ「……にゃーん」

ー屋上 扉の前ー


蓮「八幡」

八幡「ん?もういいのか?」

志帆「ありがとう。ごめんね比企谷くん」

八幡「気にしなくていい。スッキリした顔になったな。鈴井はそっちがいいと思うぜ」

志帆「えっそう?そんなに顔違ってる?」

八幡「ああ。さっきはまるでゾンビだったぞ。ゾンビ呼ばわりされる俺が言うのもなんだがな」

志帆「もぉーひどいな比企谷くんは!」

八幡「ははっ」

蓮「はははっ」

志帆「ふふっ」

ー授業中 教室ー


教師「では次の問題だ。えー……雨宮、わかるか?」

蓮「はい。裁判の傍聴が可能な年齢は0歳からです」

教師「よく知ってたな。正解だ」


ざわざわ・・・ざわわ・・・
さすがだぜ・・・さすが学年トップ・・・
ざわ・・・

ー昼 八幡ベストプレイスー


志帆「何かここすっかり馴染んだ気がするよ」

八幡「このメンツでって意味なら確かにな」

蓮「良い場所だよな」

八幡「なあ…鈴井」

志帆「うん?なに?」

八幡「良かったのか?俺にまでさっきの話しちまってよ」

志帆「うん。お昼食べながらっていうのもあったかもしれないけど、割と気楽に自然と話せたし」

八幡「そうか…お前も色々あったんだな」

志帆「まあね…でも私は負けないから!」グッ

蓮「かっこいいな」

八幡「ああ。すげぇかっこいい」

志帆「そうかな?あははっ」

八幡「鴨志田事件に怪盗団なぁ…秀尽ってやばいな?色々と」

蓮「全くだ」

志帆「ほんとだよねぇ」

八幡「そういや秀尽って校長もあれだろ?何かあったよな?」

蓮「そうだ。何かあった」

志帆「あぁ~…そうだね何かあったね」

八幡「何とは言わないけどよ」

蓮「あいつ嫌いなんだよ普通さ、生徒にあんな危ない事なんか探らせないだろどうかしてるよなっつーかやられた時よっしゃ!ってちょっと思ったもんそりゃ思うよだってあんな危ない事に生徒巻き込むか普通?そのくせ自分は何もしねえんだぞ?危ないったらねえわまこちゃん平気!?って思いながらやってたもん完全にあの時の流れってアレだぜ薄い本意識した流れだぜ鴨志田の時ほどじゃないけどなだからかあいつがやられた時ちょっとスカッとしたもんそらそうなるわって感じの結末だったもんねあいつ」

八幡「すげえ早口。よく一声で言えたな」

志帆「あ、ねえそういえば明日って日曜じゃない?2人とも暇だったりしないかな?」

蓮「明日はちょっと無理かな」

八幡「俺も無理だな…」

志帆「そうなんだぁ…」

蓮「遊びか?」

志帆「うん。行きたかったんだけどね、忙しいならしょうがないから」

八幡「明日はちょっとどうなるかわからないから。ごめんな鈴井」

蓮「俺もどうなるかわからないから。悪い志帆」

志帆「もう。2人して謝らないでよ!何か私2人にフラれたみたいじゃない」

蓮「少なくともフる予定はない」

八幡「お前すげぇな。よくさらっとそんな事言えるな…」

志帆「比企谷くんは言ってくれないの?」

八幡「えっ!?いや!ええっ!?」

志帆「あははっ!冗談だよ冗談!」

蓮「今日これからなら暇だけど?」

八幡「俺も暇だな」

志帆「えっそうなの?じゃあこれから遊び行く?」

蓮「いいね」

八幡「いいな」

志帆「じゃあどこにしよっか?うーん…そういえば千葉ってあんまり良くわからないんだよね」

八幡「蓮も鈴井も元は東京だよな?別に渋谷とかそっち方面でいいんじゃねえの?」

蓮「やだ」

八幡「えっ」

志帆「私もやーだ」

八幡「えっ」

ーディスティニー・ランドー


八幡「よりによってこことは」

蓮「夢の国だ」

志帆「夢の国だぁ~!」

八幡「んじゃ行くか?」

蓮「遊び倒す。攻略し尽くす」

志帆「うん!いこいこ!」


ーパンさんイン・ザ・ヘルー

八幡「こんなのあったのか」

志帆「可愛いなぁ~」

蓮「見ろ八幡、パンさんがデーモン閣下の格好で歩いてる」

ーイニシャルVー

蓮「掟破りの地元走りだ」ガゴァァァァァ

八幡「おい蓮お前ずりぃぞ!」ギャアァァァァ

志帆「2人とも待ってよぉ~~~!!」ノロノロ


ーポール・オブ・デューティー

志帆「それそれそれそれ~~~!!!」パラタタタタタタタタ

八幡「鈴井のエイム神」ドムドムドムドム

蓮「いいセンスだ」シュポンシュポンシュポン……ドンドンドン

ー夕方 フードコートー


3人「はぁ~~~っ」

八幡「いや~一年分遊んだ気がするわ」

志帆「ほんと!楽しかったね~!」

蓮「ああ、楽しかった」

志帆「また3人でこようね!」

八幡「おう」

蓮「もちろんだ」

ー総武線 車内ー


志帆「………」スヤスヤ

八幡「………」

蓮「八幡。視線が完全に犯罪者だぞ」

八幡「まじかよ視線バレてたかよ。いやでもしょうがねえだろ鈴井が俺なんかの肩に頭乗せてきてんだから」

蓮「嫌なら代われ」

八幡「嫌とは言ってねえよ」

蓮「いま言った。代われ」

八幡「そりゃお前への返答で言っただけで嫌って事はない」

蓮「また言ったぞ代われ」

八幡「あーもーうるせぇな」

志帆「ぷっ……ぷふっ…」

志帆「ごめんね比企谷くんついうとうとしちゃって」

八幡「いや…気にする事ねえよ」

蓮「お前は気にしろ。ところで志帆、俺の肩が空いてる」

八幡「お前は別の方向で気にしろ」

志帆「あははっ!ほんと仲良いよね2人とも!」

蓮「まあな」

八幡「おうよ」

志帆「ねぇ、2人とももうちょっと時間ある?」

八幡「俺は平気だが」

蓮「俺も」

志帆「じゃあちょっとご飯よってかない?」

蓮「どこ行こうか?」

八幡「サイゼ」

志帆「サイゼ好きなの?」

蓮「いいよなサイゼ」

八幡「さすがだな蓮。サイゼの良さをわかってるとは」

ーサイゼー


八幡「結構食っちまった…」

蓮「腹減ってる時って結構いけるって思っちゃうよな」

志帆「それわかるなぁ。でも蓮は全然余裕そうだよね?」

蓮「まだまだいける」

八幡「お前の胃はほんとどうかしてる」

蓮「まあな」

八幡「褒めてねえよ…」

志帆「蓮って結構食べるんだよね?太らないの?」

蓮「太らないな。ほぼ毎日ジム通ってるからかな」

志帆「へぇそうなんだ?」

八幡「だとしてもお前の胃の許容量はおかしい」

八幡「お前なら大食いチャレンジとかいけるんじゃね?」

蓮「とっくにやった」

志帆「え?やった事あるの?」

蓮「ああ。ビッグバンバーガーのコスモタワーバーガーを制した」

八幡「はぁ!?マジかよ!?嘘だろ!?」

蓮「証拠のキャプテンバッジだ」キラッ

志帆「うわぁ…すっごい…」

八幡「お前…俺の人生ん中で一番のびっくり人間だわ…」

蓮「ライオンハートだからな」キリッ

八幡「たまに出るけど意味わかんねえよそれ…」

ー駅ー


志帆「2人ともありがとね!すっごい楽しかったよ!」

蓮「俺もだよ。また行こう」

八幡「そうだな。また行こうぜ」

志帆「あ、そうそう。あのね?蓮と会った時からずっと忘れてた事あるんだけど…いい?」

蓮「どうした?」

志帆「連絡先!交換しとかない?」

蓮「そういえばしてなかったな」

八幡「そういえばそうだな」

志帆「そうだよね?私2人の番号とか知らないままだったもん」

八幡「いや、それもだけど蓮のも知らなかったから」

志帆「え!?」

蓮「そういえば八幡のも知らなかったな」

志帆「ええぇ!?」

テロテロリン

蓮「これでよし」

八幡「おう」

志帆「なんか2人の関係性って不思議だよね?」

八幡・蓮「そうか?」

志帆「ほら息ぴったり。なのにお互い連絡先も知らなかったなんて。変!」

蓮・八幡「変か?」

志帆「ほらまたぴったり!それでまだ連絡先交換してなかったなんて。ぜったい変!」

八幡・蓮「そうでもない」

志帆「ほら!ほらほら!また!」

3人「あっははははははっ!!!」

志帆「それじゃ2人とも!また学校でね!あとでチャットするね!」

八幡「おう。またな鈴井」

蓮「気を付けて帰れよ?」

志帆「はーい!じゃあね!」

タタタタッ…


八幡・蓮「………」

蓮「なあ八幡」

八幡「なんだ?」

蓮「少し時間いいか?」

ー夕方 とある橋の上ー


八幡「ほらよ。MAXコーヒー」

蓮「ありがとう」

カシュカシュッ………ゴクゴクッ

蓮「はあ…」

八幡「………」

蓮「少し寒いな」

八幡「まあ12月入るからなぁ」

蓮「もう12月か…早いな」

八幡「おっさんくせぇ事言ってんなぁ」

蓮「ははは」

八幡「ははっ」

蓮「………これ甘っ」

八幡「リアクション遅くね?舌は鈍感か?」

蓮「練乳入り?なるほど練乳か…アリだな」

八幡「これぞ千葉のソウルドリンク、MAXコーヒーだ。これを飲まずして千葉人は名乗れない」

蓮「そうなのか。分量が気になるな。双葉あたりで試してみよう」

八幡「何の話だ?」

蓮「何でもない」

ゴクッゴクッ…

八幡「……ふう」

蓮「………」

八幡「で?何か話あるんじゃないのかよ?」

蓮「ああ。八幡」

八幡「なんだよ?」




蓮「……さよならだ」

ー深夜 平塚静宅ー


平塚「………」

冴「荷物は…あとはもうないわね?」

蓮「はい、もう何も」

冴「そう、わかったわ。……静、今回は本当にありがとう。助かったわ」

平塚「いやいや。何て事ないさ」

冴「……生徒の前だから格好付けてるの?」

平塚「それはお前も同じだろう?」

冴「ええ…そうね。また会いましょう。全てが片付いて落ち着いたら」

平塚「ああ。くれぐれも気を付けろよ?お前は先陣きって戦わなければならないんだからな」

冴「わかってるわ」

平塚「しかしまさか…あんな事になってるだなんて想像もしてなかったぞ?なぜ黙ってたんだ?」

冴「黙ってたわけじゃないわ。たまたまあのタイミングになっただけなのよ。情報が揃ったタイミングもね」

平塚「そうか…まあいい。とにかく気を付けろ。お前の事だから心配しちゃいないが…負けるなよ?」

冴「誰に言ってるの?私は勝つわ。絶対にね」

冴「それじゃ、また会いましょう」

平塚「ああ、またな」

スタスタスタ……

蓮「静さん、ほんの数日でしたがお世話になりました」

平塚「そうだな。確かにほんの数日だが…君のおかげで濃密な生活を送れたよ」

蓮「静さんに出会えて本当に良かったです」ニコッ

平塚「……君というやつは全く…。女泣かせな男だな!先が思いやられるぞ?ははっ!」

蓮「泣かせる気なんかありません。笑って送ってくれませんか?」

平塚「…しょうのない子だな君は。元気でな」ニコッ

蓮「はい。静さんもお元気で」ニコッ

平塚「何かあったらいつでも来たまえ。歓迎するよ。1人の生活だしな」

蓮「その時はお邪魔します。それじゃあまた」

平塚「ああ…」

バタン……ブロロロロロ…

平塚「さーて、これで元通りっと」

平塚「………」

ガチャッ

平塚「…誰もいない。当たり前だけど」

バタン
スタスタ……



平塚「寂しくなんかないもん」

ールブランへ向かう高速 冴の車内ー


冴「どうだった?静との生活は」

蓮「楽しかったですよ。それにすごく優しい人でしたから」

モルガナ「良いゴシュジンだったな」

冴「そう。やっぱり静に任せて正解だったみたいね」

蓮「はい。それはもう大正解ですよ」

冴「ずいぶん気に入ったみたいね?静のこと。浮気はだめよ?」

蓮「何の事ですか?」

冴「あら?知らないとでも思ったの?これでも怪盗団を追い詰めた検察官なんだから甘くみちゃだめよ」

蓮「でもあの時の冴さん割とポンコツだった気が」

モルガナ「確かに」

冴「うるさいわね」

冴「まあいいわ………明日なんでしょう?”あの日”は」

蓮「はい」

冴「ちゃんとお友達ともお別れしてきたの?」

蓮「……はい」

冴「そう…まあいつでも会える距離だからそこまで気にしなくてもいいんだけどね」

蓮「けじめみたいなものですから」

冴「そうよね、何しろ君は、あの”怪盗団のリーダーとしての責務”を全うしなければならないのだから」

蓮「はい」

冴「大丈夫よ。あなたたちには確かに味方がいる。それを忘れないで」

蓮「……はい…」

モルガナ「やってやろうぜ、レン」

ー八幡宅ー


八幡「………」ポケー

小町「………」

八幡「………」ハァ…

小町「………」

八幡「………」ポケー

小町「ちょっとお兄ちゃん」

八幡「なんだ?」

小町「久しぶりに目が腐ってるよどしたの?」

八幡「そうか…久しぶりにか…」

小町「どしたの携帯見てはため息ついたりして?」

八幡「お兄ちゃん疲れてるんだわ。もう遅いし寝る。おやすみ」

小町「ちょっとお兄ちゃん!?」グイッ

八幡「なんだよ」

小町「ねぇ…ほんとどうしたのお兄ちゃん?なんか…すごい…」

八幡「んだよ」

小町「なんでうっすら泣いてるの…?」

八幡「…何でもねえよ」

スタスタスタ…


小町「ねえ!お兄ちゃん!ねえってば!……………ばか」

ー八幡の部屋ー


八幡「………」

八幡(わかってた事だ)

八幡(いつか来るとわかってた事だろ)

八幡「………」

八幡(初めからわかってた事なのに)

八幡(なんで俺はこんなにつれぇんだ?)

八幡(蓮………お前…)

八幡「………」

ー八幡の部屋ー


八幡「………」

八幡(わかってた事だ)

八幡(いつか来るとわかってた事だろ)

八幡「………」

八幡(初めからわかってた事なのに)

八幡(なんで俺はこんなにつれぇんだ?)

八幡(蓮………お前…)

八幡「………」

~時は少し遡って~

ー夕方 とある橋の上ー


八幡「…今なんつった?」

蓮「さよならだ」

八幡「…それってあれか?一ヶ月かそこらで帰るっつってたやつか?」

蓮「そうだ」

八幡「にしちゃえらい早くないか?」

蓮「思ってたより早く帰れる事になったんだ」

八幡「そう、なのか…」

蓮「ああ」

八幡「それ…鈴井には?」

蓮「まだ言ってない。まずお前にと思ってたから」

八幡「そう…か……」

八幡「なあ、お前の地元ってどこだったっけ?」

蓮「四茶だ」

八幡「ぶっちゃけそんな遠くねえよな?」

蓮「ああ。電車乗り換えて何だかんだで一時間かかるかどうかだな」

八幡「そうだよな…」

蓮「ああ…」

八幡「………」

蓮「………」

八幡「大した距離じゃねえじゃねえか!何でこんな深刻な空気作りやがったんだ!?ああ!?」

蓮「何かそれっぽいかなって。ははは」

八幡「笑うとこじゃねえよ!」

八幡「ったくよ…お前ほんと何なんだよ?」

蓮「まあまあ。どうどう」

八幡「なだめんな!で?学校はどうすんだよ?」

蓮「来週にはもう秀尽かな」

八幡「そうか…そう考えるとものすげぇ急だな」

蓮「まあそうだな。本当に思ってた以上にスムーズに事が運んだから」

八幡「ふーん。そうかい」

蓮「ああ」

八幡「なあ。お前、明日忙しいんだっけか?」

蓮「明日は色々あるな」

八幡「そっか…俺も色々あるんだ」

蓮「そっか」

八幡「………」

蓮「お互い暇なら遊びに行きたかったな」

八幡「そうだな。同感だよ」

蓮「お前は何する予定なんだ?」

八幡「俺か?俺は…まあ、そうだな………戦いかな」

蓮「かっこいいな」

八幡「俺は俺で色々あってな。正直こんなに早く帰っちまうなら必要ない事だったが…」

蓮「必要ないって?」

八幡「なんでもねえよ」

蓮「そうか」

八幡「で?お前はどんな予定なんだ?」

蓮「俺は…宣戦布告だ」

八幡「はあ?何だそれ?どっか戦場にでも行く気か?」

蓮「まあそんな感じかな」

八幡「お前ってたまに意味わかんねえんだよな…」

蓮「………」

蓮「八幡」

八幡「んだよ」

蓮「俺と友達になった事、後悔してるか?」

八幡「何だそれ?するわけねえだろそんなもん」

蓮「そうか。俺もだ」ニコッ

八幡「…なあ、この際だから一回だけどうしても聞きたい事があるんだが…いいか?」

蓮「ああ。隠し事の件だろ?」

八幡「………おう」

蓮「そうだな…どう答えればいいかな…」

八幡「………どうしても言えない事なら…」

蓮「そもそもが言えない事だからな」

八幡「…そうか、そうだよな。だから隠してんだもんな」

蓮「…すまない」

八幡「気にすんなよ。お前が嫌味とか嫌がらせとか不信だとかで隠してるわけじゃないってのは十分理解してるよ」

蓮「そうか。ありがとな八幡」

八幡「ああ…。まあ…ちょっと寂しい感じはあるけどな…」

蓮「………八幡」

八幡「…何だよ?」

蓮「短い間だったけど、本当にありがとう。お前のおかげで楽しかった」

八幡「…おう…俺もだ」

蓮「じゃあ、これで一旦さよならだな」

八幡「ああ…じゃあな」

蓮「元気で。また会おう」

八幡「おう。またな」

スタスタスタ………


蓮「八幡!」

八幡「……?」




蓮「明日の夕方、ビジョンを見てくれ!!それが俺の隠し事だ!!!!」

~時は現在に戻って~

ー八幡の部屋ー


八幡(ビジョンてなに?)

八幡「はぁー………」

八幡(何だよビジョンって…街頭ビジョンとかってことか?)

八幡(まあいいか…別に今生の別れってわけじゃねえんだし)

八幡(つか最後の最後まで蓮は蓮らしい感じだったな…)

八幡(来週から1人か…隣のクラスに鈴井がいるからいいか)

八幡(やべえ。蓮がいないクラスって相当つまんなそうだぞ……元の俺に戻るまである)

八幡「………」

八幡(多分あいつは何か区切りっつーか、けじめのつもりでああいう話し方したんだろうな)

八幡(けじめか……けじめ。区切り。けじめ…)

八幡(うむ。やっぱ蓮でなく自分のために最後までやる事はやるべきだな。全ては明日だ…寝よう)

~12月2日~

ー朝 葉山法律事務所ー


葉山弁護士「お早うございます先生。どうですか結果の方は?……はい……………はい?……すいませんもう一度お願い出来ますか?」

葉山弁護士「………検査続行不可能!?いやいや………は?……なぜ、でしょうか?」

葉山弁護士「………はぁ!?警察上層部からの圧力!?特捜が動いた!?しかも…えっ?!内偵ですって!?そんなバカな…なぜいきなり…」

葉山弁護士「ちょ……ちょっと待ってください!では鴨志田は!?鴨志田の件は!?せめてそれだけでも………え!?無理!?はぁ!?」

葉山弁護士「ちょっと待ってくださいよ…すでにあれだけの金を渡してるじゃないですか!それに見合った働きぐらいしてくれないと!!……え?」

葉山弁護士「金は返す?関わるな?ふざけるな!何様だ貴様!!俺がこれまで貴様にいくらやったと思ってるんだ!?ちょっと特捜が動いたって情報ぐらいでビクついてんじゃねえぞテメェ!!!!」

葉山弁護士「おい待て!ふざけるな!貴様が逃げようが俺は追いかけるからな!何なら上にチクってやる!俺との関わりを絶とうなど無駄だからな!」

葉山弁護士「……ふん。そうだよ脅迫だ。だからテメェは黙って俺の言う通りの結果を作ってくれりゃそれでいいんだよ!!わかったか!!!」

葉山弁護士「…?おい……おいどうした?おい!!…切りやがった。いや…今のは…」

葉山弁護士(切ったというよりも……)


ガチャッ

八幡「おはようございます。失礼します」

葉山弁護士「君は………開屋くん、だったか?」

八幡「はい。お邪魔します」

葉山弁護士「どういう件かわからないがすまない、今仕事がかなり取り込んでてね、改めて今度来てくれないか?」

八幡「今度はありません。これが最後です」

葉山弁護士「意味はわからんが今はまずいんだ。用件なら改めてからにし」

八幡「精神鑑定の件、ご破算になっちゃったからですか?」

葉山弁護士「……何?何だと?」

八幡「だから。あなたが医者に精神鑑定で”精暴”扱いにするため虚偽の診断を依頼してた件ですよ。それ白紙になっちゃったんですよね?」

葉山弁護士「なぜ…君が…」

八幡「どうして俺が知ってるかですか?そりゃ俺が密告したからに決まってるじゃないですか」

葉山弁護士「……何を言ってるのかわかってるのかお前は?」

八幡「もちろん。つかあんたただの犯罪者の片棒担ぎじゃねえか。しかも悪人を金で自由にする極悪人」

葉山弁護士「冗談で済まない事を言ってるという自覚はあるのか?あぁ?」

八幡「そりゃこっちのセリフだよバカヤロウ。冗談じゃ済まされねえ事してんのはあんたじゃねえかよ」

葉山弁護士「ガキが。誰に向かって口利いてんだ?あぁ!?」

八幡「はいはいそういうのいいんで。で?どうするんすか?自首をオススメしますけど?」

葉山弁護士「何イキがってんだよ小僧。大人をナメてっと痛い目見せんぞ!?コラァ!!」ドカッ

ガターーン!!

八幡「あーあ椅子が可哀想。で、どうすんすか?出来れば今すぐにでも諦めてくれませんかね?」

葉山弁護士「はっ。何をだよ?」

八幡「まあそうだよな。そりゃ弁護士様が言い合いで折れるわけねえよな。つーわけで…はい、証拠」

葉山弁護士「証拠だと?」



『ええ、そうです鴨志田です。出来れば今日中にお願いします。はい』

葉山弁護士「1?」

『どうにか精暴で行きたいので…ええ、そのように。え?待ってください!夏にもすでに………わかりました。ではお願いいたします』

『クソ医者がふざけやがって…倍を出せだと!?ふざけるな!!』



八幡「これな、あんたの車内にボイスレコーダー仕込んだら30日の朝録れたんですよ」

葉山弁護士「テメェ…」

八幡「録音した音声の感度上げるとね、相手の声もバッチリ拾えてるんですわ。そっちのやつも聴きます?あそうですか聴きたいですか。ほいっと」

葉山弁護士『どうにか精暴で行きたいので』

医者『わかりました。例の詐欺教祖も同じ条件でいいんでしたよね?』

葉山弁護士『ええ、そのように』

医者『じゃあ今回から倍の金でお願いしますね』

葉山弁護士『え?待ってください!夏にもすでに』

医者『私もねぇ、診断書を”精暴”に見えるようにするなんて危ない橋渡ってるもんですからね。それに鴨志田の結果を思い通りに出来ればあなたへの見返りはかなりのものでしょう?倍以下ではやれませんよ』

葉山弁護士『わかりました。ではお願いいたします』

葉山弁護士『クソ医者がふざけやがって…倍を出せだと!?ふざけるな!!』



葉山弁護士「グッ………」

八幡「まだ聴きます?このレコーダー借り物なんで早く返したいんですけど」

葉山弁護士「お前、何者だ?」

八幡「弁展高の開屋です」

葉山弁護士「ふざけるな!ただの学生がこんな事するか!誰の指示だ!?あぁ!?おいガキ!テメェの後ろに誰がいんだよ!?」

八幡「誰も、と言いたい所ですが俺にはちゃんと後ろ盾があります」

葉山弁護士「誰だ!?誰なんだ!?」

八幡「検察、それも特捜です」

葉山弁護士「ばっ………バカも休み休み言え!お前みたいなガキ1人に組織が動くものか!」

八幡「は?何でそう言い切れるんですか?」

葉山弁護士「ガキ1人の言い分をいちいち聞くほど奴らは暇じゃねえだろうが!」

八幡「まあそうですね。普通ならそうかもしれませんね。でも…」

葉山弁護士「あぁ!?でも何だ!?」

八幡「故意に精神暴走事件の被害者に仕立てる悪人を知ってるガキなんですよ?俺は」

葉山弁護士「グッ……」

八幡「しかも今みたいな証拠まであるし。さすがにトークだけで動いてくれるわけないですからね」

葉山弁護士「いっいいいいいるのか!?検察のやつが近くにいいいるのか!?」

八幡「見ての通り後ろには誰もいませんよ。ただ特捜が俺に付いてくれてるのは確かです。その証拠を見せておきましょうか?」

葉山弁護士「見せてみろ!あるもんならな!!」

八幡「はいこれ。特捜の指揮官による条書です」

葉山弁護士「………捺印が本物だと!?クッソ!!!クソ!!!何でだ!?どこからこうなった!?ふざけんな!!」

八幡「ちなみにそれ、破ったらあんたマジで終わりますよ。検察から出てる条書を破っちゃうなんてそれ逮捕状を目の前で破るのと似た行為ですし」

葉山弁護士「ガアァァァァァーーーーッッッ!!!!」

八幡「まあまあ落ち着いてくださいよ。そこにしっかり書いてありますよね?見えませんか?」

葉山弁護士「ああぁ!?」

八幡「検察に全ての情報と証拠を提供し、捜査協力するなら恩赦を与えるって。これ、司法取引ってやつですよね?俺はよくわかりませんけど」

葉山弁護士「見せろ!よこせ!!」バッ

葉山弁護士「………グウゥゥゥゥゥゥ~~~~ッッッ!!!!」

八幡「てなわけで諦めた方がいいっすよ」

葉山弁護士「何なんだお前は…何のためにこんな事を…」

八幡「あんたさ、雨宮蓮の前歴のこと学校に流したろ?」

葉山弁護士「だったら何だ1?」

八幡「実はあいつ俺の友達でね。その友達があの噂のせいでえらく迷惑してたからさ。その犯人見つける延長線上であんたを知って、永遠にちょっかい出せないようカタにハメる事にした」

葉山弁護士「ふざけんな!そんなしょうもない事でこの俺がやられてたまっかよォォ!!!」

八幡「しょうもねえだと!?お前こそふざけんな!!俺の大事な友達だ…どうしてあいつが総武に転校したのを知ってたのかは知らねえが二度とあいつに関わるな!いいな!?」

葉山弁護士「ハッ。前歴持ちのダチならテメェも同じ前歴持ちか?このクソガキが」

八幡「…これ以上キレさせんなよクソ野郎。言っとくがあんたを社会的に完全抹殺する事だって出来るんだからな」

葉山弁護士「あぁ?俺をか?おいおいただのガキが息巻いて調子乗り過ぎなんじゃねぇかぁ!?なぁ!?」

八幡「……すまねぇな葉山…こりゃ出すもん出さねえと本当の意味で片付かなさそうだわ…」

葉山弁護士「あ!?何ほざいてやがんだガキィ!?」

八幡「あんたが精神鑑定で虚偽の診断をさせてた証拠は何も音声だけじゃない」

葉山弁護士「は…?」

八幡「他の物的証拠も持ってる」

葉山弁護士「そっ………はぁ…?えっ…?」

八幡「ここに来た時、あん時あんたはもっと注意しとくべきだったんだ」

葉山弁護士「インタビューの時か?だが俺は質問に答えただけだ!物的証拠など」

八幡「ああそうだよ。あんたは俺と向き合ってたからな。つまりそれは、俺が時間稼いであんたをその場から動かさないためにした事だったんだよ」

葉山弁護士「何言ってんだ…何のために…?」

八幡「あの時、俺は1人じゃなかった」

葉山弁護士「……………バカな……」

八幡「そう、葉山隼人。あんたの息子が証拠を探し出してくれたんだ」

葉山弁護士「隼人が!?おいおいお前…俺の息子を何だと思ってんだ?」

八幡「あんたの息子はな、あんたの事を信じようとしてたよ。けどそれも、あんたと悪医者との繋がり、そして密かにやってる事が証明されたと同時に膝から崩れ落ちた」

葉山弁護士「………」

八幡「どうよ?自分の息子に自分を追い込む証拠を探られた感想は?最悪だろうな。でもよ、あいつの方がもっと最悪でもっとキツかっただろうぜ!」

葉山弁護士「………」

八幡「どんな証拠かは言わなくてもわかるよな?あんたが用意したいくつもの名義から医者への金の流れが全て記載された書類だ」

葉山弁護士「!?嘘だろ…嘘だろ………嘘だろぉ!?」ガタガタガタッ

八幡「………」

葉山弁護士「はっ……はっはっは!!あるじゃねえか驚かせやがってクソガキがぁ!!」

八幡「そりゃ今頃デスク見ても無駄だよ。何の痕跡も残してるわけない」

葉山弁護士「はっ?」

八幡「誰でもカメラ携帯してるんだから。撮るだけでいいもんな。あんたも持ってるだろ?スマホをさ」

葉山弁護士「あぁぁ………あああぁぁぁぁ………」

八幡「つーかほんと慌てすぎだろ。今の行動、証拠はここですよって言ってるようなもんじゃねえか」

葉山弁護士「は!?いや………いや!!自分の書類をな!確認しただけだからちょっと仕事で使いそうなアレだ書類をなそれだけだ証拠になどならん!」

八幡「はいはい。だからもういいって。とっくにその書類はバッチリ記録してあっから」

葉山弁護士「嘘を言うな!!」

八幡「だから嘘じゃないって。そのコピーを提出したからこそ、検察は俺に付いてくれてる」

葉山弁護士「あぁあ……がぁぁっぁあぁぁーー!!!!」

八幡「言い逃れは不可能だよ葉山の親父さん。俺と葉山がここに来た時、その時すでにあんたの終焉は決まってたんだ」

葉山弁護士「何が終わりだ!スマホの画像など捏造可能!日時記載等証明不可!よって証拠の価値なし!ただのゴミだ残念だったなクソガキがぁぁぁぁーー!!!!」

八幡「まあそうなるかもと思ったからな。ちゃんと動画を撮らせてある。ここに入る前からバッチリ記録されてる。ああもちろん日時の証明なら心配いらない。世界各国の時計を画面いっぱいに表示させた俺のスマホが同じ画面に映ってるから」

葉山弁護士「は!?はあ!?だって…いや!あの時お前の携帯鳴ってたろうが!」

八幡「あーはいはい。あんたの目の前で出した携帯は借り物。葉山と連絡先交換したくねえし。つーかあんたはあの携帯どっかで見た事あるはずなんだけどな。気付かなかったか?そっか残念」

葉山弁護士「ふざ!ふっふざけ!!ふざっけ……ひゅざけるな……ふざけ……」

八幡(友達になってくれたお前のために、友達でいてくれた時間にさよならを)

八幡(そして次は親友として会えるように、今ここで終わらせてやるからな)




八幡「葉山弁護士。チェックメイトだ」

葉山弁護士「…殺してやる…」

八幡「はっ?」

葉山弁護士「クソガキが!社会的に!殺してやるからな!!」

八幡「えっマジすか」

葉山弁護士「楽しみにしてろよな!俺の持つあらゆる力をフルに使ってテメェをぶっ殺してやるよ!!!開屋ァァァ!!!」

八幡「え?開屋?誰それ?」

葉山弁護士「あ!?」

八幡「まさか雨宮にしたみたいに俺を潰しにかかる気ですか?出来るもんならどうぞ。でも無駄と思いますよ?なんせあんたに教えた名前はぜーんぶデタラメだから」

葉山弁護士「何だと!?」

八幡「弁展高だったっけ?探せるもんなら探してみたらどうですかね。見つけたら教えてくださいよ。千葉のシスコンとして俺も行ってみたいから」

葉山弁護士「貴様ァァァ!!!!」

八幡「あんたはエリートさんだからね、どうせ有名な進学校しか知らないんでしょ?ま、そんなんだから俺の罠の入り口って事にすら気付かずに俺をここに招き入れてまんまとハマっちまったわけですが」

八幡「せめてその弁展高って名前と、あの時鳴った携帯にまともな違和感を持つ事が出来ればまだ違ったかもな」

葉山弁護士「開屋ぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」

八幡「うるせえよ。後は自分で話しな」

葉山弁護士「なんだと!?」

八幡「俺が1人で乗り込んで来るわけないだろ?さっき言ったじゃん。検察が付いてるってよ」

葉山弁護士「まさか!?」

八幡「見ての通り、後ろには誰もいない。が、このビルの表にはたっくさん待ち構えてるぜ。良かったな弁護士で。自分の弁護が出来るから」

葉山弁護士「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁっぁぁーーーーーッッッl!!!!!!!!」

八幡「うるせぇヒーローだな」

ー葉山法律事務所の前ー


八幡「………」

冴「比企谷くん、お疲れ様。無線で聴いてたけど立派だったわよ」

八幡「どもっす………後は頼んます…」

冴「ええ、大丈夫よ。任せてちょうだい。さあ皆、抑えるわよ!!取り掛かって!!!」

特捜たち「了解!」

ザッザッザッザ……



八幡「………」

スタスタスタ…

ー陽乃の車の前ー


八幡「ただいま戻りました…」フラフラッ

陽乃「ひっきがっやく~~~ん!お疲れさま!…ってうわっ!?」トサッ

八幡「陽乃さん…少しだけこのままでいいですか…。ほんと少しだけでいいんで……その胸、貸してください…」

陽乃「お姉さんのお胸は高いぞ~?」

八幡「すんません…いつものノリする気力もなくて……さすがにしんどくて…」

陽乃「そっか…。ほんとよく頑張ったよ比企谷くん…お姉さんが褒めてあげる」ナデナデ

八幡「陽乃さん…すげぇ嬉しいよ…」

陽乃「うん…………うん……」

八幡「陽乃、さん……すげぇ、怖かっ……たっす…」

陽乃「大丈夫だよ…どこにも行かないよ……。ここにいるからね………」ギューッ

~時は遡って11月29日~

ー夜 とある橋の上ー


八幡「そうか。無事セット出来たか」

葉山「ああ。ちゃんと車内の中央あたりにボイスレコーダー隠しておいた」

八幡「もし見つかって捨てられたら雪ノ下に何されるかわからん…そもそも学生に使える手なんか限られてるし。ま、これで何か拾えるといいな」

陽乃「それは大丈夫だと思うよ」

八幡「何か確信が?」

陽乃「だって目下最優先事項は鴨志田の件なんだもの。明日の朝から面会に行くらしいから、その面会が終わり次第すぐ依頼するでしょ普通に考えて」

葉山「確かに」

八幡「これで物的証拠は出揃うかもな」

葉山「ああ、そうすれば後は叩くだけだ」

陽乃「そだねぇ。問題はその証拠をどう扱うか、だけど」

八幡「それですよね…本当そこさえ…」

陽乃「ま、その件はちょっと私に任せてみてよ!」

八幡「じゃあ陽乃さん、お願いします」

陽乃「おおっと?比企谷くんにしては珍しく素直だね?」

八幡「そりゃ陽乃さんを信じてますから」

陽乃「そっか…お姉さん嬉しい!頑張っちゃうよ~!」

~時は少し現在に近付いた12月1日~

ー夜 とある橋の上ー


平塚「やれやれ、何事かと思えば。君たちは一体何をやってるんだ?」

八幡「平塚先生?どうしてここに?」

陽乃「うん。実はね、静ちゃんと仲良い人が検察官なわけ。それで繋いでもらおうかなって思って」

八幡「えっ!?マジっすか?」

平塚「まあな…。だが陽乃、私はまだ繋げるとは一言も言ってないし、なぜ紹介しなければならんのか具体的な理由も聞いてない」

陽乃「やだなぁ、それはこれからじゃん!」

平塚「全く…。まあいい、お前と比企谷…それに葉山というメンツからしてもただ事ではないのだろう?話してみたまえ」

平塚「もっとも、聞いたからと言って繋げるとは限らないが」

陽乃「うん、それはもちろん静ちゃんが決める事だからね。早速だけど、実はね」

八幡「待って下さい陽乃さん」

陽乃「え?なんで?」

八幡「俺が話します。俺がやると決めた事だから」

ーはちまん説明中ー


八幡「………ってわけで、どうしても信用出来る検察の人間が必要なんです」

平塚「比企谷…。君というやつは本当に厄介事に好かれるたちだな」

八幡「ええ、そりゃもう。何度迫られたかわからないぐらいです」

陽乃「で?どうかな静ちゃん?確かほら、前に仲良い人が検察だって話してたでしょ?名前忘れちゃったけど」

平塚「まあ…そうだな、紹介するのはやぶさかではない。私と永い付き合いのやつだ。信用も信頼も出来るだろう」

葉山「なら紹介してもらえるんですね?」

平塚「だが先に聞いておきたい。お前たち、ただの学生が一体何を相手にしようとしているのかわかっているのか?」

八幡「もちろん」

葉山「当然です」

陽乃「だからこうしてここにいるんだよ」

平塚「そうか…わかった。呼んでみよう。だがその本気すぎる目を少しばかり和ませておきたまえ」

ー数十分後ー


ブロロロロ……キッ…………ガチャ…バタン

平塚「来たか。お前ら、紹介する。検察官の新島冴だ」

冴「初めまして。新島よ」

八幡「初めまして。比企谷八幡です、よろしくお願いします」

葉山「葉山隼人です」

陽乃「雪ノ下陽乃です」

冴「それで?大体の事は静から聞いてはいますが。何でも精神暴走事件に関係するものだとか?」

八幡「はい。とある人物が精神暴走事件を悪用して不正に利益を得ようと画策しています」

冴「そう。その根拠は?ただの噂程度では私たちは何も出来ないわよ?」

八幡「もちろんわかってます。なので…取引したいんです」

冴「取引ねぇ…よりによって検察の私に?」

八幡「はい。あなたにしか出来ません」

冴「でもやすやすと信じていいのかしら?私が悪人かもしれないのよ?」

八幡「はい信じます」

冴「即答とはね。あなたは人を疑うという事をしないのかしら?」

八幡「いえ、紹介人が違えば話は別です。何しろ新島さんは平塚先生の紹介ですから」

冴「…ずいぶん信じてもらえてるのね、静は」

平塚「まあな。これも私の教育への」

冴「はいはいそういうのは今度聞いてあげるから。それで?取引というのは?」

八幡「俺たちの味方になってください。代わりに精神暴走事件を悪用する人間を摘発するのに十分と思われる量と信頼度の高い証拠を全てお渡しします」

冴「…見せてもらえるかしら?」

八幡「はい。これです、どうぞ」

冴「……………鴨志田………秀尽…………………葉山弁護士ですって!?」

平塚「なんだ、知ってるのか?」

冴「つい昨日、捜査線上に名前が上がったうちの1人でね。私の管理下のもと、特捜でマークしてる男よ」

陽乃「え!?冴さんって特捜なんですか!?」

葉山「…嘘だろ…」

冴「本当よ」

八幡(特捜つったらエリート中のエリートじゃねえか…マジかよ)

平塚「マークされてるって事は……葉山、君のお父様のやってることはすでにどこかから知れていたという事だな」

葉山「くそっ…」

冴「そういえばあなた葉山と言ってたわね。まさか息子さん?」

葉山「そうです…その弁護士の葉山は父です……」

冴「そう…」

八幡「この葉山が主に証拠熱めをしてくれました。新島さん、出来るだけ優しい対応をしてやれませんか?」

葉山「比企谷…」

平塚「私からも頼むよ冴。自分の父を暴こうなんて並大抵の決意ではない、それを汲んでやってはくれないか?」

冴「そうね…そうしたい所だけど…難しいかもしれないわ」

陽乃「どうしてですか?」

冴「精神暴走事件はね、私が追ってた事件なの。もう少しという所で怪盗団に関わり……まあそれはいいわ」

陽乃「怪盗団…あの怪盗団を冴さんが…」

平塚「だが怪盗団はもう捕まったろ?」

冴「ええ、話がそれたわね。とにかく身内贔屓のような事は出来ないわ。それは正義を揺るがすものになりかねない」

葉山「そうですか…」

八幡「…新島さん」

冴「何かしら?」

八幡「司法取引って形でどうにか軽減させてやれませんか?」

冴「………」

八幡「怪盗団と精神暴走事件、この2つって微妙にリンクしてるじゃないですか?」

八幡「で、それを新島さんが追っかけてたんなら鴨志田についても詳しいはずです」

八幡「葉山の親父はその鴨志田の事件を自分の利益に悪用しようとしている」

八幡「新島さんにとっても警察の闇を暴くっていう手柄は美味しいと思うんです」

冴「………」

八幡「精神暴走事件を追ってたなら尚さら俺たちが提示出来る情報と証拠の重要度は高いはずです」

八幡「そこで葉山の親父からあらゆる情報を取り出す代わりに取引を。例えば俺たちが集めた証拠以外の深く突っ込んだものが出なければ取引は不成立とか…そういう形じゃダメですか?」

冴「…はあ。わかったわ。確かにあなたの言う通りなのよね。現に精神暴走事件を取り巻く闇は深すぎる」

冴「故に形に残るものなんて存在する方が珍しいくらい。いいわ、その話乗りましょう」

葉山「本当ですか!?」

冴「ただし、過度な期待はしないで。葉山くん、あなたのお父さんがした事は決して許される事ではないわ」

葉山「はい………それでも、父親…ですから……」

冴「そう。わかったわ。ならこのファイルは私が預かっていいのね?」

八幡「もちろんです。それに明日も何か新しい証拠が手に入るかもしれません」

冴「明日?なぜ?」

八幡「明日、俺は葉山弁護士に直談判しに行くつもりです。直接対決を以て全てを終わらせます」

冴「そう。本気というわけね。いいでしょう、特捜の総力を挙げて比企谷くん、あなたをバックアップするわ」

八幡「ありがとうございます。新島さん」

冴「ところで君はどう決着を付けるつもり?」

八幡「俺の信じる正義のままに」

葉山「………」

陽乃「比企谷くんかっこい~い!」

八幡「……今のなし。普通にアレです、証拠突きつけて可能ならその場で自白させちゃいたいな的な…」

冴「あら、撤回しちゃうの?いいじゃない、正義のままに。私はそっちを支持するわ」

平塚「私もだ。比企谷、何も照れる事はない。その言葉通り、君は君の正義のままに結果を手に入れてみせろ」

八幡「…はいっす」

冴「ただいくら証拠を持っていったところで相手は腕のいい弁護士よ?勝算はあるの?」

八幡「はい、その辺は陽乃さんと相談して決めてあります」

平塚「聞かせてもらおうか。いいな陽乃?」

陽乃「もっちろん!」

~時は現在に戻って12月2日~

ー昼過ぎ 陽乃の車の前ー


陽乃「もう落ち着いたかな?震えも止まったみたいだし」

八幡「はい。すんません無様なとこ見せちまって」

陽乃「そんなの気にしなーい!」

冴「比企谷くん」

八幡「新島さん。本当にありがとうございました。まさか本当にたった一晩で特捜動かして援護してくれるなんて」

冴「それはこちらのセリフよ。おかげでかなり展開がスムーズだったわ。君、なかなか見どころがあるわ。検察官を目指してみない?」

八幡「俺でもやれますかね?」

冴「もちろんよ。私は今回の怪盗団の一件が全て片付いたら辞職するつもりなの。だから後継者はしっかり選んでおきたくて」

八幡「どうして…ですか?」

冴「私は弁護士になろうと思ってね」

八幡「弁護士…」

冴「そう。君も見たでしょう?汚い大人が弁護士をし、偽善の救世主を気取っている所を」

八幡「はい…」

冴「だからよ。私は自分の正義に基づいた弁護士になるわ」

八幡「冴さんなら必ずなれると思います。間違いなく」

冴「ええ、もちろん。なってみせるわ。だから、というわけではないんだけど…」

八幡「??」

冴「君には検察のトップを目指してほしい。私では出来なかった事よ。でもあなたなら絶対に出来る。意志の力と信念があなたにはあるから」

八幡「………」

冴「別にあなたの進路に口を出す気はないし、そんな権利は誰にもないってわかってる。でもね、世の中にはいるの。”なるべくしてなる人間”が。必ずね。君も近くで見たでしょう?彼の事を」

八幡「…そうですね…」

冴「彼の運命はどこまでも定められていたわ。でも最終的には彼自身の手で彼らしい運命を手に入れると思う。紆余曲折を経てたどり着いた場所に立つ時、自分は一体何になっているのか。それはこれから決まる事」

冴「でもきっと彼の事だから、彼にしかなれないものになるんでしょうね」

八幡「そうですね…そうだと思います」

冴「もう一度言うわ、比企谷八幡くん。あなたにはやれる事がある。確かに努力も必要。だけどその努力は必ずあなたの後悔を土台に高みへ続く階段になるわ」

冴「良ければ私の夢、託していいかしら?」

八幡「…わかりました。その夢、俺が受け取ります」

冴「嬉しいわ。さすが、彼の親友なだけあるわね?」

八幡「親友、か……。あ、そういえば陽乃さん今って何時ですか?」

陽乃「え?もうお昼すぎっていうか夕方って言った方がいいぐらいの時間だけど?」

八幡「いけね。すいません俺行かなきゃいけないとこあるんで」

陽乃「じゃ送ってこうか?」

八幡「いや、遠いんで大丈夫です」

冴「どこに行くの?」




八幡「渋谷に」

ー夕方 渋谷の街頭ビジョン前ー


小町「ねえお兄ちゃん」

八幡「なんだー?」

小町「遊びに行こうって誘ってくれたのは嬉しいよ?珍しいし。でもなーんでここなわけ?」

八幡「なんでかなぁ?」

小町「はぁ…お兄ちゃん最近おかしかったけど今日はまた一段と変だね。小町は心配してるんだからね!あ、今の小町的に超ポイント高い☆」

八幡「あーうん、そうね」

小町「…はあー。まいいや!109いこ109!!」

八幡「ちょっと待てって………ん?」

ザザッ……
ザッ……ザーーーーッ…



街頭ビジョン『……我々がこの国を頂戴する!!』

後編 完

あとエピローグ貼って終わります

エピローグ

~12月3日~

ー教室ー


八幡「………」

戸塚「おはよ、八幡!」

八幡「おはよう彩加」

戸塚「…?なんか元気ないね?」

八幡「気のせいだ」

戸塚「そう?ならいいんだけど…」

結衣「やっはろー!彩ちゃんヒッキー!」

戸塚「由比ヶ浜さんやっはろー」

八幡「おう」

結衣「あれ?」

八幡「………」

結衣「ヒッキー…なんか元気ない?」

戸塚「由比ヶ浜さんもそう思う?」

八幡「だから気のせいだっつの」

結衣「そかなぁ……」

ガラララッ


平塚「席につけー」

平塚「えーまず最初に…。急だが雨宮が転校した」

ざわざわ・・・ざわ・・・

結衣「え……」

葉山「えっ」

優美子「はぁ!?」

戸塚「………」

海老名「ええぇ……」

戸部「え!?ちょ…マジ!?何で!?」

平塚「ご家庭の事情だ」

八幡「………」

平塚「あいつがいたのはほんの数日だったが…………その…」ウルッ

八幡「………」

平塚「ま、まあとにかくそういう事だ。HR終わり!」

ガラララッ

ざわざわ・・・ざわわ・・・・
ざわ・・・ざわわわ・・・

結衣「ちょっとヒッキー!どういうこと!?」

葉山「いきなりすぎるなどういう事なんだ?」

優美子「ヒキオ説明しろし!」

戸部「ヒキタニくーんどゆことよぉ!?」

海老名「そうだよ!せっかくのメガネ男子が!」

戸塚「あ、あの…皆でそんなに聞いちゃ……でもどういう事?」

八幡『あーもーうるせーうるせー!俺に聞くな!」

戸部「つってもよぉ!ヒキタニくん以上の友達ってここじゃ他にいねーべ!?」

海老名「家庭の事情ならしょうがないけど…皆やっぱり気になっちゃうんだよ」

戸塚「うん、そうだよね。短い間だったけどすっごい楽しい思い出くれたから」

葉山「そうだな。一言ぐらいあったのか?」

結衣「どうなの!?」

八幡「…そりゃあったよ」

優美子「で!?なんだって!?」

ガラララッ



志帆「比企谷くん?ちょっといいかな?」

八幡「お前もか鈴井…」

ー屋上ー


志帆「蓮、転校しちゃったんだってね?」

八幡「ああ…連絡あったのか?」

志帆「うん、あったよ。昨日ね」

八幡「そうか」

志帆「比企谷くんにはいつ話あったの?」

八幡「そりゃ………」

志帆「こないだの帰り…とか?」

八幡「…おう…」

志帆「そっか」

志帆「蓮ってすごいよね」

八幡「ああ…すげえ」

志帆「同い年なのにね?」

八幡「ほんっとすげえよ」

志帆「きっと同年代であれだけ色んなものを背負ってる人ってそうそういないと思うな」

八幡「そうだな…ほんっとそうだわ」

志帆「だよね?ふふっ」

八幡「ああ。負けてらんねえわ」

志帆「比企谷くんもそう思う?私もそう思ったよ!」

志帆「ふふっ」ニコニコ

八幡「…なんだよ?」

志帆「ううん。何かこう、ずいぶん顔が違ってるから。何となく吹っ切れたのかな~って」

八幡「え?そんなに顔違ってるか?」

志帆「うん。ゾンビだったのがちょっと人間寄りになったね!」

八幡「お前…それいつかの仕返しだな?このやろー」

志帆「わかっちゃった?あははっごめんごめん!」

八幡「まあそうだな…吹っ切れたっつーか…確かな目標が出来た」

志帆「目標?へぇ、どんな?」

八幡「俺な、検察官になる」

志帆「………」

八幡「検察官になって、特捜部入りして特捜を軽く動かせるぐらいのやつになって、そんで俺は俺の正義のままに生きる!」

志帆「…そっか!うん、いいと思うよ!応援する!」

八幡「ありがとな鈴井。蓮とお前がいなきゃ、こんな決意出来なかった。…つーか選択肢にすらなかったよ」

志帆「そうなの?」

八幡「ああ。あいつが義賊のリーダーなら、俺は正義のリーダーになる。いつかあいつを超えてみせる」

志帆「…かっこいいな。頑張って!」

八幡「おうよ!」

八幡「つーか鈴井は気付いてたんだな?あいつの正体」

志帆「うん、もちろん。ちなみに他のメンバーの事も知ってるよ。もちろん本人には気付いてる事言ってないけどね」

八幡「そっか。やっぱ元秀尽はダテじゃねえな。あいつもお前も」

志帆「そうだよ~ダテじゃないんだよ?あははっ」

八幡「にしても昨日はビビったよ」

志帆「あ、うん。これだよね?この動画」




『……その前に、我々がこの国を頂戴する!!』

八幡「………これさ、あいつをよく知ってるとさ、仮面しててもまんまあいつじゃね?」

志帆「うん。まんまだね!」

八幡「だよな?ははっあっははははっ!」

志帆「うん!あははっ」

ブーッブーッ…ブーッブーッ…

八幡「……あれ?蓮から電話だ」

志帆「噂をすれば何とやらだね。っていうか昨日あれだけ世間を騒がせたのに…ほんととんでもないね、蓮は。あはは!」

八幡「確かにな。ははっ!………もしもし蓮か?」

蓮『八幡!助けてくれ!』

八幡「は!?何だどうしたいきなり!?」

蓮『大変なんだ!このままだと殺される!頼む助けてくれ!!』

八幡「落ち着け!どうしたらいい!?」

蓮『説得してくれ!』

八幡「おうわかった!………って説得?説得って?誰を?」

蓮『断ると心が痛むから皆平等に恋人になったのに!なのにそれって9股だ浮気だって彼女たちが殺しに来るんだよ!本当はこれ2月のイベントなんだけど今やっとけば回避出来るかもしれないだろ!?』

八幡「………は?」

蓮『だから!!!9股がバレて殺されそうだから皆を説得してくれ!!お前なら出来る八幡!助けてく』

プツッ…


八幡「やはり俺の友達は9股するなんてまちがっている」

おしまい

以上で完結です。それと2~22自分です。
元々は志帆コープ欲しかったなってとこから考え始めました。上手く話の波を作れませんでしたがもし見てくれた人いたらお付き合いどうもでした。

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