みほ「お姉ちゃんが哺乳瓶を持って襲ってきた」 (19)

杏「ありがとねぇ……わざわざ合同練習に付き合わせちゃってさ」

まほ「なに……問題ない。私たちとしても貴方たちのチームからは学ぶべきことが多い」

まほ「私たちはディーガを含め強固な戦車をいくつも保有しながら大敗を喫した」

まほ「それはきっと大洗に私たちの知らない強さがあったからなのだろう」

まほ「だからこそ今回の合同練習。私たちとしても大いに学ぶことがあった」

杏「相変わらず固いねぇ」

まほ「む、そうだろうか」

杏「そんなに畏まらなくてもいいってまあそれがまほちゃんの魅力なんだろうけどさ」

まほ「ま、まほちゃん」

まほ「西住流ならば何事にも真摯に取り組むそれが教えだからな」

まほ「そういった息抜きには慣れていないんだ」

みほ「あ、お姉ちゃん」

まほ「みほ……。今回もなかなかの活躍だったな」

みほ「ありがとう。今日はお姉ちゃんは戦わなかったけど」

まほ「もうすぐ私はドイツに行く。今は私が隊長をするよりエリカに任せた方が良いだろう」

エリカ「隊長……申し訳ありません! また負けてしまって」

まほ「ああ……エリカか」

まほ「西住流に敗北は許されない」

エリカ「うぅ……」

まほ「だが私はその考えは些か古いと考えている」

まほ「継続高校の隊長の言葉を真似するわけではないが」

まほ「失敗したとしてもそこから何か学べれば問題ない」

エリカ「……隊長」

みほ(自分だって留学で色々大変なはずなのにエリカさんを勇気づけるなんて)

みほ(やっぱりお姉ちゃんはかっこいいなぁ)

まほ「そうだ……みほ。久しぶりにお前の家に行ってもいいか?」

みほ「え? 私の家?」

まほ「もうじき会おうとしても会えなくなるんだ。最後にゆっくり話がしたい」

みほ「うん……いいよ。私もお姉ちゃんと沢山話したいことがあるし」


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みほルーム

みほ「じゃあお姉ちゃんは寛いでてね。お茶用意してくるから」

まほ「ああ……すまない」

みほ(久しぶりのお姉ちゃんとの会話)

みほ(正直ちょっと緊張する)

みほ(でも……やっぱり私お姉ちゃんのこと好きだから話し合わないと)

みほ「お姉ーー」

まほ「ばぶぅぅぅぅ!?」

みほ「ひぃぃ!? 何? 何が起きてるの!?」

まほ「おぎゃぁぁあぁぁああぁぁ」

みほ「え、お姉ちゃんが抱きついてきて……」

まほ「ママ! ミルク!」グイグイ

みほ「ちょ……哺乳瓶を押し当てないで」

まほ「バブゥゥ!」

みほ「お姉ちゃんステイ! お姉ちゃん落ち着いて」

まほ「すまない驚かせてしまったか?」

みほ「急に戻った!?……」

まほ「それでまず何が聞きたい?」

みほ「え、えっと……お、お姉ちゃん……その手に持っているのは何?」

まほ「これは哺乳瓶とガラガラだな」

みほ「なんでそんなもの持ってるの……?」

まほ「そんなの決まってるじゃないか」

まほ「お前をママにしに来た」

みほ「えぇ……」

みほ「ごめんね? お姉ちゃんの言ってることよく分からない」

まほ「よくよく考えてみれば私の人生。ずっと誰かに頼られてばかりだった」

まほ「西住流の後継者ということもありお母様からは厳しい教育同学年や後輩からは羨望と嫉妬の眼差しに晒され続けてきた」

みほ「お姉ちゃん……ごめんなさい。私がもっとしっかりしていれば」

まほ「別に気にしていない。お前が悲しむようなことじゃないさ……」

まほ「しかしそんな生活をすれば誰かに甘えることなど出来るはずがない」

みほ「え、えっと……つまり」

まほ「つまり私にはママが必要だということだ」

みほ「えぇ……」

まほ「みほ……私のママになって」

みほ「イヤだよ! なんでお姉ちゃん相手に赤ちゃんプレイしないといけないの!?」

まほ「……?」

みほ「なんでそこで不思議そうな顔するの!?」

まほ「姉妹で赤ちゃんプレイすることは当たり前じゃないのか……」

みほ「いや当たり前じゃないから!」
みほ「あうぅ……私のカッコいいお姉ちゃんはどこにいったの」

まほ「その姉は死んだ」

みほ「えぇ……」

まほ「そもそもお前に姉はいなかった」

みほ「じゃ、じゃあ……お姉ちゃんは何者なの」

まほ「お前の娘だ」

みほ「違うからね!」

まほ「バブゥゥ!」

みほ「無表情でバブるの怖い……」

みほ「そもそもお姉ちゃんにはエリカさんがいるでしょ」

みほ「エリカさんをお母さんにするべきだと思うけど」

まほ「失望されたら怖いじゃないか」

まほ「それに姉が部下に赤ちゃんプレイしているだなんて嫌だろ」

みほ「赤ちゃんプレイしてること自体嫌だけどね?」

まほ「ばぶぅ」

みほ「その赤ちゃん言葉怖いから辞めて……」

まほ「みほ……これも戦車道よ」

みほ「お姉ちゃんいっつもそれで誤魔化してるよね?」

まほ「みほ……これはお前の為でもあるんだ」

みほ「え……私のため?」

まほ「そうだ。もしお前が将来子供が出来たときちゃんと育てられなかったらどうする?」

まほ「姉として心配なんだ」

まほ「だから頼む。私のママになってくれ」ドゲザー

みほ「お姉ちゃん……」

みほ(お姉ちゃんも本当はずっと疲れてたんだよね)

みほ(黒森峰の隊長として期待されてずっとその結果を残してきた)

みほ(なのに私……お姉ちゃんが怒られてるところは見たことがあっても褒められたところを見たことがない)

みほ(きっとお姉ちゃんだって甘えたいよね?)

みほ「分かった。私……お姉ちゃんのママになる!」

まほ「みほ……お前が妹で良かった」

みほ「妹? そうじゃないよね?」

まほ「マ、ママ!」

みほ「えへへ……よしよし」ナデナデ

まほ「ばぶー! ばぶばぶ」

みほ「え、えっとどうすれば良いのかな」

まほ「ばぶばぶ」ビッピッピ

みほ(お姉ちゃんが仕切りに手を動かしてる)

みほ(これは哺乳瓶のハンドサイン! 今お姉ちゃんはミルクを欲しているんだ!)

みほ「じゃ、じゃあミルク飲んで」

まほ「…………」フイッ

みほ「えー……なんで飲んでくれないの?」

まほ「……ばーぶ」ピッピッピ

みほ(これは哺乳瓶を暖めろのハンドサイン)

みほ「わ、分かった! すぐに暖めるね!」

まほ「ばーぶ」

まほ「すっかり私の哺乳瓶は冷めてしまっているからな」

まほ「ここはみほに温めてもらうことにしよう」

みほ「ミルクはええっと……電子レンジでいっか」チン

みほ「はい。まほちゃんミルクだよー」

まほ「ばーぶ」ゴク

まほ「ぎゃぁぁあぁぁぁぁああぁぁ」

まほ「熱い熱い熱いぃぃぃ!」ジタバタ

みほ「嫌々しちゃダメだからね。ほら飲んで飲んで」モニュモニュ

まほ「ま、待ってみほ……げほっ……あ、熱い……哺乳瓶を揉まないで」ゴボゴボ


まほ「し、死ぬかと思った……」

みほ「ご、ごめんなさい。どのぐらい温めていいのか分からなくて」

まほ「む、そうだな。哺乳瓶のミルクは人肌程度……つまり温度で言うなら30度から40度程度と言われている」

まほ「ちなみに赤ちゃんは吸啜反応と言って口に出されたものは何でも吸い付くから熱かろうとミルクを飲んでしまう」

まほ「私はともかく赤ちゃんは皮膚が弱いから火傷する場合がある。しっかり注意するんだぞ」

みほ「へー」メモメモ

まほ「さて次は赤ちゃんのあやし方だな。私が泣き喚くからそれをどうにかして止めて見せろ」

みほ「うん! 任せて!」

まほ「おぎゃー! おぎゃー」

みほ(大丈夫。赤ん坊のあやしかたには自信があるから)

みほ「ほーらボコだよぉ……可愛いよねー」ベシベシ

まほ「こ、怖っ」

みほ「怖い? 怖くないよね? 可愛いよね?」

みほ「ボコは何度やられても挫けることなく戦い続けるんだよ?」

みほ「私はまほちゃんにもそんな大人になってほしいの?」

みほ「だからほら……もっと好きになろうよ……ボコ」

まほ(正直なところ恐怖しかないが赤ん坊なら案外これで喜ぶかも知れないな)

まほ(まあボコにというよりはぬいぐるみにだろうが)

まほ「きゃっきゃっ」

みほ「えへへ、まほちゃんもボコが好きなんだねー」

まほ「次はオムツの変え方だな」

みほ「え? お、オムツってあの……オムツ?」

まほ「当たり前だ。赤ちゃんの世話をする以上オムツは必須条件だ」

みほ「えぇ……」

まほ「ばぶぅー! ばぶばぶ!」ジョワワ

みほ「え、え? もう漏らしてるの!?」

みほ「えっと替えのオムツはお姉ちゃんのバッグに」

みほ(うわぁ……本当にお漏らししてる) 

みほ(でも……お漏らししたお姉ちゃんってちょっと可愛いかも)

みほ「そ、それでオムツを変えて」ヨイショ

みほ「はい完成!」

まほ「ばぶばぶ!」

みほ「えへへ……褒めてくれてありがとう」

みほ「一応これで食事もあやしかたもオムツも終わったわけだけど」

まほ「ああ……そうだな」

みほ「これで……その満足してくれたかな」

まほ「たしかに一通りのことはやってくれた」

まほ「だが後一つだけ頼みがあるんだ」

みほ「頼み?」

まほ「その最後に抱き締めて欲しい」

みほ「え……そんなのでいいの?」

みほ「今までみたいに赤ちゃんみたいな要求じゃないけど」

まほ「寂しいんだ……もう少しで私はドイツに行かなければならない」

まほ「今まではこうして度々みほにも会うことが出来た」

まほ「だが海外となるとそうはいかないだろう」

まほ「そう思うと寂しくて……だから温もりが欲しかったんだ」

みほ「お姉ちゃん……」

みほ(そっか……お姉ちゃんは完璧だって勝手に思ってたけど)

みほ(それは勘違い。お姉ちゃんだって人並みに辛いことや不安になることだってあるはずなんだ)

みほ(だったらこのままお姉ちゃんを行かせちゃダメだ)

みほ「ねぇ……お姉ちゃん」

まほ「みほ?」

みほ「ドイツに行くのが辛いなら行かなくてもいいんだよ?」

まほ「それはできない。私は西住流としての役目が……」

みほ「そんなものはないよ。だってお姉ちゃんは私の赤ちゃんなんだから」

みほ「だから難しいことは考えなくていいの。ほらおいで」

まほ「まま……」ポロポロ

みほ「よしよし……いい子いい子」ナデナデ

みほ「これからずっと一緒にいようね」

まほ「ばぶー」キャッキャッ

一週間後

エリカ『それで隊長の足取りは掴めたの?』

杏「それが全然。こっちも色々手を尽くしてるんだけどさ」

杏「全く手掛かりなし」

杏「最後に見たのが西住ちゃんで朝早くに部屋を出ていったってさ」

エリカ『だとしたらそこからヘリに向かう間に……誰かに拐われた!?』

杏「あのさぁ……これはあくまで可能性としての話なんだけど」

エリカ『な、なによ? 言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ』

杏「もしかしたら西住ちゃんのお姉さんは拐われたんじゃなくて逃げたしたんじゃないのかなぁって」

エリカ『ちょ……逃げるってどういう意味よ!』

杏「あくまでも可能性だよ? ほら西住流を継ぐのって結構大変そうだしドイツに留学もしなくちゃならない」

杏「そういうさ……色んな無理を溜め込んで限界が来ちゃったってことも」

エリカ『だからどっかに姿を消したって?』

エリカ『馬鹿馬鹿しい。とにかく大洗で消えたんだからそっちにいる可能性が高いのよ』

エリカ『また休日にそっちに行くわ。じゃあね』ガチャ



沙織「あ……こんな時間に会うだなんて奇遇だね」

みほ「沙織さんも買い物?」

沙織「私はちょっと飲み物切らしちゃって」

みほ「ははは……私も色々買いたいものがあって」

沙織「え……でもみぽりんが今手にしてるものって」

みほ「うん。ミルクと哺乳瓶」

ここまで読んで頂きありがとうございます。前回はまほエリを書いたので今回はみほまほを書いてみました!
それではHTML化してきます!

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