荒木比奈「好きになんてなりたくなかった」 (16)
……本当は、プロデューサーのことを好きになんてなりたくはなかったんでス。
好きになんてならずに、ただのプロデューサーとしてだけ見ていたかった。
プロデューサーは違ったから。私の望む、好きになりたいって願う理想像と。
違った。違ったんでス。まったく全然。
プロデューサーは、私の好きになりたい人じゃなかった。
プロデューサーは素敵な人だった。ほんの少し一緒の時間を過ごしただけでも確信できちゃうくらい、本当に素敵な人だった。素敵で……でも、皆にとっても素敵な人だった。
プロデューサーは優しい人だった。こんな私にも手を差し伸べてくれる、柔く微笑みながら私を支え導いてくれる。本当に優しくて……でも、皆に対しても優しい人だった。
プロデューサーは温かい人だった。思いやりに溢れた人だった。心地のいい幸せをくれる人だった。……皆のことを愛し、そして皆から愛される人だった。
プロデューサーは愛に満ちた人だった。
……それは、私の望む理想とは違う。むしろ真逆な姿だったんでス。全然違う。遠い遠い彼方の姿。
私の理想は、私だけの人だったから。
私だけの。私だけを愛してくれる、私だけに愛される、私とだけ居てくれる人。それが私の好きになりたい人だったから。
私は私一人を好きになってくれる人だけを好きになりたかったんでス。
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