東郷あい「ようこそ チャーリー・パーカー」 (65)








コーヒーが美味しい喫茶店。


都内某所の裏路地でひっそり営業している喫茶店。


知っている人は知っている。


知らない人が知れば大当たりなお店さ。


そう、私が初めてそのお店に行き当った時の様な。


宝くじ1等を当てるように、幸運なことだった。






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龍崎薫「あいお姉ちゃん!コーヒ飲みたい!」













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東郷あい「ダメだよ、薫。夜に眠れなくなるよ。」

薫「えーっ」ムーッ

薫「早くあいお姉ちゃんのような大人になりたい。」ムスッ

薫「ジュースおかわりっ!」

あい「オレンジでいいかな?」

薫「今はアップルジュースな気分!」プイッ



橘ありす「」ムムム-ッ

藤居朋「それじゃあ、最後コインを振って」

ありす「えいっ」ポイッ

朋「この並びだから........沢水困ね。」

ありす「沢水困ですか.........」タブレットイジイジ

朋「最期の困難ってところかしら」

ありす「ええっ」タプレットパタッ


朋「別に悪いことばかりを言っているわけではないわよ。」

ありす「でも、ネットでは四大難卦ってありますっ」ムスッ

朋「そうね、『今現在は最悪』っていってる。」

朋「捉え方よ?」

ありす「確かに今が底って書いてあります。ただ、後は良くなる方へ.......」



朋「そう、木が何かに□(かこまれ)成長できずに困窮してる。」


朋「何をやっても成功せず徒労に終わり、困難ばかり。」


朋「雌伏の時。心火を煽り、力を蓄え。」


朋「前程万里を覆う闇を超えたとき。」






朋「『橘ありす』という名の珠玉はより一層の輝きを魅せるのよ。」ゴゴゴゴゴ





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ありす「」ゴクッ




ありす「あっ、あいさん!コーヒーくださいっ!」

あい「いつものでいいかな?」

ありす「き、今日からはブラックをのみます!」フンスフンス

あい「わかった。」フフッ

薫「わーい!次は薫がやるー!」




学生時代、己の進路に迷った時出会ったのがこのお店だった。


それから私が岐路に立つたびに背中を押してくれたのが、この喫茶店のマスターだった。


アイドルになった時も私のファン1号でもあったマスター。


そのマスターが逝去し、後継ぎがいないこのお店を私が引き継いだ。




ありす「(っ;ω;c)ニガイ......」

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あい「コーヒーをブラックで飲むのもいいけれど、ミルクのまろやかな味わいとコーヒの苦みや酸味との調和を堪能するのも悪くないよ。」

(ミルクをスッと手渡す)

ありす「ううっ.......。」

あい「特に、このコーヒーは偶然にもミルクとの相性は抜群さ。是非とも堪能してほしい。」

ありす「そっ.....そこまであいさんがおっしゃるなら.......。」




ありす「(;・ω・)オッ,オイシイ.......」

あい「フフッ」





アイドルとの両立していた時期は大変だったが、それ以上にこのお店を無くす訳にはいかないという使命感が私を動かしていた。

今はアイドルを引退し、こうやってアイドル達が憩いの場所となったこの喫茶店を切り盛りしている。




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カランコロン!













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あい「おっと、来たようだよ。」

薫「あっ!せんせぇ!」

ありす「遅いですよプロデューサーさん。」

朋「アタシ達はもう準備万端よっ!」

ありす「では行きましょう!プロデューサーさん!」





あい「おっと、待ちたまえプロデューサーくん。」

あい「まだ、いつものセリフを言っていないよ。」





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いつものセリフ


それは、お店に来た時に、先代のオーナーがいつも言ってくれていた言葉。


私にとっておまじないの言葉だった。


それは、この喫茶店の名前の由来にもなった言葉。









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          ボナンザ
あい「ようこそ 【BONANZA】 へ........」

                      ボナンザ
あい「この出会いが貴方にとっての 大当たり である事を願っているよ。」











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東郷あい「ようこそ チャーリー・パーカー」














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【BONANZA】

南条光「だから!違う!」

多田李衣菜「どこが!これでいいの!」

光「アタシの意見がとおってない!コンプレックスとかボウイとか良くわからないバンドみたいなユニット名つけて!」

李衣菜「そっちだって、マジレンジャーみたいなヒーローっぽい名前付けてたでしょ!」

光「ヒーローかっこいいじゃん!ヒーローっぽいのにしよ!」

李衣菜「ロックなチーム名がいい!」

二人「ムムムムムムム!!」

あい「はいはい、喧嘩をしない。」コトッ

李衣菜「.......なんですかこれ。」

あい「ミルクココアさ。これを飲んで一旦落ち着きなさい。」

二人「.........。」

二人「フンッε-( `꒳´ * )三 =(//`^´//)フンッ」

悠貴「二人とも仲が悪くなっちゃったのかな?」

あい「それは違うよ、悠貴。それだけこの2人はこのユニットを良いものにしようと思ってるんだ。」



ズズズ......アッオイシイ
あい「求めているもの、向いている方向が違うんだから衝突なんていくらでもするさ。離れ離れに進んで行く事もある。」

悠貴「でも、私たちがユニットとか方向性決める時とかもっとスルスル進んだ気が.......」

あい「そうだね。こんなに滞りはしなかったね。」

悠貴「もしかして私、あいお姉ちゃんに無理させたりしたのかな?」

あい「ううん。ちがうよ。私たちのユニット名覚えてるかい?」

あい「悠貴が名付けてくれた大切な名前。」

悠貴「うん。一瞬たりとも忘れたことは無いよ。」

悠貴・あい『キューティー・ビューティ』

光「ハモった....」

李衣菜「息ぴったり。」

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あい「可愛さ(Cutie)を一天四海に轟かしてくれる悠貴と。」

悠貴「美しさ(Beauty)を全面に押し出してくれるお姉ちゃん..... 。」

あい「ほら、まさしく私たちにピッタリだろう。名前に負けず私達はファンのみんなを魅了し続けたと自負しているよ。」

悠貴「お姉ちゃん......」



李衣菜「美しさってBeautinessじゃないの?」ボソボソ

光「李衣菜さんソレは無粋ってやつだと思う」ボソボソ



あい「それで、二人ともユニット名はもう決まったのかい?」

李衣菜「それが全然!」ヘダー

光「名案が思い浮かばないよー」ヘダー

あい「ホラ、こういうところは息ぴったりだろう?」

悠貴「本当だ.........。」

李衣菜「もうすぐ、ユニットのお披露目ライブだってのにー。」

李衣菜「Cランクまでもう少しの所だから、何としても成功させたいなぁ。」



光「.......よしっ。レッスンしよう!」

李衣菜「えっ?」

光「アタマ動かしてたら、きっといい案が浮かぶよ!行こう!」

李衣菜「チョッ、チョット!」


カランカラン!

李衣菜「あーいっちゃった。お勘定まだなのに!」アセアセ

あい「いいよ。私からのユニット結成祝いさ。」フフッ

李衣菜「本当ですか!」

あい「ああ、その代わり今度のイベントは良いものを見して欲しい。」ニコッ

李衣菜「はいっ!利子付けてお返ししますよ!」



カランカラン


                         ボナンザ
あい「今日という日が、君たちにとっての 大当たり でありますように。」

あい「ふふっ、聞こえていないだろうけどね。」



カランカラン

あい「おや、珍しい。初めてのお客さんかな?」

あい「ようこそボナンザ......」

あい「!?」

?「お久しぶりですね、あいさん。」

悠貴「あなたはっ!!」

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光「ハァッハアッ!」

李衣菜「ハアッハアッ!どうしたの急に!」

光「.....あのさ、さっき李衣菜さん言ってたでしょ。Cランクが近いのにって。」

李衣菜「そうだね。それが?」

光「悠貴さんって、B級でしょ?あいさんに至ってはA級で、S級を目の前にして引退してさ。」

光「2人の人気を加速させたのが、『キューティビューティ』ってユニットである事なんかいうまでもない。」

光「さっきの2人見て分かったよ。息の合い方、間のとり方全てがピッタリだった。」

光「あれが頂に迫った........頂きに迫っているアイドル達なんだ。」

クルッ

光「アタシ負けたくないっ!二人に!」

李衣菜「光.....。」


光「確かに.....あの二人は今のアタシたちにしてみたら。見えない山のてっぺんだけど......」

光「アタシなら......アタシ達なら行けると思う。」



光「..........アタシは李衣菜さんが好き!」

李衣菜「えっ/// 急に一体なに///!?」

光「李衣菜さんは?アタシのこと好き?一緒に頂上目指してくれるかな?」

李衣菜「あ、ああ。そういう事ね」

李衣菜「.............。」

光「..........。」

李衣菜「キライだったら、一緒にユニットなんて組まないよ......」ボソッ

光「えっ、李衣菜さんなんて?」

李衣菜「なんでもないっ!」

光「ふぅん........」



李衣菜「ハァ.....それにしても決まらないね。ユニット名。」

光「うーん、ヒーローっぽいいいの無いかなぁ.......」

李衣菜「ロックなの......」


光「バロム......ちがう、デンジ....でもない。マスクド.....マスクなんて無いし......」

李衣菜「レッド・ホット・チリ......は長いし、ヘイルストーム....も少しパロディとリスペクトの域を超えてる気がするし..... ロック.....ロック.....」

光「スパイダー.......キャプテンアメリカ......ゴレンジャー...... うーん。キャプテン.......」

李衣菜「ロック.....」



二人「..........ん?」


光「李衣菜さん今なんて?」

李衣菜「そっちこそ今なんて?」

光「アタシいま、キャプテンっていった。」

李衣菜「私はロック。」



光「キャプテン......」

李衣菜「ロック......」



李衣菜「キャプテン......」

光「ロック......」




二人「それだあっ!!」



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【BONANZA】

コトッ

あい「どうぞ。ロブスタ種を強めにブレンドしてみたよ。」

あい「.....おいしい。フフッ、ありがとう。大分進歩しただろう?」

あい「まだまだ先代の味には遠く及ばないけれど、いつかは......」

あい「.......おや?どうしたプロデューサー君。辛気臭い顔をして。」

あい「.....フフッ、心配していることは分かるよ。けれど、大丈夫さ。」

あい「なんで分かるかって?分かるさ、彼女達の通った道は、私が通った道でもあるんだよ?」

あい「ましてや、あの年代の女子は一生懸命になると、周りが見えなくなる。それは、キミもよく知っているだろう?」

あい「信頼してあげるんだ。嘗て、キミが私たちにそうしてくれたように。」




カランカラン



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光「あっ!やっとみつけた!」

李衣菜「プロデューサー!ユニット名がやっと決まりましたよ!」

あい「ホラ、いい顔するようになったでしょう。」

あい「"男子3日経てば刮目してみよ"という言葉があるけれど」

あい「女の子だって半日あればアレだけ化けるんだ。」

あい「それで、ユニット名はどうなったのかな?」

李衣菜「カッコよすぎて腰を抜かさないでくださいね!私達は愛と!」

光「正義の!」

李衣菜・光「キャキャプテンロロック!」

あい「?」




李衣菜「光!1テンポ遅れた!」

光「李衣菜が1テンポ早いんだって!!」




あい「......そんな不安そうに私を見ないでくれ。」

あい「......でも、" CAPTAIN ROCK "か。」

あい「ヒーロを目指す光と、ロックのハートを持つ、それぞれの気持ちが入ったいい名前じゃあないかな。」





          ボナンザ
あい「ようこそ【BONANZA】へ、" CAPTAIN ROCK "のお二人さん。」

                        ボナンザ
あい「今日という日が貴方達にとっての 大当り となりますように。」




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【???】

?「"CAPTAIN ROCK"か。いいチーム名じゃあないか。」

?「しかし、自分のライブにこの二人を前座として呼ぶのは、一体どういうつもりなのかな?」

?「まぁ、キミが良いというのなら私は止めるつもりは無いがね」



高木順二朗「菊地真くん.....」



【346プロダクション一室】

李衣菜「ええっ!菊地真さんのライブの前座で私たちがステージに!?」

光「ねぇ、李衣菜誰? 菊地真って。」

李衣菜「ちょっとちよっと、アイドルやってるならその名前くらい知っておきたい所だよ。」

李衣菜「A級(トップアイドル)の中でも上位.....つまり、トップ中のトップの人!雲の上!」

光「ええっ!そんな人の前座!」

光「どういう事なんだプロデューサー!」

李衣菜「光落ち着いて、プロデューサーも困ってるよ。」



李衣菜「えっ、菊地さんの強い希望で、ですか?」

光「一体どうして......」

李衣菜「えっ、今からあいさつですか...........っ行きます行きます!」

李衣菜「ほら、行くよ光!」ガシッ

光「えっ!ちょっとッ!李衣菜!」


.


【765プロダクション】

順二朗「やぁ、よく来たねプロデューサーくん。」

順二朗「いやぁ、しかし君は346プロ発足の頃から随分見違えたねぇ。」

順二朗「どうかね、菊地君。自分たちが応援に行っていたころからすると、随分頼もしい顔つきになっているだろう。」

真「そうですね、社長!」

真「でも、褒めたらデレデレするところは昔と全然変わってないですね。」

李衣菜「」

光(こっ、この人が765プロの社長........。)

李衣菜(所属するアイドル12人全員がA級以上のモンスター事務所のトップ......)



李衣菜(一見陽気なおじさんだけど.........。)

李衣菜(隣にいる菊地さんにも負けないオーラ........気を抜かれたら魂を吸い込まれそう。)

李衣菜(ダメッ!この雰囲気に飲まれたらっ........)ググッ


ギュッ!

.




光「」



李衣菜(光........私の手を..........。)

コクン

李衣菜(声には聞こえないけど分かる......。)

李衣菜(『自分がいる.....落ち着けって。』)

李衣菜(自分だって怖いはずなのに.........。)


ギュウッ


李衣菜(有難う光.......。)

順二朗「おっと。そうだそうだ。仕事の話に戻ろうかな。」










.



順二朗「さて、これで話は終わりかな?」

順二朗「ところで、美城君..........美城社長は元気にしているかね?」

順二朗「元気か!それはよかった。」

順二朗「彼は私のところを独立してからも、定期的に連絡や贈り物を寄越してくれる。」

順二朗「全く義理堅い男だよ、彼は。」



李衣菜(気が休まらなかった......。)

李衣菜(光.....手汗が凄い。)

李衣菜(それでも......私を守っててくれたんだ。)



李衣菜(やっぱりヒーローだなぁ.........そういうところ。)





.














李衣菜「ハァ........。」

李衣菜(.........何してるんだろ、私。)












.


【BONANZA】

李衣菜「ハァ..........」

悠貴「李衣菜さんさっきからため息ばかりですね。」

あい「.........初めてのライブってわけではないだろう?一体どうしたんだい?」

李衣菜「あいさーん。聞いてくださいよぅ。」

李衣菜「私って駄目だぁ........。」





あい「成程、年下の光に助けて貰ってばかりの自分に、嫌気がさしているのか。」

李衣菜「そうなんですよ~」

李衣菜「これがみくちゃんとかだったら、まだ心の余裕はあったのに........。」

悠貴「李衣菜さん本当に落ち込んでますね.........。」

?「多田李衣菜さん...........だっけ?」

李衣菜「!?」

真「隣......いいかなぁ?」

.


李衣菜「どうしてここに.........」

真「どうして.....って、ここあいさんが経営している喫茶店って最近聞いたから。」

李衣菜「でも、あいさんと菊地さんって.......。」



真「.............別の事務所だね。」

真「別の事務所の人は、このお店にいたらダメかな?」

李衣菜「い、いえ。そんなことは......。」

あい「意地悪はそこまでにして、早く続きを言ってあげたらどうだい?」

真「別に意地悪をしているつもりは.......。」

あい「わかっているさ。」

真「さっきの話、聞かせてもらったよ。」

真「ボクもね、昔そんなことがあったんだ。」

李衣菜「えっ。」

.


真「ボクも昔は、雪歩.........同じ事務所の萩原雪歩と一緒にユニットを組んでいたことがあった。」

真「雪歩って子は一見すると息を吹いただけでもバラバラに散ってしまいそうなく位儚い少女。」

真「だけれど.......」

真「どんなに、勝ち目のないライブでも、最後まで諦めなかったのは、765プロの中では春香か雪歩だったよ。」

真「ボクは雪歩の根の強さを尊敬していた。」



あい「彼女は持ち前の芯の強さで、当時格上だった961プロ時代の四条貴音との戦いに勝利した。」

あい「圧倒的点差からの逆転には感服したよ。」



真「そんな雪歩があるときボクに言ったんだ。」

雪歩『私は真ちゃんみたいに、強くなんかない!』

真「ビックリしたよ。そんなボクこそ雪歩みたいに強くないって思っていたから。」

真「それからは、二人でお互いのいいところを挙げあったんだ。」

李衣菜「.......どうだったんですか?」

真「ボクが雪歩に羨望したことの大概は、雪歩がボクに抱いていた事だったね。」

李衣菜「.................。」

真「要するに、キミがあの子に抱いている事と同じように」

真「あの子はきっとキミに何か羨望を抱いている。」

真「ユニットってのは、お互いの敬意なしではやっていけないんだよね。」


あい「.................。」コポコポコポコポ

悠貴(お姉ちゃん、澄ました顔だけど『私が言いたかったセリフ』って目をしてる........。)

.


あい「今日はちょっと、趣向を変えた飲み物を出してみようか。」

コトッ

あい「スリランカの紅茶だ。」

ズズズ

真「......この紅茶ウバってやつですか?」

あい「正解。」

真「伊織に散々教育されましたからね。」

真「で、この紅茶に込めたメッセージってなんですか?」

あい「.............えっ?」

真「えっ?」



あい「すまない。いい茶葉を仕入れたから振舞っただけなんだ。」

真「.....そうですか。」ズズズ

真「オイシイ......。」
.



カランカラン


李衣菜「あの.....ありがとうございました。」

真「大したことはしてないから照れるなぁ.....」

李衣菜「あの、もう一つ質問してもいいですか?」

真「なに?」

李衣菜「どうしてA級アイドルの菊地さんが.....私たちをライブの前座をしてくれるんですか?」

李衣菜「346プロダクション発足時代に応援してくれた......だけじゃあ説明がつかないですよ。」


真「..........知りたい?」スタスタ

李衣菜「.........出来ることなら。」

真「......................。」ピタッ


.真「D級の頃だったかな......」

李衣菜「えっ。」

真「ボクも女の子だからさ、フリフリで可愛い衣装を着て歌とダンスをしたかったんだ。」

真「だけど、着せられるのは何時もクールな王子様衣装。」

真「ぶつかり合ったなぁ、プロデューサーと。」

李衣菜「それで、どうなったんですか?」

真「結局ダメだった。その時は本当にアイドルを辞めようかなって思ったこともあったね。」

真「そんな時だった......」

真「フェスで、出演者の中のあいさんを見た時に、ボクは......」

真「圧倒された。」


真「ただただ圧倒された。」

真「目の前には魅了の塊が立っていたんだ。」

真「可愛いも、カッコイイも、美しいも、少ない語彙の枚挙を全て包み込んでいった。」


真「あいさんがA級になるのに時間は掛からなかったねぇ。ボクは一生懸命に背中を追った。」

真「それから、ボクも格好良さで可愛さを包み込むと決めてから順位をメキメキあげて行った。」



(回想)

順二朗「おめでとう、菊地くん。ついにAランクに昇格だ。」

真「本当ですか?! ヘヘッ.....」ヤリィ

真「ちょっと、事務所離れます!」

順二朗「どこへ行くんだい?」

真「346プロのあいさんに報告しに行きます!これでようやくボクは......」

順二朗「.......そうかね。」

真「どうしたんですか、社長。」

順二朗「...... まだ、公には出来ないが聞いてくれないかね。」


(回想おわり)


李衣菜「菊地さんの昇格のタイミングで引退ってことは.....」

真「多分ボクは、あいさんの代わりで昇格したんだろうね。」

真「......引退の根本的の理由は聞いた。それでも、悔しかった。自分の不甲斐なさが。」

真「『A級という行けるところまでは行けた』なんて言わせて。」

真「ライバルだって、思わせたかったけれど.......。ボクはあいさんにとって、鎬を削り、切磋琢磨していくような間柄にはなれなかったんだ」

李衣菜「............。」


真「今回のライブに君たちを前座で迎えたのはボクのエゴだ。」

真「成長した、今のボクを見せる。」

真「そのために君たちを利用した。」

李衣菜「...............。」

真「失望したかな? A級アイドルが自分勝手な理由で自分たちを振り回したと知って。」

李衣菜「.........いえ。なんで事務所のA級アイドルやB級アイドルじゃなくて私たちかわかりました。」

李衣菜「菊地さんはその代りに私たちを宣伝してくれるんですよね。」ニコッ

真「それもあるけれど、あいさんからの強いプッシュだった。」

真「期待の新ユニットが誕生するってね。」

李衣菜「あいさん........。」


真「期待しているよ。」

真「じゃあ、また次はゲネプロの時に会おうね。」

李衣菜「はいっ!」











【ライブ当日】

ナレーション「皆様大変長らくお待たせしました・・・・・」

光「ううっ.......緊張する.....。」

ポンッ

李衣菜「らしくないね。でも、落ち着いていこうね。」

李衣菜「私たちならできる。大丈夫だよ。」

光「.................。」


光「なんか、凄いなぁ。李衣菜は。」

李衣菜「えっ?」

光「李衣菜は弱気になってるアタシをやさしく包んでくれる。」

光「この前765プロ行ってた時も怖くて手を握った私を。」

光「いまも、優しい言葉で元気づけようとしてくれてる。」



光「有難う......。」



李衣菜「..........プッ」

光「えっ?」

李衣菜「フフフフフ!ハハハハハハハ!」

光「りっ、李衣菜!なんで笑うのさ!」

李衣菜「ハハハハハハハハハッ!」

李衣菜「あ~おっかし~。笑いすぎちゃった。」

光「どうして笑うんだ!」

李衣菜「いや~ね.......。」














李衣菜(それでも......私を守っててくれたんだ。)

李衣菜(ヒーローだなぁ.........そういうところ。)













.








真「そんな雪歩があるときボクに言ったんだ。」

雪歩『私は真ちゃんみたいに、強くなんかない!』

真「ビックリしたよ。そんなボクこそ雪歩みたいに強くないって思っていたから。」

真「それからは、二人でお互いのいいところを挙げあったんだ。」

李衣菜「.......どうだったんですか?」

真「ボクが雪歩に羨望いたことの大概は、雪歩がボクに抱いていた事だったね。」

李衣菜「.................。」

真「要するに、キミがあの子に抱いている事と同じように」

真「あの子はきっとキミに何か羨望を抱いている。」




.



李衣菜「私もね、あの時光が手を握ってくれたときに、『この子は強いな、凄いな』って思っててたんだ。」

李衣菜「それに比べて私はダメだって、自己嫌悪もしてたのに。」



李衣菜「フフッ!フフフフフっ!」

李衣菜「あーあ、うれしいな。」








李衣菜「私の心の闇が晴れたよ。」








.


光「それじゃあ、行こうか!」

李衣菜「あっ、光まって!」


手を差し伸べ


李衣菜「手をつないでいこ?」

光「................。」

光「うんっ!」ガシッ


光「いくよ!アタシたちは!」

光「二人で一つ!!」




光・李衣菜「【CAPTAIN ROCK】!!」




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光・李衣菜「みんなありがとう!」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

悠貴「すごくいいステージでしたねっ!」

あい「うかうかしていると悠貴もぬかされるよ。」

悠貴「そうだねっ!私も頑張らないと......」



ゾクッ!



悠貴「!?」クルッ

真「..................。」

あい「おや、そろそろ真打の登場かな。」

光「あいさーん!悠貴さん終わった.......」

光「!?」ビクッ!

李衣菜(これが.......ステージ前の菊地さん........。)

.




真「......引退の根本的の理由は聞いた。それでも、悔しかった。自分の不甲斐なさに。」

真「『A級という行けるところまでは行けた』なんて言わせて。」

真「ライバルだって、思わせたかったけれど.......。ボクはあいさんにとって、鎬を削り、切磋琢磨していくような間柄にはなれなかったんだ」

李衣菜「............。」


真「今回のライブに君たちを前座で迎えたのはボクのエゴだ。」

真「成長した、今のボクを見せる。」







李衣菜(あの真剣な気持ちを聞いたから...............。)

李衣菜(言わないと............。)

李衣菜「菊地さん!頑張ってください」手を挙げる

真「!?」
.















??「うっうー!行きますよ!」













.















真(...............やよい。)













.















パシッ













.














真「はい、ターッチ!いぇい!」パシッ

李衣菜「い、いぇい!」パシッ












.















真「李衣菜、ありがとう。いってくるね!」













.




真「~♪」



光「凄い.....綺麗だ。何もかも。」

光「歌声ってあんなに透き通ってるもんなんだ......。」

悠貴「ダンスってあんなに、自分を大きく見せられるんですね。」



あい「みんな見ておくんだ。」

あい「あれがトップアイドルになるために越えなければならない山巓だよ。」

李衣菜「あいさん......。」

あい「どうした?」

李衣菜「あいさんは、今の菊地さんのステージみて何か思ったりはしないんですか?」

あい「昔よりも、ダンスも歌も数段レベルアップしているよ。」

李衣菜「そっ、そういうことではなくて........。」

.


李衣菜「その........真さんのことライバルだとかは思わなかったんですか?」

あい「...............。」

あい「アイドルだった頃......。」

あい「A級上位には伝説のアイドル達がいた.........。」


あい「天海春香、星井美希、如月千早」

あい「及び彼女らがメンバーのユニットSIGN@L」


李衣菜「ええっ!その3人って確かいまでは.........」

あい「A級の上、S級のアイドル達さ。」

あい「文字通り桁が違ったよ。」


悠貴「そのとき、お姉ちゃんが私だけにささやいたんです。」

悠貴「敵う気がしない......って。」

あい「私はこの時、アイドルとボナンザの二足のわらじを脱ぐこと決意した。」

あい「でも、彼女はそれからもあきらめなかった。」


あい「彼女は、当時の私と真の実力差。同じ事務所の3人にも臆することなく追いつき追い越そうと努力していた。」














あい「気高い努力がまぶしかった。絆されてしまったよ。」

あい「意識はしていた。けど、私が真のライバルを名乗るのは烏滸がましい。」












.












真「ありがとう!」

観客「イエエエエエエエエエエエエエエエエイッ!」

あい「今も昔もね............。」












.





























.














あい「だけど........。」

あい「久々に血が滾ったよ.......。」

あい「フフッ、アイドル......そう簡単にはやめきれないか.......。」










.





























.


【BONANZA】

悠貴「ムムムム」コポコポ

あい「そうそう、いい調子だよ。」

あい「そうやってのの字を描いていくんだ......。」




真「あ~あ、結局復帰させられなかったかぁ.....」

李衣菜「でも、あいさんは血が滾ったっていってましたよ!」

真「でも、復帰させられないんじゃなぁ~。」

あい「ふふっ、そういうことだろうと思ったよ。」

コトッ

あい「残念だったね。はい、篠山から仕入れた黒豆コーヒだよ。」

真「チェッ......」ズズズ

真「........面白い味。」


カランカラン


ありす「あいさん!聞いてください!私たちC級に昇格しましたよっ!」

あい「おや、おめでたい話じゃないか。」

朋「薫の占い、結果が乾為天だったからかな.........」

朋「....って、ええっ!菊地真.......さんじゃないの!どうしてこんなところに!!」


ワイワイガヤガヤ


あい「.........おや、プロデューサー君。キミもいたのか。」

あい「ホラ、そんなところで突っ立っていないで。キミも席に座ったらどうだい?」

悠貴「美味しいコーヒ入れますよっ!」

光「悠貴さん!コーヒ美味しかったです!」

ありす「この独特のかおり......美味しいですね。」

朋「なんか豆乳と合いそうね。」

李衣菜「あーっ!ちょっと光私の分のコーヒ持っていかないでよ!」

光「りーなが飲まないから苦手なんだと思ってた!」

李衣菜「そんなわけないじゃんか!」

ワー!!キャー!!

あい「やれやれ、急に姦しくなったねぇ。」フフッ

あい「だけど、これがこの店が紡いだものなんだろうね。」





あい「おっと、いつものセリフを忘れていたね。」

あい「ようこそ、【BONANZA】へ.............。」






.















                      ボナンザ
あい「この出会いが貴方にとっての 大当たり である事を願っているよ。」












.


あとがき

東郷あいさん、お誕生日おめでとうございま。
担当Pとして、これからも応援します。

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