男「えっ! 吸血鬼ぶっ殺しても良いんですか!」 (11)

――深夜 路地裏

男「ほ、ほ、ほ、報告します。任務終了です」

男「た対象”吸血鬼”1体駆除完了。肉体消滅確認」

男「負傷者0名」

男「……」

男「死亡……4名」

男「は、は、はい」

男「討伐6班……僕以外……みんな」

男「死にました」

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――春

隊長「今年こっちに何人入るんだっけ」

人事部長「1人です」

隊長「今年も少ないね」

人事部長「上は中央より地方配属を増員する意向だそうです」

隊長「"奴ら"も中央から地方に逃げてるらしいからね。そっちに割かれるのは仕方ないのかもね」

隊長「でもさあ……」

人事部長「デモもストもないです。任務内容が任務内容な以上、上に従うのが我々"V症感染者特殊保護隊"です」

隊長「そうねえ……」

人事部長「何を弱気なことを言っているんです。そんな姿を見せたら新入隊員に示しが付きません」

隊長「示しもシメジもあったもんじゃあないよ」

隊長「今日は入隊式かあ。気が重いよ」

隊長「去年のこともあるしね」

――式場

隊長「総員ンンン整ィ列ゥゥウウウウウウッ!!!」

隊長「敬礼ィィィィッ!」


人事部長(こういう式ではちゃんとするんだな)


隊長「はい、という訳でね。僕が隊長でーす。お話しはじめまーす」


人事部長「」


隊長「名前だけでも覚えて帰ってね、ってことなんですけれどもー」

隊長「……」

隊長「15年前、ある病を持った人間が現れました」

隊長「彼らは生命の維持に毎日約7リットルの血液を経口摂取する必要があり、日々、吸血衝動に駆られ暮らしています」

隊長「これらを"V症"といいます。ここまでいいかなー? 教科書に載ってるよね」

隊長「これらの吸血衝動は薬で少しではあるけど抑えられます」

隊長「V症患者の大体は、治療を受けながら献血などで得られた血液を飲んで暮らしています」

隊長「でもね」

隊長「V症患者の中には、こういう人もいます」

隊長「『提供されたパック詰めの血液より、人間の身体から血を直接飲んだ方が美味いぞ』」

隊長「――って人」

隊長「こんな考えを持つ人達は、国で推奨する治療を拒否し、人を襲って吸血行動に出ることにしました」

隊長「これが世間でいうところの"吸血鬼"」

隊長「――で」

隊長「この吸血鬼の人たちを"超法規的措置(国の許しの下)"で"特殊保護(駆除)"するのが」

隊長「"V症感染者特殊保護隊"なワケです」

隊長「新人諸君ら……あ、一人しかいないんだった。新人君ら……」


?「わたし!」


隊長「ん?」


新人ちゃん「わたし! 女です!」

クスクス イワレテヤガンノー クスクス サイキンハソーユーノキビシーカラー


隊長「んああ……新人ちゃんは……ええと、どこまで話したかな」

隊長「ああそうだ」

隊長「新人ちゃんは特殊保護の意味を分かっているかな? 」

隊長「君がどこの班希望か分からないけれど、僕らは"人殺し"あるいはその片棒を担ぐ人です。君もそうなります」

隊長「国が許しているとはいえ、そのことを忘れないようにしてください」

隊長「保護した人の事、その人の家族の事、顔、声、その全て……忘れないようにしてください」

隊長「それが僕らが"吸血鬼"と同じ"鬼"にならないようにする心掛けです」

隊長「お話し終わり。がんばってね」

――舞台裏

隊長「いやあ、やり過ぎちゃったかな緊張しちゃって」

人事部長「上々です」

隊長「そうかいそうかい。良かった良かった。ひゃー手汗びっしょりだ」

人事部長「ハンカチです」

隊長「あーありがと」

隊長「……届いたかな」

人事部長「届きます。絶対」

隊長「そうだといいね」

――新人歓迎飲み会

ドンチャン ドンチャン ワハハハハ

隊長「どう? 新人ちゃん、飲んでる?」

新人ちゃん「あ、はい(カルピスだけど)」

隊長「人、多いよね。新人見たがって当直以外みんな来ちゃってさ」

隊長「関東中央隊は総員120人。いや、君も入れて121人か」

隊長「気の良い奴らだよ。きっと仲良くなれる」

新人ちゃん「は、はい!」

隊長「じゃあ、楽しんでね」

新人ちゃん「……」クピ

新人ちゃん「カルピス、うま」

?「ああ~っ! この子ですか~っ? 新人の~!」

新人ちゃん「!」

オペ子「かわいい~! 近くで見るとちっちゃくてさらにかわいい!」

新人ちゃん「あの、えーと。どなたですか」

オペ子「わたし~通信班のオペ子っていうの~」

オペ子「わ~かわいいな~ちっちゃくて、ちょっとまるくてかわいい~」ベタベタ

新人ちゃん「あ、あの、べたべた触るのはちょっと」

オペ子「あ、ごめんなさ~い。あ~わたしもついにセンパイになるのか~」

新人ちゃん「?」

オペ子「あれ? 通信班志望じゃないの? もしかしてメンテ班? 医療班?」

新人ちゃん「わたし――」


新人ちゃん「"実働班"希望です」

オペ子「」

オペ子「ええ~~~~~っ!?」

ザワザワ ナンダナンダ オペコチャンコエデケーナ オッパイモデケーヨナ

オペ子「じ、実働班がいいの? なんで!? あんなむさ苦しくて危険なところ!」

新人ちゃん「えーと、あのー」

?「おい! うるせえぞ! 俺ぁな、久しぶりの酒なんだぞ!」

??「嘘ついちゃだめですよー先輩。職場でも隠れて――」

?「おい殺すぞ」

新人ちゃん「あれは……」

オペ子「実働班よ~。酒飲みハゲの方は"マッチョ"」

マッチョ「お、お前が新人ちゃんか。よろしくな」

オペ子「となりは"ガリガリ"」

ガリガリ「わ~女の子だ~」

オペ子「こんなかわいい子が実働班に入るなんて、わたし信じら~んな~~い」

マッチョ「なにっ!」

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