天魔の使役者【安価】 (86)

東の国に『天使と契約する男』がいた。その男は、非常に聡明で心優しい人であった。

西の国に『悪魔と契約する女』がいた。その女は、勇猛で気高い人であった。

戦場で出逢った二人はたちまちのうちに恋に落ち、遠く離れた国で仲睦まじく暮らしていた。

愛は形を成し、一人の男が産まれた。父と母、二人にそっくりな子供だった。

父が従える天使も、母が従える悪魔も、その誕生を祝福した。胸中の思惑は違えど、喜ばしいと素直に思っていた。

しかし、世界は彼らに非情な運命を与えた。

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妬みか、恐怖心か。今では何が理由だったのか不明だが、それは起きた。

子供が三歳の誕生日を迎えた時。何者かが家に押し寄せ、両親を殺害したのだ。

天使も悪魔も、その時は家にいなかった。平和だと思っていた両親は、突然振るわれた凶刃に命を奪われた。

だが、何を想ったのか。子供だけは殺さなかった。泣きじゃくる子供を気絶させ、殺人鬼は誘拐した。

殺人鬼は十年以上もの間、子供を洞窟に幽閉した。光の無い洞の中で、子供は時を待っていた。自由を手にするその時を。

そして今、時は満ちた。男は、温めていた計画を実行する。

両親から受け継いでしまった力で、この檻を抜け出す計画を。


下3までが召喚する天使、下4~6までが召喚する悪魔です。
神話に出てくる奴らの名前を使っても良し。オリジナルの名前を付けても良し。自由にどうぞ。
投稿するキャラは名前と特徴とかをセットでお願いします。

それぞれの範囲内で最高コンマを採用しますが、ゾロ目キャラがいたら別枠で採用となります。

男は指を噛み切り、血液を地面に垂らす。血溜まりに手を添えると、勝手に広がって魔法陣が描かれた。

そして、男は祈りを込める。『助けてほしい』と、心の底から叫ぶ。

天使や悪魔を召喚する方法を、両親から教えてもらってはいない。

だが、知っているのが当然、とでもいうように身体が動いた。頭もクリアで、違和感を憶えることも無かった。

自身にどれだけの力があるのかは分からないので、天使と悪魔を一人ずつ呼ぶつもりで二つの魔法陣を用意した。のだが。

「迷える者よ。貴方に細やかな祝福を授けましょう」

「よぉ坊ちゃん。お前さんのことは、あの女から聞いてるぜ。ま、よろしくな」

「フハハハハハ!我はサムソン!万物を焼き尽くす炎王である!」

何故か三人召喚されてしまった。天使が一人と悪魔が二人。完全に予想外である。

「…で。『助けてほしい』って言われて来たわけだが。何があったんだ?」

「ハエレよ。そんなことも分からんというのか!?悪魔にあるまじき失態だ!!!」

「あぁん?はっ倒すぞ」

「状況から推察するに、幽閉されているのでしょう」

「なるほどな」

天使の推論を聞き、ハエレと呼ばれた悪魔は納得する。身の丈を超える斧が、威圧感を放っている。

「…じゃあ、やるか。サムソン」

「応!!!」

そして、悪魔二人が勝手に暴れ始めた。

「そぉらぁ!」

ハエレは巨大な斧を軽々と振り回し、部屋を覆っていた檻を容易く消し飛ばす。

異変に気付いた看守が向かって来たが、サムソンは燃え盛る炎で消し炭と変えた。

その後ろを、天使に隠れながら男は進んでいた。

「…よもや、悪魔と肩を並べる日が来るとは。これもまた、運命というものでしょうか…」

賽子を天使が振る。出目は『1』だった。

「…『天』。貴方の道には光がありましょう」

にこやかに微笑む天使に、男は名前を問う。天使は『ダイシエル』と答えた。

ハエレとサムソンが『勝手に』開いた道。その先には確かに『光』があった。

「ここまで逃げりゃ、どうにかなるだろ」

「雑魚しかいなかったな…。つまらぬ!」

洞窟から数百M離れたところにある滝の傍で、男たちは休養を取っていた。

切り株に腰掛けたダイシエルは、方位磁針を回す。カラカラと音を立てて回っていた針が、ピタリと止まった。

「…『南東』。そこに何かがあります。吉と出るか凶と出るか。それは不明ですが」

「つっかえねぇな」

「『地』。…ハエレ。貴方に災難が降りかかるでしょう」

「何言ってんだこい」

ハエレが言い切るより先に、巨大な塊が後頭部に直撃した。その衝撃にハエレは堪らず、頭を抱え蹲る。

「…おぉぉぉぉぉ…。デッケェイガグリが…」

「フハハハハハ!焼けばさぞかし美味いだろうな!!!」

「サムソン…何笑ってやがる…」

「天使に踊らされるなど滑稽だろう!!」

「…治ったらぶっ殺す…」

ハエレを電撃が包む。それを見たサムソンは、高笑いを中断し構えを取った。

慌てて男が仲裁し、これからのことを話し合った。


下1にこれから何をするか。イベントでもOK。

「…てぇことは、南東に行けば何かあるってことか」

「何があるかまでは不明です。それでも、行動の指標にはなるでしょう」

「ふむ。我が主よ!どうする!?!!」

どうするか男は頭を悩ませる。少なくとも、この場所を離れるべきだということは解っている。

しかし、考えが纏まる前に、エトランゼによって思考は中断されてしまった。

「悲鳴…ですか」

「だな」

「であるな」

ハエレたちが大暴れしてしまったので、幽閉していた組織たちはほぼ壊滅状態になっている。

声量と方角からして、彼らの関与は無いはずだ。悲鳴が聞こえてきた方向は、ダイシエルが言っていた『南東』だった。

助けに向かうべきか、見捨てるべきか。男はそちらに思考を切り替えた。


下1に助けに向かうか、下2にどんな状況かを。おまかせの場合はコンマ判定に変更します。

助けに向かう、と男は言った。満足そうにダイシエルは頷くが、悪魔二人は不満そうだった。

「…何というか、そっくりだよ。お前」

「…うむ。一瞬だが、前の主を彷彿させた」

「やめろサムソン。マジであの女はトラウマなんだよ」

何があったのか想像もつかないが、酷く怯えているようなので触れないことにした。

男たちは悲鳴の聞こえた方角、『南東』に向かう。鬱蒼と茂る木々の間を抜け、ただひたすらに走った。

主に、男を抱えたハエレが、だが。

「俺は運び屋かよぉぉぉぉ!!!」

満足に運動もさせてもらえなかったのだから、仕方のないことだ。

「フハハハハハーーー!!!」

目視で人影を確認出来る距離まで進んだので、サムソンを先行させる。また高笑いしながら進んでいったが、癖なのだろう。

鞄を抱きかかえ、縮こまっている女の子を、絵本で見た山賊と全く同じ服装の集団が取り囲んでいた。

舌なめずりしながら近づいていた山賊たちは、乱入者によって水を差されたことに苛立ち、舌打ちをした。

「何ですかー?正義の味方気取りですかー?」

「お坊ちゃんが来ていい場所じゃねえよ。帰った帰った」

「力量の差を理解出来ん愚か者しかいないようだな!!!」

「あぁん!!?!?」

開口一番で挑発するサムソン。山賊もやっていたことだから別に問題は無いのだろうが、少し口が悪すぎないか、と思う。

それが『悪魔』だというのなら、何も言えないが。

「あー疲れた。…コイツら全員殺していいのか?」

「…運命は彼らの味方をしていなかったようですね。哀悼の意を捧げましょう」

「おっしゃ。楽しませてくれよ人間共」

悪辣な笑みを浮かべた悪魔は、雷鳴と獄炎のワルツを繰り広げた。

「だから愚か者と言ったのだ!我らに喧嘩を売ろうなど!愚か者でしかないであろう!!!」

「はぁ…。本当に弱っちい野郎だな。一発は耐えてくれよ」

「え…?え…!?」

女の子を護るように円陣を組んでいた悪魔たち。周囲一帯は、炎と雷でしっちゃかめっちゃかになっていた。

「無事か?ガキンチョ。お前が生きてないと、あいつが煩くてな」

「主の願望を満たすのも、我らの責務よ!」

「は、はい…。大丈夫…です」

どこからどう見ても、子供をいびっているようにしか見えない。一応、彼らなりに配慮しているらしい。

怯えながら女の子は頷く。ダイシエルが近寄り、悪魔たちを追い払った。

「怪我はありませんね。どうして、このような場所にいるのですか?」

「あ、その…。おばあちゃんにお薬を届けて、その帰りに…」

「山賊に目を付けられ、襲われた、と。災難でしたね」

「はい…」

「ですが、運命は貴方の味方をしてくれました。日頃の行いが良かったからでしょう」

「けっ、働いたのは俺たちなのによ」

「フハハハハハ!こういう時は口を噤んでやるものよ!」

「お黙りなさい」

ダイシエルの賽子が、悪魔たちの顔面にめり込んだ。

「………」

「………」

「これで良し」

頭から腰まで地面に埋め込まれた悪魔たち。それを笑顔で見届けたダイシエルは、女の子に質問をする。

「家はどこですか?」

「えっと…。すぐ近くの街…です」

「すぐ近く?まだ数KM以上あるではないですか」

「近くですよ?」

「…ああ。貴方にすれば、ですね」

ダイシエルは視線で『彼女をどうするか』と男に問う。男は逡巡するが、考えが纏まらない。

自分のことですら、手一杯の状況だ。数十分前に自由になったばかりの身なのだから。

『早く決めてください』と催促されながら、男は必死に考えた。


下1に女の子をどうするか。

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