深月フェリシア「やちよー・・・やちよー・・・」 (18)


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みかづき荘 深夜



やちよ「すー・・・・」zzz

フェリシア「やちよー・・・やちよー・・・」ユサユサ

やちよ「んんっ・・・? フェリシア・・・? なによ、こんな夜中に・・・」

フェリシア「あのっ・・・えと・・・」モジモジ

やちよ(あら。ブロンド美少女の霊)


フェリシア「ううっ・・・・・」モジモジ

やちよ「どうしたの?」

フェリシア「・・・・・・・・」


フェリシア「血が・・・・」

やちよ「血?」

フェリシア「ん・・・。血が・・・血が・・・たくさん出て・・・」

やちよ「えっ? 大変じゃない。ケガしたの? どこから血が出てるの?」

フェリシア「・・・・・」ウツムキ

やちよ「??」


やちよ「・・・・・あっ」

やちよ(脚に血が伝ってる・・・)




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フェリシア「オレ・・・なにかの病気・・・?」ウルウル

やちよ(そっか・・・。この子、母親はいないし、学校にもちゃんと行ってないから、よく知らないのね)

やちよ(私がしっかり教えてあげないと)


フェリシア「お腹がすごく痛くて・・・。頭も痛くて・・・」

やちよ(事前知識も無くいきなりこんなことが起きたら、ものすごく不安でしょうね)

やちよ(私ですら、初めての時は怖かったし)


フェリシア「オレ・・・死んじゃうの・・・?」

やちよ(まずは不安を和らげてあげないと)

やちよ(私の時におばあちゃんがしてくれたようにすれば、きっと落ち着いてくれる)


やちよ「フェリシア」スッ

フェリシア「・・・?」


ぎゅ


フェリシア「あふっ・・・」

やちよ「おめでとう。フェリシア」 抱きしめ

フェリシア「えっ・・・?」

やちよ「大丈夫よ。これは病気じゃないの。フェリシアは死なない」

フェリシア「本当・・・?」

やちよ「本当よ。この血はね、大人の女性だったら誰で出てくるもの」

フェリシア「そうなの・・・? やちよも?」

やちよ「ええ、私もよ」

フェリシア「白いねーちゃんも?」

やちよ「みふゆもよ」

フェリシア「そ、そうなんだ・・・」

やちよ「そう。だからこれは大人になった証。だからおめでとうなの」

フェリシア「んっ・・・。よく、わからない・・・」


やちよ「慌てないで。ちゃんと教えてあげるから。まずはお風呂場に行って血を落としてきなさい」

フェリシア「うん・・・。あっ、あの・・・」

やちよ「んっ?」

フェリシア「べ、ベッドとか、服にも血が付いちゃって・・・」

やちよ「分かったわ。とりあえず今日は私のベッドで寝なさい。そっちは私がやっておくから、フェリシアは体を洗ってらっしゃい」

フェリシア「ごめん・・・・・」タタッ


やちよ「・・・・」

やちよ(思い出すわね。私の時のことを)

やちよ(私も今のフェリシアと同じように、怖くて不安だった。だけど、なにより恥ずかしかったわね。おばあちゃんにすら知られるのが恥ずかしかった。その日の夕飯にお赤飯が出たときは居た堪れなかったもの)


やちよ「・・・・ふふっ」

やちよ(でも、フェリシアは勇気を振り絞って私に相談に来てくれたのよね)

やちよ(きっとフェリシアも私と同じで、このことは人には知られたくないでしょうけど、でも、いざこうして私が面倒を見る立場になると、誰かに言いたくなっちゃうわね)

やちよ(だって、成長しているってのがはっきり分かって嬉しいし、なにより今のあの子、とってもかわいいんだもの)

やちよ(普段は、ズガンだのドカンだの喧しいあの子が、しおらしくなって、口調すらもおとなしくなっちゃって、それで私に助けを求める姿、本当にかわいらしかった)

やちよ(誰かに言いたいけど、秘密にしておきましょう。男勝りなあの子でも、女の子なんだし、デリケートなことだし)

やちよ(うちのフェリシアってあんなにかわいいのよ、って誰かに自慢したいけど、誰にも言わないわよ)

やちよ(誰にも言わな―――)




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やちよ「それでね、その時のフェリシアと言ったらかわいいったらなくって!」

十七夜「ほう、あの狂犬がか」

やちよ「そうなのよ~。普段は、ズガンだのドカンだの喧しいあの子が、しおらしくなって、口調すらもおとなしくなっちゃって。本当にかわいらしかったわ。ふふっ」

このは「分かる! 分かるわそれ! あやめもこの前初めてきたんだけどね、あのあやめがものすごく焦って私に助けを求めてきてね! その姿といったらほんっっとーにっ! かわいくって!」

このは「あやめったら最初のうちはオロオロしっぱなしだったけど、葉月と一緒に『おめでとう!』って百万回言ってあげたら、ようやく笑顔になって、それがもう普段の一億倍かわいいの! 一週間くらいご飯はお赤飯にしたわ」

ひなの「確かに、普段は喧しい奴がしおらしくなって、頼りに来てくれるのがかわいく感じるってのは分かるな」

ひなの「衣美里なんだが、痛みが強い時とかはアタシを頼ってくるんだよ。あいつはどうも家族に言うのも恥ずかしいらしくて、痛みが強くても無理しやがる」

ひなの「普段はアタシのことを『合法ロリ』だの『小動物』だの『みゃーこ先輩ってもう生理きてるの?』だのぬかしてと小馬鹿にする失礼な奴だが、そういう時ばっかりは申し訳なさそうにアタシに寄り添ってくるから、それがかわいくてつい甘やかしてしまう」

十七夜「ふむ? 恥ずかしくて家族にすら言えない? そういうものか?」

やちよ「そういうものでしょうよ。十七夜だって父親とかに知られたら嫌でしょ」

十七夜「いいや。自分の時は自分から父さんに言ったが。あとついでに弟にも言った」

やちよ「えぇ・・・」


十七夜「そういえば以前、眞尾君と月咲君から生理用品を揃えるお金を工面できなくて、なにかいい方法はないかと相談を受けたことがあってな、やはりその二人とも家族に言うのは何故か恥ずかしがっていたな。だからその際は、自分が彼女らの父親に対して生理用品を揃える重要性についての講義をした」

やちよ「ちょ、な、なにやってんのよ」

十七夜「お金の問題は親にしか解決できんだろう。それに生理中は何かと大変だから家族のサポートだって必要だ。だが、眞尾君と月咲君には母親がいないし、本人が父親に言えんのなら、代わりに自分がと思ってな」

やちよ「まあ・・・理屈は正しいけど・・・。でも、二人とも嫌がったでしょ」

十七夜「眞尾君はずっと俯いて顔を赤くしていたな。月咲君の時は、月咲君が特に嫌がって、しまいには暴れそうになって」

やちよ「そりゃそうよ・・・。それでどうしたの?」

十七夜「月咲君をふんじばって、父親に講義を続けた。生理中に必要な物や、無理をしたときに体に及ぼす悪影響などを詳細に講義した。大事なことだからな」

やちよ「父親の前でそんなこと・・・。笛妹・・・かわいそう・・・」

十七夜「そうか? 確かに、その講義が終わった後に月咲君からはバカだのなんだのとひどく罵詈雑言を浴びせられたな。だが、数日経った後、『体調が悪いとお父ちゃんに言えば家事の負担を減らしてくれるようになった』と、小さな声だったが感謝されたぞ。生理用品も必要なだけ揃えられるようになったようだし、やはり父親に講義をしたのは間違いではなかったと思うが」

やちよ「そ、そう・・・それならいいけど。でも、家族にすら知られるのが本当に嫌って子もいるんだから」

このは「そうね。人の生理事情を誰かに言いふらすなんて最低ね」

ひなの「おいおい・・・ついさっきまで喜んで言いふらしてたのは誰だよ・・・」



ひなの「だが、そんな風に気かけてくれる人が身近にいる場合はまだマシだ。最近は誰にも相談できずに不安を抱えたままの子もいるらしい。父子家庭なんかはそういう子は多いだろうな。気の弱い子に至っては母親にすら相談できないこともあるとか」

ひなの「・・・魔法少女ってのは、複雑な家庭事情を抱えている子も多い。だから、そういう子が仲間にいたら、アタシら年長者が積極的に声をかけてやらないとな」

やちよ「ええ、それはすごく大切なことだと思う。私も二葉さんに声をかけてあげないと」


ななか「ふむ・・・。こちらから積極的に声をかけるのが大切・・・ですか」

ななか(そういえば、かこさんはどうなんでしょう。年齢的に初潮を迎えていてもおかしくないですが)

ななか(かこさんは気の弱い方ですし、もしかしたら誰にも相談できずに困っているかもしれません。念のため声をかけてあげたいですが)

ななか(しかし、デリケートなことですし、どういう風に声をかけるのが自然でしょうか)

ななか(ふむ・・・。例えばこんな感じでしょうか)



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ななか「ところでかこさん。つかぬことをお伺いいたしますが、初潮は迎えていますか?」

かこ「あっ・・・。実はこの前あって・・。でも、相談できる人がいなくて、どうしたらいいか分からなくて困っているんです・・・」

ななか「そうですか。では私が力になりましょう」

かこ「本当ですか! やっぱりななかさんは素敵な方です! 好きです! 結婚してください!」

~~~~~~~~~~~~~~~~



ななか「・・・・・・ふむ」

ななか(これですね。これならいけます。実に自然な聞き方です)

ななか(そうと決まればこうしちゃいられません! 今すぐかこさんの元へ行かないと! 私だってかこさんに頼られたいです!)

ななか「今日はこれで失礼します!」スタタタッ



その後、かこさんからはしばらく嫌われました。







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みかづき荘



やちよ「ただいまっ。ごめんなさい、話し込んでいたら遅くなっちゃって。すぐにご飯作るから―――」

やちよ「・・・・んっ?」


フェリシア「・・・・・・」

いろは「おかりなさいやちよさん」ニコニコ

さな「おかえりです」ニコニコ

鶴乃「あは、あはは・・・」ヒヤヒヤ......


やちよ「どうしたの? みんな揃って」

いろは「ほら、フェリシアちゃん」

フェリシア「あっ、お、おう・・・」

やちよ「?」

フェリシア「あ、あー・・・。その、なんだ・・・これ」スッ

やちよ「あら、カーネーションの花束じゃない。素敵。私に?」

フェリシア「んっ、まあ・・・。なんかしんねーけど・・・。いろはがやちよに送れってうるせーから・・・」

いろは「フェリシアちゃんがお花屋さんで一生懸命選んでくれたんですよ!」

フェリシア「ハ、ハァッ!?//// してーねからんなこと!//// 花屋のねーちゃんに適当に選ばせた!////」


やちよ「へぇ。んっ、でもどうして急に? 今日はなんかの日だったかしら」

鶴乃「え、えーとね・・・」ヒヤヒヤ....

やちよ「んー・・・? あっ、そういえば今日は母の日ね」

いろは「そうです! 普段からお世話になっているやちよさんに何かお返しをと思ったんです! だからやちよさん今日はゆっくりして家事はお休みしてください。ご飯は私が作りますから」

さな「私はお家を掃除しておきました!」

やちよ「あら、そうなの。ありがとう。んっ・・・? ちょっと待って、もしかして私、お母さん扱いされてる・・・?」

鶴乃「あっ、あのねあのね! 聞いてやちよ! やちよは実年齢以上に老けて見られるの気にしてるってわたしは知ってるから、やちよはこんな風に露骨にお母さん扱いされたら槍をぶん回すくらい怒るかもしれないからやめたほうがいいじゃないかなー・・・? ってみんなにはやんわりとは言ったつもりだったんだけど、でもみんなはやちよに純粋に感謝の気持ちを伝えたいだけで・・・!」

やちよ「ふーん・・・・」



やちよ「そういえばこの花束」

フェリシア「な、なんだよ・・・」

やちよ「虫がいっぱいついてる」

フェリシア「えっ!? オレが一本一本選んで見たときはいなかったのに・・・!」

やちよ「ウソよ」ニコッ

フェリシア「あっ!?/// こ、この・・・!////」


やちよ「んっ? この窓枠・・・」ツツーッ...

さな「あっ・・・。さっきちゃんと拭いたつもりですけど、ホコリ残ってました・・・?」

やちよ「ううん。綺麗に拭けてる。二葉さんは掃除上手ね」ニコッ

さな「ほっ・・・///」


やちよ「それで、今日はいろはがご飯を作るって? 私に感謝する日のごちそうなのに?」

いろは「あっ、えっと・・・はい・・・。やっぱり病院食みたいな私の料理じゃ嫌でしたか・・・?」

やちよ「いいえ、楽しみだわ。脂ギトギトのどっかの中華料理と違って、いろはの料理は食べやすいし食べた後の体の調子がいいもの」ニコッ

いろは「は、はい・・・/// がんばって作ります!」


鶴乃「ほっ・・・。よかった・・・。やちよ、喜んでくれたみたいで」

やちよ「鶴乃は私になんかないの?」

鶴乃「ほぇ? あー・・・ずっとヒヤヒヤしてたから考えてなかった。んーと、それじゃあねえ。かわいい弟子から甘えられる権利をあげる!」ダキッ スリスリ

やちよ「いらない」

鶴乃「またまたー。そんなウソついちゃってー。うれしいくせにー」スリスリ

やちよ「いらない。槍をぶん回すわよ」



いろは「ささっ、さっきも言った通りやちよさんはゆっくりしててください。あとは全部私たちがやっておきますから」

やちよ「ええ、ありがとう」


やちよ「あっ、そうだ。いろはちょっといい?」コソッ

いろは「はい?」

やちよ「もち米と小豆を買ってきたの。今日はこれでお赤飯を炊いてくれないかしら?」

いろは「いいですけど。何かおめでたいことでもあったんですか?」

やちよ「ええ、ちょっとね」チラッ

いろは「?」


 フェリシア「あれー? ここに置いてあったシールどこいった?」


いろは「んっ? あっ・・・! そういうことですねっ。はい分かりましたっ」ニコッ

やちよ「ええっ、お願い」


やちよ「そういえばういちゃんはどうなの? もうきてる?」

いろは「ういはまだですよ」

やちよ「本当? 実は姉にも言うのが恥ずかしくて自分でなんとかしているってことはない?」

いろは「それはありえないですね。私が毎日直接確認してますから」

やちよ「確認?」

いろは「身長、体重、体温、睡眠時間、骨盤の大きさ、胸のふくらみ具合、下着の汚れ具合、陰毛や腋毛の量を毎日確認しています。それらを総合的に判断して、ういが初潮を迎えるのは私の計算では後一か月程度先です。なので、いつ始まってもいいように、ういには既に生理用品の使い方をちゃんと教えてあって、常に持たせています」

やちよ「そ、そうなの・・・? ま、まあ、しっかり気に掛けるのはいいことね・・・」


いろは「私の時はお母さんが教えてくれましたけど、今のういには私がちゃんと教えなきゃですから」

やちよ「何かあったら私に言うのよ。協力するから」

いろは「はいっ。ありがとうございます」


 フェリシア「ハァッ?! オレのシール捨てたー?!」

 さな「ごっ、ごめんなさい! 要らない物かと思って・・・」

 フェリシア「このっ・・・!」


いろは「あっ! いけないっ! フェリシアちゃんをなだめないと!」

やちよ「いえっ、待って。そのまま」

いろは「えっ? でも・・・」


 さな「ごめんなさいごめんなさいっ・・・・」ウルウル

 フェリシア「あっ・・・。クソッ・・・。はぁ・・・もういいって、泣くなよ。オレが悪いみたいじゃねーか。シールくらいまた買うっての」


いろは「ほっ・・・。よかったぁ・・・。フェリシアちゃん、最近ちょっと大人になりましたよね」

やちよ「そうね」

やちよ「・・・・・・・」




やちよ(一緒に暮らして、こうして毎日顔を合わせていると気が付きにくいけど)

やちよ(身長とか、胸の大きさとか、そういう目に見えるものはもちろん、こういう精神的な面でも、この子たち成長してるなって、ある時ふと思わされることがある)

やちよ(本当の親の苦労に比べたら、私のやっていることなんてただのお遊びみたいなものだろうし、私がこの子たちの母親面するなんてのはおこがましいとは思うけど・・・)

やちよ(それでも、私は、この子たちが成長していくのを見ていたい。見届けたい。この子たちが大人になって、大人の楽しい時間を過ごしている姿を見たい)

やちよ(そのためにも、たとえ戦う力を失ったとしても、私は生き延びて見せる。生き延びて守って見せる)

やちよ(それが私にとって・・・この子たちの未来への切符を切るということ)

やちよ(かなえ・・・。メル・・・。貴女達も一緒に見届けて。お願いね)





おわり





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