――おしゃれなカフェ――
北条加蓮「あつい」ベチョ
高森藍子「あはは……」ズズ
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レンアイカフェテラスシリーズ第73話です。
<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「爽やかなカフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「写真日和のカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「物静かなカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「2人きりのカフェで」
加蓮「暑いしウザい。暑いのに雨降って。ジメジメして。ウザい」ベチョ
藍子「加蓮ちゃん、今日はずいぶん不機嫌ですね……」
加蓮「不機嫌なところにお前は不機嫌だなって言われると余計不機嫌になるんだけどー?」オキアガル
藍子「あ、ごめんなさいっ」
加蓮「不機嫌なんだけどー?」
藍子「……くすっ。なるほど。不機嫌なんですね」
加蓮「不機嫌なんだけどー??」
藍子「わかりました。不機嫌なんですね~」
加蓮「……………………」
藍子「はい、何ですか?」
加蓮「……………………」ベチョ
藍子「う~ん……。うちわでもお借りしようかな……?」
加蓮「いいよ別に。……まだクーラーかかってるだけかなりマシなんだし」オキアガル
藍子「入った時、すっごく気持ちよかったですよね」
加蓮「結構早い時間だったし、他に人もいなかったもんねー」
藍子「また、外に出て帰らないといけないと思うと……」
加蓮「……藍子でも面倒って思ったりするんだ?」
藍子「最初から最後まで、暑かったり、ジメジメしているなら、そういう1日なんだなって思えるので、大丈夫です」
藍子「でも……これだと外に出たくなくなっちゃいますよ。加蓮ちゃんもいますもん」
加蓮「じゃーのんびりしよっかー……」
藍子「は~い」
藍子「あ、そうだ。加蓮ちゃん。1つアドバイスですっ」
藍子「この時期は、あちこちのお店に行ってのんびりするのは、おすすめできません。特にカフェ巡りは、1ヶ月くらいずらした方がいいですよ」
藍子「それよりは、普段行ったことのない場所に立ち寄ってみたり、気になったお店にちょっと入るだけにしたり……」
加蓮「あー。すぐ出る! って決めてれば」
藍子「はいっ! 自分の中で、これだけ見たら出よう、何分経ったら出よう……って、計画立ててみるのも、時には悪くないと思いますよ」
藍子「でも、時間を意識しすぎると、なかなか楽しめなくなってしまうこともあるので、そこは難しいところですよね」
藍子「……、」ズズ
藍子「そ、そんな私と一緒に歩いて、時間をお知らせしてくれる人がいたら、な~……?」チラ
加蓮「へたくそ」
藍子「あぅ」
加蓮「もうアンタ、私からヘタって言われるの目当てでやってない?」
藍子「加蓮ちゃんが叱ってくれること、結構嬉しいんですよ。背筋が伸びますし、加蓮ちゃんが私のことを考えてくれているってこと、分かっちゃいますから……♪」
加蓮「……絶対やるなとは言わないけど場合によってはウザいからね?」
藍子「は~い」
加蓮「では高森さん。今日の"お散歩講座"のまとめをお願いします」
藍子「はいっ。まず、この時期にお出かけした時――って、お散歩講座?」
加蓮「ちょっと面白いかなって思って」
藍子「ふむふむ」
加蓮「最初にちょっとフリートークして場を温めて次に……、……フリートークだからって3時間くらい喋っていい訳じゃないわよ?」
藍子「そんなには喋りませんっ。長くて、1時間くらいです」
加蓮「もうそれで番組1本でいいじゃん……。まぁ短めにトークしたら、藍子が最近言った場所の紹介とかして、あ、写真を見せるのもいいね」
加蓮「それから時期に合わせてのお散歩講座。夏なら水分補給の豆知識とか、冬なら身体が暖かくなる豆知識とか」
加蓮「ネタがないならお頼り紹介……なら、ラジオの方が面白いのかな。写真はツイッターでいけるし」
加蓮「そういうお散歩講座的なの、どう?」
藍子「面白そうっ! それに、内容がすごく具体的で……。加蓮ちゃん、前からそうでしたけれど、前よりプロデューサーさんっぽくなってる気がします!」
加蓮「ふふっ。ありがと」
加蓮「……でも言うだけ言って何だけど私はあんまり好きじゃないなあ、これ」
藍子「え……?」
加蓮「フリートークならいいけど、これじゃ藍子がお仕事のためにお散歩するってことになっちゃうし」
藍子「あっ……。確かに、それはちょっぴり、抵抗があるかも……」
加蓮「でしょ? 自由にてくてく歩く方が楽しいに決まってるし」
藍子「行き先を決めずに、なんとなく普段行かない場所をぶらぶらしてみたり」
加蓮「買いたいものもないのに、テキトーに店に入ったりして」
藍子「つい、涼しいから長く居続けてしちゃって」
加蓮「自販機でジュースのお代わりを買ってしまい」
藍子「お店の方とお話が弾んでしまったりすることもあって――」
加蓮「それは季節関係なくない?」
藍子「だって、お喋りするの楽しいですもん……。知らないお話を聞けたり、面白いエピソードを教えてもらったり」ズズ
加蓮「……、」
加蓮「例えばの話なんだけど」
藍子「はい」
加蓮「私がどっか、藍子の知らないカフェに行って――」
藍子「え、どこですかっ!? 教えてください!」ズイ
加蓮「……」ベチ
藍子「いたいっ」
加蓮「例えばの話だからね?」
加蓮「……む? ってことは、藍子の知らないカフェの話は藍子と話す時の武器になる……?」
藍子「?」ズズ
加蓮「……そんなことしても面白くもないか」ボソ
藍子「ふうっ。ごちそうさまでした」コトン
加蓮「ごちそうさまでしたー」
藍子「ふふ。加蓮ちゃん、もうだいぶ前に飲み終わってたじゃないですか~」
加蓮「ついでに言っとこうって思って。……あ、店員さんだ。ごちそうさまー」
藍子「ごちそうさまでした。あは、私も加蓮ちゃんにつられちゃった」
加蓮「で、例えばの話なんだけどさ。私がこう、知らないカフェに行って、1時間くらいのーんびりお喋りしたんだー、って話をしたらさ。藍子はどう思う?」
藍子「う~ん……。例えばのお話なんですよね?」
加蓮「例え話」
藍子「加蓮ちゃんが、1人で、私の知らないカフェに行って、そこの店員さんとお喋りして……」ホワンホワン
藍子「…………」ウーン
藍子「♪」ニコー
加蓮「いや、なんでそうなるの?」
藍子「ほら、加蓮ちゃん、知らない方とお話するのが、まだちょっぴり苦手だったじゃないですか。前にカフェ巡りをした時もそうでしたし」
加蓮「うぐっ」
藍子「だから、楽しくお話してきた、っていうお話なら、私も嬉しくなっちゃいそうっ」
藍子「って、これは例え話なんでしたよね。つい、本当にあったことみたいになっちゃいました♪」
加蓮「……ニッコニコ笑顔なとこ申し訳ないけど、それたぶん現実にはならないから」
藍子「え~っ。まだ苦手なままなんですか?」
加蓮「それっ、むしろ藍子の方が特殊なのよ。会う人会う人みんなにいい顔して! そこまでしてっ――」
藍子「む……」
加蓮「……あっ」
藍子「加蓮ちゃん」ジー
加蓮「待って藍子。藍子? ……藍子ー? 藍子ちゃん?」
藍子「いいですよ。どうせなら、ちゃんと最後まで言ってください」ジー
加蓮「最後まで聞くって顔してないけど!?」
加蓮「えー、あの、……ごめん。藍子を傷つけること、勢いで言いそうになってた」
藍子「はい。許します」
加蓮「ほっ……」
藍子「でも、別に私、意識していい顔している訳ではないんですよ? もちろん、お仕事でもプライベートでも、会う方には笑顔になってほしいなって思いますけれど……」
加蓮「……ん、知ってる。で、私がそういうのがあんまり好きじゃないっていうのが――」
藍子「はい、知っていますっ」
加蓮「……、」
藍子「……」
加蓮「……あい、」
藍子「雨のせい」
加蓮「こ……え? 雨?」
藍子「ですよね。加蓮ちゃん、雨の日が好きではないから……。違いましたか?」
加蓮「……そういえば雨、降ってたね。小ぶりだから忘れてた」
藍子「ふふ。そこは、雨のせいにしちゃえばいいのに」
加蓮「やだよ。どうせなら藍子のせいにしとく」
藍子「え~。私のせいですか?」
加蓮「顔も知らない天気の神様なんかより、藍子の方が何万倍も好きだし」
藍子「……、」
藍子「か、神様と比べられたのはさすがに初めてです……」
藍子「好……きでいてくれるのに、加蓮ちゃんは、私のせいにしてしまうんですね」
加蓮「大っ嫌いなヤツにさ、自分の気持ちを受け止めてーなんて言うの、さすがに嫌じゃない?」
藍子「それは……確かに?」
加蓮「嫌いって気持ちだって、気持ちに変わりないんだし」
加蓮「どうせぶつけてしまうなら、ちゃんと受け止めてくれる人が相手の方がよくない? ちょっと計算的だけどね」
藍子「ううん、分かりますよ。加蓮ちゃんのお話」
加蓮「そっか。よかった……」
加蓮「ん?」
加蓮「ん、んー? 今の話がすんなり通じるってことは、藍子ちゃんには誰か大嫌いな人がいるってことかなー?」
藍子「ふぇ?」
加蓮「誰誰? やっぱ藍子の近くにいる誰か? いつもすっ転んだり台本噛んだりスポドリぶちまけたりしてくる1つ上の子とか?」
藍子「え、嫌いな人のお話……っていませんよ!? いたとしたらそれは加蓮ちゃんです。それにそれ、どう考えても歌鈴ちゃんのこと指してますよね!?」
加蓮「歌鈴のことを刺す……!? ……ごめん、藍子。まさかそこまで憎んでたとは思ってなくて……」
藍子「だからどうしてそうなるんですか!?」
加蓮「動機はお気に入りの服をびしゃ濡れにさせられたから。前からずっと憎いとは思っていたんです……!」
藍子「いったい加蓮ちゃんの中で私はどういう人になってるんですか!?」
加蓮「藍子がどういう人かー。うーん……」
藍子「そ、そこで真剣な顔になるんですね」
加蓮「んー……」
藍子「あ」
藍子「……」ジィ-
加蓮「……? なんか期待してる?」
藍子「せっかくですから、聞いてみたいなぁって。加蓮ちゃんの中で、」
藍子「ううん、"今の"加蓮ちゃんの中で、私はどんな人ですか?」
加蓮「んー」
藍子「わくわく」
加蓮「……いい顔ばっかり見せて優等生ぶろうとしてる嫌なヤツ?」
藍子「だからそれ以外で~っ。あと、さっきも言いましたけど私にはそんなつもりはないですっ」
加蓮「うーん。改めて、って言われると難しいね。街頭で急に"隣の人はあなたにとってどんな人ですか"ってインタビューされたようなものでしょ」
藍子「確かに、急にインタビューされちゃったら答えにくいのかも……?」
加蓮「…………いやあの、それを今やってるのが藍子なんだけど?」
藍子「え、えへへ」
加蓮「もうっ。マジで答えるなら……」
藍子「わくわく」
加蓮「癒やされるゆるふわアイドルで、だけど色々パッションで、みんなに好かれるタイプで、お散歩ガールで、……髪型が今日も可愛い? 無難なことならこんなとこ」
藍子「なるほど~、ありがとうございますっ。ふふっ」
加蓮「……」
藍子「♪」
加蓮「……。今の、メモしとかなくていいの? 忘れたらまた聞き直しになるよ?」
藍子「あっ、そうでしたね」ガサゴソ
藍子「じゃあちょっと失礼して――」ピタッ
藍子「…………加蓮ちゃん?」
加蓮「んー?」
藍子「……えっと……なんで?」
加蓮「詳しいとこまでは知らないよ。ただなんか藍子が企んでそうっていうか、たぶん違う狙いがあるんだろうなーって顔してたから」
藍子「ううぅ……! 今回は、本気で隠そうとしてみたのにっ!」
加蓮「甘い甘い。仮面を自在自由に操るこの加蓮ちゃんにかかれば、ゆるふわガールごときの演技、子供みたいなものよ!」
藍子「きゃ~っ」
加蓮「…………何させんの」ゲシ
藍子「いたいっ。言ったの加蓮ちゃんじゃないですか」
加蓮「させたのは藍子だっ」
藍子「それと、加蓮ちゃん、"自在自由"じゃなくて、"自由自在"ですよ?」
加蓮「え? ……私そんな変なこと言った?」
藍子「はい。……ごほんっ。あー、あー。"あまいあまいっ。仮面を、自在自由に――」
加蓮「なんで今ここでリピートするの!? なんで!?」
藍子「けられたお返しですもんっ」
加蓮「もう1発蹴るわよ!」
藍子「そうしたら、さっきの加蓮ちゃんのマネ、最後までやりますからね」
加蓮「……ほ、他にもお客さんいるよ? 大きい声出したら目立っちゃうよ?」
藍子「みなさんに見てもらうのも、いいかもしれませんね。どうせだから、加蓮ちゃんは私のマネをしてみませんか? ちょっとした、カフェでの小劇場ですっ」
加蓮「いやほら。似てないし。似てない。最初から似てなかった。そんなの見せてもしょうがないよ」
藍子「それならなおさらですね。みなさんに見てもらって、どうやったら加蓮ちゃんに近づけるのか、アドバイスをもらわなきゃっ」
加蓮「…………、……さっきのに1つ追加。"意外と手強い"」
藍子「加蓮ちゃんに鍛えてもらったから、って文章を、前につけておきますね」
加蓮「そーいうところもよ。手強いっていうより強か(したたか)すぎるのよ。普段隙だらけだってのに」
藍子「それも、加蓮ちゃんに鍛えてもらったからですっ」
加蓮「覚えがないんだけど……。私に近づいてどうすんのよ。もっと別のを目指しなさいよ」
藍子「え~」
加蓮「こんなのになるくらいなら――ごめん今のは無し。まぁほら、藍子は藍子で、私は私なんだし」
藍子「……そうですね。でも、いつか加蓮ちゃんのマネはマスターしてみせますからっ」
加蓮「はいはい。もう1人の加蓮ちゃんが出てくることを期待してるわよ」
加蓮「ところでそのインタビュー何かに使うの?」
藍子「はい。今度ラジオで、発表することになっていて。テーマは、"他のみんなから見てもらう自分"です」
加蓮「じゃあ色んな人に聞いてたり」
藍子「そうですね~。事務所で、何人かに聞いてみて。あと、お母さんとお父さんと、よくお話するクラスメイトにもですね」
加蓮「だいたいの人が"ゆるふわ"って答えたでしょ」
藍子「そう答えてもらっちゃいました。よく分かりますね」
加蓮「藍子のことだし」
藍子「せっかくの企画ですから、もっと考えてもらった方がいいかも……?」
加蓮「あ、さっき"急に聞かれたら"って言ってたの、あれアンタ自身がやらかしたことだったんだ」
藍子「はい……」
加蓮「確かに急に"私のことどう思う?"とか聞いてきたらびっくりするかもね。告白だって思われる可能性だってあるし」
藍子「こっ、告白!?」
加蓮「……まぁモバP(以下「P」)さん相手じゃないならアンタからは縁遠い言葉だろうから、そこは大丈夫だと思うけどね」
藍子「…………」
加蓮「……?」
藍子「あ、ううんっ。こういうのって、やっぱり聞きやすいようにお話した方がいいですよね」
加蓮「今度そういうの教えてあげよっか。って、こういうのなら藍子の方が詳しいかな」
藍子「ううん、教えてっ。加蓮ちゃんの方が、きっと得意だと思いますから」
加蓮「会話誘導よりは騙したり隠したりする方が得意なんだけどなー」
藍子「ええぇ……」
加蓮「ん……。ちょっと何か食べたい気分になっちゃったかも」
藍子「私も、少しお腹が減っちゃいました」
加蓮「何か食べる? 先選んでいいよ」
藍子「ありがとうっ。そうですね~……」パラパラ
藍子「あ、この限定メニュー」
加蓮「ん?」ミヲノリダス
藍子「"少し早い梅雨模様のゼリー"だって。最近、雨が多いから、梅雨のメニューを早く出したみたいですよ」
加蓮「梅雨模様のゼリー……」
藍子「加蓮ちゃん、興味があるって顔してます♪」
加蓮「……」
藍子「?」ニコニコ
加蓮「……雨が降ってるから気になっただけってことにしといて」
藍子「使い方、少し間違っている気が?」
加蓮「それに、ゼリーなら何か食べた後にしない? あんまりお腹膨れそうにないし」
藍子「それもそうですね。って……え? もう、お昼ご飯の時間なんですね」
加蓮「そーいうこと。誰かさんが大量の時間を使ったせいで、もうお腹ぺこぺこだよー」
藍子「うぅ。またやってしまいました。……それなら、まずはお昼ご飯から食べましょうっ。ゼリーは、その跡のお楽しみで♪」
加蓮「そうしよそうしよ」
□ ■ □ ■ □
藍子「……!」キラキラ
加蓮「……」
藍子「……!!」キラキラ
加蓮「……そんなに気に入ったの? 梅雨ゼリー」
藍子「だって、すっごく綺麗……! ゼリーの中に、紫陽花と、雨模様の景色が入っていて……。
あっ、すごい。これ、紫陽花の上に、ちゃんとかたつむりまで乗っていますっ」
加蓮「これどうやって作ってるんだろ。気になるけど、きっと秘密だよね……」
加蓮「まあ、満足するまで見続けてればいいんじゃないの?」(←とっくに食べ終えている)
藍子「……!」キラキラ
加蓮「あはは……。こういう時の藍子は長くなるよねー」(食後にコーヒーを飲んでいる)
藍子「はわ~……!」キラキラ
加蓮「雨は……。まだ降ってるなぁ」
加蓮「一応お昼から雨の日コーデでも見に行こうかなって思ってたけど、コーデ揃える前に雨が降っちゃうんだもんなー……。遅かったか」
藍子「え? 加蓮ちゃん、服を見に行く予定だったんですか?」
加蓮「そこは聞いてるんだ。話のネタが切れたらそうしよっかなーって思ってて、ついでに藍子の適当に選んでみよっかなって思ってたけど、面倒くさくなっちゃった」
藍子「そうですね……。雨、朝より強くなっちゃいましたし」
加蓮「結構量を買いたかったから、また晴れた日に行くことにするね」
藍子「その時は誘ってくださいね♪」
加蓮「……今日アンタが消費した分くらいに着せ替え人形にするよ?」
藍子「お、お手柔らかに……」
藍子「ゼリー、そろそろいただきますね」パンッ
加蓮「いただけいただけー」
藍子「……い、いただいちゃいます」パンッ
加蓮「いただけー」ズズ
藍子「……」
藍子「……うぅ」
藍子「食べられませんっ……!」
加蓮「くくっ。ずっと前にラテアート注文した時の私みたいになってる」
藍子「あれはいつでも注文できる物だったじゃないですか! これは梅雨限定なんですよ~っ」
加蓮「そうなんだけどね。ま、どうしても藍子が食べれないなら私が代わ、」
加蓮「……冗談だから一瞬にしてゆるふわモードから闇子ちゃんモードに変貌するのやめなさい。冗談だから」
藍子「もうちょっとだけ見てからっ」
加蓮「はいはい。コーヒーおいしー」ズズ
藍子「ごちそうさまでした! すっごく美味しかったっ♪ つるつるで、でも噛んだ瞬間にふわっ、と……?」
加蓮「あつい」ベチョ
藍子「加蓮ちゃん……? まさか、熱が出て!?」
加蓮「違うわよ……。あついだけ」ベチョ
藍子「そうですか……。びっくりした。でも、急にどうしたんですか? そんなに温度は変わってないような?」
加蓮「ホットコーヒー飲んだらあつくなった」
藍子「…………」
加蓮「藍子の言う通り、アイスコーヒーにしとけばよかった。あつい」
藍子「……………………」
加蓮「突っ伏せてて見えないけど藍子が冷たい目してるのがわかる」
藍子「……よかったですね。これで、もっと涼しくなってください」ジトー
加蓮「むしむしする。あつい。ウザい」
藍子「もしかしたら、お客さんが何人か来たからかな……? 外から、湿気が入り込んじゃってるのかもしれません」
藍子「一応、除湿機は動いているみたいですけれど……。この時期は、やっぱり厳しいですね」
加蓮「……」ベチョ
藍子「……」ジー
藍子「……」ツンツン
加蓮「つつくなー」
藍子「……」ツンツン
藍子「……」ジー
藍子「……♪」クルクル
加蓮「人の髪で遊ばないのー」
藍子「う~ん……」クルクル
藍子「……」クルクル
藍子「……♪」クルクルギュー
藍子「今度は、こっち側も――」
加蓮「……」ベチ
藍子「いたいっ。加蓮ちゃんの髪の毛の先をちょうちょ結びにしてみただけですっ」
加蓮「傷まない程度にしてよ?」
藍子「そこは気をつけます。加蓮ちゃんの大切な場所ですもんね」
加蓮「言い方……」ベチョ
藍子「?」
藍子「……」クルクル
藍子「できたっ。この結び目を、見えるようにこっちに向けて……」
藍子「はい。加蓮ちゃん、ちょっと顔を上げてみて?」
加蓮「ん……」ヨロヨロ
藍子「うんっ。可愛く……、あれ?」
加蓮「無い、と」
藍子「絶妙に変な感じです……。これは、おしゃれやリボンっていうより、……ねぐせ?」
加蓮「さっきまで突っ伏せてたからね。寝癖が出来てもおかしくないでしょ。……直してー」ベチョ
藍子「はぁい」クルクル
藍子「……」クルクル
藍子「……♪」クルクル
加蓮「ねえ。増やそうとしてない?」
藍子「か、加蓮ちゃんがまた突っ伏せてしまいましたから、寝癖が増えても不思議なことではありませんよね?」
加蓮「どうやったらこの体勢で寝て寝癖が増えることになるのよ」
藍子「雨だから仕方ありませんね」
加蓮「雨だったら仕方ないね」オキアガル
加蓮「よ、っと」ブンブン
加蓮「うん。簡単に解けた。ん~~~」ノビ
藍子「え~。もうちょっと、いじっていたかったのに」
加蓮「……んっ、と」
加蓮「加蓮ちゃんのヘアアレンジタイムは終了しました。またのお越しをお待ちしています」
藍子「延長でお願いしますっ」
加蓮「カラオケじゃないんだから。……、言ってたらカラオケに行きたくなっちゃったけど、相変わらず雨降ってるね」
藍子「天気予報では、そろそろ止むようにはなっていましたけれど……」
加蓮「いっそここで歌っちゃう?」
藍子「……他にお客さんがいますよ?」
加蓮「加蓮ちゃんのゲリラLIVE、今回は事前予告ゼロの生歌披露!」
藍子「今日たまたまここに来ていた人は、すごくラッキーですね」
加蓮「……でもなんか今はアイドルモードになれないからパス」
藍子「雨のせいですか?」
加蓮「雨のせいです。……言わせたいだけでしょ、藍子」
藍子「えへへ」
加蓮「雨がウザイし、何かしよっか」
藍子「じゃあ、また何か注文してみますか?」
加蓮「いーよー。そうそう、パフェとか食べてみようよ。久々に。えーっと」パラパラ
加蓮「あったあった。やっぱりそうだよね。さっきちらっと見えたんだよねー」
加蓮「パフェのとこ。"リニューアル"だってさ! これは注文しなきゃっ」
藍子「あっ、加蓮ちゃんも気付いていたんですね」
加蓮「ってことは藍子も?」
藍子「ふふ。いつ"食べたい"って言おうか、ちょっぴり悩んでいたところなんですよ♪」
加蓮「お悩み解決しちゃったかー。お礼は、藍子の分を分けてもらうってことで許そう」
藍子「仕方ありませんね~。すみませ~んっ」
……。
…………。
<お待たせしました。それではごゆっくり……
加蓮「…………」
藍子「…………」
パフェ×2 <ズ...
加蓮「…………量多くない?」
藍子「多いですね……」
加蓮「チョコパフェの方は……これ、チョコ何層になってんだろ。うわ、メチャクチャ甘そうな生クリームがいっぱい詰まってる……」
藍子「フルーツパフェの方は、フルーツが"これでもかっ"ってくらいに乗っていて、今にも落ちてしまいそう……ってホントに落ちちゃうっ」ヒョイ
藍子「……あ、でもこのメロンおいしい」アムアム
加蓮「ちょっ、私にこの超甘い生クリーム食べろって言うの!?」
藍子「あ。そういうつもりはありませんよ。それなら、私がこっち食べますね」スッ
加蓮「リニューアルってそういうことだったんだ。確かにフルーツは美味しいけどさー……」モグモグ
藍子「あむあむ。……! 加蓮ちゃん。このチョコもすっごく美味しいですよっ」
藍子「ほら、お礼に分けてあげます。あーんっ♪」
加蓮「……量が多いからなすりつけてやろうって考えてないでしょうね?」
藍子「ぎく」
加蓮「ったく」アーン
加蓮「……」
加蓮「もう一口もらっていい?」
藍子「はい、どうぞ♪」
加蓮「あむ」
藍子「ひとくちと言わず、もうふたくちっ」ハイ
加蓮「食べさせたいだけでしょー」アム
藍子「美味しいものは、一緒に食べてこそです♪」
加蓮「なるほどねー。……うん。少しカカオって感じが残ってる? クリームが甘いからかな」
藍子「あむあむ……♪」
加蓮「私も食べよー。……フルーツが減る気がしないんだけど、これ」ゲンナリ
藍子「美味し~っ♪」
……。
…………。
――20分後――
加蓮「ぎぶ」ベチョ
藍子「ああっ、また突っ伏せちゃった……」
加蓮「ちょっと胸焼けするしお腹いっぱいだし、甘いのもういい……。ポテト欲しい……」
藍子「あむあむ……♪」
加蓮「……」ベチョ
藍子「ん~♪」
加蓮「……」
藍子「あむあむ……」
加蓮「……」チラ
藍子「ん~♪」
加蓮「……」
藍子「あむあむ……♪」
加蓮「……」チラ
藍子「ん~♪」
加蓮「……あふ」
藍子「……? 加蓮ちゃん、眠たいならこっちに来ますか? 突っ伏せて寝ちゃうと、跡がついてしまうかもしれませんよ」
加蓮「ん……」
藍子「私の膝なら、いつでもお貸ししますよ~♪」ポンポン
加蓮「……いいよ」
藍子「?」
加蓮「ここでいい」
藍子「そうですか……」ショボン
加蓮「……」ベチョ
藍子「あむあむ……」
加蓮「……こっちで見てる方がやっぱり楽しいし」
藍子「?」
加蓮「別に。藍子、ほっぺたのとこクリームついてるよ。……そっちじゃなくて。ちょっと顔出しなさい」
加蓮「よ、っと。はい取れた。おやすみー」
藍子「…………、あ、ありがとう。加蓮ちゃん」
加蓮「んー」ベチョ
藍子「あむあむ……」
加蓮「……すー」
藍子「って、結局寝ちゃうならこっち来たらいいじゃないですかっ。……そ、そこよりは、まだ寝やすいと思いますよ?」
加蓮「寝てない。そしてやだ」ベチョ
藍子「もうっ!」
【おしまい】
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