提督「漣が寝てる…」 (14)
短いです。
漣「すー…すー…」
提督「こんなところで寝てたら風邪ひくぞ全く」
俺を待っていたのだろうか、司令室の椅子で机に突っ伏して寝ている。
提督「まだまだ子供だなぁ。…毛布掛けといてやるか」
うちの初期艦でありエースでありケッコン艦でもあるこの娘。この華奢な体からどうやってあのエネルギーを生み出しているのか不思議なものだ。
~~~
漣「綾波型駆逐艦漣です、ご主人様。これからよろしくお願いしますね!」
提督「ああ、こちらこそ新人だから拙いところも被いと思うが、よろしく頼むな」
漣「はい!ところでなんで初期艦に漣を選んだんですか?」
提督「主砲に乗ってるウサギが可愛かったから」
漣「フムフム」
提督「…」
漣「…え、それだけ?」
提督「ああ、それだけ」
漣「そこは嘘でも『君の瞳に惚れたのさ、ベイベー』くらい言ってくださいよ!」
提督「くっさ!くっっっさ!」
漣「それすら言えなかったくせに!」
提督「ああ、はいはい、漣も可愛いよ」
漣「なんですかその取って付けたような言い方。もう、先が思いやられますね」
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提督「よっしゃ、じゃあ早速なんだが…」
漣「お、もしや出撃キタコレ!」
提督「ああ、ちなみに鎮守府の目の前にいるっぽい」
漣「…え?メチャヤバな感じ?」
提督「だな。まあ駆逐艦くらいだからなんとかなるって。こっちからもチェックしてるけどヤバくなったら連絡しろよ」
漣「まあ駆逐艦くらいなら余裕っしょ。駆逐艦漣、出る!」
チュドーン
漣「はにゃ~」
提督「うおっ、大丈夫か?中破か、しょうがないな。帰っておいで」
漣「え?まだやれますよ?」
提督「いいからいいから。焦るなって」
~母港~
提督「大丈夫か?すぐ入渠してきなよ」
漣「…漣のパンツで興奮したりしないんですか?」
提督「は?子供ぱんつ見えたくらいで興奮するかy」
ボコォ
提督「ドベラゲシャッ」
漣「ふーんだ!」ベー
スタスタ
提督「てて、まああれだけ動けるなら大丈夫そうだな」
とにかく最初の出撃で鎮守府の目の前をうろちょろしてた深海棲艦は退治できたので、次の猶予までに漣には色々なことを教えてもらった。中破状態までなら大して痛くないので轟沈しないこと、海域を回っていたら艦娘を救助することがあるので戦力を整えることができること等だ。正直大本営は資源をチョロチョロ送ってくれるだけで何も教えてくれないので助かった。
漣「ホントに全然聞かされてないんですね」
提督「ああ、艦種とかは知ってるがそれくらいだな」
漣「ふーん、意外。ご主人様って鎮守府任されるくらいだからエリートなのかと思ってました」
提督「だったらこんなよくわかんないところに飛ばされないって」
漣「それもそっか。じゃ、ご主人様はバカってことで」
提督「…否定はしないがなんかムカつくな」
漣「やーいやーい、ご主人様のバーカ」
提督「お、やるか!」
漣「残念、そこにあるのは残像だ」シュタタ
提督「あ、おい!」
…今考えてみても上司と部下の関係ではないな、どう見ても。
でもそんな関係だからかもな、俺がどうしようもなく落ち込んで近寄りがたいオーラを出している時も側に寄ってきてくれたのは漣だった。
漣「…ご主人様。まだ落ち込んでるんですか?」
提督「俺のミスで天龍は帰ってこれなかったんだ。もう提督としてはやっていけない」
漣「…そうですか。じゃあ漣もご主人様の部屋にいていいですか?」
提督「…好きにしろ」
漣「じゃあ失礼して」ストン
漣「…ご主人様が提督を辞めたいと思うなら漣は止めません。ご主人様が決めることですし。でも、それでご主人様が1人になるのだけは嫌だなーって」
提督「………」
漣「漣もまだご主人様に話してない本当のこといっぱいありますし、ご主人様から聞けてないこともいっぱいありますし」
提督「………」
漣「…天龍さんもこのままじゃゆっくりできないと思うんです。ご主人様が言いたかったことを聞いてからじゃないと。だから、ね?」
それから3日経ってからだった、俺が話し始めたのは。その間漣は俺の側を離れずずっと見ていてくれた。そんな人がいて俺は本当に幸せ者だと思う。
それ以来俺は漣の出撃の頻度を上げた。少しでも練度を上げて、有事の際にも漣が無事で帰ってきてくれるようにと。まぁいわゆる依怙贔屓ってやつだ。
そして、漣のライバルもいた。瑞鳳だ。彼女は俺が着任した日に来てくれた艦娘であり、しばらく駆逐艦や軽巡しかいなかったうちの鎮守府で圧倒的強さを誇ったために主力となったのは必然であっただろう。
漣「ずーるーいー!艦載機で一気に墜としたらどうやったって漣はMVP取れないじゃないですか!」
瑞鳳「ずるくないもーん、ね、提督?」
提督「そんなことで俺に話を振るなよ…まあMVP取れなくたって漣の強さは俺が1番知ってるからさ、な?」
漣「…まあそれならしょうがないですね」
瑞鳳「むぅ。なんかそれじゃ納得いかない」
提督「なんだなんだ、今度は瑞鳳か」
瑞鳳「じゃあ提督のお嫁さん競争のMVPが誰なのか決めてよ!」
提督「ブホッ!」
漣「いいいいきなり何言ってやがるんですか!」
瑞鳳「これなら提督が決められるからどっちが上かはっきりできるでしょ?それとも自信ないの?」
漣「よ、余裕余裕!なんたってこっちにはぼのたん直伝のツンデレアタックがあるからね!」
提督「おい俺の意思は…」
漣「黙らっしゃい!ゴホンッ…べ、別にご主人様のことなんか好きじゃないけどっ…アンタは私がいなきゃダメなんだからずっと一緒にいてあげなくも、ない…かも」
提督(ちゃんと頬を赤らめてるあたり結構可愛いな)///
瑞鳳「あっ、何よ提督、顔赤くしちゃって!そもそもこんなの漣じゃないじゃん!」
漣「へっへーんだ、勝てばいいのだ勝てば」
瑞鳳「むー。提督、こっち向いて!」グイッ
提督「おおぅ。どうした、手を握って」
スーッ
瑞鳳「ず、瑞鳳の格納庫、まさぐっても…いいのよ?///」
提督「はっ?///」
漣「な、何やってんだこのクソビッチ!」
瑞鳳「ほら、提督だって満更でもない顔してるもん!」
漣「こ、この変態!」ドカッ
提督「や、顔赤くするなってほうが無理だろ!あー、もう!引き分け引き分け!」
瑞鳳「えー!」
漣「メシマズ~」
提督「ほらほら、散った散った」
瑞鳳「あ、提督」
提督「なんだ?」
瑞鳳「その、まさぐりたかったら、提督ならいつでもいいんだから…ね?」
漣「いっぺん…死んでみる?」ジャキッ
提督「わー、やめろ漣!」
こんなこともあったな。あ、言っておくがまさぐってはいない、いないぞ、絶対にだ!
まあそんなこんなでケッコンカッコカリに近かったのはこの2人だった。買うことはできるが任務で貰える指輪は1つだけ。しかもその後にハネムーンが控えている。俺のとった選択は…
提督「大淀」
大淀「どうしました、提督?」
提督「これからリランカへの連続出撃を行うから、このメンバーに連絡してくれ」
大淀「リランカですか…承知しました」
提督「特に漣は出撃が続くから準備を怠らないようにと伝えておいてくれ」
そう、かの有名な魔のリランカ修練。終わりの見えない地獄。
しかしそれを選ばざるを得なかった。練度に関しては瑞鳳が一歩リードしていたし、たかが指輪、実際に結婚するわけでもない。が、されど指輪。初期艦であり、辛いときはいつでも側にいてくれた漣にあげたい、そう思う気持ちがどうしても強かった。
それから毎日のようにリランカに通い…
漣「ご主人様!練度99ですよ、99!」
提督「ついにか。おめでとう」
漣「いやー、来る日も来る日も潜水艦を撃ち抜き続けて海防艦になった気分でした」
提督「はは、すまないな。俺のわがままのせいで」
漣「いえ、ご主人様の命令は絶対ですから」
提督「でだ、漣。多分気づいていたと思うが。これは漣に1番似合うと思ったんだ。だからこれを君につけてあげたい」
漣「………」ポロポロ
提督「え、あ、嫌だったか?」
漣「い、いえ!でもあの、分かってはいましたけどいざ貰えるってなると…ご主人様はいつも漣のこと子供扱いでしたし、不安で…」
提督「…そうか、すまんな」
漣「いえ…」
グシグシ
漣「じゃあこれはありがたく頂きますね、さ、グイッと付けちゃってください、グイッと!」
提督「おう」
スッ
漣「…なんか桜舞ってますね」
提督「ああ、なんでこんなところにばかり力いれてるんだ。全く大本営の考えることはよくわからない」
漣「ま、とにかく次はハネムーンですね。どこに行きますか?」
提督「ああ、実は決めてある、というか大本営に指定されている」
漣「へぇ、どこなんですか?」
提督「…リランカ」
漣「…は?」
そうやって色々なことを乗り越えて俺達はここにいる。
その少女をもう一度見つめる。髪だけでなくその唇も儚い桃色に染まっている。
提督「…そういえばキスとかはしたことないな。ま、ケッコンカッコカリだし」
実際あまり嫁として意識したことはない。学校の後輩くらいの感覚でいることが多いと思う。とはいえ2年近く一緒に過ごしてきていとおしく思っているのも事実だ。
提督「…一回だけ、試してみるか」
魔が差したというべきなのかもしれない。俺はその桃色の少女の放つ魔力に引き寄せられてそのまま
キスをした。
なんでこんなに暖かいんだろう。幸せの波が静かに、でも確かに打ち寄せてきている。その一瞬が一生に感じられた。
そして口を離s
あれ、いつの間にか寝てたみたい。何してたんだっけ…
あ、そうだ、今度七駆の皆で行くお花見にご主人様も誘おうってことになったからお願いしに来たけどいなくって。
それで待ってたらいつの間にか寝ちゃってたのか。
うーん、でもまだ目を開けたくないし、毛布暖かいしもうちょっとだけ…
毛布?
提督「…一回だけ、試してみるか」
え?
チュ
え?
え?
うそ、前に冗談っぽく頼んだ時は軽く流されたのに…
ずっと願っていたそれが今私の元にある。この人と私の絆をもっと強くしてくれるであろうそれが。
ご主人様の顔を見つめたい、でも起きていると知られたら離れてしまうだろう、それは嫌だ。できるだけ、長く、長く、長く、長く…
あ、そんな、まだ欲しいのに…
まだ離れないで…
ブスッ
ブスッ ブスッ ブスッ
提督「ぐ、ゴフッ」
バタッ
漣「…え?」
瑞鳳「指輪はカッコカリだから最初は譲ってあげようと思ってたけどキスまではちょっとね。まあこれから提督が私とずっとずっとずっと一緒に居てくれるなら許してあげる」
漣「嘘、嘘、嘘、やだ、やだ、やだ、やだやだやだやだいやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
最初で最後のキスは鉄の味でした。
おしまいです。
本当は瑞鳳に監禁させるつもりだったけど長くなりそうだったので切りました。
現実ではちゃんと二人には仲良く指輪を4つずつ渡してるので私は心配ないですが、瑞鳳に指輪を渡していない人は背後に気をつけてくださ
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