【ガルパン】愛里寿「キャプテン・ボコリカ」【アベンジャーズ】 (16)

ボコのテーマを聞いてたら考えついてしまった、ガルパンとアベンジャーズのクロスオーバーです。
エンドゲームのオフィシャルトレイラーレベルのネタバレはあります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1556154494

愛里寿(私がその人を知ったのは、とあるニュースがきっかけだった)

愛里寿(6年前……人々が初めて地球外生命体と邂逅したあの日)

愛里寿(空にあいた穴から次々に攻め込んでくる宇宙人の軍隊……)

愛里寿(そして、それを撃退したヒーローチーム)

愛里寿(子供心に、彼等の姿は焼き付いている)

愛里寿(空を駆ける鋼鉄の男、雄叫びと共に宇宙人を叩き潰す緑色の怪物、雷を操るハンマーの巨漢)

愛里寿(宇宙人の兵隊を次から次に倒していく彼等は、まさに心の中で思い描く【ヒーロー】を体現した存在だった)

愛里寿(……そんな中、私は見た)

愛里寿(宇宙人の一兵士にすら時には苦戦をして、先の三人とは比べ物にならないくらいに疲弊し、ボロボロになり、)

愛里寿(それでも、彼等の戦いに食らいつく一人の【ヒーロー】の姿)

愛里寿(他のメンバーと比べてしまえば、派手でもないし、強くもない)

愛里寿(なのに、だというのに、何故か)

愛里寿(満身創痍な彼の姿が―――一番、印象に残った)

愛里寿(後からゆっくり考えて、分かった)

愛里寿(彼の姿が、当時から大好きだった『ボコ』に似ていたのだ)

愛里寿(ボコボコにされて、それでも立ち上がり、立ち向かう)

愛里寿(そう、姿形は違えど、彼は『ボコ』だった)



愛里寿(彼―――キャプテン・アメリカの経歴を調べていくと、その印象は更に深まっていった)

愛里寿(兵士となる前は、貧弱な虚弱体質だった彼)

愛里寿(それでも、元々の正義感は変わらなくて、)

愛里寿(街のチンピラに喧嘩を売っては、ボコボコにされていたという)

愛里寿(彼は第二次世界大戦中にあった『超人計画』に参加して、今の身体を得たらしい)

愛里寿(人間の限界点とも言える力を得た彼は、その力でもって戦争を戦い抜き、終戦の間際で南極にて行方不明となった)

愛里寿(そして、氷河の中で眠っていた彼は―――現代で目を覚ました)

愛里寿(七十年後の世界に、周りの人も死んでしまった世界に、彼は復活した)

愛里寿(その直後にあったのは、ニューヨークでの決戦)

愛里寿(既に彼以上の超人が何人も現れた世界で、それでも彼は立ち向かった)

愛里寿(SNSに出回った情報によると、ロキという神を名乗る男にも立ち向かったそうだ)

愛里寿(手も足も出ない相手に彼は少しも退かなかったという)

愛里寿(人々の前に立ち、ボコボコにされながらも、その度に食らいついて―――)



愛里寿(……彼の人となりを知る程に、その姿が『ボコ』と重ねっていった)

愛里寿(こんな『ボコ』みたいな人が、本当にいるなんて思わなかった)

愛里寿(気付けば、私は彼のファンとなっていた)

愛里寿(彼の活躍をニュースやインターネットで見ては、目を輝かせる)

愛里寿(ワシントンDCでのヒドラ事件……ソコヴィアでのウルトロン事件……)

愛里寿(そのどれもで、彼はボコボコにされながら敵に立ち向かっていく)

愛里寿(そんな中で……ある事件が起きた)

愛里寿(キャプテン・アメリカ率いるアベンジャーズが戦闘の最中で多くの市民を巻き込み、犠牲を生んだのだという)

愛里寿(ニュースでは、彼に対する批判的な内容がずっと流れていた)

愛里寿(凄まじい力を有した超人たちが、誰に管理される事もなく、国境を越え争乱を巻き起こす)

愛里寿(その果てに市民が犠牲となり、血が流れる)

愛里寿(彼等は管理されるべきだ、と)

愛里寿(ネット上でも同じ様な意見が飛び交うようになっていた)

愛里寿(……違う、と思った)

愛里寿(彼等が市民を巻き込んだのは事実だけど、彼等がいなければもっと多くの人々が犠牲になっていたのだ)

愛里寿(いつだってそうだ)

愛里寿(ニューヨークでも、ワシントンでも、ソコヴィアでも……彼等がいなければ、もっと多くの人々が犠牲になっていた)

愛里寿(それでも人々の意見の大半は、彼等に批判的なもので、)

愛里寿(……そのボコられ方は、普段のそれとはまるで違っていた)

愛里寿(見ている私も胸を締め付けられるような、苦くなるような……)

愛里寿(余りに、悲しいボコられ方だった)


愛里寿(更に、もう一つ)

愛里寿(追い打ちをかけるようなニュースが、ネット上で流れた)

愛里寿(……唯一現代まで生存していた、戦時中の彼の仲間が亡くなったのだという)

愛里寿(その人は女性で、かつて彼と恋仲にあったらしい)

愛里寿(だけど、あの南極での戦いで二人は引き裂かれてしまい……七十年後の現代で再会した)

愛里寿(もちろん七十年という時は大きく、彼女には家庭があって、子どもも孫もいて、女性はもう年老いていて……)

愛里寿(だけど―――彼女は、彼にとって唯一無二の存在であった筈だ)

愛里寿(この激動の情勢の中で、そんな女性すらも失って……)

愛里寿(……私は、居ても立っても居られなかった)

愛里寿(いくら『ボコ』だって、今の状況は余りに……余りに救われない)

愛里寿(気付けば、私は母さんに頼み込んでいた)

愛里寿(アメリカに……彼の元に行きたい、と)

愛里寿(何をできる訳でもないけど、彼と会って話をしたい、と)

愛里寿(頭を下げて、頼み込む)

愛里寿(突拍子もない事を言っているのは分かっている)

愛里寿(いきなりアメリカへ行くのも、今話題の中心にいる彼に会いにいくのも、無茶でしかない)

愛里寿(でも、それでも、今の彼を放っておくのは嫌だった)

愛里寿(出会った事のない彼だけど、彼は私の―――【ヒーロー】なのだから)



愛里寿(……母上は戦車道を語る時のそれと同じ、冷たい瞳で私を見詰めた)

愛里寿(何度も反対し、何度も私の無茶を説き伏せ―――それでも、私は折れなかった)

愛里寿(どうしても彼に会いたいと、何度も頭を下げる)

愛里寿(結局折れたのは、母上の方だった)

愛里寿(アメリカの戦車道は、実際の軍隊と密接に関係している)

愛里寿(戦車道の伝手を通して、彼と確実に出会える日程を調べてくれるとの事だった)

愛里寿(結局彼の予定で確定しているのは、彼女の葬儀の時だけだった)

愛里寿(それもそうだろう。【ヒーロー】に確定的な予定などないのだから)

愛里寿(そして、私は母上とアメリカに立ち、)

愛里寿(その葬儀の最中に、彼の元に辿り着いた)


愛里寿(葬儀の終えた教会にて、一人佇む彼)

愛里寿(その大きな背中は、普段よりも小さく見えて、)

愛里寿「あの……」

愛里寿(その背中に、私は声を掛けた)

愛里寿(腕の中のボコを強く抱き締め、平静を保つように言い聞かせる)

キャップ「君は……?」

愛里寿(彼は頬に伝う涙の痕を拭き取りながら、赤い瞳で振り返った)

愛里寿(それは、いつもの凛々しい彼と比べて余りに痛ましくて……何でか、私も泣き出したくなってしまった)



愛里寿「あの、私、貴方のファンで……」

愛里寿(言葉が上手く出てこない)

愛里寿(彼の力になりたいと、彼を励ましたいと思って、海を渡って来たのに、)

愛里寿(余りに痛ましい彼の姿を目の当たりにしたら、胸が詰まって、言葉が出てこない)

愛里寿「あの、その……」

愛里寿(彼も、私の様子に何かを察した様子だった)

愛里寿(膝を折り、目線を合わせて、優しく微笑む)

キャップ「可愛い人形だね。その子は何て名前なんだい?」

愛里寿「こ、この子は『ボコ』……」

キャップ「ボコ、か。可愛い名前だ」

愛里寿「うん。『ボコ』は可愛いくて……とっても弱いの」

キャップ「そうなのか? そうか、それはまるで―――」

愛里寿(そこで、一瞬言葉を区切って、彼は続けた)


愛里寿(―――まるで、僕みたいだな、と)


愛里寿(自嘲的な微笑みと共に、彼は零した)

愛里寿(それは現状に打ちひしがれた彼が思わず零してしまった、本音のようなものなのだろう)

愛里寿(人々を巻き込み非難され、ヒーローとしての活動を管理されそうになり、かつての愛する人を失い……)

愛里寿(……彼は、傷付いていた)



愛里寿「違う……違うの!」

愛里寿(その余りに寂しげな表情に、思わず声を張り上げていた)

愛里寿(伝えたかったのだ)

愛里寿(『ボコ』の、そして彼の―――本当の強さを)

愛里寿「『ボコ』は弱くて、弱くて……いつも喧嘩を売ってはボコボコにされてるけど……」

愛里寿「ボコボコにされて……いつも傷だらけだけど……」

愛里寿「それでも、立ち上がるの」

愛里寿「立ち上がって、何度だって立ち向かうの」

愛里寿「どんなに強い相手にだって、勝ち目のない相手にだって、『ボコ』は立ち向かう」

愛里寿「それでも敵わなくて、もっともっとボコボコにされても―――」




愛里寿「―――『ボコ』は、何度だって立ち上がるから」




愛里寿(私の言葉に、彼は何かを気付かされたように固まり、)

キャップ「そうか……ああ、そうだな」

愛里寿(そして、強く強く頷いた)


キャップ「……『ボコ』は、ガッツがあるな」

愛里寿「うん、それが『ボコ』だから」

キャップ「そうか。気に入ったよ」

愛里寿「あの、これ良ければ……」

愛里寿(彼に差し出したそれは、私が用意したものだった)

愛里寿(星印の描かれたシールドを装備した『ボコ』と、私が英語で歌った『ボコのテーマ』のCD)

愛里寿(何か出来る事がないかと考えたけど、私にはこんな事しか思い浮かばなくて、)

愛里寿(こんなもので彼を励ますなんて出来る筈がないのに……)

キャップ「くれるのかい?」

愛里寿「う、うん、こんな物しか用意できなかったけど……」

キャップ「いや、嬉しいよ」

キャップ「この『ボコ』は君のお手製だろ? 最高のプレゼントだ」

キャップ「僕も『ボコ』を見習おうと思う」

キャップ「ボコボコにされても、それでも立ち上がり、戦う」

キャップ「……ああ、そうさ」

キャップ「それこそが―――【ヒーロー】のあるべき姿だ」

愛里寿(そう言った彼は、吹っ切れたように力強く笑った)

愛里寿(その姿は、何度だって立ち上がるその姿は、やっぱり―――)

愛里寿(―――『ボコ』のようだった)




携帯『ピー、ピー!!』

キャップ「……呼び出しか」

キャップ「すまないな、もう行かなくちゃいけないみたいだ」

愛里寿「……そう」

キャップ「と、最後に一つ聞き忘れていたな」

キャップ「お嬢さん、お名前は?」

愛里寿「愛里寿……島田愛里寿です」

キャップ「アリスか。僕はスティーブ・ロジャース」

キャップ「励ましてくれてありがとう、アリス。力が出て来たよ」

愛里寿「そう。それなら……嬉しい」

キャップ「僕も頑張るよ、『ボコ』のように」

愛里寿「うん……!」

愛里寿(微笑み、小さく敬礼を飛ばして、去っていく彼)

愛里寿(それが……私が最後に見た、彼の姿だった)


愛里寿(それから少しして、彼が国際的な指名手配犯となったのを知った)

愛里寿(ソコヴィア協定に反発し、何人かの仲間と共に消息を絶ったのだという)

愛里寿(……私は、信じている)

愛里寿(世界中からボコボコにされている彼だけど、それでもきっと立ち向かい続けると)

愛里寿(どれだけボコボコにされても、彼なら立ち上がるのだと)

愛里寿(信じている―――だから)


愛里寿(だから―――最後の時が来たとしても、私も諦めない)


愛里寿(それは、突然の事だった)

愛里寿(戦車道の演習中、突然動かなくなる味方部隊)

愛里寿(いや、味方だけでなく、敵部隊も同様だった)

愛里寿(中にはコントロールを失い、障害物に激突する戦車もあった)

愛里寿(通信を飛ばすも、返答はないか、あってもパニック状態のそれだった)

愛里寿(曰く仲間が塵となって消えてしまった、との事だ)

愛里寿(……いくら何でも理解しきれるものではない)

愛里寿(ともかく動いている部隊に停車命令を出し、戦車から外に出た―――)

愛里寿(その時、私の身体にも変化があった)

愛里寿(右手が茶色い塵となって、消えていく)

愛里寿(それは瞬く間に身体の方へと近付いていって、全てが塵になっていく)

愛里寿(声をあげる事も出来ない中、何となく察した)

愛里寿(数年前からあった数々の超常現象。アベンジャーズが阻止し、破滅を防いできたそれら)

愛里寿(その最終段階が、これなのだ)

愛里寿(……私は、数秒に迫った終わりの間際で、思い浮かべる)

愛里寿(数年前にであったキャプテン・アメリカの姿)

愛里寿(分かっている。彼なら、こんな中でも立ち上がるという事を)

愛里寿(だからだろうか? 不思議と恐怖は感じない)

愛里寿(どんなにボコボコにされても、彼が立ち上がってくれるから)

愛里寿(だから―――)


愛里寿「……頑張ってね、ボコ」


愛里寿(そして、塵は私の目の前まで迫って――――………)


~~~数週間後~~~

クィルの?宇宙船にて


スティーブ「遂に宇宙まで行くとはな」

ブラック・ウィドウ「あら、緊張してるの?」

スティーブ「当然だろう。宇宙空間での訓練なんて積んでいないんだ」

ブラック・ウィドウ「それは私も同じ」

ホークアイ「俺もだ」

スティーブ「……そうだ。今の僕達の状況に、ピッタリな曲があるんだが」

ホークアイ「げ、」

ブラックウィドウ「またあの曲……?」

ローディ「何だい、それは」

スティーブ「そうだな。ある女の子に貰った曲なんだが、とても気に入っていてね」

スティーブ「聞いてるだけで、ガッツをもらえるんだ」

ソー「良いな。戦いの前にこそ、そういうものが必要だ」

ロケット「曲ねぇ。クィルもそうだったが、良く分かんねーな」

キャロル「流してみたら? 今の地球で流行ってる曲も聞いてみたいし」

ブラックウィドウ「……興味本位なら辞めた方が良いと思うけど」

ホークアイ「……同感」

スティーブ「それじゃあ流すか」




テーテレレッテテテーテーテテー

ヤーッテヤル、ヤーッテヤル、ヤーッテヤルゾ♪

イーヤナアイツヲ、ボーコボコニー♪




ソー「………ふむ」

ローディ「あー……」

キャロル「これが今の地球の流行り……?」

ロケット「やっぱ分かんねーなぁ」

ブラックウィドウ(……そりゃそうなるわよね)

ホークアイ(……俺もシビルウォーの時、いきなり聞かされて困惑したぜ)

ブラックウィドウ(私達なんて逃亡生活中、何度聞かされたか……)

スティーブ「ああ、良いな。やっぱり力が湧いてくる」

スティーブ(そうさ、僕達は何度だって立ち上がる)

スティーブ(世界の人口を半分にされ、多くの仲間を失っても、)

スティーブ(例え、インフィニティ・ストーン全てを集めたサノスが相手だとしても、)

スティーブ(何度ボコボコにされたって―――彼女が教えてくれた『ボコ』のように、僕達は立ち上がる)

スティーブ(そう、アベンジャーズは、決して諦めない)

スティーブ(全てを取り戻すまで―――)



スティーブ(―――僕達は、立ち向かう)


以上で終了です。
若干キャラ死にネタっぽくなんてしまいましたね、申し訳ないです…。
最後のシーンはPVから適当に妄想したものなので、本編に同様のシーンがあるかは不明です。

では、HTML化依頼だしてきます

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