ボコのテーマを聞いてたら考えついてしまった、ガルパンとアベンジャーズのクロスオーバーです。
エンドゲームのオフィシャルトレイラーレベルのネタバレはあります。
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愛里寿(私がその人を知ったのは、とあるニュースがきっかけだった)
愛里寿(6年前……人々が初めて地球外生命体と邂逅したあの日)
愛里寿(空にあいた穴から次々に攻め込んでくる宇宙人の軍隊……)
愛里寿(そして、それを撃退したヒーローチーム)
愛里寿(子供心に、彼等の姿は焼き付いている)
愛里寿(空を駆ける鋼鉄の男、雄叫びと共に宇宙人を叩き潰す緑色の怪物、雷を操るハンマーの巨漢)
愛里寿(宇宙人の兵隊を次から次に倒していく彼等は、まさに心の中で思い描く【ヒーロー】を体現した存在だった)
愛里寿(……そんな中、私は見た)
愛里寿(宇宙人の一兵士にすら時には苦戦をして、先の三人とは比べ物にならないくらいに疲弊し、ボロボロになり、)
愛里寿(それでも、彼等の戦いに食らいつく一人の【ヒーロー】の姿)
愛里寿(他のメンバーと比べてしまえば、派手でもないし、強くもない)
愛里寿(なのに、だというのに、何故か)
愛里寿(満身創痍な彼の姿が―――一番、印象に残った)
愛里寿(後からゆっくり考えて、分かった)
愛里寿(彼の姿が、当時から大好きだった『ボコ』に似ていたのだ)
愛里寿(ボコボコにされて、それでも立ち上がり、立ち向かう)
愛里寿(そう、姿形は違えど、彼は『ボコ』だった)
愛里寿(彼―――キャプテン・アメリカの経歴を調べていくと、その印象は更に深まっていった)
愛里寿(兵士となる前は、貧弱な虚弱体質だった彼)
愛里寿(それでも、元々の正義感は変わらなくて、)
愛里寿(街のチンピラに喧嘩を売っては、ボコボコにされていたという)
愛里寿(彼は第二次世界大戦中にあった『超人計画』に参加して、今の身体を得たらしい)
愛里寿(人間の限界点とも言える力を得た彼は、その力でもって戦争を戦い抜き、終戦の間際で南極にて行方不明となった)
愛里寿(そして、氷河の中で眠っていた彼は―――現代で目を覚ました)
愛里寿(七十年後の世界に、周りの人も死んでしまった世界に、彼は復活した)
愛里寿(その直後にあったのは、ニューヨークでの決戦)
愛里寿(既に彼以上の超人が何人も現れた世界で、それでも彼は立ち向かった)
愛里寿(SNSに出回った情報によると、ロキという神を名乗る男にも立ち向かったそうだ)
愛里寿(手も足も出ない相手に彼は少しも退かなかったという)
愛里寿(人々の前に立ち、ボコボコにされながらも、その度に食らいついて―――)
愛里寿(……彼の人となりを知る程に、その姿が『ボコ』と重ねっていった)
愛里寿(こんな『ボコ』みたいな人が、本当にいるなんて思わなかった)
愛里寿(気付けば、私は彼のファンとなっていた)
愛里寿(彼の活躍をニュースやインターネットで見ては、目を輝かせる)
愛里寿(ワシントンDCでのヒドラ事件……ソコヴィアでのウルトロン事件……)
愛里寿(そのどれもで、彼はボコボコにされながら敵に立ち向かっていく)
愛里寿(そんな中で……ある事件が起きた)
愛里寿(キャプテン・アメリカ率いるアベンジャーズが戦闘の最中で多くの市民を巻き込み、犠牲を生んだのだという)
愛里寿(ニュースでは、彼に対する批判的な内容がずっと流れていた)
愛里寿(凄まじい力を有した超人たちが、誰に管理される事もなく、国境を越え争乱を巻き起こす)
愛里寿(その果てに市民が犠牲となり、血が流れる)
愛里寿(彼等は管理されるべきだ、と)
愛里寿(ネット上でも同じ様な意見が飛び交うようになっていた)
愛里寿(……違う、と思った)
愛里寿(彼等が市民を巻き込んだのは事実だけど、彼等がいなければもっと多くの人々が犠牲になっていたのだ)
愛里寿(いつだってそうだ)
愛里寿(ニューヨークでも、ワシントンでも、ソコヴィアでも……彼等がいなければ、もっと多くの人々が犠牲になっていた)
愛里寿(それでも人々の意見の大半は、彼等に批判的なもので、)
愛里寿(……そのボコられ方は、普段のそれとはまるで違っていた)
愛里寿(見ている私も胸を締め付けられるような、苦くなるような……)
愛里寿(余りに、悲しいボコられ方だった)
愛里寿(更に、もう一つ)
愛里寿(追い打ちをかけるようなニュースが、ネット上で流れた)
愛里寿(……唯一現代まで生存していた、戦時中の彼の仲間が亡くなったのだという)
愛里寿(その人は女性で、かつて彼と恋仲にあったらしい)
愛里寿(だけど、あの南極での戦いで二人は引き裂かれてしまい……七十年後の現代で再会した)
愛里寿(もちろん七十年という時は大きく、彼女には家庭があって、子どもも孫もいて、女性はもう年老いていて……)
愛里寿(だけど―――彼女は、彼にとって唯一無二の存在であった筈だ)
愛里寿(この激動の情勢の中で、そんな女性すらも失って……)
愛里寿(……私は、居ても立っても居られなかった)
愛里寿(いくら『ボコ』だって、今の状況は余りに……余りに救われない)
愛里寿(気付けば、私は母さんに頼み込んでいた)
愛里寿(アメリカに……彼の元に行きたい、と)
愛里寿(何をできる訳でもないけど、彼と会って話をしたい、と)
愛里寿(頭を下げて、頼み込む)
愛里寿(突拍子もない事を言っているのは分かっている)
愛里寿(いきなりアメリカへ行くのも、今話題の中心にいる彼に会いにいくのも、無茶でしかない)
愛里寿(でも、それでも、今の彼を放っておくのは嫌だった)
愛里寿(出会った事のない彼だけど、彼は私の―――【ヒーロー】なのだから)
愛里寿(……母上は戦車道を語る時のそれと同じ、冷たい瞳で私を見詰めた)
愛里寿(何度も反対し、何度も私の無茶を説き伏せ―――それでも、私は折れなかった)
愛里寿(どうしても彼に会いたいと、何度も頭を下げる)
愛里寿(結局折れたのは、母上の方だった)
愛里寿(アメリカの戦車道は、実際の軍隊と密接に関係している)
愛里寿(戦車道の伝手を通して、彼と確実に出会える日程を調べてくれるとの事だった)
愛里寿(結局彼の予定で確定しているのは、彼女の葬儀の時だけだった)
愛里寿(それもそうだろう。【ヒーロー】に確定的な予定などないのだから)
愛里寿(そして、私は母上とアメリカに立ち、)
愛里寿(その葬儀の最中に、彼の元に辿り着いた)
愛里寿(葬儀の終えた教会にて、一人佇む彼)
愛里寿(その大きな背中は、普段よりも小さく見えて、)
愛里寿「あの……」
愛里寿(その背中に、私は声を掛けた)
愛里寿(腕の中のボコを強く抱き締め、平静を保つように言い聞かせる)
キャップ「君は……?」
愛里寿(彼は頬に伝う涙の痕を拭き取りながら、赤い瞳で振り返った)
愛里寿(それは、いつもの凛々しい彼と比べて余りに痛ましくて……何でか、私も泣き出したくなってしまった)
愛里寿「あの、私、貴方のファンで……」
愛里寿(言葉が上手く出てこない)
愛里寿(彼の力になりたいと、彼を励ましたいと思って、海を渡って来たのに、)
愛里寿(余りに痛ましい彼の姿を目の当たりにしたら、胸が詰まって、言葉が出てこない)
愛里寿「あの、その……」
愛里寿(彼も、私の様子に何かを察した様子だった)
愛里寿(膝を折り、目線を合わせて、優しく微笑む)
キャップ「可愛い人形だね。その子は何て名前なんだい?」
愛里寿「こ、この子は『ボコ』……」
キャップ「ボコ、か。可愛い名前だ」
愛里寿「うん。『ボコ』は可愛いくて……とっても弱いの」
キャップ「そうなのか? そうか、それはまるで―――」
愛里寿(そこで、一瞬言葉を区切って、彼は続けた)
愛里寿(―――まるで、僕みたいだな、と)
愛里寿(自嘲的な微笑みと共に、彼は零した)
愛里寿(それは現状に打ちひしがれた彼が思わず零してしまった、本音のようなものなのだろう)
愛里寿(人々を巻き込み非難され、ヒーローとしての活動を管理されそうになり、かつての愛する人を失い……)
愛里寿(……彼は、傷付いていた)
愛里寿「違う……違うの!」
愛里寿(その余りに寂しげな表情に、思わず声を張り上げていた)
愛里寿(伝えたかったのだ)
愛里寿(『ボコ』の、そして彼の―――本当の強さを)
愛里寿「『ボコ』は弱くて、弱くて……いつも喧嘩を売ってはボコボコにされてるけど……」
愛里寿「ボコボコにされて……いつも傷だらけだけど……」
愛里寿「それでも、立ち上がるの」
愛里寿「立ち上がって、何度だって立ち向かうの」
愛里寿「どんなに強い相手にだって、勝ち目のない相手にだって、『ボコ』は立ち向かう」
愛里寿「それでも敵わなくて、もっともっとボコボコにされても―――」
愛里寿「―――『ボコ』は、何度だって立ち上がるから」
愛里寿(私の言葉に、彼は何かを気付かされたように固まり、)
キャップ「そうか……ああ、そうだな」
愛里寿(そして、強く強く頷いた)
キャップ「……『ボコ』は、ガッツがあるな」
愛里寿「うん、それが『ボコ』だから」
キャップ「そうか。気に入ったよ」
愛里寿「あの、これ良ければ……」
愛里寿(彼に差し出したそれは、私が用意したものだった)
愛里寿(星印の描かれたシールドを装備した『ボコ』と、私が英語で歌った『ボコのテーマ』のCD)
愛里寿(何か出来る事がないかと考えたけど、私にはこんな事しか思い浮かばなくて、)
愛里寿(こんなもので彼を励ますなんて出来る筈がないのに……)
キャップ「くれるのかい?」
愛里寿「う、うん、こんな物しか用意できなかったけど……」
キャップ「いや、嬉しいよ」
キャップ「この『ボコ』は君のお手製だろ? 最高のプレゼントだ」
キャップ「僕も『ボコ』を見習おうと思う」
キャップ「ボコボコにされても、それでも立ち上がり、戦う」
キャップ「……ああ、そうさ」
キャップ「それこそが―――【ヒーロー】のあるべき姿だ」
愛里寿(そう言った彼は、吹っ切れたように力強く笑った)
愛里寿(その姿は、何度だって立ち上がるその姿は、やっぱり―――)
愛里寿(―――『ボコ』のようだった)
携帯『ピー、ピー!!』
キャップ「……呼び出しか」
キャップ「すまないな、もう行かなくちゃいけないみたいだ」
愛里寿「……そう」
キャップ「と、最後に一つ聞き忘れていたな」
キャップ「お嬢さん、お名前は?」
愛里寿「愛里寿……島田愛里寿です」
キャップ「アリスか。僕はスティーブ・ロジャース」
キャップ「励ましてくれてありがとう、アリス。力が出て来たよ」
愛里寿「そう。それなら……嬉しい」
キャップ「僕も頑張るよ、『ボコ』のように」
愛里寿「うん……!」
愛里寿(微笑み、小さく敬礼を飛ばして、去っていく彼)
愛里寿(それが……私が最後に見た、彼の姿だった)
愛里寿(それから少しして、彼が国際的な指名手配犯となったのを知った)
愛里寿(ソコヴィア協定に反発し、何人かの仲間と共に消息を絶ったのだという)
愛里寿(……私は、信じている)
愛里寿(世界中からボコボコにされている彼だけど、それでもきっと立ち向かい続けると)
愛里寿(どれだけボコボコにされても、彼なら立ち上がるのだと)
愛里寿(信じている―――だから)
愛里寿(だから―――最後の時が来たとしても、私も諦めない)
愛里寿(それは、突然の事だった)
愛里寿(戦車道の演習中、突然動かなくなる味方部隊)
愛里寿(いや、味方だけでなく、敵部隊も同様だった)
愛里寿(中にはコントロールを失い、障害物に激突する戦車もあった)
愛里寿(通信を飛ばすも、返答はないか、あってもパニック状態のそれだった)
愛里寿(曰く仲間が塵となって消えてしまった、との事だ)
愛里寿(……いくら何でも理解しきれるものではない)
愛里寿(ともかく動いている部隊に停車命令を出し、戦車から外に出た―――)
愛里寿(その時、私の身体にも変化があった)
愛里寿(右手が茶色い塵となって、消えていく)
愛里寿(それは瞬く間に身体の方へと近付いていって、全てが塵になっていく)
愛里寿(声をあげる事も出来ない中、何となく察した)
愛里寿(数年前からあった数々の超常現象。アベンジャーズが阻止し、破滅を防いできたそれら)
愛里寿(その最終段階が、これなのだ)
愛里寿(……私は、数秒に迫った終わりの間際で、思い浮かべる)
愛里寿(数年前にであったキャプテン・アメリカの姿)
愛里寿(分かっている。彼なら、こんな中でも立ち上がるという事を)
愛里寿(だからだろうか? 不思議と恐怖は感じない)
愛里寿(どんなにボコボコにされても、彼が立ち上がってくれるから)
愛里寿(だから―――)
愛里寿「……頑張ってね、ボコ」
愛里寿(そして、塵は私の目の前まで迫って――――………)
~~~数週間後~~~
クィルの?宇宙船にて
スティーブ「遂に宇宙まで行くとはな」
ブラック・ウィドウ「あら、緊張してるの?」
スティーブ「当然だろう。宇宙空間での訓練なんて積んでいないんだ」
ブラック・ウィドウ「それは私も同じ」
ホークアイ「俺もだ」
スティーブ「……そうだ。今の僕達の状況に、ピッタリな曲があるんだが」
ホークアイ「げ、」
ブラックウィドウ「またあの曲……?」
ローディ「何だい、それは」
スティーブ「そうだな。ある女の子に貰った曲なんだが、とても気に入っていてね」
スティーブ「聞いてるだけで、ガッツをもらえるんだ」
ソー「良いな。戦いの前にこそ、そういうものが必要だ」
ロケット「曲ねぇ。クィルもそうだったが、良く分かんねーな」
キャロル「流してみたら? 今の地球で流行ってる曲も聞いてみたいし」
ブラックウィドウ「……興味本位なら辞めた方が良いと思うけど」
ホークアイ「……同感」
スティーブ「それじゃあ流すか」
テーテレレッテテテーテーテテー
ヤーッテヤル、ヤーッテヤル、ヤーッテヤルゾ♪
イーヤナアイツヲ、ボーコボコニー♪
ソー「………ふむ」
ローディ「あー……」
キャロル「これが今の地球の流行り……?」
ロケット「やっぱ分かんねーなぁ」
ブラックウィドウ(……そりゃそうなるわよね)
ホークアイ(……俺もシビルウォーの時、いきなり聞かされて困惑したぜ)
ブラックウィドウ(私達なんて逃亡生活中、何度聞かされたか……)
スティーブ「ああ、良いな。やっぱり力が湧いてくる」
スティーブ(そうさ、僕達は何度だって立ち上がる)
スティーブ(世界の人口を半分にされ、多くの仲間を失っても、)
スティーブ(例え、インフィニティ・ストーン全てを集めたサノスが相手だとしても、)
スティーブ(何度ボコボコにされたって―――彼女が教えてくれた『ボコ』のように、僕達は立ち上がる)
スティーブ(そう、アベンジャーズは、決して諦めない)
スティーブ(全てを取り戻すまで―――)
スティーブ(―――僕達は、立ち向かう)
以上で終了です。
若干キャラ死にネタっぽくなんてしまいましたね、申し訳ないです…。
最後のシーンはPVから適当に妄想したものなので、本編に同様のシーンがあるかは不明です。
では、HTML化依頼だしてきます
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