モバP「世論調査員?」 (14)

初SSです。
ていうか初スレ建てです
なんか間違ってたら指摘してください

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エラーって出たのに立ってるやん

以下↓本文

 ノックの音がした。
 男は机の上に積まれた大金を安楽椅子に座りながら遠目に眺め、憂鬱に浸っていたが、来客が来たことを知ると速やかにドアチェーンをかけた。慎重にドアを開けると隙間から同年代ほどのスーツを着た女が立っていた。

モバP「どちら様でしょうか、セールスや宗教の勧誘はお断りしていますが」

ちひろ「わたくし、世論調査でやってまいりました。あなたの記憶を売っていただきたいのですが」

モバP「いかにも詐欺くさいな、何者ですかね」

ちひろ「わたくし、神に遣われているのです、とはいえ私自身はただの人間なのですがね。不幸そうな空気を漂わせている人間のもとへ行き、記憶を持ち帰って分析し、原因究明と再発防止に努めようというのが狙いなのでございます」

 男は、この突然の来訪者が今現在も机の上に置かれたカネが目的なのではと警戒しながらも疑問を口にした。

モバP「記憶を持ち帰る?どういうことだね」

ちひろ「わたくしたちは神から記憶に関して読み取る能力と消すことのできる能力、いわば超能力のようなものを授かっているのです。どうやらあなたには悩みがありそうだ、それを感じたのでお伺いしたのです」

 ドアを閉められそうになったので、スーツ姿の女は必死に止めた。

ちひろ「信じておられないようですね、ではこうしましょう。ここにトランプがあります。おやタネも仕掛けもありませんよ、これから1枚、いや何枚でも構いません、抜いて覚えてください」

 男は言われるがままにドアの隙間からトランプを受け取り、ランダムに取り出した2枚を記憶した。スーツ姿の女はそれをピタリと言い当てた。今度はトランプを抜かずに頭の中に適当に浮かべたカードを当てさせようとしたがそれもこの女には見え透いているようであった。

ちひろ「今度はその記憶を消してみましょう、思い浮かべたカードを覚えてください。覚えましたね、では5秒前まで覚えていたカードを覚えていますでしょうか?」

モバP「いや、全く思い出せない。間違いなくカードの柄を覚えたということだけは覚えているが、ついさっきまで覚えていないのはどういうことだ」

 その後も何度か試したが、結果は同じことであった。

モバP「これは驚いた、その力は本当のようだ。しかし世論調査とはどういったことだ」

ちひろ「先程申し上げましたとおり悲しみを背負っている人間のもとへ行き、記憶を買い取るのが私達の使命でございます。買い取るとはいっても読み取った記憶を消すことは無いのでご安心を。しかし、こういった境遇の人間は自分から逃げてしまう傾向があり、言葉でその内容をお聞きしてもその根本から原因がわからないのです。そこで、記憶ごと分析することでその原因を突き止め、それをこの世界に反映させることでより良い世界を作るといったことを神がやっているのです」

モバP「神というのが何なのかはわからないが、超常的な力があることは間違いがないようだ。とりあえずは信じよう。しかし、記憶を消すというのは何に使うんだ?」

ちひろ「我々の存在が世に出てしまっては混乱が生じる可能性もございますから、この会話に関する記憶だけを消させていただくのです」

 男が納得をしたような素振りを見せると来訪者は話を本題へと移した。

ちひろ「わたくしたちは悲しげな雰囲気、不幸といった負の感情を感じることのできる力も与えられているのです。あなたからはそれを感じる。もしよろしければ言葉で説明してはいただけませんか?」

モバP「いや、それが全く思い出せないのだ」

ちひろ「思い出せないといいますと?」

モバP「ここ20年ほどの記憶が全く無いのだ。頑張って思い出そうと紙に書き出したりなどしてみたが、学校を卒業してから2日前までどこで何をやっていたのかが全く思い出せない。一昨日にこの部屋で急に目を覚ますと机の上にカネが置いてあったこれもなにか関係するのかもしれないが、しかし、なにか悲しいことがあったような気持ちだけが残っていて……」

ちひろ「なんと、もしかしたらそれの犯人は私たちの同業者かもしれません。手柄を独り占めするために悲しいことがあった出来事の記憶までもを消していってしまう輩もいると聞いたことがあります。近年、人間の平等化、働き方改革などが進み、不満を持つ人間自体が減ってきており、私たちもリストラの危機に怯えながら仕事をしているのです。おいくらほどお金が積まれていたか教えていただいても構いませんか?」

モバP「100枚の1万円札の束が30はあった、にしても腹立たしいことをしやがるやつだ。神様の遣いというのであれば天使のようなやつでなければいけんだろうに」

ちひろ「全く同意です、それについて上に報告しておきましょう。もしかしたら失った記憶に対する保証金が出るかもしれない。それにしても20年分で3千万とは大変な記憶ですな、それほどの金額で買い取ったケースは聞いたことがない。記憶の持つデータの有用性で買い取り金額は決まるのです。相当な苦労をされたに違いない」

モバP「それほどまでにひどい人生だったというのならは記憶をなくしてもしかしたら良かったのかもな、そんな3日しか生きていない男の記憶で良ければどうぞ買い取ってくれ」

ちひろ「ありがとうございます!む、いやしかし本当に3日分だけですな。査定はすぐに終わるので少々お待ちを」

 女がアタッシュケースを地面に置くとそれがひとりでに開いた。これも魔法の道具か何かなのだろうか。その中には封筒が入っていて、薄い封筒を男に渡した。

ちひろ「なにせ記憶の量が少ないですし、高値がつくはずのその悲しい出来事の記憶がございませんからこの程度にはなってしまいます」

モバP「そうですかい、まあ仕方がない」

ちひろ「この度はありがとうございました」

 女は頭を下げて帰って行き、部屋の主は自分がドアの前に立ったのかを思い出せないまま再び安楽椅子に戻った。

 その夜、神の世界で人事会議が行われた。

常務「近年、悲しい人生を歩む人間が減ってきて世論調査員に割く予算も無駄じゃな」

部長「ごもっとも、成果の少ない人間からさらに解雇していく方向で異論はないな」

 人事たちはそれぞれ納得したように顔を見合わせ頷いた。

常務「しかし、解雇しようにも退職金を支払わなければいけない、そしてこの仕事をしていたことを覚えていては困るから雇用期間中の記憶をすべて消してしまわねば。そして消した記憶分の保証金も払うとなると結構な費用がかかるが……」

部長「20年ほど働いていた場合、ひとりあたり退職金と保証金あわせて3千万円ほどが必要になりますな。なあに大金ですがなるべく早く用意いたします」

なろう民煽ってたら、お題を出されて「お前も書いてみろ」って言われてのでオリジナルを書いたのですが
思ったより星バーーーローーっぽいなにかができてしまってもったいなかったのでモバマスSSにして供養しました

もう終わっちゃったけど、どなたかまとめてくださるとうれしいです。よろしくお願いします

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