水本ゆかり「京言葉にはウラがある……!?」 (30)


〜事務所〜


水本ゆかり「ふぅ……」

ゆかり(レッスンは午前まで……。時間ができてしまいましたね)

ゆかり(このままどなたかが来るのを待ってもいいですが……)

ゆかり(いえ、一度、寮まで戻りましょうか)

ゆかり「……あれ? これは……」

ゆかり「雑誌……? どなたのでしょうか?」ヒョイッ

ゆかり(そういえば、よくプロデューサーさんや他のみなさんに、”流行りは抑えておいたほうがいい”と言われてしまいます……)

ゆかり(他の方の物を勝手に読むのは気が引けますが……)

ゆかり「……」

ゆかり「……少しだけ」ペラッ



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ゆかり「……」ペラッ

ゆかり「……ふむふむ」ペラッ

ゆかり「なるほど……このようなファッションが……」ペラッ

ゆかり「インスタ映え……タピオカ……未知の世界ですね……」ペラッ

ゆかり「……ああ、すっかりと読みふけってしまいました」

ゆかり「そろそろ……あら」ペラッ


『旅行特集! この夏は京都でキマリ!』


ゆかり「京都……」


ゆかり(実際に行くなら、紗枝ちゃんに聞いたほうが早そう……なんて)クスッ

ゆかり(おすすめのお寺……綺麗な風景が撮れるスポット……スイーツが美味しいお店……)ペラッ

ゆかり(はっ……また読んでしまいました……あれ?)


『京言葉の”オモテナシ”は”ウラ”がある!?』


ゆかり「ウラ……? どういうことでしょう……」ペラッ

ゆかり「ふむふむ……?」ペラッ

ゆかり「京都人の言葉をそのまま受け取ってはダメ……!?」ペラッ

ゆかり「京の文化は察する文化……!?」ペラッ

ゆかり「う、裏の意味に気付けないと関係悪化の可能性も……!?」ペラッ

ゆかり「……」ガタガタガタガタ


ゆかり「で、でも、紗枝ちゃんに限って……」

ゆかり「……」

ゆかり「だ、大丈夫ですよね……」

ゆかり「そろそろ戻りましょうか……」


〜女子寮:共有ルーム〜


ゆかり「戻りました。外は暑いですね……」

ゆかり「ふぅ、中は涼し……くない……」

小早川紗枝「ああ、ゆかりはん。お疲れ様どす〜」パタパタ

ゆかり「あ、紗枝ちゃん、いらしたんですね」

紗枝「あつい思うけど、うちもちょうど今帰ってきて冷房つけたところさかい、堪忍なぁ」パタパタ

ゆかり「いえ、大丈夫で……はっ!?」


『京都人の言葉をそのまま受け取ってはダメ』


ゆかり「!!!!!」

紗枝「?」


ゆかり(もしかして……先ほどの雑誌が正しいのなら……今の紗枝ちゃんも……!?)

紗枝「ゆかりはん?」

ゆかり(紗枝ちゃんが今言ったのは……『暑いと思うけど、自分も帰ったばかりで今冷房つけたからね』という内容……。これもそのまま受け取ってはいけない……!?)

紗枝「おーい? あ、扇子、使いはりますえー?」パタパタ

ゆかり(『暑いと思うけど』→『これくらいの暑さでへばってるの? 京都はもっと暑いよ?』)

ゆかり(『帰ったばかりで』→『どう見ても汗かいてるでしょ? 見てわからない?』)

ゆかり(『今冷房つけたからね』→『後から来たのに文句言うなんておかしくない? 私は先に暑い部屋にいたんだよ?』)

ゆかり(つまり……)


『後から来たくせに文句を言うな。黙って涼しくなるのを待ってろ。私だって暑いんだから喋らせるな』


ゆかり「!!!!!」


ゆかり「」ガタガタガタガタ

紗枝「?」

紗枝「ゆ、ゆかりは」

ゆかり「紗枝ちゃん」

紗枝「ど、どないしたん? なんや様子がおかしいような……調子悪いんやったら無理はあきまへ」

ゆかり「大変申し訳ありませんでした(土下座)」スッ

紗枝「ゆかりはん!?」


紗枝「ど、どないしはってん!? 頭を上げはって!」

ゆかり「これは私なりの反省です」

紗枝「いや、確かに人間そない優雅に土下座できるもんなんやと関心してまうくらい綺麗な土下座やけども!」

ゆかり「数々の非礼……自分が恥ずかしいです……」

紗枝「ええと……話がうちには難しゅうて……」

ゆかり「少し、自室で反省させていただきます……」トコトコ

紗枝「ゆ、ゆかりはん!? ちょっ、説明……」

紗枝「行ってもうた……」


〜後日:レッスン室〜


「はい1・2・3・4!」キュッキュッ


紗枝(ゆかりはん、今日は普通……やなぁ?)

紗枝(あれは何かの間違いやったんやろか……)


「それじゃ、今日のレッスンはここまで! 各自ストレッチして上がるように!」

「「「はい!」」」


紗枝「……ゆ、ゆかりはん?」

ゆかり「あ、お、お疲れ様です……」

紗枝(なんやよそよそしなぁ……?)

ゆかり「何か至らぬ点がありましたか……?」

紗枝「いやいや、そないやあらへんよ? むしろそない優雅な動き、羨ましいわぁ。うちももっと精進せんと」

ゆかり「ありがとうございま……はっ!?」


『京の文化は察する文化』


ゆかり「!!!!!」

紗枝「?」


ゆかり(『そない優雅な動き、羨ましいわぁ』→『動きが遅い。とろくさいよ』)

ゆかり(『うちももっと精進せんと』→『そんな緩慢な動きに合わせなきゃいけないなんて、私も大変だなあ』)

ゆかり「!!!!!」

ゆかり「」ガタガタガタガタ

紗枝「?」

紗枝「ゆ、ゆかりは」

ゆかり「紗枝ちゃん」

紗枝「ええと……ほんまに調子悪いんやったら、午後のれっすんはおやすみに……」

ゆかり「大変申し訳ありませんでした(土下座)」スッ

紗枝「ゆかりはん!?」


紗枝「まさかこんな短い期間に2回も土下座見せられるなんて思いまへんて!!!」

ゆかり「このような短期間に二度も紗枝ちゃん……いえ、紗枝さんの意を汲めず……」

紗枝「どんどん距離が離れてまう……!?」

ゆかり「深く反省していますので……」

紗枝「と、ともかく頭を上げはって! みんな見とるから!」

ゆかり「いえ、私の誠意を見せるにはこの程度では足りず……」

紗枝「足りとる! 足りとるから! いやようわからんけど!」

ゆかり「やはり反省が必要なようです……紗枝さんに迷惑をかけないために……」

紗枝「強いて言うなら今まさに困っとりますえ……」

ゆかり「失礼いたします……」トコトコ

紗枝「せ、せやから説明をしはってくれると……」

紗枝「行ってもうた……」


~後日:事務所~


中野有香「ゆかりちゃんの様子が」

椎名法子「なんかおかしい?」

紗枝「そうなんよ……」

法子「ゆかりちゃんがなんかおかしいのはいつもだよ?」

紗枝「ゆにっとめんばーがそれ言いはります……?」

有香「でも、そんな土下座なんて急にするのは流石に……」

紗枝「上手く言えへんけど、なんやよそよそしゅうて……」

有香「紗枝ちゃんに対してだけでしょうか?」

紗枝「その辺も聞きたいな思て……」

法子「あたしたちには普通だよね?」

有香「特に変わった様子はないですね」

紗枝「……」

法子「紗枝ちゃん?」

紗枝「うち……ゆかりはんに何かしてもうたんやろか……」シュン

有香「そ、そんなことないですよ! きっと!」

法子「うんうん♪ きっと悪いドーナツでも食べちゃったんだよ!」

有香「良いドーナツと悪いドーナツがあるんですか?」

法子「ドーナツはみんな良いドーナツだよ!」プンプン

有香「ええっ……!?」


紗枝「有香はんと法子はんでも心当たりはないどすか……」

有香「ごめんなさい……力になれなくて……」

法子「やっぱり、本人に聞くのが一番だと思う!」

紗枝「せやってわかっとるんやけどなぁ……」

法子「ほら! もしかしたら綺麗な土下座の練習中かも!」

有香「そっちの方がよっぽど不安ですけど……」


法子「ちょうどこのあと、事務所にゆかりちゃん来るみたいだし!」

紗枝「ふぅ……覚悟、決めんとあかんかぁ……」

有香「あたしたちもフォローしますから!」

法子「うん! 一緒にドーナツを食べればきっと仲直りできるよ!」

紗枝「……そのどぉなつの袋、ずいぶん軽そうに見えますさかい」

法子「あ……てへ!」

紗枝「法子はんったら……」


ゆかり「あ、有香ちゃんと法子ちゃんと……紗枝ちゃん」

紗枝(間ぁ、あったなあ……)

法子「ゆかりちゃん! お疲れ様!」

有香「お疲れ様です!」

ゆかり「……そちら、座っても?」

法子「もちろん! どーぞ!」ポンポン

ゆかり「失礼します」

有香(確かに何か、違和感が……怒りや悲しみではなく……何でしょう、緊張……? みたいな……)

ゆかり「何か3人でお話を?」

有香「あ、はい! え、えーっと……」チラッ

紗枝「……」

法子「みんなでドーナツ食べようと思ったんだけどね! 全部あたしが食べちゃってたの! えへへ……」

ゆかり「ふふ……法子ちゃんらしいですね。……そ、それで、おふたりはどのような反応を……? 特に紗枝ちゃん」ボソッ

紗枝「?」

法子「え? あ、『そのドーナツの袋、軽そうだね』って言われちゃった! 紗枝ちゃん、よく見てるよねー」

ゆかり「なるほ……はっ!?」ガタガタガタガタ

紗枝「このぱたぁん多ない!?」


ゆかり(『ドーナツの袋、軽そうだね』→『私に食べさせる気がないくせに一丁前に袋だけは見せるんだね。全部食べちゃうなんてなんと卑しいことでしょう』)

ゆかり「法子ちゃん」

法子「なあに?」

ゆかり「紗枝ちゃんに謝りましょう」

紗枝「なんでなん!?」


ゆかり「紗枝ちゃんは……怒っています」

紗枝「いやいやいや! 一言も言うてへん!!!」

ゆかり「今からでも遅くはないです」

紗枝「ゆかりはんは色々手遅れやって!」

法子「ごめんね紗枝ちゃん……」

紗枝「法子はんも乗らんといて!!!」


有香(た、確かにゆかりちゃん、ちょっと変かも……)

紗枝「ゆ、有香はんも何か言ったって……!」

ゆかり「!!!!!」

ゆかり(『何か言ってやって』→『なんで黙ってるんだ。お前からもこいつらに謝罪するように言ってやれ。そんなこともわからないのか』)

ゆかり「有香ちゃん……謝りましょう」ガタガタガタガタ

紗枝「せやから!!! なんで!!! なん!!!」


紗枝「こない大きな声で言うことあらへんけど!!! 怒っとらんて!!!」

ゆかり「”こんなに大きい声を出させるな”……!?」

紗枝「言うてへん!!!」

有香「なんでそう思ったんでしょう……?」

紗枝「うち、ほんまになんも言うてへんのに……」

ゆかり「”こんなことも言わなきゃわからないのか?”……!?」

紗枝「ゆかりはん!!!」


有香「法子ちゃん……流石にやっぱりおかしいと思いませんか?」

法子「うん……たくさんドーナツ買ってきたのに、もう食べ終わっちゃうなんて……自分が怖いよ……」

有香「そっちではなく」

法子「あれ?」

有香「ゆかりちゃん、なんだか紗枝ちゃんが言ってないことに謝ってるみたいな……」

法子「?」

有香「と、とりあえずふたりとも、落ち着いてください!」

ゆかり「私が悪いんです……」ガタガタガタガタ

有香「ゆかりちゃんは誰と戦ってるんですか……!?」


有香「えっと……とりあえず確かめたいことがあるので、紗枝ちゃんに何か喋ってもらって、ゆかりちゃんはそれを繰り返してもらっていいですか?」

紗枝「ええけど……」

ゆかり「最善を尽くします」

法子「不安だなあ」

有香「じゃあ紗枝ちゃん、何か適当に……」

紗枝「ええと……ほんなら……”今日も暑いどすなあ”」

ゆかり「ええと……”明らかに和装の自分が一番暑いんだけど、冷房を強めるみたいな気遣いはないの?”」

有香「なぜ???」

法子「なんで???」

紗枝「なんでなん???」

ゆかり「?」


法子「さ、紗枝ちゃんそんなこと言ってなかったよ!?」

ゆかり「ふふっ、修行が足りませんよ、法子ちゃん」

紗枝「なんで得意げなんやろか……」

有香「”今日は暑いなあ”……はい!」

ゆかり「”今日は暑いなあ”」

有香「???」

法子「”ドーナツ食べたい!”……はい!」

ゆかり「”ドーナツ食べたい!”」

法子「???」

紗枝「”近ごろはレッスンが厳しなあ”……はい」

ゆかり「”自分は完璧にできているのに周りの出来が悪くて何度もやらされるのは困るなあ”」

紗枝「もう!!!!!」


紗枝「おかしいやん!」

法子「お、落ち着いて!」

有香「あの……ゆかりちゃんがさっき言ってた”修行”って……?」

ゆかり「もちろん、紗枝ちゃんの真意を読み取る修行です」キリッ

紗枝「もちろんて」

有香「多分もう噛み合ってないですね」


法子「誰かが言ってたの? 紗枝ちゃんの言葉はほんとーじゃないって」

ゆかり「こうなってしまっては仕方ありませんね……」トコトコ

紗枝「ゆ、ゆかりはん……?」

有香「どこへ……」

ゆかり「この辺に……」ガサゴソ

法子「?」

ゆかり「ありました。こちらです」トコトコ

有香「これは……」

紗枝「ふぁっしょん雑誌。どすなあ……?」

法子「これが関係あるの?」

ゆかり「こちらを」ペラッ


『京言葉の”オモテナシ”は”ウラ”がある!?』


有香「あっ……」

法子「あっ……」

紗枝「あっ……」

ゆかり「?」


~~~~~~~~~~~~~~~


ゆかり「で、ではこの記事はデタラメ……!?」

有香「よく聞く冗談ではありますけど……」

紗枝「ぶぶ漬けなんて実際出しとるわけあらしまへん……! 創作の話やさかい……」

ゆかり「私は……なんてことを……!!!」

法子「だから裏を読んで謝ったりしてたんだね!」

紗枝「はぁ……悩んどったんが阿呆みたいやわ……」


ゆかり「では、紗枝ちゃんの言葉はそのまま受け取っていいんですか……?」

紗枝「あ、当たり前やわぁ! 嘘ついたり、わざと濁すなんて言語道断どす!」

法子「でも紗枝ちゃん、この前プロデューサーに撫でて欲しいって素直に言えてなかったって、周子さんが」

紗枝「そ、それは普通の乙女心どすえ! 周子はんはほんまに……もう……!」


ゆかり「そうだったんですね……ごめんなさい……」

紗枝「まあ、わかってくれはったんならええけど……うち……ゆかりはんに嫌われたんかと思て……」

ゆかり「返す言葉もありません……。私も、紗枝ちゃんが今まで言ってくれた言葉までウソだったんじゃないかと不安になってしまって……!」

紗枝「繰り返しやけど、うちはゆかりはんに嘘なんてつきまへん」

ゆかり「よかった……それじゃあ、私のことを『ゆかりはんは優しい子やな』って褒めてくれたのも、ウソじゃないんですね……」

紗枝「へ? ま、まあ、正直に言うたことやし……」

法子「へ~?」

ゆかり「それじゃあ、私に『うちはいつでもゆかりはんの隣ですやろ?』と寄り添ってくれたのも、ウソじゃないんですね……」

有香「そ、そんな大胆な……」

紗枝「ま、まってえな……! 急にそないな掘り返されても……」

ゆかり「ウソだったんですか……?」シュン

紗枝「う、ウソやない!」

法子「ねえねえゆかりちゃん! 紗枝ちゃん、他にどんなこと言ってた!?」

紗枝「の、法子はん!?」

有香「わ、あたしも興味あります……!」オズオズ

紗枝「有香はんまで……!?」

ゆかり「そうですね……この前は私に向かって、大胆にも……」

法子「うんうん!」

有香「うんうん!」

紗枝「か、堪忍しておくれやす!!!!!」



おわり





ありがとうございました


直近の過去作


日野茜「文香ちゃん!ペットが飼いたいです!!」鷺沢文香「まずは知識から……」

【モバマスSS】泳げ!なおかれん!

【アイマスSS】木下ひなた「りんごアイドルさん」辻野あかり「がんばる!んご!」


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