渋谷凛「私をアイドルに……?」 モバP「愉快な仲間達もいます」
渋谷凛「私をアイドルに……?」 モバP「愉快な仲間達もいます」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453748601/)
の続きです。
新入りアイドル渋谷凛が、他の駆け出しアイドル5人とともになんやかんややっていくお話だということさえわかっていれば、前作を読まずともなんとかなると思います
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454008481
凛「おはようございます」
ゆかり「おはようございます、凛さん」
凛「……うーん」
ゆかり「どうかしました?」
凛「学校帰りに事務所に来て『おはよう』って言うの、いまだに慣れなくて」
ゆかり「確かに、もう夕方ですからね」
凛「職場での最初のあいさつは、どの時間帯でも『おはようございます』。それがお決まりなのはわかってるんだけど」
ゆかり「私もはじめはそうでしたけど、だんだんと慣れていくと思いますよ」
ゆかり「お茶です。どうぞ」コトッ
凛「ありがと」
ゆかり「凛さん、羊羹はお好きですか?」
凛「羊羹? 嫌いじゃないけど」
ゆかり「親戚の方からいただいたので、事務所にも持ってきたんです。今、切ってきますね」
凛「あ、うん。なら、いただいちゃおうかな」
ゆかり「おいしいですね」モグモグ
凛「本当……これ、高級品だったりしない?」
ゆかり「気に入ってもらえてよかったです」
ゆかり「いただき物なので、詳しいところはわかりませんけど……よく聞く名前のメーカーさんですね」
凛「そうなんだ」
凛(ゆかりがよく聞くってことは、高級品作ってるメーカーなんだろうな)
凛(お茶は相変わらず渋めだけど、羊羹の甘さと合わせてちょうどいいかも)
ゆかり「凛さんの髪、綺麗ですよね」
凛「いきなりどうしたの」
ゆかり「いえ、思ったことを言っただけです」
ゆかり「サラサラしていそうで素敵ですよ」
凛「そうかな。そういうゆかりの髪も、質良さそうだけど」
ゆかり「ふふ、ありがとうございます」
凛「髪型、いじったりしないの?」
ゆかり「そうですね……ステージに上がる時は別として、基本的にはそのまま伸ばしています」
凛「私も同じ。そっちと違って、まだステージに登ったことはないけど」
ゆかり「たまに髪型を変えるのも、まるで違う自分になったようで新鮮ですよ」
ゆかり「凛さんなら、ポニーテールとか」
凛「ポニーテールか……体育の時とかは後ろで適当に縛るけど、ああいうのとはちょっと違うんだろうな」
ゆかり「はっきりとした定義とかは、私も知りませんけどね」ウフフ
凛「そっか」
凛(……癒される)
凛(学校の授業での疲れが飛んでいくような感覚。間違いなくこの子は癒しだ。さすが光属性)
凛(ああ、もう少しこの癒し空間を味わっていたい――)
ガラガラッ!
晶葉「こら麗奈! また私の発明品を勝手に使ったなー!」ドタドタ
麗奈「へへーん! あんなとこに置きっぱなしにしとくほうが悪いのよっ!」ドタドタ
凛「あ、癒しタイム終わった」
ゆかり「羊羹食べますか?」
晶葉・麗奈「わーい」
ゆかり「うふふ、じゃあ持ってきますね」
凛「八つ当たりに麗奈の髪いじろう」
麗奈「うぎゃーっ! いきなりなにすんのよ!?」
晶葉「もぐもぐ」
凛「そういえばさ。ここの部屋って広いよね」
ゆかり「広い、ですか?」
凛「事務所全体を見学した時に思ったんだけど、他の人気アイドルユニットが使ってる部屋とかよりも大きくない?」
麗奈「なによーアタシらみたいな駆け出しが広い部屋使ってたら文句あるってーの!!」ガルルル
凛「なんでそんな喧嘩腰なの」
晶葉「さっきまで君がさんざん麗奈の髪で遊んでいたからだろう」
凛「思ったより手触りがよくてつい」
ゆかり「この部屋は、もともと使われていなかったのを譲ってもらったものなんです」
凛「こんな広い部屋がまるまる使われてなかったの? どうして?」
ゆかり「それはですね、いろいろと事情がありまして」
晶葉「あれはまだ、Pが私とゆかりしかスカウトしていなかったころの話だったな」
晶葉「この部屋には悪霊が住みついているという噂があったんだ」
凛「悪霊?」
麗奈「びくっ」
晶葉「この部屋にいると、ポルターガイストなどの怪奇現象に遭遇したり、急に具合が悪くなったりする人間が続出したらしい。それでいつからか、誰も使わなくなっていたというわけだ」
ゆかり「なので私達も、最初はもっと小さい別の部屋を使っていたんです」
晶葉「そんなある日、私は気まぐれに開発したお化けを吸いこむ掃除機『オバケキューム』の性能を確かめたくなった」
凛「どっかで聞いたことあるような名前だ」
ゆかり「私達とPさんの3人でこの部屋に入った時は、なんだかちょっとした冒険みたいでわくわくしました」
晶葉「実際にお化けと闘ったPはものすごく疲れたと言っていたが」
凛「え、ほんとにお化けいたの?」
晶葉「ああ、いた。オバケキュームが重量的に成人男性にしか背負えなかったから、Pがひとりで頑張ってくれた」
ゆかり「でも、話してみたら悪い人ではありませんでしたよ?」
凛「話せたんだ」
晶葉「オバケキュームに吸いこんだお化けと会話できるよう、翻訳機能もつけておいたからな」
凛「今さらだけどなんでもありだよね」
ゆかり「お化けさんは寂しかっただけ……そう言っていました」
晶葉「ゆかりが半日くらいずっと話に付き合った結果、最終的には癒されて成仏したんだ」
晶葉「吸いこんだお化けをどうするかは考えていなかったから、助かった」
凛「幽霊にも効果があるゆかりの癒しってすごいと思う」
晶葉「声を聞いているだけでも優しい気持ちになれるからな」
晶葉「相手に癒しと安らぎを与え、いつしか心穏やかにする」
晶葉「そうだ、いっそこれを教育プログラムに活かしてみてはどうだろう」
晶葉「名付けてゆかり教育!」
凛「よくわかんないけどダメな気がする」
凛「それで、お化けを成仏させた後は」
晶葉「怪現象はすっかりなくなった。その手柄を認められて、ここの部屋はPが自由に使っていいことになったというわけだ」
ゆかり「そのまま今日まで、大切に使わせてもらっています」
凛「なるほど。そういういきさつがあったんだ……ところで」
麗奈「………」
凛「なんであんたはずっと耳ふさいで固まってるの?」
麗奈「べ、べつに。気分よ気分」
晶葉「麗奈はお化けが苦手だから」
麗奈「べ、べべべつに怖くないし? よゆーだし、よゆー!」
麗奈「友達と肝試しやったら毎回全速力で駆け抜けて最高タイム叩きだすくらいだし!」
凛「それ、怖いの嫌だからわき目も振らずダッシュしてるだけじゃないの?」
麗奈「うっさいわね!」
つかさ「おはーっす」
ゆかり「つかささん、おはようございます」
つかさ「今日もこの部屋は騒がしいな。嫌いじゃねーけど」
ゆかり「今、この部屋にいたお化けさんの話をしていたんです」
つかさ「……お化け?」
凛「つかさは聞いたことないの? 晶葉達がお化けを成仏させた話」
つかさ「………」
凛「つかさ?」
つかさ「ふ、ふーん。そんなことがあったのか、へえ」
ゆかり「あら? つかささんにも、この話はしたことがあったような」
つかさ「え、あ、そうだっけ? ああ、言われてみればそんな気してきたわ」
凛「……つかさ、ホラー系苦手?」
つかさ「べ、べべべつに怖くないし? よゆーだし、よゆー!」
つかさ「友達と肝試しやったら毎回全速力で駆け抜けて最高タイム叩きだすくらいだし!」
凛「ああ、うん。よくわかった」
つかさ「だいたいあんな非ィ科学的なもの!」
麗奈「そーよね! お化けなんて怖くもなんともないわよね!」
つかさ「モチ! 珍しく意見があったなっ」
麗奈「まったくねっ」
がしっ!
晶葉「固い握手を交わしているな」
凛「友情が芽生えた瞬間だね」
ゆかり「仲良しなのはいいことです。つかささんのぶんのお茶と羊羹、持ってきますね」ニコニコ
別の日
晶葉「おはよう……む?」
ゆかり「すぅ……」グッスリ
晶葉「ソファーで寝ているのが一名。他には……誰もいないか」
晶葉「よく寝ているようだし、タオルでもかけてやろう」スッ
ゆかり「ん……」パチッ
晶葉「ああ、すまない。起こしてしまったか」
晶葉「タオルをかけようとしていたんだが」
ゆかり「むぎゅ」ガシッ
晶葉「む?」
ゆかり「んぅ」グイッ
晶葉「のわっ!?」
晶葉(い、いきなり腕をつかまれて抱き寄せられてしまった)
ゆかり「むぎゅーっ」
晶葉「お、おいゆかり。私は抱き枕じゃないぞ。というか首が締まってきていて怖いんだが」
ゆかり「ふんにゅ」グググ
晶葉「まずい。寝ぼけたゆかりにがっちりホールドされてしまった」
晶葉「こ、このっ……! えい、えい」クイクイ
ゆかり「すぅ」
晶葉「まったく動かん……寝ているくせになんて怪力だ。いや私が非力なだけか」
晶葉「しかしこのままでは私の顔がゆかりの胸に押し潰されてしまう」モゴモゴモニュモニュ
ゆかり「あぁんっ」
晶葉(喘ぎ声が無駄に艶やかなのはなぜだ)
晶葉「しかし、こういう非常事態に備えて私はポケットに常にリモコンを仕込んでいる」
晶葉「スイッチを押しさえすれば私のロボが助けに来てくれるのだ」ヒョイ
ゆかり「むにゃむにゃ」ペシッ
晶葉「あ」
ひゅーん(リモコンが飛んでいく音)
真奈美「おはよう、みんな」グシャッ
真奈美「ん? 足元に固い感触が」
晶葉「また壊された!」
晶葉「いやしかし、真奈美に来たのなら彼女に助けを求めれば」
グオオオオン!!
真奈美「む?」
食事制限くん「ががが!」
食事制限くんNEO「ごごご!」
晶葉「リモコンが壊れたせいでロボが暴走を!」
食事制限くん「どどど!」
食事制限くんNEO「ずばば!」
ガショーン! ガシャーン!
真奈美「合体し始めたぞ」
キメラテック・オーバー・食事制限くん「ぐおおおおお!!」
真奈美「どうやら私に敵意を持っているようだな……いいだろう、来い!」
シュバッ! ドガッ! ボコッ!
晶葉「いや、そんなことより私を助けてもごもご」
ゆかり「んぅ……むぎゅー」
キメラテック・オーバー・食事制限くん「ゴギガガガギゴ!」
真奈美「融合しただけあって、さすがに今までのロボとは強さが違うな……私も本気でいかせてもらうぞ!」
真奈美「はぁっ!!」
ずばーーん!
晶葉(ダメだ、あっちはバトル展開に入って全然聞こえていない)
晶葉「こ、このままでは本当に私の命がもごもご」
ゆかり「うふふ……ぎゅうー」
晶葉「もごもご……」
10分後
凛「おはようございます」
凛「って、なにこの機械の破片みたいなの」
真奈美「ハァ、ハァ……強敵だったが、そのぶん勝利の喜びも格別だな」
凛「?」
凛「他のみんなは……あれ、ゆかりと晶葉がソファーで寝てる」
ゆかり「むぎゅー」
晶葉「タ、タスケテ……」モゴモゴ
凛「………」
凛「状況がさっぱりつかめない……」
翌日
つかさ「ほーん……」フムフム
真奈美「何を読んでいるんだ?」
つかさ「アイドル雑誌。やっぱライバルのリサーチは欠かせないからなー」
真奈美「どれどれ」
真奈美「……皆、ずいぶんと露出が多い気がするな」
つかさ「こんなもんっしょ。肌色部分が多いほうが、男性諸君の注意を惹きやすいし」
つかさ「真奈美さんも、もうちょい露出増やしていいんじゃねぇの?」
真奈美「そうか? 今でも結構出しているつもりだぞ?」
つかさ「そっちのほうがバズるね、きっと」
つかさ「肉体美を武器にできるタイプなんだから」
真奈美「肉体美か……身体を鍛えているという自負はあるが、私ももう25だからな。あまり節操なしに肌を出すわけにもいかん」
つかさ「この前、肌年齢18って言ってなかったか? だったら余裕だと思うけどなぁ……」
つかさ「けどまあ、節操なしにやるのがマズイってのは事実か」
つかさ「肌を出すことにこだわりすぎて、下品になったら逆効果もいいトコだ。真奈美さんは『高嶺の花』タイプだから特にな」
真奈美「露出するにしても、あくまでクールの範囲に留めておきたい」
つかさ「そこんとこ考えると、ここに載ってる城ヶ崎美嘉なんかは理想的だな」
真奈美「うちの事務所のアイドルか」
つかさ「出すとこ出してるけど、カリスマを失わない絶妙なラインを突いてる」
真奈美「ふむ、確かに」
ゆかり「なんだか盛り上がっているようですね」
麗奈「なんの話してんの?」
真奈美「露出の度合いについて、少しな」
つかさ「ほれ、この雑誌」
麗奈「どれどれ……うわー、なんかエロいわね」
ゆかり「ええと……せくしー、ですね」テレリ
つかさ「これ見て、他の連中の人気の秘訣を探ってたとこ」
ゆかり「………」
ゆかり「私も、もっと肌を見せたほうが皆さんに喜んでもらえるのでしょうか」
つかさ「……いや、お前の場合は城ヶ崎クラスの露出も微妙だな」
麗奈「あー、言えてる」
真奈美「私も同意見だ」
ゆかり「? どうしてです?」
真奈美「ゆかりは……そうだな、お嬢様な雰囲気があるから、簡単に肌を出すと良さを殺しかねない」
つかさ「言うなればチラリズムの権化だな」
麗奈「見えそうで見えないってのがいいのよね」
ゆかり「そうですか……この城ヶ崎さんを師事するというのも、ひとつの選択肢として考えていたのですが」
つかさ「そんなことするつもりなら止めるわ」
真奈美「もっと時が経ってからならともかく、まだ駆け出しの段階ではな」
麗奈「ないとは思うけど、もし向こうからやって来たら――」
美嘉「こんにちはー。水本ゆかりさんって、ここの部屋だったよね」
麗奈「引き抜き防止バリアー!」ドンッ
つかさ「ウチのかわいいマスコットに手出しはさせねぇ!」ドドンッ
真奈美「防御は任せろ!」ドドドンッ
美嘉「え、なに? 水本さんの名前が書いてる手帳拾ったから、届けに来ただけなんだけど……」
ゆかり「あっ、私のです。ありがとうございます」ペコリ
真奈美「話の流れでとんだ勘違いをしてしまったな」
つかさ「イージーに考えても、カリスマJKアイドルがいきなりゆかりを引き抜きに来るわけねーか」
ゆかり「でも、みなさんが私を大事に思ってくれているのが伝わってきました。うれしいです」ニコニコ
麗奈「とーぜんよ!」
麗奈「ゆかりがいなくなったらおいしいお菓子が食べられなくなるじゃない!」
凛「次から麗奈のぶんは用意しなくていいよ、ゆかり」
麗奈「なんでよっ!?」
つかさ「つか、凛はいつからいたんだ?」
凛「ついさっき。城ヶ崎さんと入れ違い」
晶葉「私もいるぞ」
真奈美「6人全員揃ったか」
ゆかり「うーん……けれど、やはり考えてしまいますね」
ゆかり「私は皆さんの中では一番の古株なので……自分のアイドルとしての方向性というものは、どうしても気になります」
凛「えっと……ゆかり、晶葉、真奈美さん、麗奈、つかさの順に入ったんだっけ」
晶葉「そうだな。そして、つい先日君が加わったというわけだ」
ゆかり「もっといろいろなことに挑戦したい気持ちもありますし、そうしなければいけないような気も……可能性があるのなら、セクシー路線も」
真奈美「そう焦るな」ポン
ゆかり「あ……」
真奈美「様々な分野にトライすることは、もちろん大事だ。だがそれで、自分の本質を見失ってしまっては元も子もない」
ゆかり「本質、ですか?」
真奈美「そう。君自身が持つ輝きの根っこの部分だ」
真奈美「焦ってそれを殺してしまうような道を選ぶのはよくないだろう」ナデナデ
ゆかり「……ふふっ、くすぐったいです」
凛「人によって、それぞれ向き不向きがあるってこと?」
晶葉「おおむねそういうことなんだろうな」
麗奈「つまりどういうこと?」
つかさ「要はカレーにケーキ乗っけるような真似はすんなってことだ」
麗奈「おお、わかりやすい!」
凛「わかりやすいけど真奈美さんの言葉の重みが消えた気がする」
ゆかり「カレーにケーキ……」
つかさ「明らかに合わないトッピングは誰の得にもならない。けど、逆に言えば味が合うトッピングならいい」
つかさ「カツ、チキン、エビフライ、卵……こいつらはみんなカレーにマッチする。そしてカレー自体がもっとうまくなる」
つかさ「だからゆかりも、自分にとってのカツやエビフライを探せってことだな」
凛「話がものすごく庶民的になってる」
真奈美「たとえとしては悪くないから問題ない」
ゆかり「………」ムムム
晶葉「どうかしたのか」
ゆかり「いえ……私、カレーの上に何かを乗せて食べた経験がほとんどなくて。なので、いまいちイメージがしづらく」
つかさ「なんだと!?」ズイッ
ゆかり「きゃっ」
つかさ「なんてことだ……こんな身近にカレーのトッピングを知らないやつがいたとは」
凛「確かに、あんまりカツカレーとか食べてるイメージないかも」
麗奈「そもそもカレー自体微妙にイメージからずれてない?」
つかさ「よし決めた! 今夜はここのメンバーでカレーパーティーだ!」
ゆかり「パーティー、ですか?」
つかさ「作るのはアタシと……真奈美さん、頼むわ」
真奈美「任せろ。久々に皆に料理を振る舞うのも悪くない」
晶葉「おいしいものが食べられるのなら、私達にとっては得だな。少しくらいはロボに手伝わせよう」
麗奈「真奈美って料理上手なのよね。楽しみだわ!」
凛「へえ、そうなんだ」
ゆかり「ええと……よくわかりませんが」
ゆかり「盛り上がっているようなので、私もわくわくしてきました」ウフフ
凛(話のメインがすり替わっている件については、今はツッコまないでおこう)
その日の夜 女子寮
つかさ「こいつが王道のビーフカレー」
真奈美「こちらが海の幸をふんだんにとりいれたシーフードカレーだ」
つかさ「んで、こっちにはポークカレー。ルーはこの3種類」
真奈美「トッピングはここにたくさん用意してあるから、好きなものを選んでいけ」
真奈美「全部一口サイズに切ってあるから食べやすいぞ」
晶葉「口直しのサラダはこっちだ。私の『さらっとサラダくん』が作ったから味は保証するぞ」
ゆかり「わぁ、とっても本格的ですね♪」ウキウキ
麗奈「アタシカツカレー食べる!」
凛「手際がいいというかなんというか……かなり作ってるけど、6人で食べきれるの?」
真奈美「Pが暇なら誘えばよかったんだが……先に部長と飲む約束をしていたらしい」
つかさ「美人が手料理振る舞ってやるっていうのに、間の悪いヤツ」
つかさ「ま、余ったら寮にいるやつに適当に声かければいいだろ。カレーとなれば大勢食いついてくるに違いない」
凛「つかさのカレーへの絶対的信頼はなんなの」
つかさ「カレーだから。他に理由はいらねぇ」
ゆかり「では皆さん。手を合わせて」
『いただきまーす!』
つかさ「あ、そうだ。ぬか漬けも持ってきたから合わせて食え」ドン
凛「もう趣味全開だね」
その後
麗奈「ふー、もう食べられない! 満腹!」
晶葉「堪能したな。しばらくカレーは食べずにすみそうだ」
凛「だね。おいしかった」
真奈美「満足してもらえたようでなにより」
真奈美「ゆかりはどうだった?」
ゆかり「とてもおいしかったです。いろいろな組み合わせを味わって、カレーの可能性をたくさん知ることができました」
ゆかり「今ならわかります。アイドル道とはカレーにあり、なんですね」
つかさ「それな」
凛「いや違うでしょ」
ゆかり「私も無限の可能性を秘めたカレーのようなアイドルを目指しますっ」フンス
つかさ「やっぱカレーは世界を救うわ」
凛「大げさすぎじゃない?」
晶葉「ちなみに、ゆかりはどのトッピングが気に入ったんだ?」
ゆかり「そうですね。どの組み合わせもそれぞれのよさがあって、大変素晴らしかったのですが……あえてひとつ選ぶとすれば」
麗奈「選ぶとすれば?」
ゆかり「カレーパンですねっ」
凛「カレーのトッピングじゃなくない?」
つかさ「カレーが入ってればみんな仲間だからセーフだな」
後日
凛「ゆかり、今は番組の収録だっけ?」
つかさ「ああ、Pと一緒に元気に出ていった」
麗奈「いいなー、アタシももっとたくさん目立つ仕事がしたーい」
つかさ「新人が生意気言うなよー」
麗奈「アンタのほうが新人でしょーが!」
凛「でも、つかさと真奈美さんはさすがだね」
凛「なんだかんだ、二人のおかげでゆかりも悩みが解けたみたいだし。年上の風格ってやつかな」
つかさ「あー、あれな」
麗奈「真奈美はともかく、つかさはカレーの話してただけじゃないの?」
凛「そうかもしれないけど、自信持ってアドバイスしてあげたのがよかったんじゃないかなって」
つかさ「うん……まあ、そうだな」
麗奈「なんか歯切れ悪いわね。いつもなら偉そうに自分のおかげみたいに言うくせに」
つかさ「そんな恩着せがましい性格じゃねぇっつの」
つかさ「それに今回は、アタシらだけの手柄じゃないからな」
凛「どういうこと?」
つかさ「シンプルに言うとだな――」
真奈美「半分以上はPのおかげ、ということさ」
凛「あ、真奈美さん」
麗奈「Pのおかげって、どういう意味よ」
真奈美「私とつかさが、時々Pの仕事を手伝っているのは知っているだろう?」
凛「そういえば、一緒に書類の整理とかしてるね」
つかさ「そういうことやってると、あいつがどういう姿勢で、何を重視してプロデュースに臨んでるかがおのずと見えてくるわけだ」
真奈美「たとえば、アイドルごとの長所と短所を見極めたうえで、少しずつ新規路線を開拓していく、とかだな」
真奈美「その子の持つ輝きの本質をなにより大事に考えている」
凛「あ、それって……」
真奈美「そう。私がこの前語ったのは、彼が日頃見せている姿勢をそのまま言葉にしたものさ」
つかさ「Pがそういう方針でPDCA回してることを知ってるから、自信持ってゆかりにああいうことが言えたわけだ」
つかさ「でなきゃ、ゆかり以上に実績のないアタシらが、偉そうにあーだこーだ語れない。だろ?」
凛「……なるほど」
麗奈「なんか難しいこと考えてるのね、アンタ達」
麗奈「アタシはアタシが面白いようにやるってだけね!」
真奈美「ははは、麗奈はそれでいいさ。いや、むしろそれがいい」
凛「ねえ、つかさ」
つかさ「なに」
凛「プロデューサーってさ、もしかして、仕事できる人?」
つかさ「……さあ? それはこれからの結果次第だろ」
つかさ「けど……信用できるパートナーだと、アタシは思う」
凛「……そっか」
つかさ「なんで笑ってんの?」
凛「べつに。なんでもないよ」
ゆかり「Pさん」
P「ん、どうかした?」
ゆかり「私なりに考えてみました。私の私らしさ、私が一番大事にしたいもの」
P「それは?」
ゆかり「それは、きっと……音楽への想いです」
P「……なるほど、いいじゃないか」
ゆかり「ありがとうございます」
ゆかり「でも、他にも大事にしなければならないものがあるのかもしれません。それを見失えば、私に合わないトッピングをしてしまうことになる……そういうものが」
P「……そうだな」
P「けど心配はいらない。それを見極めるのが、俺の役目だ」
P「一緒に見つけていこう。ゆかりの大事なものを、たくさん」
ゆかり「……はい」
ゆかり「いろんな私を見つけてくださいね、Pさん」ニコッ
収録中
ディレクター「いいね、あの子。ふわふわしているお嬢様かと思っていたが、なかなか臆せずトークもできるじゃないか」
P「ありがとうございます」
P「彼女は……ゆかりは、根っこは他の子に負けないくらい、強い子ですから」
おわり
読んでくれた方々に感謝を
今回はゆかりメインだったつもりです。次書くとしたら、また誰かをメインに据えてみんなでわいわいやるような話になると思います
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