提督「姉」【艦これ】 (37)
拙い文ですがよろしくお願いします。
地の文あります。
なんか戦闘シーンとか苦手です。
書き溜めました。
よろしくお願いします。
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俺には高校生の姉がいる。
7つ歳が離れている姉だ。
世話焼きで面倒見いい姉で、いつも俺のことを甘やかしてくる。
「あ、またご飯こぼしてる。だめよ?よそ見しながら食べちゃ」
「………」
まーた始まった。そうやって僕の世話を焼く。
「ふふっ、美味しいでしょう?今日は少し奮発したからね」
姉が言う。
正直言って、世話を焼かれるのは嫌いじゃない。
なんてったって姉は家族の僕が見てもめちゃくちゃ美人であり、頭は良いし運動もできる、自慢の姉であるからだ。長い黒髪はとても綺麗で、思わず見とれてしまうことも……なんて、本人には口が裂けても言えないけどね。
ただ、友達の前でも世話を焼かれるのは困る。シスコンって思われてしまうんだ。
僕はもう子供じゃない。
そう言うと姉はどうかしらね、と笑うのだった。
くそう、絶対にわかってないぞ、この姉は。
「ねぇ、ちょっとだけ散歩にいかない?」
夏のある日、姉がそう誘ってきた。
僕は迷った。もし途中で友達に会ったりでもしたら、またからかわれてしまうに違いない。
僕が渋っていると姉はそれをどう勘違いしたのか、そそくさと準備をして玄関に行ってしまった。
「ほら!あんなにも空が青いわ。絶好のお散歩日和よ」
まだ行くとも言っていないのに。
僕は僕で、行きたくなければ行かなきゃいいのに出発の準備をして玄関に向かう。
なんだかんだで僕も姉のことが好きだったりする。もちろん姉として、だ。
「……姉さんはなんで僕に構うのさ」
散歩をしながら、僕は尋ねた。
「当然じゃない、大切な弟だもの」
「……なんだよそれ」
「あなたは私のたった一人の家族。大切に思うのは当然でしょう?あなたは私の事、大切じゃないの?」
「そりゃ……大切だけど……でも、友達にシスコンってからかわれちゃうんだ!それは困る!」
「まぁ、そんなことを気にしているの?小さい頃は私にくっついて歩いていたのに、そんなに大人ぶってしまって……姉は寂しいわ」
およよ、と嘘泣きをする姉。
「そ、そんな昔のことはいい!」
思わず赤面する僕。昔は昔、今は今なのだ。
しかし、こうして散歩についてきている時点で、昔と大して変わっていないのかもしれないな。
両親は一年前に死んだ。
戦争に巻き込まれたのだ。
戦争と言っても、国と国が戦っているわけではない。
敵は深海棲艦と言う。
突如海から現れた人外の敵は、海辺の街を蹂躙しつくした。
海辺に住んでいた僕達は命からがら逃げ延びたが、両親は敵の撃った砲撃がビルにあたり崩落に巻き込まれた。
生き残った僕達は内陸に住んでいた親戚を頼り、今は親戚が持っていた小さな空き家でこじんまりと暮らしている。生活費は姉のバイト代と、親戚が僅かながら援助してくれている分でやりくりしていた。
「……あなたは、たった一人の家族だもの」
横で歩いていた姉は、小さく言った。
学校終わりにバイトをして、疲れているだろうに僕の面倒まで見てくれている姉には頭が上がらない。
本当なら、僕が守ってあげなきゃいけないのに……。
「深海棲艦との戦いは芳しくなく、徐々にではありますが、我々人類は内陸へ内陸へと追いやられています」
テレビのアナウンサーが言っていた。
なにせ、人類の武器が通用しないらしい。
人類は一体どうやって抵抗しているのか、そういった情報は入ってこない。機密というやつなのだろう。
そんなことを思いながら家で宿題をやっていると、家の扉を叩く音が聞こえた。
姉はバイトでまだ帰ってくる時間ではない。
うちを訪ねてくるような人も思い浮かばない。
居留守しよう、そう決め込み黙り込んでいると、
「軍の者です。〇〇という人間はいますか」
……姉の名前だ。
どうして軍人が姉さんを訪ねてくるんだ。
疑問に思いながらも家の扉を開け、軍人を名乗る男を招き入れた。
「姉は、今バイトでいません……」
「そうか、なら少し待たせてもらおうかな」
40代くらいだろうか、白い軍服を着た細身の男の人だ。ニコニコしていて、軍人っぽくない。
さすがに不用心だったかな……招き入れたことを少し後悔していると、
「あぁ、これは失礼。私はこういう者です。いきなりの訪問で申し訳ない」
もらった名刺には名前とどこに所属しているかが書いてあった。
どうやら、本物らしい。
お茶を出して気まずい沈黙を過ごす。
何しに来たのかと聞いても、姉が帰ってきたら話すと突っぱねられてしまった。
早く帰ってきてくれ、姉さん。
そんなことを思っていると、扉の開く音が聞こえた。
どうやら帰ってきたようだ。
「ただいまー……ってあれ?知らない靴がある。誰か来ているの?」
部屋に入ってくると姉は固まった。
それはそうだろう、軍人が自分の家に居座っているのだから。
「やぁ、お邪魔していますよ」
軍人はニコリと笑った。
「なんの、ご用でしょうか……?」
姉が恐る恐る訊いた。
「突然の訪問申し訳ない。あなたが〇〇さんですね?」
「そ、そうですけども」
「簡潔に申し上げますね」
軍人がニコリと笑う。
先程の笑みとは少し違う、暗い笑みだ。
「あなたを『艦娘』として、徴兵しに参りました」
「 か、かんむす……?」
「えぇそうです。まだ公にはされていませんが、この国は深海棲艦の対抗策として、『艦娘』を開発致しました。大戦時の軍艦の魂を人間の女性に宿らせ、軍艦の力を持った艦娘として戦って頂くのです。この艦娘になるには適性が必要なのですが、あなたの身体がある艦の適性を持っていることがわかりました。なので今後は軍に身を置きーーー」
「ま、待ってください!あの、突然のことで何が何やら……」
「あぁ、簡単に言うと、国のために戦ってください、ということです。まだ艦娘は開発されたばかりでして、第一次艦娘計画としてあなたが選ばれたと。ご安心ください、あなたの他にも適性を持った方がいます。もちろんその方も徴兵いたします」
「で、でも、弟は……」
「そちらもご安心を。弟さんは我々が責任を持って、施設に預けますから」
「し、施設って……」
なんだ……なんの話だ。
姉さんが、徴兵される……?
深海棲艦と戦うというのか……?
目の前で繰り広げられる会話に頭が追いつかない。
僕は施設に?姉さんと離れ離れになってしまうのか?
「あの……お断りします」
姉が拒絶の言葉を言った。
軍人さんはため息をつく。
「あのね、断れる話ではないんですよ。徴兵ですからね。これは国からの命令なんです。背いたら法律で罰せられます」
「そんな……」
「では行きましょう。準備の方をお願いいたします」
「え、い、今から行くんですか?」
「もちろんです。今国は危機に陥っています。少しでも急がなくては」
姉が、行ってしまう。
戦地に、行ってしまう。
両親が死んだ戦場に、行ってしまう。
「ぅぁあああああああ!!!!やめろおおおおおお!!!!!」
僕は姉を引っ張っていく軍人に飛びかかっていた。
しかし所詮は子供。弱い力は強い力には勝てない。
無惨にも投げ飛ばされて、床に叩きつけられた。
「おっと、今は見逃してあげるけど、本当なら公務執行妨害ですよ?」
軍人が淡々と言う。
叩きつけられた衝撃でくらくらする。
姉が叫ぶ、僕の名を叫ぶ。
「私は大丈夫だから!!あなたはしっかり生きていくの!!また会えるから!!生きていれば会えるから!!私があなたを守るから!!!」
あぁ、僕は守られていたんだ。ずっと姉さんに。
親を亡くした僕を、寂しい思いをさせまいと。
僕が守ってあげなきゃいけなかったんだ。
たった一人の家族を。
連れて行かれる姉を見つつ、僕は意識を失った。
それから一年後、施設で暮らしていた僕に姉が死んだという報せが入った。
戦艦扶桑の魂を宿した姉は、深海棲艦に沈められたのだった。
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俺には姉がいた。
7つ歳が離れていた姉だ。
今はもう、姉の年齢もとっくに超えてしまったが。
姉は20年前に海で死んだ。
艦娘、戦艦扶桑として深海棲艦と戦い、水底へと沈んだのだ。
「ーーーとく」
俺はその報せを施設で聞いた。
不思議と涙は出なかった。
「ーーぃとくってば」
だがその時、確固たる意志が俺の心に宿った。
深海棲艦を殲滅する、という復讐の意志がーー。
「提督!!!」
「うわっなんだ!」
「なんだ、じゃありません。またぼーっとして。はいこれ、遠征の報告書です」
「あぁ、すまん、ありがとう山城」
「……また姉様のことですか」
「ん、まぁ、そうだな。お前にとっても、俺にとっても姉様のことだ」
耳元で突然叫んだこの大馬鹿は戦艦山城。俺の姉、戦艦扶桑の妹艦である。
そして、姉の最期を看取った一人でもある。
俺は姉の死を聞かされた後、死に物狂いで勉強をした。死に物狂いで身体を鍛えた。深海棲艦への復讐のため、軍に入るためだ。
そして、見事軍に入り艦娘を指揮する提督へとなった。
新米の提督として、前線の泊地に飛ばされて出会ったのが山城であった。
山城は出会った当初は細くやつれ、戦いに出ればボロボロになり、役立たずの烙印を押され解体寸前のところであった。
第二次艦娘計画で生まれた山城は、扶桑を姉妹艦という関係を超えて本当の姉のように慕っていたという。
その扶桑を目の前で失ったのだ。無理もないだろう。
俺に拾われた山城は、俺が扶桑の実の弟と知ると崩れ落ち大量の涙と共に謝罪してきた。
私が守れなかった。私が守らなければいけなかった。あの人を沈めてしまった。私が沈めばよかった。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
そう何度も懺悔してきた。
俺は山城に伝えた。
「俺は深海棲艦を殲滅する。力を貸してくれ」
山城は泣き腫らした顔でこちらを見て、強く頷いた。
俺と同じ、復讐の目をしていたーーー。
「というのに、前線という割にはあまり激しい戦いは無いな、この辺りは」
「そうですね、前線とは言っても、端のほうの前線ですからね」
「しかし、近いうちに大規模作戦が発令されるとのことだ。しっかりと準備しておくように」
「了解です。提督」
敬礼して執務室を出て行く山城。
さて、見回りでもするか……。
「あ、提督」
「ん、あぁ時雨か」
見回りと称して泊地内を歩いていると、時雨が話しかけてきた。
「提督、サボりかい?」
「人聞きの悪い。見回りだよ、見回り」
「ふふっ、そういうことにしておこう」
時雨がいたずらっぽく言う。
全くこいつは。
「あぁ、そうだ。そういうことにしておいてくれ」
時雨の頭にぽんと手を置くと、時雨はくすぐったそうに笑った。
「ねぇ提督。僕達艦娘が沈んだら、深海棲艦になるっていうのは本当かい?」
一緒に歩いていると、時雨が訊いてきた。
「お前、どこでそれを……」
「ん、前に大本営の人たちが来た時に、話してるのを聞いちゃったんだ。ごめん」
「いや、責めてるわけでは。あぁ、でも、そうだな。そういう噂はある」
確かに、最近の研究では深海棲艦の正体は過去に沈んだ艦の怨念が生んだ化け物ではないか、という予測が立てられていた。
ということは、艦娘が沈んだら、彼女らも怨念に蝕まれ深海棲艦化するということも考えられる。
「ならさ、深海棲艦から艦娘になる、ってことはないのかな」
考えたことがないわけではなかった。
艦娘が深海棲艦化する。その噂を聞いた時に、逆もあり得るのではないか、と。
扶桑が沈んだあと艦娘の研究は進み、システムが見直され、扶桑以外の犠牲が出ることは無かった。
よって、艦娘が深海棲艦化したとして、それは扶桑以外にはあり得ない。
しかし、艦娘の深海棲艦化も、深海棲艦の艦娘化も実例はない。
結局のところ、噂の域を出ないのだ。
「……なんてね、ごめんね、変なことを言って」
「……いや、いいんだ」
時雨が謝ってきたのを、手で制止する。
「少し、疲れたな。執務室で休むことにするよ」
俺は一人執務室へ向かった。
執務室で考えてみる。
沈んだ扶桑。深海棲艦化。艦娘化。
仮に艦娘化するとして、今まで実例がないのは何故だろう。
艦娘が沈むと深海棲艦になるという証拠もない。
所詮はただの噂。死んだものは戻らない。自然の摂理だ。
執務室の扉が開く。
「あら、提督。なぜ泣いているのですか」
山城だった。
山城に、先ほどの時雨の話をしてみた。
「根も葉もない噂です。扶桑姉様が沈んで15年、一度も艦娘化したという話がないんです。ということは、それはただの噂なんです。」
「そうだよな……」
「ところで提督。先程は何故泣いておられたのですか?」
「うるさいな、どうでもいいだろうそんなこと」
「いーえ、提督の泣く姿なんて見たこともなかったですから」
「ただ、感傷に浸ってただけだよ。もし扶桑が、姉さんが戻ってくるとしたら、なんてな。
でもそんなことはありえない、姉さんの魂は海に沈んでるんだから」
「海に、沈んでる……」
山城が考え込む。
「ねぇ提督。提督の姉様の魂は、同時に私の扶桑姉様の魂でもあるのよね。姉様の魂が深海に囚われてるとしたら……」
「待て山城、何が言いたい」
「だから、扶桑姉様はスリガオ海峡で沈んだのよ」
「いや、姉さんが沈んだのはスリガオ海峡ではないぞ」
「そうじゃなくて、過去の大戦時の話よ。スリガオ海峡で沈んだ戦艦扶桑。その魂を宿した姉様が沈んで深海棲艦化するとしたら……」
「………戦艦扶桑が沈んだスリガオ海峡か。そこに姉さんの魂が扶桑と共に囚われているということか」
「ええ、スリガオ海峡は深海棲艦が現れてから人類は到達できていない。だからーー」
その時、執務室の扉がノックされた。
「入れ、なんだ大淀」
「失礼致します、大本営から大規模作戦の発令がありました。作戦目標はーー」
「ーーーースリガオ海峡です」
翌日、俺は泊地にいる全艦娘を呼び出した。
「大本営から大規模作戦が発令された。目標はスリガオ海峡突破。大戦時のメンバーは全員揃っているわけではないが、我々も全力を尽くし敵を叩きに行く」
俺たちにとって特別な意味を持つ作戦が始まった。
私たちは順調に海を進んでいった。
「くっ、山城っ!大丈夫かい!?」
「えぇ時雨!このくらい、姉様が受けた痛みに比べたらぁ!!!」
『山城、時雨、無理をするなよ』
提督ったら、心配そうな声しちゃって。
「提督……でも、この先に姉様がいるの……!!」
「山城……。あっ!いけない!!右舷に魚雷!!」
そんなっ、避けられない……!
「きゃああああああ!!!」
油断してた……不幸だわ……。
『山城!!大丈夫か!?』
「提督、山城中破だよ」
時雨が提督に報告する。
「ごめんなさい提督。でも、まだやれます!」
この先に、姉様がいるから。
ーーースリガオ海峡沖
「山城、あれ見て」
傷を負いながらも進み、時雨が指差す。
「ねえ、さま……?」
『なんだと!?』
提督が無線の向こうで驚いている。
『おい山城、扶桑がいるのか!!姉さんが!!』
「提督、落ち着いて。アレは扶桑じゃないよ。姫だ。姫級だよ」
時雨が冷静に言う。おかげで私もちゃんと見えた。
アレは姉様じゃない。似てるけど、アレ自体は姉様じゃない。
「提督、交戦に入るよ」
時雨の言葉が合図となり、私たちは戦闘に入った。
相手は姫級一隻に戦艦3隻、駆逐2隻。
こちらは戦艦2隻、重巡1隻、駆逐3隻。
向こうの方が上かしら……。
でも負けるわけにはいかないの。
爆ぜる砲弾。叫ぶ砲塔。唸るタービン。全てを尽くして戦い抜く。
熱い、身体が熱い。燃えるようだ。
全身フル稼働だわ。
姉様に、会うために。
「邪魔だ……どけええぇぇぇえぇええええ!!!!!」
ドン、というでかい音が聴こえて、無線が切れた。
なんの音だ。やった音なのか、やられた音なのか。
報告を、報告をくれ。
しかし無線は鳴らない。
スリガオ海峡
扶桑が沈んだ場所。
山城が沈んだ場所。
ダメか、大戦をなぞるように、ダメだったのか。
また失うのか。扶桑と、姉さんと同じように失うのか……!
ザザッ……と無線が鳴る。
『提督?提督?聞こえますか?』
山城の声だ。
「聞こえるぞ山城、無事か。時雨も無事か」
『僕も生きてるよ。大破しちゃったけどね」
『山城、時雨、大破です。ですが提督。姫級を倒し、残存勢力も撤退していきました』
……よかった。生きていてくれて。
もう、失うのはごめんだからな。
『帰投しますね、ご報告があります』
半日ほどで、艦隊が帰投する。
俺は港で山城らを迎えるために執務室を出た。
「ただいま、提督。帰ってきたよ」
時雨が言う。
「ボロボロじゃないか、すぐに入渠するんだ」
「うん、でもね、その前にね、報告だよ」
山城が近寄ってくる。
ひとりの女性を抱えて。
山城は泣いていた。
温かい涙。
「お前、それ……」
「やりましたよ、提督。噂は本当だったんですね。姉様が、姉様がぁ……っ!!」
山城が抱えていたのは、紛れもなく、姉であった。
黒く長い髪が素敵で、頭が良くて運動もできて、自慢の姉の姿だった。
姉が目を開ける。
「……ぁ…、大きく、なったのね。私は、あなたを守れたのね」
?を涙が流れる。
「ぉ、おかえり、姉さん」
今度は、僕が姉さんを守らなきゃね。
終わり
終わりです。
戦闘とかぐだぐだ。
もっと上手く書けるように勉強します。
お付き合いありがとうございました。
一応過去作です。
少年「かんむす?」
少年「かんむす?」【艦これ】 - SSまとめ速報
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