真姫「初恋」 (9)
ゴーン ゴーンとウェディングベルが鳴り響く。
慣れないドレスを着ているから転ばない様に慎重に歩いている。
私は今日、結婚する。
もちろん、最愛の人と。
そう言えば、あの告白から何年経ったのだろうか。もう遠い昔。とても懐かしく感じる。
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私の初恋は高校生の時だった。
真姫「好きなの」
にこ「は?」
真姫「にこちゃんの事が好きなの」
皮肉屋な私がストレートに気持ちを伝えた。
にこ「えっと…。それは友達としてって事?」
真姫「違う」
にこ「あっ!部活の仲間として!」
真姫「それも違う」
にこ「先輩として?」
真姫「そう言う事じゃない。恋愛対象として。にこちゃんと恋人同士になりたいって。そう言う好きよ」
誤魔化さずにちゃんと私は思いを伝えた。
にこ「あの…からかってんの?」
真姫「ううん」
にこ「いや…からかってるんでしょ?あっ!分かった!希でしょ!希のしょーもないイタズラに付き合って」
真姫「違う。希は関係ないわ」
にこ「じゃあ何なのよ?」
真姫「何度も言ってるじゃない。好きだって」
にこ「だって…今までそんな素振り見せた事ないじゃない。だいたい、私は女で…あんたも女の子で…このご時世で別にそう言うのに理解がないって訳では…真姫は…そう言う事なの?」
真姫「違う。そんなのどうだっていいの。同性だからどうとか…そんなのはどうでもいいの。私はにこちゃんだから好きなの。にこちゃんだから…」
にこ「そんな…だって…」
真姫「気づかれない様にしてたわ。告白してもしダメだったらもう友達同士には戻れないでしょ?なんて…告白のタイミングでそんな事を言うのは卑怯よね」
にこ「どうして…今なのよ?」
真姫「にこちゃんが卒業して一年目。ただ寂しいだけだと思った。いつも一緒に居たからって。でも、それは違うとすぐに気がついたの。だって、日を追う事に胸の痛みは増すばかりなんだもん」
にこちゃんは俯いたまま何も喋らない。
真姫「経験のない私でも流石に気がつくわ。この感情は普通じゃないって。だから二年目、にこちゃんに告白するって決めたの。けど、なかなか勇気が出なかった」
にこ「だから…今日なのね」
真姫「うん。明日、私は卒業するから」
にこ「気持ちにケジメをつけ様って」
真姫「違う。ケジメとかそんなカッコいい事じゃない。ただ、好きな人と恋人になりたい。それだけ」
にこ「そう」
真姫「にこちゃんの笑顔が好き。夢に一生懸命に所もカッコよくて好き。たまに優しい所も好き。声も顔も全部。ちょっとズルイ所も見栄っ張りな所も。にこちゃんの全てが好き」
にこ「真姫…」
真姫「好きよ、にこちゃん。世界で一番大好きです。私と結婚を前提にお付き合いして下さい」
にこ「ありがとう。凄く嬉しいわ」
真姫「じゃあ」
にこ「私も真姫の事は好きよ。けど、私が好きな真姫は友達の真姫で。恋人としての真姫じゃないの。だから……ごめんなさい」
真姫「うん。何となく分かってた」
一人きりで歩く道すがら。偶然なのか友人と出くわした。彼女は何かを察したのか、何も言わず寄り添う様に歩いてくれた。
真姫「いつだか…何かの本で読んだ事があるの。初恋は実らないものだって。けど、それは決して無駄なんかではなくて…人生を豊かにしてくれるんだって…だから、これは…悲しい事なんかじゃないのよ」
私の言葉に優しく頷く。
真姫「あ~あ~振られちゃったな。………うわぁぁぁぁん」
私の初恋はこうして幕を下ろした。
ゴーン ゴーン
ウェディングベルが鳴り響く。
私はヴァージンロード元へ歩く。
「真姫!綺麗ですよ!」
「真姫ちゃん。幸せになってね!」
「二人の幸せを祝ってるわ!」
友人達の祝福の言葉に顔を向けるとそこには彼女が居た。
「綺麗よ、真姫。幸せになりなさいよ」
私は小さく頷いてから祭壇で待つ最愛の彼の元へと向かった。
おわり
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