眼鏡娘「私は重力が嫌い」 (161)

SS4作目です。

いつものようにとある歌を参考にしています。

物語的にキリのいいところまで書き溜めがあるので、投下していきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1566301643

ーーー学校 教室ーーー



──ポトッ



眼鏡娘「あ……」

眼鏡娘(消しゴム落ちた)

眼鏡娘「……」ヒロイアゲ

眼鏡娘「……はぁ」

眼鏡娘(やっぱりダメだー…待ってる間に宿題終わらせちゃおうかと思ったけど全然集中できないよ)

眼鏡娘(元気娘ちゃんまだかな)

眼鏡娘「」グデー

ピロリン

眼鏡娘「!」

眼鏡娘(LINEだ)

スッスッ



☆元気娘☆『ごめん!先帰ってて!まだ委員の仕事長引きそう_(:3 」∠ )_』



眼鏡娘「……」ポカン

眼鏡娘(……私の一時間を返せー……)

眼鏡娘「……帰ろ」ボソッ

イソイソ

眼鏡娘(もう他の皆はとっくにいないし、残ってるのなんて私と……)

眼鏡娘「……」チラッ



男「」スースー...



眼鏡娘(男くん……)

男「……んぁ…」パチッ

男「やば、寝てた…ってこんな時間か」

男「ん?」チラッ

眼鏡娘「」ドキッ

男「あれ、眼鏡娘さんももしかして寝過ごしちゃったの?」

眼鏡娘「あ、その私は……友達を……」タジタジ

眼鏡娘「……さ、さようならっ!」タッタッタッ...

男「えっ」

男「行っちゃった……」




ーーー昇降口ーーー

眼鏡娘「うぅ…逃げてきちゃった」トボトボ

眼鏡娘(男くん…ほんとはちゃんと話したいのに…)

眼鏡娘「さっきので喉乾いてきちゃったし…」クツハキカエ

眼鏡娘「外の自販機で何か買お」

テクテク

眼鏡娘「……」ガサゴソ

チャリンチャリン ガコン!

眼鏡娘「フタ固っ……」グググ...

カシュッ



──ツルン



眼鏡娘「あっ!」

ボトッ

トポトポトポ...

眼鏡娘「」サッ!

眼鏡娘「よりによって土の上に落ちるなんて……飲み口は汚れてないから平気かな…?」

眼鏡娘「……はぁ……」

眼鏡娘(さっきの消しゴムといい、これといい、本当)

眼鏡娘(──重力って嫌い)

眼鏡娘(昔からそう。私を強く縛り付けるこの重力が好きじゃなかった)

眼鏡娘(重力があるから物が落ちる、つまづいて転ぶ、ジャンプしても天井に届かないし……気分だって沈む)

眼鏡娘(でも人に打ち明けてもまともに取り合ってくれたことがないから、これは私だけの悩みみたい)

眼鏡娘「……いいや、もう一本買っちゃおう」




ーーー翌日 学校ーーー

元気娘「眼鏡娘ちゃん、昨日はごめん!」

眼鏡娘「いいよいいよ、学級委員のお仕事大変だったんでしょ?」

元気娘「それはそうなんだけど……結構待たせちゃったよね…?」

眼鏡娘「まあ……一時間くらいは」

元気娘「うぬぬ…」

元気娘「あ、そうだ!」

元気娘「じゃあさ、お詫びとしてこの辺りに最近出来たっていう話題のカフェがあるんだけど、そこのパフェ奢ったげる!すごい人気なんだって!」

眼鏡娘「パフェ?」

元気娘「うんうん。…あれ?スイーツ苦手だっけ?」

眼鏡娘「苦手じゃないけど…」

元気娘「じゃあ決まり!今日の放課後急いで向かうよー!平日でも混んでることが多いらしいから」

眼鏡娘「え、混雑してるなら別に無理してそこに行かなくてもいいよ?というかお詫びとかも…私は気にしてないから」

元気娘「だめだめ!もう決定したんだから!眼鏡娘ちゃんは素直に奢られてればいいの!分かった?」

眼鏡娘「う、うん」

元気娘「よろしい♪」

元気娘「楽しみだなぁ、あそこのパフェ…」

眼鏡娘「……もしかして元気娘ちゃんが食べたいだけなんじゃ……」

元気娘「……」

元気娘「えへっ♪」





ガララ



先生「朝の会始めるぞー」

元気娘「先生おはようございまーす!」

先生「おうおはよう。元気があって何よりだが、早く席に付けなー」

元気娘「はーい!」テテテッ

元気娘「あ、男くんもおはよう!」

男「おはようさん」

眼鏡娘(相変わらずだなぁ元気娘ちゃん……)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……」チラリ

男「……?」チラッ

眼鏡娘「っ!」フイッ

眼鏡娘(目、合っちゃった。見てることバレちゃったよね…?)ドキドキ

眼鏡娘(昨日もいきなり逃げちゃったし……変な子だって思われてないかな……)

眼鏡娘「ぅー……」

元気娘「?」




ーーー放課後 カフェーーー

元気娘「いただきます!」

眼鏡娘「いただきます」

元気娘「」パクパク

元気娘「おいしー!」

眼鏡娘「…ん、本当」

元気娘「だよねだよね!」ハムハム

眼鏡娘「正直予想してたよりずっと好きな味かも」アム

元気娘「…!」

元気娘「…えへへ、来てよかったでしょ」ピース

眼鏡娘「……うん」ニコッ

元気娘「じゃ、どっちが早く食べられるか競争でもする?」パクパク

眼鏡娘「もっと味わって食べなって。それにそんなにハイペースで食べてたら──」

元気娘「ん~!」キーン

眼鏡娘「言わんこっちゃない…」

眼鏡娘(……ふふ)

眼鏡娘(元気娘ちゃん。私の一番仲のいい友達)

眼鏡娘(こんな地味な私に初めて声を掛けてくれたのもこの子で……あの時はちょっとびっくりしたな)





ーー入学式当日ーー

先生「──よし、皆自己紹介済んだよな?じゃ、最後は俺だな」

先生「俺の名前はこう書くんだが…」コクバンカキカキ

「へー。なんかちょっと面白い苗字ですね」

先生「言ってくれるな。子供の頃散々いじられたんだから」

「何て言われてたんですかー!」

先生「知りたいか?教えてもいいが、俺に向かって言ったら数学特別課題が追加されるからそのつもりでな。…昔の俺のあだ名は──」

ワハハ! エーウソー!

眼鏡娘(……何が面白いんだろう)

眼鏡娘(あーあ…せっかく高校生になったのに、なんか馴染めそうにないかも…このクラス)

眼鏡娘(……ちっちゃい頃は誰とでも仲良くなれてたのになー…)

先生「はいはい!んじゃ、今日はこれで終わりだから礼して帰宅な!今日は俺が号令かけるけど、明日からは日直がやるやつだから覚えておけよ」

先生「起立!…気を付け、礼!」

「「「さようなら!」」」

ガヤガヤ

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(…私も帰ろう。駅までの道、覚えてるかな)



──テクテクテク



元気娘「……」ニコニコ

眼鏡娘「…?」

眼鏡娘(え、なに…?)

眼鏡娘(この子、確か元気娘さんだっけ。…こっちずっと見てるけど…)

眼鏡娘「……あの、なにか…?」

元気娘「眼鏡娘ちゃんって言うんだね」ニコニコ

眼鏡娘「は、はい…」

元気娘「ね!この後一緒に遊びに行こ!」

眼鏡娘「えっ」

元気娘「ついでにこの辺りのことも教えて欲しいなー!私この間ここに越してきたばっかりなんだ!」ガシッ

眼鏡娘「!?」

元気娘「ほらほら行くよー!今日という日はまだこれからじゃー!」ピューン

眼鏡娘「えーー!?」ツレサラレー

先生「おーい!廊下を走るなー!」

ーーーーー



眼鏡娘(……最初から強引なところしかなかったっけ)

眼鏡娘「…クスッ」

元気娘「んー?」ハムハム

元気娘「あ!」

眼鏡娘「どうしたの?」

元気娘「眼鏡娘ちゃん、ほっぺにクリーム付いてるよ」フフッ

眼鏡娘「どこ?ここ?」フキフキ

元気娘「違う違う。こっち」グイッ(身を乗り出す)



チョイッ



元気娘「はい、取れた!」

眼鏡娘「ありがと……わざわざ指で掬わなくても、言ってくれれば自分で拭いたのに」

元気娘「気にしない気にしない♪」

元気娘「……」ジッ

元気娘「」ペロ

眼鏡娘「!?」

眼鏡娘「ななっ…!なんで舐めたの!?」

元気娘「いやー美味しそうだったからつい」

眼鏡娘「拭きとってよ!私の顔に付いたクリームなんて…!」

元気娘「……眼鏡娘ちゃんの味がした」ニヤ

眼鏡娘「~~!」

眼鏡娘「顔貸して!私も仕返しする!!」バタバタ

元気娘「わわっ!危ないよ!ちょっとした冗談だって!そんなにスプーン振り回さないで…!」

ワーワー!



.........




ーーー翌日 放課後ーーー

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘(何してんだろ私…昨日あんなに取り乱して……店員さんにも注意されちゃったし)

眼鏡娘(元凶の元気娘ちゃんは私が図書委員の仕事があると聞くやささっと帰っちゃうし)

眼鏡娘(……絶対お返ししてやるんだから)

眼鏡娘「……」テク...



札『職員室』



眼鏡娘「」コンコン

眼鏡娘「失礼します」ガラッ

図書教諭「あ、来た来た」

眼鏡娘「今日することって何ですか?職員室に集まるって珍しいですよね」

図書教諭「うん、今日はねぇ、ここに積まれた本たちを図書室まで運んでいって欲しいのよ」

ズラッ...

眼鏡娘「こ、こんなに…?」

図書教諭「そうなの!いつもなら三年生の男の子にやってもらってたんだけど、一人は部活の大会、もう一人は風邪でお休み……あと今いる図書委員ってあなただけだったのよ」

図書教諭「ごめんね…女の子一人に任せるような仕事じゃないのは分かってるんだけどね。私も手が離せなくて……ゆっくりでいいからお願いできるかしら…?」

眼鏡娘「お仕事ならやりますけど…」

図書教諭「ありがとう!後で好きな飲み物買ってあげる」

眼鏡娘「どうもです」

図書教諭「よろしくね。私は資料室にいるけど、時々様子見に来るから」スタスタ...

眼鏡娘「はい」

眼鏡娘「………」



(数十冊と積まれた本)



眼鏡娘(……ここから図書室って結構遠いよね…階も違うし)

眼鏡娘「……はぁ」

眼鏡娘(何往復で終わるかな……)




ーーーーーーー

眼鏡娘「……」テク..テク..

眼鏡娘(お、重い……)

眼鏡娘(運んでも運んでも減らないからってちょっと持ち過ぎた…)

眼鏡娘「……腕痛い……」テク..テク..

眼鏡娘「ん゙ー……」テク..テク..

ヨロ..

眼鏡娘「っ!」

バラバラッ

眼鏡娘「あー…」

眼鏡娘(重力さえなかったらこんなもの全部浮かせて持っていけるのに…!)

眼鏡娘(…どうしよう、分けて持ってこっかな)シャガミコミ



──スッ



眼鏡娘「?」

男「大丈夫?こんなに持ってたら前見えないでしょ」ヒョイッ、ヒョイッ

眼鏡娘「男くんっ!?」

男「はいはい男ですよー」ヒョイッ、ヒョイッ

眼鏡娘「なんで…」

男「なんでって、フラフラな足取りで歩いてる危なっかしい人が見えたから」

男「……ふぅ、こんなもんかな」

眼鏡娘「拾ってくれてありがと。この上に乗っけてくれれば…」

男「ん?持ってくよ?どこに行けばいいん?」

眼鏡娘「えっ!?悪いよ!図書委員でもないのに」

男「なーに言ってんの。また酔っ払いさんみたいにうろつくつもり?それに一緒に運んだ方が早く終わるよ」

眼鏡娘「あ……じゃ、じゃあ…お願いします……」

男「オーケー」ニッ



.........





眼鏡娘「……」テクテク

男「……」テクテク

眼鏡娘(男くんが隣に……)ドキドキ

眼鏡娘「……ありがとね、男くん」

男「気にしないで。俺暇だったし、眼鏡娘さんとも話したいなーって思ってたし」

眼鏡娘「!?……そうなの?」

男「イエス」

男「一昨日結構遅くまで残ってたよね?すぐ帰っちゃったけど……何かやってたの?」

眼鏡娘「あの時逃げちゃってごめん……友達を待ってただけなの」

男「友達って元気娘さん?」

眼鏡娘「うん」

男「仲良いよねぇ。幼馴染とか?」

眼鏡娘「ううん、高校から知り合ったの。って言っても私はいつも連れ回されてるだけなんだけどね」

男「あはは、見てる分には飽きないよ。昨日も学校終わってすぐ飛び出していってたっけ」

眼鏡娘「新しくできたカフェに連れてかれてました」

男「カフェ…?あぁ!あのパフェが人気の!いいね、俺も食べてみようかなって思ってたんだよね」

眼鏡娘「男くんスイーツとか食べるんだ?」

男「もち。結構甘党だからさ、そういうのに目がないんだー」

眼鏡娘「へぇ…意外かも」フフッ

男「よく言われる」クスッ



男「じゃ、そのカフェの先駆者たる眼鏡娘さんに今度案内でもしてもらおうかな」

眼鏡娘「案内……?」

眼鏡娘(…!それって)

眼鏡娘「い、一緒に行く…ってことでしょうか…?」

男「そそ。どうかな?」

眼鏡娘「え、あ……」

眼鏡娘(男くんと一緒にカフェに……もしかしなくてもそれは)

眼鏡娘(……デートなのでは)

眼鏡娘「……」プシュー

男「あれ?眼鏡娘さん?」

眼鏡娘「……その、私なんかで良ければ……」

男「ほんと!サンキュー。ああいう店、男一人で入るのも気後れしちゃってさ」

男「日にちいつにしよっか?」

眼鏡娘「えと、お任せ致します」

男「今週の土曜日とか空いてる?」

眼鏡娘「空いております」

男「なんでさっきから敬語?」

眼鏡娘「ハッ!」

眼鏡娘「いや、何でもないよ…?」

眼鏡娘(男くんとデート……デー、ト……)

眼鏡娘(……♪)



.........




ーーー職員室ーーー

図書教諭「おー!綺麗になってる!」

図書教諭「ありがとー二人とも!」

男「俺は偶々見かけただけですから」

図書教諭「大助かりだよー。眼鏡娘さん一人だとやっぱりきつかっただろうからねぇ」

眼鏡娘「ははは……まさしくその通りでした」

図書教諭「それじゃ…はい!飲み物代」スッ



(手渡される200円)



男「へ…?」

眼鏡娘「あの、好きな飲み物って…」

図書教諭「これで好きな飲み物でも買いなさいな」ニシシ

眼鏡娘「えぇ…」

眼鏡娘(現金て…)

図書教諭「でも周りには飲み物買ってもらったことにしといてね。お金渡したなんて知られたらちょっと、ね」

眼鏡娘(買ってくる手間の方がマシなんじゃ)

図書教諭「お疲れさん。今日はこれだけだから帰っていいよー。次はちゃんと男手揃えておくからご安心を!」




ーーー昇降口ーーー

眼鏡娘「まさかお金を直に渡されるなんて」クツハキカエ

男「図書委員の先生だよね?結構ゆるい人なんだ」クツハキカエ

眼鏡娘「これが労働に支払われる対価……?」

男「対価って。まあ間違ってないけども」

テクテク

男「ここで何か買ってく?」

眼鏡娘(この自販機……)

眼鏡娘「…私はいいかな。こいつにはちょっと苦い思いをさせられたから」

男「苦い思い…?」

男(ブラックコーヒーでも出てきたとか?)

男「俺は、これ飲もうかな」ピッ

ガコン! カシュッ

男「」ゴクゴク

眼鏡娘「…今日はほんとにありがとう」

男「んー?」ゴク...

男「どういたしまして。どの道あの量を一人だと暗くなる前に先生が手伝いに入ってくれてたかもだけどね」

眼鏡娘「でも男くん私よりたくさん運んでくれたし…!」

眼鏡娘「……手伝ってくれたのが男くんで嬉しかったから……」ボソッ

男「?」ゴクゴク

眼鏡娘(……今日は男くんとちゃんと話せた。いっぱい話せた。……デートの約束もしちゃった)

眼鏡娘「……」ムフー

男「あ、もしかして俺を待ってくれてる?」

男「ごめんごめん。気にせず帰っていいよ。俺の家、あっちだから」ユビサシ

眼鏡娘(私の家と逆方向…)

眼鏡娘(……でも途中までなら一緒に帰れるかな)

眼鏡娘(言うのよ私!せっかくだし一緒に帰ろうって!)

眼鏡娘「……男くんっ」

男「ん?」

眼鏡娘「あの……」

眼鏡娘「……また、明日」

男「おう。また明日なー」テフリフリ



テクテクテク...



眼鏡娘「……私のバカ」




ーーーーーーー

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘(…なんか、見慣れたはずの帰り道なのに、今日はちょっと寂しいかも……)

眼鏡娘(私にもう少し勇気があれば今も男くんと並んで歩いてたのかな)

眼鏡娘「……はー……」





眼鏡娘「──もう一度やり直せたらなぁ」





眼鏡娘(なんて、たらればたられば)

不良A「ねぇ、君今帰り?」

眼鏡娘「」ビクッ

眼鏡娘「……私ですか?」カオアゲル

不良A「そうそう」

不良B「お、君結構かわいいじゃん。俺好みかも。ねね、この後時間ある?俺らと少し遊んでかない?」

眼鏡娘「え、や……私もう帰らないといけないので……」

不良B「えー、いいじゃん!ちょっとだけでいいからさー!」ガシッ

眼鏡娘「!?…は、離してください…!」

不良A「おいおい、あんまり乱暴にするなよ?」

不良B「だーいじょうぶ。俺合意なしとか嫌な人だから」

眼鏡娘「合意、なんてしてないです……!」ググ...

不良B「絶対楽しいからさ!ほら行こ!」グイッ

眼鏡娘「やめて…!」



──スタッ、スタッ!



黒猫「」バッ!

不良B「うわっ!なんだ!?」

黒猫「フシャー!」ガリガリ

不良B「いでで!」パッ

眼鏡娘(あ…!離れた…!)

不良A「なんだこいつ!失せろ!」

眼鏡娘(猫……?)

眼鏡娘(…!今のうちに!)

眼鏡娘「」タッタッタッ!

不良B「あっ!ちょっと君!!」

黒猫「」パッ

スタッ、スタッ、スタッ...




ーーー駅前ーーー

眼鏡娘「はぁ……はぁ……」

眼鏡娘(ここまで来れば平気…?)

眼鏡娘(さすがに電車の中までは追いかけてこないよね…)

眼鏡娘「……怖かった。今度から別の道使おうかな」



テテテッ



黒猫「ナーオ」

眼鏡娘「!」

眼鏡娘「あなたさっきの…」

眼鏡娘「……」ナデナデ

黒猫「」ナデラレナデラレ

眼鏡娘「助けてくれてありがと。ちっちゃなヒーローさん」

黒猫「……」

黒猫「」ピョンッ

眼鏡娘「あ」

スタッ、スタッ、スタッ

眼鏡娘「……」

眼鏡娘「ん、次の電車来ちゃう」



スタスタスタ...




ーーーショッピングモールーーー

元気娘「──ねー!こっちのワンピとかどうかな?似合うと思う?」

眼鏡娘「元気娘ちゃん何着ても似合ってるよ」

元気娘「ちゃんと見てよー!今これにするか、そっちの明るい色のにするかで悩んでるんだからー!」

眼鏡娘「だって私、服とかあんまり分からないから……元気娘ちゃんの方が詳しいでしょ」

元気娘「それじゃ眼鏡娘ちゃん連れてきた意味ないじゃない!」

眼鏡娘「だからなんで私を連れてきたの…」

眼鏡娘(今日は日曜日)

眼鏡娘(朝目が覚めて、昨日のデートの余韻に浸りながらウトウト二度寝しそうになってたらいきなりこの子が押しかけてきて)

眼鏡娘(気付いたらここに居ました)



ーー朝ーー

眼鏡娘「……んー……」

眼鏡娘「眠いー…」ゴロン

眼鏡娘(……楽しかったなぁ、昨日)

眼鏡娘(パフェ食べてすぐ解散しちゃったけど、男くんのあんなにはしゃいでるところ初めて見れた)

眼鏡娘(ちょっと可愛かった)

眼鏡娘「……」ゴロ...

眼鏡娘(……もし、元気娘ちゃんがやった、アレを)



ーーーーー

元気娘「」ペロ

眼鏡娘「!?」

ーーーーー



眼鏡娘(男くんにやられてたら……)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「」ゴロゴロバタバタッ

眼鏡娘(今度いつ遊べるかな)

眼鏡娘「……」アオムケー

眼鏡娘「9時……もう一眠り……」



ピロリン

眼鏡娘「…?」



☆元気娘☆『起きてる??』



眼鏡娘「………」



眼鏡★娘『寝てる』

☆元気娘☆『[壁]д=) 』

眼鏡★娘『どうかしたの?』

☆元気娘☆『お出掛けしよ!買い物付き合って欲しい!(>人<)』

眼鏡★娘『いいけど、どこ行くの?』

☆元気娘☆『いつも行くデパート!時間は今からね!』



眼鏡娘「え…」



☆元気娘☆『外をご覧なさい( ̄▽ ̄)』



眼鏡娘「外…?」

ノソ...

シャッ(カーテンを開ける)

眼鏡娘「あ」



[壁]元気娘「……」ジー



眼鏡娘「…顔文字再現してる」

元気娘「」ピンポーン

眼鏡娘「え」

ハーイ アライラッシャイ

オハヨーゴザイマス! メガネムスメチャンオキテマスカー?

タブンオキテルトオモウケド...アガッテク?

ハイ!

眼鏡娘「ちょっと何であげちゃうのママ…!」

ドタドタドタッ ガチャ!

眼鏡娘「はやっ!」

元気娘「やっほ!おは……おぉ」ジロジロ

眼鏡娘「な、なに?」

元気娘「……うむ」ダキッ

眼鏡娘「ふぇ!?」

元気娘「パジャマの眼鏡娘ちゃんかわいー!」ギュー

眼鏡娘「~~……」

眼鏡娘「もー!まだ着替えてもないんだからちょっと待ってて!」

ーーーーー


眼鏡娘(さすがに元気娘ちゃんは大人しくリビングで待たせました)

眼鏡娘(ちなみにLINE名の"★"も元気娘ちゃんに入れられたものなんだけど……別に嫌じゃないから戻してないだけ)

元気娘「んー…どっちも捨てがたいけど、やっぱり明るい色の方がいいかなぁ」

眼鏡娘「うん、いいかもね。いっつも走り回ってる元気娘ちゃんにぴったり」クスッ

元気娘「むむ?それはどういう意味かな眼鏡ガール?」

眼鏡娘「眼鏡ガールってなに……ま、そのままの意味」

眼鏡娘「ちょっとそれ貸して」

元気娘「ほい」スッ

眼鏡娘「ん」

ピトッ(ワンピースを元気娘の身体に当てる)

眼鏡娘「…そうだね、こっちの方が似合ってる。元気に咲くひまわりって感じがする」

元気娘「!…本当?」

元気娘「でもひまわりって褒められてる?からかわれてる?」ハテナ

眼鏡娘「褒めてるの。私は明るい元気娘ちゃんしか想像できないから、そっちのワンピースの方がしっくりくるんだ」

元気娘「……じゃこれにしよ!」

眼鏡娘「即決だね…」

元気娘「眼鏡娘ちゃんのお墨付きをいただいたからね」ニシシ




ーーーーーーー

店員「ありがとうございましたー」

元気娘「いい買い物が出来ました」ニコニコ

眼鏡娘「それは何より」

眼鏡娘「次は何買うの?服一着だけ会計したってことは別のお店でアクセか何か?」

元気娘「何言ってるの?次は眼鏡娘ちゃんの服選びだよ?」

眼鏡娘「………はい?」

眼鏡娘「いやいやいや、私は元気娘ちゃんの付き添いに来てるだけだよね!?その前にまずそんなお金持ってきてないし…!」

眼鏡娘「……あと、恥ずかしい……」

元気娘「大丈夫大丈夫!試着するだけならタダだしさ!恥ずかしいのなんて最初だけだよー。服選び、段々楽しくなってくるから!」

元気娘「今度は私が眼鏡娘ちゃんにぴったりなコーディネートを見繕ってあげる」ワキワキ

眼鏡娘「その手の動きやめなさい……え、本当にするの?」

元気娘「」ニッコリ

ガシッ

眼鏡娘(あ、なんかデジャヴ)

元気娘「レッツゴー!」ピューン

眼鏡娘「せめて歩いて連れてってーー!」ツレサラレー



.........





眼鏡娘「うぅ…これ変じゃない…?」ワンピース

元気娘「全っ然変じゃない!かわいい!」

元気娘「さっき迷ってたやつ、眼鏡娘ちゃんに似合うんじゃないかなーってちょっと思ってたんだよね~」

元気娘「私の見立てに間違いはなかった!」



.........





眼鏡娘「ど、どう?」クールビューティー

元気娘「わー……」

元気娘「すごい!大人!これはかわいいというより綺麗の部類に入りますなー」

眼鏡娘「……ごきげんよう、皆様」キリッ

元気娘「あはは!それだとどっちかっていうとお嬢様な感じ!」



.........





眼鏡娘「……これ、なんか違くない……?」ネコミミスタイル

元気娘「」パシャッ

眼鏡娘「あっ!?何撮ってるの!!」

元気娘「えっへへー。手が勝手に」テヘ

眼鏡娘「今すぐ消して──」スッ

元気娘「ストップ!…そんな格好で試着室から出ていいのかなぁ?」ニヤニヤ

眼鏡娘「ぐっ……」

眼鏡娘「後で覚えといてよ…」



.........







ーーー夕方ーーー

元気娘「んー…!たーのしかったー!」テクテク

眼鏡娘「結局昼過ぎから普通に遊んでた……」テクテク

元気娘「いいじゃんいいじゃん。けどまさか眼鏡娘ちゃんがカラオケ初めてだったなんてねー」

眼鏡娘「だって今までカラオケ行く機会なんてなかったんだもん……元気娘ちゃんは歌すっごく上手だし…」

元気娘「眼鏡娘ちゃんだってかわいかったよ?特に最初に歌ってた、確か……ハロー、プr」

眼鏡娘「あれは忘れてっ!何歌えばいいのか分かんなくて入れちゃっただけだから!」

眼鏡娘「もう、今日は遊ぶというか遊ばれてばっかりだった気がする……」

元気娘「……もしかして、迷惑だったかな…?朝早くからいきなり押し掛けたり……」

眼鏡娘「……」

眼鏡娘「そんなことない。楽しかったよ」

眼鏡娘「なんだかんだこんな私といつも一緒に居てくれて。元気娘ちゃんのおかげで最近笑うことが多くなった気もする」

眼鏡娘「ありがとうね」ニコッ

元気娘「……!」パァァ

元気娘「眼鏡娘ちゃーん!!」ダキッ!

眼鏡娘「ちょっ、こんなところで抱き着かれても困るんだけど…!」

元気娘「知りませーん!えへへー」

眼鏡娘「歩きづらいし…」

眼鏡娘(……たまには好きにさせてあげようかな)



眼鏡娘「………あ」ピタッ

元気娘「おっとっと」ヨロ...

元気娘「どうしたの?」

眼鏡娘「……この道……」

眼鏡娘(あのときの……)

元気娘「…怖いって顔してるよ。ここで何かあったの?」

眼鏡娘「……ちょっと前にね、変な男の人二人組に絡まれて、どっか連れてかれそうになったの。それからここを通るのが少し怖くて…」

元気娘「!?そんな……大丈夫だったの!?」

眼鏡娘「うん。そのときは親切な猫ちゃんが助けてくれたから」

元気娘「猫ちゃん…?」

眼鏡娘「何ともなかったよ。その人たちともそれ以来出くわしてないし」

元気娘「ならよかったけど……」

眼鏡娘(………)

元気娘「……」ギュ

眼鏡娘「え…?」

元気娘「手、ちょっと震えてる」

元気娘「そんなことがあったら誰だって怖くなるに決まってるよ。無理しないで」

元気娘「大丈夫!私が居るから!今は私が眼鏡娘ちゃんを守ってあげる番だから!」

眼鏡娘「元気娘ちゃん……」

眼鏡娘「うん、それじゃあよろしくね」

元気娘「よろしく任されました!」エヘヘ

元気娘「あ!そうそう忘れるところだった」

ガサゴソ

元気娘「…あった」

元気娘「はいこれ!」スッ

眼鏡娘「これは…?」

元気娘「プレゼントだよ!」

眼鏡娘「なんでいきなり…」

元気娘「いきなりじゃないよ、忘れたの?今日眼鏡娘ちゃんのお誕生日じゃん!」

眼鏡娘「──!」

眼鏡娘(そういえば……)



元気娘「なんて、実は私もつい昨日まで忘れてたんだけどねー。だから今朝思い出して、急いで眼鏡娘ちゃんを連れ出しに来たのです。ちょっとでもいい思い出になってくれればなーって」

眼鏡娘「……中、見てもいい?」

元気娘「もちろん!」

眼鏡娘「」ゴソゴソ

眼鏡娘「髪留めと、服…」

眼鏡娘(…!これ、さっき試着したワンピースだ)

元気娘「あんまり意外性なくてごめんね。そのワンピース着た眼鏡娘ちゃん私好きだったからプレゼントにしちゃった」

元気娘「でもでも!そっちの髪留めは正真正銘私だけで選んだものだよ!」

眼鏡娘(青の髪留め……私の髪に合いそうな色)

眼鏡娘「…ありがとう、元気娘ちゃん。すっごく嬉しい」

眼鏡娘「私も、元気娘ちゃんのこと大好き」

元気娘「!!」

元気娘「やったぁ!」ピョンッ

眼鏡娘「ふふっ」

眼鏡娘(本当に、この子のおかげで私の今はとっても充実してる。最初の頃は面倒そうな人に目付けられたなんて思ってたけど、今ではこの子がいない高校生活なんて想像も出来ない)

眼鏡娘(強いて最近の悩みと言えば……)

眼鏡娘(……男くん……)

元気娘「ねぇ眼鏡娘ちゃん」

眼鏡娘「ん?」

元気娘「私たちさ、そのさ……」





元気娘「ずっと友達でいようねっ」





眼鏡娘「…!」

眼鏡娘(何言ってるのかな、この子は。そんなの……)

眼鏡娘(こっちからお願いしたいくらいなのに)

眼鏡娘「うん、そうだね」ニコッ




ーーー数日後 図書室ーーー

眼鏡娘「……誰も来ない」

眼鏡娘(まあこのご時世、本を借りに来る人なんてそうそういないよね)

眼鏡娘(今日は普通に図書委員としての仕事でよかった。前は人手不足の影響で肉体労働に駆り出されたから……社会の縮図を見た気がした)

眼鏡娘(……けど前のときは、男くんが手伝ってくれた)

眼鏡娘(男くんとは近頃教室でも少し話をするようになった。また前みたいにどこか出掛けたりとかはしてないけど、会話が出来るだけでも私の胸はあったかくなる…)

眼鏡娘(今日なんて元気娘ちゃんのくれた髪留め付けてきたら、ちゃんと気付いてくれた)

眼鏡娘(……かわいいって、言われちゃった)

眼鏡娘「……」ニマニマ

眼鏡娘(やっぱり私好きなんだなぁ、男くんのこと)



ガララ



図書教諭「や、元気にやってるー?」

眼鏡娘「ぼちぼちです」

図書教諭「利用者は……やっぱいないか」

眼鏡娘「先生はどうしたんですか?生徒の代わりに図書室使いに来たんですか?」

図書教諭「いやー?眼鏡娘さんの働きぶりを見に来たんだよ。そしておめでとう、合格です!今日はもう終わりにして帰ってよし!」

眼鏡娘「図書室開放時間ってまだ1時間はありましたよね…?」

図書教諭「いーのいーの。どうせ誰も来ないんだから。図書室が空いてる時間すら知らない子の方が多いだろうし」

図書教諭「それに、私も早く帰れる」

眼鏡娘(それでいいの?先生……)

図書教諭「さ、帰った帰ったー。浮いた時間で好きなこと出来るかもよ?彼氏とデートとか」ニヤリ

眼鏡娘「か、彼氏なんていません」

眼鏡娘(……まだ)

眼鏡娘「…そんなに言うなら帰りますけど、何か言われたら先生の言う通りにしただけって言いますからね?」

図書教諭「う……まあ、教頭以外なら……」

図書教諭「教頭はネチネチうるさいんだよね……だからそこだけは誤魔化して!ね!?」

眼鏡娘「……そうそう会いませんし、平気だと思いますけど、一応気にしといてあげます」

図書教諭「さすが話が分かる!」

眼鏡娘「では先生、さようなら」

図書教諭「はーい、さよならー」




ーーー電車内ーーー



ツギハー ニホンバシー



眼鏡娘「……」スマホイジリー

眼鏡娘「……」スッスッ

眼鏡娘(……!)



『夏にオススメのデートスポット十選!!』



眼鏡娘「………」

眼鏡娘「」ススッ



プシュー

ゴジョウシャアリガトウゴザイヤシター



眼鏡娘(お祭り……花火……海……)

眼鏡娘(いつもしないようなことばっかり……)

眼鏡娘(でも男くんと一緒に行けたら)

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(……決めた)

眼鏡娘(月末…丁度夏休み中にやってるこの夏祭り。これに男くんを誘おう)

眼鏡娘(前に買ってもらった浴衣着て、色んな屋台周って、あんまり混んでないらしい神社の境内から花火見て、それで)





眼鏡娘(男くんに告白しよう)





眼鏡娘「……」ドキ..ドキ..

眼鏡娘(私は、変わりたい)

眼鏡娘(このままずっと引っ込み思案で厭世的な自分でいるのは嫌)

眼鏡娘(せめて昔みたいに、自分に素直な私に……)

眼鏡娘(……大丈夫。もう、ちょっとずつ変わってきてるんだから)

眼鏡娘「……」カミイジリ



ーーーーー

元気娘「──ね!この後一緒に遊びに行こ!」

ーーーーー



眼鏡娘(…あの子のおかげで)

眼鏡娘(この髪留めが私に勇気をくれる。そんな気がする)

眼鏡娘(……男くん、いつ誘おうかな)



「──へぇ、そりゃまた随分胡散臭い噂話だなー」



眼鏡娘「!」カオアゲル

眼鏡娘(この声……男くん…!)



男「けどま、お前そういうの信じそうだよな」

元気娘「バカにしてるな!?証拠だってあるんだから!」

男「ほー、どんなん?」

元気娘「私のじゃないけど……これ。スマホのスクショ」スッ

男「どれどれ…」



眼鏡娘(元気娘ちゃんも一緒…?)





元気娘「ほらここにあるでしょ?見たことないアプリ」

男「これが"願いを叶えてくれるアプリ"?……確かに検索しても引っかからないけど、どうせ合成写真とかの類だろ。今の時代こんな加工いくらでも出来るしな」

元気娘「もー!男って本当ロマンがないなー!」

男「お前にゃ言われたくない台詞だ」



眼鏡娘(なんかすごく仲良さそう…)



プシュー

ゴジョウシャアリガトウゴザイヤシター

元気娘「…あ、ここだよ降りるとこ!」

男「そうだったスルーするとこだったな」

元気娘「行きましょー!」ヒシッ

男「おいおいここで腕組むなって」

元気娘「いいじゃん別にー」





元気娘「──付き合ってるんだしさ!」





眼鏡娘(……………え)



男「うちの生徒に見られたら絶対──」テクテク...

元気娘「むしろ言いふらしちゃって──」テクテク...



眼鏡娘(………え………?)




ーーーーーーー

眼鏡娘「……」トボトボ

眼鏡娘「……」トボトボ

眼鏡娘(………)

眼鏡娘(……………)

眼鏡娘「……」トボトボ

黒猫「」テクテク

眼鏡娘「……」トボトボ

黒猫「」テクテク

眼鏡娘「……あなた……」チラリ

黒猫「……」ミアゲル

眼鏡娘「……ごめんなさい。今あなたと遊んであげる元気はないの」トボトボ...

黒猫「……」



黒猫「………」




ーーー自室ーーー

眼鏡娘「………」ゴロン...

眼鏡娘「………あー………」

眼鏡娘(……そうだよね……)

眼鏡娘(所詮私なんて……)

眼鏡娘(……男くんの隣には、元気娘ちゃんみたいに明るい子の方が相応しい)

眼鏡娘(そんなの、分かってた)

眼鏡娘(少し相手にしてもらえただけで舞い上がって、一人勝手に告白しようだとか盛り上がって……バカみたい)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(……どうしようもなかったの。私が入り込む余地なんてなかったんだって)

眼鏡娘(そう思わせてくれてもいいじゃない……)

眼鏡娘「……やっぱり、嫌い」

眼鏡娘(重力なんて嫌い)

眼鏡娘(こんなに沈んだ気持ちにさせられる……)

眼鏡娘(もうこんな世界みんな浮いちゃえばいいのに)





ヴー!



眼鏡娘「…?」

眼鏡娘「なんだろ…メール…?」スッ、スッ...



[受信メール]
━━━━━━━━━━━━━━━
from:
sub:アンケートにご協力ください
━━━━━━━━━━━━━━━
Q. 嫌いなものは何ですか?


━━━━━━━━━━━━━━━



眼鏡娘「……なにこれ」

眼鏡娘(………)

眼鏡娘「」スッスッ、スススッ



[受信メール]
━━━━━━━━━━━━━━━
from:
sub:アンケートにご協力ください
━━━━━━━━━━━━━━━
Q. 嫌いなものは何ですか?
重力。

━━━━━━━━━━━━━━━



眼鏡娘「……」

スッ(メール送信)

眼鏡娘「………はぁ」パタッ

眼鏡娘(……もうどうでもよくなってきちゃった)

眼鏡娘(今日あったことも、明日が来ることも、全部…)

眼鏡娘(どうせ私は、この重力の下でなるようにしかならない日を過ごしていくだけ)

眼鏡娘(昔から、変わらない……変えられない……)

眼鏡娘(………空っぽな私の……生き様………)ウトウト



眼鏡娘「……」スースー...




ーーーーー

「──それでね、わたしって必要とされてないんじゃないのかなって思っちゃうの」

──そんなわけないじゃん

「──え…?」

──だってまず私が必要としてるもん。あなたの笑った顔。…ね、ニッコリ笑ってみてよ

「──……こーお?」

──プッ…あはは!なんかそれこわいよー!

「──ひどーい!もうしてあげないもん!」

──ごめんってば。バカにする気はなくて──



.........



ーーーーー


ーーーーーーー



──ポトッ



眼鏡娘「……ん……?」

眼鏡娘(私、いつの間に寝て……って)

眼鏡娘「……」キョロ..キョロ..

眼鏡娘(………学校?)

眼鏡娘(あ、消しゴム落ちてる)

眼鏡娘「……」ヒロイアゲ

眼鏡娘(…おかしいな、いつ登校したんだっけ…?)

眼鏡娘(それに教室にいるのは私と)



男「」スースー...



眼鏡娘(……男、くん……)ズキッ

ピロリン

眼鏡娘「!」

眼鏡娘(元気娘ちゃんからのLINE…)

スッ..スッ..




☆元気娘☆『ごめん!先帰ってて!まだ委員の仕事長引きそう_(:3 」∠ )_』



眼鏡娘「……え、これって……」

眼鏡娘(少し前にも同じこと送ってきてたよね。確か一ヶ月くらい前の………!?)

眼鏡娘(あれ……?スマホ壊れたかな……)





眼鏡娘(日付、一ヶ月前に戻ってる)





眼鏡娘「……設定とかいじったっけ?」

眼鏡娘(でもやっぱり変だ……元気娘ちゃんに買い物誘われた時のトークがなくなってる。消した覚えなんてないのに)

男「……んぁ…」パチッ

男「やば、寝てた…ってこんな時間か」

男「ん?」チラッ

眼鏡娘「……」

男「あれ、眼鏡娘さんももしかして寝過ごしちゃったの?」

眼鏡娘「男くん、今日って何月何日だっけ?」

男「へ?そりゃ、カレンダー見れば分かる──」

眼鏡娘「教えて」

男「……6月18日だけど」

眼鏡娘「!!」

眼鏡娘(なんで……昨日は7月後半、もうすぐ終業式だったはずじゃ……)

眼鏡娘(どういうこと…?)

眼鏡娘「……」

男「眼鏡娘さん?その、大丈夫?」

眼鏡娘「」タッタッタッ...

男「えっ」

男「行っちゃった……」




ーーー昇降口ーーー

眼鏡娘「……よく分かんない」テクテク

眼鏡娘(ニュースとかSNSとか調べてみたけど、今日本当に7月じゃないみたい)

眼鏡娘(というより、7月がこれからやって来る、夏本番だ…みたいな話題ばっかり…)クツハキカエ

眼鏡娘(信じられないけどこれって……)

眼鏡娘「……時間が巻き戻ってる」

眼鏡娘(そうとしか考えられない。世界規模のドッキリを仕掛けられてるっていうんじゃないなら、一ヶ月前の日に戻ってきちゃったんだ…!)

テクテク

眼鏡娘「…とりあえず、落ち着いて考えよう」ガサゴソ

眼鏡娘「なんか変な汗かいてきちゃった」チャリンチャリン

ピッ ガコン!

眼鏡娘「ふぅ……そもそもこれって夢じゃないよね…?」グ...

眼鏡娘「ん…やけに固いフタ…」グググ...

眼鏡娘(…あ、これ)

カシュッ



──ツルン



眼鏡娘「っ!」

ボトッ

トポトポトポ...

眼鏡娘「」サッ!

眼鏡娘「うぅ…あの時も同じことしてたのに。学ばない私…」

眼鏡娘(前とった行動と同じ行動をすれば同じことが起きる……ってこと?)



ガサッ



黒猫「ナーオ」トコトコ

眼鏡娘「!…あなた、私を助けてくれた…」

眼鏡娘(あれ、まだこの時は助けてもらってないんだっけ)



黒猫「……」ジッ...

黒猫「」ペロペロ

眼鏡娘「そんなの舐めたらダメだよ!」ダキアゲー

黒猫「ニャー…」

眼鏡娘「ジュースなんて、動物が飲んだら身体壊しちゃうんだからね。分かる?」

黒猫「ミャー」

眼鏡娘「まったく……喉が渇いてるの?」

黒猫「ミャミャー」

眼鏡娘「何か飲みたい?」

黒猫「ニャ」

眼鏡娘「……私の言ってること分かるの?」

黒猫「ミャー」

眼鏡娘「……」

黒猫「……」

眼鏡娘「……にゃー」

黒猫「ニャー」

眼鏡娘「ふふっ」

眼鏡娘「お水買ってあげるから、それで我慢してね」チャリンチャリン

ピッ ガコン!

眼鏡娘「今度は落とさないように…」カシッ

眼鏡娘「よし」



(フタに水を注ぐ)



眼鏡娘「はい、どうぞ」スッ

黒猫「」ペロペロ

眼鏡娘「…おいしいですかー?」

黒猫「」ペロペロ

眼鏡娘「そんなに喉渇いてたの?」

黒猫「」ペロッ...

黒猫「……ニャ」

眼鏡娘「はいはい。慌てなくてもまだたくさんあるからね」トポトポ

黒猫「」ペロペロ

眼鏡娘「……」

黒猫(CV:眼鏡娘)「いやぁたまらんにゃー。生き返るにゃー」ペロペロ

黒猫(CV:眼鏡娘)「まさにオアシスだにゃー。お水を恵んでくれた優しい女の子に感謝しなくちゃいけないにゃ!」ペロペロ

眼鏡娘「なーんて」フフッ





「…ありがとうだにゃー」ボソッ



眼鏡娘「」バッ!

男「」ニヤニヤ

眼鏡娘「……男くん」

男「どもども。お水を恵む優しい眼鏡娘さん」ニヤニヤ

眼鏡娘「…いつからいたの?」

男「んー、そこの猫ちゃんが茂みから出てきたところ辺りかな」

眼鏡娘「ほとんど最初からじゃない!」

眼鏡娘(うー…見られた見られた…あんな恥ずかしいところぉ……)

眼鏡娘「……忘れて」

男「ん?」

眼鏡娘「今さっき見たこと聞いたこと、全部忘れて」

男「えー、そんな無茶な……」

眼鏡娘「」ジー

男「…安心してよ!俺口堅いから、絶対言いふらしたりしないって」

男「このことは俺と眼鏡娘さんだけの秘密にするからさ。それで勘弁してくれにゃいかなー?……ンフッ」

眼鏡娘「~~!」

眼鏡娘「……頭に強い衝撃加えると記憶が飛ぶってほんとなのかなぁ…」ユラァ...

男「わー!待った待った!からかって悪かったよ!言いふらしたりしないのは本当だからその重そうなカバン振り上げるのはやめて!」

眼鏡娘「……」

眼鏡娘「なんで私を見てたの?」

男「ちょっと心配で、追いかけてきたんだ」

男「眼鏡娘さん、さっき教室で日付がどうのとか混乱したり急に出てったりしたから、何かあったのかなって」

眼鏡娘(!…心配してくれてたんだ。やっぱり優しいな、男くん)

眼鏡娘(でも……)

男「そしたら猫ちゃんと戯れてる女子がいたもんだからつい観察を──」

眼鏡娘「大丈夫だよ。さっきは少し寝ぼけてただけだから」

男「…そう?」

眼鏡娘「うん。わざわざありがと」

眼鏡娘「けど、男くんのその優しさはさ……彼女さんに向けてあげた方がいいと思うよ」

眼鏡娘(私なんかじゃなくて、男くんにぴったりなあの子に…)



男「……へ?」

男「俺、彼女なんていないけど」

眼鏡娘「……?……!?」

眼鏡娘「そう、なの…?」

男「あ、あぁ…」

眼鏡娘(どうなってるの…嘘ついてるとは思えないし……このときはまだ付き合ってないってこと?)

眼鏡娘(……だったら)

眼鏡娘「男くん」

男「おう?」

眼鏡娘「私は怒ってます」

男「え」

眼鏡娘「背後から忍び寄って女の子の恥ずかしいところを盗み見ていた、その悪行に」

男「誤解を招く言い方じゃありませんかね」

眼鏡娘「これは何かお詫びをしてもらわないといけないと思うんです!」

男「あ…そゆこと」

男「えーと、俺は何をすればいいですかな?お嬢さん」

眼鏡娘「ふふん。そうだなー…じゃあ、最近オープンしたっていうカフェでごちそうしてくれたらいいかな」

男「お、それ聞いたことあるよ。確か人気のパフェがあるんだよね」

眼鏡娘「うん。それ頼もうかなって」

男「なら丁度いいや。俺もそのパフェ食べたいと思ってたから。一緒に行こっか」

眼鏡娘「男くん結構甘党なんだっけ?」

男「そうなんだよね~。よく分かったね」

眼鏡娘「ふふ、そんな話を聞いたことがあったから」

眼鏡娘(男くんから直接ね)



男「ほぉ……で、今から向かう?」

眼鏡娘「今日はやめときましょう。もう遅いし、混んでるかもしれないし」

眼鏡娘「明日はどう?学校終わってすぐ行けば、多少混んでても入れると思うの」

男「いいね。明日特に用事ないし、そうしよっか」

眼鏡娘「それじゃ決まりね。さーて、どれくらい頼もうかなー」ワクワク

男「え!?…あの、俺の懐事情も考えてくださると嬉しいのですが…」

眼鏡娘「冗談♪私がそんながめつい人に見える?」

男「……猫ちゃんに水を恵んでアテレコしちゃうような人だもんなー。外道じみたことするわけないよな!」

眼鏡娘「……諭吉さんを使ってもらうことになりそうね?」

男「ジョークです。勘弁してください」

眼鏡娘(私、こんなに物怖じせず男くんと話せてる)

眼鏡娘(自分からデートに誘えたし、もっと積極的に勇気出していけば)

眼鏡娘(……私にだってチャンスが……)

眼鏡娘「……!」グッ




ーーー翌日 学校ーーー



ガラッ



眼鏡娘「……」テクテク

男「おはよ、眼鏡娘さん」

眼鏡娘「あっ、おはよう」

眼鏡娘(…♪)

眼鏡娘「」スッ(自席に着く)

元気娘「待ってたよー!」テテテッ

元気娘「眼鏡娘ちゃん、昨日はごめん!」

眼鏡娘(……)

眼鏡娘「…いいよいいよ。委員のお仕事が大変なのは分かってるから。私も長引くことあるし」

元気娘「それはそうなんだけど……結構待たせちゃったよね…?」

眼鏡娘「大したことないよ。その間に宿題進めてたおかげで昨日は家に帰ってから伸び伸び出来たくらいです」

元気娘「そうなの?」

眼鏡娘「うん。だから気にしないで。また時間合うとき一緒に帰ろ」

元気娘「眼鏡娘ちゃん……」ウルウル

元気娘「天使!」

元気娘「あ!じゃあさじゃあさ!早速今日出掛けたいとこ思い付いたから行こ!この辺りに最近出来たって──」

眼鏡娘「あー、ごめんね。今日は他の人と用事が入っちゃってて、行けないの」

元気娘「そうなんだ……残念」



ガララ



先生「朝の会始めるぞー」

眼鏡娘「ほら、先生来たよ。席着かないと」

元気娘「また誘うから一緒に行こうね!絶対ね!!」テテテッ

眼鏡娘「はいはい」

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……」チラリ

男「……?」チラッ

眼鏡娘「……」テフリフリ

男「??」フリカエス

眼鏡娘(楽しみだな…)




ーーー放課後 カフェーーー

店員「お待たせしました」

ゴトッ ゴトッ

男「おぉ…」キラキラ

眼鏡娘「来た来た」

眼鏡娘(食べるのが初めてじゃなくても、涎って勝手に出てくるものね)

男「こいつはいいな…!メニュー見た時から旨そうだとは思ってたけど、実物はこれまた…」ゴクリ

男「なあなあ!早く食べようぜ!」

眼鏡娘(相変わらずはしゃいじゃって…可愛いなー)

眼鏡娘「慌て過ぎてこぼさないようにね」

男「んな勿体ないことしないって!」

男「じゃ…」

眼鏡娘・男「「いただきます」」

男「」パク

眼鏡娘「」アム

男「んー!さすがだ!この甘くてクリーミーながらしつこ過ぎない味わい……そうこれはまるで……とにかく旨い!」パクパク

眼鏡娘「ね。おいしい…」

男「今日来といて正解だったね~。平日なだけあってそれほど並ばずに入れたし、眼鏡娘さんて意外とこういうのに詳しいんだ?」

眼鏡娘「たまたまだよ。このカフェのことだって前に小耳にはさんだだけだから」

男「ほーん」パクパク



眼鏡娘「……クスッ。それよりさ、男くん」

眼鏡娘「頬、リスみたいになってるよ」

男「へ?ひょんはにおはひぃかおひはっへう?」モゴモゴ

眼鏡娘「ンッフフ…飲み込んでから喋りなよ。パフェってそんなに口に詰め込むようなものでもないでしょうに」

男「おいひふへふい…」モグモグ

眼鏡娘「…あと、顔にクリーム付いてる」

男「」ゴクン

男「どこどこ?」

眼鏡娘「じっとしてて」グイッ(身を乗り出す)



チョイッ



男「!?」

眼鏡娘「取れたよ」ニコッ

男「…あ、ありがと」

眼鏡娘「もう、子供みたい」

男「俺らまだまだ子供な歳だよ」

眼鏡娘「……」ジッ

男「……眼鏡娘さん?」

眼鏡娘「……」

眼鏡娘「」フキフキ

男(びっくりした……指で取ったクリーム舐めるのかと思った……)

眼鏡娘「ん?」キョトン

男「あ、いや何でも」




ーーー翌日ーーー

「──起立、気を付けー、礼」

「「「さようなら」」」

ガタッ ザワザワ

眼鏡娘(今日の図書委員の仕事は職員室で、か……確かアレだよね……)

眼鏡娘(あの肉体労働……)

元気娘「眼鏡娘ちゃーん!今日はこの後空いておりますかなー?」

眼鏡娘「…空いてないよー。今日は図書委員があるから、それで遅くなっちゃう」

元気娘「え~、そんなのパパッと終わらせられないの?」

眼鏡娘「……終わらせられるかも」

元気娘「ほんと!!」

眼鏡娘「今日の仕事はいつもと違って何冊も本を運ぶだけの力仕事らしいんだよね。…きっと元気娘ちゃんが手伝ってくれたら何倍も早く終わるんだろうなー」

元気娘「え……」

元気娘「…わ、分かった!それで眼鏡娘ちゃんと遊べるなら──」

眼鏡娘「なんて冗談冗談。元気娘ちゃん、図書委員でもない女の子なんだから、無理して肉体労働なんてさせられないよ」

眼鏡娘「今日は先に帰ってて」

元気娘「あ……でも」

眼鏡娘「いいからいいから。誰か力のありそうな先生とかに手伝ってもらうつもりだから」

元気娘「そう……?」

元気娘「…じゃあまたね!」テクテク

眼鏡娘「」テフリフリ

眼鏡娘「………」

テクテク

眼鏡娘「おーとーこーくん♪」

男「はい?」

眼鏡娘「ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど……」




ーーーーーーー

男「手伝って欲しいこと……図書委員の仕事だから何かと思ったら……」テクテク

眼鏡娘「本当に助かるよ男くん。先生もすごく有難いって言ってくれてた」テクテク

男「…まあ、眼鏡娘さん一人でこれをやるなんて相当きつかったろうから、どっちにしろ手伝ってたかもしれんなー」

眼鏡娘(…その通り。前のときは見兼ねた男くんが途中から助けてくれた)

眼鏡娘「そういう優しいところ好きだなー……」ボソッ

男「ん?」

眼鏡娘「な、なんでもない!」

男「……けどさ、ちょっと驚いてるんだ、俺」

眼鏡娘「何に?」

男「ここ何日か眼鏡娘さんと話したり遊んだりしてて、眼鏡娘さんに対する印象がすっかり変わっちゃったから」

男「もっとこう、物静かで大人しい…みたいなイメージだったんだよね」

眼鏡娘「……それは……」

眼鏡娘(実は、私自身も驚いてる)

眼鏡娘(今までの私なら絶対に言い出したりしないようなデートの誘いとか、クリームを指で取ったりとか、自分からグイグイいったりとか……)

眼鏡娘(とにかく、悪い方にじゃないけど、変わった気がする)

眼鏡娘(私は嫌な変化じゃない……でも……)

眼鏡娘「……おかしい、かな」

男「いーや?むしろ嬉しいかも」

眼鏡娘「え…?」

男「なんか俺しか知らない眼鏡娘さんの本性…みたいな感じで、ちょっと特別感あってさ」ヘヘッ

男「色んな眼鏡娘さん見てるの俺好きだし」

眼鏡娘「─!」ドキッ

眼鏡娘(~~~)

眼鏡娘「…そ、そんなこと言ったら、私だって男くんがちっちゃい子みたいにはしゃいでる姿とか、可愛いなーって思って見てたよっ」

男「えー?それとこれとは少し違くないかなー」

眼鏡娘「違いませんー。男くんが歳に似合わない行動を──」

男「──。───、─?」



.........




ーーー昇降口ーーー

男「いやはやびっくりしたよ。好きな飲み物買ってくれるの意味がまさかこういうことだったとは」クツハキカエ

(100円硬貨二枚)

眼鏡娘「あの先生結構大雑把なところあるからね…」クツハキカエ

男「これってやっぱりバレるとまずいのかな」

眼鏡娘「どうだろう。少なくとも褒められたことじゃないんだろうけど」

テクテク

男「ここで何か買ってく?」

眼鏡娘「……ん、私これ」チャリンチャリン

ピッ ガコン!

男「何だかんだ眼鏡娘さんも甘いジュースとか好きだよね」チャリンチャリン

ピッ ガコン!

眼鏡娘「女の子は甘いもので出来てるって聞いたことない?」カシュッ

男「おーおー、またメルヘンチックなこと言っちゃって」カシュッ

ゴクゴク

男「……あ゙ぁ!労働の後の一杯は最高だな!」

眼鏡娘「なんで急におじさんみたくなってるの」クスッ

眼鏡娘(……)

眼鏡娘「……ねぇ、いつもありがとう」

男「いつも?」ゴクゴク

眼鏡娘「!いやその…いつも私に付き合ってくれてさ。心配してくれたり一緒に出掛けてくれたり。今日なんか二つ返事で引き受けてくれたから」

男「なんだそんなこと。全部俺がしたいからやってるだけだよ。大仰に感謝されるとかえって恥ずかしいって」

眼鏡娘(したいからやってる……)

眼鏡娘(♪)

眼鏡娘(そうだ!前は言えなかったけど今なら……)

眼鏡娘「……あの、男くん」

男「ん?」

眼鏡娘「この後、一緒に帰らない?」

眼鏡娘(言えた!)

男「オーケーだけど、俺ん家あっち方向だよ。眼鏡娘さんは?」

眼鏡娘「私は向こうの駅で電車に乗るの」ユビサシ

男「なぬ?逆方向じゃん」

眼鏡娘「平気!途中までなら男くんについて行っても大して遠回りにならないから」

男「そうなん?…ならそこまで一緒に行くか」

眼鏡娘「うんっ」

男「ちょいと待ってな。俺これ飲み終わってから行っちゃいたいからさ」ゴクゴク

眼鏡娘「いくらでも待ちますよー」




ーーーーーーー

男「──じゃあ本が好きだから図書委員になったわけじゃないんだ」テクテク

眼鏡娘「うん。ただ一番楽そうだからって理由で選んだだけ」テクテク

男「今日のは楽って言えるのかなぁ」

眼鏡娘「……ああいう仕事もあるなんて知らなかったの。でもそういうものでしょ?実際やってみないと分からないことばっかり」

男「ま、そうだな。けど多分クラスの奴のほとんどが、眼鏡娘さんのこと本の虫だと思ってるんじゃないかなー」

眼鏡娘「…イメージって大きいよね。私がこんななりだからっていうのもあると思うけども」

男「眼鏡娘さんの?……ちょっとこっち向いてみて」

眼鏡娘「?」

男「ふむ……」ジッ...

眼鏡娘「えと…何か変?」

男「」スッ



ヒョイッ(眼鏡を取る)



眼鏡娘「…!?」

男「うむ、やっぱり」

眼鏡娘「ちょっ、やっ…!何するの返して…!」アタフタ

男「えー?そんなになんも見えない?」

眼鏡娘「そ、それもあるけど…!」

眼鏡娘(裸眼姿なんて、お化粧したことないけどすっぴん見られてるみたいで恥ずかしい…!)

男「もうちょっとだけ!ね?」

眼鏡娘「ね?じゃなくて早く──」

男「眼鏡外した顔もかわいいからさ」

眼鏡娘「っ」

男「試しに一日はずして学校に来てみなよ。図書委員のイメージ消えるどころか、謎の美少女転校生みたいな感じで話題になりそう」ククッ

眼鏡娘「………//」

男「……あれ、赤くなってる…?」ニヤニヤ

眼鏡娘「!!」

眼鏡娘「返してっ」シュバッ

男「おっと」

眼鏡娘「もー……男くんって結構意地悪なところあるよね」ジトー

男「あっはは、ごめんごめん。眼鏡娘さんからかい甲斐があるからつい」

眼鏡娘「どういう意味なのそれ……」

眼鏡娘(……でも嫌な気はしない)

眼鏡娘「……あ」ピタ

眼鏡娘「私この道で曲がらないと」

男「おう、そっか。ならまた明日だな」

眼鏡娘「うん、また明日」

男「…美少女転校生、楽しみにしてるよ!」テフリフリ

眼鏡娘「しないからね!」テフリフリ

眼鏡娘「……」テフリフリ...



眼鏡娘「………」

眼鏡娘「」クル



テクテク



眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘(………)

眼鏡娘(………ふふ)

眼鏡娘「ん~~!」テクテク

眼鏡娘(すごい……すごいすごい!)

眼鏡娘(私今すごく幸せ…!)

眼鏡娘(今までずっと見てることしか出来なかった男くんと、あんなに近い距離でお話して、イタズラされたりして……)

眼鏡娘(皆が過去をやり直したいって言う気持ちが分かるなー。こんなに理想の未来が掴めるなら誰だって願っちゃうよね)

眼鏡娘(あー!何の神様か分からないけど、感謝しなくっちゃ)

眼鏡娘「♪」テクテク

眼鏡娘(男くんと次会えるのは明日かー。前の時は土曜日まで何もなかったけど──)

眼鏡娘「」テク...

眼鏡娘(…あれ、待って、この後って確か──)





不良A「ねぇ、君今帰り?」





眼鏡娘「」ビクッ

眼鏡娘(……そう、だった)



不良A「おーい、聞こえてる?」

不良B「無視されてんじゃねーの?お前」ハハッ

眼鏡娘「……ごめんなさい、私急いでるので」ササッ

不良B「そうつれないこと言わないでさ、少しくらいお話してくれてもいいじゃん」ガシッ

眼鏡娘「っ……やめてください」キッ

不良B「お、君結構かわいいじゃん。俺好みかも。ねね、この後さ、少し時間ちょうだいよ。お茶しない?その辺のカフェとかで」

眼鏡娘「…そんな古臭い台詞で付いてく人なんかこの時代にいませんよ」

不良A「ぷっ、ははは!言われてんの!お前そういう誘い文句ヘッタクソだもんな!」

不良B「チッ…んなでけー声で笑うな、俺だって気にしてんだよ」

不良B「でもさ、君と遊びたいっていうのは本気だよ?おちょくってると思われたのなら傷つくなぁ」グイッ

眼鏡娘「やっ…!」

不良B「かわいい声だね。……もっとそういう声聞きたいなー」ササヤキ

眼鏡娘「」ゾクッ

眼鏡娘「や、めてください!もう離して…!」ググ...

眼鏡娘(前の時より怖い…でもそろそろあの猫ちゃんが来て……)

不良B「ほら、行こ?あんまり駄々こねてるとお兄さんたち何するか分かんないよ??」グイグイ

眼鏡娘「…!」ピクッ

眼鏡娘(……嫌……)

不良B「お。……へへ、じゃあ行きますか」

不良A「あんまり怖がらせるようなこと言うなよな」

眼鏡娘(……どうして来ないの……?)

不良B「いいのいいの。最終的に"合意"があれば問題ないっしょ」

眼鏡娘(やだ…やだよ……助けて………!)

眼鏡娘(──男くん…!)







「おーいおいおい、ちょっと人の彼女に何してんのー?」





眼鏡娘「!」

不良B「あ?」

男「遅くなってごめん…って声でも掛けようとして来てみたら……ナンパ?」

不良B「見て分かんねぇか?」

男「どう見ても嫌がる女の子を連れ去ろうとしてたね」

男「あ、さっきも言ったけど、その子俺の彼女ね。付き合ってんの。他人の彼女取るくらい飢えてんの?君ら」

不良B「…あんま気取ってんなよ、てめぇ…」ザッ

男「待って待って。俺は別に喧嘩したいわけじゃないんだって。その子返して欲しいだけで」

男「あとさ、君らこの辺あんま詳しくないでしょ」

不良B「…は?」

男「いやだって、この近くって見えにくいけど交番があんだよね。常駐のお巡りさんが暇そうに警備してんの」

男「…俺もさ、そんなに事を大きくするのって好きじゃないからさ、諦めてくれないかな、その子のこと」

不良A・B「「………」」

男「………」

不良B「………チッ」ドンッ

眼鏡娘「わっ」ヨロッ

男「おっと、危ない」ウケトメ

不良B「はぁ……萎えるわ……」

テクテク

不良A「だーから言ったろ、慣れないことするもんじゃないって」

不良B「うっせーよ。……ねぇ!そんな奴飽きたらいつでも俺のとこ来ていいからね!」

不良A「やめろや恥ずいな」ビシッ

不良B「ってーな!」



テクテク...



男「………」

眼鏡娘「………」

男「……ふぅ、行ったかな」

男「眼鏡娘さん、大丈──」

眼鏡娘「」ギュー!

男「──夫ではなさそう…?」

眼鏡娘「……怖かった……」

男「……」

眼鏡娘「怖かったよ……男くん……」

男「…もう平気だから」ナデナデ

眼鏡娘「うん……」ギュ...

眼鏡娘(さっきの人たちと全然違う…男くんに触れてるとこんなに安心する……)

眼鏡娘(男くん……)

眼鏡娘「……好き」

男「え?」

眼鏡娘「えっ!?」

眼鏡娘(声に出てた…!)

男「……今のって…」

眼鏡娘「や、その、今のはね…!つい口から出たっていうかあの…!」

眼鏡娘(……あぁもういい!決めた!)

眼鏡娘「」スー..ハー..

眼鏡娘「…男くん、助けてくれてありがと」

男「あー、いやまあ、単に後ろから驚かしたらどんな反応するのか気になって追ってきたんですがね…」

眼鏡娘「ふふ、なにそれ。そんな理由で助かったの私?」

男「でも結果オーライだったろ?俺の華麗な話術も披露出来たし!」

眼鏡娘「本当ね。この辺りに交番なんてないもんね」クスッ

眼鏡娘「……あのね、男くんが来てくれて私すっごく嬉しかった」

眼鏡娘「けどもっと嬉しかったのは──」

眼鏡娘「──男くんが私を彼女って言ってくれたこと…」

男「……」

眼鏡娘「……」





眼鏡娘「私男くんのことが好きです。私と付き合ってくれませんかっ?」





眼鏡娘(……言っ…ちゃった……!)

男「……」

眼鏡娘「……」ドキドキ

男「………」

眼鏡娘「……」ドキドキ

男「……」ナデナデ

眼鏡娘「…?」

男「」ワシャワシャ

眼鏡娘「な、なになに?髪乱れちゃう…!」

男「やー!なんか……いじらしくて本当こう、胸に来るね」ワシャワシャ!

眼鏡娘「いじらしいって何……いい加減髪止めてっ」

男「おー悪い悪い。責任取って戻してあげるから怒んないで」

眼鏡娘「……そういうのマッチポンプって言うんだよ」ムー

眼鏡娘(せっかく勇気出して言ったのに)

男「ごめんて……茶化す気はなくてさ」ナデツケ

眼鏡娘「………じゃあ、なに…?」

男「眼鏡娘さんの告白、俺も嬉しくなっちゃって」

眼鏡娘「……!」

眼鏡娘「それ…は……」カオアゲル





男「こっちこそ、俺と付き合って欲しい」ニコッ




ーーー自室ーーー

眼鏡娘「……」ボー

眼鏡娘「……」ボー

眼鏡娘「………」



ーーーーー

男「──俺と付き合って欲しい」ニコッ

ーーーーー



眼鏡娘「……」ジンワリ

眼鏡娘「」ニヘラ

眼鏡娘「……」ゴロンッ

眼鏡娘「……」ゴロンッ

眼鏡娘「……えへへー」

眼鏡娘「男くんと恋人同士……」

眼鏡娘(………)

眼鏡娘「……にゃー」ゴロンッ

眼鏡娘(猫の真似だってしたくなるよ!男くんと…男くんと……!)

眼鏡娘「夢みたい…!こんな夢なら覚めなくてもいいけど!」

眼鏡娘(あれからちょっと照れながら帰ってった男くんも可愛かったし…)

眼鏡娘(思い出せば思い出すほど、好きって気持ちが溢れてくる)

眼鏡娘「そうだっ!」

眼鏡娘(LINEしちゃおっと!)

眼鏡娘(この前交換だけして何も送ってなかったけど…彼氏彼女になった今なら遠慮なく送っちゃってもいいよね)

眼鏡娘「男くんなんて返してくれるんだろうなー♪」スマホツカミ

眼鏡娘「……ん?」スッ

眼鏡娘(……入れた覚えのないアプリがある…)

眼鏡娘「"Gravities"…?」

眼鏡娘「なんだろう…」スッ



◆Gravities◆ INFLUENCER:眼鏡娘
━━━━━━━━━━━━━━━━━
NAME     STATUS
━━━━━━━━━━━━━━━━━
男       Gravity
元気娘     AntiGravity
眼鏡娘母    OFF
眼鏡娘父    OFF
同級生A     OFF
 ・      ・
 ・      ・
 ・      ・



眼鏡娘「………?」

眼鏡娘「」スッスッ



『眼鏡娘母    AntiGravity』



眼鏡娘(……タップするとステータス?っていうのが切り替わるみたい)


眼鏡娘(でもこれどういうことだろう……Gravityは分かるけど、AntiGravity……反重力?)

眼鏡娘「知ってる人の名前ばっかりだし、新しいSNSか何かかな…」

眼鏡娘(とりあえず変にいじりたくないからママのステータスは戻しておいて、と)スッ

眼鏡娘(元気娘ちゃん辺りがまた知らない内にインストールしたのかも)

眼鏡娘「……余計なことしてくれて……」

眼鏡娘(ま!そんなことより男くんにLINE送らないと!)

眼鏡娘(初めてのLINE、何て送ろうかなー♪)

眼鏡娘「♪」スッススッ



スッスッ...




ーーー日曜日ーーー

眼鏡娘「……」スースー

眼鏡娘「……」スースー

眼鏡娘「」パチッ

眼鏡娘「……今何時……?」モゾ...



スマホ『AM 07:00』



眼鏡娘「待ち合わせまであと3時間……」

眼鏡娘(ちょっと早く起きちゃったかな)

眼鏡娘(今日は朝から一日男くんとデート)

眼鏡娘(一世一代の告白をしたあの日から、前の時なんかとは比較にならないくらい男くんと一緒に居る時間は長くなりました)

眼鏡娘(学校でも遊びに行ってる時でも、よく話してよくからかわれてよく笑って…)

眼鏡娘(青春てこういうことを言うんだなーと実感する毎日です)

眼鏡娘(それと、今日のデートはちょっと特別)

眼鏡娘「……」チラリ



(日曜日に丸を付けたカレンダー)



眼鏡娘(──今日は私の誕生日)

眼鏡娘(そのことをさらっと伝えたときの男くんの反応は少し面白かった)



ーーーーー

男「──え、そうなん?おめでとう!……ってまだか。だったら今週の日曜、遊びに行くか!サプライズとかあんま得意じゃないけど、俺なりに何か用意しとくから楽しみにしといてよ。……言ったら意味無いか!?」

ーーーーー



眼鏡娘「……ふふ」

眼鏡娘(サプライズかぁ……どんなことしてくれるのかな)

眼鏡娘(勝手にハードルあげといちゃおう♪)

眼鏡娘「出掛ける準備だけしとこっと」



.........




ーーー2時間後ーーー

眼鏡娘「──あぁもうこんな時間!忘れ物とか…はさっき散々確認したし、髪型とか変じゃないよね…?」ドタバタ

チョットー アンマリチラカシテカナイデヨー

眼鏡娘「分かってるー!」

眼鏡娘「うぅ、余裕ぶってシャワーなんか浴びるんじゃなかった……」

眼鏡娘「えっと、髪よし、服よし、後は……あ、LINE来てる」スッ



☆元気娘☆『起きてる??』



眼鏡娘「………」



眼鏡★娘『起きてるよ。けどごめん!今急いでるんだ。何か用件があったら後で聞くから!』

☆元気娘☆『そかそか!こっちもいきなりごめんね!また夜くらいになったらLINEしていい?』



眼鏡娘「夜なら、まあ…」



眼鏡★娘『(OKのスタンプ)』



眼鏡娘「……」

眼鏡娘「!っと、早くしなきゃ…!」タタタッ

眼鏡娘「行ってきまーす!」



ガチャ...




ーーー夕方 駅構内ーーー



テクテク



元気娘「……」テクテク

元気娘「……」テクテク

元気娘(……最近つまんないなー)

元気娘「……」テクテク

元気娘(そりゃ、好きなとこ行ったり友達とてきとーに遊んだりするのは楽しいんだけど…)

元気娘「……」

(スマホを取り出す)



眼鏡★娘『(OKのスタンプ)』



元気娘「………」

元気娘(眼鏡娘ちゃん……あんまり遊べてない)

元気娘(それどころか最近ほとんど話せてもないよー……)

元気娘(せっかく今日、眼鏡娘ちゃんの誕生日だって思い出したから色々してあげよーと思ったのにな)

元気娘(プレゼントだって……)

元気娘「……」ガサ...

元気娘(この青い髪留め、眼鏡娘ちゃんに絶対似合うと思う)

元気娘(……まー、普通誕生日の休日なんて予定入ってるもんだよね…)

元気娘「……」テクテク





ーーーーー

「──じゃあわたしが友達になってあげるよ!」

ーーーーー



元気娘「……」テクテク

元気娘(髪留め、いつ渡せるかな)

元気娘(誕生日は過ぎちゃうけど、喜んでくれるよね)

元気娘(眼鏡娘ちゃんのことだから驚いたリアクションは見れないかもだけど、きっと照れ臭そうに笑って、ありがとうって…)

元気娘(そしたらまた手引っ張って連れ出して遊びに行っちゃおうかな!髪留め付けてもらって、話題のあのカフェに行って、二人でパフェ食べて!)

元気娘(不慣れな髪留めしたせいで、髪をパフェに浸しちゃう眼鏡娘ちゃんが見れたりして)ヌフフ

元気娘「…♪」テクテク

元気娘(……明日……明日渡そう!朝一番で突撃してやるー!眼鏡娘ちゃんちょっとは驚いてくれるかな~)





──スルッ





元気娘「あれ……?」フラ...



ズタン! ゴロゴロ!

ガンッ ドタッ ゴロゴロゴロッ!



ドサ...



「や…!なに…?」

「おい、誰か階段から落ちたぞ!」

「女の子が動いてない!救急車呼んでくれ!あと駅員も!もしもーし!!大丈夫ですか!?聞こえますかー!?」



ザワザワ...





元気娘「」




書き溜めはここまでです。

この後は随時更新していきます。

ーーー翌日 学校ーーー

ガラッ!

男「っとー!危ない危ない間に合った!」

「あー!惜しい、後2分だったのになぁ」

「賭けは俺の勝ちだな」

男「?何の話?」

「いや男が珍しく来ないから遅刻するかしないかで飲み物賭けてたんだわ。…何で遅刻しなかったんだよっ」

男「勝手に賭けの対象にしといて何という言い種…」

ピロリン

男「ん?」スッスッ



眼鏡★娘『今日は遅れて登場だね。昨日のサプライズ大失敗した件遅刻しちゃうほど落ち込んじゃったの??』



男「……」チラッ

眼鏡娘「」ニヤニヤ

男「………」



男『単に寝坊しちゃっただけだからなー!あとその話、昨日「気持ちだけでも嬉しい」みたいなこと言ってくれてたのに、なぜ今蒸し返したし』

眼鏡★娘『嘘じゃないよ?でも男くんにはいつもいじられてばっかりなんだもん。こうやっていじり返すネタの一つは持っとかなきゃ』

男『大人しくいじられてなさい』

眼鏡★娘『いやですー』



男「……フッ」

男(…あ、そうそう)



男『そういえばさ、面白い噂聞いたよ』

眼鏡★娘『噂?』

男『うむ。知ってる?』

眼鏡★娘『知ってるような知らないような、かといって知らないようなやっぱり知ってるような…』

男『……知ってるならいっか』

眼鏡★娘『ねー冗談だよ!噂とか知らない!どんなの?』

男『なんでもさ、"願いを叶えてくれるアプリ"っていうのがあるらしいよ』



眼鏡娘「……願い……」

眼鏡娘(そういえば……)



ーーーーー

男「──これが"願いを叶えてくれるアプリ"?」

ーーーーー



眼鏡娘(あの時も、そんなことを言っていたような)



ーーーーー

元気娘「──付き合ってるんだしさ!」

ーーーーー



眼鏡娘(……あんまり思い出したくない記憶だけど)



ガララ



先生「うーす、始めるぞー」

眼鏡娘「!」



眼鏡★娘『先生来ちゃったね。また後でその話聞かせて』

男『おう』



先生「はいはい、出席なー」

先生「同級生A」

「はい」

先生「同級生B」

「はーい」

眼鏡娘(願いを叶えてくれる、か)

眼鏡娘(もしかして私がこの時間をやり直せてるのは、そのアプリのおかげだったりするのかな)

先生「──元気娘……は居ないんだったな」

「あれ、珍しいですね?」

「元気娘ちゃん何かあったんですかー?」

眼鏡娘(あ、ほんとだ。あの子今日いない)

先生「あー……そのだな、元気娘なんだが……」

先生「今朝家の人から連絡があってな──」





先生「昨日、駅の階段で足を滑らせて今も眠ったままらしい」





「え…!?」

「そんな、元気娘さん……」

「嘘でしょ…」

ザワッ...

先生「命に関わる怪我はしてないそうだ!」

先生「彼女は今、都立西病院に入院してる。小康状態に入ったから、行けばお見舞いくらいは出来るだろうと思う」

先生「……今日くらいは特別に早退を許す。行きたいものが居たら申し出てくれ」

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(………)

眼鏡娘(………)





眼鏡娘(ふーん)





眼鏡娘(………)

眼鏡娘(………)

眼鏡娘(………え)

眼鏡娘(待って…待って待って…!)

眼鏡娘(今、私何を考えた…?)

眼鏡娘(元気娘ちゃんは私の一番の友達)

眼鏡娘(そんな子が大怪我して寝たきりになってる)

眼鏡娘(普通なら心配するよね…?不安で不安でしょうがなくなるよね…?)

眼鏡娘(なのに私、今……)

眼鏡娘(──せいせいしたとか思った…?)

眼鏡娘「……」ドクンドクン

眼鏡娘(おかしい……おかしいよ…!)

眼鏡娘(元気娘ちゃんのことが嫌い?ううんそんなこと絶対にないはず……じゃあこの黒い気持ちは何…?)

眼鏡娘(まるで私が私じゃないみたい…)

眼鏡娘(思い返してみれば不自然なことがたくさんある)

眼鏡娘(図書委員のお手伝い断ったり、素っ気ないLINEを返したり、他にも……元気娘ちゃんのことを避けるような行動ばっかり……)

眼鏡娘(極めつけはさっき。先生が出席をとるまでいないことにすら気付かないなんて…)

眼鏡娘(大体前の時は元気娘ちゃんが階段から落っこちることなんてなかった……)

眼鏡娘(……違う、そうじゃない)

眼鏡娘(そもそもこの巻き戻り自体がおかしいんだ)

眼鏡娘(ここまで何の抵抗もなく受け入れてきちゃったけど、この、言わば"二周目"の世界そのものがおかしいんだよ)

眼鏡娘(こんな夢みたいな、都合のいいこと現実には起きない……でも私に起きてる)

眼鏡娘(何かあるはず……二周目になって現れた変なものや変なこと……何か……)



眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……………!」

(机の下にスマホを取り出す)

眼鏡娘「」スッスッ



◆Gravities◆ INFLUENCER:眼鏡娘
━━━━━━━━━━━━━━━━━
NAME     STATUS
━━━━━━━━━━━━━━━━━
男       Gravity
元気娘     AntiGravity
眼鏡娘母    OFF
眼鏡娘父    OFF
同級生A     OFF
 ・      ・
 ・      ・
 ・      ・



眼鏡娘(………まさか………)

眼鏡娘「……」

スッ



『元気娘     OFF』




眼鏡娘「……」

スー...

眼鏡娘「!」

眼鏡娘(胸の中に溜まってた黒いモヤモヤがなくなった……)

眼鏡娘(やっぱりそうなんだ…!このアプリ、普通のアプリじゃない)

眼鏡娘(INFLUENCERは直訳で影響者。それが私で、AntiGravityはGravity──重力、つまり引力の反対の意味だから……)

眼鏡娘(私は元気娘ちゃんから遠ざけられていたってこと……?そういう行動をとるように操られてたの…?)

眼鏡娘「……」ジッ

眼鏡娘(……なら、男くんのGravityは……)




先生「──連絡事項は以上だ。一限の用意しとけよ」ガララ



「…元気娘ちゃん大丈夫かな」

「心配で泣きそう…」

「お前、早退してお見舞い行って来れば?」

「何で俺が…」

「…好きなんだろ?」

「うぉい…!こんなとこで言うなよ…!」



眼鏡娘(………)

ピロリン

眼鏡娘(!)



男『大丈夫?元気娘さんと仲良かったんだよね?早退する?』



眼鏡娘「……」スッスッ



眼鏡★娘『うん。行く。でも早退は午後になってからにする。お昼休み、男くんに話しておきたいことがあるから』

男『分かった』

男『けど無理するなよ。行きたくなったらいつでも行っていいからな』



眼鏡娘「………」

眼鏡娘(………)




ーーー昼休み 外階段踊り場ーーー

男「──つまり、眼鏡娘は未来からやって来た……って?」

眼鏡娘「うん」

男「………」

眼鏡娘「………」

男「…猫型ロボット?」

眼鏡娘「違います」

男「や、そんなこと言われてもさー……普通に何かのドッキリとしか思えないけどなぁ」

眼鏡娘「逆の立場だったら私もそう思うけど、お願い!本当のことなの信じて!」

男「う、うーん……」

眼鏡娘「…彼女が真剣に言うことを信用できないの?」

男「そうじゃないけど…現実離れし過ぎてて……そうだ、未来のこと言い当てられたりするの?そしたら信憑性出てくるよ」

眼鏡娘「それは……分かんない」

眼鏡娘「だってもう私の知ってる未来にはないことが起こってるから……」

眼鏡娘「あ、説得力薄いかもだけど、証拠が一応あるよ」

男「どんな?」

(スマホを取り出す)

眼鏡娘「」スッススッ

眼鏡娘「これ」

男「……"Gravities"」

男「アプリ?」

眼鏡娘「そう」

男「こいつがどうかしたん?」

眼鏡娘「聞いたことないでしょ?調べてみてごらん。多分どこにも情報出てこないから」

男「………」スッスッ...

男「……確かに」



眼鏡娘「私自身、このアプリに気付いたのは男くんと付き合い始めた日の夜だったの。その時は新手のSNSか何かかと思って放置してたんだけど…」

眼鏡娘「……朝、先生の話を聞いた時、元気娘ちゃんのこと全く心配に思わなかった自分がいたから、おかしいなと思って考えてみて、そしたら……」

眼鏡娘「このアプリの機能は多分、簡単に言うと人を好きになれたり嫌いになれたりすること」

男「えっ…?」

眼鏡娘「ほら、Gravityって重力でしょ?つまりその人に対して引き寄せられて、反対にAntiGravityっていうのはその人から遠ざかるってことなんだよ」

眼鏡娘「……元気娘ちゃんのステータスは、さっきまでAntiGravityだった」

眼鏡娘「私が最近元気娘ちゃんと一緒にいるところ見たことあった?」

男「……見てないな、そういや」

眼鏡娘「でしょ?…つまりそういうことなの。私は元気娘ちゃんを遠ざけてた。多分気付いてなかっただけで、私が巻き戻ったあの日からこの効果はあったんだと思う」

男「……じゃ、Gravityっていうのは……」

眼鏡娘「……」コクリ

眼鏡娘「…ね、男くんが朝してくれた話」

男「朝?LINEでか?」

眼鏡娘「うん。……"願いを叶えてくれるアプリ"って」

眼鏡娘「…多分これのことなんじゃないかって私は思ってる」

男「……本気か?」

眼鏡娘「だって、こんな変なアプリ知らないし……私の願い、叶えたくれたし……」

眼鏡娘「……私、前から男くんのこと好きだったの。でもずっと言い出せなくて、同じクラスなのにただ見てるだけで……話しかけるのだって緊張して自分からじゃ絶対出来なかった」

眼鏡娘「だから男くんと普通に話して、二人で遊びに出掛けて……告白もして……そんな風に変われた自分が嬉しかった」

眼鏡娘「…けど、それはきっとこのアプリのおかげ。そう実感したら、男くんが好きっていうこの気持ちも、もう本物なのか作り物なのか分からなくなってきちゃって……」

男「……」



眼鏡娘「私が前過ごしてた時間……一周目とでも言おうかな、そっちの世界では私男くんと付き合えてないの」

眼鏡娘「……男くんと付き合ってたのは、元気娘ちゃん」

男「…!」

眼鏡娘「私はやっぱり何も出来なくて、気付いたときには全部遅くて……」

男「……だったら、この世界は眼鏡娘が願ったから実現した世界だって、そう言いたいのか?」

男「眼鏡娘の時間だけが戻ったのも、俺と付き合うことが出来たのも」

男「……元気娘さんが大怪我したのも…」

眼鏡娘「違うの!!」

眼鏡娘「確かに男くんの相手が私だったらとは思った!もう一度やり直せたらいいのにって思うこともあった…」

眼鏡娘「でも元気娘ちゃんがいなくなって欲しいだなんて思ったことはなかった!!」

眼鏡娘「………なのに………」

眼鏡娘「そんなこと言ったって、元気娘ちゃんは現に大変なことになって今も病院で……」

男「……」

眼鏡娘「私のせい、なのかな」

眼鏡娘「口ではこんなことが言えても、頭では友達だとか思ってても、本当は心の底では……元気娘ちゃんのこと、憎く思ってたのかな…」

眼鏡娘「──男くんを奪った、あの子を」

男「眼鏡娘……」

眼鏡娘「だとしたら、私って……こんな醜い人間だったんだね」

眼鏡娘「好きな人を奪うために、友達を平気で切り捨てるような」

眼鏡娘「そんな、クズ」



男「……」

眼鏡娘「……」

眼鏡娘「………」

ツー...

男(…!)

眼鏡娘「……」ポロ..ポロ..

眼鏡娘「……私、もう分かんない……」ポロポロ

眼鏡娘「自分がどんな気持ちを持ってるのか……この世界が何なのか……」ポロポロ

眼鏡娘「全部、分かんないよぉ……」ポロポロ

男「……」

眼鏡娘「グスッ……エグッ……」ポロポロ

男「………」



...ギュ



眼鏡娘「──…」

男「……落ち着きなって。眼鏡娘らしくもない」

男「よく考えてみな。眼鏡娘が俺のこと好きだって思ってくれてたのは、前からだったんだろ?」

眼鏡娘「……うん」

男「なら少なくとも、その気持ちは作り物じゃないんじゃないか?所詮あのアプリは眼鏡娘のその気持ちを後押ししただけで……多少強弱をつけたりはしたのかもしれないけど」

男「…そう考えた方が、自然だろ」

眼鏡娘「男、くん…」

男「……あー、それに、さ」

眼鏡娘「…?」

男「今の俺は、眼鏡娘のことが好きだ」

男「奪うとか、奪われたとか、俺にとっちゃ関係ないよ。だってこの世界の俺の彼女はお前だけだから」

眼鏡娘「………泣く………」

男「えぇ!?」

眼鏡娘「嬉しくて…!」ギュー

男「……」

男「……」ナデナデ

眼鏡娘「」ギュー



眼鏡娘「……男くんは、私の話信じてくれたの?」

男「信じたとしたら、こう言うだろうなってのを言ってみたんだ」

眼鏡娘「なにそれ」クスッ

男「……正直、元気娘さんがああなった理由は俺にもよく分からん」

男「ただの偶然か、あるいは本当に眼鏡娘が願ったからそうなったのか……」

眼鏡娘「………」

男「……というか、だ」

男「そもそもこの世界自体、眼鏡娘が願ったから生まれたものじゃないかもしれないよ?そのアプリだって"願いを叶えてくれるアプリ"と何の関係もなくて、誰かのイタズラかもしれないし」

男「それにさ、元気娘さん生きてるじゃん」

男「それこそ眼鏡娘があの子のこといなくなって欲しいって願ってたなら、この世界に来た時点で元々いないだとか、命を落とすだとか、そういう未来だってあり得たわけだろ?」

男「ただの偶然の可能性の方が高いと思うし、仮に眼鏡娘が願ってそうなったんだとしても、元気娘さんは生きてるんだから、心の中では生きてて欲しいって思ってたんだよ」

男「な?」

眼鏡娘「──」

眼鏡娘「」カオウズメ

眼鏡娘「……男くんに打ち明けて正解だった」

男「どうよ、俺の推理力」エッヘン

眼鏡娘「……惚れ直したよ…?」ウワメヅカイ

男「…っ」ドキッ

男「……そっか」

眼鏡娘「……」

眼鏡娘「……いつもいつも、助けてくれる」

眼鏡娘「男くんは私のヒーローだよ」ニコッ

男「…おう」

男「呼べばいつでも……なるべく駆け付けてやる」

眼鏡娘「そこは嘘でも断言してよ」フフッ

男「努力する」ヘヘ



男「……それでさ、俺は何をすればいいんだ?」

眼鏡娘「?」

男「嘘か本当かは置いていて、そんな重大なことをわざわざ俺に話してくれたんだから、何か協力して欲しいことがあったんじゃないのか?」

眼鏡娘(……)

眼鏡娘「ううん。男くんにだけは話しておきたかっただけ。私の身勝手に巻き込んじゃった人だから」

男「身勝手なんて言うな」ピシッ

眼鏡娘「あうっ」

男「迷惑かどうかなんて俺が決めることだ。俺にとっちゃむしろ……」

男「そんなに好いてくれて超嬉しい、かな」

眼鏡娘「またそんなこと言って…」

眼鏡娘(……そういうところに、私は惚れたんだよね)

眼鏡娘「……大丈夫。私が何とかする」

眼鏡娘「これは私の問題だから、私が解決させなきゃいけないの」

眼鏡娘(絶対誰も不幸にしないように)

男「……辛くなったらすぐ呼べよ」

眼鏡娘「平気だよ。男くんがいてくれるだけで、私はいくらでも頑張れるから」

男「それは無理をします宣言に聞こえるけど?」

眼鏡娘「心配し過ぎ!男くんはちゃんと私の彼氏でいてくれればいいの!」

眼鏡娘「そうだ、今度また遊びに行こう?この季節だし、ふらっと遊ぶんじゃなくてどっか遠出してみたい!」

男「遠出?んー……」

男「ん!いいのがあるよ。ベタなもんだけど、夏祭りとかどう?」

眼鏡娘「いい…賛成」

男「ちょっち日は遠いけどね。今月末にさ、南町の方でやってるやつ。神社のある小さい山でやるんだけど、境内までの長い階段に沿って屋台が並ぶんだって」

男「俺は普通に見てみたい」

眼鏡娘(それって…)



ーーーーー

眼鏡娘(──丁度夏休み中にやってるこの夏祭り。これに男くんを誘おう)

ーーーーー



眼鏡娘(同じだ)



眼鏡娘「……ふふ、私も気になる」

男「よっし。夏休みの楽しみがまず一つ出来たな!」

眼鏡娘「ね♪」



キーンコーンカーンコーン



男「予鈴か。もう戻らないと」

男「眼鏡娘は病院に?」

眼鏡娘「うん。先生に一言言ってからね」



テクテク



男「……」

男(……)

男「……あのさ、気になってたことがあるんだけどさ」

眼鏡娘「ん?」

男「さっきのアプリ、元気娘さんのステータス?はOFFにしたって言ってたよね?」

眼鏡娘「そうだよ。見たでしょ?」

男「……なんで俺はGravityのままなんだ?」

ピタッ

眼鏡娘「………」

男「眼鏡娘?」

眼鏡娘「……………」

男「…もしかして、変えちゃまずいことがあるのか?」

眼鏡娘(………)

男「今度は俺が酷い事故に遭うとか──」

眼鏡娘「………ったから………」ボソッ

男「え?」



眼鏡娘「………」モジモジ

眼鏡娘「……男くんともうちょっと、引かれ合っていたかったから……」

眼鏡娘「……//」カアァ

男「……」

男(めっちゃかわいい)

男「」ホッペツン

眼鏡娘「ひゃっ!?」

男「いやほんと、眼鏡娘がこんなかわいい子だとは最初会った時からは想像もつかなかったよ」

男「写真撮っとけばよかったなぁさっきの。絶対消さないし、後で面白いくらいいじれたろうになー」

眼鏡娘「……~~!」

眼鏡娘「も、もう行く!」タッタッタッ

男「あ!気を付けてなー!」



タッタッ...



男「……後でLINEでいじり倒してやろ」

男「……」



ーーーーー

眼鏡娘「──男くんが好きっていうこの気持ちも、もう本物なのか作り物なのか分からなくなってきちゃって……」

ーーーーー



男(それでも俺は、眼鏡娘の味方で居続けるから)

男「…いや、この場合はヒーローか」フッ




ーーー病院ーーー



テクテク



眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘「……」テク...



ドアプレート『106』



眼鏡娘「……ここだ」

眼鏡娘(………)



ガチャ...



眼鏡娘「失礼します……」

眼鏡娘「……っ」





元気娘「……」スー..スー..





眼鏡娘「元気娘、ちゃん……」

眼鏡娘(包帯……固定具……点滴……)

眼鏡娘(あんなに元気だったのに……こんなの……)

眼鏡娘「……私、元気娘ちゃんのこと好きだよ」

眼鏡娘「嫌いだなんて思ったこと一回もない。ましてやいなくなって欲しいなんて……」

眼鏡娘「でも私はあなたに酷いことをした」

眼鏡娘「男くんは偶然だって、そうでなくても私が自分を責めないように慰めてくれたけど、この現実を引き起こしたのは間違いなく私」

眼鏡娘「時間の巻き戻りなんて不自然が起きても、自分に都合のいいように流されてただけの私が引き寄せた…」

眼鏡娘「……ごめんね……」

眼鏡娘「目覚ましたらちゃんと全部話すから」

眼鏡娘「きっと謝って許されるようなものじゃない……それでも」

眼鏡娘(…それで元気娘ちゃんに軽蔑されることになっても……)





コンコン



眼鏡娘「?…はい」

ガチャリ

看護師「あら、お友達かしら?」

眼鏡娘「そうです」

看護師「学校はお休み?」

眼鏡娘「……早退したきたんです」

看護師「そう……この子も喜んでるかもね」

看護師「ごめんね、少し失礼して…点滴を変える時間なのよ」スススッ

眼鏡娘(……喜んでる……?)

眼鏡娘(もし起きてたらいつもみたいに笑って迎えてくれたのかな)

眼鏡娘(…それがどんなに酷い怪我でも…)

眼鏡娘「……?」

眼鏡娘(あそこの小棚の上…綺麗な包み)

眼鏡娘(先にお見舞いに来た人が置いてったのかな)

看護師「──その包みが気になる?」

眼鏡娘「え!…あ、どなたの贈り物なのかと…」

看護師「違うのよ」

看護師「それはね、この子が事故のあったその時に持っていたものらしいの」

看護師「私物でもなくて、誰かへのプレゼントみたいだったから、ここに置くことにしたんだって」

看護師「…起きたら、そのお相手さんがそばにいてくれるといいわね」

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「…!!」

眼鏡娘(あの包装…)

看護師「これでおしまい。…早く元気になって欲しいわね」

眼鏡娘「…はい」

看護師「私は失礼するね。何かあったら呼んでね」

ガチャ パタン



眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……」ソー...

(包みを手に取る)

眼鏡娘(…やっぱりそうだ)

眼鏡娘(これ、あの時元気娘ちゃんがくれた髪留めの……)



ーーーーー

元気娘「──ずっと友達でいようねっ」

ーーーーー



眼鏡娘(……私……何度もあなたの想いを踏みにじってきちゃったのに……)

眼鏡娘(あなたはずっと………)

眼鏡娘「……」グッ...

眼鏡娘(こんなこと、二度と起こさない)

眼鏡娘(私自身の手で打破しないと!)

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(そのためにはどうしたらいい?あのアプリを調べる?……ううん、それは学校の授業の間に散々やった)

眼鏡娘(ステータスを無闇に変えるのは怖かったからそんなに徹底的にとは言えないけど)

眼鏡娘(……もっと他にあるはず。一周目と二周目の根本的な差異……)

眼鏡娘(ここまで捻じ曲がった未来を呼び寄せることになった原因が)

眼鏡娘(考えて……考えるのよ……!)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……………」

眼鏡娘「……………」

眼鏡娘(……………!)



ーーーーー

黒猫「──ナーオ」トコトコ

ーーーーー



眼鏡娘(そうだ……時間が巻き戻って、最初に一周目との違いがはっきり現れたのは、あの黒猫……)

眼鏡娘(あの子のおかげで私はこの世界で男くんと仲良くなるきっかけが出来た)

眼鏡娘(二人組に襲われそうになってた時もそう。二周目では代わりに男くんが来てくれた)

眼鏡娘(…そこで私は告白した)

眼鏡娘「……あの猫ちゃんが、何か知ってる」



眼鏡娘(動物を疑うなんて、普通なら考慮すらしない。でも今起きてることは普通じゃない)

眼鏡娘「探そう」

眼鏡娘(見つけて、何が起きてるのか訊いて…この奇妙な現実を正す方法を、教えてもらう)

眼鏡娘「」スクッ

眼鏡娘「……」

元気娘「……」スー..スー..

眼鏡娘「…待っててね」







ーーー学校からの帰路ーーー

眼鏡娘「」キョロキョロ

眼鏡娘「…いないかな…」

眼鏡娘(私が二人組に声を掛けられた道。あの黒猫に初めて出会って……男くんの彼女になることが出来た道)

眼鏡娘(私にとって特別なこの場所に、もしかしたらって来てみたけど…)

眼鏡娘「そうそう上手くはいかないよね…」







ーーー学校 昇降口ーーー

「──それでさ、この前なんかもうめちゃくちゃ!部長キレてたし──」

「災難だったねぇ。一年生何もしてないのに──」



ガヤガヤ



眼鏡娘(丁度学校終わったところなんだ)

眼鏡娘「……」スタスタスタ

眼鏡娘(…前はこっちの茂みの方から出てきたんだっけ)

ガサ..ガサ..

眼鏡娘「…おーい、猫ちゃんいるー?」

シーン

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(……もうちょっと周りも探してみよ)




ーーー駅前ーーー

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘(……)

眼鏡娘「」チラッ..チラリ

眼鏡娘(……いない)







ーーー最寄駅からの帰路ーーー

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘「」キョロキョロ

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘「」キョロキョロ

眼鏡娘「……どこ……?」

眼鏡娘「どこにいるの…?」







ーーーーーーー

眼鏡娘「……」トボトボ

眼鏡娘「……」トボトボ

眼鏡娘(…見つからない)

眼鏡娘(普通に考えればどこにいるかあてもない猫ちゃん一匹を探し出すなんて、すぐには無理だよね…)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(もう日も暮れちゃう)

眼鏡娘「……今日は帰ろう……」

眼鏡娘(明日学校の子たちにも訊いてみようかな。迷子の猫なんです、て言えば変じゃないよね)





「ナーオ」





眼鏡娘「!!」フリムキ

黒猫「……」

眼鏡娘「あ……!」

黒猫「……ミャー」

眼鏡娘「…ねぇ、あなたに訊きたいことが──」テク...

黒猫「」サッ!

眼鏡娘「!ま、待って…!」



タッタッタッ...







ーーーーーーー

黒猫「」スタッ、スタッ

眼鏡娘「はぁ……はぁ……」タッタッ

眼鏡娘「ねぇ待ってよ…!」タッタッ

黒猫「」スタッ、スタッ

眼鏡娘「お願い……だから……!」タッタッ

眼鏡娘(もう……だめ……肺が弾けそう……)

眼鏡娘(運動なんて得意じゃないのに…!)

黒猫「」ピョンッ

眼鏡娘「─!」タッ...

眼鏡娘(…あんな…高い塀の上に……)

眼鏡娘「はぁ……はぁ……はぁ………」

眼鏡娘「すぅー……はー……」

眼鏡娘「はぁ……ふぅ……」

黒猫「……」ジッ

眼鏡娘「……」

黒猫「……」

眼鏡娘「…そこまで行かなきゃだめ?」

黒猫「………」

眼鏡娘「あなた、知ってるんだよね?」

眼鏡娘「私に起きてることについて」

黒猫「……」

眼鏡娘「教えて欲しいの!」

眼鏡娘「この世界は何?どうして私は時間を遡ったの?あの変なアプリは何か関係があるの?」

眼鏡娘「──どうすれば元の日常が戻ってくるのっ?」



黒猫「……」

眼鏡娘「……」

黒猫「」ケヅクロイ

眼鏡娘「……」

黒猫「」クシクシ

眼鏡娘「……えーと……」

黒猫「フミャー…」ノビー

眼鏡娘「聞こえてる、よね…?」

黒猫「……」

黒猫「」ピョンッ

眼鏡娘「!待っ──」




スタッスタッスタッ...



眼鏡娘「──て……」

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(行っちゃった…)

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(……何も答えてくれなかったな)

眼鏡娘(私の言ったこと、聞いてたのかも怪しいし…)

眼鏡娘(……一つ分かったことは……)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(さっきの私、必死に猫に話しかけるちょっと痛い人にしか見えないってこと)

眼鏡娘(………なんで?)

眼鏡娘(違う猫ちゃんだったのかな)

眼鏡娘(けどあの黒猫だけは見間違えることないはず…)

眼鏡娘(それとも)

眼鏡娘(……私の考えが、全くの見当違いだった……?)

眼鏡娘「……うぅー……」

眼鏡娘(どうしよう…)

眼鏡娘(弱気になっちゃダメって、頭では分かってるのに……)

ピロリン

眼鏡娘「……」...スッスッ



眼鏡娘母『いつまで遊んでるの?早く帰ってきなさい』



眼鏡娘「……はーい」




ーーー数日後ーーー

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘(……)

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘(……あれからもう半月ほど経った)

眼鏡娘(世の学生は夏休みに入って、皆思い思いの時間を満喫してる時期)

眼鏡娘(……私は、ずっと現況を解明する方法を探してた)

眼鏡娘(でも進捗はかけらも無し。前逃げられてからあの黒猫とは会えてないし、入れたままの例のアプリについても何も分かってない)

眼鏡娘(それに時間を割いてるせいで、男くんと遊ぶ頻度も減っちゃった)

眼鏡娘(私の様子から何となく察してるのかな、男くんは付かず離れず、居心地のいい距離で私と接してくれる)

眼鏡娘(……逆に私がそろそろ限界来そう……男くんに引っ付いてたい)

眼鏡娘「」ブンブン

眼鏡娘(Gravityのせいかな、これ……)

眼鏡娘「……」...テクテク

眼鏡娘(……元気娘ちゃんは、まだ目を覚まさない)

眼鏡娘(少しずつ回復に向かっていってはいるらしいけど、なら尚更なんで起きないのか…)

眼鏡娘(お医者さん曰く、こういうことは珍しくはないとのことで……でも私は底の見えない焦燥に駆られる……)

眼鏡娘(さっきお見舞いに行ったときなんか、今にも起き上がってきそうな顔色だったのに)

眼鏡娘「……」テクテク

眼鏡娘(……いたずらに時間が過ぎていく……)

眼鏡娘(……)

眼鏡娘(…明日は男くんと夏祭り)

眼鏡娘(でもこんなんじゃ、とてもじゃないけど心から楽しむなんて出来ないよ…!男くんに嫌な思いさせちゃう…)



眼鏡娘「……」テク...

眼鏡娘(………)

眼鏡娘「……」ゴソゴソ

スッスッ、スッ



◆Gravities◆ INFLUENCER:眼鏡娘
━━━━━━━━━━━━━━━━━
NAME     STATUS
━━━━━━━━━━━━━━━━━
男       Gravity
元気娘     OFF
眼鏡娘母    OFF
眼鏡娘父    OFF
同級生A     OFF
 ・      ・
 ・      ・
 ・      ・



眼鏡娘「………」

眼鏡娘(これが……いけないのかな)

眼鏡娘(このアプリのせいで、元気娘ちゃんを避けて、男くんに近付くことが出来た)

眼鏡娘(その結果、元気娘ちゃんは怪我を負って、男くんとは恋人になった)

眼鏡娘(……つまり)

眼鏡娘(このアプリが全ての元凶……?)

眼鏡娘(なら)

スッ



『男       OFF』



眼鏡娘(全員OFF……これが本来の状態……このまま)

眼鏡娘(……これを、消しちゃえば……)




眼鏡娘「……」トクン..トクン..

スッ、スッ



━━━━━━━━━━━━━━━━━
 "Gravities"を削除しますか?

   削除   キャンセル
━━━━━━━━━━━━━━━━━



眼鏡娘「……」ドクン..ドクン..



スッ...



スマホ『削除しました。』



眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……ふぅ」

眼鏡娘(これで…いいのかな……)

眼鏡娘(こんなに呆気なく解決してくれるなら言うことなしなんだけど)

眼鏡娘(……大丈夫だよね、きっと)

眼鏡娘(これで異物は取り払ったもの。もう何も起こらない)



眼鏡娘「……んー……」

眼鏡娘(釈然としない気持ちの悪さが残る……)

眼鏡娘(Gravities……重力……)

眼鏡娘(趣味の悪い名前)

眼鏡娘「…重力は嫌いって言ってるのに」

眼鏡娘(今なんてもう──)





眼鏡娘「こんな世界から私が浮きたい気分」





眼鏡娘(……けどとにかく)

眼鏡娘(消したものは消した)

眼鏡娘(今更くよくよしたって意味ないんだし、切り替えていこう)

眼鏡娘(明日のお祭り……ふふ、男くんと屋台回ってるの想像したら、少し楽しくなってきちゃった)

眼鏡娘(久しぶりに男くんとちゃんと遊ぶんだもん、目一杯楽しも!)

眼鏡娘「…♪」テクテク

テクテク...





黒猫「……」




ーーー夏祭り当日 自室ーーー

眼鏡娘「……」スマホイジイジ

眼鏡娘「……」スッスッ

眼鏡娘「……」ススッ...



ーーーーー

男「──そんなに好いてくれて超嬉しい、かな」

ーーーーー



眼鏡娘(私は、男くんのことが好き)

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(良かった…あのアプリを消してからすごく不安だったけど、私はちゃんと私のままだ)

眼鏡娘(………勿論、元気娘ちゃんだって、私の大切な人)



スマホ『PM 02:00』



眼鏡娘「…やっと2時?」

眼鏡娘(楽しみがあるときに限って時間て遅く感じるよね)

眼鏡娘(そのくせ楽しい時間はあっという間に過ぎる…)

眼鏡娘「相対性理論、だっけ」

眼鏡娘(って今はそんなこといいか)

眼鏡娘「ママー!浴衣ー!」

ハイハイ



.........





眼鏡娘母「……」ゴソゴソ

眼鏡娘「……」

(浴衣を着付けてもらう眼鏡娘)

眼鏡娘母「……」スッ

眼鏡娘「……」ソデトオシ

眼鏡娘(……)

眼鏡娘「ねぇ…」

眼鏡娘母「……なに?」

眼鏡娘「……何でもない……」

眼鏡娘母「そ」

眼鏡娘(…なんか今日のママ、素っ気ない…?)

眼鏡娘(普段ならからかってきたりしそうなのに)

眼鏡娘母「次、帯やるから背中向けて」

眼鏡娘「うん…」

ゴソゴソ ギュッギュ...


ーーー駅構内ーーー



トットットッ



眼鏡娘「うぅ……油断したぁ…」トットッ

眼鏡娘(浴衣ってこんなに歩きにくかったの…)

眼鏡娘(駅まで少し歩かなきゃいけないから、いつもより余計に時間かかっちゃったよ)

眼鏡娘「あっ、向こうのホームか」

眼鏡娘(次の電車に乗れないと、20分も空いちゃう…!)

眼鏡娘「……」トットッ



トゥルルルルルルルル

『ドアが閉まります。ご注意下さい』



眼鏡娘「!…待って…!」トットットッ!



ガコン

...ガタンゴトン ガタンゴトン



眼鏡娘(…セーフ)

眼鏡娘(何とか間に合った)

乗客たち「「「……」」」ジッ

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(…皆こっち見てる…)

眼鏡娘(浴衣で走ったりして、みっともなかったかな)

眼鏡娘(もしかして着崩れてるとか…?)

眼鏡娘「……」チラリ、チラリ

眼鏡娘(……大丈夫。どこも乱れてない)

眼鏡娘(なのに)

乗客たち「「「……」」」ジッ

眼鏡娘(なんでずっと見てくるの…?)



眼鏡娘「……あの、何か……?」

乗客たち「「「……」」」ジッ...

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(居づらい……移動しよ)

眼鏡娘「……」スタスタスタ



スー(隣の車両のドアを開ける)



眼鏡娘「……ふー」

眼鏡娘(ドア開ける時までこっち見てきた……何だったのかな)

眼鏡娘(後で男くんにおかしなところがないか訊いてみよ)

眼鏡娘(…変に走って疲れちゃった。座れるところあるかな──)





乗客たち「「「……」」」ギョロ





眼鏡娘「ひっ…!?」

眼鏡娘(なに…何なのっ!?)

ヒソヒソ ヒソヒソ

眼鏡娘(全員私を見てる…!)

眼鏡娘(小声で何か話してる人も…)

眼鏡娘「っ……」

眼鏡娘(怖い……怖いよ……)

眼鏡娘(早く駅に着いて……!)




ーーーーーーー

眼鏡娘「」スタスタ

眼鏡娘「」スタスタ

眼鏡娘(お祭りは確かこっちに行けば着くはず)

眼鏡娘(早く男くんに会いたい)

眼鏡娘「」スタスタ

「……」チラリ

眼鏡娘(さっきからすれ違う人みんな必ずこっちを見ていく)

眼鏡娘(電車の人たちがおかしかったんじゃない)

眼鏡娘(……私に何があるっていうの!?)

眼鏡娘「」スタスタ

ガッ

眼鏡娘「あっ…!」ヨロ...



ズテッ



眼鏡娘「痛い……」

眼鏡娘(もうやだ……)

眼鏡娘(何で今日に限ってこんな……)

眼鏡娘「……裾汚しちゃった……」



老人「大丈夫かね、お嬢ちゃん?」



眼鏡娘「!」

眼鏡娘(優しそうなおじいちゃん……良かった)

眼鏡娘「…はい。浴衣、慣れてなくて」

老人「お祭りかな?向こうの南町神社のとこじゃろう」

老人「それにしても、お嬢ちゃんのその浴衣……とっても似合っておる。昔を思い出すわい」

眼鏡娘「そ、そうですか…?」

老人「うむうむ。昔はうちの婆さんも、よく浴衣を着て共に出掛けたものじゃ。歩きにくいから手を繋いでくれとか──」

眼鏡娘(なんか始まっちゃった…)



老人「──、───」ペチャクチャ

眼鏡娘(……おじいちゃん、お話長いよ……)

眼鏡娘「……あの!心配してくれてありがとうございます。でも私もう行かないといけませんので…」

老人「ん?おぉそうかいそうかい」

眼鏡娘「はい。失礼しま──」

老人「ところでお嬢ちゃん」





老人「──君、何故生きてるのかね?」





眼鏡娘「………?」

老人「……」ニコニコ

眼鏡娘「生きてる、ですか?」

老人「うむ」

老人「不思議なものじゃ…お嬢ちゃんとは初めて会うのに、どうにも……」

老人「この世に居るべき者ではないように感じるものでなぁ……」



「あぁ、それ俺も思ってました」

「私も。なんかあんた見てると違和感がすごいのよね」



ゾロゾロ



眼鏡娘「…!?、なんで…」

眼鏡娘(面識もない人たちが)



ゾロゾロ ヒソヒソ



眼鏡娘(集まってくる…)

眼鏡娘(それでまたあの目……私を突き刺す異様な目)

老人「のうお嬢ちゃん、どうしてかね?」

眼鏡娘(私は夢でも見てるの…?)

眼鏡娘(寝覚めの最悪な悪夢…!)



老人「………そうじゃ」

老人「もしお嬢ちゃんが自身の存在に困っておるなら……」





老人「わしらが君を消す手伝いをしてやろう」ニッコリ





「そうだな、それがいい!」

「全員でやればすぐ終わるわよ!」

眼鏡娘「は……?え…?」

老人「心配せんでよい。わしらに任せておきなさい」スッ...

眼鏡娘「…いや……来ないで……!」アトズサリ

眼鏡娘「やだっ!!」ダッ

老人「これ!待ちなさい!」



タッタッタッ...




ーーーーーーー



タッタッタッ!



眼鏡娘(おかしい…こんなの絶対に変!)

眼鏡娘(何が起きてるの!?やっぱり昨日アプリを消したから…!?)

眼鏡娘(会う人全員が得体の知れない生き物に見えてくる…)

眼鏡娘(誰も……誰もいないとこに行かないと…!)

眼鏡娘「はぁ、はぁ、はぁ…」タッタッタッ

眼鏡娘(そうだ男くん!)

眼鏡娘(男くんとは石階段の下で待ち合わせしてるから、もう近くのはず!)

眼鏡娘(人しかいないだろうから絶対行きたくないけど、電話なら……)

眼鏡娘「はぁ、はぁ…」タッタッ...

眼鏡娘「……」キョロキョロ

眼鏡娘(……あそこ)

眼鏡娘「」サッ



ガササ



眼鏡娘「………」

眼鏡娘(ここに隠れれば、見えないよね…)

眼鏡娘(思わず飛び込んじゃったけど、ここ……山の麓……?あっちに細い登山道みたいな道があったし)

眼鏡娘(多分お祭りやってる山の、別の側なんだ)



「なぁ聞いたか?この女を見かけたら捕まえろだって。お前も手伝えよ?」

「は?なんだそれ?何バカげたこと……」

「……あぁ、確かにこいつは野放しにしておけないな」

「さっきは向こうの通りに居たんだと。ここの祭りに来たってことらしいから案外その辺にいたりしてな」

「遠くには行ってないだろ。手分けして探すか」

「おう」

テクテク...



眼鏡娘「……っ……」

眼鏡娘(今の、私のこと…だよね)

眼鏡娘(わけが分からなくなってきた)

眼鏡娘(謂れのない罪で追われる人の気持ちってこんな感じなのかな)

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(……さっきの人たちは行った?男くんに電話かけよ)

眼鏡娘「」ゴソゴソ

眼鏡娘「……!?」

眼鏡娘("Gravities"……なんであるの…?昨日確かに消したはず…)

眼鏡娘「……」...スッスッ





◆Gravities◆ INFLUENCER:世界
━━━━━━━━━━━━━━━━━
NAME     STATUS
━━━━━━━━━━━━━━━━━
眼鏡娘     AntiGravity





眼鏡娘「………なに……これ……」

眼鏡娘(これのせいだったんだ……!皆がおかしくなった原因……)

スッ

眼鏡娘「…?」

スッスッスッ

眼鏡娘「……!?」



『眼鏡娘     AntiGravity』



眼鏡娘(なんで……切り替えられない…!?)



眼鏡娘「」スッ!



━━━━━━━━━━━━━━━━━
 不明なエラーが発生しました。
 "Gravities"を削除できません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━



眼鏡娘「そんな……」

眼鏡娘(……これは、罰なのかな)

眼鏡娘(この世界で、元の現実を捻じ曲げて自分勝手に生きたことの……)



ーーーーー

元気娘「──また誘うから一緒に行こうね!絶対ね!!」

ーーーーー



眼鏡娘(……元気娘ちゃんを傷付けた報い……)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……………」

眼鏡娘(私は……殺されるの………?)

眼鏡娘(この世界に………)

眼鏡娘「……」チラリ



━━━━━━━━━━━━━━━━━
 不明なエラーが発生しました。
 "Gravities"を削除できません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━



眼鏡娘「………嫌………」フルフル

眼鏡娘「いやぁ!!」ブンッ



ガンッ

カタカタン...(地面に落ちるスマホ)



「おい、今向こうから声がしたぞ」

「見て!あんなところにいる!」




眼鏡娘「あ……や……」

眼鏡娘「」タッタッ!



「山の中に逃げる気だ!」

「私人呼んでくる!」



ガヤガヤ...




ーーー病院ーーー

元気娘「……」スー..スー..

元気娘「……」スー...

元気娘「……ん」ピクッ

元気娘「…んぁ~…」ノソ...

元気娘「よく寝たぁ……?」

キョロキョロ

元気娘「……あれ?ここどこ?……って私包帯巻かれてる!?」

元気娘「左手とかなんか手首固定されてますがな」

元気娘「あ、思い出した」



ーーーーー

元気娘「──あれ……?」フラ...

ーーーーー



元気娘「階段で転んじゃったんだっけ」

元気娘「ドジだなー私。眼鏡娘ちゃんがいたら呆れ笑いされちゃうよぉー…」

元気娘「…!」

元気娘「あの包み…」

ググ...(手を伸ばす)

元気娘「……眼鏡娘ちゃんにあげる髪留め……」

元気娘「誰か親切な人がここに置いてくれたんだ」

元気娘「……良かった、無くなってなくて」

元気娘「…?裏に何か挟まってる……メモみたいだけど」スッ



『早く目を覚まして、また元気に笑って下さい。元気娘ちゃんには話さなくちゃいけないことがあるから。それでもし許してくれるとしたら……また一緒に遊びたいな。

 眼鏡娘』



元気娘「……眼鏡娘ちゃん……」

元気娘「お見舞い、来てくれてたんだ」

元気娘「…やっぱり、眼鏡娘ちゃんは私の……」

元気娘(……♪)

元気娘「私も眼鏡娘ちゃんと遊びたい!そんで、眼鏡娘ちゃんのかわいいとこいっぱい見たい!」

元気娘「こんな怪我さっさと治しちゃわないとねっ」





「──ねぇ聞いた?この子、見つけたら取り押さえておきなさいって」

「あら、知ってるわ。最近106号室の患者さんにお見舞いに来てた子よね。眼鏡娘さん、だったかしら」



元気娘「!」

元気娘(ドアの向こうの…看護師さん?眼鏡娘ちゃんの名前が聞こえたけど…)

元気娘「……」コソ...

元気娘「うわ…」フラフラ

元気娘(全然うまく歩けない。自分の足じゃないみたい…)

元気娘(こんなに鈍ってるって、どれだけ私寝てたんだろ)

元気娘「…っ」フラフラ

元気娘(やっとドアの傍まで着いた)

元気娘「」キキミミ



「そっかぁ、気が付かなかった全然。何で見逃しちゃってたんだろう」

「この子今日も来るかしらね?」

「いーや、来ないんじゃない?今は南町の方にいるらしいわよ。あそこの夏祭りに来てるんだって、浴衣姿で」

「まぁ受付担当にこの子が来るか注意して見ておくよう言っておきましょうか」



元気娘(……なんで眼鏡娘ちゃんのことこんなに話してるの…?)



「でもさ、この子捕まえて何する気なのかな?」

「それは決まってるでしょう」

「──消すのよ。この世から」



元気娘(!?)



「あー納得!この子が居るってだけで違和感しか感じないものね」

「そういうこと。さ、私達は仕事に戻りましょう。どうせ来ないとは思うけど、106号室の見張りもお願いしたいしね」



元気娘(……)

元気娘「………」




ーーーーーーー

ガチャ

看護師「元気娘さーん、ちょっと失礼するわね」

看護師「少しお部屋の掃除でも……あら」



(無人のベッド)



看護師「……いないわ」




なんか藤崎竜の短編みたいな感じだね

>>97
名前だけでは分かりませんでしたが、銀河英雄伝説の方なんですね。

ーーー山中ーーー

「そっちはいたか?」

「いや、いない」

「おかしいな…こっちの方に向かったって報せを聞いたんだが」

「もしかしたら下りてたり?」

「場所移してみるか」

スタスタスタ...



眼鏡娘「………」ジ...

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(……行った、かな)

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(どうしよう、どんどん人が増えてきてる気がする…)

眼鏡娘(山、下りたいけどきっと下にもたくさん人が……)

眼鏡娘「……っ」チクッ

眼鏡娘(さっきから変なとこに隠れてるせいで枝が擦れて痛いよ…)

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(……こういう時、じっとしてたら見つかっちゃうよね)

眼鏡娘(移動しないと……人がいないとこの隙間を縫って、その内この山から離れられれば、その後は)

眼鏡娘(……その後は……どうしよう)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「」ガサガサ

タッタッタッ...




undefined

ーーー山頂 神社裏手ーーー

ガサガサ...

ガリッ

眼鏡娘「いっ……」

眼鏡娘(血出てる……)

眼鏡娘(……ここどこだろう)

眼鏡娘(人の少なそうな方に向かってたら、どんどん登ってきちゃった気がする)

眼鏡娘「……!」

眼鏡娘(あの建物、神社かな)

眼鏡娘(ということは、ここが山の頂上…?)

眼鏡娘(うぅ……ここから下りていかなくちゃいけないと思うと、泣きそうだよ……)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(………もういっそのこと、見つかっちゃおうかな)

眼鏡娘(どうせ下りられてもこの悪夢が終わらないなら、こんなところで生きてる意味なんて……)

眼鏡娘(………)

眼鏡娘(それが、私みたいな人に相応しい末路………)



チョンチョン



眼鏡娘「ひっ!?」

「しーっ!静かにして…!」

眼鏡娘「!その声…」

眼鏡娘「……元気娘ちゃん…?」フリムキ

元気娘「えっへへー正解♪」

眼鏡娘「な、なんで元気娘ちゃんが…?病院にいるはずじゃ…??」

元気娘「起きたの!いつまでもぐーすか寝てる私じゃありませんから」

元気娘「そしたらさ、なんか眼鏡娘ちゃんをどうこうするとか変な話が聞こえてきてさ、心配で思わずここまで来ちゃったんだよね」テヘヘ

眼鏡娘「……ここまでって……」

眼鏡娘「元気娘ちゃんは、私を見つけて、私を……消しに来たんじゃないの…?」

元気娘「?何言ってるの?そんなことするわけないじゃん」

元気娘「私は眼鏡娘ちゃんを守りに来たの!」

元気娘「大事な友達だもん」ピース

眼鏡娘「っ……」

眼鏡娘(───!)

眼鏡娘「」バッ!

元気娘「にゃ!?」

眼鏡娘「……」ギュー

元気娘「眼鏡娘ちゃん…」



眼鏡娘「」ギュー

元気娘「……あたた。あのね、左手折れてるみたいだからすこーし加減してくれると嬉しいかなー…って」

眼鏡娘「………ありがとう……本当に…!」

元気娘「……ね、何があったか分からないけどさ、私は絶対眼鏡娘ちゃんの味方だからね」

眼鏡娘「うん……嬉しい……」

眼鏡娘「……元気娘ちゃん。私のメモ読んだ?」

元気娘「読んだよ!こんなとこから逃げ出したらさ、また遊びに行こ!……けど、プレゼントせっかく驚かせようと思ってたのになぁ」

眼鏡娘「謝りたいことがあるの」

元気娘「…?あ!許してくれるとしたら、ってやつ?」

眼鏡娘「うん」

眼鏡娘「…元気娘ちゃん、ごめんなさい。私、長いこと元気娘ちゃんのこと避けてた。いっぱい話しかけてくれてたのに、振り払うようにしてた」

眼鏡娘「それにね……大切なものを、無断で奪った……」

眼鏡娘「だから、ごめんなさい」

元気娘「………」

元気娘「…よかったぁ、嫌われてたんじゃないんだ」

眼鏡娘「嫌いじゃないよ、好きだから!」

元気娘「告白されちゃった」ニシシ

元気娘「大切なものを奪ったとか、よく分からないけど、私はそんなことでへこたれないよ!」

元気娘「──というわけで、お主を許してしんぜよう」

眼鏡娘「……ふふ、なぁにその口調」

元気娘「和むかなーって思って」

眼鏡娘(……でも良かった、これでもう……)



スクッ



元気娘「?…どうしたの?立ったりしたら見つかっちゃうよ…!」

眼鏡娘「うん、いいの。これから私、あの人たちのところに行ってくるから」

元気娘「え…」

元気娘「何言って……」



眼鏡娘「だって考えてもみて。きっと私と元気娘ちゃん以外の皆、私が異常な存在だと思ってる。…それってさ、もう私はこの世界から爪弾きにされてるってことなんだよ」

眼鏡娘(それがあのアプリのせいでも、元を辿れば根本の原因は私)

眼鏡娘「だったら抵抗なんてしないで大人しく従うしかないの」

眼鏡娘(私が引き起こしたこの異常は、私が終わらせないと)

眼鏡娘「……最後に元気娘ちゃんに会えて嬉しかったよ。もし私がいなくなっても、忘れないでくれるといいな…なんて」

元気娘「待って……待ってよ!」

元気娘「ただでさえ分からないことだらけなのに、また意味分かんないこと言わないで!」

元気娘「なんで眼鏡娘ちゃんが消えなきゃいけないの?また一緒に遊びに行くんじゃないの?」

元気娘「勝手に一人で諦めないでよ!」

眼鏡娘「……強いね、元気娘ちゃんは」

眼鏡娘(辛くないはずない怪我をしてるのに、こんなところまで来て私を見つけてくれて)

眼鏡娘「さようなら」

眼鏡娘(そんな強さが私にもあれば…)ガサ...

元気娘「…っ!」



ガシッ グイッ!



眼鏡娘「わっ…」



──パシンッ



元気娘「………」

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(頬、打たれた…?)

元気娘「……だめだよ……」

眼鏡娘「……」

元気娘「眼鏡娘ちゃんは、そうじゃないんだよ……」

元気娘「……あの時、私を変えてくれたヒーローなんだから…!」

眼鏡娘「……ヒーロー……?」

元気娘「…覚えてる?私のこと…」

ファサ...(前髪を垂らす)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(目元が少し隠れて、いつもより暗い印象……)

眼鏡娘「…………!!」



ーーーーー

「──あの……何か用…?」

ーーーーー



眼鏡娘「まさか………内気娘、ちゃん……?」

元気娘「……」ニコッ



===数年前===

「──内気娘、この人があなたの新しいパパよ」

「よろしくね、内気娘ちゃん」





子の心親知らず、なんて諺をこの時はまだ知らなかったな。





「──なー!お前ん家のお父さんって、ほんとのお父さんじゃないんだって?」

「まじで!?あれかな?大人の離婚問題ってやつぅ~??」

「やめなさいよ男子!最低よ!」





子供の無邪気な悪意が怖くなったのも、おんなじ年だったっけ。

それでね、私のヒーローに出会ったのも、

──その年の夏だった。




ーーー公園ーーー

内気娘「……」キーコ...

内気娘「……」キーコ...

内気娘(……また、飛び出してきちゃった)

内気娘(ここのブランコ乗るの、もう何回目だろ…)



ーーーーー

内気娘母「もう!何度言ったら分かるの!?パパに挨拶を返しなさい!無視なんて人として最低なことなんだからね!?」

内気娘「……最低なのはどっちよ。わたしは今のパパなんか要らなかった!わたしの気持ちを無視したのはママじゃない!」

内気娘母「この子は……ちょっとこっちに来なさい!」

内気娘「嫌!」ダッ!

ーーーーー



内気娘「……はぁ……」

内気娘(ママはわたしよりあの人の方が大事なんだ。きっと私なんかどうでもいいんだ)

内気娘「……」

内気娘(……夏休みに入って、みんな変な目で見てくる学校に行かなくてよくなったのに……)

内気娘(忘れてた。学校に行かないってことは家にいる時間が増えるってことだ)

内気娘(今の家にはあの人がいる)

内気娘「……わたしってどこにいればいいのかな」

内気娘「………グスッ」





「おぉ!第一村人発見!」





内気娘「…?」チラッ

幼眼鏡娘「では早速、何をしているのか訊いてみましょー!」トコトコ

内気娘(え、え?何あの子、こっちに来る…)



幼眼鏡娘「……」フンス!

内気娘「あの……何か用…?」

幼眼鏡娘「……今、何してたんですかー?」

内気娘「え?…ブランコ…」

幼眼鏡娘「楽しいですかー?」

内気娘「あんまり…」

幼眼鏡娘「えー?第一村人面白くないよー。これじゃカットされちゃうよー?」

内気娘「な、なにが?」

幼眼鏡娘「知らない?有名な旅番組!」

内気娘「知ってるけど…」

幼眼鏡娘「なら話は簡単!ねーねー私さ、ここ初めて来たんだ!あなたこの辺りに住んでるんだよね?」

内気娘「うん」

幼眼鏡娘「じゃあ案内して!ついでにこういうとこでしか出来ない遊びとかも教えて欲しいです!!」ズイッ

内気娘「いいよ…いいから…!ちょっと近過ぎ…!」

幼眼鏡娘「ではでは、まずこの公園から!」

内気娘「……?普通の公園だよ」

幼眼鏡娘「」ジー...

内気娘「…えと、ブランコがあります。あとシーソーと……」

内気娘「……毛虫の湧く木」

幼眼鏡娘「………」

内気娘「………」

幼眼鏡娘「却下で」

内気娘(どうしろと)





台風みたいな子だなーって思ったよ。

でも気付けば、それから毎日一緒に遊んでた。




──ある時は近場の案内



幼眼鏡娘「そーいえばさ、あなた名前は?」テクテク

内気娘「内気娘だよ。そっちは?」テクテク

幼眼鏡娘「私はね…」フッフッフ...

幼眼鏡娘「あなたを助けに来た正義のヒーロー!」シュバッ

幼眼鏡娘「…なーんちゃって、これあんまりやってるとママにみっともないって怒られちゃうんだよね」

内気娘「……ヒーロー……」

幼眼鏡娘「あ!ね、あそこのお店なに!?なんかお菓子みたいなのいっぱい置いてない!?えっと………ば、がし…?」

内気娘「だがし、だよ」






──ある時は川辺で



パシッ、パシッ、パシッパシッ、ポチャ



幼眼鏡娘「わぁ…」

幼眼鏡娘「見た見た!?今4回も跳ねたよ!これもう水切りのプロって言ってもいいんじゃないかなー!」

内気娘「……これかな」ヒョイッ

内気娘「……」ザッザッ

内気娘「」シュッ!



パシッ、パシッ、パシッ、パシパシパシッ、パシッパシシシシッ、ポチャ



幼眼鏡娘「……」ポカン

内気娘「せめてこれぐらいは出来ないとね」ドヤ

幼眼鏡娘「むむむ…」




──ある時は土手で



幼眼鏡娘「こんな段ボールで滑るの?」

内気娘「そう。そり滑りっていうんだけど、ここの子たちはみんなよくやってるよ」

幼眼鏡娘「結構急なところ滑るんだね」

内気娘「うん。途中で無理に止まろうとしたりすると逆に危ないから、もし怖いようならもう少し緩い坂で──」

幼眼鏡娘「やっほーー!」シュゥーー

トサッ

幼眼鏡娘「…これ結構スリルあって楽しい!」

内気娘「……ならよかった」フフッ







──ある時は雑木林で虫取り



幼眼鏡娘「……」フルフル

内気娘「…虫、ダメなの?」

幼眼鏡娘「」コクコク



──は出来なかったけど。







一日一日がすごく楽しかった。

久しぶりにたくさんはしゃいじゃった気がした。

そしてそんなある日──




>>98
フジリューはジャンプで封神演義を連載してた漫画家だよ短編は独特の世界観のあるやつ多くて凄い面白いよ

ーーー公園ーーー

幼眼鏡娘「……」カキカキ

幼眼鏡娘「……」カキカキ

幼眼鏡娘「……よし」

幼眼鏡娘「」ケンケンパ

内気娘「……」トボトボ

幼眼鏡娘「よっ、ほっ……あ、来た来た」

内気娘「……」

幼眼鏡娘「今日は少し遅かったね?寝坊でもしちゃった?」

内気娘「………」ジワ...

内気娘「ヒック、グスッ……うえぇぇん……」ポロポロ

幼眼鏡娘「え」



.........





幼眼鏡娘「──そっか。新しいパパ、か」

内気娘「うん……いっつもママと喧嘩になっちゃうんだけど、今日は私も急いでたから思わず言い過ぎちゃって、そしたら……」



ーーーーー

内気娘母「──もうあんたなんかうちの子じゃないわよ!!」

ーーーーー



幼眼鏡娘「……」

内気娘「……」

内気娘「…ママはわたしのことなんて考えてないの」

内気娘「わたしがどんな気持ちでいるか、学校で何を言われてるか、絶対知らない」

幼眼鏡娘「……」

内気娘「…それでね、わたしって必要とされてないんじゃないのかなって思っちゃうの」

幼眼鏡娘「そんなわけないじゃん」

内気娘「え…?」

幼眼鏡娘「だってまず私が必要としてるもん。あなたの笑った顔。…ね、ニッコリ笑ってみてよ」

内気娘「……こーお?」

幼眼鏡娘「プッ…あはは!なんかそれこわいよー!」

内気娘「ひどーい!もうしてあげないもん!」

幼眼鏡娘「ごめんってば。バカにする気はなくてさ」


幼眼鏡娘「もったいないよ。せっかくそんなにかわいー笑顔が出来るんだから」

内気娘「むー…」

幼眼鏡娘「もっと元気に笑えばいいの!その方が案外楽しいよ?」

内気娘「元気に…?」

幼眼鏡娘「そ!」

幼眼鏡娘「…内気娘ちゃんはさ、その新しく来たパパのこと嫌いなの?」

内気娘「………嫌い、じゃない。悪い人じゃなさそうだし、ママのことも、わたしのことも気にかけてくれて…」

幼眼鏡娘「ならいいじゃん」

内気娘「…え?」

幼眼鏡娘「内気娘ちゃんがそう思えてるなら、絶対仲良くなれるでしょ?ほら、こーやってさっきみたいにニコッて笑ってあげれば大丈夫!」ニコッ

内気娘「……」

幼眼鏡娘「……正直さ、誰が何考えてるかなんて知りようがないよ。明るく笑ってる裏では泣いてるかもしれないし、同情してる裏では意地悪く笑ってるかもしれない」

幼眼鏡娘「内気娘ちゃんのママが内気娘ちゃんのことどう思ってるかなんてことも分からないけど……どうでもいいとは考えてないと思う」

内気娘「…絶対違う」

幼眼鏡娘「違わないよ。……ねぇ、昨日の夕ご飯は何だった?」

内気娘「?ご飯?……普通のご飯に、お味噌汁に、豚のしょうが焼き、きんぴらごぼうと、あと…」

幼眼鏡娘「誰と一緒に食べたの?」

内気娘「いつもと同じだよ。ママと、あの人と……」

幼眼鏡娘「……ね?」

内気娘「??」

幼眼鏡娘「私のママが言ってた。ご飯一緒に食べるのは、たくさんお話がしたいからだって」

幼眼鏡娘「楽しく食べて、ずっと仲良しでいられるように……それが家族えんまん?の秘訣なんだってさ」

内気娘「……」

内気娘(ママと、あの人が…私と……?)

幼眼鏡娘「………」ソー...

ツン

内気娘「うひゃっ!?」バッ

幼眼鏡娘「ふっふっふ、脇のガードが甘いよー?」

内気娘「……んもー!お返し!!」ガバッ

幼眼鏡娘「おわっ!待って!倒すのは反則──!」

ドタバタ



.........




ーーー夕方ーーー

内気娘「ちょっと暗くなってきたね。もう帰ろうか」

幼眼鏡娘「そうだねー。こんな公園だけでも、意外と遊べること多いんだね」

内気娘「田舎の遊び知恵を舐めてもらっちゃ困りますよ、都会人さん」

幼眼鏡娘「でもこっちにはゲーム機とかなさそうだよね?」

内気娘「……ノーコメント」

幼眼鏡娘「図星なんだ」ニヒヒ

幼眼鏡娘「……内気娘ちゃんて、この夏休み他の子と遊んだりしてないの?」

内気娘「そ、れは……」

内気娘(……)

内気娘「…いないの。友達」

内気娘「だって周りの子みんな、変な目で見てくるんだもん。面白がってるか、哀れんでるか、大体どっちか…」

内気娘「そんなの、友達じゃない」

幼眼鏡娘「……」





幼眼鏡娘「じゃあわたしが友達になってあげるよ!」





内気娘「─!」

幼眼鏡娘「というか、こんなに遊んでるんだからもうとっくに友達だよね!」

幼眼鏡娘「私、夏休みの間しかこっちにいないけど、そんな期間限定の珍しい友達、いかがでしょー」

内気娘「………」

内気娘「……くふっ、あはははっ」

内気娘「期間限定なんてケチケチしないで、年中販売してよー」ケラケラ

幼眼鏡娘「レアものですから!」

内気娘「……うん、よろしく」

内気娘「わたしとお友達になって下さい」ニッ




ーーー内気娘の家ーーー

...ガチャ

内気娘「……」ソ...

パタン

内気娘「……あ」

内気娘母「……」

内気娘「……」

内気娘母「…おかえり。ご飯出来てるわよ。席着いちゃって」

内気娘「………」

内気娘「ママ!」

内気娘母「?」

内気娘「……その、ごめんなさい」

内気娘母「………ママもごめん。怒ってあんなこと言っちゃって」

内気娘母「内気娘はちゃんとママの大切な子だからね」

内気娘「!……うん!」

内気娘母「ご飯、冷めちゃうから食べましょ」

トッ、トッ、トッ

内気娘父「お」

内気娘「っ」

内気娘(………)



ーーーーー

幼眼鏡娘「──内気娘ちゃんがそう思えてるなら、絶対仲良くなれるでしょ?」

ーーーーー



内気娘父「おかえり。帰ってたんだな」

内気娘「……」

内気娘父「…飯にしようか」ストッ



内気娘「ただいま、パパ」ニコッ



内気娘母・父「「!!」」

内気娘父「……あ、あぁ!おかえりだ!おかえりなさい!」

内気娘「ふふっ、そんないっぱいただいまは言えませんー」

内気娘(あぁなんだ)

内気娘(ママたちがわたしを見ようとしなかったわけじゃない)

内気娘(わたしが二人を突き放してたんだ)

内気娘(……♪)





気付ければとっても簡単なこと。

そのことが嬉しくて嬉しくて、早く伝えたくて、次の日はいつもより1時間くらい早めに家を出たなぁ。


ーーー翌日ーーー

内気娘「」タッタッタッ!

内気娘(早く…早く会いたいな…!)

内気娘(あなたのおかげで仲直り出来たって、パパの前で自然に笑えたよって)

内気娘(教えたい!)

内気娘「」タッタッタッ!

タッタッ...

内気娘「はぁ、はぁ…」



(無人の公園)



内気娘「…さすがに、まだだよね」

内気娘(急いで来過ぎちゃった)

内気娘「……早く来ないかなー」






ーーー数十分後ーーー

内気娘「……」ジー

(アリの行列)

内気娘「……」ジー

内気娘(あ、ぶつかった)

内気娘「……」ジー







ーーーさらに数十分後ーーー

内気娘「……」キーコ...

内気娘「……」キーコ...

内気娘(……まだかな)

内気娘(いつもならとっくに来てるはず…)



ザッザッザッ



内気娘「!」カオアゲル

老婆「あらやっぱり」

内気娘「…?おばあちゃんどちら様ですか?」



老婆「ねぇあなた、近頃同じくらいの女の子と二人で遊んでたわよねぇ?」

内気娘「み、見てたんですか…?」

老婆「それは聞こえるわよ。あれだけ元気に遊んでるんだものねぇ」ホッホッ

老婆「…それでね、あの子なんだけどねぇ……あそこのおうち、毎年息子さんの家族が夏の間ここに帰って来るんだけど、今年は何でも急な仕事が入ったとかで、今朝早く戻っていっちゃったらしくて…」

内気娘「……え……」

老婆「住んでるおじいさんも、孫がすぐに帰っちゃったって嘆いてたわねぇ」

老婆「毎日遊んでたお友達が、今日もここで待ってるんじゃないかと思って来てみたんだけど…教えることが出来て良かったわ」

内気娘「……そう、ですか」

内気娘「ありがとうございます……気にかけてくれて…」

老婆「いーえ。遊んでるあの子、とても楽しそうだったからねぇ……きっとまた来年も会えるわよ」

内気娘「はい……」

老婆「それじゃ、おばちゃんはもう帰るけど、あなたも暑さには気を付なさいな」テクテク

内気娘「……」ペコリ

内気娘「……」

内気娘「………」

内気娘(………)

内気娘「……ぅ……」グスッ...



ーーーーー

幼眼鏡娘「──もっと元気に笑えばいいの!その方が案外楽しいよ?」

ーーーーー



内気娘「……!」グッ

内気娘(泣いちゃだめ……)

内気娘(あなたが教えてくれた、楽しく生きていくための秘訣)

内気娘「……」ホホムニムニ

内気娘「」ニィッ

内気娘(明るく笑うこと)

内気娘「……ありがとう」





内気娘「私のヒーローさん」ニコッ





=======




ーーーーーーー

元気娘「結局、あの後私が引っ越しちゃったから眼鏡娘ちゃんと会うことはなかったんだけどね」

元気娘「だから入学式の日の自己紹介でさ、眼鏡娘ちゃんを見たときは本当にびっくりしたんだよ?名前も知らなかったけど一目で分かったもん。あのときの子だ!って」

眼鏡娘「……気付かなかった、元気娘ちゃんがあの、内気娘ちゃんだったなんて……」

元気娘「今のパパの名字に変わっちゃったからね」

眼鏡娘「それもだけど……全然雰囲気違うから」

元気娘「えへへ……ヒーローさんのおかげです」

元気娘「……あなたは、昔の私を救ってくれた。今の私があるのはあなたのおかげ」

元気娘「──だから!今度は私が眼鏡娘ちゃんを助ける番なの!」

元気娘「また友達を置いてどっかに行くなんて、許さないんだからねっ」

眼鏡娘「………ふふっ」

眼鏡娘「本当に変わったね、元気娘ちゃんは。なんか小さい頃の私を見てるみたい」

元気娘「リスペクトしてますので!」

眼鏡娘(……ダメだなぁ、私)

眼鏡娘(こんなに真剣に私を見てくれる人がいるのに、自分しか見えてなかった)

眼鏡娘(逃げよう。それで生き延びて、必ずこの事態を解決しよう)

眼鏡娘「元気娘ちゃん、私もう一回目指してみようと思う」

元気娘「んー?」

眼鏡娘「ヒーロー。それで元気娘ちゃんをまた笑わせてあげる」ニコッ

元気娘「…!」パァァ

元気娘「うんっ!」

眼鏡娘「でも、どうしよ。まずはここから逃げ出さなきゃいけないよね…」

元気娘「ちっちっちっ」

元気娘「眼鏡娘ちゃん、私がなんの考えも無しにここまで来たんだと思ってる?」

眼鏡娘「へ?」

ゴソゴソ

元気娘「じゃーん!これなーんだ?」

眼鏡娘「ん…?……!私のスマホ…!」

元気娘「ピンポン!山の下で眼鏡娘ちゃん探そうとしたら見つけたの!」




元気娘「あと、上まで来るとき男の人に連れてきてもらったんだけど、眼鏡娘ちゃんを追ってるフリしてその人から山の警備状況を聞き出したのです」

元気娘「スマホのメモに全部書いておいたよ!東側にいるかもって撹乱したことも!」

眼鏡娘「元気娘ちゃん…!」

眼鏡娘「いつも頭の中楽しそうとか思っちゃっててごめん…出来る子だよ、あなたは!」

元気娘「今の後で問い質すリストに入れといたからねー…」

眼鏡娘「じゃ、これ見ながら行こっか!枝が結構痛いから顔は守りながら歩いてね」

元気娘「いやいや、私は行けないよ?」

眼鏡娘「……え」

元気娘「だってほら、この足だからね」

眼鏡娘「でも、じゃあ……」

元気娘「だーいじょうぶ!周りの人たちに紛れて私も下りるから!」

元気娘「そしたら自分のスマホ取りに帰って、眼鏡娘ちゃんにLINEするよ。誰もいないとこで集まって、この後どうするか決めていこ?」

眼鏡娘(そっか、元気娘ちゃんは別に狙われても何でもないもんね)

眼鏡娘「……分かった。気を付けてね、元気娘ちゃん」

元気娘「それは私の言葉だよ」

元気娘「さ、行って行って。見つからないように見張ってるうちに!」

眼鏡娘「…また後でね」

元気娘「また後で」ニッ



ガサガサ ガサッ

ガササ...



元気娘「……」

元気娘「……行った、よね」

元気娘「ふぅー、見つけられて良かった、本当に」

元気娘「やっぱりさっきの猫ちゃんの後追いかけて正解だった」

元気娘「でもなー、私が内気娘だってこと、もっと違う時に思い出して欲しかったなぁ」



ーーーーー

眼鏡娘「──私もう一回目指してみようと思う………ヒーロー」

ーーーーー



元気娘「……ま、いっか!」

元気娘「さてさて、私もそろそろ戻りますかね」ガサ



ガサガサガサ



元気娘「いたた……眼鏡娘ちゃんの言う通り枝がよく擦れる…………!!」

老人「……」

青年「……」

他数名「「「……」」」

元気娘「……お迎えに来てくれたんですか?ありがとうございますっ」

老人「………ふむ、遅かったか」





眼鏡娘「!」

眼鏡娘(今聞こえたの……あのおじいさんの声…)

眼鏡娘(……元気娘ちゃん……)

眼鏡娘「………」

(そっと引き返す)





元気娘「遅い、ですか…?それよりこの辺りにはいませんでしたよ。やっぱり東側の方に──」

老人「娘さんや、ままごとはもうよい」

老人「あの子をどこへやったんじゃ?」

元気娘「…ですから私もそれを探していて…」

老人「もうよいと言うとろうに」

老人「初めから怪しかったんじゃ。まともに階段を登れぬ身でなぜこの祭りに来る?下手な嘘をついてでも探し出したかったのじゃろう」

老人「あの子を逃がすために」

元気娘「……」

老人「さあ、言いなさい。あの子はどこへ向かったのかね?」

元気娘「……知りません」

元気娘「知ってても、あなたたちには教えない」キッ

老人「……仕方ないの」

老人「おい」

「おう」



眼鏡娘(……戻ってきちゃった)

眼鏡娘「」ソー...

眼鏡娘(…!)

眼鏡娘(なんで元気娘ちゃんが囲まれてる…!?)

眼鏡娘(それにあの男の人…パイプみたいなの持って、元気娘ちゃんの方に……)

眼鏡娘(何、するつもりなの……?)



「……」ザッザッ

元気娘「……」

「……女の居場所は?」

元気娘「…知りません」

ブォン!

元気娘「ぐぁっ…!」



眼鏡娘(!?)

眼鏡娘(思いっきり……!)



老人「痛いじゃろう?そうでなくともお前さんの身体はボロボロなんじゃ。無理はせぬ方がよい」

「俺に女を痛めつける趣味はないんだがなぁ」

元気娘「ぃ……」ウズクマリ

老人「もう一度訊くぞ?あの子をどこへやった?」

元気娘「………ない」

老人「ん?」

元気娘「死んでも、言わない……!」

老人「……」

老人「皆の衆、聞こえたな?」

老人「……望み通りにしてあげなさい」

ゾロゾロゾロ



眼鏡娘(いや…待って……やめて……!)



ブン!

元気娘「ぎゃっ!」

ドスッ!

元気娘「ぅぐ…」

ガン!

元気娘「!……」

ドカッ、ゴスッ、バキッ



眼鏡娘(やだ……元気娘ちゃん…!)

──助けなきゃ

眼鏡娘(でも私一人が行ったところで……)

──私は彼女のヒーローなんだよ?



ドゴッ、ガスッ



眼鏡娘(あ……あぁ……)

──なのにどうして、足が動かない

眼鏡娘(お願いです……どうか、助けて下さい…)

眼鏡娘(誰でもいい…!元気娘ちゃんを……!)

眼鏡娘「……っ」ギュッ(目を閉じしゃがみ込む)



.........




undefined

>>100が抜けてますね。なぜか1レスで投稿できないので、2つに分けて投下します。
以下、>>100です。



ーーー山頂 神社境内ーーー

老人「それでは、まだ見つかっていないのですかな?」

青年「はい。西側で目撃されてから総出で探しているんですけどね…もう山を離れたのではと言い出す人もいます」

老人「……藪の中に隠れているのやもしれません。もう少し丁寧に捜索するように伝えてもらえませぬか?」

青年「分かりました」

老人「すまんのう……わしがこんな老体でなければ共に探しに出るのじゃが…」

青年「いいんですよ。ここで情報のハブをしてくれるだけで十分助かってますから」

老人「そうかね」

老人「……あの子は必ず滅さねばならん」

青年「えぇ」





「おい!おーい!」トットットッ





>>122の続きです。



老人「?」

青年「石階段の方から…?…ってあんた、その子はなんだ?まさか怪我でもさせたんじゃ…」

「そんなわけないだろうが。この子がな、下の方で右往左往してたから何してるのか訊いてみたら、なんと探してる子の同級生なんだと!」

老人「ほう」

「で、怪我してるらしくてな、居場所が分かるかもって言うからここまで連れてきたんだ」

青年「本当か!君、あの子はどこに居るんだい?」



元気娘「……」



元気娘「はい!実は私、眼鏡娘ちゃんと今日お祭りに行く約束をしてたんです。待ち合わせ場所は東側の麓なんですけど…」

元気娘「私と彼女、とっても仲良かったので、もしかしたら私を探してそっちに行っているのかなって」

青年「東側か。あまり人手を割いていなかったな」

青年「…よし、西側の人員を東側にも向かわせるよう伝えてくれ」

「おうよ!」タッタッ

青年「君も、わざわざご苦労様。そんな身体で疲れたろう。ここでおじいさんと居るといい」

元気娘「…いえ、私も行きます」

青年「申し出は有難いが、彼におぶってもらって来たくらいだ、段差登るのも難しいんだろう?」

元気娘「ちょっとふらつくだけで歩けはします!この辺りに隠れてるかもしれませんので、探してみます」

青年「そうかい?なら俺も付いていくよ」

元気娘「いえいえ!本当に近くを見て回るだけですから!私だけで平気ですよ!」

元気娘「見つけたら大声出して知らせられるくらいの距離にいますから!」

青年「……分かった。無理はしないようにね」

元気娘「はい!」

老人「……」






ここから>>101に続きます。

>>109
確か宝貝とか出てくるお話でしたよね。
アニメが好きで見ていました。ナタクのキャラとか好きだった気がします。

ーーーーーーー

老人「……もうその辺でよいじゃろう」

「「「……」」」





元気娘「」





青年「…最後まで口を割りませんでしたね」

老人「とんだ時間の無駄をした。既にあの子はここを離れとるじゃろうが……山にいる全員に至急伝えておくれ。中腹付近から包囲網を作り、狭めていくようにと」

青年「分かりました」タッタッタッ...

老人「………」

元気娘「」

老人「若い大事な命を粗末にするとは、勿体ないことをするのう」

老人「…わしらも移動しよう。この娘さん、人手の薄い場所をあの子に教えているはずじゃ。そこを重点的に見張ってゆかねばならん」



ザッザッザッ...



.........





元気娘「」



...ガサ

タッタッタッ



眼鏡娘「元気娘ちゃん!」タッタッ



元気娘「」

眼鏡娘「あ……そんな……」

眼鏡娘(……息、してない………脈も……)

眼鏡娘「やだ…やだよ、元気娘ちゃん…!」

眼鏡娘(どうしよう、どうすればいい?)

眼鏡娘(心臓マッサージとか人工呼吸とかって効果あるのかな今から救急車呼べば助かるかもけど来た人たちもおかしくなってたら?)

眼鏡娘(どうしようどうしようどうしよう)

眼鏡娘「……っ……!………?………」

眼鏡娘(……あああ!)

眼鏡娘「どうすればいいのっ!!?」ダンッ!





「諦めなよ。その子はもう死んでる」





眼鏡娘「っ!」バッ

眼鏡娘「え……」

眼鏡娘「……男、くん?」

男?「……へぇ、君にはあの少年に見えるわけだ」テクテク

眼鏡娘「…?どういう意味…?」

男?「そのままだよ。君にとって僕は男くんなんだ」

眼鏡娘「………あなた、男くんじゃないわね」

男?「フッ」

眼鏡娘「誰なの?…いえ、この際あなたでもいい。この子を、元気娘ちゃんを助けてあげて…!」

男?「無駄だって。死んだ人間は生き返らない」

男?「でも悲しいなぁ。僕のこと忘れちゃった?僕はちゃんと覚えてるのに」

男「──君にもらった水の味」

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「!!」



ーーーーー

黒猫「」ペロペロ

ーーーーー



眼鏡娘「……黒猫さん」

男?「……」ニィ



眼鏡娘「……やっぱり、あなたの仕業だったんだ」

眼鏡娘「私の時間を戻したのも、世界をおかしくしたのも……元気娘ちゃんを痛めつけたのも!!」

男?「えー?人聞きの悪いことを言わないで欲しいなぁ」

男?「僕は君の手助けをしただけに過ぎないのにさ」

眼鏡娘「手助け…?」

男?「そう」

男?「嫌いなもの、重力」

眼鏡娘「っ」

男?「そんなどうしようもないものが嫌いだなんて、世の中生きにくいよね?だから、好きになってくれるようプレゼントをあげたんだ」

眼鏡娘「………"Gravities"」

男?「理解が早くて嬉しいよ。どうだった?我ながら素敵な贈り物だと思ってるんだけど喜んでもらえたかな?」

眼鏡娘「……ふざけないで……」

男「ん?」

眼鏡娘「ふざけないでよっ!」

眼鏡娘「喜べるわけないじゃない!私をこんな異常な世界に閉じ込めておいて!苦しめて!何よりあなたは、私の大事な友達を…殺した!!」

男?「…君はとことんわがままだね」

男?「言ったじゃないか、僕は手助けをしただけだって。この状況はみんなみーんな、君が望んだ結果だろう?」



男?「過去をやり直したいと願ったのも」



ーーーーー

眼鏡娘「──もう一度やり直せたらなぁ」

ーーーーー



男?「この世界から隔絶されたいと願ったのも」



ーーーーー

眼鏡娘「──こんな世界から私が浮きたい気分」

ーーーーー



男?「君がそう望んだから、僕は聞き届けてあげたんだよ」

男?「僕のおかげで、あの少年と恋仲になれたじゃない。…余計な邪魔に阻まれずにね」

眼鏡娘「……余計な?それ、元気娘ちゃんのこと…?」

眼鏡娘「……」ギリッ

眼鏡娘「元気娘ちゃんは余計でも邪魔でもない!私が元気娘ちゃんを突き放してたのだって、あの碌でもないアプリのせい!」

眼鏡娘「そもそも私は時間を戻して欲しいなんて頼んでないのに、あなたが勝手にしたことじゃない!」

眼鏡娘「余計なことしたのはあなた!元気娘ちゃんを返してよ!!」

男?「………」

男?「……あのさ、いい加減にしたらどうだい」

男?「君はいつまで他人任せにすれば気が済むのかな」

男?「いつもそうだよね。自分から動こうとしない。それでいて都合のいい結果だけは望むんだ」

男?「だから想い人をとられる。だから……」



元気娘「」



男?「…この子を見殺しにする」

眼鏡娘「……っ」



男?「かわいそうにね、せっかく重い身体を引きずって友達を助けに来たのに、その友達は助けてくれないなんてさ」

男?「僕が君の元まで案内してあげたのに」

眼鏡娘「……あなたが連れてきたの?」

男?「この辺を彷徨ってたから目印になってあげたんだよ。ここまで来たのはあくまでこの子の意思」

男?「……痛かった…苦しかっただろうね。殴打され続けて息絶えるなんて」

男?「それでも絶対に君を売らなかった」

男?「なのにさ」ジッ...

眼鏡娘「ちがっ……だって、私がどうこう出来る状況じゃなくて……」

男?「君はこの子のヒーロー?なんだろう?それっていざとなったら見捨てるような人でもなれるものなんだねぇ」

男?「それに助ける手段ならいくらでもあるじゃないか。それこそ君があの場に出て行ってこの子と代わってあげればよかった」

男?「人間はそういう自己犠牲が好きなんじゃないのかい?」

眼鏡娘「………約束、したんだもの……」

眼鏡娘「一緒に逃げようって……」

眼鏡娘「私だって元気娘ちゃんを助けようとしたっ!」

眼鏡娘「……でも、身体が動かなかった……見てることも出来なくて……そのまま……」ツー...

眼鏡娘「……ぅ……グスッ……」ポロ..ポロ..

男?「…つまり、見捨てたわけだ」

眼鏡娘「違うもん…!元気娘ちゃんは私の大切な人で……見捨てるつもりなんかこれっぽっちも……」ポロポロ

男?「違わないさ。君はこの子がくれた逃げるチャンスもふいにしてのこのこ戻ってきた挙句、ただ居るだけで何もしなかった」

男?「君が殺したんだよ」

眼鏡娘「……私じゃない……私、じゃないもん……」ポロポロ

眼鏡娘(──ううん、本当は分かってる)

眼鏡娘「……ぅ……ぁ……」ポロポロ

眼鏡娘(こうなったのは全部、私の弱さのせいだって)

眼鏡娘「うぁあああぁ……!」ポロポロ

元気娘「」

眼鏡娘「ごめん……ごめんね……」ポロポロ

眼鏡娘「こんな私でごめんねぇ……!」ポロポロ...



眼鏡娘(あなたにヒーローなんて言われる資格はない)

眼鏡娘(誰も不幸にしないどころか取り返しのつかないところまで来てしまった)

眼鏡娘(私が壊しちゃったんだ。何もかも……)

眼鏡娘「…………もう………いや…………」

男?「………」

男?「──何も起きなかったことに出来たら」

眼鏡娘「………ぇ?」

男?「………」

眼鏡娘「今、なんて……」

男?「……ヒントをあげるよ」





男?「嫌いなものは何ですか?」





眼鏡娘「……それは、どういう──」フリカエリ

眼鏡娘(……いない……)



眼鏡娘「………」

眼鏡娘「嫌いなもの……」

眼鏡娘「……重力」

眼鏡娘(………本当に……?)

眼鏡娘(私が重力を嫌いになったのはいつからだっけ…)

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(そう……内気娘ちゃんと遊んだ時よりは間違いなく後)

眼鏡娘(小さい頃は誰とでも仲良くなれた。今よりずっと積極的な子だった)

眼鏡娘(それが、いつしか少しずつ……思うようにならないことが増えていって、世の中が窮屈だと感じるようになって……)

眼鏡娘(……まとわり付く重力のせいだと思って……)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「………私は………」





「なるほどのう、まさかとは思うたが」





眼鏡娘「っ!」



ザッザッザッ



老人「犯人が現場に戻るように、お嬢ちゃんも戻ってきたわけじゃな」

青年「……」


次回の投稿で完結する予定です。

次の月曜日までには投下出来ると思います。


眼鏡娘「………」

眼鏡娘(………)

眼鏡娘「……人殺し」

眼鏡娘「犯人はあなたたちの方でしょ。こんなこと……同じ人間とは思えない」

老人「ほっほっ。元を辿れば、お嬢ちゃんが逃げ回ったりせずにおればここまで大事にはならなかったのじゃよ?」

眼鏡娘「私が何をしたの!?女の子一人追い回して寄ってたかって殺そうとしてるんだよっ!おかしいと思わないのっ!?」

老人「おかしいのはお嬢ちゃんの存在じゃと、初めから言うておろうに。みなそう思っておるから、こうしてお嬢ちゃんを探しているのではないか」

眼鏡娘(だめ…もう常識は通じない)

眼鏡娘(あのアプリの影響が消えることは期待出来ない……)

青年「…おじいさん、そろそろ」

老人「そうじゃな」

青年「眼鏡娘さんだったかな。君を今すぐどうこうはしない」

青年「まずは山の下に連れて行く。それからなるべく大勢の観衆の前で」

青年「──死んでもらう」

青年「その方が皆納得出来るだろうからね」

青年「ただ…暴れたりおかしな真似をしたりすれば、どうなるかは分からないけど」

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(……諦めない)



ーーーーー

男?「──何も起きなかったことに出来たら」

ーーーーー



眼鏡娘(あの言葉の意味はきっと)



青年「さ、こっちに来て」

眼鏡娘「………」

青年「……はぁ、仕方ない」

青年「抵抗するなよ?」...ザッザッ

眼鏡娘「……っ」

眼鏡娘(逃げるしかない)

眼鏡娘(後ろは林…ここに登ってくるまでも道無き道だったけど、考えてる暇なんかない)

ザッザッザッ

青年「……」スッ(手を伸ばす)

眼鏡娘(…!今っ──)





──タッタッタッ!





「触るんじゃねぇ!」バッ

青年「!?」

ドンッ!

青年「うわっ!」ドサッ

老人「なんじゃお主…!」

眼鏡娘「男くん!?」

男「無事か!眼鏡娘!?」

眼鏡娘「う、うん…今度は本物…?」

男「本物?何言ってるっ!いいから走るぞ!」ガシッ

眼鏡娘「わっ…!」グラ...

...タッタッタッ

眼鏡娘「あ、でもっ、元気娘ちゃんが…!」タッタッ

男「分かってる!けど走れ!お前だけは絶対に助けたいんだ!!」タッタッ

眼鏡娘「──!」タッタッ

青年「くそっ……逃げられると思うな…!」

青年「みんな!!来てくれ!!神社裏手からの道だ!!」



タッタッタッ...




ーーーーーーー

眼鏡娘「はぁ、はぁ……」タッタッ

男「く……どんどん人が増えてるな…」タッタッ

眼鏡娘「はぁ…はぁ……」タッタッ

眼鏡娘「あっ…」ヨロ...

男「眼鏡娘っ」

トサッ(受け止める)

眼鏡娘「ご、ごめん、走りにくくて……」

男「いや、悪い。そんな格好なのに無理に引っ張ってきちゃったな」

眼鏡娘「ううん、ありがとう。助けてくれて」

眼鏡娘「…でもどうして…?」

男「決まってるじゃん」

男「俺は眼鏡娘のヒーローなんだろ?」ニカッ

眼鏡娘(ぁ……)

眼鏡娘「そ、そうじゃなくて、私が言いたいのは……」

眼鏡娘「……私のこと、何とも思わないの?」

男「眼鏡娘を?……あぁ確かに今日起きたら変だったかな」

男「お前のこと考えるだけで尋常じゃない違和感とか、不快感…っていうのか?そんなのを感じた気がする」

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(やっぱり……)

男「だけど、そんなわけないんだよ。俺が眼鏡娘を嫌いになるわけがない」

男「だから思ったんだ。眼鏡娘の言ってたあの話に何か関係してるんじゃないかってな」

男「で、今日の祭りがてら何かあったのか訊こうと待ってたら……いつの間にかこんなことになっててさ」

男「周りの連中なんかよりよっぽど、眼鏡娘のこと探したよ」ハハ



眼鏡娘(……男くんは……)

眼鏡娘「なんでそこまで出来るの…?こんな…私なんかのために……」

男「そりゃ好きな相手だからな」

男「大切な人だから。失くしたくない。まして何も分からんままただ周りに流されてお前を嫌いになるなんて、ごめんだ」

眼鏡娘「!……」フイッ

男「どうしたん?…また泣きそうにでもなってるのかぁ?」ニヤ

眼鏡娘「…ち、がうし……」

眼鏡娘「男くんがあんまりにも格好付けてるから見てられないの」

男「え、そらないよ!」

男「…なんてな。照れ隠し下手だよなー眼鏡娘って」ワシャワシャ

眼鏡娘「あ、髪っ」

眼鏡娘(……強いな。男くんも、元気娘ちゃんも)

眼鏡娘(ヒーローだなんて、この二人にこそぴったり)

眼鏡娘(……多分、昔の私にもそうと言える時期があった)

眼鏡娘(今の私に無くて、彼等にはあるもの……きっとそれこそ……)

男「ぶっちゃけると今だってお前への違和感が消えたわけじゃない」

男「だけどな、こうして一緒にいると思い出させてくれるんだ。俺が何をすべきなのか──」



「いた!あそこだ!」



男「ちっ…前からも…!」

男「……しょうがない。眼鏡娘、こっちだ!」ザリッ

眼鏡娘「うん…!」ザッ

男「細い道だ、足元気を付けてな」サササ

眼鏡娘「今日一日で慣れっこになっちゃったかも」ササ

ザッザッザッ...





かすれた立札『危険!入るな!この先崖!!』




ーーーーーーー

眼鏡娘「……」ザッザッ

男「……」ザッザッ

眼鏡娘(…握られた手が温かい)

男「……」ザッザッ

眼鏡娘(前を進んでいくあなたが、こんなにも力強い)

眼鏡娘(あの頃、内気娘ちゃんにとっての私も、こんな風に見えてたのかな)

眼鏡娘「……ねぇ男くん、私たちどこに向かってるの?」

男「どこだろうな」

眼鏡娘「えぇ……」

眼鏡娘「どんどん道が荒れてきてる…」

男「そうは言っても、とにかく奴らを振り切らないと──って…!?」ピタッ

眼鏡娘「?どうしたの……」

眼鏡娘(──っ)



(小高い崖)



男「……まじかよ……」

眼鏡娘「……どうしよう……引き返す…?」

男「追ってきてるだろうから無理だ」

眼鏡娘「なら崖沿いに進む…」

男「……それしかないか。適当な所でまた山道の方に戻らないと」

男「左に行こう。こっちのがまだ足場がある」

眼鏡娘「分かった」

男「手、絶対離すなよ」

眼鏡娘「うん」



──ガサ



「……」

男・眼鏡娘「「!」」

眼鏡娘(人が……)

男「…右から行くしかないっ」



「……」ザッ...



眼鏡娘「こっちにも……!」

男「このっ…」





ザッザッザッ



老人「もう鬼ごっこはしまいじゃ、お嬢ちゃん方」

青年「…もっと潔い子だと思ってたよ」

他数名「「「……」」」

男「……最悪だ……」

眼鏡娘「……」

老人「それには同意見じゃ、若造よ」

老人「ここまで楽しくない鬼ごっこは生まれてこの方初めてじゃな」

男「……だったら打ち切ったらどうだ?」

老人「無論終幕じゃよ」

老人「お嬢ちゃんの死を以っての」

眼鏡娘「っ……」

老人「お前さんも分かっておるだろう。その子がどんなに"浮いた"存在であるかを」

男「……それがどうした」

男「俺はお前らみたいな赤の他人じゃないからさ」

男「彼氏なんだぜ。羨ましいだろ」

男「格好の一つや二つ付けさせてもらわないとな」

男(くっ……どこか突破出来そうな箇所はないか…!?)

青年「格好なら既に十分付いてるさ。恋人のピンチに颯爽と現れた――まるでヒーローのようにね。それで満足したろ?」

男「その節はどうも、やられ役さん」

青年「このガキ……」

男(向こうは…ダメだ。あのじいさんの横からなら…いや、奥にまだ控えてる)

「……あのよ、こいつらこのまま突き落としちまえばいいんじゃねーの」

老人「それはよろしくない。万が一にも生き延びられたら面倒じゃ」

男(なにかないか…!切り抜ける道……!)



老人「……若造、交換条件といこうか」

男「……」

老人「その子を引き渡すのなら、お前さんの無事は保証しよう」

男「…眼鏡娘に加担したやつは殺されるってか?いかれた宗教団体みたいだな」

老人「よく考えてみなさい。わし一人がその子を異常に感じ、消そうとしておるならおかしいのはわしの方じゃ」

老人「だがどうじゃ?これほど多くの人間が同じように思っておる。お嬢ちゃんのことはもうこの町一帯に広まっとるじゃろうな」

老人「…もしかすると、今や国中、世界中やもしれぬ」

老人「であるなら、もはやそれが普通じゃろう。おかしいのは──」

老人「──その子の方じゃよ」

男「………」

男「……そうかもな」

眼鏡娘「………」

眼鏡娘(男、くん……)

老人「ようやく理解したかの?……その子をこちらに連れて来なさい」

男「………あぁ」





男「お断りだね」





眼鏡娘「─!」

男「国が、世界がこいつをはぶろうとしてるって?どんだけ大掛かりないじめだよ」

男「全員正しいと思ってるからそうするのが普通……ま、その意見にゃ納得できる。民主主義ってやつだよな?この前習ったぜ」

男「けど悪いな。俺はこいつに生きてて欲しいからさ、お前らの言う普通には賛同できないんだわ」

男「俺には俺のしたいことがある!お前らみたいに何も考えもしないで周囲と同調するだけの人間になれなんざ、願い下げだね!」

眼鏡娘(……──!!)



ーーーーー

男「──何も分からんままただ周りに流されてお前を嫌いになるなんて、ごめんだ」

ーーーーー



眼鏡娘(………そうだったんだ)

眼鏡娘(やっと……はっきり分かった)



ーーーーー

男?「──いつもそうだよね。自分から動こうとしない」

ーーーーー



眼鏡娘(私は重力が嫌い)

眼鏡娘(……だったわけじゃなくて、ほんとはずっと──)



老人「……ふむ」

老人「では、どうする?」

老人「お前さんたちの手でわしらを蹴散らすか?」

老人「それとも……そこから飛び降りでもするかな?」

男「……眼鏡娘」ボソッ

男「俺がじいさんの方に突っ込んでいって、そのまま道を開ける」ヒソヒソ

男「多少もつれ合いになるだろうけど、全力で逃げてくれ。いいな?」ヒソヒソ

眼鏡娘「……」

...ギュ





眼鏡娘「跳ぼう、男くん」





男「……え?」

眼鏡娘「……」ジッ

男「跳ぶって……この崖をか…!?」ヒソヒソ

眼鏡娘「」コクッ

男「いくらなんでもそれは……」ヒソヒソ

眼鏡娘「私を信じて」



ーーーーー

男?「──ヒントをあげるよ」

ーーーーー



眼鏡娘(もしこうなることを分かっていた上でそう言ったのだとしたら)

眼鏡娘(私はここで……!)

男「……よし」

クルッ

眼鏡娘「!」クルリ

老人「……む?」

男「あんな突拍子もない話も信じちまったからな。とことん付き合うよ、眼鏡娘」

眼鏡娘「…本当、大好き」



青年「!まずい、あいつら本当に飛び降りるつもりだ!」

青年「みんな!取り押さえろ!!」ダッ



ドドドドドッ!



男「眼鏡娘!」

眼鏡娘「男くん!」

男・眼鏡娘「せーのっ!!」



バッ!



男「~~!」

男(落ちる…!)

眼鏡娘「……っ」





──フワッ





男「浮いた…!?」

眼鏡娘「」フワリ

眼鏡娘(あ、眼鏡が)グラッ...

スル...

眼鏡娘「…落ちちゃった」



青年「え…!?あれ、浮かんでるのか!?」

老人「なんという…!あの子は魔女の類だったんじゃ!」

老人「皆!何か投げつけて撃ち落とせ!石でも何でもよい!」

ブンッ、ヒュッ!



眼鏡娘「!…しつこい人たち…」

眼鏡娘「男くん、ここから離れよう!」

男「あ、あぁ!」



ススス...




ーーーーーーー



フワフワ



眼鏡娘「……ここまで来れば、もう見えないかな」

男「声も聞こえないしな」

男「…しっかし、俺、空飛んでるのか…?」

眼鏡娘「飛ぶというより、浮くって感じだけどね」

男「自分の身一つで空を……人類の夢一足先に叶えちゃったんだな…」

男「これ、眼鏡娘がやったのか?」

眼鏡娘「んー……分かんないけど、多分違う」

眼鏡娘(きっとあのお節介な黒猫)

男「ほー…でもすごいなこれ!」

クルクル、スイー

男「はは、今ならどこへでも飛んでいけそうだよ!」

眼鏡娘「また子供みたいにはしゃいでる」クスッ

男「はしゃぐなって方が無理だろ!こんなの!」

男「…っと、言い忘れてたけどさ」

男「その浴衣、似合ってるよ。眼鏡も無いと、いつもよりこう……色気があるというか……」

男「少しはだけてるし…」

眼鏡娘「」バッ

眼鏡娘「……そんなこと考えながら一緒に逃げてたの?」ジトー

男「しょうがないんだって……彼女のそんな格好…男の性(サガ)ってやつだ」

眼鏡娘「もう…やらしいんだ」フフッ

男「……けどなー、せっかく浴衣の眼鏡娘と祭り回れると思ったのに、結局ひたすら走っただけだったな」

男「祭りらしいことなんて、何一つ出来なかった……」



ヒュルルルルルルル

ドーン!



男・眼鏡娘「「!」」

眼鏡娘「花火?」

男「みたいだな。あんなことになっても上がるものなのか…」

ヒュルル...ヒュルルル

ドドーン!

眼鏡娘「……お祭りらしいこと、出来たね」ニコッ

男「……そうな」ハハ

男(…!)

眼鏡娘「……」ハナビミアゲ

男(…花火をバックに浮かぶ眼鏡娘の姿は、どんな一流の画家でも描けないだろうってくらい、絵になっていた)



男「……眼鏡娘」

眼鏡娘「?」

男「その、助け出すの遅くなってごめん」

眼鏡娘「え?なんで?今こうやって無事でいるんだから、それだけで──」

男「元気娘さん」

眼鏡娘「─っ」

男「…もう少し俺が早く見つけられれば、あの子も助けられたかもしれない…」

眼鏡娘「……」

眼鏡娘「男くんが責任を感じることじゃないよ。あれは…私が弱かったから起きちゃったこと……」

眼鏡娘(だからもう、あの自分とはお別れ)

眼鏡娘「………男くん、私ね」

眼鏡娘「──帰ろうと思うの」

男「危険じゃないのか…?眼鏡娘の家はとっくにあいつらの仲間が」

眼鏡娘「」フルフル

男「…違う?なら……」

男「!……まさか」

眼鏡娘「……」

男「……前言ってた、"ひと月前の日"……にか?」

眼鏡娘「……そう」

男「おいおい……でもどうやって?」

男「引き出しの中にタイムマシンでもあるとか?」

眼鏡娘「どうしても私をドラえもんにしたいの?」

眼鏡娘「やり方は多分、分かってる」

眼鏡娘「……」ガサゴソ

スッスッ



[送信済みメール]
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from:
sub:アンケートにご協力ください
━━━━━━━━━━━━━━━
Q. 嫌いなものは何ですか?
重力。

━━━━━━━━━━━━━━━



眼鏡娘(……やっぱり残ってた)



ーーーーー

男?「──嫌いなものは何ですか?」

ーーーーー



眼鏡娘「……」

眼鏡娘「男くんは私に戻って欲しくないの?」

男「まあ…」

男「普通に考えて、好きな人が居なくなるなんて嫌だろ…」

眼鏡娘「居なくはならない。またすぐ会えるよ」

男「戻った先で、だよな?その時の俺は眼鏡娘のことを好きになる前の俺じゃんか」

男「あんなに眼鏡娘のかわいいところ知ってる俺が、無かったことになるなんてさー……」

眼鏡娘「……また、好きにさせてみせる」

眼鏡娘「男くんのこと、惚れさせてあげる。今度は私だけの力で!」

眼鏡娘「だから、無かったことになんかならないもん」

男「………」

男「そうかい」フッ

男「……あ、戻ったらさ、教室で寝てる俺のワイシャツ、よーく見てみ」

男「あんとき、ボタン掛け違えてるから」クスッ

眼鏡娘「そうだったの?…からかってやろー」

男「んなことしたら、後日いじり返すからな?そういう性格だから、俺」フフン

眼鏡娘「ふふっ、知ってる」

眼鏡娘「……さて、と」スッ



『このメールを編集しますか?』



眼鏡娘「……」スッ、スッスッススッ

スッ...



『送信しました』



眼鏡娘(……これで……)



男「……なぁ」

眼鏡娘「ん?どうし──んむっ」

眼鏡娘(!?!?)

男「………むぁ」

男「ふぅ…これ、いい雰囲気って言えるんかな」

眼鏡娘「」ポカン

眼鏡娘「…!」

眼鏡娘「な、ななな…今にゃにを……!?」

男「何って、キスだけど」

眼鏡娘「~~っ!!」

眼鏡娘「は…初めてだったんだよ…!?」

男「やりぃ。俺も初めて」ニッ

男「だってよー、癪なんだよなぁ。眼鏡娘と両想いになったのは俺なのに、戻ったらどことも知れない奴が彼氏になるんだろ?」

男「……それが"俺"だとしてもさ」

男「つーわけで、こんくらい報われてもいいよね?」

眼鏡娘「……バカ」

眼鏡娘「バカバカ!ずるいよっ!こんな時にぃ…!」

男「へへっ、柔らかかったなー、唇」

眼鏡娘「言わなくていい!//」

眼鏡娘(ほんっとに!男くんは…!)

男「……ありがとうな」

眼鏡娘「なに??勝手にしといてお礼言うの???」

男「いや」

男「──俺を好きになってくれて」

眼鏡娘「!……」

男「……」

眼鏡娘「……」

男「…前の俺に、よろしく」

眼鏡娘「…うん」



グワン



眼鏡娘(!世界がぼやけてきた…)

眼鏡娘「…私の方こそありがとう」

眼鏡娘「好きになった相手が男くんだったから、すっごく楽しかったし、私が見ないようにしてた自分の嫌いな──」

眼鏡娘(だめ……もう意識が………)



グニャリ...



.........




ーーーーーーー



──ポトッ



眼鏡娘「…………!」

眼鏡娘(学校……戻って、来た…?)

眼鏡娘(……消しゴム)

眼鏡娘「……」ヒロイアゲ

眼鏡娘(………)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……」チラッ



男「」スースー...



眼鏡娘(…同じだ)

眼鏡娘(ということは)

ピロリン

眼鏡娘「……」

スッ、スッ



☆元気娘☆『ごめん!先帰ってて!まだ委員の仕事長引きそう_(:3 」∠ )_』



眼鏡娘「………」

眼鏡娘「」スッスッ



眼鏡★娘『ううん、待ってるよー。今日元気娘ちゃんと帰りたいから』

☆元気娘☆『!!!(゚ロ゚屮)屮』



眼鏡娘「……ふふ」



男「……んぁ…」パチッ

男「やば、寝てた…ってこんな時間か」

眼鏡娘「おはよう、男くん」

男「眼鏡娘さん…?…おはよう」

眼鏡娘「……シャツのボタン、掛け違えてるよ?」

男「えっ……ほんとだ!?」

眼鏡娘「クスッ、意外と抜けてるとこあるんだね、男くんて」

男「い、いや今日は偶々だから…!」イソイソ

眼鏡娘「朝からずっとその状態だったのに?いつ気付くかなーって見てたけど、最後まで気付かないんだもの」フフッ

男「教えてくれよー……」

男「…眼鏡娘さんは意外といじわるなんだ?」

眼鏡娘「そんなことないよ?ボタン掛け違える誰かさんと比べたら」

男「………」

男「」ニヤ

男「あー、明日が楽しみになったなーこれは」

男「ね、眼鏡娘さん??」

眼鏡娘「…そうかもね?」

男「………ははっ」

男「俺はもう帰るんだけどさ、眼鏡娘さんはどうするの?」

眼鏡娘「私は友達を待ってるから、まだ残るよ」

男「ほぉ」

男「……じゃやっぱ明日だな」ボソ

男「明日さ!昼、一緒に食べような!席そっちに持ってくから!」

男「んじゃ、またなー」



ガララ



眼鏡娘「うん、また明日ー」

眼鏡娘(……何されちゃうんだろうなー私)ワクワク

眼鏡娘「……」

眼鏡娘(なんか…男くんにいじられるの、癖になっちゃってるかも…)

眼鏡娘「………」

眼鏡娘「……元気娘ちゃん、後何分で終わるんだろ」



.........




ーーーーーーー



ガラッ!



元気娘「あ、ほんとにいた!」

元気娘「待っててくれてありがとー、眼鏡娘ちゃん!」テテテッ

眼鏡娘「あ……」

眼鏡娘(元気娘、ちゃん)

元気娘「でも2時間くらい待たせちゃったよね…面目ない」

眼鏡娘「……」スッ

ペタペタ(手を触る)

元気娘「へ、なになに?」

眼鏡娘「……ちゃんとあったかい」

元気娘「それは、血が通ってますからなー。…眼鏡娘ちゃんって冷え性だったっけ?」

眼鏡娘「そうでもないけど……冬、背中に手入れて確かめさせてもらっていい?」

元気娘「…!?いいって言うと思うのかな!?ビクッてなるやつだよね、それ!」

眼鏡娘(この子が私と友達でいてくれるのは)



ーーーーー

幼眼鏡娘「──じゃあわたしが友達になってあげるよ!」

ーーーーー



眼鏡娘(私がこの子と友達になったから)



ーーーーー

元気娘「──ずっと友達でいようねっ」

ーーーーー



眼鏡娘(だからこうして、私と一緒に居てくれるんだね)

眼鏡娘「……ね、元気娘ちゃん」

元気娘「んー?」

眼鏡娘「……」





眼鏡娘「私、男くんのこと好きなんだ」





元気娘「!」

元気娘「…そ、そーなんだ」

元気娘「いいじゃん!応援するよ、私!」

眼鏡娘「はいダウト」

元気娘「ふぇ?」

眼鏡娘「だって、元気娘ちゃんも同じでしょ?」

眼鏡娘「男くんを好きなの」

元気娘「……そんなこと……」

眼鏡娘「いいの!私元気娘ちゃんに譲って欲しくて白状したんじゃないから!」

眼鏡娘「……これからはライバル同士だよ、元気娘ちゃん」

元気娘「でも、私、眼鏡娘ちゃんが好きならそれで──」

眼鏡娘「だーめ!遠慮とかしたら怒るからね」

眼鏡娘「私たち、ライバル同士で──」

眼鏡娘「──友達同士なんだから」ニコッ

元気娘「……!」

元気娘「…負けないよ?眼鏡娘ちゃん」

眼鏡娘「私だって」

眼鏡娘(そう、これでいいの)

眼鏡娘(何も出来ない、しようとしない私は置いてきた)

元気娘「…ん!じゃあさ!ライバルになった記念でどっか遊びに行こ!」

眼鏡娘「今から?もう結構な時間だけど…」

元気娘「今日はもう帰るよ!だから明日の放課後!」...テクテク

眼鏡娘「それならいいかな、空いてるし」テクテク

元気娘「この辺りに最近出来たっていう話題のカフェがあるんだけど、そこのパフェ食べながら決起集会しましょー!」

眼鏡娘「あ、ごめん。私その前に明日のお昼男くんと食べる約束しちゃった」

元気娘「えぇ!?早速抜け駆けされたっ!?」

眼鏡娘「一応弁解させてもらうけど、誘ったのは向こうだからね?これはセーフ」

元気娘「なにが!アウトだよー!裏で密かに仲良くなろうと──」

眼鏡娘「そんなこと言って、同じように誘われたら元気娘ちゃんも──」

ワイワイ...



ガララ ピシャリ



.........









[送信済みメール]
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Q. 嫌いなものは何ですか?
重力に逆らえない自分。

━━━━━━━━━━━━━━━





ー終わりー

これにて完結となります。

参考にしたのは「アンチグラビティーズ」という歌です。オリジナル展開の方が多めですが…。

読んで下さった方ありがとうございました。

誰かが書いてたけど確かにフジリューの短編の匂いがするねサイコ+だったかな
面白かったよまたss書くときは告知とかあるのかな?

>>154
下手の横好きで書いているもので、嬉しいですけど何だか畏れ多いですね…。

告知の仕方とかは分かりませんが、次回作はもう構想が出来てます。

少女「お兄、すき」男「そうか」

というタイトルで、多分今週末か来週頭には投稿を始めると思います。
よければ是非。

ただ重力世界?のほうの彼氏はあの後に老人達に捕まって撲殺されたのかなと考えると悲しいな

>>157
タイムリープものの永遠の課題ですよね。
残された未来がどうなるのか。

自分としては、その未来は無くなってしまうんじゃないかと思ってます。本来いるべき人間が過去に戻って消えたまま時間が進むと歪みが生じそうな気がしちゃうわけですね。

もし未来が消えなかったとして、眼鏡娘が居なくなったことで老人達も正気に戻るので、男くんが撲殺されることはないと妄想しています。

>>158
正気に戻る世界として男は空に浮いてるんだよなそれが少女が消えて解除されたら…

>>159
大丈夫です。
空中浮遊は黒猫のおかげですから、悲惨な事件は起こりません笑

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