ココア「トラブルタイムトラベル」 (20)

ココア(明日は12月4日、つまりチノちゃんの誕生日)

ココア(どんな風にプレゼントを渡すか、どんなお祝いの言葉を送るか)

ココア(何度も何度も考えたからバッチリなはず)

ココア(でも、でも……)

ココア(肝心のプレゼントが決まってない!どうしよう!?)

ココア(チノちゃんが喜びそうなもの…… パズル?ボトルシップ?チェスの駒?それともコーヒー豆10トンくらい?)

ココア(でも、それだとタカヒロさんと被っちゃいそうだし……)

ココア(アクセサリーやぬいぐるみとかも考えたけど、今年もプレゼント交換をするならそこで被っちゃうかな?もう12月だから準備を始めてる子もいそうだし)

ココア(被らないように用意できても、チノちゃんの好みから外れちゃうかも)

ココア(いっそのことチノちゃんに相談できたらなぁ。……それだとサプライズにならないよね)

ココア「ってもうすぐバイトの時間だ!プレゼント買うのは後にしなきゃ!」

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ココア「ごめん、遅くなっちゃった!」

チノ「ココアさん!? まだ約束の時間になってないはずじゃ」

ココア「へ?」

チノ「というかなんで高校の制服着てるんです」

ココア「なんでって、学校から帰ってきた…… から?」

チノ「学校からって…… ココアさんはとっくに高校卒業してますよね」

ココア「私まだ高校2年生だよ!?」

チノ「こんな時間に寝ぼけないでください」

ココア「走って帰ったから一応目は冴えてるかな。授業中は眠かったけど」

チノ「話が噛み合わない……」

ココア「そういえばチノちゃん、昨日よりすごく背が伸びてない……?成長期ってそんなに伸びるの!?」

チノ「さっきから何言って…… まさか、今日なんですか」

ココア「今日?」

チノ「ココアさん、このスマホに表示されてる日付、どう思います?」

ココア「うーん、なんで5年後?それにもう1日進んでない?私まだプレゼント選べてないよ!?」

ココア「時間も朝になってるし、壊れてるんじゃないかな?」

チノ「やっぱり…… 信じられないかもしれませんが、よく聞いてください」

チノ「このスマホは壊れてません。5年ずれているのはココアさんの方です」

チノ「そもそも、いくら成長期でも一晩で大きくなる人はいません。ココアさんの知ってる私は5年前の私なんです」

ココア「と言うことは…… どういうこと?」

チノ「つまり、ココアさんは…… 5年後の未来に来たんです」

ココア「……えぇー!?」

チノ「はあ、まさか本当にタイムトラベルしてくるなんて」

ココア「ひょっとしてチノちゃん、過去の私が来ること知ってたの?」

チノ「5年前の誕生日にココアさんが言ってましたからね。これは未来で買ってきたプレゼントなんだって」

ココア「……じゃあ、目の前にいるチノちゃんは、5年前に私からのプレゼントを受け取ってるし、中身も知ってるんだよね?」

チノ「そうですね」

ココア「それに、未来のものなら絶対に誰とも被らないはず」

チノ「まあ、過去では売ってませんから」

ココア「だったら、大丈夫だよね?」

チノ「何がです?」

ココア「お願いチノちゃん!5年前のチノちゃんへの誕生日プレゼントを選ぶの手伝って~!!!」

チノ「……えぇー!?」

チノ「って、ココアさんサプライズ好きそうですよね?私が手伝ったら」

ココア「今のチノちゃんはもう知っているから話しても大丈夫だし、過去のチノちゃんは知らないままだから問題なし!」

チノ「確かにそうですけど」

ココア「プレゼント選び、まだ決められなくて。チノちゃんに相談できたらなぁって思ってたの。お願いできないかな?」

チノ「……わかりました。ただし条件があります」

ココア「条件?」

チノ「実は私もココアさんに手伝って欲しいことがあるんです。それを手伝ってくれるなら良いですよ」

ココア「チノちゃんのお手伝い!?何をすれば良いかな?お姉ちゃんにまかせなさーい!!」

チノ「今は私の方が年上ですよ」

ココア「タイムトラベルしても関係は変わらないよー!」

チノ「それでですね、私がココアさんに手伝って欲しいのはパーティーの準備なんです」

ココア「パーティー?」

チノ「はい。知り合いに、突然私の誕生日を祝いにやってきそうなサプライズ好きな人がいるんです」

チノ「その方に日頃の感謝を伝えるため、今年は私の方から招待することにしました。もちろん、ほかの友達も誘って。そのために準備をしていたのですが……」

チノ「この通り、当日になっても準備が終わってないんです」

チノ「パーティーの内容をサプライズとすればみんな喜んでくれると思ったのですが、中々良い案が浮かばなくて」

ココア「なるほど、そう言うことなら任せて!力になるよ!」

チノ「ありがとうございます、ココアさん」

ココア「こちらこそだよ、チノちゃん!まさに困った時はお互い様だね。……じゃあ早速買い出しに行こっか!」

チノ「え?」

ココア「せっかくだし、普段のラビットハウスにはないものを使いたいからね!例えば風船で派手に飾るとか!それじゃあ買い出しにレッツゴー!!」

チノ「え、待ってください、ココアさん!買い物に行くなら支度しないと!」

チノ「ココアさん、流石に買い過ぎじゃないですか?」

ココア「えー?これくらいしないとみんな驚かないよ?」

チノ「……そうかもしれませんけど」

ココア「お料理も普段のラビットハウスじゃ出さない裏メニューの方がいいよね!帰ったら買ってきた食材でいっぱい作らなきゃ!」

チノ「なるほど、料理もサプライズですか。でも、ココアさんが作ったら焦がしそうで」

ココア「気をつけるから大丈夫!……他にも色々やりたいけど、あとはチノちゃんに任せなきゃね」

チノ「任せると言われても、私に考えられるならあんなに苦労してませんよ」

ココア「でも、チノちゃんはその知り合い?の人に感謝の気持ちを伝えたいんだよね」

ココア「だったら、チノちゃん自身で形にした方がいいと思って。だからアイデアで手伝うのはここまで!」

チノ「私自身で、形に……」

ココア「大丈夫、チノちゃんは私の妹だからね!とびっきりのサプライズができるはず!」

チノ「……そう言うココアさんもプレゼント選びに苦戦してるじゃないですか。不安になります」

ココア「あはは、苦戦するところも姉妹っぽいのかな?」

チノ「ってそうです、プレゼント選び!そっちも終わらせないと」

ココア「先に料理の手伝いをした方が」

チノ「まだ時間はありますし、父も手伝ってくれますから大丈夫です」

ココア「そっか。じゃあ今度は、私がチノちゃんに手伝ってもらう番だね!」

チノ「善処はします」

ココア「と言うわけで候補は、パズル、ボトルシップ、チェスの駒、コーヒー豆10トン、アクセサリー、ぬいぐるみ……」

チノ「まずボトルシップは自分で作るものですし、チェスの駒は困ってません。どちらも貰って嬉しくないわけじゃないですが」

チノ「というかコーヒー豆10トンに至っては貰ってどうしろと?」

ココア「ですよね。じゃあやっぱりパズルかな?」

チノ「アクセサリーやぬいぐるみも悪くないと思います。……あっ」

ココア「どうしたの?」

チノ「確か5年前はみんなでぬいぐるみを作ったばかりですから、新鮮さに欠けるかもしれません」

ココア「私作ってない!」

チノ「ココアさんの分も用意しましたよね」

ココア「そうだけど、私も一緒に作りたかったな……」

チノ「……私の知る限り、あれ以降はみんなでぬいぐるみ作りをしてません。少なくとも5年間は諦めてください」

ココア「そんな!?」

ココア「それはさておき、このうさぎ型のとか…… あとこれも!可愛いよね!」

チノ「これ、私が下手に意見するとタイムパラドックスが起きるのでは?」

ココア「うーん、私としてはチノちゃんの好みから外れなければいいから、駄目そうなのを言ってくれれば良いよ。あ、このうさぎ型のも可愛い!」

チノ「その奇抜な見た目のうさぎはやめてくださいね」

ココア「さっそくNGが」

チノ「コーヒー豆10トンもそうですけど、自分が貰っても嬉しいものを選びましょうよ」

ココア「サプライズ精神!」

チノ「それをサプライズで押し通そうとしてることが一番の驚きですよ」

ココア「うーん、さっきの奇抜うさぎも捨てがたいけど……」

チノ「そんな候補今すぐに捨ててください」

ココア「よし、これに決めた!」

チノ「これは……」

チノ(5年前に貰ったプレゼント……)

ココア「チノちゃんが見ていたものをいくつか選んでたんだけど、その中でも私が欲しいのを選んでみたんだー」

チノ(そういえばさっき、あの奇抜うさぎをちょっと見ていたような。あの時の謎チョイスにそんな理由が)

ココア「チノちゃん、喜んでくれるかな?」

チノ「今の私に聞けばわかるじゃないですか。もう貰ってるんですから」

ココア「今のチノちゃんに聞くのはダメ!」

チノ「どうしてですか?」

ココア「だって、先に答えを知ったら楽しみがなくなっちゃうもん!」

ココア「やっぱり、渡すまでドキドキするところも楽しみたいよね!」

ココア「それに、喜んでもらえたときの嬉しさも増えると思うから」

チノ「なるほど、そういうことなら黙っておきます」

ココア「さて、そろそろラビットハウスに戻って…… あーっ!」

チノ「どうしました?」

ココア「パズル買うの忘れてた!」

チノ「さっきのアクセサリーだけじゃ駄目なんですか?」

ココア「支度するときに部屋で見た飾ってあるパズル、今から1年前に発売したんだって!」

ココア「飾るくらい気に入ってるんだから、5年前で渡しても間違いなく喜んでくれるよね」

チノ「先に答えを知ったら楽しみがなくなるって話はどこへ!?」

ココア「気にしない気にしない。急いで買ってくるから、チノちゃんはここで待っててね」

チノ「あ、私も買い忘れてるものがあるので買ってきます」

ココア「じゃあ買い終わったらここに集合しよっか」

チノ「わかりました、ではまた後で」

チノ(みんなの分のプレゼントに、手紙を書くための便箋も買えた)

チノ(後は……)

チノ(このお店ならぬいぐるみの材料を買えるはず)

チノ(裁縫道具もみんなの分用意して……)

チノ(私なりに考えて、形にする、感謝の気持ちを込めたサプライズ)

チノ(喜んでくれるかな……?)

チノ(5年、待っててくださいね)

チノ(ココアさん)

ココア「今日は手伝ってくれてありがとう、チノちゃん!」

チノ「こちらこそ、ありがとうございました。おかげで今日のパーティーは成功しそうです」

ココア「ううん、まだこれからだよ!お料理とか飾り付けとか手伝わなきゃ!」

チノ「……それは、できないと思います」

ココア「うぇえ!?どうして?」

チノ「ココアさんがこの時間に来た瞬間、それはきっとラビットハウスに入ってきたときだと思います」

チノ「いくら急いでいたとはいえ、街並みが急に変わったら気づくはずですからね」

チノ「だから、ココアさんが元の時間に帰るときもきっと、ラビットハウスに入るときだと思うんです」

ココア「……そうかもしれないね」

ココア「……ねえ、今のチノちゃんにずっと聞きたかったことがあるんだ。いいかな?」

チノ「なんですか?」

ココア「……チノちゃんは、私がこの街に来て良かったと思ってるって言ってくれたよね」

チノ「そんなこともありましたね」

ココア「それでも私、不安なんだ。喜んでもらいたいと思ってしたことが、本当はチノちゃんを困らせてるんじゃないかって」

チノ「……」

ココア「だから、答えが知りたい」

ココア「私、チノちゃんのお姉ちゃんになれたのかな。私と一緒に暮らした3年間は楽しかった?」

チノ「……5年前のココアさんには話せません」

ココア「どうして!?」

チノ「だって、先に答えを知ったら楽しみがなくなっちゃうって言ってたじゃないですか」

チノ「それに、5年前の私は、これからもココアさんと一緒にいたいって思っていたはずです」

チノ「あの時に私が言ったこと。あれは嘘じゃないですからね」

チノ「なので、ここで答えを言ってココアさんのやる気に影響したら困ります」

チノ「卒業するまでドキドキしていてください」

ココア「うぅ、そんなぁ…… でも、そうだよね!」

チノ「……話してるうちに着いちゃいましたね、ラビットハウス」

ココア「いつものドアを開けると、過去につながってるのかな」

チノ「おそらくは、ですが」

ココア「……じゃあ、開けるよ」

チノ「……はい」

ココア「5年後に会おうね、チノちゃん!それまで私、お姉ちゃんとして、いーっぱい頑張るから!」ガチャッ

チノ「ええ、また会いましょう」

チノ「……きっとココアさんなら大丈夫ですよ」

チノ「だってココアさんは、私のお姉ちゃんなんですから」

チノ「5年後で、待ってます」

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ココア「というわけで、誕生日プレゼントの隠し場所はこちらになりまーす!」

チノ「えーっと…… なんですかこの暗号。解くのに丸一日掛かりそうなんですが」

ココア「どんな風にプレゼントを渡すかだけはバッチリ考えてたからね!完璧だよ!」

チノ「今日中に見つけられなかったら元も子もないですよね!?」

ココア「大丈夫じゃないかな?未来のチノちゃんは持ってたんだし」

チノ「未来の私ってなんですか。というかなんでプレゼントの隠し場所を暗号にしちゃうんですか」

ココア「それは、その、サプライズ精神?」

チノ「それをサプライズで押し通そうとしてることが一番の驚きですから!」

ココア「うぅ、私も手伝うから許して!お姉ちゃんにまかせなさーい!」

チノ「……はあ、これじゃダメ姉ですね」

ココア「今、姉って!私、お姉ちゃんになれたよ!未来のチノちゃん!」

チノ「なれてませんから!」



~おわり~

ここまで読んでくれてありがとう
チノさんハッピーバースデーですよ

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