【ロマサガRS】吟遊詩人「聖夜の舞台、ネズミの詩とクリスマス」 (56)

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吟遊詩人「──これより語るは聖夜の一幕」

吟遊詩人「誰も彼もが心躍らせ、弾む笑顔で夜空を見上げ、邪なるものは空に消ゆ……」

吟遊詩人「空飛ぶソリを駆る英雄のうたは皆々が知る通り。なれば、人知れず討ち払われた
     悪にこそ、今宵は焦点を当てましょう」

吟遊詩人「始まりは、女神と謳われし乙女の願い。
     さぁ、精霊よ!この詩を唄い終えられるよう、我に力を与えよ──」



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【ひと月前、クラウディウス家の御屋敷・その一室】


トーマス「──お芝居、ですか」

ミューズ「はい。それならばきっと、子供たちも喜んでくれるでしょう?」

トーマス「ええ。勿論聖夜に相応しい、良い試みだと思います。……ですが、」

ミューズ「……現状に、そんな余裕が有るのか、と仰りたいのでしょう。……当然、その懸念も理解しています」

ミューズ「この一年、余りに色々な事が起こり過ぎました。四魔貴族の襲来、バンガードの強奪。魔塔は日を定めず出現し……、押し寄せる脅威は後を経ちません」

ミューズ「ですが、だからこそ……。この地に生きる人々に喜びを届ける助けがしたいのです。勝手な願いである事は重々承知の上。どうか、お力添えを頂けませんか?」

シャール「……私からもお願いしたい、トーマス。これは我が主たっての希望。私も、叶えられるならば砕身を厭わない覚悟だ。しかし、この身一つではどうしても足りず……」


トーマス「……頭をあげて下さい、ミューズ様、シャールさん。我がベント家と縁深い、クラウディウス家の願いでもあるのです。私で良ければ、勿論。喜んで力になりましょう」

ミューズ「嗚呼。良かった! 有り難うございます、トーマス様。頼もしい協力者を得られて、わたくし達も一安心ですわ」

トーマス「頼りにして頂けて光栄です、ミューズ様。……しかし、実を言うと私もそういった催物は初めてで、うまく助けになれるかどうか……」


バァン!!

フルブライト23世「話は聞かせてもらった!!」ドン!

タチアナ「もらったよ!」ドン!!

トーマス「うわっ!ビックリした」

シャール「人が居る部屋に入る時はノックをしては如何か、フルブライト殿」

フルブライト「ぐうの音も出ない正論ですな!」

ミューズ「まぁ、フルブライト様、それにタチアナ様も! 驚きましたわ。何故、此処に?」


フルブライト「いや何、たまたま当代のクラウディウス家当主に招かれていた折、面白そうな話が聞こえていたのでつい、聞き耳を。そこのタチアナ嬢も一緒にね」

タチアナ「途中からだけど、バッチリ聞いてたよ! お芝居するんでしょ? 楽しそう! わたしも手伝う!」

フルブライト「そして是非、この私にもお手伝いを申し付けていただきたく。構いませんかな? ミューズ様」

ミューズ「ええ、勿論、喜んで! 心強いですわ、フルブライト様、タチアナ様! 嗚呼、なんとお礼を言えば良いのか……」

フルブライト「お礼などと、滅相もない。商人は商機を逃さない、というだけですよ。話を聞いている内に浮かんだ芝居の運営計画を、是非……」

タチアナ「……商機? もしかして、みんなからお金を取る気!? 信じらんないケチ!守銭奴!!銭ゲバ!!」

フルブライト「なんとでも言いたまえ! 銭ゲバにあらずんば商人にあらず、だ! それに、なにも私も、己の懐を満たす為に提案をする訳ではないさ。先ずは私の案を──」



【数十分後】

フルブライト「──と、運営の話はここまでです。後を任せて頂けるならば、裏方に必要な人物には、私自ら声を掛けに行きましょう」

ミューズ「まぁ、助かりますわ! それにしても、流石はフルブライト商会の会長。その手腕も、鮮やかなものですわね」

フルブライト「今の世においては、何代も前に席を譲った身ですがね。さぁ、決める事はまだまだ山ほど。演者なども、まだ決まっていないのでしょう?」

タチアナ「そもそも、演目はなぁに? それはもう決まっているの?」

ミューズ「ええ。実は、なんの劇にするかはもう決めているのです。きっと、タチアナ様もご存じのものですわ」

タチアナ「そうなの? って言うと……」

シャール「……『くるみ割り人形』だ」

トーマス「くるみ割り人形……。人形の国に招かれた少女がネズミの王を退け、くるみ割り人形に変えられた王子と、その愛する王女を救う聖夜の物語、ですね」

タチアナ「人形の国を救った女の子は、人形達の色んな踊りで歓迎されて、最後には幸せな気持ちでクリスマスの朝に目を覚ますんだよね! うん、あれならきっと、ぴったり!」




フルブライト「ならば、美しい王女はミューズ様が演じるべきでしょう。希望の象徴は華やかであればあるほど良い」

ミューズ「およしになって、フルブライト様。……ですが、言い出した者の責任は負うつもりです。わたくしに務まるのならば、心を込めて演じましょう」

フルブライト「決まりですな。では、次は……」

シャール「……演者を募るのならば、私が塔士や異界の者達に声を掛けて回ろう。元より、他の役には立たない身だ。それくらいは……」

タチアナ「え? なに言ってるの? 王女さまがミューズ様なら、王子さまはシャールなんでしょ?」

シャール「……………いや、何を馬鹿な事を……」


クルッ

フルブライト(小声)「……いいんですかな? ここでシャール殿が役を降りれば、舞台の上で別の男とミューズ様が結ばれる情景を目の当たりにする羽目になるのでは?」ゴニョゴニョ

シャール「……………………………………。いや、しかし…………」

トーマス(小声)「主たっての希望ならば砕身を厭わない覚悟なのでは?」ゴニョゴニョ

シャール「トーマス、君もか……」



クルッ

フルブライト「決まりました、ミューズ様。彼は是非、王子役の大任を果たしたいと」

シャール「言っていません……。それに私は、今も昔も槍働きしか能のない、ただの兵士です。裏方ならば、幾らでも。ですが、演技も踊りも縁遠い身で役を演じても、子供たちは喜ばないでしょう」

フルブライト「……ふむ、クオリティの面を突かれると、確かに……」

フルブライト「そもそも、この地に住まう人々に安息を与える為のこの計画。我々のような者たちから参加者を募るとして、果たして何人、舞台に上がれる程の資質を持つのか……」

トーマス「……それなら一つ、私に案があります。シナリオの展開を少しだけ変えて、──」



【数十分後】

トーマス「──と。まぁ、そう言う訳です。演者の中の1人に大分負担を掛けてしまうのですが……」

シャール「……それならば、確かに。なんとか……」

フルブライト「いや、良いじゃないか! これならば、特別な稽古をする必要もない。子供たちもきっと大喜びだ!」

トーマス「……ああ、よかった。そう言って頂けたなら、きっと上手くいくでしょう。……では私は、この辺りで失礼を。帰ったら、仲間に声を掛けてチラシを作ってみるつもりです」

フルブライト「それはいい! では私は戻り次第、開催に当たって必要なものを揃えるとしよう。場所に予算、演者たち! さぁ、ウィルミントン商人のド根性の見せ所だぞ!」

タチアナ「じゃあ、わたしは『こっち』で仲良くなった子たちに声をかけて回るね! 大人も子供も、きっとみんな喜ぶよ! うふふ、楽しみだなぁ!」

ミューズ「では、わたくし達は舞台の台本や、段取りを。
……皆さま、本当に、本当に有り難う……。この計画、絶対に成功させましょう……!」


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吟遊詩人「──こうして始まった聖夜の計画。各々、己の出来る事に勤しみました」

吟遊詩人「得意なことは其々なれど、人々の幸せを願う気持ちは皆同じ。
     話を聞きつけた者達は次々と助力を申し出、気付くと賑やかな一団に……」


吟遊詩人「『きっと、素敵な一夜になる』彼らはそう信じて、一丸となって励みます」

吟遊詩人「しかし、招待状もないこの夜会。誰に気づかれることもなく、
     招かれざる客人はひっそりと、影を伸ばしていたのです……」



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【聖夜、街の中】

ユリアン「──さぁ、大人も子供もチラシをどうぞ! 塔士とその仲間達の楽しいお芝居だ! 今夜は1オーラムだけ握りしめて、遊びに来てくれよな!」

ユリアン「……あれ、そこのアンタ。せっかくのクリスマスなのに、俯いてちゃ勿体ないぜ! チラシはどうだい? おれ達のお芝居を──」

????「ああ、いや、結構だ。……どうも」

ユリアン「……そっか。ま、しょうがないか。
さぁさ、今夜は気取らず塔士のお芝居──」




 ????(……………………)

 マクシムス(……ハッ、クリスマスだなんだと。随分と呑気なもんだ! このマクシムス様が街にいる事も知らず、どいつもこいつもマヌケ面を晒していやがる!)



 マクシムス(……遺物の力で、いずれはこの世界を支配してやるさ。だが、この平穏に緩み切った善人どもの顔は、今すぐにでも踏みにじってやりたいもんだ! ……ん? あれは……)



フルブライト23世「──それじゃあ、頼んだぞ。他と比べると、どうしても君への負担は重くなってしまうのだが……」

ネズミ役の男「いいえ、確かにこのフードは多少窮屈ですが……。人々の為、この身を役立てられると言うのに、なぜ労苦など厭いましょうか。帝国と、皇帝陛下の名にかけて、与えられた役をこなして見せましょう──」



 マクシムス(……役? ああ、何処ぞで芝居をやると、さっきの小僧が言っていたな……)



マクシムス(……聞くに、この地に住まう者のヒーロー気取りの塔士共が、大勢上がる聖夜の舞台だとか)

マクシムス(……つまりは、まぁ、他が手薄になるってことだよなぁ?)

マクシムス(…………ヒヒヒ、ヒャーッハッハッハ!! 決まりだ!! この街をめちゃくちゃにして……その聖夜とやら、このジャッカル様が忘れられないものにしてやる!)


マクシムス(……先ずは定石通り、変装して内側から潜り込むかね)

マクシムス(さっきの男の姿形は……、確か、こんな感じだったか……)




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フルブライトに変身したマクシムス「あー。すまない、君。一つ伝え忘れていた事が……」

ネズミ役の男「おや、フルブライト殿。如何しましたか?」

変身したマクシムス「いや、すまない。実は芝居の場所と、開始時刻が変更になったのだ。急で悪いのだが……」

ネズミ役の男「おや、そうでしたか。ですが、どうかお気になさらず。これほど大規模な催しなのです。予定外の事も起こりましょう」

変身したマクシムス「そう言ってもらえると助かるよ。場所は⚪︎⚪︎で、時間は──」

ネズミ役の男「──ふむふむ、分かりました。では、後ほど。そちらも良い聖夜を!」

変身したマクシムス「ああ、良い聖夜を! …………」



マクシムス(…………ハッ!! 疑いもしないとは、なんてマヌケな野郎だ!! 
      オマケにこのオレに、『良い聖夜を!』ときた! 危うく腹を抱えて笑い出すところだ!)





 マクシムス(しかしまぁ、よし。これでコイツとは、まずもって鉢合わせる事は……ない!)

 ネズミ役に変身したマクシムス(後はこれで……、どうしてやろうかね。……ヒ、ヒ)





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ローラ「……待ちな、そこのドブネズミ」

 ネズミ役に変身したマクシムス(…………!?)


 マクシムス(馬鹿な……!! 何故見破られた!?) 





ローラ「あたしの聞き耳を侮ったかい? ……ああ、その異様なギラつきと、悪意……。あんた、海賊だね」

マクシムス「…………ハ。なんだ、同業か」

ローラ「元、だ。間違えるんじゃないよ。……何にせよ、あんたはここで……」

マクシムス「ここで? たった1人で、このオレをどうにかしようとでも? そいつぁ……、」


ガンッッ!!!!


マクシムス「な……!? なん…………、ヒゲ-......」ガクッ


シフ「……そいつぁ、なんだい? 聞きそびれちまったよ」

ローラ「聞く価値も無いだろうさ。……さて、片付いたはいいものの。こいつ、どうしようかねぇ」




シフ「……ん? おや、見覚えのある坊やが走ってきてるじゃないか。あんたのとこの坊やもだよ、ローラ」

ローラ「うん? ああ、本当だ。なんだか急いでいる風だけれど……」


アルベルト「ああ、シフ! それに、ローラさんも!」

ローラ「聖夜だってのに、忙しないねぇ。一体、何をそんなに慌てて……」

アンリ「ローラさん! 実は……、『ネズミ』の男性が見つからなくて……」

ローラ「……ん? 『ネズミ』……?」


マクシムス(…………)


ローラ「……もしかして、こいつの事かい?」ヒョイ

シフ「なんだ。あんた達も、こいつを探してたのか。ほら、それならここにいるよ」ヒョイ

アルベルト「! 灰色のフードに、尾を模した装飾! 伝え聞いた通りの特徴です、アンリ!」

アンリ「ああ、よかった! ありがとうございます、お二方。なんだか意識がないようだけれど……、これでお芝居に間に合います!」



シフ「お芝居? ああ、見に行くのかい。坊やもまだまだ子供だねぇ」

アルベルト「大人だってお芝居は見ますよ、シフ。……そういえば、2人は行かないのですか?」

シフ「私は酒の先約が入っててね。ローラ、あんたは?」

ローラ「あたしはあたしで、子供達が出払っている内に用事を済ませなきゃいけないのさ。芝居の出資者の商人の所に……。それにしてもあんた達、最近よく一緒にいるね」

アンリ「ええ。アルベルトさんとは、なんだか共通点が多くて……。よく同じ話題で盛り上がっているんです」

アルベルト「城を預かる者の子同士の話や、歳上の仲間の……、ゴホン。あと、亡城あるあるなんてものも……」

ローラ「そりゃまた……、希有な仲間がいたもんだねぇ」

アルベルト「私もまさか、自分の辛い経験をあるあるとして共有出来る日が来るとは……、っと、いけない! つい話し込んでいた! 戻りましょう、アンリ!」

アンリ「はい、アルベルトさん! きっと、皆さん心配しています。急いで連れて行きましょう!」




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シフ「……おやまぁ、元気な事。もうあんなに遠くまで走って行って……」

ローラ「……しかし、街に入り込んでたあの『ネズミ』、どうするのかねぇ」

シフ「さぁ。……ま、それなりの天罰が下るんだろうさ。それじゃ、私は行くかね。メリー・クリスマス!」

ローラ「ああ、大事な挨拶だ。あたしも、もう行くよ。メリー・クリスマス!」




【一方その頃】

ミューズ「〜〜♪ 〜〜♪♪」

バーバラ「〜〜♪ 〜〜♪♪ 旋律に情熱を乗せて……さぁ、手拍子を!!」

観客「「ワオオーーーーッッッッ!!!!」」

コッペリア「ケッ、負けるかよ! オラァッ!!」ギャリギャリギャリ

観客「「ワアァーーーーッッッッ!!!!」」

 ヒラガ18世(ああっ、そんなに関節部を高速回転しては、また壊れ……、ああっ……)


【屋外劇場・ステージ裏手】

フルブライト23世「──いや、素晴らしいパフォーマンスだった! 流石は元曲芸師だ! 後半はこちらでどうにかするとは言え、やはり最初には華がないと!」




リズ「ふふ。私たち、一番得意なのは空中ブランコだけど、他の演目も負けてないんだから! なんて言ったかしら? こういうの。ええと、昔……昔の……」

ポルカ「えーっと、昔とった……キネヅカ? イーストガード達が教えてくれた言葉だけど。とにかく、役に立ててよかったよ。久し振りにリズと舞台に立てて楽しかったし」

リズ「それにしても、ミューズ様もつれないわ。私たちにまっ先に相談してくれないだなんて! 舞台の上での大立ち回りなら私たち、お手の物なのにね!」

フルブライト「ミューズ様も、塔士である君たちに負担を掛けるつもりはなかったのだろう。……とは言え、君たちが参加すると知れ渡ったお陰で、他の大勢の者たちも力を貸すと申し出てくれたのだよ。今回の成功の立役者は、君たちだと言っていいかもしれないね」

ポルカ「そんな、大袈裟だよ。……それに、まだ成功すると決まったわけじゃ……、……いや、ごめん。でも、ネズミ役の彼はまだ……?」

フルブライト「……うむ。まだここには来ていないようだ。もうそろそろ出番だと言うのに……。あの彼に限ってすっぽかすという事はあるまい。なにか、妙なことに巻き込まれていなければ良いのだが……」




  遠くの声『〜〜さい! さぁ、〜〜!』

ポルカ「……あ。ほら、あそこ! よかった、間に合ったみたいだ! こっちに来ているぞ──」



アンリ「──はぁ、はっ、お、お待たせしました、皆さん! 無事、彼をお連れしましたよ!」

アルベルト「務めを果たせてよかった……! さぁ、ネズミ殿、起きて下さい! 起きて! もう出番ですよ!」


 ネズミ(マクシムス)(……ハッ!! こ、ここは? 一体なにが……)

フルブライト「全く、冷や冷やさせてくれる! さ、出番だ! 頼んだぞ!」ドンッ!

マクシムス「う、うおっ!! 押すんじゃ……、ぐわーっ!」




ナレーター「──そして、遂に現れたネズミの王! 
      クルミ割りの騎士は決意を胸に、立ち向かう!」

観客「「「ワァアーーーーッッ!!!!」」」

 マクシムス(…………!! おい、なんの冗談だ!? ──ここは、ステージのど真ん中じゃあねえか!!)

 マクシムス(へ、変装を解いて逃げるか? ……いや、ここにいるのはどいつもこいつも手練ればかり……。俺様と言えど、流石に……)

 マクシムス(どうすれば……、いや、そもそもなんだ! この状況は……! ……ん?)


シャール「ネズミの王よ! ここで会ったが百年目。その素っ首、貰い受ける!!」

 マクシムス(あれは……ミューズの側近、シャール! ご丁寧に、俺のものになるはずだった銀の手まで着けてやがる!)




 マクシムス(……ああ、いい事を思い付いた)

 マクシムス(見た所、槍は本物の様だが……。こいつらにとって、これは所詮お芝居。……まさか、本気で命を狙われるなどとは夢にも思ってはいまい)

 マクシムス(その油断をついて、こいつを聴衆の眼前で……[ピーーー]!! そうして出来た混乱に乗じて逃げる。……ハッ、完璧じゃねえか!)


シャール「どうした、ネズミの王よ! 初手は譲ろう。遠慮無くかかってくるがいい!」

マクシムス「……急かしてくれるなよ。今、行くとも。クク……」



 シャール(……? 台本と、少し違……)

マクシムス「素っ首、落とされるのは貴様の方だ!! 喰らえ、バックスタッ──!!」


シャール「────かざぐるまッッ!!!!」ゴォッッ!!

マクシムス「な、なにッ!? ぐ、グワーーッ!!!!」


 マクシムス(な、何故だ!! あの反撃技は、攻撃を見てから放てるシロモノじゃねえ! 事前に読まれていた……!? 一体、なにが……!!)



 シャール(……ふう。タイミングこそ少し違ったが、ちゃんと台本通りだな)


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【ひと月前、クラウディウス家の御屋敷・その一室】


トーマス「──それなら一つ、私に案があります。シナリオの展開を少しだけ変えて……演技ではなく、武器で聴衆を魅せるのは如何でしょうか」


タチアナ「……? えーと、つまりどういうこと?」

シャール「……要するに、普段通り戦えばいい、という事か?」

トーマス「ええ、その通りです。ただ、いつもの様に槍を振るっていただくだけで構いません」

トーマス「侯国にいる戦士は、一人一人が一騎当千の猛者……。その彼らの技術の粋である『技』、使わない手はないでしょう。これならば、舞台へ向けた特別な練習も必要ありませんしね」



トーマス「更に言うならば、皆に披露する技の冴えは、そのまま彼ら市民を守る刃の鋭さでもあるのです。国を守る者たちの力強さをもアピール出来る、良い機会になるかと」

シャール「成る程。……それで、その段取りは?」


トーマス「……私が考えたのは、演者の内、守り手を一人。残りを全員攻め手にして、後はもう心の赴くまま兎に角派手な技を、良い塩梅でバシバシと叩き込んでもらって……」

ミューズ「急に投げやりにお成りになりましたわね」

フルブライト23世「しかし、ふむ。有り体に言えば、冒頭以外を全てアクション劇にしてやろうと。いや、いいじゃないか! 国中何処を探しても、これ以上の殺陣はあるまいよ!」


トーマス「……と。まぁ、そう言う訳です。演者の中の1人に大分負担を掛けてしまうのですが……」

シャール「……それならば、確かに──」

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【舞台袖】

シャールカーン「……おや。手筈通りならば、軽く数合打ち合ってから開始という話でしたが……」

ハリード「なんだ、もう始まったのか? それなら急げ急げ、こういうのは勢いが命だ! そうだろう? 異国の砂漠の戦士さんよ!」

シャールカーン「……ええ。貴殿の言う通りだ、異なる世界の砂漠の王よ! その曲刀の鋭さ、ウワサ以上のものだと期待しておりますぞ!」

ハリード「フ、そっちの曲刀も、さぞ磨かれたものなのだろう! さぁ、いざ! ……参りましょう、姫!」

ファティーマ「ええ! ゲッシアの女が伊達ではない事をお見せしましょう。皆さまにも、ハリード、貴方にも!」


三人「「「喰らえーーーーッッ!!!!」」」

マクシムス「ギ、ギャーーーーーーッッッ!!」グシャドカバキッッ


ナレーター(トーマス)「き、決まったーーッッ!! 砂漠出身の猛者たちの連携! デミつむじステアだーーッ!!」


観衆「「「「ワァーーーーッッッッ!!!!」」」」

トーマス「なお、ここからは私、実況トーマス・ベントに加え、指輪の君ことヴァジュイール氏を解説、兼花火師として迎えていきます。ヴァジュイール氏、宜しくお願い致します」

ヴァジュイール(解説)「フフ、良いぞ! 曲刀が生み出した雷と風に、小剣が回転を加え……実に美しく技と技が纏まっている! 素晴らしい! もっとだ!もっと魅せてもらおう!」


ヒュルルルル.. ドォン ドォォン...

観衆の母親「……花火師? あら、本当! なんて綺麗……!」

観衆の子供「……わぁ、花火だ! すごいすごい!」



【舞台袖】

白薔薇姫「まぁ、本当にヴァジュイール様が解説席に収まっていらして……」

アセルス「しかも、思ってたよりだいぶ普通に解説してるね……。クーン、君すごいね。どうやってあの人を説得してここまで連れてきたの?」


メイレン「あんなの、説得なんてもんじゃないわよ……。まぁ、この子が恐れ知らずなのは確かなんだけど……」

クーン「どうやって……って、『連携いっぱい見られるよ』って言ったら、じゃあ行こうって! 花火もいっぱい打ち上げてよって言ったら、それもいいよってさ」

アセルス「そんな、近所のおじさんかなんかみたいに……。でも、お陰で地上も空も大盛り上がりだ! 私たちも行こう、白薔薇!」

白薔薇姫「ええ、参りましょうアセルス様!」

クーン「ボクもーっ! 一緒に行こうよ、メイレン!」

メイレン「はいはい。なんだかムスペルニブルを思い出すわね。……オラァッッ!!」



四人「「「「ロザリオチョコレート滝掃射ッッッッ!!!!」」」」

マクシムス「ギャーーーーーーッッッッ!!!!」


トーマス「こ、これはっ!! 塔士団随一の実力者が率いる四連携だ! 技のキレも一味違う!!」

ヴァジュイール「う、美しいっ!! 見るがいい、実況よ……! 一見無秩序な技の間にも、緻密な硝子細工の如きスキマとスキマが──」



【同時刻、客席】

ヘンリー「うおおーっいいぞ! そこだーー!! お前の頑健さ見せてやれーーっ!!」

テレーズ「頑張ってーーっ! 帝国の盾、伊達じゃないんでしょー!」

ヤンヤヤンヤ


ジェイムズ「いやぁ。同僚の晴れ舞台をこの目で見られる事の、なんと幸福な事か……。しかも……」チラ


ジェラール「兄さん、父上! 見てください、今の攻め手の流し斬り! なんと流麗な太刀筋なのだろう……! 私も見習わなくては……」

レオン「うむ、これ程見事なつわもの達。叶うならば、全員アバロンに連れて帰りたいものだ」

ヴィクトール「言った所で詮無き事でしょう、父上。……ああ、すまない、そこの売り子よ。焼き菓子を三つ……」



 ジェイムズ(いやぁ、生きててよかった……)ホロリ..



ジェイムズ「……しかし、んん? 気のせいか、いつものあいつとは太刀筋も、振る舞いも違う様な……」

ヘンリー「……あ、やっぱりか? 俺もそこ、ちょっと気になってたんだよ」

テレーズ「そうよね。いつもはもっと、直立不動!って感じなのに、なんだか今日は……」


ヘクター「……やれやれ、見ちゃいられねえな、お前たち。アレを見て、何も気付かんのかね……」

テレーズ「ヘクター!!」

ジェイムズ「なんだ、ヘクター。まるでお前は……何かに気付いたって風じゃないか」

ヘクター「全く、俺を誰だと思ってやがるんだか。いいか? アレは……」

皆「「アレは……?」」


ヘクター「敵役があんまり直立不動だと変だろう……と閃きを得た時に目覚めた、あいつの役者魂……その輝きさ」

皆「「魂の……輝き……」」



ヘンリー「な、なんて……なんて熱い男なんだ、お前は……!!」

ジェイムズ「お前は……お前は帝国の誇りだーーっ!! うおおーーっ!!」

ヘクター「……へっ、ガラにもなく、俺も熱くなってきやがったじゃねえか……!!」


帝国兵たち「「「いいぞーーーーッッ!! いけーーっ!!」」」

マクシムス(死ぬーーーーッッ!!)


ウルピナ「今日の主役は私ではないけれど……! ウルピナーーッ!!」

モンド「姫、フィニッシュはいけませんぞ。まだまだ、後続の者たちが今か今かと出番を待っているのですからな」

ウルピナ「あっ、そうね、モンド。危なかったわ。では控え目に……フンッ!!」ギィンッッ!!


マクシムス(ア"ァ"ァ"ーーーーッッッッ!!!!)


【同時刻、また別の客席】

カーン「ほう……、攻め手の練度もさる事ながら、あの守り手。あれだけの連撃を受けつつも、なお滑稽を装う余裕があるとは……。大したものだな」

タリア「ええ、そうね。本当に滑稽を『装っている』のだとしたら……ね」


カーン「……? あの守り手は、その手の戦術に特化した者……。その中で、更に厳選した手練れ中の手練れだという話だぞ。確かに、本当に慌てふためいている様にも見えるが……」

タリア「あら、そうなの。ふふ……」


カーン「……なんだか、いつもよりも楽しそうだな。タリア」

タリア「そうかしら? けれど、そうね……。実は、ちょっとしたお伽話を思い出していたの」

カーン「……お伽話?」



タリア「ええ。小狡いねずみが、優しい牛を利用して……。一等賞を勝ち取り、その年を統べる大将になった、と。まぁ、この話、本当かどうか確かめる術はないのだけれど」

カーン「なんだ、吟遊詩人みたいな事を言うなぁ。……だが、今の話とこの劇のネズミ、どう繋がるんだ?」

タリア「……お話の中では、ねずみは大した咎めもなく栄光を手に入れたでしょう? けれど、此方では充分過ぎる程に制裁を受けている様だから、なんだか可笑しくて……ふふ」


カーン「……?? ……まぁ、なんだか分からんが、楽しそうならいいか。……しかし、途切れんなぁ、花火」

タリア「ええ、そうね。夜空一面が、まるで満開の花畑のよう……。
    ……あら? 少し、空気がひりついてきたわ……」



────

【ステージ上】

 マクシムス(げ……限界だ!! これ以上続けば、流石に生きちゃいれねえ!!)


 マクシムス(……次!! 次に来た奴を……この手で始末し、逃げる!!)

 マクシムス(たった一人しかやれねえのは残念だが、もう四の五の言ってられるか!!)

 マクシムス(さぁ、誰だ!! このマクシムス様の手にかかってくたばる、運のない野郎は……!!)



【実況・解説席】

ヴァジュイール「……足りぬ!!!!」



トーマス「ど、どうされました? 解説のヴァジュイールさん」

ヴァジュイール「足りぬのだ! 実況のトーマス・ベントよ!!」


ヴァジュイール「練度か? 数か? ……いいや、違う!! どちらも最高だ! この私が今まで目にした物の中でも一番と言っていい程に! だが……物足りん!!」

ヴァジュイール「何故か!? そう……距離だ!! 斯様に熱き連携が、斯様に遠い!! このヴァジュイール、もはや行儀良く椅子になど留まってはおるまいぞ! いざ!!」ヴォンッッ


トーマス「ああっ!! か、解説のヴァジュイールさんがなんと……離脱!! 向かう先は……ステージ上だーーッッ!!」

聴衆「「ワァーーーーッッッッ!!」」


アセルス「……、あちゃー……」

白薔薇姫「やはり、収まりきれませんでしたわね、ヴァジュイール様……」



【ステージ上】

ヴォンッッ

ヴァジュイール「さぁ、皆のもの! 遠慮する事はない!! この私に連携を……、」


 マクシムス(な、何かよく分からんが……もうコイツでいい!! くたばりやがッ、!! な、)

ヴァジュイール「……なんだ? その剣は。今の私に、悪意に塗れた薄汚い剣を向けるか? ……無礼者がッ!!」

マクシムス「……う、動けん!! なんだ、テメェは! 何者だ……!!」


ヴァジュイール「……私が何者か、だと……!? この、指輪の君ヴァジュイールを存ぜぬと!!? ……その無礼、もはや許してはおけぬ!! 失せよッ!!」

マクシムス「待っ、流石に理不尽……、ぐ、グワーーーーッッ!!」シュンッッ!!


聴衆の子供「あ、あれ……? ネズミの人、消えちゃったよ……?」


ヴァジュイール「……さぁ、英雄達よ! 邪魔者は消え失せた!! その輝き、息吹を私に感じさせてくれ!!」

聴衆「「………………??」」


 トーマス(……ま、まずいぞ……、なにやら収集が付かなくなってきた……!!)



【客席】

聴衆の子供「な、なんだか怖いよ……。こんな時、ヒーローがいてくれたら……」

レッド「……!! とうっ!!」シュバッ


聴衆の子供「……あれ? さっきまでここにいたツンツン頭のお兄ちゃんは……?」


ライム・トラックス「「とうっ!!」」シュババッ

聴衆の子供「あれ……? 隣のおじさんとお兄さんも、どこかに行っちゃった……」




  『『ハーーッハッハッハ!!!!』』

子供「こ、この声は!!」


ロビン(細)「舞台の危機は、誰が知る!」シュタッ!

ロビン(太)「天知る、地知る、ロビン知る!!」ドスッ!!

アルカイザー「アルカイザーも知ってるぜ!! いくぞっ!!」シュタッ!!


三人「「「ファイナルライトニング・フェニックスッッッッ!!!!」」」

ヴァジュイール「グワーーッッ!! いい……!! 良いぞ!! だが、もっとだ!! もっと見せてくれッ!!」



アルカイザー「こ、こいつはっ、なんて手強いんだ! こうなったら、客席に座ってるおじさん達にも手伝ってもらうしかないなー!」

ロビン(太)「お嬢さんもおじいさんも、みんなで力を合わせて立ち向かうのだ!!」

ロビン(細)「さぁ、今こそ集え! 正義は侯国の旗のもとに……あるッ!!」


トーマス「……! そうか! よし、会場の皆ー! ヒーローたちに力を貸して、この舞台を大団円で終わらせておくれーっ!!」


────

カーン「……ん? これは……呼ばれていると思っていいんだな? ……行くか!」

タリア「お嬢さんだなんて、照れてしまうわね。……さて、」


────

レオナルド「お兄さんは呼ばれてないから別にいいよな」

エリザベート「いい訳ないでしょ! ほら立って、レオも行くの!!」

レオナルド「マジかよ……」



────

ヘンリー「こ、これは……、どうすれば……?」

ヘクター「っていうかあいつ、なんか消し飛ばされてなかったか……?」


レオン「……何を怯んでいる、我がバレンヌの誇る兵士達よ!」

ジェイムズ「へ、陛下!!」


ヴィクトール「斯様に見事な号令、応じずして何が戦士か! 勇あるものは私に続け!!」

ヘンリー「ヴィクトール様!!」


ジェラール「私も参ります、兄上、父上! みなも、共に参ろう!」

テレーズ「ジェラール様……!!」

ヘクター「……ええ、俺ら、何処までだってお供しますよ……!!」



────
──────
────────

全員「「「「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!!!!!!!」」」」」

ヴァジュイール「う、うおぉーーーーッッッッ!!!!!!」ドォ...ン ドォオン..


 アルカイザー(……やったか!?)

ヴァジュイール「嗚呼、嗚呼……! 素晴らしい……!! この一瞬の為に、永遠の時を生きていたのだと思える程に……!! 流石だ、英雄達よ……!!」

 アルカイザー(って、まだ割とピンピンしてんじゃねえか! どうやってシメるんだ、この空気!)


【舞台袖】

リズ「ど、どうしよう! どうにかして、お兄ちゃん……!!」

ポルカ「お、おれ……!? わ、わかった。兄ちゃんがなんとかしてみる……」



聴衆「凄まじいパフォーマンスと花火だったが……、これは、一体……」

聴衆「……あっ、見ろ! 塔士が出てきたぞ!」


【ステージ上】

ポルカ「……ヴァジュイール!」


ヴァジュイール「ん? おお、私を異界へと招きし者……塔士などと言ったか。此度の催し、実に愉快なものであった! その功績を称えて、何か願いを……」

ポルカ「い、言いたい事は色々あるけど、取り敢えずやられたフリをしてくれ! 早く!」

ヴァジュイール「ふむ、それが願いか。良いだろう。承った」


ヴァジュイール「や、や ら れ た ーー っ ! !」ボォッッ!!


聴衆の子供「わぁ、なんかすごい……、敵……? みたいのが消えちゃった!」

 ポルカ(意外とサービス精神旺盛だなぁ……)



ポルカ「って、……あー、ええと……、観客のみんな!! 今見た通り……、この世界にはまだ、想像も付かないくらい恐ろしい相手だっているんだ」

ポルカ「けど、こうやって皆で力を合わせて立ち向かえば……、俺たちは負けない!! 侯国の平和は塔士団が守るから、安心して暮らしていてくれ!」


ポルカ「その、今日はお芝居……?を見に来てくれて、本当にありがとう!! 
    『メリー・クリスマス』……!! えっと、アンコールはないけれど……」


『ワ…………』

聴衆「「ワァアアーーーーーーーーッッッッ!!!!」」

 「いいぞーーっっ!!」 「「ウォーーーーッッ!!!!」」 ヒュ----ッッ!!!!


 ポルカ(……………………)


 ポルカ(……こ、これは……上手くいった、のか……?)

 ポルカ(あっ、舞台袖のリズが喜んでる。……ああ、よかった。成功だ……!!)

──────
────



──

【その後の話】

ローラ「──やぁ、あんたらが今年のサンタ役の連中かい? なんだか、一人輪郭が変なのがいるけれど……」


リッチ「ハハハ、膨れ上がっててもハンサムだろ?」

ローラ「それは、雪だるま界の基準かなにかでの話かい? 一体、何がどうなってそんな事に……」


リッチ「いやあの……、クリスマス中に声を掛けた女の子達が大勢、同じ箇所に集まったものだから……いっそ美女達を侍らせるハンサムなサンタとして家家を回ろうと……」

ローラ「へぇ。それで、どうなったんだい?」

リッチ「普通に全員から平等にボコボコにされました」


コーデリア「哀れね……」

ラベール「哀れだわ……」


リッチ「辛い……、母親からの哀れみの視線が辛い……」



ローラ「だがまぁ、今からが名誉挽回のチャンスだよ。プレゼントはもう用意してあるんだ。 塔士達のお芝居で得た興行料を、ある商人が寄付してくれてね」

ウィル「ならば、後は夢と希望のアニマと一緒に配るだけ。このサンタの仕事、ナイツ家の皆で精一杯勤めようとも……!」


リッチ「ああ、任せてくれ! かわいい子にも、綺麗な子にも分け隔てなく……」

ウィル「リチャード」

リッチ「子供達の夢と希望の為にがんばるぞ!!」


ローラ「……まぁ、任せたよ。あたしの教え子達にもよろしくね──」


────

フルブライト23世「──ああ、よかった! 君を探していたのだよ! いや、実にすまない! 段取りが狂って、君には不当な扱いを……」


本物のネズミ役の男「おや、フルブライト殿。私は気にしてなどおりませんよ。 フィナーレの花火は、遠くからでも見えていました。無事に成功したのならば、何よりですとも」

本物のネズミ役の男「……ああ。そういえば、このフードを被っている必要も、もうないのですね。お恥ずかしながら、この衣装は少々窮屈で……」バッ


バイソン(帝国重装歩兵)「……ふぅ。先ほどの続きですが……。私の望みは、陛下の愛した民達の笑顔。決して、我が技をひけらかす事ではないのです。ですから、どうかお気になさらず」

フルブライト「……君のように立派な兵を持てて、皇帝陛下もさぞ、鼻が高い事だろう……。……おや、鼻が高いのは皇帝陛下だけではないようだ」


バイソン「……? って、うわっ、なんだなんだ」


ヘンリー「バイソンお前ー! やるじゃないか! 同僚の俺たちも鼻高々だぞー!」

ヘクター「へっ、見せてもらったぜ……、お前の熱い役者魂ってやつをよ……!!」

ジェイムズ「風邪をひいて出て来れなかったベアの奴にも、お前の魂、俺たちがしっかり語り継いでいくからな! バイソン……!」


ガヤガヤガヤ

バイソン「た、魂……? なんだこの酔っ払い達は……、いや、酒の匂いがしない……。こいつら、シラフか……!」

フルブライト「はっはっは」


────

ミューズ「予定したものとは、少しだけ違っていたけれど……。最後に与えられたものが希望であるならば、それでよいのです。……力を貸してくれて、本当に有り難う……」

ポルカ「……ミューズ様が、最初に立案してくれたからこそ、この結果があるんです。お礼を言うのはむしろ、俺の方で……」


アルカイザー「なぁ、ポルカ! 次やる時は、初っ端からヒーローショーにしようぜ! ロビン達も呼んで、ド派手に……、」

コッペリア「ああ? 次はオレ100体による人形劇に決まってんだろーが。声紋パターン分析して正体特定すんぞオラ」

アルカイザー「や、やめろよ……」


ミューズ「……フフ、わたくしが心配するまでもなかったのかもしれませんね。だって、こんなにも人々に希望は溢れて──」


──────
────
──

吟遊詩人「聖夜の夜……こうして、誰にも知られる事なく悪は去れり……」

吟遊詩人「まるで、彼が悪いもの みなを連れて行ってしまったかのように、
     人々の元には幸福と、笑顔だけが残されたと言います」


吟遊詩人「……この話が本当かどうか、ですって?
     ええ、確かめる術ならばありますよ」

吟遊詩人「彼らには、幸せな夜を思い起こす、とっておきの呪文があるのです。
     さぁ、両手を広げ『メリー・クリスマス』と──」


──
────
──────


────────

マクシムス「……クソ、クソッ、クソッッ!!!! なんなんだ、あれは!! オレがなにをしたって言うんだ!! 企みはしたが未遂だっただろうが!!」

マクシムス「大体、ここは何処だ!! 扉はあれど、出口も無けりゃ明かりも……」


赤カブ「…………」

マクシムス「…………」


赤カブ「………………」

マクシムス「………………」

赤カブ「………………」

マクシムス「………………」




【完】


以上です。去年はクリスマスイベントのシナリオがなかったので勝手に書きました。
実装されてないキャラとか技とか出しまくったり、展開を強引に持ってきすぎたりとちょっとやりすぎかなとは思いましたが、
正月の復刻イベント見てたら鏡もちが空から降ってきてたのでまぁいいかとなりました。

見てくださった方いらしたら、ありがとう! 依頼出してきます

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