千夏「ツェストビィエン…?」 (16)

千夏「…って、何?」

唯「もー、ゆいがわかんないから聞いてるのに、ゆいがわかるわけないじゃん!」

千夏「ごめんなさい、まるで意味がわからなかったからつい」

唯「でもそっかー、物知りなちなったんならわかると思ったのになー」

千夏「唯ちゃんがそう言ってくれるのは嬉しいけど、私も知らないことの方が多いわ」

千夏「ところで、何で急にそんな訳の分からない単語?を?」

唯「こないだスマホいじってたらなんか目についてさー、いちおゆいも調べたんだけど全然で」

唯「で、ちなったんならわかるかなーって思ったんだけど」

千夏「期待に添えなかった、と」

唯「ちなったんもわかんないことあるってのはちょっち意外だったよ」

千夏「響きからして日本語ではないと思うけど…あるいはズンドコベロンチョのような都市伝説の固有名詞かしら…」

唯「ぷふっ、ず、ズンドコベロンチョって何ー!ちなったんがそれ言うのかわいー、もっかい言って録音する!」

千夏「……言わない」

唯「えー!!」

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千夏「そもそもその、ツェストビィエン?どういった綴りで、前後関係はどうなっているのかしら」

唯「カタカナだったから綴りはわかんない。前後は覚えてないや…」

千夏「そう…せめて前後がわかれば意味の類推くらいできたかもしれないけど…」

唯「うー、ごめんねちなったん…」

千夏「唯ちゃんが謝るようなことじゃないわ。でもこのままだと八方塞がりなのも事実ね…」

紗南「おはよーございまーす」ガチャ

アーニャ「ドーヴラエウートラ…アー、おはようございます」

飛鳥「おや、唯に千夏さん、相変わらず仲が良いね」

千夏「あら、おはよう。珍しい組み合わせね」

唯「おはよー!ふふふ、ちなったんはゆいのヨメだからねー!あげないよ?」

千夏「違うのだけれど」

飛鳥「はは、大丈夫取ったりしないさ」

唯「ちなったんをいらない子扱いなんて飛鳥ちゃんヒドい!」

飛鳥「キミも存外面倒な性格だな!」

紗南「ところで何か話してたみたいだけど何の話してたの?」

千夏「あぁ…ロシア語の可能性もあるし、丁度いいかしら。聞いてくれる?」

アーニャ「ロシア語、ですか…?」


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───

『ツェストビィエン…?』

唯「そーそー、聞いたことない?」

アーニャ「イズヴィニーチェ…すみません、アーニャは知らないです」

紗南「あたしも聞いたことないなー、スパロボ◯Gとかにいそうな響きだけど」

千夏「ロシア語でもゲーム用語でもない、と…」

唯「飛鳥ちゃんはどお?」

飛鳥「ボクかい?ボクは語学に堪能な訳ではないんだが……」

唯「えーでもドイツ語とか詳しくない?」

飛鳥「いや詳しくはないんだが…あぁわかったわかった、ドイツ語の辞書を準備しよう少し待ってくれ」

紗南「焼却天理・鏖殺竜(フェルカーモルト・フォイアドラッヘ)…!」

飛鳥「違う!!」


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飛鳥「ボクの調べ方の問題かもしれないが、ドイツ語にもそういった言葉はなさそうだね」

唯「そっかー…うーわからないと余計気になるよー!」

アーニャ「日本にはまだ難しい言葉たくさん、ですね?」

千夏「そもそも日本語じゃないと思うのだけれどね…」

杏「ふぁ……それ、単純な読み違いじゃないかなー」

紗南「わ!?杏さんいつからそこに…」

飛鳥「相変わらずどこでも寝るなキミは、ソファの下って」

アーニャ「ドーヴラエウートラ、おはようございます、アンズ」

杏「おはよー。千夏さんもわからないことの方が多い辺りからいたよ」

唯「それ最初からじゃん!」

千夏「それで、読み違いってどういうことかしら、杏ちゃん」

杏「んー。有名なのだとYah◯oをヤホーって読むやつ」

飛鳥「すごく既視感のある説明だ…」

アーニャ「ンー…どういうことですか?」

杏「アーニャ的にはУраをヤパーとか言ってる奴って言えばいいかな」

アーニャ「アー、それは粛清、ですね?」

千夏「つまりローマ字読みか雑な英語読みをしたから意味が通らなくなった、と」

杏「そーそー」

唯「うん、ゆいよくわかんなくなってきた!」

杏「確かツェストビィエンだっけ?」

唯「そだよ、ツェストビィエン」

杏「響きからしてツェストとビィエンで切れる言葉だと思うんだよね、とりあえず仮定としてここで切るよ」

杏「で、ツェストって響きに近い言葉っていうと、例えばchestとかtestとかあるよね」

紗南「テスト…うっ、いやな響き…!」

杏「またレイナサマにお小言もらうことになるぞー?で、ビィエン、これ杏もよくわかんないんだよね」

杏「まあとりあえずローマ字でbienとでもしておこうか」

飛鳥「…テスト鼻炎?」

唯「鼻炎のテストってヤなテストだね…」

アーニャ「予防接種、ですか?」

杏「さて、仮にchestに置き換えたとして、並べるとchest bienになるワケだけど…」

千夏「……あぁ…なるほど。そういうことだったのね」

杏「あー、千夏さんなんか思い当たるフシあるんだ?」

千夏「えぇ。おそらくこれは……」

フレデリカ「せびゃ~ん♪」ガチャ


『………』


フレデリカ「さりゅ~♪」バタン


『………』


飛鳥「なんだ今の」

アーニャ「アー、フレデリカ、通常営業ですね?」

紗南「いや挨拶だけして帰るとか割と謎だからね?」

唯「あははウケるー!後で美嘉ちゃんにLI◯E飛ばそ!」

杏「あー、で、えーと何だっけ」

千夏「えぇ…フレちゃんに台詞取られたけど、おそらくC’est bien(セビアン)ね、フランス語よ」

唯「フランス語!やっぱちなったんに聞いて正解だったね!」

飛鳥「キミはどうあれ千夏さんを頼っていた気がするが」

唯「てへ、バレた?」

紗南「まあ唯さんだしね」

アーニャ「ユイとチナツは仲良し、ですね?」

唯「ちなったんはゆいのヨメだからねー!あげないよ?」

千夏「違うのだけれど」

飛鳥「このやり取りはもういいよ」

唯「ちなみになんて意味なの?」

千夏「そうね、前後で色々変形する言葉だけど、単体なら『これは良いものだ』ってところかしら」

杏「あれ、千夏さんそっち方面イケるクチだったんだ」

千夏「?何の話?」

杏「あ、別に意識して言ったわけじゃないのね」

紗南「…これは良いものだって言いながら入ってきたフレデリカさんって…」

飛鳥「思考の迷宮に入り込みたくないなら考えるのをやめるんだ」

アーニャ「やはりフレデリカ、通常営業ですね?」

杏「ま、そのツェストビィエンって書いたの誰だか知らないけどもさ」

唯「けど?」

杏「アルファベットだし、文字列見ただけでそう読み間違えるのは無理もないとして」

杏「万が一フランス語だと認識した上でそう読んでたとしたら、いやー…ははは」

千夏「そんな人いるかしら……」

杏「まさかいないと思いたいもんだね、うん」


─────────

──────

───

千夏「ところで杏ちゃん」

杏「んー?」

千夏「実は最初からこの解答に辿り着いていたんじゃない?」

杏「まさか。杏はフランス語もロシア語もサッパリなんだ」

千夏「ふふ、そういうことにしておきましょうか」

杏「ただの女子高生を買いかぶりすぎなんだよなぁ」

おわれ。

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