【モバマス】やっぱり百合が好き【P.C.S】 (29)


百合です。

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響子「ただいまー」

美穂「おかえり~。わ、いっぱい買ってきたね」

響子「えへへ、お腹すいてたから、つい……う~さむっ! おこたつちょーだいー」ゴソゴソ

美穂「コーヒー淹れる? お茶の方がいい?」

響子「お茶がいい~」

卯月「あ、わたしミルクティーおかわり~」

美穂「卯月ちゃんはだめー」

卯月「え~なんでえ~?」

美穂「今日それで何杯目? そんなに飲んだらカフェイン中毒になるよ?」

卯月「まだ10杯だよ? 美穂ちゃんおおげさだなあ」

美穂「いや10杯は結構やばいと思うよ」

卯月「大丈夫大丈夫。ただちょっとミルクティー飲まないと手が震えてきちゃうだけだから……」

美穂「完全に中毒症状のそれだよ!」

卯月「中毒症状……あっ! ティンときた!」カキカキ

響子「どう? 作詞、ちょっとは進んだ?」

美穂「あんまり、だね。頑張って考えてはいるんだけど……」

卯月「中毒……恋愛……"恋はアナフィラキシーショック!" とかいいんじゃない!?」

美穂「すごいところ持ってきたね。ていうかそもそもアナフィラキシーって中毒症状なの?」

卯月「分かんない」テヘペロ

響子「アナフィラキシー……つまり二回惚れたら死ぬってこと?」

美穂「なにそれこわい」

卯月「ううん、この場合二回惚れられたらアウトってことだから、えーっと……」

響子「別れた子にストーカーされて刺されちゃう、とかかなあ?」

美穂「怖い怖い! P.C.Sの新曲でそんなドロドロした歌詞歌ったらみんなびっくりしちゃうよ」

卯月「やっぱりダメかなあ……」

響子「私は良いと思いますけど」

卯月「ね~?」

美穂「いや良くないよ。真面目に考えようよ」

卯月「ていうか、なんで私が作詞することになったんだっけ?」

響子「卯月ちゃんが自分でやりたいって言い出したんじゃなかった?」

卯月「なんで?」

美穂「こっちが聞きたいよ!」

響子「まあ、どうせ凛さん関係だと思いますけどね」

卯月「思い出した! 凛ちゃんに『卯月ってセンスあるよね』って褒められて……」

美穂「それでその気になっちゃったんだね」

卯月「いや、夜の営みのことで」

美穂「急になんの話!?」

卯月「それで凛ちゃんって負けず嫌いだからいつもその後ピロートークで盛り上げてくれるんだけど、そういうのばかり聞いてたら私も色々言葉とか覚えてきて、なんかこれで歌詞書けそうだなって思って」

美穂「そのチャレンジ精神がたいしたもんだよ」

響子「ピロートークってなんですか?」

美穂「え? あ~、えーっとなんて言えばいいのかな……」

卯月「睦言ってことだよ!」ドヤッ

美穂「その説明で伝わるかな?! あ、なるほど! それも凛さんから教えてもらった言葉なんだね!」

響子「むつごと……むっつりってことですかね!?」

美穂「違うけど半分くらい合ってる!」

卯月「ちなみにこの三人で一番むっつりなのは……」

響子「美穂ちゃんだよね」

美穂「やめて!」

卯月「でもさすがにずっと考えてたら疲れてきちゃった。やっぱりミルクティーがないと頭が働かないよ~」

美穂「まあ特に急いで書く必要もないし、一旦休憩にしよっか」

響子「そうそう、そのためにお菓子とか色々買ってきたんですから♪」

卯月「あっ、響子ちゃんあれ買ってきてくれた?」

響子「うん。はい、これ」ガサゴソ

卯月「わーいありがとー」

美穂「何それ?」

響子「ミルクティーパウダーなんだって」

美穂「えっ」

卯月「この粉末をこうして鼻から吸うとね……」

美穂「ダメーッ!」」

卯月「……なーんて、冗談ですよっ」

美穂「もう、びっくりさせないでよ」

響子「鼻腔吸引じゃなくて静脈注射するってことですか?」

卯月「えっ こわい」

美穂「響子ちゃんって時々発言がパンキッシュだよね……」

響子「えぇーそうですかぁー? 私そんなバンギャっぽく見えますぅー?」

卯月「あ、わざとらしい」

響子「あたしぃーロックなアイドル目指してるんでぇー」

美穂「誰の真似なのそれは」

響子「酒!醤油!みりん!」

美穂「そんな酒!暴力!SEX!みたいに言われても」

響子「あーっ、小日向センパイがセ○クスって言ったー!」

卯月「わーっ、やらしーっ」

美穂「中学生か!」

響子「でも実際、良い作品を書くにはお酒とクスリが必要だって聞きましたよ」

美穂「そんなことないと思うよ!? 誰から聞いたのそんなの」

響子「沙紀さん」

美穂「あの人かァ~……っ」

卯月「沙紀さんって確か前に響子ちゃんが言ってた……」

美穂「そうそう、行き倒れてたところを助けたっていう……」

卯月「ホームレスだっけ?」

響子「違いますよぉ!」

美穂「今もアトリエに遊びに行ってるの?」

響子「アトリエっていうかただのアパートの一室ですけど、まあ、はい」

卯月「私思うんだけど、響子ちゃんって絶対その人の影響受けてるよね」

響子「そうかなあ。でもまあ、あの人の生き方はちょっとかっこいいなって思うことはありますけど」

卯月「やっぱり! このままじゃ響子ちゃんがアナーキズムに染まって……!」

響子「なんか誤解してるみたいなので言っときますけど沙紀さんは別にヤバイ人じゃないですよ?」

美穂「ボディペイントして外を散歩するのが趣味なのに?」

響子「あれはボディペイントしてるわけじゃなくて単に普段からペンキまみれなだけですよ!」

卯月「公共物の器物汚損が趣味って」

響子「だから誤解ですってば。本人にそういうこと言うと怒られますよ」

美穂「でも響子ちゃんのヒモなんだよね?」

響子「ヒモっていうか……まあ確かにそんな感じかも」

卯月「15歳に養われてる大人って時点で十分やばいと思う」

響子「オトナって言っても二人と同い年ですよ」

美穂「あ、そうなんだ。知らなかった。それもそれでどうかと思うけど」

卯月「私も響子ちゃんのヒモになりたい……」ボソッ

響子「なに言ってるんですか。卯月ちゃんのお世話なんてできないですよ私には」

卯月「えっ」ガーン

美穂「めちゃくちゃショック受けてる!」

響子「え? あ、いや今のはそういう意味じゃなくて!」

卯月「私って響子ちゃんにすら見放されるほどだらしない女だったんだ……」ショボン

響子「違う違う! 私が言いたかったのはつまり凛さんのことで……」

卯月「凛ちゃん?」

響子「あの人がいる前で卯月ちゃんに変にちょっかいかけると怖いんですよ」

美穂「分かる。眼光がね。すごいよね」

卯月「えーそうかなあ? 普通だと思うけど」

響子「だいぶ前の誕生日の時だって……」

美穂「あーあったねそういえば」

卯月「え、何それ。私知らないかも」

美穂「ほら、あの時の誕生日って事務所でやったじゃない?」

卯月「うん。覚えてるよ」

響子「それでP.C.Sとトラプリで向かい合うソファに座ってお祝いしたじゃないですか」

卯月「合コンみたいーってはしゃいでね。うんうん」

響子「殺されるかと思いましたよ」

卯月「なんで!?」

美穂「卯月ちゃんが必要以上に響子ちゃんとベタベタしてたからだよ!」

卯月「急に怒られた!」

響子「あの時の凛さんの殺気たるや」

美穂「ていうか卯月ちゃんあれ無自覚だったの? てっきり凛さんにやきもち妬かせるプレイでもしてるのかと……」

卯月「そんな悪趣味なことしないよ~」ヘラヘラ

美穂「なおさらタチ悪いような……」

響子「まあ結局それは奈緒さんと加蓮さんがフォローしてくれて大事にならずに済んだんですけど」

卯月「そうだったんだ。全然気付かなかった」

美穂「でもあの後も響子ちゃん呼び出されてたよね」

響子「はい。裏で凛さんに恫喝されてました」

卯月「う゛ぇえ!? ど、どゆこと?」

響子「人気のない場所に呼び出されて『卯月からプレゼント貰ったよね? 正直どう思ってるの』って」

美穂「こわーい」

卯月「こわくないよ! ただの質問じゃん!」

響子「もう私びびっちゃって、何も言えずに黙っちゃったんですよ」

卯月「いや、凛ちゃんに限ってそんな脅すような真似……」

響子「そしたら凛さんが『やっぱり。あのプレゼントはちょっとどうかと思うよね。私から卯月に言っといてあげる』って」

卯月「え?」

響子「『P.C.Sの名前が彫られたマトリョーシカなんて貰っても反応に困るよね』って言われて、私なんて答えたらいいか分からなくて……」

卯月「え? ちょっと待って、凛ちゃんがそう言ったの?」

響子「はい。『わたしもたまに卯月のセンスについていけないこと、あるんだよね』とも言ってました」

卯月「いいじゃんマトリョーシカ! かわいいじゃん!」

響子「あれ、最初は冗談だと思ってました」

美穂「私も」

卯月「ひどい!」ガーン

響子「あ、でもあのマトリョーシカは意外と気に入ってるので大丈夫です」

卯月「なんか今すごい気を遣われたような気がする!」

響子「ちなみに凛さんに恫喝されたのこれだけじゃないですからね」

卯月「まだ何かあるの!?」

響子「そのあとプレゼント貰ったんです。『さっきは恥ずかしくて渡せなかったけど、響子。誕生日おめでとう』って」

卯月「すごい良い人じゃん! え、むしろ好き」

響子「いやいや、めっちゃ怖かったんですからー!」

卯月「どこが!?」

響子「だってそれ、卯月ちゃんと凛さんがデ○ズニーラ○ドで撮ったツーショットの写真だったんですよ?!」

卯月「え」

美穂「こわーい」

響子「明らかな牽制ですよねこれ。『私と卯月、こういう関係だから』って。気安く手を出すなっていうメッセージですよねこれ」

卯月「あ~……う、う~ん……? いや、それはたぶん素でプレゼントしたんだと思うな……」

響子「だとしたらもっと怖いですよ! マトリョーシカとは別の意味でセンスを疑っちゃいます」

卯月「ごめん響子ちゃん。凛ちゃんには私から言っておくね。あの子時々すっごい頓珍漢なことするから……」

美穂「ていうか卯月ちゃん、凛さんからは何も言われなかったの?」

卯月「え? 何が?」

美穂「プレゼントのこと。『私から卯月に言っておくね』ってさっき……」

卯月「ああ、マトリョーシカのこと……う~ん……何か言われたかなあ? けっこう前だし、覚えてないや」

響子「あっ! もしかして」

卯月「?」

響子「卯月ちゃんがベッドで『センスあるよね』って言われたのがそれじゃないですか?」

卯月「そうはならなくない!?」

美穂「……なるほど! 分かったよ卯月ちゃん!」

卯月「私には分かりません! ちっとも分かりません!」

響子「つまり凛さんはこう言ってたんですよ。『卯月って(独特の)センスあるよね』って」

卯月「…………ん~? んん~!?」

美穂「ほら凛さんって少し言葉足らずなところあるっていうか」

卯月「……じゃ、じゃあ私のフィンガーテクニックを褒めてくれたわけじゃないってこと……?」

美穂「それは知らないけども!」

卯月「……あとで本人に確認してみるね……」

響子(普通に凹んでる!)

美穂「ほ、ほら、それより作詞の続きしようよ!」

響子「そういえばすっかり忘れてました」

卯月「もうマトリョーシカとミルクティーのことしか頭に浮かばない……」

響子「卯月ちゃん頑張ってください! あ、肩とか凝ってませんか? さっきこんなの見つけたんですけど」ヴィィィィン

美穂「ホアアアッ!?!? きょっ、響子ちゃんそれっどどどこで見つけて!?」

響子「ベッドの下にありました♪ 美穂ちゃんも肩凝りに困ってるんですか?」

卯月「……美穂ちゃん、やっぱり……」

美穂「違う、違うのこれはね!? いや違くなかった! そう、肩こりが! ね!?」

響子「美穂ちゃんも疲れが溜まってるんですね。私でよければほぐしてあげますよ? マッサージ、得意なんです♪」

美穂「大丈夫!大丈夫!それには及ばないから!とりあえずその電のマのやつしまって?!」

卯月「そのごまかし方は響子ちゃんのためにならないと思うな」

美穂「なら卯月ちゃんが説明してあげてよ!」

卯月「説明していいの?」

美穂「やっぱりダメー!」

響子「???」

美穂「はぁ、はぁ……」

卯月「美穂ちゃん顔真っ赤~」

美穂「うぐぐ……今度卯月ちゃんの家に遊びに行ったら仕返ししてやる」

卯月「私そんなやましい道具使ってないもん♪」

響子「なるほど。今のやりとりでなんとなく察しました。要するにいかがわしいことに使うんですね」

卯月「お、さすが響子ちゃん、飲み込みが早い」

美穂「これだから勘の良い娘は……」

響子「ちなみに誰からの贈り物なんですか?」

美穂「はぇっ?!」

響子「あのマッサージ器、色とか形があんまり美穂ちゃんっぽくないし、先月美穂ちゃん誕生日だったじゃないですか。その前に遊びに来た時はこんなの無かった覚えがあるので……」

卯月「勘が良すぎる! 恐ろしい娘……」

美穂「ご……ご名答です」

卯月「恥じらいと安堵の入り混じった複雑な表情!」

美穂「まあ言っちゃうと、クリスマスに蘭子ちゃんから貰いました」

卯月「わお」

響子「そういえば仲良かったもんね」

美穂「まあね」

卯月「でもさ、そもそも美穂ちゃんってどうして蘭子ちゃんと仲良いの?」

響子「私もそれ気になります。お仕事も一緒にしたことないし……」

美穂「ああ、二人は知らないんだっけ? 私たち出身が同じで熊本なの」

卯月「えーっ、知らなかった!」

響子「それで意気投合したんですね」

美穂「意気投合っていうかまあ小さい頃はほとんど幼馴染みたいなものだったから……」

卯月「えぇーっ!?」

響子「衝撃の事実……!」

美穂「そ、そんなに驚かなくても」

卯月「いや驚くよ! 蘭子ちゃんとか私たちにとっては雲の上の存在みたいなものだし……」

響子「そんなトップアイドルと美穂ちゃんが幼馴染だったなんて!」

美穂「別に大したことじゃないよお」

卯月「そしてそんな蘭子ちゃんからなぜかクリスマスに電のマのやつをプレゼントしてもらったと」

響子「ますます二人の関係が謎……」

美穂「だからただの幼馴染だって」

卯月「……気になるんだけど、蘭子ちゃんそういうものって知った上でプレゼントしたのかな?」

美穂「う~んどうだろう……知っててもおかしくないとは思うけどそんな大胆なことできる子でもないし……」

響子「確かに、あんまりイメージわかないですよね。蘭子ちゃんって少し潔癖そうだし……」

美穂「そう? あの子ああ見えてかなり煩悩まみれだよ」

卯月「へ~そうなんだ?」

美穂「ドがつく変態と言っても過言じゃないよ」

響子「そんなに!?」

美穂「首輪とリードつけて犬の真似させると喜んだりするし」

卯月「あの蘭子ちゃんに何やらせてんの!? ていうかそれ美穂ちゃんもたいがい変態じゃん!」

美穂「あっ、ちがっ、えと、蘭子ちゃんにお願いされるから仕方なく付き合ってあげてるだけだもん!」

響子「掘りましたね。墓穴」

卯月「だね」

美穂「~っ!///」

卯月「幼馴染設定にもびっくりしたけど羞恥プレイするほどの仲だったなんてね」

響子「いったい何がきっかけでそんなオトナな関係に?」ズイ

美穂「そんな前のめりに好奇心いっぱいの目で見ないで~!」

卯月「美穂ちゃん、観念しよ?」

美穂「うぅ……」

響子「それじゃ二人の馴れ初めから聞きましょうか♪」

美穂「馴れ初め……でもホントに私たち普通の幼馴染だっただけだよ? ただ蘭子ちゃん、地元だと私以外に友達いなかったから、それで昔はいろいろ面倒見てあげてたんだけど……」

卯月「うんうん、それで?」

美穂「やっぱり年上ってこともあってずいぶん懐かれたんだよね。それこそベタベタなくらい」

響子「へえ~、なんだか想像つかないです」

美穂「でしょ? 昔は……っていうか今もだけど、あの子ああ見えて根はすごく甘えん坊なんだから」

卯月「意外~」

美穂「でも私もさあ、お姉ちゃんぶっていられた頃はそうやって可愛がってたんだけど中学とかに上がるとだんだんうっとおしくなってきちゃってさあ」

卯月「おおっと」

響子「急に来ましたね」

美穂「蘭子ちゃんは私しか友達いなかったけど私は普通に他の友達いたし」

卯月「う、うん」

美穂「それで私が『もう遊びに来ないで』って言ったら『やだー!』ってすごい泣かれちゃって」

響子「うわぁ」

卯月「いやでも中学とかってそういう年頃だよね。分かるかも」

美穂「そうそう。今なら私もちょっと言い過ぎたかもなあって思うけど当時は、ね?」

響子「まあ、確かに……」

美穂「そしたら蘭子ちゃん、泣きながら何て言ったと思う?」

響子「えーなんですか?」

美穂「『なんでも言うこと聞くから!』って」

卯月「あっ……」

美穂「それで私が『ほんとに? じゃあ私のペットになれって言ったら?』って聞いたら『美穂ちゃんのペットになります!』って答えるから……」

響子「うわあ……」

美穂「……そういうわけで二人きりの時はよく飼い主とペットごっこやって遊んでたんだよね」

卯月「もしかしてその関係が今も……?」

美穂「私はそんなつもりないんだけどね? でもほら、蘭子ちゃんが一方的にそういうことしたがるから……」

響子「じゃあ今でも蘭子ちゃんは美穂ちゃんの言うことなんでも聞くんですか?」

美穂「まあ、そうだね。今のところ逆らわれたことないかも」

卯月「す、すごい……あの神崎蘭子をはべらせる女、小日向美穂……」

響子「私たち、恐ろしい人とユニット組んでたんですね……」

美穂「ドン引きしないで!? 二人が言うから説明しただけなのに!」

卯月「あ、いや、うらやましいなあと思って」

響子「卯月ちゃん!?」

卯月「凛ちゃんにあれこれ命令して服従させたら気持ちいいだろうなあって」

美穂「そうそう! けっこう癖になるんだよね。女王様気分っていうか」

卯月「今度そういうプレイお願いしてみようかな」

美穂「ちなみにね、上下関係を分からせる時は飴と鞭が大事なんだよ。例えばね……」

ワイワイ

響子(……このユニット、もう手遅れかもしんない……)ガクブル

美穂「……あっ、もうこんな時間? ごめん二人とも、私ちょっと出かけてくるね」

卯月「あれ? 何か用事あるんだっけ?」

美穂「うん。すぐに戻ってくるから留守番よろしくね」

響子「はーい。いってらっしゃーい」

美穂「くれぐれも部屋の詮索とかしないでね? 絶対だからね?」

卯月「大丈夫だよ~」

美穂「不安だなあ……まあいいや、いってきまーす」バタン

シーン…

卯月「…………」

響子「…………」

卯月「…………」

響子「……え!? しないんですか!?」

卯月「いや、しないよ! 私そんないじわるじゃないもん!」

響子「え~つまんないです~」

卯月「響子ちゃんこそ、人の部屋を勝手に詮索しちゃだめだよ、もう」

響子「え? 私は詮索じゃなくてお掃除したくて……」

卯月「あ、そっち!? いやでも勝手にお掃除するのもダメだよ!」

響子「まあそう言いつつもさっきまた少しベッドの下に手を入れてみたんですけど」

卯月「ほら~そーゆーとこだぞー」

響子「卯月ちゃんこそニヤニヤしながら言っても説得力ないですよ」

卯月「ウェヒヒ」

響子「それで、こんなの見つけたんですけど」

卯月「……? 普通のクマのぬいぐるみだね」

響子「ここ、目のところなんですけど……盗撮用の小型カメラが入ってるんです」

卯月「!!」

響子「見つけたはいいけど、どうしようかなって思って」

卯月「そそそそれめっちゃヤバイやつじゃない!?」

響子「犯罪ですね」

卯月「うわっ、こわっ、え、どうしよ? 警察? 110番? あわわわ」

響子「しーっ、落ち着いて……あんまり声を出すと聞こえちゃいます」

卯月「ど、どういうこと?」

響子「たぶん部屋のどこかに盗聴器も仕掛けられているはず。もし今の会話を犯人に聞かれていたら逆上させてしまったかもしれません」

卯月「! てことは今まさに美穂ちゃんの身が危ないんじゃ……」

響子「なので卯月ちゃんは美穂ちゃんに電話してください。私はそのあいだに盗聴器を探してみます」

卯月「電話ね、分かった! ………ってここにあるの美穂ちゃんのスマホじゃない?」

響子「あ……」

卯月「嘘、どうしよう。……こうなったら私、美穂ちゃん探しに行ってくる! まだ遠くには――」

…コンコン

卯月「!!」

響子「お客さん……じゃないよね」

卯月「は、犯人が来たんだよ! 私たちを口封じのためにこ、ころしに……」ガクブル

響子「くっ、もはやこれまで……!」




――あ、あのっ! 違うんです、それは……


卯月「……? この声……」

響子「! やはりあなたでしたか……」

卯月「響子ちゃん、犯人が分かったの!?」

響子「はい。セキュリティの固い寮に盗聴器を仕掛けることができてかつ短時間でこの部屋まで辿り着ける人物……そしてこの声! 犯人はズバリ……」



響子「寮の管理人さん!」

卯月(あ、蘭子ちゃんじゃないんだ。てっきり)



――はい。えっと、その管理人なんですけど、ちょっと弁明させてほし……

――あれ? 茄子さん? どうしたんですか?

――ッ!? みみみ美穂ちゃん!? か、帰ってくるの早かったですねえ!

――今日ゴミ捨て場の掃除当番だったので……私に何か用事でしたか?

――いえなんでもないんです! ただそのほら、今なにしてるのかなーって思って

響子「騙されないで美穂ちゃん!」ガチャ

茄子「ひいっ ごめんなさい~」

美穂「へ? 何? え? どゆこと?」

卯月「さあ?」

かくかくしかじか

美穂「…………ああ、あのカメラのことね」

響子「美穂ちゃん知ってたの!?」

美穂「うん。実はあのクマのぬいぐるみも蘭子ちゃんからのプレゼントなんだけど」

卯月「え?」

美穂「貰った時に『あ、カメラ付いてるなぁ』とは気づいてたんだけどあえて気づかないフリしてたんだよね」

卯月「ん?」

美穂「実は子供の頃にも同じようなことがあって、まあそれもバレバレだったんだけど」

美穂「私はまあ蘭子ちゃんなら覗き見されてても別にいっかと思って」

美穂「むしろなんかちょっと興奮するっていうか……って何言わせてんの!?」

卯月「美穂ちゃんが勝手にしゃべりだしたんですけど!?」

響子「oh……クレイジー……」

美穂「うぅ……でも確かに、盗撮はちょっとやりすぎだよね。なぁなぁで黙認してたけど、今度蘭子ちゃんに会ったら厳しく言っておくね」

卯月「ほんとだよ。映像データとか流出する可能性もなくはないんだし……それに今日は私たちも撮られてたってことだもんね。怖かったんだから、もう」

美穂「ごめんごめん」

響子「……で、今の話と茄子さんにどんな関係が?」

美穂「え?」

茄子「え?」

響子「いや茄子さんはすっとぼけないでくださいよ!」

茄子「えぇ~っと、そのぉ……なんて言ったらいいのやら……」ドギマギ

卯月「(寮の管理人さんなんだよね、この人?)」ヒソヒソ

響子「(そうですよ)」ヒソヒソ

卯月「(ずいぶん綺麗な人だね)」

響子「(まあ見た目は、ね……)」

卯月「?」

茄子「……あの、お部屋に上がってもいいですか?」

美穂「まだダメ」

茄子「ちょっとだけ! 先っぽだけですから!」

響子「おとなしく白状してください。盗聴器を仕掛けたのは茄子さん、あなたですね?」

茄子「ぎくっ」

卯月「え? それは蘭子ちゃんが犯人って……」

美穂「私はカメラのことしか知らないよ。盗聴器? なんのことですか?」

茄子「あ、あはは…………えっと、その……ごめんなさい~っ!」

…………

美穂「……なるほど。要するに全部茄子さんの仕業だったってことですね。蘭子ちゃんをそそのかして……」

茄子「わ、私は蘭子ちゃんの相談に乗ってあげただけなんです~!」

美穂「でも電マに盗聴器仕掛けたのは茄子さんの独断ですよね?」

茄子「だってカメラだけじゃ物足りないじゃないですか!」

美穂「だまらっしゃい!」

茄子「ひぇぇ」

卯月「……PCSで怒らせたら一番怖いのは響子ちゃんと思われがちだけど……」

響子「実は美穂ちゃんなんですよね~」

美穂「…………さて、今回の件については芳乃ちゃんに報告させていただきます」

茄子「そ、それだけは!」

美穂「問答無用。あ、それと茄子さんのパソコンも押収しないといけませんね」

響子「他にも被害者がいるかもしれないですしね」

茄子「ま、待って、盗聴はここだけです、他の子には手を出してませんから!」

美穂「まあ何を隠そうが芳乃ちゃんが全部探し当ててくれると思いますけど」

茄子「うわーん!」

卯月「なんだかよく分からないけど普通に警察案件なんじゃ……」

響子「まあ本当は通報するべきなんですけどアイドル絡みの不祥事をそんな簡単に表沙汰にするわけにもいきませんからね」

卯月「う~ん、業界の闇……」

美穂「というわけで茄子さん、芳乃ちゃんの部屋まで一緒に来てもらいましょうか」

茄子「うぐぅ……わ、分かりました。ただその前にひとつ、いいですか?」

美穂「辞世の句を詠むくらいなら」

茄子「えっと、あなた卯月ちゃん……ですよね? はじめまして、鷹富士茄子といいます」

卯月「あ、はい。はじめまして」

茄子「それでね卯月ちゃん例の渋谷凛ちゃんとの事なんだけどさっきの会話だと付き合ってるのか付き合ってないのかはっきりしなかったじゃないですか私ちょっと気になっちゃってだからもし良かったら今度ぜひ話を聞かせてもらえたらなって特に馴れ初めとか夜の情事とかそういうのを」グイ

卯月「ひ、ひいい」

美穂「ステイステイ! ほら行きますよ茄子さん」

茄子「私でよければ相談に乗りますからいつでも寮に遊びに来てくださいねなんて言ったってこの寮は――……」


卯月「……行っちゃった。あれ最後なんて言おうとしてたんだろう?」

響子「あ~……まあ要するにこの寮にはそういう子ばかり集まってるってことです」

卯月「?」

響子「いずれ分かりますよ……卯月ちゃんも適正ありますしね」

卯月「……いつの間にか外、真っ暗だね」

響子「ですね~」

卯月「結局ほとんど作詞進まなかったし、だべって終わっちゃったね」

響子「そうなるだろうとは思ってましたけどね。あ、ちなみに今日の夕飯、美穂ちゃんと一緒に食べるんですけど卯月ちゃんもどうですか?」

卯月「私? 私は……今日はいいや。凛ちゃんとちょっと話したいことあるし……」

響子「じゃあ今日はこんなところでお開きですかね」

卯月「そだね~、じゃあ私先に帰るね。美穂ちゃんにもよろしく言っといて……」ガタッ

響子「! 足元あぶな……っ」

卯月「きゃっ」グラッ

響子「あっ」

ドサッ

卯月「…………きょ、響子ちゃ、顔、近……///」

響子「………ハッ ご、ごめんなさい! すぐにどきます、から……?」


響子(よく見ると卯月ちゃんの肌ってすごく綺麗……あれ? なんだか……)ドキドキ

卯月(……響子ちゃん、睫毛長いなぁ……ていうかこれ、む、胸が当たって……///)ドキドキ


ガラッ

美穂「こらーーーー!!!! 人の部屋で勝手に恋に落ちるなーーー!!」

卯月響子「「はいぃっ!?!?」」

美穂「ユニット内での恋愛はご法度です!」

卯月響子「「すみませんでしたーっ!」」

一方その頃

茄子「――――ッ!?」ピキーン

芳乃「……ほたるー、こちらの引き出しからも邪悪な気配がー……茄子殿ー? いかがなされましたかー」

茄子「百合の波動を感じます……!!!」

芳乃「また茄子殿の悪い癖ですなー……どのみち今は拘束されている身ゆえー、おとなしくしているのでー」

茄子「くっ……私としたことが、こんな千載一遇のチャンスを逃すなんて……っ!」

ほたる「もう諦めましょうよ茄子さん。ほら百合姫で我慢してください」

茄子「ほたるちゃあん……」グス

芳乃「ほたるー、あんまり茄子殿を甘やかせてはなりませぬよー」

ほたる「でもさすがに拘束するのはかわいそうで……」

茄子「ほたるちゃんの言う通りです。これじゃ百合姫も読めません。ということでほたるちゃん、そのページから読み上げてくれませんか?」

ほたる「え、っと……で、でもこのページは……ちょっと///」

茄子「ふひひ」

芳乃「…………」ギュッ

茄子「いたたた! すみません反省します~っ!」


ほたる「まったく……ほどほどにしてくださいよ? でないと今度こそ芳乃さんに追い出されますよ」

茄子「でも……でもやっぱり、百合が好きなんです~っ!」



おわり

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