――おしゃれなカフェ――
北条加蓮「それでさー、その後に未央のヤツが――」
高森藍子「ふんふん……ふふっ。そうなんですね」
加蓮「そうそう。藍子からもよく言っておいてよ! ジュースを混ぜていいのはドリンクバーでだけだって!」
藍子「今度、言っておきますね……」アハハ
加蓮「ったく。思い出したらまたムカついてきたっ」
藍子「でも、加蓮ちゃん。なんだか楽しそうっ」
加蓮「はー? いいよ、もうこの話は終わりっ! 他の話を……――?」チラ
藍子「……? 加蓮ちゃん?」
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レンアイカフェテラスシリーズ第107話です。
<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「手を握りながらのカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「雪の降らないカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「くもりのち晴れのカフェで」
・北条加蓮「Zzz...」高森藍子「加蓮ちゃんが寝ているカフェで」
加蓮「……、」
藍子「あ~……。私たちに、何かあるのかな?」
加蓮「いい?」
藍子「私はいいですよ」
加蓮「ん」チョイチョイ
<えっ、えっ。も、もしかしてこっち来てって言われて……る?
<物欲しそうに見てるの気付かれちゃったかね。ほら、いってきな?
<お、お願い、一緒に!
<はいはい
「あ、あのっ。えと……えとっ、お邪魔します!」
加蓮「お邪魔されまーす」
藍子「こら、加蓮ちゃん。……こんにちはっ。今日も、おふたりで一緒なんですね」
「!!?!!!?」
「そんなに首振りまくったらもげるよ!? ほら、言っちゃいなっ」
「は、はい! あ、あのあの、藍子さん!! さ、さ……サイン、くださいっ!」
「よし、よく言えた!」
藍子「サイン……? はい、いいですよ。色紙はあったかな……」ガサゴソ
「……。って、書いてもらうもの用意してないの!?」
「あっ……あ、いや、あ、あります! これっ!」
藍子「これに書いたらいいんですね? あっ、それなら書くためのペンを――」
加蓮「はい」スッ
藍子「ありがとう、加蓮ちゃん♪」
藍子「~~~♪」サラサラッ
加蓮「……ところで何でまたサイン? 確か初めて話した時にもあげたよね。私達の。またほしくなっちゃった?」
「あー……すみません。こいつが藍子さんに慣れたいって言うんで、まずは難易度低いところからって、あたしが提案しちゃって……。よく考えたらすごい迷惑でしたよね」
加蓮「そういうことなんだ。全然迷惑なんかじゃないし安心して? ホントに迷惑なら、こっちおいでなんて招いたりしないよ。ねぇ、藍子?」
藍子「~~~♪ ~~♪」サラサラッ
加蓮「…………」ブスー
「……たはは。ドンマイです」
藍子「~~~できたっ。はい、どうぞ」
「あああ、ありがとうございます! ふわぁ……♪」
加蓮「……それにしても、まるでラブレターを受け取ったみたいな格好だねー? どうせなら、愛の告白なんてしちゃう?」
「ンンンンンッ!?」
「……すみません。いやホンット迷惑かけてすみません。ただもうちょっとだけ、ホントちょっとだけでいいので手加減してやってください……」
藍子「こら、加蓮ちゃんっ」
加蓮「あはははっ」
<ほぇー……。ちゃんともらえた。よかったぁ……
<おつかれー
<途中、なんだか川みたいなのが見えた気がするけど、あれなんだったのかな?
<……まぁ気のせいじゃない?
藍子「ふうっ」
加蓮「ふふっ。お疲れ?」
藍子「ちょっぴりだけっ」
加蓮「サインなんて何万枚も書いてきたでしょー?」
藍子「何万もは……書いていないのかな?」
加蓮「結構書いてることは書いてるのに。やっぱ緊張するんだ?」
藍子「いつだって緊張してしまいますよ。そういう時は、余計なことを考えないように、一気に書くようにしてますっ」
加蓮「そうは見えなかったけど……。でも、確かにさらさらーって書いてたね」
藍子「ゆっくり書いた方が、綺麗なサインになるのは分かるんですけれど……」
藍子「そうすると、なんだか緊張してしまって。……慣れていないわけでは、ないんですけれどね」
加蓮「そっか」
藍子「こ、これでも初めて書いた時よりはずっと書けるようになったんですよ?」
加蓮「初めて書いた時はどんな感じだったの?」
藍子「そうですね~……。やっぱり、アイドルとして自分のサインを書くなんてこと、想像してもいなかったから……」
藍子「すごくふにゃふにゃな文字になってしまっていたと思います。……そうそうっ。文字がすごく恥ずかしくて、思わずこう……ぐしゃぐしゃっ、って塗りつぶしちゃったんですっ」
藍子「サインの文字に納得できるまで、何時間もかかっちゃったなぁ……。その間も、モバP(以下「P」)さんにもずっと付き合ってもらってしまって」
藍子「でも、Pさんから……これからファンになってくれる方の顔を思い浮かべながら書くといい、ってアドバイスを頂いて」
藍子「そうしたら、自分でも不思議なくらいにすらっと書けちゃったんですっ」
加蓮「あるよね。一気にやれちゃう時って」
藍子「ねっ」
加蓮「今日は目の前に贈る相手がいたじゃん。それでも苦戦しちゃったの?」
藍子「相手の緊張が、移っちゃったのかも?」
加蓮「ふふっ。それ言っちゃおっかな? 藍子も緊張してたみたいだよ、お揃いだね……なんてっ」
藍子「……たぶんですけれど、やめてあげた方がいいと思います」
加蓮「ダメー?」
藍子「だめっ」
加蓮「残念」
加蓮「お疲れの藍子の為に、ココアでも入れてもらおっか」
藍子「ちょうど、ちょっぴり甘いものがほしかったんです。すみませ~んっ」
……。
…………。
加蓮「……疲れを取るための注文なのに、店員さんまでサインを欲しがるから余計疲れる羽目になっちゃったね」
藍子「あはは……。でも、私のサインで喜んで頂けるなら、これくらいなんてことありませんっ」
加蓮「やっさしー」
藍子「……? 加蓮ちゃん、ちょっぴり不機嫌?」
加蓮「別に? 藍子のサインを下さいってやたら緊張気味に言うのに、私にはなーんにも言わないんだなーとか思っちゃいないよー?」
藍子「……え、ええと……ほら、さっきのやり取りを見ていたとか聞いていたとかで、そこから連想したとかかもしれなくて。加蓮ちゃんのことを忘れたとかじゃ――」
加蓮「なんてっ。そんなこと言ったら藍子が困るばっかりだもんね」
藍子「ほっ」
加蓮「そういう日もあるし? じゃ、私は紅茶。頂きます」パン
藍子「ココア、いただきますっ」パン
加蓮「ずず……」
藍子「ごくごく……」
加蓮「……ふうっ」
藍子「……ふう♪」
加蓮「……、」チラ
<まだ心臓バクバクしてる……
<お疲れ。よく頑張った
<てへへ
加蓮「メガネだねー」
藍子「? 眼鏡ですね」
加蓮「ツッコミ役の子。メガネ、似合ってるねー」
藍子「そうですねっ。なんだか、ちょっぴり大人っぽく見えるような……?」
加蓮「ね。どっちもすごく大人っぽい。……片方は藍子の前に出るだけでぐにゃぐにゃに溶けちゃうけど」
藍子「あはは……。でも、確か加蓮ちゃんのことも応援しているって……。ほら、前にもっ」
加蓮「はいはい。覚えてる覚えてる。だから蒸し返さなくていいよー?」
藍子「……加蓮ちゃん、照れちゃった?」
加蓮「あー急にココア飲みたくなっちゃったなー」スッ
藍子「あ、だめっ」ヒョイ
加蓮「藍子。もうこの際見破るのはしょうがないとしても、そーいうこと言わないの」
加蓮「相手が私だからいいけど、それ他の人にやったら嫌われる原因になる――……」
加蓮「……藍子がやっても気遣いのできる子としか見られそうにないか。じゃあいいや」
藍子「ええと、結局、言ってもいいんですか? それとも、駄目なんでしょうか……。周りのみなさんのことで、何か気がついたことがあったら、できる限り言うようにはしていますけれど、加蓮ちゃんが言わない方がいいって言うなら」
加蓮「言っちゃえ言っちゃえっ」
藍子「は~い」
加蓮「最近コーデグッズとしてのメガネってよく聞くようになったよね」
藍子「そうですね。学校の友だちも、伊達メガネを買ったってお話をしていましたっ」
加蓮「うちなんてお父さんが買ってたんだよー」
藍子「加蓮ちゃんのお父さんが?」
加蓮「そ。でさー、私が初めてそれ見た時、お父さんがなんか縮こまっちゃって」
藍子「縮こまる……」
加蓮「現役アイドルの前でファッション査定をされるのが恥ずかしい! とか言い出しちゃった!」
藍子「くすっ」
加蓮「いや、ツッコミくらいは入れるけどそこまであれこれ言わないわよ」
藍子「加蓮ちゃんにするどく言われちゃうかも! なんて、思ったのかもしれませんよ?」
加蓮「私そういう風に見られてる?」
藍子「頼りになる、ってことですから♪」
加蓮「メガネが流行、かー。……うちの事務所の誰かさんが大喜びしてそう」
藍子「そういえば最近、すごく楽しそうにしている姿をよく見ますね」
加蓮「いや、むしろアレが犯人?」
藍子「犯人……」アハハ
藍子「そういえば前に、眼鏡のマーケティングが……って相談を、あちこちにしていたみたいですよ」
加蓮「あぁそれ私も聞かれた。っていうか聞きながら大量のメガネを押し付けてきた」
藍子「そうなんですか?」
加蓮「是非ともメガネのモデルを! って……人を何だと思ってるのよっ」
藍子「ふふ。でも、加蓮ちゃんならできちゃいそうっ。ほら、眼鏡とネイルのコラボレーションなんてどうですか?」
加蓮「えー……。どうコラボすんの、それ」
藍子「眼鏡を、くいっ、って動かした時に、」クイッ
藍子「加蓮ちゃんのつけているネイルも、見せることができませんか?」
加蓮「……意外と面白いこと言うね?」
藍子「えへへっ」
加蓮「藍子も混ざる?」
藍子「私も? でも、私は眼鏡にもネイルにも詳しくありませんから……」
加蓮「えー。そろそろネイルのことは分かってきたんじゃない?」
藍子「ごめんなさいっ。自分で塗るなら、いいですけれど……他の方に見せるのは、まだもうちょっとだけ」
加蓮「残念。まあ、メガネはアレでネイルが私だから、藍子はそれ以外を――」
藍子「加蓮ちゃん。あれ、って言い方はやめましょっ? 春菜ちゃんがかわいそうですっ」
加蓮「じゃあメガネはメガネ大魔王が担当するとして――」
藍子「だいまおう!? なんだか、前からどんどん言い方が大げさになっていませんか?」
加蓮「藍子も春菜のアイドル活動……っていうかもうメガネ活動を見てみたら私の気持ちが分かると思うよ……」
加蓮「……」
藍子「加蓮ちゃん?」
加蓮「あぁ、ううん。ちょっと思いついたことがあって」
藍子「思いついたこと」
加蓮「春菜が大魔王、私が……こう、思いつかないけど悪いヤツで」
藍子「加蓮ちゃん、どうしても悪い子になりたいんですね」
加蓮「藍子が悪い魔女」
藍子「悪くない魔女を希望しますっ」
加蓮「ダメ。それから愛梨が私たちのリーダーである女王様」
藍子「愛梨さんが女王さまなら、きっと優しい国になりますよね。……あれっ? でも、悪役のお話……?」
加蓮「悪者がいるならそれを成敗する役がいるよね? で、アニメとかで巫女が魔物とかを討伐するんだって、前に奈緒が言ってたんだよね」
藍子「……あの、それってもしかして」
加蓮「よし」
藍子「どこもよくありません! せめて、歌鈴ちゃんにも仲間をつけてあげてくださいっ」
加蓮「えー」
藍子「ほら、例えば桃太郎とかでは、桃太郎の仲間がいますよね? その方が、お話としても盛り上がると思います」
加蓮「脚本として盛り上げるかぁ」
藍子「だから、歌鈴ちゃんにも仲間を――そうだっ。それなら、私が歌鈴ちゃん側につきます」
藍子「……あっ。でも、そうしたら私と歌鈴ちゃんが、加蓮ちゃんや春菜ちゃん、愛梨さんと戦うんですよね。……戦わないで済む方法はないのかな?」
加蓮「じゃあ、藍子が歌鈴側について」
藍子「はい……」
加蓮「途中で藍子が実は私たち側、つまり歌鈴の敵でしたーって展開にして」
藍子「えっ」
加蓮「これならもっと盛り上がる!」
藍子「ダメっ!」
□ ■ □ ■ □
<あのね……
<どした?
<ええと
<言いたいことがあるなら言いな? もう今さらなんだし
<……今さらってどういうこと!?
加蓮「ただいまー」
藍子「おかえりなさい、加蓮ちゃん♪」
加蓮「Pさんに相談してみたんだけど、スケジュールが超タイトで無理って言われたー」ストン
藍子「残念。……って、相談って何を?」
加蓮「歌鈴が私達を征伐するドラマ」
藍子「なんで本当に相談したんですか!?」
加蓮「藍子が裏切る展開って面白くない? って言ったら、それは面白そうだって言われちゃったー♪」
藍子「なんで本当に相談したんですか!?!?」
>>19 申し訳ございません。下から4行目の加蓮のセリフを一部修正させてください。
誤:加蓮「歌鈴が私達を征伐するドラマ」
正:加蓮「歌鈴が私達を成敗するドラマ」
加蓮「ふふっ。近いうちにそういう役が来るかもね?」
藍子「わ、私ちょっとPさんに連絡しますっ。ええと――さっきの加蓮ちゃんのお話は冗談ですなかったことにしてください、っと」ポチポチ
加蓮「わぉ早い」
藍子「ふ~……。もうっ! 加蓮ちゃん!」
加蓮「ごめんごめん。ま、Pさんも藍子が嫌がるような役は持ってこないでしょ」
藍子「それを加蓮ちゃんが用意させようとしてますよね……?」
加蓮「……目が怖っ」
加蓮「でもさ。マジな話、藍子ってほら。今ままで色んな役をやってきてるじゃん」
藍子「……それはそうですけれど」
加蓮「けど、こう……なんていうのかな。すごく真っ直ぐっていうか、役のその部分だけに取り組めばいいって感じの物が多かったでしょ?」
藍子「その部分だけ?」
加蓮「盗賊の時は盗賊のことだけ。ウェディングの時はウェディングのことだけ……って感じで」
加蓮「例えばだけど、表向きは盗賊だけど実はいい子とか、本物の結婚式をイメージするけど内心は別の想いを……みたいな、二面性っていうのかな? そういう役、したことないよね?」
藍子「そうですね……。で、でも、盗賊役の時はその後に勇者のパーティーに入って、モンクに転職しましたっ」
加蓮「それだってさ、盗賊のうちから本当はモンクだったーとか、モンクになった後で元盗賊としての……ってこともなかったでしょ?」
藍子「う」
加蓮「だからそーいう……今回の話だと、歌鈴の仲間っぽく見せかけるけど実は……みたいなこと、1回経験してみたらいいかなって思っちゃって」
加蓮「もちろんそれが藍子に似合わないってことは分かってるよ? それに、私が面白がってるだけってのも自覚はしてる」
加蓮「ただ……うん、そう」
加蓮「"私と同じアイドルさん"がそーいう役をやるってなったら、どんな風に魅せてくれるのかな? なんて思っちゃったっ」
藍子「……加蓮ちゃん」
加蓮「何? 藍子」
藍子「言い方、ずるい」
加蓮「ふふっ。そういう子だって知ってるでしょ?」
藍子「う~……」
加蓮「ま、Pさんもスケジュール的に難しすぎるって言ってたし、それならいいよって私も言っちゃったし。別に今すぐそういう役が来る訳じゃないから……」
藍子「……もし、Pさんがそういう役を用意してくれたら……その時は加蓮ちゃん、手伝ってくださいね?」
加蓮「しょうがないなー」
加蓮「にしても、スケジュールかぁ。言われてみたら当然だよね」
藍子「加蓮ちゃんもですけれど、他のみなさんだって大活躍ですからっ」
加蓮「って言っても、負けてないけどー?」
藍子「ふふっ」
加蓮「そういうとこ、仲間内だからって……ね?」
加蓮「あ、でもさ。……そうそう、聞いてよ! Pさん、なんか私がみんなと一緒に何かしたがってるって思ったみたいで!」
藍子「……その通りですよね?」
加蓮「そうだけどそういうんじゃないでしょ!」
藍子「え~。だって、加蓮ちゃんが私や歌鈴ちゃん達と一緒に公演をしたいから、Pさんに相談したんですよね?」
加蓮「ホントの目的はそっちじゃないわよ! 面白そうって思ったから提案してみただけっ」
藍子「くすっ」
加蓮「……気付いて言ってない?」
藍子「どうでしょう♪」
加蓮「アンタねぇ……!」
藍子「加蓮ちゃん。加蓮ちゃんの言う、二面性? の演技って、こんな感じで合っていますか?」
加蓮「……合ってるからそういう役が来てもアドバイスしてあげない」
藍子「ああっ、ごめんなさい! その時は助けてくださいっ」
加蓮「ったく」
藍子「ま、まあまあ。Pさんがそう思っちゃったのは、この前の追いかけっこのことがあったからかもしれませんよ?」
加蓮「……あれさぁ」
藍子「はい」
加蓮「マジでやるとは思わなかったわよ。追いかけっこ企画。加蓮ちゃんを捕まえたら加蓮ちゃんの秘蔵の写真をプレゼント! って。あれ絶対藍子が主催でしょ」
藍子「さ、さぁ~? なんのことでしょうか~?」
加蓮「二面性の演技はノリノリなのに嘘をつくってなった瞬間にそうなるのって何なの……」
藍子「ほら。加蓮ちゃんが10分でバテちゃうって言うので、制限時間を10分にしてみましたっ」
加蓮「気遣いありがとね。……そのせいで参加者の目が余計血走ってたけどね! むしろ時間無制限の方がもっとのんびりできてたんじゃないの!?」
藍子「ひゃっ」
加蓮「なんなの? そうまでして私の写真がほしいの? それとも勝負事だから負けたくないっていうアレなの?」
藍子「どうなんでしょう。歌鈴ちゃんは、加蓮ちゃんの写真が見てみたいって言っていましたけれど」
加蓮「あの子は色んな意味で純粋なんだからそうなんだろうけど……」
藍子「なかには、勝ちたいっ、って思っていた方もいたかもしれませんね。あと、面白そうだから参加してみよう! って思った方も、いるかも?」
加蓮「茜なんかが絶対そうだよね……。あの子が私の写真を欲しがる理由とか思いつかないし」
藍子「茜ちゃん、たまに加蓮ちゃんの写真を撮ってみたいって言っていますよ」
加蓮「……なんで?」
藍子「私が、写真を見せてあげているからかな?」
加蓮「……」ゲシ
藍子「痛いっ。蹴らないでっ」
加蓮「はー……。もー……。で、勝ったの千枝なんだけどさ」
藍子「千枝ちゃんの勝利でしたねっ」
加蓮「結局なんの写真を見せてあげたの? 千枝、大人になりたがってるって言うけどまだ大人の入り口にいるんだから。あんまり過激なの見せちゃダメだよー?」
藍子「それなら大丈夫っ。そういう写真はできるだけ避けて、加蓮ちゃんのオフショットを何枚か渡してあげましたからっ」
加蓮「さっすがー。千枝、喜んでた?」
藍子「すっごく喜んでました♪ あと、加蓮ちゃんのことをすごいって言っていましたよ」
藍子「くすっ♪ あの時、私まで嬉しくなっちゃって……。その時のこと、思い出しちゃいました。ふふっ」
加蓮「……ふふっ。ホント、藍子ってば相変わらず人のことで幸せそうにしちゃって――」
加蓮「ちょっと待って」
藍子「?」
加蓮「"そういう写真はできるだけ避けて"、って……」
藍子「……あっ」
加蓮「そういう写真って何?」
藍子「ええと、それは」
加蓮「そういう写真って何??」
藍子「そのぉ~」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……まってっ。加蓮ちゃん、待って! 顔が怖いですっ」
加蓮「いいから。ほら」
藍子「そ、そんな大したことじゃないですっ。ええと……その……」
加蓮「……言わないなら今すぐ藍子のお母さんに電話して藍子がやらしい写真を撮ってるって言うけど?」
藍子「それはやめて~~~~~~~っ!!」
……。
…………。
加蓮「……大人コーデとかバッチリ化粧した時の、普段の私とはまるで別人に見える系のとかって、それなら最初から素直に言えばいいじゃん」
藍子「うぅ……。怖かったです」
加蓮「藍子との付き合いを考え直さないといけないかもって覚悟しちゃったわよ……。ったくもう……」
藍子「?」
加蓮「別にー」
藍子「そういえば、加蓮ちゃんを最後に捕まえたのって千枝ちゃんだったんですか?」
加蓮「ん。そーだよ? だから千枝が勝者」
藍子「ちょっぴり意外……。千枝ちゃん、最初は周りのみなさんの熱気ややる気にびっくりしていたのに」
加蓮「あぁ、顛末知らない感じ?」
藍子「はい。私も、みなさんが思っていたより張り切っていて、ちょっとびっくりしちゃって……。頑張ってついていったら、その時にはもう、試合? が、終わってしまっていましたから」
藍子「どんな感じで、千枝ちゃんに捕まってしまったんですか?」
加蓮「んー……。ちょっと小狡い感じ」
藍子「こずるい」
加蓮「何日か前に……ほら、まだすっごく寒かった時にさ。雪だるまのクッション、子供のみんなに渡してあげたんだよね」
藍子「雪だるまの……あっ、ひょっとして、この前ここに置いてあった!」
加蓮「そ。見つけるのにすっごく苦労しちゃった。教えてもらった店に行っても売り切れだったし」
藍子「今も暖炉(ストーブ)のところに……って、あれっ?」
加蓮「ふふっ。私も最初来た時に気付いたんだけど、代わりに桜の枝っぽいのが植木鉢に刺さってる置物になってるよ」
藍子「みたいですね。最近、暖かくなってきたからかな……?」
加蓮「そのうち桜の花が咲いたりして」
藍子「そうかもしれませんねっ。また来た時に、確かめてみなきゃ」
加蓮「寒いうちにどうにかクッションを見つけて、みんなに渡してあげたの。そしたらすっごく喜んでもらえたっ」
藍子「うんうんっ」
加蓮「で、追いかけっこの時なんだけどさ。ヤバいメンバーからどうにか逃げ切って、近くの休憩室に駆け込んだの」
藍子「えっ。いったい誰に追いかけられていたんですか!?」
加蓮「茜と愛海」
藍子「…………あぁ」
加蓮「どこかに行ってくれたかなーって部屋を出たら、そこに千枝が立ってて」
藍子「ふんふん」
加蓮「どう見ても参加してますって目だったから、すぐ横をすり抜けて逃げようとしたんだよね」
加蓮「そしたら千枝、慌ててすっごく早口で"雪だるまをありがとうございますっ!!"って言って」
藍子「立ち止まっちゃったんですか?」
加蓮「……つい。クッションを渡してあげた時に、千枝、お仕事か何かでいなかったから。追いかけっこに参加してたのも、それを私にわざわざ言いたかったからみたいで」
加蓮「でさ。つい話が盛り上がって……その途中で千枝が私を掴んだから、勝者は千枝」
藍子「あはは……。それで"こずるい"なんですね」
加蓮「色々無意識っていうか、つい掴んじゃったみたいな感じで。本人も困惑してたけどね。その後に、ずるいことしちゃったって顔で、落ち込んだり謝られたりもしてさ……」
加蓮「そういうズルさも大人だよ、って言ってあげたら、そんな大人にはなりたくありません、って言われちゃった」
藍子「くすっ♪」
加蓮「ま、そんな訳で将来有望な小悪魔ちゃんに捕まっちゃいました」
加蓮「今にして思えば、丸く収まってよかったって感じかな?」
加蓮「もし未央や茜辺りに捕まってたら、言いくるめられた藍子ちゃんがガチでヤバい写真を流しちゃうかもしれないしー?」
藍子「そ、そんなことしませんよ~……じゃなくてっ、そ、そんな写真ありませんよ~?」
加蓮「……」ジトー
藍子「ありません、本当にありませんからっ」
加蓮「追いかけっこかぁ。疲れたし、みんな勢いが凄くてちょっとだけびっくりしたけど……実は、ちょっとだけ楽しかった」
藍子「よかった。加蓮ちゃんに相談しないで、急に始めちゃったから……」
加蓮「……まー相談くらいはしてほしかったかな?」
藍子「うぅ。ごめんなさい。今日、そのことで怒られるかもって……。ちょっぴり心配でした」
加蓮「うん。怒る」
藍子「ひゃ」
加蓮「今度お返しするからね?」
藍子「……お手柔らかに、お願いしますね?」
加蓮「どーしよっかな?」
藍子「うう。お願いしますっ」ペコ
加蓮「ふふっ」
加蓮「……楽しかったなぁ。バカバカしいことに必死になってドタバタするのも」
加蓮「もっと前から、こーいうこと、いっぱいしたかったなぁ――なんて。そう思ったの、何回目かなっ」
藍子「加蓮ちゃん……」
藍子「……また、やりたいことを思いついたら、なんでも言ってくださいね。一緒に、一生懸命になってやってみましょ?」
加蓮「やっぱり次はかくれんぼ?」
藍子「加蓮ちゃんが見つける側だと、すぐ終わっちゃいそう……?」
加蓮「そうでもないかもね。みんなアイドルだし?」
藍子「ふふっ。それ、アイドルと関係あるんですか?」
加蓮「あるある。超ある。たぶん」
藍子「あははっ」
加蓮「さて。色々話してたらお腹がすいちゃった」
藍子「私もっ。加蓮ちゃんは、何を食べたい気分ですか?」
加蓮「藍子に任せるー」
藍子「しょうがないですね。え~っと、メニューは……」パラパラ
加蓮「ん?」チラ
藍子「?」
加蓮「ん」
藍子「あっ。ひょっとして、また……?」
加蓮「いい?」
藍子「いいですよ」
加蓮「ん」チョイチョイ
<ま、また気付かれた!?
<アイドルだし視線とか聡いのかもね。ほら、逃げようとしない!
<……お願い!
<分かった分かった
「あのっ……!」
加蓮「ふふっ。今度はなぁに?」
藍子「そうだっ。私たち、ちょっぴりお腹が空いてしまって。今から何か食べるところなんです。よければ、ご一緒に食べますか?」
「アッ」
「……もうちょい慣れてからって言っています。多分」
加蓮「あーあ。いけないんだー藍子。ファンの子を虐めちゃって」
藍子「そ、そんなつもりはっ」
「」
「……ほら、起きな? 加蓮さんに頼みに来たんでしょ?」
「ハッ! そそ、そうです! あの、あのあの、加蓮さんっ!!」
加蓮「あれっ、私?」
藍子「そうみたいですね」
「と、とんでもなくあつかましいことだとは承知の上なのですが! ……加蓮さんの……その、サインも、……よければ、くださいっ!!」
「よし、よく言えた!」
加蓮「!」
藍子「……くすっ♪」
「うううぅ、口からなにかでそう……!」
「あーっと……。ほんっとすみません。迷惑ならもう金輪際やめときますんで……その」
加蓮「だから迷惑だったら呼ばないって。……でも、口から何かを出すのはカフェに迷惑だからやめてあげてね?」
加蓮「私なら大丈夫。色紙、もう1枚ある?」
「は、ははははははい!」
加蓮「ん。……あれ? ペンがない」
藍子「加蓮ちゃん。ペン、お返ししていませんでしたっ」
加蓮「そういえばそうだっけ。~~~~、っと」サラサラ
加蓮「はい。加蓮ちゃんのサイン。大事にしてね!」
藍子「よかったですね♪」
「」
「だから毎回死ぬな! あの、ホント今回はすんません! でも、こいつのためにありがとうございました!」
加蓮「どう致しましてー♪」
藍子「私も、ぜんぜん迷惑なんかじゃありませんから。またいつでも来てくださいっ。今度は、一緒にお話しましょ?」
「アッ」
「……あ、ヤバい、今あたしも持っていかれそうになった」
<ぐぬぬ……! お前また太っただろ! 早く戻ってこい……!
<ウヘヘ...ヘヘヘヘ.....
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……はは」
藍子「……あはっ」
加蓮「私もメガネコーデを試してみようかな?」
藍子「春菜ちゃんに相談してみますか?」
加蓮「……また暴れられかねないからやめとく。それよりほら、サプライズでお披露目してみた方が面白くない?」
藍子「面白そうっ。私も、一緒にやってみたいです!」
加蓮「じゃ、スケジュールを調節しなきゃ。事務所にいっても春菜がいないと面白みも半減だし?」
藍子「私と加蓮ちゃんのオフの日に、眼鏡を探しに行って、それから春菜ちゃんが事務所にいる日を確認して――」
加蓮「えーっと、ちょうど今度の週末が空いてるから――」
加蓮「……」
加蓮「……どうにかスケジュールを調節して、マジの公演じゃなくてお芝居でいいから、裏切り物の藍子ちゃんのお話できないかなぁ」
藍子「もうっ。しません! それに、なんだか目的が変わっちゃってます!」
加蓮「えー」
藍子「みんなでやるなら、もっとほんわかとしたお話にしましょ? ねっ?」
加蓮「じゃあどっちやるか、かくれんぼで決める? 事務所で、どっちやりたいかでチームを募集して」
藍子「い、いいですよ。負けませんからね~っ」
<ハッ!
<はいお帰り
<うん。……う、うへへ……あっ。ええと……
<サイン、もらえてよかったね。加蓮さんも藍子さんも優しくてよかった
<……うんっ
【おしまい】
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