Ｐ「で、新ユニットを組もうと思う」

あかり「ゆ、ユニット？ え、もしかしてこの二人でですか！？」

聖「……んご♪」ﾆｺﾆｺ

Ｐ「そう。あかりと聖の二人で」

聖「あかりんごと、ひじりんご…ふふ…」

あかり「あやっ、望月さんは結構乗り気なのかな？」

聖「……？　あかりんごさんは…乗らない…？」

Ｐ「乗らないのかあかりんご」

あかり「や、乗らないと言いますか……そのー」

聖「……？」

あかり「あかりんごひじりんごの語呂だけでユニットって、さすがにちょっと安易なんじゃないかなーって…思うんご！」

聖「…あ」

Ｐ「あかり…」

あかり「な、生意気言っちゃってますよね！」

Ｐ「もっともな反応だよ」

あかり「あやっ？」

Ｐ「りんごアイドルあかりんごと組ませるのに、ただひじりんごで語呂がいいだけだってのは、真面目にりんごアイドルやろうとするあかりに失礼だよな」

あかり「あ、いえ、そこまで真剣ってわけでもないんご……失礼とか全然…」

Ｐ「でも安心しろあかり。聖はれっきとしたりんごアイドルの一人なんだ」

あかり「お？」

聖「わたし…長野生まれで…」

あかり「んごっ！？ 信州長野！ まごうことなきりんご県！　シナノスイートの銘柄は伊達じゃないんご！」ｸﾜｯ

Ｐ「いきなりテンション上がるな」

あかり「……って望月さん」

聖「ひじりんご…」

あかり「んごっ！？」

聖「って呼んでほしいんご…」ｼﾞｰ

あかり「プロデューサーさん！　思いのほか強めに距離詰めて来るんご！」

Ｐ「あかりのこと気に入ってるみたいで。かなり珍しいよ」

あかり「すごく嬉しいけど…そんな気に入ってもらえる心当たりないですよ…」

聖「あかりんごさん…何か言おうとしてました…ごめんなさい…遮ってしまって…」

あかり「あ、そうでしたっけ？　えっとー、あそうだ！　もち…ひ、ひじりんごちゃんって長野生まれだったんですか！？」

聖「…？　そうですよ…」

あかり「てっきり天界とかだと思ってたんごっ」

聖「……？」ｷｮﾄﾝ

Ｐ「あかり…」

あかり「あっ、はい！　おバカなこと言っちゃったってわかってます！」

Ｐ「俺もそう思ってた」

あかり「あやっ！？　やったんご！」

Ｐ「今だにいまいち信じられない。とは言え聖が嘘つくわけもないし」

聖「ただの…長野県人です…んご」

あかり「もしかして神の州と書いてしんしゅうのお生まれなのではっ」

Ｐ「おお、賢いなあかり。そんな発想なかったな」

あかり「あは♪　また誉められたんご」

聖「しがない…長野県人です…んご」

Ｐ「しがないなんて言うな聖。聖クラスがしがない存在だったら俺なんかどうなる」

あかり「それはともかく」

Ｐ「ともかくで済まさず優しい言葉をくれ」

あかり「長野生まれならもうぐうの音も出ないほどのりんごアイドル。あかりんごすっかり納得しました！」ｽｯｷﾘ

Ｐ「長野のブランド力すごい」

あかり「りんご生産量って青森が断然の一位なんですけど、長野の二位も鉄板で。高い壁なんですよ」

聖「小さい頃…ふるさとで、毎日のように食べました…」

あかり「そうだったんだ。もしかして長野のりんご毎日食べてたら天使っぽく成長するんご？」

Ｐ「よし、じゃあユニット組むか」

あかり「…でもなあ」

Ｐ「なんかこういう漫才するコンビいたよな」

あかり「あの、さっきひじりんごちゃんが私のこと気に入ってくれてるってプロデューサーさん言ってたと思うんですけど」

Ｐ「ああ。本当だよ。見ればわかるだろ」

聖「…わかるんご…？」

あかり「それはもちろんわかるんご」

聖「…嬉しいんご」ｷﾗｷﾗ

Ｐ「ほら。すでに立派なんご友じゃないか」

あかり「確かに、ひじりんごちゃんこんなにひじりんごしてくれて、嬉しいんですけど」

あかり「でも望月聖ちゃんには、十分な個性と武器がもうあるじゃないですか」

聖「……？」

あかり「私なんかまだまだで、普通過ぎて…山形りんご推しだって、父ちゃんお母ちゃんのプレ…期待もあるからってだけで…」

Ｐ「あかり今プレイって言いかけたのか？」

あかり「ち、違うんご！　プレッシャーですプレッシャー！　なんですかプレイって！？」

Ｐ「かわいい娘にかわいげのない着ぐるみをあえて着させるみたいな」

あかり「りんごろうさんはかわいいんです！」

Ｐ「ヤ〇ハ音楽教室のキャラに似てる」

あかり「似てません！　りんごろうさんのほうがかわいいんご！」

Ｐ「それはともかく」

あかり「んご！　さっきのお返しですか！？」

Ｐ「つまり、あかりは聖に遠慮してるわけだ」

聖「…そうなんですか……？」

あかり「遠慮っていうのか、うん……なんだか、聖ちゃんが無理に私に合わせようとしてくれてるような気がしちゃって……」

聖「っ！　そんなことないんご…！」ｽﾞｲｯ

あかり「うぐ。それにちょっとこう、正直ひじりんご……あかりんごより可愛くないですか！？」

Ｐ「…………そんなことないんご」

あかり「間！」

Ｐ「まあ聖がこんな積極的になるの珍しいから俺も驚いてるのが正直なとこなんだが」

Ｐ「聖がお前を気に入ってるのは、りんごアイドルとしてのりんごアピールに余念がない姿勢に感銘を受けた。それが大半なんだがそれだけでもないらしくてな」

あかり「はあ…」

聖「信州生まれのりんごに…夏あかりっていう名前の品種が…あるんです」

あかり「あやっ？　夏、あかり…？」

聖「そうです…あかりさんと…同じ名前」

あかり「それは…知らなかったなあ。りんご農家の娘なのに恥ずかしいけど」

聖「まだ珍しい種類らしいです…わたしは…りんごの品種まではわからなくて…だけど…ふるさとにいた頃には…食べたことがあったのかもって」

あかり「それで、縁を感じてくれたってこと…？」

聖「……」ｺｸｯ

あかり「うううう嬉しいんご～！」ｷﾞｭｯ

聖「…あぅ」

あかり「んごっ！？　ごめんなさい思いっきり手握っちゃった！」

聖「大丈夫です…あかりさんの手…あったかい」ﾎﾜ

あかり「あは♪　よかったんご！　ひじりんごちゃん、今度夏あかり食べてみたいです！　長野に行かないと無理かな？」

聖「東京でも、買えるところはあるみたい…」

あかり「おお、長野すごい！　いや東京がすごいのかな？　とにかく、夏になったら一緒に食べるんご！」

Ｐ「というわけであかりユニット組むか」

あかり「ここで割り込んでくるプロデューサーさん！」

Ｐ「まだダメだった？」

あかり「ユニットはやるんご！」ｸﾞｯ

聖「やるんご」ｸﾞｯ

Ｐ「そうこなくちゃな」

あかり「でもこれってどういうユニットになるんですか？」

Ｐ「方向性か。それはもちろんりんご感を前面に押し出して」

あかり「田舎者の小娘でもわかるふわっと感！　これダメそうなやつでは！？」

Ｐ「手厳しいな。そうだな、りんご生産鉄壁の全国二位と、最新調査で全国四位に転落したところのアイドルが組んでるわけだから」

あかり「え、嘘！？　山形三位じゃなくなってるんご！？　なしてや！？」ｶﾞｰﾝ

聖「長野は不動の二位…♪」

Ｐ「やっぱりあれだよな、企業の業界再編とかでもよくある、下位で手を組んで絶対強者に対抗するってやつ」

あかり「打倒青森…ってことですか」

Ｐ「っていうキャラ付けでね。本気で対立煽ったら怒られちゃうし」

あかり「うん、私も…父ちゃんは結構メラメラな感じですけど、青森に対抗するっていうよりは、山形もりんご作ってるんだよ、美味しいよーって知ってもらいたいだけなんですよね」

聖「山形はやっぱり…さくらんぼの印象が大きいです…」

あかり「うぐ。そうなんですよねー…山形はさくらんぼの存在感がすごいんですよ…」ｽﾞｰﾝ

聖「あ…」

Ｐ「天使の声で無慈悲な現実をつきつけるな聖」

聖「あぅ…えと…あ、山形と言えば…ラ・フランスも有名な…」

あかり「ぐふっ！　そうなんです、全国生産圧倒的一位のラ・フランス強県山形です…りんごは……」ｽﾞｽﾞｰﾝ

聖「な、長野も…ラ・フランスの産地です…」

あかり「あや？」

聖「他にも、ぶどうとか…あかりさんの山形と、わたしの長野…似てるところがたくさんです…」

あかり「そ、そうだったんだ……なんだか私、親の影響もあるんでしょうけど、同じ東北の青森ばっかり見ちゃってたのかな」

Ｐ「いやまありんご農家なんだし、りんご以外の果物にも詳しくなきゃいけないわけじゃないだろう」

あかり「そこはそうかもしれないけど、ほら、夏あかりだって知らなかったし」

Ｐ「実際地元以外のりんごって食べないもんなのか？」

あかり「んー、山形にいた時はほとんど食べてなかったんご…こっちに出てきて、いろんなところのいろんな果物があってびっくりしました」

聖「どれも…ちょっと高い」

あかり「それはほんとに思います！　で、最近久しぶりに青森のりんご食べたんですけど……おいしかったんご」

聖「わかります…青森のりんごもやっぱり…おいしい」

Ｐ「生産量ダントツは伊達ではないんだな」

あかり「ちょっと悔しいけど、それで改めて思ったんです」

Ｐ「うん？」

あかり「りんごっておいしいんですよ！　なんか最近は皮剥くのが面倒とかで果物自体が人気ないなんて話も聞いてもう…もったいないんご！」ｸﾜｯ

聖「りんごは皮ごと食べても…おいしい」ﾆｺﾆｺ

Ｐ「全てのりんごを慈しむユニットになってきたぞ」

聖「そんな歌…歌ってみたいな」

あかり「りんごろうさんもきっと喜ぶんご！」

Ｐ「まずはユニット名を決めなきゃだが、これはもうある程度案がある。今の二人にはぴったりかもしれないな」

あかり「おおっ」

聖「……」

Ｐ「ユニット名は『紅月（あかつき）のイドゥン【黄金林檎の護人】』でいこう」

あかり「んごっ！？」

Ｐ「ん、どうしたあかり」

あかり「もっかいお願いします！　よく聞こえなかったので！」

Ｐ「『紅月のイドゥン【黄金林檎の護人】』だ」

あかり「田舎者の小娘でも感じる14才っぽさ！　これ『イタい』ってやつでは！？」

聖「…素敵です」ｷﾗｷﾗ

あかり「嘘ぉっ！？　私の感性がおかしいのかな！？」

Ｐ「聖はまだ13、アラフォティだからな」

あかり「私もまだ15のアラフォティですんご！」

聖「だったらあかりんごさん…問題ないんご…」

あかり「えっ？」

聖「あかりんごさんとわたし、平均すれば14才です…」

Ｐ「完璧な理論武装。いちごアイドルも真っ青」

あかり「一番遠い外濠を丁寧に埋められた感じがするんご」

Ｐ「外濠せっせと一人で埋めてる聖想像してみろ」

あかり「んご……？」ﾑｰ

聖「……？」ｷｮﾄﾝ

あかり「……ひじりんごちゃんはそんなことしなくていいんご！　羽根が汚れちゃう！」

Ｐ「あかりんご陥落。ユニット名決まったな」

あかり「ままま待った！　土まるけの天使の幻覚になんか騙されません！」

Ｐ「ダメか」

聖「ダメですか…？」

あかり「うぐ。ひ、ひじりんごちゃんはイドゥン感すごくあるし似合うと思いますけど、私にはそんなの名前負けな感じしますし……」

聖「イドゥン様は、黄金のりんごのお世話をする女神様…わたしは、りんごのお世話なんてちゃんとできないから…だからきっと、あかりんごさんのほうがイドゥン様です」

あかり「そ、そうなのかな！？　ちょっと照れるんご」

Ｐ「じゃオッケーか」

あかり「おっけ…や、いやちょっと待ってください！」

Ｐ「粘りんごだなあ」

あかり「こんな高貴で気品あふれるユニット名なのに口を開けばんごんご言ってるのってなんか……バカみたいでは！？」

聖「あ…！」ﾊｯ

Ｐ「確かに……」

あかり「やっぱりもう少し庶民っぽい、親しみを感じられるような名前のほうがいいかな、なんて……」

聖「うん…んごは、譲れないんご…」ﾝｺﾞ

Ｐ「ならイドゥんごはどうだろう」

あかり「プロデューサーさんもしかしてやる気がないんですか！？」

聖「すごいんご……！」

あかり「んごっ！？　ひじりんごちゃん？」

聖「女神様の名前にも、んごは付けられる…違和感もなくて…んごの力、すごいです……！」ﾊﾟｱｱ

あかり「ひじりんごちゃん少しは疑問を持つんご！」

聖「あ、違いました…んごの力、すごいんご……！」ﾊﾟｱｱ

あかり「そうじゃないんごーっ！！」