【ペルソナ5】屋根裏のゴミ「二人目ができた」 (40)

前作 【ペルソナ5】屋根裏のゴミ「子作りしたい」 - SSまとめ速報
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竜司「よぉ……屋根ゴミ!」

屋根裏「どうした?竜司?」

竜司「お前、進路どうする?」

竜司「オレ……一応、大学には行けたけど、なんかやりたい事がなくて…」

竜司「お前は、どうすんの?」

屋根裏「俺は、夜の帝王になろうと思う」

竜司「は?」

屋根裏「俺は、裏社会で働いて頂点を取る」

屋根裏「というか、前科持ちで、公安から目をつけられてる、俺がまともな職に就けられないだろ」

屋根裏「だから、開き直って闇社会の頂点に立とうと思う」

竜司「ま、マジかよ」

■杏

娘が寝ている。
お気に入りのアニメを撮り貯めしていたのを解説してもらいながら一緒に見ていた。
悪役の女幹部が好き、という点は母親譲りだ。
数時間が経ち自然と目を閉じた。そう言えばもう寝る時間だ。
俺は彼女を抱きしめて、彼女の部屋に連れて行く。
赤い色をしたキャラクターをあしらったベッド。杏の親から誕生日プレゼントとして貰った。
今度は一人でビールとチーカマを用意して、夜のテレビを見る。

「○○TV職員である__容疑者が今朝麻薬取締違法で逮捕されました」

「動いたか」
杏のタレコミを元に動いた事件だ。TVプロデューサーが麻薬販売の元締めとなり、芸能界の新人タレントに流通している。そうして金銭を要求して、金が無くなった体で払わされた。
そういうことをやっていた男だった。
俺はTVプロデューサーのバックにいる暴力団に対して、別の敵対する暴力団に駆け引きして、情報を得て、警察に売った。
今回の捜査費用の半分を受け取る裏取引だ。
まぁ、持ちつ持たれの関係だろう。

玄関の音がした。
「ただいまー」
杏の声がした。俺は迎えに行った。

「おかえり」
「うん、どうあの子?」
「寝てるよ」
「屋根ゴミだと寝つきいいなぁ」
「ごめんね、最近あの子の面倒、屋根ゴミに任せっぱなしで」
「俺が好きやってるんだよ」

「ビール、飲んでるの?」
「ああ…」
「どうしたの?こんなに?」
「自分のだろ?CM決まって山ほど貰ったくせに」
「えへへ」
杏のマンションには一年分のビールが置いてある。杏が缶ビールのCMが決まって副賞だそうだ。
ちなみにお祝いに怪盗団で集まった。
竜司はアホのように騒ぎ、祐介は笑い上戸になり、真はすぐに倒れて寝た。
春はうわばみで、一人で何十本もごくごく飲んだ。


「後、プロデューサーのこと、ありがと。私の後輩も狙われてたの」
「……未遂で済ませることができて良かった」
「うん、本当。運がいい」
大学卒業以来一般のサラリーマンを隠れ蓑に世直し屋兼お助け屋として行動している。怪盗団の延長線だ。

最も正規の手段ではできることが限られているので、今回みたいなグレーなことで対応するしかない。

「ふぅ…」
「どうした?お疲れ?」
「ううん、ちょっと申し訳ないなぁと思って」
「…?」
「育児も家事それに仕事も助けてもらって私はなんにもしてない」
「私…重みになってない?」
「俺が好きでやっているんだよ」
「本当?」
「…それにもっと忙しくなっちゃうよ」
「…ちょっといい」
「え?」

そう言うと、杏は俺の隣に座った。

「できたみたいなんだ」
「はい?」

杏は腹を触った。
「妊娠している。二人目って奴…」

妊娠…………

「え?子供ができたのか?」
「うん。心当たりはあるでしょ」
「まあな」

散々やった。やりまくった。

「まあ、そうだよね。あなた、中出し好きだもんね」

まあ、そうか

「あの子が生まれてから毎晩やりまくり、デキない方がおかしいもんね」
「結婚したらちょっとは控えるとか心配したけど、全然、気のせいだったみたいだね」

杏がエロいからな

「……んん~~」
「……」
「どうした?そんな複雑な顔して」
「…ちょっと心配になってね」
「今ですら一杯一杯なのに二人目、作っていいのかって思ってさ…」
「あの子も受け入れてくれるかな…」
「あの子も遊び相手が欲しいみたいなんだ。俺じゃ物足りないらしくて、大人と遊ぶ時より、子供と遊びたい時もあるから…」

「そうなんだ…」

大丈夫、俺も最初はそうだったから

「ねぇ……他の奥さんの子供って、何人いる?」

「今は9人だ。もっと増える」

「この子……何番目になるのかな?」

「まあ、10番目以降だろう」

「ふーん」

「でも、君なら平気だよね」

つくづく、杏は、普通なんて言葉に、収まらない女だ。

「杏は強い女だな」

「当たり前でしょ!旦那は君なんだもん」

■真
真が警視庁に入って数年。キャリアを積んで順当に出世している。
「やっぱり警察は出世が早いな」
スマホに連絡が来る。
すると真の名前が映る。
俺の妻で、怪盗団の参謀、横に眠る少女の良き母親。
その名前を見ると安堵と高揚が体に沸く。

俺は真との子供を産んだ。俺は公安に目を付けられている危険人物。
それに現在もグレーな夜の仕事している。(と言っても風俗ではない)
そんな人間と結婚するなんて、立場が許さないだろう。
だから、真はシングルマザーでもいいと思った。
でも、俺は戸籍を変えて別人として籍を入れた。俺の仕事仲間の一人の技だ。
「警察官がシングルマザーは立場的に問題ありそうだろ」
そう言って真を説得して籍を入れてくれた。最もそれを利用してあちらこちらの女と婚姻を結んでいるが、真には見逃して貰っている。

俺から呼び出して、誠に隠れ家に来て貰っている。
俺の仕事は情報屋。裏組織、半グレ、防力団、マフィア……なんかと取引をして情報を得て収入を得ている。
警察の情報を合法的に掴んで、流しているけど警察にも役に立っているから泳がせてもらっている。

現に俺の協力で有名な指名手配犯を三人捕まった。

「おかえり」
「ただいま」

「今日、行って来たんだろ?」
「うん、この子の定期検診」
「言えば迎えに行ったのに」
「大丈夫よ、千早さんは送ってくれたわよ」
「千早が?」
「後でお礼を言ってあげてね」

真は浮気男に嫌悪があったが、許してくれた。
それ以上に俺が好き、と言ってくれた。
そんな誠に俺は「普通の女よりも幸せにしてやる」とそう誓った。
ばかっ、そう言って平手打ちされて、キスされた。
それがプロポーズの思い出である。

真と目が合う。俺より背が低いが体の芯がきちんとしてる女。
母というのに体形が変わらないのは感心する。杏や貞代は元に戻すのに結構かかったものだ。

しかし、今ではまた腹が膨らんだ。
妊娠6ヶ月というところだろうが?

真は警察の仕事も慣れてきた。
随分危ない仕事をしているが、平然できるのは。数々の修羅場をくぐって磨かれた度胸のおかげだろうか?

俺は素早く晩酌を用意した。こんなことテキパキとやるなんて、主夫の鏡だ。
「あの子は?」
「寝てる」
ベビーベットに寝てるまだ1歳の幼子。
俺と真の子供。男の子だ。
真と交代で子守をしているが、警察は忙しい。その時は俺が見てもらうことが多い。
それでも俺はちゃんと子供を真に懐くようにする。
理想的な父親で、夫だと思う。
だけど、俺には女がいる。しかも、10人。平等に子供がいて平等に子供と妻の面倒を見ている。
よくまぁこんな芸当ができるものだと、呆れてものも言えない、と言われた。

「座って」
「うん」
「それで、今日は何のよう?」
真は顔上げる、その顔は正義の警察官の表情だった。
「今、追っている事件があるだろ」
「えっ…?」
「国際的な強盗集団だっけ?アジア人を中心に日本人もいる犯罪者集団」
「知っているの?」
「ああ…今、岩井さんから、それらしい人物と連絡とったって聞いた」
「自首するように取り付ける。手柄にしてやってくれ」
「いいの?そんなこと」
「ああ、その仲間の一人。ちょっと組織を抜けたいみたいでさ。俺が直接入って自首させた。刑務所内の待遇。弁護士の優遇、刑期の削減…まぁ取引した」

「……そんなことは……」
「警察として容認できないよ…」
真は苦渋の表情を浮かべる。
「真…世の中には残念ながら正義だけを貫いても人はついて来ない」
「だから俺は悪と呼ばれる手段を使う。手段が悪でも結果が善なら問題ない」
「…」
「これが俺のたどり着いた答えだ」
「…私にはまだ分からない」
「……」
「俺のこと逮捕する?」
「……」
「分からない…」
「今は様子見てあげる」
「それに、今から忙しくなると思うし…」
「そうか…」

「ねぇ、どうかな?」
「ん?」
「ほらぁ…やっぱ二人目でしょ。あの子はお姉ちゃんも手伝ってくれたけど、今度も同じようにできるか、分からないし…」
「大丈夫だよ。冴さん喜んでたし」

冴さんは、長女の面倒をよく見てくれる。仕事もあるんだから、正直、自重して欲しい。

「俺も頑張るよ」

「ふーん…」

「親バカだもんね、あなた」

真が腹に手を当てた。

「そろそろ産休を取るわ」

「ん?…もういいのか?」

「いいの、しばらく休みたいし…」

「家族4人で過ごしたいわ」

俺は他にもいるけどな

「本当に、ムカつく男なんだから……」
「あなたじゃなかったら許さないんだから…」

真は俺にキスをした。
「あなたの妻ならなんだっていいのよ」

■双葉

双葉は大人になった。
母親になり、落ち着きと礼節を身に付け、徐々に成長している。という感じだ。
持ち前の美貌も、杏や春からファッションを教えて。貰い人一倍良くなった。
スタイルも身長は変わらないが、妊娠中で健康的な肉が付き、より魅力的な体となった。

だから、双葉はモテる。
眼鏡の奥で相手の心を読み、掴む。そして、その美貌で虜にしてしまう。
ルブランの看板娘とこの前テレビでやっていた。
その所作で人気となった。
「人付き合いもコツが分かればヌルゲーだ」と言っていた。


そんな双葉が「もう一人……欲しい」と言ってきた

「屋根ゴミの子供を一杯作ってあげたいし、世話になった惣治郎に、孫を一杯囲まれて欲しい」
「だから、赤ちゃんを産む」
そう言って、双葉は二人目を妊娠した。

「双葉さん、お疲れ様」
「お疲れ様―」
双葉はとある認知科学研究所に勤める。スタッフとのやりとりも慣れたようだ。引きこもりだった双葉には考えられないコミュ力だ。
問題があるとすれば、ワーカーホリック気味。母親から引き継いだ研究やっぱり完成させたいし、二度と悪用されたくない。と言っていた。
「でも、娘達に悪い」そうとも言った。
双葉は母親が好きだ。でも、遊べなくて楽しくなかった。
「だから、私の娘には飛び切りの愛情を注いでやりたい。」
でも、それができてない、と嘆いていた。
「私ってだめ親だなぁ」
と俺は落ち込む彼女を慰める。

だから、愛情の方は俺が代わってる。
「背が高くて、イケメンで女たらしのあいつ。私の子供の父親だ。
あいつはイクメンで子供好き、家事好き、料理好きで何でもできる理想の旦那」と俺は双葉の評価を受けているので心配いらない。

「ただ、非常に女たらし。他所の女に平気で子供を作っているのは欠点」と小言を言われることもしばしば。

双葉はあまり自信が無い。「胸も無いし、チビだし、ガリガリでガキみたいだ。女としての魅力は無いと思う」と俺に言った。
「そんな私じゃあいつを釣り合わない」と愚痴をこぼした。なんてこと考えたことも一度や二度や無いことも知っていた。
「だから、お前の女関係は不問にしてやる。もう、あいつを共有できるだけ、ましってことだから…」
「さて、もうひと頑張り」
双葉は残業に取り掛かるのであった。
そんな双葉に声をかける

「お疲れ」
「ん__。」

しばらく仕事に集中している双葉に声をかける
いつも迎えに行く。嫌な顔しないで、いつものようににやけ顔。と言われる。そんな顔なのか?
「どう仕事は?」
「んー、いまいち、行き詰まってる」
「どこ?」
双葉から仕事を伝えてもらった。
俺は学業が得意だ。正直海外の有名大のエリートとして留学しておかしくない頭脳の持ち主である。
まあ……素行のせいで日本の学府が限界だったが、それでも優秀な頭脳を持っている。
理系専門の双葉の仕事ですらついていける。ちなみに俺は非常勤の研究員ということにしているので問題ない。
所長も俺の頭脳が欲しいんだ。こういう俺の素行に不問してくれる所長も中々の悪党だ。

「前の実験には成功したんだけど、まだ過程が完全に完璧にいかない。これじゃ実用化難しい」
「ふーん」
俺は研究資料をみる。なるほど、実験の実用性というわけか……
「なぁ…何も前のやり方にこだわる必要は無いんじゃないか?」
「え?」
「ほら、体内に吸収しやすい成分の混合する方法でどうだ?」
「あ!」
俺の助言を聞き入れ、それで実験を再開すると

「できた…。まだ、不完全だけど成功に近い」

「流石だな…」

「たまたまだよ」

「凄いな…屋根ゴミは…」

「なんでも器用にできて…」

「私なんて何もできない」

「ただの科学バカだし…」

「それが凄いじゃないか」

「でもさ…屋根ゴミの方が全然すごいよ」
双葉は落ち込んだ。

「でも…もう二人目ができるんだろ」

双葉は腹を撫でる。
大きくなった腹に痩せた体はミスマッチしていた。

「一人産むだけあれだけ大変だったのにもう一人産むなんて凄いことだ」

「え?」

手を掴む。
双葉の手が小さかった。

「凄い、嬉しい」

「…」

「不安だ…」

「ん?」

「いやぁ…勢いで作ったけど…大丈夫かなぁ…って」

双葉は机に倒れこむ。

そんな双葉を支えて、双葉の腹に寄りかかる。

「俺もだよ」

「屋根ゴミもなの?」

「ああ…何人作ろうが、不安は不安だよ、だから一緒に頑張ろう」

「う、うん……」

「屋根ゴミは本当に普通の男じゃないよな」

褒められたのか、怒られたのか分からなかった。

「着いていける私も、屋根ゴミの妻だからな」

今度は落ち込んでいた。

■春

都心のビル群__。
既に帰宅ラッシュが終わったこの街で残っているのはワーカーホリックぐらい。
「春といい、双葉といいもっと体を大切にして欲しいもんだ」
春が商談から終えたビルから出きた。長時間の会談から疲れた顔を見せた。
(やれやれまた無茶してるな)
俺は春の近くに行って、扉を開ける。
「社長、お疲れ様です」
「ご苦労様。ホテルに向かって下さい」
「それでいいのか?」
「え?」
俺は社長に尋ねる
「あ、あなた、…な、なんで?」

「どう?たまにはドライブでも?」

「もう…」

春は助手席に移った。

「急にどうしたの?」

「何……急に会いたくなって」
「……」
「あの子は?」
「もう寝かしたよ。早寝、早起き、聞き分けの良い子だ」
俺達の子はもう幼稚園に通っている。
もう一人で、歯磨きとうがい、手洗いができる良い子だ。
こういうと、あなたって割と親バカね、と春にいじめられてしまう。
「そう」
「春に似たのかな」
「あなたに似たら反抗しまくりでしょう」
「それと、女たらしにならないようにしますからね」
「もう、お仕置きです」
春を悪態はつくが笑う。実は春は自分をちゃんと愛していれば文句を言わないのだった。

俺は春に不意に春に聞いた。
「いま春はいくつかのグループの株を持っているだろう」
「ええ…一応M&A対策に」
「その関連の企業がいくつか脱税しているらしい」
不正に蓄えた金をさらに不正な機関へと流している。
こうやって悪の連鎖は終わらないのか、と嫌になる。

「双葉からのネタだ。おそらく時間の問題」
「でも、この金を政府にやるのは惜しい」
「だから全部奪う」
「え?」
少し早いクリスマスプレゼントに貰ってやる。

「まあ」
「協力してくれる?」
「何をしたらいいの?」
「簡単、株を買って欲しい。それで儲けた金を隠し場所を探る。もちろん、後で返す」
「ふーん、分かった」
「でも、一つこっちから取引!」
「これから、忙しくなるのでサポートお願いします」
「どういうことだ?」
「赤ちゃんがいるの。あなた、私も二人目ができたみたい」


「……そうなのか?」
春は性欲…凄い…。
俺が触るだけで満足する女もいるが、春は必ず、求める。
妊娠中も何度も求められた。
そう言えば、ゴムをつけたことが無かった。


「うん、…最近具合が悪いみたいだし」
「そうか、今度二人で病院行こう…」
春はにっこり笑った。
「いいよ、君の妻だからどこにでも着いて行く」

■一子
「……はぁ……」
俺はテレビを消す。
「酒は子供に悪い」
「……分かってるわよ」
イライラしている。まあ仕方ない。
こういう時は父親が盾になろう。

「あ…忘れない内に……」
「はい、いつもの」
「ありがとう」
今渡したメモリには彼が狙っている悪徳政治家のスクープがある。
パワハラに、セクハラに、横領…とんでもないクズだ。
その貯めた金をごっそり奪おうって、俺は計画を立てている。
「おいおい、そんなに金に困っているの?」
「まさか」
正直金は余っている。
匿名でいくつかの孤児施設に援助でもしようと思う。
「ふふ、本当に君って変わらないよね」

「……」
「ん?どうした? 」
「いやぁ…私、仕事が好きだし、一人目を産んだらいいと思ったんだけどさ」
「やっぱ、欲しくなっちゃうわけ」
「不思議よね」
「あ、あ………………」

一子は性欲が強く、何度もやれる。
だから、一晩で何度もできる。
子供が欲しいと言ったら、すぐにできた。
あれだけやるんだ、確率は高いだろう。
「まあ、大丈夫だ。一応準備はしてある」

「産婦人科ってどういうところ?」
「もう、手配してある…妙の知り合いの所」

「上の子はどうするの?」
「俺が送り迎えする。必要なら家庭教師兼ベビーシッターを使う」

「まあ、そうか君って何人もいるから、慣れてるよね、今更どうってことないか」
「全部任せろ」

釈然としない。という目をしてた。
いくら一子が同意しても、納得いかない。ことがあるのだろう。

「なんで、私ってあんたに惚れたかね」
「俺が惚れたんだよ」
ばかっと軽く、こづかれた。
「あなたの妻って本当に大変。でも、好きよ」

■千早
「あっ、屋根ゴミさん…」
「どうした急に…」
俺は近くにカフェに呼び出された。
千早がいた。売れっ子の占い師の上に、一児の母。何かと忙しいだろう。
「ちょっとありまして…」
ん?腹に手を当てて…
まさか……
「もしかして、それ……」
「はい、3ヶ月です…。」

「そうか、めでたいな」
「つわりも終わりました」
「なんか……お父さんに会えて嬉しいみたいです」
「お父さんに、頑張って、貰いましたからね…」
まあ、ヤリまくったな

千早は有名な占い師。テレビや雑誌でも引っ張りだこ。
「あなたの妻ですから…みんなに人気者なんです」
巷じゃ新宿の母と呼ばれているらしい
「まだ、お母さんという歳では…」
いや、母親になっているだろ。
孕ましたのは俺だが…

千早は実は売れっ子で大物政治家とか実業家とかも随分占っている。
そこでいくつか情報を仕入れているらしい。
「なあ……情報を売って欲しい」
「…」
「ダメですよ。一応お客さんなんですから」
「そいつが悪人でもか?」
「極悪人で多くの人が苦しんでる。正体不明の遺体も上がっている」
「……」
「うーん」
「それじゃ一つお願いです」
なんだ?
「占っていいですか?」


「最初は、赤ちゃん……」
「カードは………星」
「うん、いいカードです。健康で優れた子になります」

「次は、私……」
「カードは………法王」
「より…強くなるみたいです私…。もうお母さんもベテランですからね。
他の人も支えてみせます。」

「最後はあなたです……」
「……!!」
「カードは太陽です。………うわ…今ここで、このカードなんて…」

「良かったです、三人共いいカードです」

「そうか……」

「ただ……」


「どうした?」
「太陽って何か生み出すとかのカードです」

「私の赤ちゃんならちょっと変です」

「屋根ゴミさん、他の女の子のこと聞きましたか?」

「まだ、聞いてない」


「なら、聞いた方がいいと思います」
千早の目が、いつもより大きくなった。
みんなに確認したら、大当りだった。

さすが、千早だ。

■妙
妙は大手の製薬会社や大学病院なんかにも顔を出している。
最新治療においてかなりの研究者の一人として随分と活躍している。

でも、町医者は続けているらしい。俺も看護師の資格があるので、時々手伝っているから問題ない。
近くに家を借りて、娘達と暮らしている。

さっきまでの家に響いていた声が嘘のように静まっている。
まだ、歯磨きも着替えもできないおぼつかない少女。その隣で寝る乳児の男子。
大変で、憎たらしい時もあるけど、この寝顔を見ると、どうでもよくなる。
二人共口が、彼女に似ている。
彼女の遺伝子を、受け継ぐ。そういうことができて、女は偉い、とつくづく思う。
それを、二人を作るなんて妙はすごい。
「あなたの妻だからよ」
そう褒めると、と悪態をついてくる。

娘も近くにいるので、面倒が見やすく、良い環境だ。何より近所の繋がりが強いこの町なら子育てに最適だろう。
仕事も終わり、家に帰り晩ご飯を作り、晩酌をしていると妙が言ってきた。
「医療ミスね…」
妙が関わる病院で、この前に手術で子供を治療し、重症化してまったというケースがあった。

「本当か?」
「まあね、あれは酷いよ」
「そうか…でもどうして?」
「担当した医者がお酒を飲んでいたみたい。それをやらかしたみたい」
「…」
「私がかけついて、なんとか命は救ったけど、そいつはお咎めなしよ」
妙が珍しく、だだをこねる。いつも甘えられている分、その分を俺に甘え、こうして愚痴を言う。
年上であるがまるで幼子のように甘えてくれる彼女の仕草に愛しくて堪らない。
一度、娘にその様子を見られて__。
「ママはパパの前だと赤ちゃんみたい」と学校でばらされた。
「妙…」
「ん?何?」
「取引しないか?」
「えっ…?」
「そいつの悪行をバラしてやる」
「え?」
「まあ、潜入して、証拠を掴む」
「……」
「知り合いなら多くいる」
「なるほどね。モルモット君は健在ね」
妙は出会ったばかりの大人の女になる。

「ねぇ…あの子達、見てもいい?」

「うん、いいけど」
もっとよく見といた方がいい。子供は早く成長する。

俺に似た目と、妙の口元と鼻。2つが混ざっている。それが、姉弟並んで寝てる。

性格は俺と妙を最悪にした感じ。それでいて、恐ろしく知恵が回る。

幼稚園じゃ番長らしい。

先生には頭が上がらない。

「可愛いわね…」
「妙に似たからだよ」

「でも、大変でしょ。あなたの場合は他の子の面倒も見てるんだから」
「ああ…でも、みんながいるから大丈夫」
「何よ、それ?」
ふふ、妙が笑う。
「まあ、倒れたら予約無しで診てあげる」

■貞代
いつもの、学校帰りだった。
「先生…!」

車から貞代に声をかけた。
「屋根ゴミ君…」
「良かったら送りますよ」
「いいの?悪いわね 」

いつもより大きな車だ。春から借りた。

「仕事?無茶してない?」
「全く楽しんでいるよ。そっとはどう?」
「一応、コマ数減らしてくれているわよ」
「あなたも見てくれるから甘えちゃう」

貞代は俺の母校の教師を続けている。
生徒に熱心な指導と適切な教育方法を学校に評価され、学年主任になったと喜んでいた。
「二人はどう?」
「大丈夫、二人共元気だよ。」
「もう、他にも子供がいるのに作って、バカ」
他に女の元に行く時、散々恨み言を言われる。
分かっているが、可哀想になるが…それ以上にいじめたくなる。
「この、教師いじめっ子」
と文句を言われる。
貞代は教師の仕事が好きだ。
だから二人目を作るときも、躊躇した。もちろん、合意であるが、貞代自身のことも考えた。
(無茶してなきゃいいんだが…)と思った。だが、出産した時の貞代の笑顔を見たら産んでくれて良かったと本当に思えた。

「秀尽高校の生徒の親に俺のターゲットがいる」

「え?」
「情報が欲しい」
「親の資産や職業やその他もろもろ、…なんでもいい」

「教師からという方が情報をつかみやすい」

双葉や一子に依頼して、あらかたの情報は手に入れた。だが、問題なのは大人達が掴んでいない情報。それを知っているのは貞代しかいない。

「という訳で…顧客のデータくれ」
「あなた……単純に言うけどそれ犯罪じゃない」

「警察には話がついてある」
「そういう問題じゃ」
「生徒は売れないか?」

「売れないわよ…あなたの時だって私達必死で庇ったのよ」
「君みたいな素行不良の問題児!」
「別に隠したいならそうすればいい。生徒を守るため学校が汚名を被る。それもまた一つの方法だ」
「だけど、隠す方が生徒に悪いとしたら?」
「え…?」
「実はその生徒は自分から親の悪事を発信しているらしい。」
「善良な子供なんだろう。これ以上、親の悪事が我慢できないんだろう」
「だが、親に監視されて、それすらもできない…」
「……」

「分かったわ…じゃあ取引、その子も守ってあげて」

「もちろん、戸籍も用意するし、必要なら顔も変えられる」

「…本当に、あなたって子は…」

「だけど、貞代は守れないな…もしかしたら糾弾されるかもしれないぞ」

「……」

「私ね。子供も教師も諦めないの」

「だから、どんな責め苦でも耐えてみせるわよ」

強い女…。

「私、怪盗団の妻だしね。強欲なのよ」

「そうか」

それは良かった。
ご褒美にやろう。
次の日、俺がマッサージしてあげよう。

■一二三

一二三は棋士だけではなく、タレントとして活躍している。
将棋を広めることを第一とした活動も行っている。以前はこういう仕事も嫌がったが、今は積極的に行っている。
「最初は嫌でしたけど、これも将棋界を盛り上げられることに繋がるなら平気です」
「それに芸能界にも結構知り合いが出来て…お仕事が楽しくなってきたんです」
「もちろん、将棋の方も負けません。どんどんタイトルや高段者と組みます。負けますが、諦めなかったら勝ちます」
一二三は多く対戦する。イベントや指導将棋、積極的に対戦相手と打ち、勝負する。だが、負ける。
しかし、そこで諦めない。何度もチャレンジして、勝ちを掴むその姿に多くのファンがついた。
「諦めの悪さをあなたから教わりました」と言われた。

「あれ、屋根ゴミさん……どうしたんだ?」
俺はベビーカーの子に声をかける
「母親の顔を見せてやろうとしてな」
「あ、ありがとうございます」

ベビーカーに乗る、乳児は一二三と俺の子供二人目である。
千早に、なんとなく面影が似ている。
「近くに来たから寄った」
「そうなんですか?ありがとうございます」
俺は他の女と子供を作っていると分かると、一二三も子供を望んだ。
せめて、卒業してから、という言葉は無視された。
なんとか、卒業してから授かったが、本当に肝が座った女だ。
一二三は、二人の母親になり、「ちゃんとこの子を育てて見せます」そう、宣言した。
「俺は支えて見せる」そう、宣言した。
二人で何故か笑った。

「どうなんだ?最近は?」
「そうですね……今度のタイトル戦はリベンジですからね。負けてしまいましたが、今度は負けません。絶対に勝ちます…」
「ああ、楽しみにしてる」
「ところで、あのタイトルのスポンサー…」

「え…?」
一二三は複雑な顔をした。

「ちょっと、そいつに会えないか?」
「……お仕事ですか?」
「ああ…」
「どうやら一二三のタイトルスポンサーで資金をロンダリングしているらしい。」
もちろん、俺もしているが、そんな情報を掴んだなら、横取りするのが怪盗団だ。
そして、一二三を利用するのを排除でき、一石二鳥だ。
「う…ん…危ないことは…」

「分かっている、最終的には警察に渡す」
「こういう身だから、警察の捜査も協力してやらないとな」

「悪い人ですね。そんな新手も作ってみます」
一二三は悪い顔をした。似た者夫婦とよく言われる。
「あなたの妻です。悪くて当然です」

■すみれ
大学に進学したすみれは、その後、オリンピックの選手に選ばれ見事メダリストとなった。
だが、本人は満足していない。
「金じゃありません。まだまだ努力不足です」
貪欲な女である。そして、俺のことも諦めなかった。10人も妻が居て、子供いることを告げると……。
「ライバルがいるとむしろ、燃えます」
そう言って俺の妻になることになった。
その後、すぐに妊娠が発覚した。お腹には二人の子供がいる。双子の女の子だ。まさか、すみれ自身が双子なのに、子供も双子とはびっくりした。

「…運動が得意になりますかね」
スポーツ選手の二世になれるといいが、それを強要することもしたくない。
育てたら自然と運動が好きなってもらいたい。
「それが、一番ですね」
「ちなみに、屋根ゴミさんは、私になってもらいたい、と思うんですか?」
「それは、そうだな」
すみれは、美しい。
夫の俺が、贔屓しなくても、目をつく色気と愛嬌があった。
同性に嫌われるという弱点もあったが、そういう立ち位置を学んだようで、嫌がらせというのは、受けてないそうだ。

「そういう悪いところは、先輩を真似しました」
「悪い女だ」
「悪い男の妻ですから」

「ところで…例の件どう?」
「はい…」

「見て下さい、この映像…」
「ドーピングか…」
「はい、強要されていたみたいです」
スマホには、すみれが、選手村で知り合った選手が映っている。その選手が、国のお偉方から、ドーピングを強要されそうになったらしい。
「そうか、こいつか…」
「知ってるんですか?」
「まあな、裏なら有名人だ」
「ありがとう…これでこいつは失脚できる」
「そうですか…あなた、無茶しないでくださいね」
「大丈夫、あの子達もいるんだし」
「そうですよ。私達だけのあなたじゃないんです」
「他の人の旦那さんでもあるんですからね」
すみれはフェアな女だ。
「一応、多妻でも認めます」
「でも、私は独り占めしたいです。私はアスリート、一番を目指します」
俺を独占したいと思うが、正当な審判をして欲しいと、俺に願うのだ。

杏「ん?お久しぶり」

真「ああ、杏久しぶりね」

春「こんにちは杏ちゃん」

杏「春も元気だった?」

春「赤ちゃん、大きくなったね」

杏「うん、もう一歳だから」

杏「真達の子供は?」

真「私達も歩けるようになったわよ」

春「もう彼にそっくりに生意気で反抗的」

杏「ふふ、うちも」

杏「それであいつは?」

春「蓄えたお金で新しい組織を立ち上げたみたい」

真「暴力団、マフィア、半グレ…どれも当てはまれない新しい組織」

真「合法だけど極めてグレーね」

杏「ん?お久しぶり」

真「ああ、杏久しぶりね」

春「こんにちは杏ちゃん」

杏「春も元気だった?」

春「赤ちゃん、大きくなったね」

杏「うん、もう一歳だから」

杏「真達の子供は?」

真「私達も歩けるようになったわよ」

春「もう彼にそっくりに生意気で反抗的」

杏「ふふ、うちも」

杏「それであいつは?」

春「蓄えたお金で新しい組織を立ち上げたみたい」

真「暴力団、マフィア、半グレ…どれも当てはまれない新しい組織」

真「合法だけど極めてグレーね」

杏「でも、彼の組織めちゃくちゃでかいって聞いたけど?」

杏「芸能界でも悪いことしている奴がどんどんいなくなっているって」

真「全体的な犯罪組織は減っているみたいね」

真「組織犯罪は下がる一方って内の上司が言ってたわ」

杏「さすがカッコイイ真似してくれる」

春「私たちの旦那様だもん。これぐらいはやってもらわなきゃ」

杏「ふふ、そうね。悪い、悪い旦那様」

真「ええ」

おわり

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